以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しつつ説明する。
実施の形態の磁性材料は、Fe、CoおよびNiからなる第1の群より選択される少な
くとも一種類の磁性金属を含む平均粒径10nm以上90nm以下の複数の磁性金属粒子
と、磁性金属粒子の周囲に配置され、100℃未満のガラス転移温度を有する第1の樹脂
と、第1の樹脂の周囲に配置され、100℃以上のガラス転移温度を有し、磁性材料の内
部から外部に向けて体積充填率が低下する第2の樹脂と、を備える磁性材料であり、磁性
材料が、磁性金属粒子を含む第1の樹脂を有する複数の複合磁性粒子を備え、複合磁性粒
子の平均粒径が10μm以上300μm以下である。
図1は、本実施の形態の磁性材料の模式断面図である。
第1の樹脂30は、磁性金属粒子10の周囲に配置され、100℃未満のガラス転移温度を有する。第1の樹脂30としては、特に限定されないが、たとえば、ポリエステル系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリビニル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリビニルブチラール(PVB)樹脂、ポリウレタン樹脂、セルロース系樹脂、ABS樹脂、ニトリル−ブタジエン系ゴム、スチレン−ブタジエン系ゴムが好ましく用いられる。この中で特に好ましい樹脂は、ポリビニル系樹脂において、少なくともブチラールユニットを有するポリビニルブチラール樹脂である。
第1の樹脂30に用い得るポリビニル系樹脂は、一般的にポリ酢酸ビニルより鹸化反応で得られるポリビニルアルコールから、さらにアセタール化反応により、ポリマーを構成するユニットの少なくとも1部がアセタール化されたポリマーを用いる。アセタール化反応工程は、ポリビニルアルコールとアルデヒドとを酸触媒存在下でアセタール化させる工程である。ここで用いられるアルデヒドは、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、パラアセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n−ブチルアルデヒド、ヘキシルアルデヒド、ヘプチルアルデヒド、2−エチルヘキシルアルデヒド等の脂肪族アルデヒド類や、シクロヘキシルアルデヒド等の脂環族アルデヒド類や、フルフラール、チオフェン−2−カルバルデヒド等の複素環族アルデヒド類や、ベンズアルデヒド、2−メチルベンズアルデヒド、3−メチルベンズアルデヒド、4−メチルベンズアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、β−フェニルプロピオンアルデヒド等の芳香族アルデヒド類、またこれらに対し、ノルボルニル、シクロペンタジエニル、アダマンチル等の脂環族を置換基として備えたアルデヒド類等を用いることができる。また、上記アルデヒドは単独で使用しても良いし、必要に応じ2種以上を併用しても良い。そして、上記アルデヒドのなかでも、好適には、少なくともブチルアルデヒドを用いて、分子鎖中にブチラールユニットを有するポリマーとすることが望ましい。
この時、残存するビニルアルコールユニットは、ポリマーユニット中30unit%以下であることがさらに望ましい。ビニルアルコールユニットが30unit%を超えると、吸水率や誘電率が大きくなり、磁性材料100の特性、信頼性が損なわれるので好ましくないためである。
第2の樹脂40は、第1の樹脂30の周囲に配置され、100℃以上のガラス転移温度を有する。第2の樹脂40としては、特に限定されないが、エポキシ系樹脂、フェノール樹脂、アミド系樹脂、イミド系樹脂、あるいはそれらの共重合体が用いられる。この中で特に好ましい樹脂は、エポキシ系樹脂である。なお、第2の樹脂40が磁性金属粒子10の周囲に配置されている磁性材料100であっても、好ましく用いることができる。
第2の樹脂40に用い得るエポキシ系樹脂は、エポキシ樹脂、硬化剤、硬化促進剤からなる組成物である。このうちエポキシ樹脂は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有しているエポキシ樹脂であれば特に限定されない。
具体的には例えば、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトール系のノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレンジオール型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、トリまたはテトラ(ヒドロキシフェニル)アルカンから誘導されるエポキシ化合物、ビスヒドロキシビフェニル系エポキシ樹脂、ジヒドロキシジフェニルメタン系エポキシ樹脂、フェノールアラルキル樹脂のエポキシ化物、複素環式エポキシ樹脂、芳香族ジグリシジルアミン化合物などを用いることができる。
これらのエポキシ樹脂は2種以上を混合して用いても良い。なお、これらのエポキシ樹脂は常温で液状であることが好ましい。また、上述したエポキシ樹脂のうちのビスフェノールF型エポキシ樹脂を用いた場合には、樹脂組成物の粘度が下がり、かつ貯蔵安定性にも優れていることから、エポキシ樹脂を混合する場合にはビスフェノールF型エポキシ樹脂をエポキシ樹脂マトリクスの少なくとも1つとして用いることが好ましい。
樹脂のガラス転移温度は、たとえば、エポキシ樹脂の場合、架橋度を増加することにより高くすることができる。その他の公知のガラス転移温度制御方法によりガラス転移温度が制御された樹脂は、いずれも本実施形態において好ましく用いることができる。
本実施の形態において用いられる硬化剤は、特に制限されるものではないが、樹脂組成物の流動性を考慮した場合、酸無水物硬化剤が最も好ましい。具体的には例えば、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水メチルハイミック酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、ドデセニル無水コハク酸などを用いることができる。
これらの酸無水物は2種以上を混合して用いても良い。なお、これらの酸無水物は常温で液状であることが好ましい。また、これらの酸無水物硬化剤と共に、流動性や貯蔵安定性を損なわない範囲で、他の硬化剤を併用することができる。
他の硬化剤としては、具体的には例えば、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水ピロメリット酸、無水トリトメット酸、エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、無水ナジック酸などの常温で固体の酸無水物;フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、t−ブチルフェノールノボラック樹脂、ノニルフェノールクレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールA、ナフトール系ノボラック樹脂などのノボラック型フェノール樹脂およびこれらのアリル基導入化合物;ポリパラオキシスチレン;2,2´−ジメトキシ―p―キシレンとフェノールモノマーとの縮合重合化合物などのフェノールアラルキル樹脂;ジシクロペンタジエン―フェノール重合体;トリス(ヒドロキシフェニル)アルカンなどの多官能フェノール樹脂;テルペン骨格を有するフェノール樹脂などを用いることができる。
これらの硬化剤は2種以上を用いても良い。硬化剤の配合量は特に制限されるものではないが、エポキシ樹脂と硬化剤との当量比(硬化剤の反応基/エポキシ基)を0.5〜1.5の範囲にすることが望ましい。この当量比が0.5未満では硬化反応が十分に起こりにくくなり、一方、1.5を超えると硬化物の物性、特に耐湿性が低下する恐れがあるからである。なお、当量比のより好ましい範囲は0.8〜1.2である。
本実施の形態において用いられる硬化促進剤は、60℃以上の温度で触媒活性を示す潜在性触媒であれば任意の化合物を用いることができ、特に制限されない。触媒活性を示す温度が60℃未満であると、樹脂組成物の貯蔵安定性が著しく低下してしまい長期間安定に保存できなくなる。これに加えて60℃未満であると、磁性材料100に被覆する工程において、樹脂の流動中に粘度が上昇して成形性が損なわれる。
このような潜在性の硬化促進剤としては、具体的には例えば、ジシアンジアミド、高融点イミダゾール化合物、有機酸ジヒドラジド類、アミノマレオニトリル、メラミンおよびその誘導体、ポリアミン類などの高温でエポキシ樹脂に溶解して活性を示す高融点分解型触媒;アミンイミド化合物、エポキシ樹脂に可溶な第3アミン塩やイミダゾール塩などの高温において分解して活性化する塩基性触媒;3フッ化ホウ素のモノエチルアミン塩に代表されるルイス酸塩やルイス酸錯体、ブレンステッド酸の脂肪族スルホニウム塩に代表されるブレンステッド酸塩などの高温解離型のカチオン重合触媒;触媒をモレキュラシーブやゼオライトのような空孔を有する化合物に吸着させた吸着型触媒などを用いることができる。
