JP6409284B2 - インプリントモールド用基板、インプリントモールド及びそれらの製造方法、並びにインプリントモールドの再生方法 - Google Patents

インプリントモールド用基板、インプリントモールド及びそれらの製造方法、並びにインプリントモールドの再生方法 Download PDF

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Description

本発明は、インプリントモールド用基板、インプリントモールド及びそれらの製造方法、並びにインプリントモールドの再生方法に関する。
微細加工技術としてのナノインプリント技術は、基材の表面に微細凹凸パターンが形成されてなる型部材(インプリントモールド)を用い、当該微細凹凸パターンをインプリント樹脂等の被加工物に転写することで微細凹凸パターンを等倍転写するパターン形成技術である(特許文献1参照)。特に、半導体デバイスにおける配線パターン等のさらなる微細化の進行等に伴い、半導体デバイスの製造プロセス等においてナノインプリント技術が益々注目されている。
このようなナノインプリント技術において、インプリントモールドと被加工物としてのインプリント樹脂とが密着している状態から、当該インプリントモールドを剥離するためには、強い力を必要とする。そのため、インプリントモールドの剥離時などに、インプリント樹脂に転写された微細凹凸パターンの破壊や、インプリントモールドの破壊などが生じるおそれがある。
このような問題を解決すべく、従来、微細凹凸パターンが形成されている面と対向する面に、基板外縁部から基板中心部に向けて窪みが深くなるように形成された凹部を有するインプリントモールドが提案されている(特許文献2参照)。
米国特許第5,772,905号 特開2009−170773号公報
特許文献2に開示されているインプリントモールドにおいては、微細凹凸パターンが形成されている面と対向する面に凹部を有することで、インプリント樹脂からインプリントモールドを剥離する際に、インプリントモールドを湾曲させることができ、より小さな力で離型が可能である。
しかしながら、インプリントモールドを湾曲可能にするための上記凹部を加工する技術は、非常に高度な技術である。というのも、所望とする剥離性能が得られる程度にインプリントモールドを湾曲させ得る凹部を、切削器具等を用いた機械加工により形成しようとすると、当該凹部の底部の厚みの制御、表面仕上げ等、加工の難易度が非常に高い。そのため、意図した凹部形状を有するインプリントモールドの製造に時間がかかり、歩留まりの問題が生じるおそれがある。また、当該凹部を有するインプリントモールドを製造するための高額な設備投資が必要となる。
また、一般に、電子線露光や自己組織化等の微細加工技術を用い、微細凹凸パターンが形成されてなり、当該微細凹凸パターンが形成されている面と対向する面に凹部を有するモールド(マスターモールド)を作製し、当該マスターモールドを用いたインプリント処理により、当該マスターモールドの微細凹凸パターンが凹凸反転してなる微細凹凸パターンと、当該微細凹凸パターンが形成されている面と対向する面に形成されてなる凹部とを有するモールド(レプリカモールド)が大量に作製される。このレプリカモールドが、半導体製品等の製造工程の一つであるインプリント処理に使用されるのが通常である。このようなレプリカモールドを用いてインプリント処理を行うのは、作製に多大な時間とコストを要するマスターモールドの破損リスクを低減するためである。
上記マスターモールドやレプリカモールドは、いずれ破損して廃棄されることがある。その際、高精度に形成された凹部を有するマスターモールドやレプリカモールドをそのまま廃棄することは、製造コストや、環境上の観点から好ましくない。
上記課題に鑑みて、本発明は、所望とする精度の凹部を有し、部分的に再利用可能なインプリントモールド用基板及びその製造方法、当該インプリントモールド用基板から作製されるインプリントモールド、並びに当該インプリントモールドを用いたインプリント方法及び当該インプリントモールドを再生する方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明は、微細凹凸パターンが形成され得る主面及び当該主面に対向する対向面を有する薄板部と、前記薄板部の前記対向面側を支持する、中空筒状の支持部と、前記薄板部及び前記支持部の間に介在し、前記支持部の開口一端を前記対向面で閉塞するようにして前記薄板部及び前記支持部を接合する接合部とを備え、前記支持部と前記接合部との間又は前記接合部内に、光触媒が存在し、前記接合部は、前記光触媒の作用により分解又は変性され得る粘着剤組成物の硬化物により構成され、前記薄板部の前記対向面側から前記主面側に向かって前記薄板部の厚さ方向に進行する光が前記光触媒に照射されないような位置に、遮光層が設けられていることを特徴とするインプリントモールド用基板を提供する(発明1)。
上記発明(発明1)によれば、薄板部と、中空筒状の支持部とを接合部を介して接合し、薄板部により支持部の開口一端が閉塞されることで、微細凹凸パターンの形成される面(薄板部の主面)に対向する面に所望の精度の凹部を有するインプリントモールド用基板とすることができる。
また、接合部と支持部との間又は接合部内に、光触媒が存在することで、上記発明(発明1)に係るインプリントモールド用基板から得られるインプリントモールドを再生するとき、当該光触媒の作用により接合部としての粘着剤組成物の硬化物を分解し又は変性させることができるため、薄板部と支持部とを容易に分離することができる。
インプリントモールド用基板から作製されるインプリントモールドを用いた光インプリント処理時に当該インプリントモールドの凹部側から照射された光により光触媒の作用が奏されてしまうと、インプリントモールドにおける接合部の強度が低下するおそれがある。しかしながら、上記発明(発明)によれば、遮光層が設けられていることで、光インプリント処理時に光触媒に光が照射されてしまうのを防止することができる。
上記発明(発明)においては、前記遮光層は、前記光触媒と前記支持部との間に設けられていてもよいし(発明)、前記支持部に内在されていてもよいし(発明)、前記支持部の内周壁に設けられていてもよい(発明)。
また、本発明は、上記発明(発明1〜)に係るインプリントモールド用基板の前記薄板部の前記主面に、微細凹凸パターンが形成されてなることを特徴とするインプリントモールドを提供する(発明)。
さらに、本発明は、主面及び当該主面に対向する対向面を有する薄板部と、前記薄板部の前記対向面を支持する、中空筒状の支持部と、前記薄板部及び前記支持部の間に介在し、それらを接合する接合部とを備えるインプリントモールド用基板を製造する方法であって、前記支持部の開口一端を前記薄板部の対向面で閉塞するようにして前記薄板部と前記支持部とを重ね合わせたときの、前記薄板部及び/又は前記支持部における重ね合せ部に、粘着剤層を形成する工程と、前記粘着剤層と前記支持部との間に光触媒を介在させて、前記薄板部と前記支持部とを前記粘着剤層により接合する工程と、前記支持部の軸方向に沿って前記支持部側から前記薄板部側に向かって進行する光が前記光触媒に照射されないような位置に、遮光層を設ける工程とを含むことを特徴とするインプリントモールド用基板の製造方法を提供する(発明)。