また、第1の樹脂30は、炭化水素鎖が主骨格となるポリビニル系高分子化合物であり、第2の樹脂40は、エポキシ系樹脂であることが、耐環境性および生産性の観点から特に望ましい。
また、第1の樹脂30は、ポリビニル骨格内に少なくともブチラールユニットを含んでなるポリビニルブチラールであり、第2の樹脂40は、エポキシ系樹脂であることが、耐環境性および生産性の観点から特に望ましい。
第1の樹脂30のガラス転移温度は100℃未満、第2の樹脂40のガラス転移温度は100℃以上のものとする。なお、ガラス転移温度の分析は、たとえば、示差走査熱量測定(Differential scanning calorimetry)により好ましく行うことができる。ここで、第2の樹脂40のガラス転移温度は、200℃未満であることが好ましい。これは、あまり第2の樹脂40の温度が高いと磁性材料自体が硬くなりすぎ、脆くなるためである。
第1の樹脂および第2の樹脂は、各樹脂間のガラス転移温度の差が30℃以上となるようにそれぞれの樹脂を用いることが好ましい。より好ましくは、各樹脂間のガラス転移温度の差が50℃以上となるように、それぞれの樹脂を用いることである。
第2の樹脂40の体積充填率は、磁性材料の内部から外部に向けて低下するものとする。さらに、第2の樹脂40の体積充填率は、磁性材料の表面で増加することが好ましい。
なお、磁性材料の表面106の一部においては、製造の過程で第2の樹脂40が磁性材料の表面106の一部で除去されて、第2の樹脂の体積充填率がその周囲に比べて極端に低い領域が形成される場合がある。しかしかかる領域は一般に小さいため、磁性材料100全体の特性に大きな効果を与えるものではない。
樹脂の体積充填率の測定は、エネルギー分散型X線分光法(TEM−EDX:Transmission Electron Microscope−Energy Dispersive X−ray Fluorescence Spectroscopy)、電子エネルギー損失分光法(EELS:Electron Energy−Loss Spectroscopy)、ガスクロマトグラフ質量分析(GC−MASS、Gas Chromatograph Mass Spectroscopy)により好ましくおこなうことができる。特にEELSやガスクロマトグラフ質量分析は軽元素の分析感度が良いため、本実施形態において好ましく用いられる樹脂に含まれる元素を感度良く分析できる。
また、たとえばポリビニルブチラールの場合、体積充填率の測定は、たとえばアセトンなどの有機溶媒により磁性材料100からポリビニルブチラールを抽出し、たとえば核磁気共鳴(NMR:Nuclear Magnetic Resonance)や赤外吸収分析(IR:Infrared absorption spectrometry)によりポリビニルブチラール中のブチル基を検出することにより、磁性材料100がポリビニルブチラールを含有していることを検出できる。よって、この手法により、ポリビニルブチラールの体積充填率を求めることが可能である。
さらに、たとえばエポキシ系樹脂の場合は、たとえば熱分解ガスクロマトグラフィー質量分析法(Py−GC/MS:Pyrolysis Gas Chromatography Mass Spectroscopy)によりエポキシ系樹脂中の芳香環を検出することにより、磁性材料100がエポキシ系樹脂を含有していることを検出できる。よって、この手法により、エポキシ系樹脂の体積充填率を求めることが可能である。
図1に示された本実施の形態の磁性材料100は、たとえば、そのままシート状の電波吸収体として用いることができる。
図2は、本実施の形態の磁性金属粒子の模式断面図である。
磁性金属粒子10は、コア部12と、コア部を覆う被覆層20と、を有する。ここで被覆層20は、少なくとも酸化物層21を有する。被覆層20は、さらに炭素含有材料層22を有していても良い。ただし、磁性金属粒子10の形態はこれに限定されず、様々な形態をとり得る。炭素含有材料層22は、コア部10同士が接触しないように酸化物層21が配置されている場合には、その一部を省略することも可能である。
コア部12は、第1の群より選択される少なくとも一種類の磁性金属を含む。ここで、本実施の形態においては、Fe、Co、およびNiをそれぞれ単体として用いることができる。さらに、Fe、CoおよびNiを含む合金であっても、好ましく用いることができる。特にFe基合金、Co基合金、FeCo基合金は、高い飽和磁化を実現できるために好ましく用いることができる。
Fe基合金は、第2成分としてNi、Mn、Cuなどを含むことができる。Fe基合金の例は、FeNi合金、FeMn合金、FeCu合金などである。Co基合金は、第2成分としてNi、Mn、Cuなどを含むことができる。Co基合金の例は、CoNi合金、CoMn合金、CoCu合金などである。FeCo基合金は、第3成分としてNi、Mn、Cuなどを含むことができる。かかるFeCo基合金の例は、FeCoNi合金、FeCoMn合金、FeCoCu合金などである。これらの第2成分および第3成分は、磁気損失を低下させて高周波磁気特性を向上させるために効果的な成分である。
磁性金属の中でも、FeCo基合金は高い飽和磁化を有するため好ましく用いられる。FeCo中のCo量は、熱的安定性および耐酸化性と2テスラ以上の飽和磁化を満足させる点から10原子%以上50原子%以下にすることが好ましい。更に好ましいFeCo中のCo量は、より飽和磁化を高める観点から20原子%以上40原子%以下の範囲である。
コア部12は、さらに、第2の群より選択された少なくとも一種類の金属を、好ましく含むことができる。これにより、この磁性金属粒子10を用いた磁性材料100を高透磁率化できる。また、第2の群の金属の酸化物は、標準生成ギブスエネルギーが小さく、酸化し易い。従って磁性金属粒子10の表面付近にある第2の群の元素が酸化物層21を形成しやすい。また、酸化物層21に第2の群の元素が含まれることにより、得られる磁性材料100の電気的絶縁性が安定化する。
第2の群より選択された金属のうちAlおよびSiは、Fe、CoおよびNiと固溶し易く、磁性金属粒子10の熱的安定性の向上に寄与するため、好ましく用いることができる。特にAlは、熱的安定性および耐酸化性が高くなるため、好ましく用いることができる。
また、第2の群に属する金属に、別の種類の第2の群に属する金属を添加する事によって、さらに特性を向上させる事が可能である。たとえば、希土類元素のような活性金属元素は、磁性材料100の高周波透磁率や熱的安定性、耐酸化性等の諸特性を更に向上できるため、好ましく用いることができる。例えば、AlもしくはSiを少なくとも1つ含む元素に、Yなどの希土類元素を添加する事が好ましい。
あるいは、第2の群に属する金属の価数と異なる、別の種類の第2の群に属する添加金属は、同様の効果が得られるため、好ましく用いることができる。さらに、第2の群に属する金属の原子半径より大きな原子半径を有する、別の種類の第2の群に属する添加元素も、同様の効果が得られることから、好ましく用いることができる。
磁性金属粒子10に含まれる第2の群の金属の含有量は、第1の群の磁性金属の量に対して、0.001質量%以上20質量%以下であることが好ましい。第2の群の金属の含有量が0.001質量%以下では、含有量が少なすぎて上記の効果が得られない。第2の群の金属の含有量が20質量%を超えると、磁性金属粒子10の飽和磁化を低下させるおそれがある。高い飽和磁化と固溶性の観点から、より好ましい量は、1質量%以上10質量%以下である。
コア部12は、多結晶、単結晶のいずれの形態でもよいが、単結晶であることが好ましい。単結晶を含む磁性金属粒子10を用いた複合部材を磁性材料100に用いる際、磁化容易軸を揃えることが可能になって磁気異方性を制御することができる。従って、多結晶を含む磁性金属粒子10を含有する磁性材料100に比べて高周波特性を向上させることができる。
磁性金属粒子10に含まれる第1の群の磁性金属または第2の群の金属の組成分析は、例えば誘導結合プラズマ(ICP:Inductively coupled plasma)発光分析、TEM−EDX)、X線光電子分光法(XPS:X−ray Photoelectron Spectroscopy)、二次イオン質量分析法(SIMS:Secondary Ion Mass Spectroscopy)などの方法で行うことができる。ICP発光分析によれば、弱酸などにより溶解した磁性金属粒子10の部分と、アルカリや強酸などにより被覆層20が溶解した残留物、および粒子全体との分析結果を比較することにより、磁性金属粒子10の組成を確認できる。また、TEM−EDXによれば電子ビームを磁性金属粒子10または被覆層20に絞って照射し、各部位の構成元素比を定量することができる。更に、XPSによればコア部10または被覆層20を構成する各元素の結合状態を調べることもできる。
磁性金属粒子10に含まれる第1の群に属する成分に対する、第2の群に属する成分の固溶状態は、X線回折(XRD:X−ray Diffraction)で測定した格子定数から判断できる。例えば、FeにAlや炭素が固溶すると、Feの格子定数は固溶量に応じて変化する。何も固溶していないbcc−Feの場合、格子定数は理想的には0.286nm(2.86オングストローム)程度であるが、Alが固溶すると格子定数は大きくなり、5at%程度のAlの固溶で格子定数は0.0005〜0.001nm(0.005〜0.01オングストローム)程度大きくなる。10at%程度のAl固溶では、0.001〜0.002nm(0.01〜0.02オングストローム)程度大きくなる。また炭素がbcc−Feに固溶しても格子定数は大きくなり、0.02質量%程度の炭素固溶で0.0001nm(0.001オングストローム)程度大きくなる。この様に、磁性金属粒子10のXRD測定を行うことによって、磁性金属の格子定数を求め、その大きさによって固溶しているかどうか、またどの程度固溶しているのかを容易に判断できる。また、固溶しているかどうかはTEMによる粒子の電子線回折パターンからも確認できる。
磁性金属粒子10は、粒度分布での平均粒径が1nm以上1000nm以下、好ましくは1nm以上100nm以下、さらに好ましくは10nm以上90nm以下であることが望ましい。平均粒径を10nm未満にすると、超常磁性が生じて得られる複合部材の磁束量が低下するおそれがある。一方、平均粒径が1000nmを超えると、得られる複合部材の高周波領域で渦電流損が大きくなり、目的とする高周波領域での磁気特性が低下するおそれがある。磁性金属粒子10において、粒径が大きくなると、磁気構造としては単磁区構造よりも多磁区構造の方がエネルギー的に安定になる。この時、多磁区構造の磁性金属粒子10は単磁区構造のそれに比べて得られる複合部材の透磁率の高周波特性が低下する。
このようなことから、磁性金属粒子10を高周波用磁性部材として使用する場合は、単磁区構造を有する磁性金属粒子10として存在させることが好ましい。単磁区構造を保つ磁性金属粒子10の限界粒径は、90nm程度以下であるため、その磁性金属粒子10の平均粒径は90nm以下にすることが好ましい。以上の点から、磁性金属粒子10は平均粒径が1nm以上1000nm以下、好ましくは1nm以上100nm以下、さらに好ましくは10nm以上90nm以下であることが望ましい。
磁性金属粒子10の平均粒径は、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscopy)または透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscopy)観察によって得られた写真から10個の磁性金属粒子10の粒径を求めて平均化することにより求めることができる。ここで粒径は、個々の磁性金属粒子10の最も長い対角線と最も短い対角線を平均したものとする。なお、被覆層20の厚みは磁性金属粒子10の粒径に含まないものとする。
被覆層20は、コア部12の少なくとも一部を被覆するものである。被覆層20は、少なくとも、酸化物層21を含む。被覆層20は、さらに炭素含有材料層22を含んでいても良い。酸化物層21と炭素含有材料層22の形態は特に限定されないが、酸化物層21がコア部12に密着した形態が好ましい。
図2(a)と図2(b)は、それぞれ被覆層20の形態が異なる磁性金属粒子10である。具体的には、図2(a)に用いられた磁性金属粒子10は、後述する磁性材料100の製造方法の(3)酸化工程において、酸化物層21が磁性金属粒子10と炭素含有材料層22との界面で形成されたものである。また、図2(b)に用いられた磁性金属粒子10は、後述する磁性材料100の製造方法の(3)酸化工程において、炭素含有材料層22が部分的に酸化分解して酸化物層21が形成されたものである。なお、後述する、磁性金属粒子集合体100の製造方法において必要に応じて採用される、(4)脱酸素工程がおこなわれた場合等には、炭素含有材料層22が除去されることがある。
酸化物層21は、第2の群より選択される少なくとも一種類の金属を含む。すなわち、コア部12と酸化物層21は、どちらも第2の群より選択される少なくとも一種類の金属を含む。酸化物層21は、コア部12の第2の群の元素を酸化させて形成された層であることが好ましい。また、磁性金属粒子の耐酸化性がより向上することから、酸化物層21における第1の群の磁性金属に対する第2の群の金属の割合が、コア部12のそれに比べて高いことが好ましい。
酸化物層21の厚さは、0.01〜5nmの範囲であることが好ましい。この範囲を上回ると、磁性金属の構成比が減少し、粒子の飽和磁化を低下させる恐れがある。また、この範囲を下回ると、酸化物層21による耐酸化性の安定化の効果を期待することはできない。
酸化物層21中の酸素量は、特に限定されるものではないが、磁性金属粒子10として酸素量を測定した際に、粒子全体に対して、酸素が0.5質量%以上10質量%であることが好ましい。さらに好ましい酸素量は1質量%以上10質量%以下、さらに好ましくは2質量%以上7質量%以下である。この範囲を上回ると、磁性金属の構成比が減少し、粒子の飽和磁化を低下させるおそれがある。また、この範囲を下回ると、酸化物層21による耐酸化性を低下させるおそれがある。
酸素量の定量方法は、例えば炭素含有材料層22が磁性粒子金属表面を被覆する場合は、Heガスなどの不活性雰囲気にてカーボン容器内に2〜3mgに秤量した測定試料を、助燃剤としてSnカプセル用いて、高周波加熱により2000℃程度に加熱して行う。酸素測定は、高温加熱により試料中の酸素とカーボン容器とが反応し、生成する二酸化炭素を検出する事で酸素量を算出できる。また、主鎖が炭化水素から成る有機化合物で磁性粒子を被覆する場合は、温度コントロールと燃焼雰囲気を変更することで、酸化物層21由来の酸素量のみを分離定量して行う。第1粒子集合体を占める酸素量が0.5質量%以下では被覆層20に占める酸化物層21の割合が少なくなり、この結果、耐熱性と熱的信頼性が劣る。第1粒子集合体を占める酸素量が10質量%以上の場合には、酸化物層21の剥離性が増す。
炭素含有材料層22としては、炭化水素ガス反応生成物および炭化物からなる第3の群より選択された少なくとも一種類の炭素材料を用いることができる。この層が存在することによって、コア部12の金属材料の酸化をより効果的に抑制することができ、耐酸化性が向上する。
炭素含有材料層22は、平均厚さが、0.1nm以上10nm以下、さらに好ましくは、1nm以上5nm以下の厚さを有することが好ましい。なお、ここで言う厚さとは、磁性金属粒子10の中心と外縁を結ぶ直線に沿った長さを言う。炭素含有材料層22の厚さを1nm未満にすると、耐酸化性が不十分になる。さらに、複合部材の抵抗が著しく低下して渦電流損失を発生し易くなり、透磁率の高周波特性を劣化するおそれがある。
一方、炭素含有材料層22の厚さが10nmを超えると、炭素含有材料層22で覆われた磁性金属粒子10を一体化して所望の部材を作製する際、酸化物層21の厚さ分だけ部材中に含まれる磁性金属の充填率が低下して、得られる複合部材の飽和磁化の低下、それによる透磁率の低下を招くおそれがある。
ここで、炭素含有材料層22の膜厚はTEM観察によって求めることが可能である。
炭化水素ガス反応生成物とは、磁性金属粒子10表面で、炭化水素ガスを分解して生成する材料を被膜として用いるものである。炭化水素ガスとしては、例えばアセチレンガス、プロパンガス、メタンガス等が挙げられる。この反応生成物は、確定的ではないが、炭素の薄膜を含有しているものと考えられる。この炭素含有材料層22としては、適度な結晶性を有するものであることが好ましい。
炭素含有材料層22の結晶性の評価は、具体的には、炭化水素気化温度で炭素含有材料層22の結晶性を評価する方法が有る。TG−MS(熱天秤・質量分析)等の装置を使い、大気圧下での水素ガスフロー下での分析により、炭化水素(例えば質量数16)の発生をモニターして、発生量がピークとなる温度より評価する。前述の炭化水素気化温度が、300℃〜650℃の範囲にある事が好ましく、さらに450〜550℃の範囲にあると良い。何故なら、炭化水素気化温度が650℃以上の場合は、炭素含有材料層22が緻密すぎて、酸化物層21の生成が妨げられる。また300℃以下では炭素含有材料層22の欠陥が多すぎて過度の酸化が進行する。
上記炭素含有材料層22は、炭化物であっても良い。この場合の炭化物は、磁性金属粒子10を形成する第1、または第2の元素群の炭化物をあげる事ができる。中でも炭化珪素、炭化鉄は安定な炭化物であるため、適度な熱的信頼性を有するため好ましい。
酸化物層21と炭素含有材料層22の割合は、酸化物層21と炭素含有材料層22の質量割合で1:20〜1:1の範囲にあることが好ましい。
磁性金属粒子10には、炭素原子、あるいは窒素原子が固溶されていても良い。