さらにまた、本発明は、インプリントモールドを用いたインプリント方法であって、前記インプリントモールドは、微細凹凸パターンが形成されてなる主面及び当該主面に対向する対向面を有する薄板部と、前記薄板部の前記対向面側を支持する中空筒状の支持部と、前記薄板部及び前記支持部の間に介在し、前記支持部の開口一端を前記対向面で閉塞するようにして前記薄板部及び前記支持部を接合する接合部とを備え、前記支持部と前記接合部との間又は前記接合部内に、光触媒が存在し、前記接合部は、前記光触媒の作用により分解又は変性され得る粘着剤組成物の硬化物により構成されており、前記インプリント方法は、前記インプリントモールドを被加工基材の主面上に供給されたインプリント樹脂に接触させ、前記インプリント樹脂を前記被加工基材の主面上に展開する工程と、前記被加工基材の主面上に展開した前記インプリント樹脂に光を照射することで前記インプリント樹脂を硬化させる工程と、前記硬化したインプリント樹脂から前記インプリントモールドを剥離する工程とを含み、前記硬化させる工程において、前記インプリントモールドの前記薄板部の前記対向面側から前記インプリントモールドを介して、前記光触媒に前記光が照射されないように遮光して前記インプリント樹脂に前記光を照射することを特徴とするインプリント方法を提供する(発明7)。
上記発明(発明)においては、前記インプリント樹脂が、光硬化性樹脂であるのが好ましい(発明)。上記発明(発明7,8)においては、前記インプリントモールドは、前記薄板部の前記対向面側から前記主面側に向かって前記薄板部の厚さ方向に進行する光が前記光触媒に照射されないような位置に、遮光層を備えるのが好ましい(発明9)。
また、本発明は、上記発明(発明)に係るインプリントモールドを再生する方法であって、前記支持部から、前記微細凹凸パターンを有する前記薄板部を分離する工程と、前記薄板部が分離された前記支持部の開口一端を新たな薄板部で閉塞するようにして前記新たな薄板部と前記支持部とを重ね合わせたときの、前記新たな薄板部及び/又は前記支持部における重ね合せ部に、粘着剤層を形成する工程と、前記新たな薄板部と前記支持部とを前記粘着剤層で接着させる工程とを含み、前記分離する工程において、前記遮光層により光が遮られないように前記光触媒に前記光を照射して、前記支持部から前記薄板部を分離することを特徴とするインプリントモールドの再生方法を提供する(発明1)。
本発明によれば、所望とする精度の凹部を有するインプリントモールド用基板及びその製造方法、並びに当該基板を用いて作製されるインプリントモールドを提供することができる。
図1(A)は、本発明の一実施形態に係るインプリントモールド用基板の概略構成を示す切断端面図であり、図1(B)は、図1(A)に示すインプリントモールド用基板におけるA部拡大図である。 図2は、本発明の一実施形態に係るインプリントモールド用基板の概略構成を示す分解斜視図である。 図3は、本発明の一実施形態に係るインプリントモールド用基板の他の構成例を概略的に示す切断端面図である。 図4は、本発明の一実施形態に係るインプリントモールド用基板における遮光層の他の構成例を概略的に示す切断端面図である。 図5は、本発明の一実施形態に係るインプリントモールド用基板における接合部近傍の他の構成例を概略的に示す部分拡大切断端面図である。 図6は、本発明の一実施形態に係るインプリントモールド用基板の製造方法の各工程を断面図にて示す工程フロー図である。 図7は、本発明の一実施形態におけるインプリントモールドの概略構成を示す切断端面図である。 図8は、本発明の一実施形態におけるインプリントモールドの概略構成を示す平面図である。 図9は、本発明の一実施形態におけるインプリントモールドの製造方法の各工程を切断端面図にて示す工程フロー図である。 図10は、本発明の一実施形態におけるインプリント方法を切断端面図にて示す工程フロー図である。 図11は、図10に示すインプリント方法の続きの工程を切断端面図にて示す工程フロー図である。 図12は、図11に示すインプリント方法の続きの工程を切断端面図にて示す工程フロー図である。 図13は、本発明の一実施形態におけるインプリントモールド用基板の再生方法の各工程を断面図にて示す工程フロー図である。 図14は、本発明の他の実施形態に係るインプリントモールド用基板の概略構成を示す切断端面図である。 図15は、図14に示すインプリントモールド用基板における薄板部の主面に対向する対向面の他の構成例を示す、当該対向面側から見た平面図である。
本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
〔インプリントモールド用基板〕
図1(A)は、本実施形態に係るインプリントモールド用基板の概略構成を示す切断端面図であり、図1(B)は、図1(A)に示すインプリントモールド用基板におけるA部拡大図であり、図2は、本実施形態に係るインプリントモールド用基板の概略構成を示す分解斜視図であり、図3は、本実施形態に係るインプリントモールド用基板の他の構成例を概略的に示す切断端面図であり、図4は、本実施形態に係るインプリントモールド用基板における遮光層の他の構成例を概略的に示す切断端面図であり、図5は、本実施形態に係るインプリントモールド用基板における接合部近傍の他の構成例を概略的に示す部分拡大切断端面図である。
図1(A)、(B)及び図2に示すように、本実施形態に係るインプリントモールド用基材1は、インプリントモールドの微細凹凸パターンが形成され得る主面2Aを有する薄板部2と、薄板部2の主面2Aに対向する対向面2Bを支持する中空筒状の支持部3と、薄板部2及び支持部3の間に介在し、薄板部2及び支持部3を接合する接合部4と、支持部3と接合部4との間に介在する光触媒層5及び遮光層6とを備える。
薄板部2は、中空筒状の支持部3の開口一端31(図2参照)を閉塞するように、接合部4を介して支持部3と接合されている。このように、本実施形態に係るインプリントモールド用基材1は、支持部3の中空部30と、開口一端31を閉塞する薄板部2の対向面2Bとにより構成される凹部8を有する。そのため、薄板部2の対向面2Bは、インプリントモールド用基材1の凹部8の底面に要求される程度に平坦面として構成される。
薄板部2としては、例えば、石英ガラス基板、ソーダガラス基板、蛍石基板、フッ化カルシウム基板、フッ化マグネシウム基板、アクリルガラス基板、ホウケイ酸ガラス基板等のガラス基板;ポリカーボネート基板、ポリプロピレン基板、ポリエチレン基板、その他ポリオレフィン基板等の樹脂基板等からなる単層基板や、上記基板のうちから任意に選択された2以上を積層してなる積層基板等の透明基板等を用いることができる。