磁性金属粒子10は、球状でもよいが、大きいアスペクト比(例えば10以上)を持つ偏平状、棒状であってもよい。棒状には回転楕円体も含む。ここで、「アスペクト比」とは高さと直径の比(高さ/直径)を指す。球状の場合は、高さも直径と等しくなるためアスペクト比は1になる。偏平状粒子のアスペクト比は(直径/高さ)である。棒状のアスペクト比は(棒の長さ/棒の底面の直径)である。但し、回転楕円体のアスペクト比は(長軸/短軸)となる。なお、アスペクト比が1以上の磁性金属粒子10の粒径は、TEMあるいはSEM観察により求めたその磁性金属粒子10の高さと直径の平均、棒の長さと棒の底面の直径の平均、または長軸と短軸の平均とする。
アスペクト比を大きくすると、形状による磁気異方性を付与することができ、透磁率の高周波特性を向上させることができる。その上、磁性金属粒子10を一体化して所望の部材を作製する際に磁場によって容易に配向させることが可能になり、さらに透磁率の高周波特性を向上させることができる。また、アスペクト比を大きくすることによって、単磁区構造となるコア部の限界粒径を大きくする、例えば50nmを超える粒径にすることができる。球状の磁性金属粒子10の場合には単磁区構造になる限界粒径が50nm程度である。
アスペクト比の大きな偏平状の磁性金属粒子10では限界粒径を大きくでき、透磁率の高周波特性は劣化しない。一般に粒径の大きな粒子の方が合成し易いため、製造上の観点からアスペクト比が大きい方が有利になる。さらに、アスペクト比を大きくすることによって、磁性金属粒子10を用いて磁性材料100を製造する際、磁性金属粒子の体積充填率を大きくすることができる。このため、磁性材料100の体積当たり、質量当たりの飽和磁化を大きくすることができる。よって、結果として磁性材料100の透磁率も大きくすることが可能となる。
なお、第2の群より選択された少なくとも1種類の金属と被覆層20とのいずれか一方あるいはその両方を有しない磁性金属粒子10も、好ましく用いることができる。周波数の比較的低い電波の吸収に用いられる磁性材料100においては、粒径が比較的大きい磁性金属粒子10を用いる。この場合、表面の影響が相対的に小さくなることから、磁性金属粒子10の表面における酸化をあまり考慮しなくともよい。そのため、被覆層20を有しない磁性金属粒子10は、被覆層20を有する磁性金属粒子10と同様好ましく用いることができる。
これに対して、周波数の比較的高い電波の吸収に用いられる磁性材料100については、粒径が比較的小さい磁性金属粒子10を用いる。この場合、表面の影響が相対的に大きくなることから、磁性金属粒子10の表面における酸化を考慮することが好ましい。そのため、被覆層20を有する磁性金属粒子10が好ましく用いられる。
図3は、磁性材料100の膜厚tが2.2mm以上である場合に、本実施の形態の磁性材料100における樹脂の体積充填率測定方法を示す模式断面図である。まず、磁性材料100の最も長い対角線である第1の対角線110を含む面を、その磁性材料100の断面とする。次に、その断面において、二番目に長い対角線である第2の対角線112を引く。なお、第1の対角線110と第2の対角線112とが同じ長さを有していたとしても、本実施の形態の体積充填率を好ましく測定できる。
次に、第1の対角線110と第2の対角線112との交点を求める。その交点を、磁性材料の中心108とする。次に、上記磁性材料100の断面において、磁性材料の中心108を中心とする一辺300μmの正方形102aを作成する。さらに、その正方形の周囲を取り囲むように、一辺が300μmの正方形102b、102c、102d、102e、102f、102g、102iを作成する。なお、図3のように、磁性材料100の断面が長方形、あるいは磁性材料100の断面が正方形である場合には、かかる正方形の少なくとも一辺が磁性材料の表面106に平行であるように、上記9個の正方形を作成する。
このように作成した9個の正方形のそれぞれの内部において、樹脂の体積充填率を測定する。その後、測定した9個の体積充填率測定結果から最小値と最大値を除外し、残りの7個を平均した結果を、磁性材料の第1の領域102の体積充填率とする。
次に、磁性材料の表面106の体積充填率の求め方を説明する。まず、その上記磁性材料100の断面において、磁性材料の中心108を通り、磁性材料の表面106の中で最も大きな面積を持つ磁性材料100の表面に向かって、第1の対角線110と第2の対角線112がなす角を二等分するように、線114を引く。
次に、線114とその磁性材料の表面106との2つの交点を中心にして、その磁性材料100の断面内における表面に沿って300μmの長さをとる。そして、その300μmの長さに対して膜厚3μmの領域106aおよび106dをとる。次に、その両隣に、その磁性材料の表面106内に沿った長さ300μmをとり、その300μmの長さに対して膜厚3μmの領域である106b、106c、106e、106fをとる。この6個の領域の内部について、それぞれ樹脂の体積充填率を測定する。その後、測定した6個の体積充填率測定結果から最小値を除外して残りの5個を平均した結果を、磁性材料の表面106の体積充填率とする。
次に、磁性材料の第2の領域104の体積充填率の求め方を説明する。上記の106a、106b、106c、106d、106e、106fから、磁性材料100の最表面から計測して300μmだけ磁性材料100の内側へずらした6個の正方形104a、104b、104c、104d、104e、104fをとる。これらの正方形の一辺の長さは300μmである。この6個の正方形の内部について第2の樹脂の体積充填率を測定する。その後、測定した6個の体積充填率測定結果から最小値を除外して残りの5個を平均した結果を、磁性材料の第2の領域106の体積充填率とする。
図4は、磁性材料100の膜厚tが1.6mm以上2.2mm未満である場合に、本実施の形態の磁性材料100における樹脂の体積充填率測定方法を示す模式断面図である。磁性材料の第1の領域102の体積充填率を求める際には、図3の磁性材料100の膜厚が1mm以上である場合と異なり、3個の正方形102a、102b、102cそれぞれの内部において第2の樹脂の体積充填率を測定し平均をとる。そのほかは、図3の場合と同じである。
図5は、磁性材料100の膜厚tが1.6mm未満である場合に、本実施の形態の磁性材料100における樹脂の体積充填率測定方法を示す模式断面図である。この場合には、図4の場合と異なり、磁性材料の第1の領域102の体積充填率を計算する領域を、磁性材料の膜厚の長さtに平行な方向において0.2t、磁性材料の膜厚の長さtに垂直な方向において300μm、の辺を持つ長方形102a、102b、102cとする。また、磁性材料の第2の領域104の体積充填率を計算する領域を、上記の長方形102a、102b、102cに対して膜厚方向に隣接し、磁性材料の膜厚の長さtに平行な方向において0.2t、磁性材料の膜厚の長さtに垂直な方向において300μm、の辺を持つ長方形104a、104b、104c、104d、104e、104fとする。さらに、磁性材料の表面106において樹脂の体積充填率を計算する領域を、磁性材料の膜厚の長さtに平行な方向において0.01t、磁性材料の膜厚の長さtに垂直な方向において300μm、の辺を持つ106a、106b、106c、106d、106e、106fとする。
図3または図4または図5のようにして求めた体積充填率を元にして、磁性材料の第1の領域102の体積充填率より磁性材料の第2の領域104の体積充填率が低いものを、磁性材料の内部から外部に向けて体積充填率が低下するものとする。また、磁性材料の第1の領域104の体積充填率より磁性材料の表面106の体積充填率が高いものを、体積充填率がさらに磁性材料の表面で磁性材料の内部より増加するものとする。
磁性材料100の膜厚は0.3mm以上10mm以下であることが好ましい。より好ましい磁性材料の膜厚は0.3mm以上5mm以下、さらに好ましくは0.3mm以上1mm以下である。
磁性材料100は、磁性金属粒子10を含む第1の樹脂30を有する複数の複合磁性粒子50を備えることが好ましい。また、複合磁性粒子50の平均粒径は、10μm以上300μm以下であることが好ましい。ここで、複合磁性粒子50の平均粒径は、磁性材料100の断面をTEMで観察し、EDXやEELSで元素分析をして第1の樹脂30と第2の樹脂40との配置を分析することにより求めることができる。また、個々の複合磁性粒子50の粒径は、上記断面における長径と短径との平均とする。
磁性材料100は、図示しない酸化物粒子25を含有する場合がある。この酸化物粒子25は、磁性金属粒子10の酸化物層21が剥離してできたものである。酸化物粒子25は、磁性金属粒子10および酸化物層21と共通の第2の群に属する元素を含む。
磁性金属粒子10から酸化物層21が剥離しなかった場合には、磁性材料100に酸化物粒子25は含まれない場合がある。酸化物粒子25が含まれる場合には、磁性材料100の熱的安定性が向上する。
酸化物粒子25の方が、酸化物層21よりも、第1の群に属する磁性金属に対する第2の群に属する金属の割合が高いことが好ましい。言い換えると、酸化物粒子25中の第1の群に属する元素に対する第2の群に属する元素の原子数比が、酸化物層21中の第1の群に属する元素に対する第2の群に属する元素の原子数比よりも大きいことが好ましい。なぜならば、磁性金属粒子10の耐酸化性が、より向上するからである。