なお、本実施形態において「透明」とは、インプリント樹脂としての光硬化性樹脂を硬化させることが可能な波長の光、例えば波長200〜400nmの光線を対象物(本実施形態においては薄板部2)の片側から照射した際、照射された側とは反対側へ光が到達することを意味する。薄板部2が透明であるのは、インプリント処理時に光硬化性樹脂(インプリント樹脂)を硬化させること及び支持部3と接合部4との間に位置する光触媒層5に光を照射させることが目的であるのだから、好適な基準を透過率で示すならば60%以上、好ましくは90%以上、特に好ましくは96%以上である。
本実施形態において、薄板部2の形状(平面視形状)は略矩形状であるが、このような形状に限定されるものではなく、インプリントモールド用基板1から作製されるインプリントモールドの用途等に応じた任意の形状、例えば、略円形状等であってもよい。また、薄板部2の大きさ(平面視の大きさ)も、特に限定されるものではなく、インプリントモールド用基板1から作製されるインプリントモールドの用途等に応じた大きさに設定され得る。
さらに、薄板部2の厚さT2は、薄板部2の材質、インプリントモールド用基板1から作製されるインプリントモールドの用途等に応じて適宜設定され得るが、当該薄板部2が石英ガラスにより構成される場合、0.3〜1.5mm程度に設定され得る。本実施形態に係るインプリントモールド用基板1から作製されるインプリントモールド10(図7参照)は、支持部3の中空部30の開口一端31が薄板部2により閉塞されることで形成される凹部8を有することで、インプリント処理時、特にインプリントモールド10の剥離時において、薄板部2のうちの微細凹凸パターンが形成されている領域を少なくとも湾曲させることができ、インプリントモールド10(図7参照)の剥離を容易にするという効果を奏する。そのため、薄板部2の厚さT2が薄すぎたり、厚すぎたりすると、インプリントモールド10の剥離時に意図したとおりに湾曲させるのが困難となるおそれがある。また、薄板部2の厚さT2が薄すぎると、インプリントモールド10の強度が低下するおそれもある。
本実施形態に係るインプリントモールド用基板1において、薄板部2の主面2Aに対向する対向面2Bの外縁部近傍には、接合部4を介して支持部3が接合されているが、薄板部2の対向面2Bのうち、少なくとも接合部4に当接する領域である外縁部近傍の表面には、粗面化、密着層形成等、接合部4との密着性を向上させる処理がなされているのが好ましい。当該外縁部近傍の表面に当該処理がなされていることで、薄板部2及び支持部3を分離するときに、接合部4を薄板部2側に残存させることがより容易になり、支持部3の再利用がより容易になる。
本実施形態において、薄板部2は、図3(A)に示すように、主面2A側に凸構造部21を有する、いわゆるメサ構造を有するものであってもよい。また、図3(B)に示すように、薄板部2の主面2Aには、Cr、Crの窒化物等のクロム系材料;シリコン、シリコンを含む合金、シリコン酸化物、シリコン窒化物等のシリコン系材料等により構成されるハードマスク層7が形成されていてもよい。
支持部3は、外形が平面視略方形状の中空角筒状を有しており、平面視において略中心に略円形の中空部30が形成されてなる。支持部3の主面3Aが、支持部3の開口一端31を薄板部2(対向面2B)で閉塞するようにして、接合部4を介して薄板部2の対向面2Bに接合されていることで、有底略円筒状の凹部8が形成される。
支持部3を構成する材料は、特に限定されるものではなく、薄板部2を構成する材料と同一材料であってもよいし、異なる材料であってもよい。支持部3が、薄板部2を構成する材料と異なる材料により構成される場合、当該支持部3を構成する材料としては、例えば、シリコン系材料、金属材料、石英ガラス、ソーダガラス、蛍石、フッ化カルシウム、フッ化マグネシウム、アクリルガラス、ホウケイ酸ガラス等のガラス材料;ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリエチレン、その他ポリオレフィン類等の樹脂材料のほか、低膨張セラミックス等のセラミックス材料等が挙げられる。特に、支持部3を構成する材料として、薄板部2と同様に透明材料を用いる場合には、本実施形態に係るインプリントモールド用基板1の遮光層6による効果が顕著に奏される。
平面視における支持部3の外形の大きさは、薄板部2の大きさと略同一であってもよいし、薄板部2よりも大きくてもよい。それらの大きさが略同一である場合には薄板部2側から見たときに段差を有しないため、例えば、薄板部2と支持部3とを接合した後に端面部分の面取り等が必要な場合には容易に実施可能である。一方で、支持部3が薄板部2よりも大きい場合、例えば支持部3と薄板部2とを分離する際、支持部3を保持可能な領域として、大きさの差分が生じた箇所を保持することが可能となる。また接合時の位置ずれも許容される。
また、平面視における中空部30(薄板部2により閉塞される開口一端31)の大きさは、少なくとも、薄板部2の主面2A上に微細凹凸パターンが形成される領域を包含し得る大きさである。平面視において、中空部30が微細凹凸パターンを内包可能な大きさであることで、インプリントモールド用基板1から作製されたインプリントモールドを用いたインプリント処理時、特にインプリントモールドの剥離時に、微細凹凸パターンが形成されている領域を少なくとも湾曲させ、インプリント樹脂からの剥離を容易にするという効果が発揮され得る。
支持部3の厚さT3は、本実施形態に係るインプリントモールド用基板1から作製されるインプリントモールド10の凹部8の深さの設計値に応じて適宜設定され得るが、例えば、3〜10mm程度に設定され得る。
接合部4は、光触媒の作用により分解又は変性され得る粘着剤組成物を硬化させてなる粘着剤硬化物により構成され、薄板部2及び支持部3を接着可能なものである。接合部4が光触媒の作用により分解又は変性され得る粘着剤組成物の硬化物により構成されることで、本実施形態に係るインプリントモールド用基板1から作製されるインプリントモールド10(図7参照)を再生するときに、光触媒層5への光の照射により薄板部2と支持部3とを容易に分離することができる。
光触媒の作用により分解又は変性され得る粘着剤組成物としては、一般的な有機系粘着剤組成物である限り特に制限されることなく用いることができ、例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂等の粘着性樹脂材料等を用いることができる。また、粘着剤組成物による粘着(接着)機構は特に制限されず、例えば、上記粘着剤組成物は、重合や硬化剤等との化学反応により粘着力を奏し得る粘着剤組成物であってもよいし、熱可塑性又は熱硬化性の粘着剤組成物であってもよい。
なお、本実施形態において、接合部4が薄板部2と支持部3との間にのみ存在している態様を例に挙げるが、インプリント処理に影響を及ぼさないのであれば、このような態様に限定されるものではない。例えば、接合部4は、薄板部2の対向面2Bの全面を覆っていてもよいし、中空部30から露出する対向面2Bの一部を覆っていてもよい。このような態様のインプリントモールド用基板1から作製されるインプリントモールドを用いたインプリント処理において、インプリント樹脂として光硬化性樹脂を用いるのであれば、接合部4は、当該光硬化性樹脂を硬化させ得る光を透過可能に構成されていればよい。
上記粘着性樹脂材料の粘着力(被着体である薄板部2及び支持部3に対する粘着力)は、本実施形態に係るインプリントモールド用基板1から作製されるインプリントモールドをインプリント処理に使用しているときに、薄板部2と支持部3とが分離してしまわない程度であればよく、硬化させたインプリント樹脂(光硬化性樹脂)から薄板部2を垂直方向に剥離するのに要する力の2倍以上、好ましくは5倍以上の力に耐えられるものであればよい。例えば、接合部4が上記粘着性樹脂材料(粘着剤組成物)により構成され、薄板部2及び支持部3がともに石英により構成される場合、硬化させたインプリント樹脂(光硬化性樹脂)から薄板部2を垂直方向に剥離するのに要する力の最大値が20Nであったならば、硬化させたインプリント樹脂(光硬化性樹脂)と薄板部2との接触面積と同一面積で石英に接着させた上記粘着性樹脂材料を剥離するのに要する力の最大値が40N以上であるのが好ましい。ただし、実際のインプリント処理において、インプリントモールドを剥離するときに薄板部2が湾曲することで、接合部4には、垂直方向の力と薄板部2の湾曲による水平方向の力との合力が加わるため、インプリント処理での繰り返し利用や、インプリント処理以外の不慮の外力による剥離を防ぐために、硬化させたインプリント樹脂(光硬化性樹脂)から薄板部2を垂直方向に剥離するのに要する力の5倍以上(100N以上)とすることが好ましい。
接合部4の厚さT4は、可能な限り薄いのが好ましいが、接合部4や薄板部2を構成する材料に応じて適宜設定することができる。接合部4の厚さT4が薄くなると、薄板部2と支持部3との接合時に薄板部2に生じ得る内部応力がより低減される。例えば、接合部4の厚さT4は、3〜100nm程度とすることができる。薄板部2に生じ得る内部応力は、例えば、接合前後の上記粘着性樹脂材料(接合部4)の収縮率や膨張率、さらに熱膨張係数に依存する。このため、収縮率や膨張率が低く、または熱膨張係数が薄板部2に近い粘着性樹脂材料を接合部4として用いる場合には、接合部4の厚さT4を前述の数値範囲(3〜100nm)に比べて厚くすることができる。また、本実施形態に係るインプリントモールド用基板1から作製されるインプリントモールドを、薄板部2に生じ得る内部応力を無視することが可能な用途に使用する際には、上述の数値範囲によらず、例えばサブミクロン又はミクロン単位の厚さT4の粘着性樹脂材料を接合部4として使用することができる。なお、後述するように薄板部2の主面2Aを平坦な面として構成させるために、接合部4は、薄板部2に引張応力を与える目的とする、薄板部2に生じ得る内部応力を調整可能な層であってもよい。
支持部3と接合部4との間に位置する光触媒層5は、接合部4に接するようにして設けられている。光触媒層5が接合部4に接していることで、特定のバンドギャップ以上のエネルギーを有する波長の光を光触媒層5に照射したときに、光触媒層5において光触媒反応が起こり、接合部4を構成する粘着性樹脂材料が分解又は変性される。その結果、接合部4と光触媒層5との界面において、薄板部2と支持部3とが分離される。
光触媒層5を構成する光触媒としては、一般に光触媒反応を生じさせ得る化合物を用いることができ、例えば、TiO2、ZnO、NiO、Cu2O等の金属酸化物、ZnS、CdS、HgS等の金属硫化物、CdSe等の金属セレン化物等を用いることができる。
なお、インプリントモールド用基板1から作製されるインプリントモールド10(図7参照)において薄板部2と支持部3とを分離可能な程度に接合部4を構成する粘着性樹脂材料を分解し又は変性させることができる限り、光触媒層5の厚さT5は、特に制限されるものではない。一般的に、光触媒層5の厚さT5は、100〜2000nm程度とされ得る。また、この光触媒層5を有することでインプリントモールド用基板1(特に、薄板部2)に応力が生じてしまう場合には、接合部4における光触媒層5と対向する面(薄板部2の対向面2B側)に、光触媒層5と同様の応力を生じさせ得る膜を形成し、インプリントモールド用基板1全体の応力を調整してもかまわない。
本実施形態においては、光触媒層5と支持部3との間に、金属クロムやその酸化物、窒化物等により構成される遮光層6が設けられている。本実施形態に係るインプリントモールド用基板1から作製されるインプリントモールド10(図7参照)を用いた光インプリント処理において、インプリント樹脂に対して照射される光は、紫外線を含む光であって、光触媒反応が生じ得る特定のバンドギャップ以上のエネルギーを有する波長の光である。そのため、当該インプリントモールド10(図7参照)を用いたインプリント処理時に、インプリント樹脂に対して照射されるべき光が光触媒層5にも照射されてしまうと、光触媒反応が起こり、接合部4を構成する粘着性樹脂材料が分解又は変性し、薄板部2と支持部3とが分離されてしまう。しかしながら、上記遮光層6を有することで、薄板部2の対向面2B側から主面2A側に向かって薄板部2の厚さ方向に進行する光、すなわちインプリント処理時に照射される光が、光触媒層5に照射されるのを防止することができる。換言すると、本実施形態においては、薄板部2の対向面2B側から主面2A側に向かって薄板部2の厚さ方向に進行する光(インプリント処理時に照射される光)が、光触媒層5に照射されないような位置に、遮光層6が設けられている。
遮光層6は、光触媒層5にて光触媒反応が起こらない程度に遮光可能な層であればよく、光学濃度(OD)2以上の層であるのが好ましく、光学濃度3以上の層であるのが特に好ましい。遮光層6の光学濃度が2未満であると、光触媒層5にエネルギーが伝わってしまい、光触媒反応が起こるおそれがある。なお、遮光層6の厚さT6は、所望の遮光性能(光学濃度)を発揮し得る程度の厚さである限り特に制限はなく、例えば、遮光層6を構成する材料として金属クロムを用いる場合、光学濃度2から3を実現するための遮光層6の厚さは70〜100nm程度に設定され得る。
インプリントモールド用基板1における遮光層6の設けられている位置は、光触媒層5と支持部3との間のみならず、インプリント処理時に照射される光を遮光し、当該光が光触媒層5に照射されないような位置である限り、特に制限はない。例えば、遮光層6は、支持部3の主面3Aとその対向面3Bとの間に設けられていてもよいし(図4(A)参照)、支持部3の対向面3B上に設けられていてもよいし(図4(B)参照)、支持部3の中空部30を構成する内壁3Cに設けられていてもよい(図4(C)参照)。
なお、支持部3と遮光層6との間には、さらに剥離層9が設けられていてもよい(図5参照)。薄板部2と支持部3とを分離したときに、接合部4としての粘着性樹脂材料が支持部3側に残存すると、支持部3を再利用する場合に当該接合部4を除去する必要があるが、図5に示すように、支持部3と遮光層6との間に剥離層9を有することで、接合部4としての上記粘着性樹脂材料が薄板部2側に残存しやすくなり、支持部3の再利用をより容易にすることができる。