磁性材料100中の磁性金属粒子10の体積充填率は、10%以上60%以下であることが好ましい。より好ましくは、15%以上50%以下である。上記範囲を上回ると、金属的な性質が現れることで反射率が高くなり電波吸収特性が劣化する。これに対して上記範囲を下回ると、飽和磁化が低下し、それにより磁気特性に由来する電波吸収特性が低下するおそれがある。また、実用的な電波吸収特性を実現するために好ましい厚さが厚くなりすぎるおそれがある。
磁性材料100中の磁性金属粒子10の体積充填率は、TEM写真を画像処理することで算出できる。なお、被覆層20は金属粒子の体積に含めず、コア部12のみを磁性金属粒子10の体積として扱うものとする。
磁性材料100の電気抵抗率は、10MΩ・cm以上であることが好ましい。より好ましくは100MΩ・cm以上、さらに好ましくは1000MΩ・cm以上である。この範囲であれば、電波の反射が抑制され、高損失で高い電波吸収特性が得られるからである。なお、電気抵抗率は、直径15mm、厚さ1mmのディスク形状の磁性材料100の表裏面に、スパッタリング処理により直径5mmのAu電極を付与し、これらAu電極間に10Vの電圧を付加した際の電流値を読み取ることで導出する。また電流値は時間依存性を有するため、電圧を付加してから2分経過した際の値を用いて、電気抵抗率を測定もるものとする。
本実施の形態の磁性材料100の製造方法について一例を示す。(1)Fe、Co、Niからなる第1の群から選ばれる少なくとも一種類の磁性金属元素と、Mg、Al、Si、Ca、Zr、Ti、Hf、Zn、Mn、希土類元素、BaおよびSrからなる第2の群より選ばれる少なくとも一種類の金属元素をプラズマ中に投入し磁性金属粒子10を形成する工程(磁性金属粒子形成工程)。(2)上記磁性金属粒子10の表面に炭素含有材料層22を被覆する工程(炭素被覆工程)。(3)上記炭素で被覆した磁性金属粒子10を酸素含有雰囲気下で酸化する工程(酸化工程)。(4)さらに、必要に応じて採用される上記(2)の炭素被覆工程で形成した炭素被覆を除去する工程(脱炭素工程)。(5)上記で製造された磁性金属粒子10を樹脂や無機材料などと混合・成形する工程(混合成形工程)。(6)上記の成形された材料に樹脂を含浸する工程(樹脂含浸工程)である。
なお、第2の群より選ばれる金属を含有しない場合には、たとえば、上記の工程のうち、(1)の磁性金属粒子形成工程と、(5)の混合成形工程と、(6)の樹脂含浸工程をおこなう。
以下それぞれの工程(1)〜(5)について説明する。
((1):磁性金属粒子形成工程)
磁性粒子の製造には、熱プラズマ法等を利用することが好ましい。以下、熱プラズマ法を利用した磁性粒子の製造方法を説明する。
まず、高周波誘導熱プラズマ装置にプラズマ発生用のガスとして例えばアルゴン(Ar)を主成分とするガスを流入しプラズマを発生させる。次いで、プラズマ内に、磁性金属粉末(第1の群に属する金属)および第2の群に属する金属粉末を噴霧する。
磁性金属粒子10を製造する工程は、熱プラズマ法に限られるものではないが、熱プラズマ法により行われることが、材料組織をナノレベルで制御しやすく、且つ、大量合成が可能であるため好ましい。
なお、アルゴンガス中に噴霧する金属粉末としては、第1の群の磁性金属と第2の群の金属が固溶した平均粒径1μm以上10μm以下の粉末を用いる事も可能である。平均粒径1μm以上10μm以下の固溶粉末は、アトマイズ法等で合成される。かかる粉末を用いることで、熱プラズマ法によって、均一な組成の磁性金属粒子10を合成できる。
なお、磁性金属粒子10に窒素が固溶したものも高い磁気異方性を有する点で好ましい。窒素を固溶させるためには、プラズマ発生用ガスとしてアルゴンと共に窒素を導入する等の方法が考えられるが、これに限定されるものではない。
((2):炭素被覆工程)
次に、磁性金属粒子10を炭素含有材料層22で覆う工程について説明する。この工程としては、(a)磁性金属粒子10表面で、炭化水素ガスを反応させる方法、(b)磁性金属粒子10表面で、磁性金属粒子10を構成する金属元素と炭素を反応させ、炭化物とする方法などがあげられる。
上記第1の(a)の方法である炭化水素ガス反応方法は、キャリアガスを炭化水素ガスと共に磁性金属粒子10表面に導入し、反応させて、その反応生成物で、磁性金属粒子10表面を被覆するものである。用いられる炭化水素ガスは、特に限定されるものでは無いが、例えばアセチレンガス、プロパンガス、メタンガス等が挙げられる。
Fe、Co、Niを主成分とする合金は、炭化水素ガスを分解し炭素を析出させる触媒として知られている。この反応によって、良好な炭素含有材料層22を形成する事が可能となる。すなわち、触媒作用を示す適当な温度範囲、Fe、Co、Niを主成分とする合金粒子と炭化水素ガスを接触させ、磁性金属粒子10同士が接触することを防ぐカーボン層を得るものである。
上記、Fe、Co、Niを主成分とする合金粒子と炭化水素ガスの反応温度は、炭化水素ガス種によって異なるが、一般に、200℃以上、1000℃以下が好ましい。これより低い温度では炭素の析出量が少なすぎて被覆として不十分ものとなる。またこれより高い温度では炭素のポテンシャルが高すぎて析出が過剰に進む。
炭素含有材料層22を形成する金属と炭化水素ガスとの反応温度は、炭素含有材料層22の安定性、即ち結晶性に影響する。高い反応温度で形成された炭素含有材料層22は、高い温度で炭化水素ガス化し、低い反応温度で形成された炭素含有材料層22は低い温度で炭化水素ガス化する。
このように炭素含有材料層22の安定性は水素中での加熱実験により評価する事が可能である。TG−MS法等の装置により炭化水素気化温度を、ガス化濃度がピークとなる温度を測定する事により評価ができる。例えば質量番号16の炭化水素ガス発生がピークとなる温度を熱分解ピーク温度とし、このピーク温度が高い程、炭素含有材料層22が高安定性、低い程低安定性とする事ができる。
また、炭素を含む原料を炭素含有材料層22となる原料と同時噴霧する方法も考えられる。この方法で用いる炭素を含む原料は純粋な炭素等が考えられるが、特にこれに限定されるものではない。
上記2つ目の(b)の方法は、磁性金属粒子10に均質な炭素を被覆する事ができるという点から好ましい。が、磁性金属粒子10表面を炭素で被覆する工程は、必ずしも上記2つの方法に限定されるものではない。
磁性金属粒子10表面の金属元素を炭化する方法としては、公知の方法を採用することができる。例えば、CVDによりアセチレンガスやメタンガスとの反応により形成する方法がある。この方法によれば、炭化珪素や炭化鉄などの熱的に安定な炭素含有材料層22を形成することができる。
この方法においては、必ずしも粒子夫々を単体で存在させなくともよく、磁性金属粒子10間に、所望の厚みの有機化合物層が形成された凝集体として存在しても良い。
((3):酸化工程)
上記工程で得られる炭素で被覆した磁性金属粒子10を、酸素存在下で酸化する工程について説明する。酸化物層21は、磁性金属粒子10と炭素含有材料層22との界面で形成されるか、または、炭素含有材料層22が部分的に酸化分解して酸化物層21を形成する。
この処理によって、磁性金属粒子10が酸化されるが、特に、磁性金属粒子10に含まれる第2の群に属する金属を酸化する事が望ましい。すなわち、Mg、Al、Si、Ca、Zr、Ti、Hf、Zn、Mn、希土類元素、BaおよびSrから選ばれる少なくとも1つの金属が酸化され、磁性金属粒子10の表面に酸化物層21が形成される。
酸化雰囲気は、大気や、酸素、CO2等の酸化性雰囲気、水蒸気を含んだガス等、であれば良く、特に限定されるものではない。酸素を用いる場合は、酸素濃度が高いと酸化が瞬時に進行し、過剰な発熱などにより粒子が凝集する恐れがある。そのためAr、N2等の不活性ガス中に酸素を5%以下含むガスであることが望ましく、より望ましくは0.001%〜3%の範囲が望ましいが特にこれに限定されるものでは無い。
上記雰囲気での酸化は加熱環境下で行っても良い。この場合の温度は、特に限定されるものでは無いが、室温から300℃程度までの温度が好ましい。何故なら、これ以下の温度では酸化の進行が起こり難く、またこれ以上の温度では、酸化の進行が激しく、同時に粒子の凝集が起こるからである。
上記、酸化工程で用いる雰囲気ガスと温度は、上記炭素含有材料層22の結晶性、すなわち安定性と膜厚とのバランスによって選択する事が好ましい。すなわち、安定性が高い炭素含有材料層22を適用した場合は、酸素ポテンシャルが高い状態を、また安定性が低い炭素含有材料層22を適用した場合は、酸素ポテンシャルが低い状態で酸化するのが好ましい。
また、厚さが厚い炭素含有材料層22を適用した場合は、酸素ポテンシャルが高い状態で、薄い炭素含有材料層22を適用した場合は、酸素ポテンシャルが低い状態で酸化するのが好ましい。また酸化が短時間で行われる場合、酸素ガス濃度が10%程度の濃度でも良い。以上のような、製造方法によって、被覆層20が炭素含有材料層22と酸化物層21からなる磁性金属粒子10を製造することが可能となる。