上述した構成を有するインプリントモールド用基板1は、薄板部2及び支持部3が接合部4を介して接合した構成を有することで、支持部3の中空部30とその開口一端31を閉塞する薄板部2(対向面2B)により、有底略円筒状の凹部8が形成される。そして、支持部3の中空部30は、容易な加工技術により高精度に形成可能であり、薄板部2の対向面2Bは、高い平坦度を有する面として構成可能であるため、本実施形態に係るインプリントモールド用基板1は、高精度の凹部8を有することになる。また、接合部4に接する光触媒層5を有することで、インプリントモールド用基板1から作製されたインプリントモールドを廃棄するときに、当該光触媒層5に光を照射するだけで容易に薄板部2及び支持部3を分離することができ、少なくとも支持部3を再利用することができる。
〔インプリントモールド用基板の製造方法〕
上述した構成を有するインプリントモールド用基板1は、以下のようにして製造することができる。図6は、本実施形態に係るインプリントモールド用基板1の製造工程を断面図にて概略的に示す工程フロー図である。
図6(A)に示すように、まず、薄板部2及び支持部3を準備し、支持部3の主面3A上に遮光層6及び光触媒層5をこの順に形成し、光触媒層5の上に接合部4としての粘着剤層を形成する。なお、薄板部2の対向面2Bにおける接合部4と当接する部分には、必要に応じて表面処理(粗面化処理、密着層形成処理等)が施されている。また、薄板部2の主面2A上には、予めハードマスク層7(図3(B)参照)が形成されていてもよい。
支持部3は、所定形状の基材を準備し、当該基材の略中心に中空部30を形成することにより得られる。中空部30の形成方法は、特に限定されるものではなく、例えば、切削器具等を用いて機械的に加工する方法であってもよいし、中空部30に相当する開口部を有するレジストパターン等を形成してエッチングする方法であってもよい。
支持部3の主面3A上に遮光層6を設ける方法としては、例えば、遮光層6を構成する材料を用いたスパッタリング法等が挙げられる。また、遮光層6上に光触媒層5を設ける方法としては、例えば、光触媒層5を構成する材料を用いたスパッタリング法、真空蒸着法、熱分解スプレー法等が挙げられる。光触媒層5を構成する材料として酸化チタン(TiO2)を用いる場合、スパッタリング法により遮光層6上に非結晶型酸化チタン膜を形成した後、焼成により結晶構造を有する光触媒性酸化チタン膜(光触媒層5)を形成するのが好ましい。このようにして形成された結晶構造を有する光触媒性酸化チタン膜は、光触媒作用に優れる。
光触媒層5上に接合部4としての粘着剤層を設ける方法としては、例えば、スピンコート法、インクジェット法、ディスペンサー法、上記粘着性樹脂材料を揮発させて塗布する蒸着法等の任意の塗布方法が挙げられる。なお、支持部3と遮光層6との間に剥離層9(図5参照)を設ける場合、支持部3の主面3A上に剥離層9を形成し、当該剥離層9上に遮光層6を設ければよい。
次に、図6(B)に示すように、支持部3の開口一端31を薄板部2(対向面2B)にて閉塞するように、薄板部2の対向面2Bと支持部3の主面3Aとを、接合部4を介して接合する。これにより、本実施形態に係るインプリントモールド用基板1を製造することができる。
薄板部2と支持部3とを接合する方法としては、例えば、接合部4が熱硬化性粘着剤により構成される場合、薄板部2と、支持部3の主面3Aに設けられた接合部4とを貼り合わせ、熱を印加する方法等が挙げられる。
〔インプリントモールド〕
続いて、上述した本実施形態に係るインプリントモールド用基板1から作製され得るインプリントモールドについて説明する。図7は、本実施形態におけるインプリントモールド10を示す切断端面図であり、図8は、当該インプリントモールド10を示す平面図である。
図7に示すように、本実施形態におけるインプリントモールド10は、本実施形態に係るインプリントモールド用基板1の薄板部2の主面2A上に、所望の微細凹凸パターン11が形成されてなる。微細凹凸パターン11の形状、寸法、アスペクト比等は、インプリントモールド10の用途に応じて適宜設定され得る。
図8に示すように、インプリントモールド10の平面視において、微細凹凸パターン11の形成されている領域PAは、支持部3の中空部30の外形により規定される領域HAに包含されている。したがって、当該インプリントモールド10を用いたインプリント処理時において、インプリントモールド10の薄板部2のうち、微細凹凸パターン11の形成されている領域PAを少なくとも湾曲させることができるため、被転写材としてのインプリント樹脂から容易に剥離することができる。
上記インプリントモールド10は、薄板部2と支持部3とが接合部4を介して接合された構成を有し、接合部4に接する光触媒層5を有するため、例えば、複数回の使用により破損したときなど、当該インプリントモールド10を廃棄するときに、光触媒層5に所定の光を照射することで、接合部4を構成する粘着性樹脂材料を分解し、薄板部2と支持部3とを容易に分離することができ、少なくとも支持部3を再利用することができる。
また、上記インプリントモールド10は、光触媒層5に対する光を遮光可能な遮光層6を有しているため、光インプリント処理時に光触媒層5に所定の光が照射されることがなく、薄板部2と支持部3とを分離させることなく光インプリント処理に用いることができる。
〔インプリントモールドの製造方法〕
上記インプリントモールド10は、例えば下記のようにして製造することができる。図9は、本実施形態におけるインプリントモールドの製造方法の各工程を断面図にて示す工程フロー図である。
本実施形態におけるインプリントモールド10の製造方法においては、まず、金属クロム膜等のハードマスク層7が薄板部2の主面2Aに設けられているインプリントモールド用基板1を用意し、微細凹凸パターン11に対応するレジストパターン60を当該主面2Aの微細凹凸パターン11を形成する領域PA上に形成する(図9(A)参照)。
なお、ハードマスク層7の厚さは、インプリントモールド用基板1の薄板部2を構成する材料に応じたエッチング選択比、インプリントモールド10における微細凹凸パターン11のアスペクト比等を考慮して適宜設定され得る。
レジストパターン60を構成するレジスト材料としては、特に限定されるものではなく、従来公知のエネルギー線感応型レジスト材料(例えば、電子線感応型レジスト材料、紫外線感応型レジスト材料等)等を用いることができる。
レジストパターン60を形成する方法としては、特に限定されるものではない。例えば、電子線リソグラフィー法やフォトリソグラフィー法等によりレジストパターン60を形成することができる。
続いて、レジストパターン60をマスクとして用いてハードマスク層7をドライエッチング法によりエッチングし、ハードマスクパターン71を形成する(図9(B)参照)。そして、当該ハードマスクパターン71をマスクとして用いてインプリントモールド用基板1の薄板部2の主面2Aをエッチングし、微細凹凸パターン11を形成する。
最後に、ハードマスクパターン71を除去する(図9(C)参照)。これにより、薄板部2の主面2Aに微細凹凸パターン11が形成されてなり、高精度の凹部8を有するインプリントモールド10を製造することができる。
なお、レジストパターン60を形成する際にフォトリソグラフィー法を用いる場合、露光光源側から見たときに、インプリントモールド用基材1の光触媒層5に露光光が照射されないようにする必要がある。例えば、フォトリソグラフィー法によりレジストパターン60を形成する際に用いられるフォトマスクとして、光触媒層5への露光光を遮光可能な遮光部を有するものを使用すればよい。
また、電子線リソグラフィー法やフォトリソグラフィー法によりレジストパターン60を形成する場合には、露光光源側から見たときに、薄板部2はたわみを持たず一様に平坦であることがより好ましい。そのため、薄板部2は大きさに応じた厚みを有するか、あるいは張力を有するように支持部3に貼り付けられていることが好ましい。
〔インプリント方法〕
次に、上記インプリントモールド10を用いたインプリント方法について説明する。図10〜12は、本実施形態におけるインプリント方法の各工程を断面図により示す工程フロー図である。
本実施形態においては、まず、上記インプリントモールド10を用意し、被転写基板50上に、インクジェット方式による樹脂塗布装置を用いてインプリント樹脂(紫外線硬化性樹脂)60を離散的に滴下する(図10(A)参照)。なお、本実施形態においては、被転写基板50として、基材51の一の面51Aから突出する凸構造部52と、その対向面51Bに位置する凹部53とを有し、凸構造部52の上面52Aがパターンの形成される面として構成されるものを例に挙げて説明するが、このような態様に限定されるものではなく、一般にパターンが形成され得る基板であれば、被転写基板50として用いることが可能である。
被転写基板50上におけるインプリント樹脂60の滴下位置は、インプリントモールド10の微細凹凸パターン11の形状や寸法等に応じたインプリント樹脂60の流動性等を考慮して適宜設定され得る。
次に、インプリントモールド10の微細凹凸パターン11と被転写基板50上のインプリント樹脂60とを接触させ、被転写基板50上にインプリント樹脂60を展開させる(図10(B)参照)。
そして、インプリントモールド10の微細凹凸パターン11内にインプリント樹脂60が十分に充填された後、インプリントモールド10の薄板部2の対向面2B側から薄板部2を介してインプリント樹脂60に光(紫外線)UVを照射して当該インプリント樹脂60を硬化させる(図11(C)参照)。このとき、インプリントモールド10においては、光触媒層5に光(紫外線)UVが照射されないような位置に遮光層6が設けられているため、光触媒層5に当該光(紫外線)UVが照射されることがない。よって、光触媒層5に光(紫外線)UVが照射されることによる接合部4の腐食・分解・変性等が生じることなくインプリント処理を実施することができる。
最後に、硬化後のインプリント樹脂60とインプリントモールド10とを剥離する(図11(D)参照)。このとき、インプリントモールド10は、薄板部2の対向面2Bと支持部3の中空部30とにより構成される、高精度の凹部8を有するため、剥離時に薄板部2を効果的に湾曲させることができる(図11(D)参照)。そのため、本実施形態によれば、硬化後のインプリント樹脂60からインプリントモールド10を容易に剥離することができるという効果を奏する。このようにして、上記インプリントモールド10を用いたインプリント処理により、被転写基板50上にインプリント樹脂60からなる微細凹凸パターン61を形成することができる(図12(E)参照)。
〔インプリントモールドの再生方法〕
続いて、上記インプリントモールド10の再生方法について説明する。図13は、本実施形態におけるインプリントモールドの再生方法の各工程を断面図により示す工程フロー図である。
本実施形態においては、まず、使用済みのインプリントモールド10の光触媒層5に特定のバンドギャップ以上のエネルギーを有する波長の光Lを照射する(図13(A)参照)。上記波長の光Lを光触媒層5に照射することにより、接合部4と光触媒層5との界面において光触媒反応が起こり、接合部4を構成する粘着性樹脂材料の腐食・分解・変性が生じる。このとき、接合部4と遮光層6との間に剥離層9(図5参照)が設けられていれば、接合部4を薄板部2側に残存させるようにして薄板部2と支持部3とを容易に分離することができる。
次に、必要に応じて支持部3の主面3Aに残存する接合部4の除去、主面3Aの清浄化、光触媒層5や遮光層6の再形成等を行い、別途新たな薄板部2’を準備し、支持部3の開口一端31を当該薄板部2’にて閉塞するように、当該薄板部2’の対向面2B’と支持部3の主面3Aとを、接合部4’としての粘着剤層を介して接合する。(図13(B)参照)。これにより、使用済みのインプリントモールド10をインプリントモールド用基板1として再生することができる。
なお、使用済みのインプリントモールド10の支持部3の、薄板部2が接合していた主面3Aに対向する面3Bに、遮光層6、光触媒層5及び接合部4をこの順に形成し、別途新たな薄板部2’を接合して、インプリントモールド用基板1として再生してもよい。
薄板部2’の主面2A’には、金属クロム膜等により構成されるハードマスク層7(図3(B)参照)が形成されていてもよい。薄板部2と支持部3とを、接合部4を介して接合する方法としては、上記インプリントモールド用基板1の製造方法において説明した方法と同様の方法(図6(B)参照)を採用することができる。
そして、再生されたインプリントモールド用基板1を用いて、図9に示す方法によりインプリントモールド10を製造することで、インプリントモールド10を再生することができる。
上述のようにして、本実施形態におけるインプリントモールドの再生方法によれば、少なくとも支持部3を再利用することができ、使用済みのインプリントモールド10を再生することができる。
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