((4):脱炭素工程)
上記工程までによって得られた磁性金属粒子10を、例えば水素雰囲気中で、数百度で加熱すると、磁性金属粒子10の炭素含有材料層22が除去される。従って、磁性金属粒子10の少なくとも一部の表面を酸化物層21が被覆する磁性金属粒子10を含む磁性金属粒子10が得られる。この工程によって、磁性材料100を得る時の粒子の充填率を高めることができる。
熱処理の雰囲気は特に規定しないが、炭素を炭化水素ガス化する還元雰囲気下と、炭素を酸化炭素ガス化する酸化性雰囲気下が考えられる。
一般に第2の群の元素から構成される酸化物層21は、還元性・酸化性いずれの雰囲気ガス中においても1000℃近くの高温まで安定で、分解・ガス化し難い。一方で、炭素または炭化物層は、水素中数百度の加熱において、炭化水素ガスとなりガス化する事ができる。同様に、酸化雰囲気中に数百度の加熱においても酸化炭素ガスとなりガス化する事ができる。このため、加熱雰囲気を選ぶ事により、酸化物層21を残し、炭素含有材料層22のみを選択的に除去する事ができる。
還元雰囲気としては、例えば水素もしくはメタン等の還元性気体を含む窒素またはアルゴンの雰囲気、を挙げることができる。より好ましいのは、濃度50%以上の水素ガス雰囲気である。これは炭素含有材料層22の除去効率が向上するからである。
酸化性雰囲気は、酸素、二酸化炭素、水蒸気等の酸素原子を含む気体と、上記酸素原子を含む気体と窒素、アルゴンとの混合気体が挙げられる。
また、還元性気体を含む窒素またはアルゴンの雰囲気は、気流であることが好ましく、その気流の流速は10mL/分以上にすることが好ましい。
還元雰囲気中での加熱温度は特に規定されるものでなく、100℃〜800℃の温度で行うことが好ましい。その中でも300℃以上800℃以下が好ましい。加熱温度を100℃未満にすると還元反応の進行が遅くなるおそれがある。一方、800℃を超えると、析出した金属微粒子の凝集・粒成長が短時間で進行するおそれがある。
また、さらに好ましくは、炭素含有材料層22の結晶性、すなわち炭素含有材料層22の安定性を基準に選択する事が好ましい。すなわち、高安定性を有する炭素含有材料層22の場合は比較的高温で、低安定性を有する炭素含有材料層22の場合は比較的低温が良い。
熱処理温度と時間は、少なくとも炭素含有材料層22を還元できる条件であれば、特に限定されるものではない。
還元性気体による炭素除去処理後の第1粒子集合体に含有される炭素量は、1質量%以下である事が好ましい。何故なら電気的な影響が低減されるからである。
酸化性雰囲気による炭素除去は、空気、酸素−アルゴン、酸素−窒素等の混合ガス、露点を制御した加湿アルゴン、または加湿窒素等が挙げられる。
酸化性雰囲気による炭素除去法は、できるだけ低い酸素分圧で実施する事が好ましい。上述の方法とは別に、水素と、酸素原子を含む混合気体とを利用して炭素含有材料層22の除去を行う方法を採用する事ができる。この場合、炭素除去と酸化を同時に進行させる事もできるため、より安定な酸化物層21を形成する事が可能となる。
混合気体としては、特に限定されないが、水素と、アルゴン−酸素との混合気体、露点を制御した水素ガス等を上げることができる。
このようにして得られた磁性金属粒子10も、表面が酸化膜で覆われており凝集しにくい。
また、この脱炭素工程を行う前に、磁性金属粒子10を酸素含有雰囲気または不活性雰囲気下で、プラズマ照射またはエネルギー線照射し、炭素含有材料層22の結晶性にダメージを与えることで、炭素含有材料層22の酸素透過性を制御し、炭素含有材料層22下に適度な厚さの酸化物層21を形成させることができる。好ましいエネルギー線としては、電子ビーム、イオンビームなどから選ばれる。使用できる酸素含有雰囲気の酸素分圧は、10Pa以上、103Pa以下であることが好ましい。この範囲を上回ると、プラズマ、電子ビーム、イオンビームが励起または発生し難くなり、この範囲を下回ると、プラズマまたはエネルギー線照射の効果を期待することができない。
((5):混合成形工程)
上記実施の形態によって製作された磁性金属粒子10は、第1の樹脂30や無機材料などと混合・成形され、所要の形状すなわち用途に応じて、バルク(ペレット状、リング状、矩形状など)、シートを含む膜状等の形態をとり得る。
例えば磁性金属粒子10と、樹脂と、溶媒とを混合し、スラリーとし、塗布、乾燥することで、本混合成形工程をおこなうことができる。また、磁性金属粒子10と樹脂との混合物をプレスしてシート状あるいはペレット状に成型してもよい。更に、磁性金属粒子10を溶媒中に分散させ、電気泳動などの方法により堆積してもよい。
磁性シートは、積層構造にしてもよい。積層構造にすることによって容易に厚膜化することが可能になるのみならず、非磁性絶縁性層と交互に積層することによって高周波磁気特性を向上させることが可能となる。すなわち、磁性金属粒子集合体100を含む磁性層を厚さ100μm以下のシート状に形成し、このシート状磁性相を厚さ100μm以下の非磁性絶縁性酸化物層21と交互に積層する。このような積層構造によって、高周波磁気特性が向上する。磁性層単層の厚さを100μm以下にすることによって、面内方向に高周波磁場を印加した時に、反磁界の影響を小さくすることができ、透磁率を増大させることが可能になるのみならず透磁率の高周波特性が向上する。積層方法は特に限定されないが、磁性シートを複数枚重ねてプレスなどの方法で圧着したり、加熱、焼結させたりすることによって積層することができる。
((6):樹脂含浸工程)
上記の工程で製造された材料に、第2の樹脂40を含む液状物質を含浸し、溶媒を飛散又は硬化させることで、第2の樹脂40を磁性材料100内に効率良く配置させることができる。これにより、磁性材料の内部から外部に向けて第2の樹脂の体積充填率を低下させることができる。そして、さらに、第2の樹脂の体積充填率を、磁性材料の表面106において増加させることができる。
この場合、かかる含浸は、減圧下特に真空下で行うことが好ましい。
ガラス転移温度が高い樹脂は、ガラス転移温度が低い樹脂に比べて、強度が高い。そのため、ガラス転移温度が高い樹脂を用いて製造された磁性材料100は、ガラス転移温度が低い樹脂を用いて製造された磁性材料100に比べて、空気や水分が内部に入り込みにくいことから、耐環境性が向上する。
一方、ガラス転移温度が高い樹脂は、磁性材料100の製造の際、うまく磁性金属材料10を十分にその内部に取り込むことができないため、逆に耐環境性が劣化する。このことから、磁性金属粒子10の周囲に第1の樹脂が配置され、第1の樹脂の周囲に第2の樹脂が配置されるものとする。
具体的なガラス転移温度としては、第1の樹脂30のガラス転移温度は100℃未満、第2の樹脂40のガラス転移温度は100℃以上とする。ここで、第2の樹脂のガラス転移温度は、200℃未満であることが好ましい。これは、200℃以上になると磁性材料100自体が硬くなりすぎて脆くなってしまうためである。
磁性材料の内部においてガラス転移温度の高い第2の樹脂が十分に配置されることにより、磁性材料100の強度が大幅に向上する。また、磁性材料の外部に向けては、第2の樹脂40の体積充填率が低下する一方で第1の樹脂30の体積充填率が高くなると、磁性材料100に加わる応力が緩和することから、磁性材料100の強度がさらに向上する。
本実施の形態において、被覆層20を構成する酸化物層21と炭素含有材料層22とは、以下の作用を示す。
炭素含有材料層22のみから構成されると、炭素含有材料層22の亀裂等により磁性金属粒子10の酸化が急激に進行し、部分的に発熱を伴うため、周囲の粒子を巻き込んで酸化が連鎖的に進行し、磁性金属粒子10の磁気特性低下の原因となる。
また、酸化物層21のみから構成される場合は、酸化物組成に不均一な部分が生じ、第2の群の金属の酸化物を含有せず第1の群の元素を主体とする酸化物層21が存在する部位が増える可能性がある。第2の群の元素の酸化物は元素拡散を抑制しコア部12に対する保護性が高いが、第1の群の元素の酸化物は元素拡散が第2群の元素の酸化物より大きくコア部12に対する保護性が劣る。従って、酸化物層21に第1の群の元素の酸化物が多いと、コア部12の過剰な酸化が進行し、金属含有粒子複合部材として磁性材料100を構成した場合その機能が弱まる。
酸化物層21と炭素含有材料層22とから適切に構成されることにより、磁性金属粒子10の耐酸化性を良好に維持できる。また、酸化物層21の剥離性を抑制でき、耐熱性に優れ、長時間の磁気特性の熱的安定性に優れた磁性材料100が提供される。なお、酸化物層21のみ、または炭素含有材料層22のみの被覆層20であっても、被覆層20を有しない磁性金属粒子10に比較して、高い耐酸化性を有する磁性金属粒子10とすることができる。
たとえば、後述する磁性材料100の製造方法において、第2の樹脂40を磁性材料100内に配置させる際には、第2の樹脂40を磁性材料の表面106から磁性材料100内へ含浸させる方法が好ましく用いられる。この際、磁性材料100の膜厚が0.3mm以上10mm以下の範囲にある場合には、第2の樹脂40が磁性材料100内に適切に入り込みやすくなる。そのため、磁性材料100内に空隙が少なくなることから、磁性材料の強度を大幅に増加させることができる。