上記実施形態において、図14に示すように、薄板部2の対向面2Bにおける接合部4との接触部位にガス透過性構造22を有していてもよい。溶剤を含む粘着剤組成物を接合部4として用いて薄板部2と支持部3とを接合する場合、当該接合部4に含まれ得る溶剤を十分に除去する必要がある。接合部4内に溶剤が残存してしまうと、当該接合部4内に気泡(ボイド)が生じやすくなり、それにより、インプリントモールド用基板1やそれから作製されるインプリントモールド10の強度や薄板部2の主面2Aの平坦性等に悪影響を及ぼすおそれがある。一方、薄板部2と支持部3との間に介在する接合部4としては、極めて薄いものが要求される。粘着剤組成物を硬化させてなる接合部4が厚いと、粘着剤組成物の硬化時(薄板部2と支持部3との接合時)に薄板部2や支持部3に内部応力が生じやすく、薄板部2の主面2Aの平坦性に悪影響を及ぼすおそれがあるためである。そのため、接合部4を極めて薄く形成することで、薄板部2と支持部3との間に介在する粘着剤組成物の外気への露出面積が極めて小さくなり、溶剤を揮発させて完全に除去するのが困難となる。しかしながら、上述したように、薄板部2の対向面2Bにおける接合部4との接触部位に、粘着剤組成物に含まれる溶剤の気化物が透過可能なガス透過性構造22を有することで、インプリントモールド用基板1の製造過程において、揮発した溶剤が当該ガス透過性構造22を介して、効果的に除去され得る。よって、溶剤を含む粘着剤組成物を硬化させてなる接合部4内に当該溶剤を残存させることがなく、当該接合部4内に気泡(ボイド)が生じ難いため、十分な強度を有し、薄板部2の主面2Aの平坦性の高いインプリントモールド用基板1とすることができる。
このようなガス透過性構造22としては、粘着剤組成物から揮発した溶剤が透過可能な構造である限り特に制限はない。例えば、薄板部2が石英ガラス基板により構成される場合、当該ガス透過性構造22としては、薄板部2の対向面2Bのうちの外縁部近傍の表面に形成された微細ピラー構造体や微細スリット構造体、当該外縁部近傍の表面に貼り合わされたガラスやSOG等により形成された多孔質膜等が挙げられる。薄板部2と支持部3との接合箇所に位置するガス透過性構造22が光を透過させる必要がないのであれば、例えば、赤外線よりも短波長の光を透過させない多孔質シリコン層を陽極化成法等により上記外縁部近傍の表面2Cに形成し、この多孔質シリコン層をガス透過性構造22として用いてもよいし、PDMS(ポリジメチルシロキサン)のように気体の溶解しやすい樹脂材料等からなる層を上記外縁部近傍の表面2Cに形成し、この層をガス透過性構造22として用いてもよい。
当該ガス透過性構造22におけるガス透過係数は、好適には1×10-16cm3・cm/cm2・s・Pa以上、特に好適には1×10-13cm3・cm/cm2・s・Pa以上である。なお、ガス透過性構造22におけるガス透過係数は、簡単には圧力センサー又はガスクロマトグラフィを用いて求めることができ、その端的な例として「JIS K 6275−1」を参照することができる。当該規格に従うならば、試験片によって高圧側セルと低圧側セルとに分割することが可能な試験セルを準備し、そこへ試験ガスを高圧側セルに大気圧又は加圧状態で導入することで求めることができる。なぜなら低圧側セルとの間に生じる圧力差で、試験ガスが試験片内部へ溶解した後、試験片内部の試験ガス濃度勾配によって拡散し、試験片界面から低圧側セルへ放散するからである。こうして試験片を透過するガス量は、低圧側セルの圧力上昇を測定する圧力センサー(圧力センサー法)、又は試験ガス量の増加を測定するガスクロマトグラフィ(ガスクロマトグラフィ法)によって求めることができる。
本実施形態においては、薄板部2の対向面2Bの外縁部近傍の表面の全面にガス透過性構造22が設けられていてもよいし、当該表面の一部の領域にガス透過性構造22が設けられていてもよい。例えば、図15(A),(B)に示すように、薄板部2の対向面2Bの外縁部近傍の表面2Cのうち、薄板部2の4辺のそれぞれに接するガス透過性構造22や、当該表面2Cの内縁部23を超えてさらに内側に連続するガス透過性構造22が設けられていてもよい。すなわち、ガス透過性構造22の一部が、支持部3の中空部30を介してインプリントモールド用基板1の外表面に露出するように設けられていてもよい。このように、当該表面2Cの一部の領域にガス透過性構造22が設けられている場合、ガス透過性構造22の設けられている領域の一部がインプリントモールド用基板1の外表面に露出し、当該ガス透過性構造22を介してインプリントモールド用基板1の外表面と接合部4との間が連続していることを要する。インプリントモールド用基板1の外表面と接合部4との間がガス透過性構造22を介して連続していないと、当該ガス透過性構造22が溶剤の流路として機能せず、粘着剤組成物から溶剤を十分に除去することができなくなるという問題が生じる。
薄板部2の対向面2Bの外縁部近傍の表面2C内の複数の独立した領域のそれぞれに、ガス透過性構造22が設けられている場合(例えば、図15(A)参照)において、隣接する2つの領域の間隔は、粘着剤組成物から揮発した溶剤が当該ガス透過性構造22を介して接合部4の外に十分に排出され得る程度に適宜設定されていればよい。
また、薄板部2の対向面2Bの外縁部近傍の表面2Cの平面視における総面積に対するガス透過性構造22の占める比率は、大きいほうが好ましい。しかし、薄板部2に接する接合部4の全面からガスが発生する可能性を考慮すると、ガス透過性構造22は、上記外縁部近傍の表面2Cの面内に可能な限り均一に存在するのが好ましい。よって、上記総面積に対するガス透過性構造22の占める比率は、30%以上であるのが好ましく、50%以上であるのがより好ましい。さらに、上記外縁部近傍の表面2Cの面内においてガス透過性構造22が存在する密度の分布が50%未満であるのが好ましく、30%未満であるのが好ましい。粘着剤組成物中の溶剤の含有量や、溶剤の物性等にも依存するものの、上記比率が30%未満又は上記密度分布が50%以上となると、粘着剤組成物から溶剤を十分に揮発させることができない、又はガスを接合部4の外に排出することができないおそれがある。
上記実施形態においては、接合部4と接するようにして光触媒層5が形成されているが、本発明はこのような態様に限定されるものではない。例えば、接合部4に光触媒が内在していてもよい。この場合において、支持部3の主面3A上に設けた遮光層6上に、光触媒を分散させてなる粘着性樹脂材料を塗布し(図6(A)参照)、支持部3の開口一端31を薄板部2(対向面2B)にて閉塞するように、薄板部2の対向面2Bと支持部3の主面3Aとを、接合部4を介して接合すればよい(図6(B)参照)。
上記実施形態においては、薄板部2の対向面2B側から主面2A側に向かって薄板部2の厚さ方向に進行する光(インプリント処理時に照射される光)が光触媒層5に照射されないような位置に遮光層6が設けられているが、本発明はこのような態様に限定されるものではなく、遮光層6が設けられていなくてもよい。この場合において、遮光層6が設けられていないインプリントモールド用基板1から作製されたインプリントモールド10を用いてインプリント処理を行う際に、インプリント処理時の照射光が光触媒層5に対して照射されないようにする必要がある。例えば、インプリント処理時に、インプリントモールド10と光源との間に、所定の開口部及び遮光部を有するマスクを介在させることで、インプリントモールド10の微細凹凸パターン11の形成されている領域PAには十分に光が照射されるが、上記マスクの遮光部により光触媒層5に対して光が照射されないようにすることができる。上記マスクは、インプリントモールド10とは別個の部品として使用されるものであってもよいし、インプリント装置内部に含まれるアパーチャーであってもよい。また、インプリント装置が、光触媒層5に対して光が照射されない構造又はこれを実現可能な部品を装着可能な機能を有していてもよい。
上記実施形態においては、支持部3の主面3A上に遮光層6、光触媒層5及び接合部4をこの順で形成し、薄板部2の対向面2Bで支持部3の開口一端31を閉塞するようにして薄板部2と支持部3とを接合してインプリントモールド用基板1を製造しているが、本発明はこのような態様に限定されるものではなく、支持部3の主面3A上に遮光層6及び光触媒層5をこの順で形成するとともに、薄板部2の対向面2Bの外縁部近傍の表面2C(薄板部2と支持部3とを重ね合わせたときの重ね合せ部)に接合部4としての粘着剤層を形成し、それらの薄板部2と支持部3とを接合してインプリントモールド用基板1を製造してもよい。
上記実施形態においては、薄板部2と支持部3とを、接合部4を介して接合してなるインプリントモールド用基板1の薄板部2の主面2A上に微細凹凸パターン11を形成することによりインプリントモールド10を製造しているが、本発明はこのような態様に限定されるものではない。例えば、主面2Aに微細凹凸パターン11が形成されてなる薄板部2と、支持部3とを準備し、当該薄板部2と支持部3とを、支持部3の開口一端31を薄板部2の対向面2Bで覆うようにして接合部4を介して接合することで、インプリントモールド10を製造してもよい。
本発明は、半導体基板等に微細凹凸パターンを形成するためにインプリントモールドを用いてナノインプリント工程を実施するような微細加工技術分野において有用である。
1…インプリントモールド用基板
2,2’…薄板部
2A…主面
2B…対向面
3…支持部
3A…主面
31…開口一端
4,4’…接合部
5…光触媒層
6…遮光層
8…凹部
9…剥離層
10…インプリントモールド
11…微細凹凸パターン

Claims (10)

  1. 微細凹凸パターンが形成され得る主面及び当該主面に対向する対向面を有する薄板部と、
    前記薄板部の前記対向面側を支持する、中空筒状の支持部と、
    前記薄板部及び前記支持部の間に介在し、前記支持部の開口一端を前記対向面で閉塞するようにして前記薄板部及び前記支持部を接合する接合部と
    を備え、
    前記支持部と前記接合部との間又は前記接合部内に、光触媒が存在し、
    前記接合部は、前記光触媒の作用により分解又は変性され得る粘着剤組成物の硬化物により構成され、
    前記薄板部の前記対向面側から前記主面側に向かって前記薄板部の厚さ方向に進行する光が前記光触媒に照射されないような位置に、遮光層が設けられていることを特徴とするインプリントモールド用基板。
  2. 前記遮光層は、前記光触媒と前記支持部との間に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のインプリントモールド用基板。
  3. 前記遮光層は、前記支持部に内在されていることを特徴とする請求項1に記載のインプリントモールド用基板。
  4. 前記遮光層は、前記支持部の内周壁に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のインプリントモールド用基板。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載のインプリントモールド用基板の前記薄板部の前記主面に、微細凹凸パターンが形成されてなることを特徴とするインプリントモールド。
  6. 主面及び当該主面に対向する対向面を有する薄板部と、前記薄板部の前記対向面を支持する、中空筒状の支持部と、前記薄板部及び前記支持部の間に介在し、それらを接合する接合部とを備えるインプリントモールド用基板を製造する方法であって、
    前記支持部の開口一端を前記薄板部の対向面で閉塞するようにして前記薄板部と前記支持部とを重ね合わせたときの、前記薄板部及び/又は前記支持部における重ね合せ部に、粘着剤層を形成する工程と、
    前記粘着剤層と前記支持部との間に光触媒を介在させて、前記薄板部と前記支持部とを前記粘着剤層により接合する工程と、
    前記支持部の軸方向に沿って前記支持部側から前記薄板部側に向かって進行する光が前記光触媒に照射されないような位置に、遮光層を設ける工程と
    を含むことを特徴とするインプリントモールド用基板の製造方法。
  7. インプリントモールドを用いたインプリント方法であって、
    前記インプリントモールドは、微細凹凸パターンが形成されてなる主面及び当該主面に対向する対向面を有する薄板部と、前記薄板部の前記対向面側を支持する中空筒状の支持部と、前記薄板部及び前記支持部の間に介在し、前記支持部の開口一端を前記対向面で閉塞するようにして前記薄板部及び前記支持部を接合する接合部とを備え、前記支持部と前記接合部との間又は前記接合部内に、光触媒が存在し、前記接合部は、前記光触媒の作用により分解又は変性され得る粘着剤組成物の硬化物により構成されており、
    前記インプリント方法は、
    前記インプリントモールドを被加工基材の主面上に供給されたインプリント樹脂に接触させ、前記インプリント樹脂を前記被加工基材の主面上に展開する工程と、
    前記被加工基材の主面上に展開した前記インプリント樹脂に光を照射することで前記インプリント樹脂を硬化させる工程と、
    前記硬化したインプリント樹脂から前記インプリントモールドを剥離する工程と
    を含み、
    前記硬化させる工程において、前記インプリントモールドの前記薄板部の前記対向面側から前記インプリントモールドを介して、前記光触媒に前記光が照射されないように遮光して前記インプリント樹脂に前記光を照射することを特徴とするインプリント方法。
  8. 前記インプリント樹脂が、光硬化性樹脂であることを特徴とする請求項7に記載のインプリント方法。
  9. 前記インプリントモールドは、前記薄板部の前記対向面側から前記主面側に向かって前記薄板部の厚さ方向に進行する光が前記光触媒に照射されないような位置に、遮光層を備えることを特徴とする請求項7又は8に記載のインプリント方法。
  10. 請求項5に記載のインプリントモールドを再生する方法であって、
    前記支持部から、前記微細凹凸パターンを有する前記薄板部を分離する工程と、
    前記薄板部が分離された前記支持部の開口一端を新たな薄板部で閉塞するようにして前記新たな薄板部と前記支持部とを重ね合わせたときの、前記新たな薄板部及び/又は前記支持部における重ね合せ部に、粘着剤層を形成する工程と、
    前記新たな薄板部と前記支持部とを前記粘着剤層で接着させる工程と
    を含み、
    前記分離する工程において、前記遮光層により光が遮られないように前記光触媒に前記光を照射して、前記支持部から前記薄板部を分離することを特徴とするインプリントモールドの再生方法。
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