一方、磁性材料100の膜厚が薄すぎると、磁性材料100の成形後において、磁性材料100内における空隙率が低くなりすぎ、第2の樹脂40がうまく含浸されなくなる。結果として、磁性材料100の耐環境性が低下する。また、磁性材料100の膜厚が厚すぎると、磁性材料100の成形後において、磁性材料100内における空隙率が高くなりすぎ、磁性金属粒子10の密度が低くなりすぎる。そのため、磁性材料100の電波吸収特性が劣化する。好ましい磁性材料の膜厚は0.3mm以上5mm以下、さらに好ましくは0.3mm以上1mm以下である。
第2の樹脂40の体積充填率は、さらに、磁性材料の表面で磁性材料の内部より増加することが好ましい。これにより、磁性材料の表面106において、酸素や水分が磁性材料の内部102に入り込むことを防止できるため、さらに磁性材料100の耐環境性が向上する。
第1の樹脂30のガラス転移温度は第2の樹脂40のガラス転移温度未満であることから、強度が低い。そのため、第1の樹脂30は、第2の樹脂40に比較して磁性金属粒子10を効率良く内部に取り込むことができる。結果として、複数の複合磁性粒子50を備えることにより、磁性金属粒子10を高温・低温・高湿度などの環境下において、より良く保護することができる。
また、複合磁性粒子50の平均粒径は、磁性金属粒子10を保護しかつ磁性材料100の強度を維持する観点から、10μm以上300μm以下であることが好ましい。
本実施形態の磁性材料および電波吸収体は、以上の構成を備えることから、高温、低温、高湿度などの環境下において安定した電波吸収特性を維持し、優れた耐環境性を示す。
以下に、実施例を比較例と対比しながらより詳細に説明する。
(実施例1)
高周波誘導熱プラズマ装置のチャンバー内にプラズマ発生用ガスとしてアルゴンを40L/分で導入し、プラズマを発生させた。このチャンバー内のプラズマに原料である平均粒径10μmのFe粉末と平均粒径10μmのCo粉末と、平均粒径3μmのAl粉末をFe:Co:Alが総量に対する質量比で69:31:5になるようにアルゴン(キャリアガス)と共に3L/分で噴射した。
同時に、チャンバー内に炭素被覆の原料としてメタンガスをArキャリアガスと共に導入し、ガス温度と粉末温度を制御して、FeCoAl合金粒子を炭素で被覆された磁性金属粒子10を得た。
この炭素被覆磁性金属粒子を、約5分間酸化し、炭素含有材料層22と酸化物層21で被覆された、平均粒径10nmの磁性金属粒子10を得た。
このような磁性金属粒子10と、第1の樹脂30としてPVBを混合した。
上記の材料に、第2の樹脂40としてエポキシ系樹脂を真空中(−0.08MPa以下)で含浸し、乾燥・硬化させて磁性材料100を作製した。
(実施例2)
実施例1と同様にして磁性材料100を作製した。ただし、磁性金属粒子10の平均粒径は実施例1と異なり19nmであった。
(実施例3)
実施例1と同様にして磁性材料100を作製した。ただし、磁性金属粒子10の平均粒径は実施例1と異なり30nmであった。
(実施例4)
実施例1と同様にして磁性材料100を作製した。ただし、磁性金属粒子10の平均粒径は実施例1と異なり50nmであった。
(実施例5)
実施例1と同様にして磁性材料100を作製した。ただし、磁性金属粒子10の平均粒径は実施例1と異なり90nmであった。
(比較例1)
実施例1と同様にして磁性材料100を作製した。ただし、磁性金属粒子10の平均粒径は実施例1と異なり5nmであった。
(比較例2)
実施例1と同様にして磁性材料100を作製した。ただし、磁性金属粒子10の平均粒径は実施例1と異なり100nmであった。
実施例1ないし実施例5、比較例1、比較例2で得られた結果を表1に示す。透磁率特性を評価したところ、比較例1と比較例2の磁性材料については、実使用に耐えるものではなかった。そのため、透磁率特性の結果を×とした。これに対して、実施例1ないし実施例5の磁性材料の透磁率特性は良好であった。そのため、透磁率特性の結果を○とした。
比較例1においては、磁性金属粒子の平均粒径が5nmと小さすぎるため、磁性金属粒子の多くが超常磁性体となった。そのため、磁性金属粒子の磁気特性が劣化し、良好な結果が得られなかった。
比較例2においては、磁性金属粒子の平均粒径が100nmと大きすぎるため、磁性金属粒子の磁気異方性が低下した。そのため、磁性金属粒子の磁気特性が劣化し、良好な結果が得られなかった。
これに対して、実施例1ないし実施例5における磁性材料100においては、平均粒径が適切に制御され、良好な結果が得られた。
(実施例6)
高周波誘導熱プラズマ装置のチャンバー内にプラズマ発生用ガスとしてアルゴンを40L/分で導入し、プラズマを発生させた。このチャンバー内のプラズマに原料である平均粒径10μmのFe粉末と平均粒径10μmのCo粉末と、平均粒径3μmのAl粉末をFe:Co:Alが総量に対する質量比で69:31:5になるようにアルゴン(キャリアガス)と共に3L/分で噴射した。
同時に、チャンバー内に炭素被覆の原料としてメタンガスをArキャリアガスと共に導入し、ガス温度と粉末温度を制御して、FeCoAl合金粒子を炭素で被覆された磁性金属粒子10を得た。
この炭素被覆磁性金属粒子を、約5分間酸化し、炭素含有材料層22と酸化物層21で被覆された、平均粒径19nmの磁性金属粒子10を得た。
このような磁性金属粒子10と、第1の樹脂30としてPVBを混合して、厚膜化した。
上記の厚膜化した材料に、第2の樹脂40としてエポキシ系樹脂を真空中(−0.08MPa以下)で含浸し、乾燥・硬化させて磁性材料100を作製した。
PVBの体積充填率は、磁性材料の第1の領域102において55vol%、磁性材料の第2の領域104において63vol%、磁性材料の表面106において7vol%であった。また、エポキシ系樹脂の体積充填率は、磁性材料の第1の領域102において5vol%、磁性材料の第2の領域104において3vol%、磁性材料の表面106において90vol%であった。
(実施例7)
実施例6と同様に磁性材料100を作製した。ただし、PVBの体積充填率は、磁性材料の第1の領域102において55vol%、磁性材料の第2の領域104において63vol%、磁性材料の表面106において7vol%であった。また、エポキシ系樹脂の体積充填率は、磁性材料の第1の領域102において7vol%、磁性材料の第2の領域104において3vol%、磁性材料の表面106において90vol%であった。
(実施例8)
実施例6と同様に磁性材料100を作製した。ただし、PVBの体積充填率は、磁性材料の第1の領域102において55vol%、磁性材料の第2の領域104において63vol%、磁性材料の表面106において7vol%であった。また、エポキシ系樹脂の体積充填率は、磁性材料の第1の領域102において10vol%、磁性材料の第2の領域104において3vol%、磁性材料の表面106において90vol%であった。
(実施例9)
実施例6と同様に磁性材料100を作製した。ただし、PVBの体積充填率は、磁性材料の第1の領域102において48vol%、磁性材料の第2の領域104において58vol%、磁性材料の表面106において7vol%であった。また、エポキシ系樹脂の体積充填率は、磁性材料の第1の領域102において18vol%、磁性材料の第2の領域104において3vol%、磁性材料の表面106において90vol%であった。
(比較例3)
実施例6と同様に磁性材料100を作製した。ただし、PVBの体積充填率は、磁性材料の第1の領域102において55vol%、磁性材料の第2の領域104において63vol%、磁性材料の表面106において7vol%であった。また、エポキシ系樹脂の体積充填率は、磁性材料の第1の領域102において1vol%、磁性材料の第2の領域104において3vol%、磁性材料の表面106において90vol%であった。
(比較例4)
実施例6と同様に磁性材料100を作製した。ただし、PVBの体積充填率は、磁性材料の第1の領域102において55vol%、磁性材料の第2の領域104において63vol%、磁性材料の表面106において7vol%であった。また、エポキシ系樹脂の体積充填率は、磁性材料の第1の領域102において3vol%、磁性材料の第2の領域104において3vol%、磁性材料の表面106において90vol%であった。
(比較例5)
実施例6と同様に磁性材料100を作製した。ただし、PVBの体積充填率は、磁性材料の第1の領域102において44vol%、磁性材料の第2の領域104において53vol%、磁性材料の表面106において7vol%であった。また、エポキシ系樹脂の体積充填率は、磁性材料の第1の領域102において23vol%、磁性材料の第2の領域104において45vol%、磁性材料の表面106において90vol%であった。
実施例6ないし実施例9、および比較例3ないし比較例5において得られた結果を表2に示す。透磁率特性を評価したところ、比較例3ないし比較例5の磁性材料については、実使用に耐えるものではなかった。そのため、透磁率特性の結果を×とした。これに対して、実施例6ないし実施例9の透磁率特性は良好であった。そのため、透磁率特性の結果を○とした。
比較例3と比較例4においては、第2の樹脂40の、磁性材料の第1の領域102における体積充填率が、磁性材料の第2の領域104と同じか低いため、耐環境性が低く良好な結果が得られなかった。
比較例5においては、第2の樹脂40の、磁性材料の第1の領域102における体積充填率が高すぎた。そのため、磁性材料の第1の領域102における磁性金属粒子10の体積充填率が低くなり、良好な結果が得られなかった。
これに対して、実施例6ないし実施例9においては、うまく磁性材料100が第2の樹脂で保護され、良好な結果を得ることができた。
(実施例10)
高周波誘導熱プラズマ装置のチャンバー内にプラズマ発生用ガスとしてアルゴンを40L/分で導入し、プラズマを発生させる。このチャンバー内のプラズマに原料である平均粒径10μmのFe粉末と平均粒径10μmのCo粉末と、平均粒径3μmのAl粉末をFe:Co:Alが総量に対する質量比で69:31:5になるようにアルゴン(キャリアガス)と共に3L/分で噴射する。
同時に、チャンバー内に炭素被覆の原料としてメタンガスをArキャリアガスと共に導入し、ガス温度と粉末温度を制御して、FeCoAl合金粒子を炭素で被覆された磁性金属粒子10を得た。
この炭素被覆磁性金属粒子を、約5分間酸化し、炭素含有材料層22と酸化物層21で被覆された、平均粒径19nmの磁性金属粒子10を得た。
このような磁性金属粒子10と、第1の樹脂30としてPVBを混合して、厚膜化した。
上記の厚膜化した材料に、第2の樹脂40としてエポキシ樹脂を真空中(−0.08MPa以下)で含浸し、乾燥・硬化させて磁性材料100を作製した。このエポキシ系樹脂のガラス転移温度は100℃であった。
(実施例11)
実施例10と同様に磁性材料100を作製した。ただし、実施例11で用いられたエポキシ系樹脂のガラス転移温度は120℃であった。
(実施例12)
実施例10と同様に磁性材料100を作製した。ただし、実施例12で用いられたエポキシ系樹脂のガラス転移温度は150℃であった。
(実施例13)
実施例10と同様に磁性材料100を作製した。ただし、実施例13で用いられたエポキシ系樹脂のガラス転移温度は170℃であった。
(比較例6)
実施例10と同様に磁性材料100を作製した。ただし、比較例6では、第2の樹脂としてガラス転移温度が50℃であるポリブチレンテレフタレートを用いた。
(比較例7)
実施例10と同様に磁性材料100を作製した。ただし、比較例7では、第2の樹脂としてガラス転移温度が60℃であるポリエチレンテレフタレートを用いた。
(比較例8)
実施例10と同様に磁性材料100を作製した。ただし、比較例8で用いられたエポキシ系樹脂のガラス転移温度は200℃であった。
実施例10ないし実施例13、比較例6ないし比較例8において得られた結果を表3に示す。比較例6ないし比較例8の磁性材料については、―54℃と75℃との間での温度サイクル試験を150サイクルおこなった。この前後で透磁率を評価したところ、透磁率が5%以上変動していた。そのため、比較例6ないし比較例8については、温度サイクル試験の結果を×とした。一方、実施例10ないし実施例13については、透磁率の変動は5%未満であった。そのため、温度サイクル試験の結果を○とした。
比較例6および比較例7においては、第2の樹脂40のガラス転移温度が低すぎるため、第2の樹脂40による磁性金属粒子10を保護する性能が低下し、結果として磁性材料100の耐環境性が低下した。
一方、実施例10ないし実施例13においては、ガラス転移温度が十分高いため、第2の樹脂が磁性金属粒子10を良く保護し、結果として磁性材料100の信頼性が向上した。
比較例8においては、ガラス転移温度が高すぎて磁性材料100が脆くなり、磁性金属粒子10が十分に保護されなかった。
(実施例14)
高周波誘導熱プラズマ装置のチャンバー内にプラズマ発生用ガスとしてアルゴンを40L/分で導入し、プラズマを発生させる。このチャンバー内のプラズマに原料である平均粒径10μmのFe粉末と平均粒径10μmのCo粉末と、平均粒径3μmのAl粉末をFe:Co:Alが総量に対する質量比で69:31:5になるようにアルゴン(キャリアガス)と共に3L/分で噴射した。
同時に、チャンバー内に炭素被覆の原料としてメタンガスをArキャリアガスと共に導入し、ガス温度と粉末温度を制御して、FeCoAl合金粒子を炭素で被覆された磁性金属粒子10を得た。
この炭素被覆磁性金属粒子を、約5分間酸化し、炭素含有材料層22と酸化物層21で被覆された、平均粒径19nmの磁性金属粒子10を得た。
このような磁性金属粒子10と、第1の樹脂30としてPVBを混合して、厚膜化した。
上記の厚膜化した材料に、第2の樹脂40としてエポキシ系樹脂を真空中(−0.08MPa以下)で含浸し、乾燥・硬化させて磁性材料100を作製した。磁性材料100の膜厚は0.3mmであった。PVBの体積充填率は、磁性材料の第1の領域102において57vol%、磁性材料の第2の領域104において63vol%、磁性材料の表面106において7vol%であった。また、エポキシ系樹脂の体積充填率は、磁性材料の第1の領域102において8vol%、磁性材料の第2の領域104において3vol%、磁性材料の表面106において90vol%であった。
(実施例15)
実施例14と同様に磁性材料100を作製した。ただし、磁性材料100の膜厚は、実施例14と異なり、0.5mmであった。また、PVBの体積充填率は、磁性材料の第1の領域102において55vol%であった。さらに、エポキシ系樹脂の体積充填率は、磁性材料の第1の領域102において10vol%であった。
(実施例16)
実施例14と同様に磁性材料100を作製した。ただし、磁性材料100の膜厚は、実施例14と異なり、1mmであった。また、PVBの体積充填率は、磁性材料の第1の領域102において55%であった。さらに、エポキシ系樹脂の体積充填率は、磁性材料の第1の領域102において10vol%であった。
(実施例17)
実施例14と同様に磁性材料100を作製した。ただし、磁性材料100の膜厚は、実施例14と異なり、5mmであった。また、PVBの体積充填率は、磁性材料の第1の領域102において51%であった。さらに、エポキシ系樹脂の体積充填率は、磁性材料の第1の領域102において12vol%であった。
(実施例18)
実施例14と同様に磁性材料100を作製した。ただし、磁性材料100の膜厚は、実施例14と異なり、10mmであった。また、PVBの体積充填率は、磁性材料の第1の領域102において48%であった。さらに、エポキシ系樹脂の体積充填率は、磁性材料の第1の領域102において18vol%であった。
(比較例9)
実施例14と同様に磁性材料100を作製した。ただし、磁性材料100の膜厚は、実施例14と異なり、0.1mmであった。また、PVBの体積充填率は、磁性材料の第1の領域102において59%であった。さらに、エポキシ系樹脂の体積充填率は、磁性材料の第1の領域102において3vol%であった。
(比較例10)
実施例14と同様に磁性材料100を作製した。ただし、磁性材料100の膜厚は、実施例14と異なり、15mmであった。また、PVBの体積充填率は、磁性材料の第1の領域102において44%であった。さらに、エポキシ系樹脂の体積充填率は、磁性材料の第1の領域102において23vol%であった。
実施例14ないし実施例18、比較例9および比較例10において得られた結果を表4に示す。比較例9の磁性材料100については、―54℃と75℃との間での温度サイクル試験を150サイクルおこなった。この前後で透磁率を評価したところ、透磁率が5%以上変動していた。そのため、比較例9については、温度サイクル試験の結果を×とした。比較例10の磁性材料100については、良好な透磁率特性を得ることができなかった。そのため、比較例10については、温度サイクル試験の結果を×とした。実施例14ないし実施例18については、透磁率特性は良好であり、また、上記の温度サイクル試験の前後において、透磁率の変動は5%未満であった。そのため、温度サイクル試験の結果を○とした。
比較例9においては、膜厚が0.1mmと薄すぎた。そのため、厚膜化する際に磁性材料100が密になりすぎたため、エポキシ系樹脂が磁性材料の第1の領域102にうまく含浸されなかった。結果として、磁性材料の第1の領域102におけるエポキシ系樹脂の体積充填率が低下したため、耐環境性が低下し、温度サイクル試験前後での透磁率の変動が大きくなった。
比較例10においては、膜厚が15mmと厚すぎた。そのため、厚膜化する際に磁性材料100を逆に十分密にすることができず、磁性金属粒子10の密度が磁性材料の第1の領域102において低くなってしまった。結果として、磁気特性が劣化し、良好な透磁率特性が得られなかった。
一方、実施例14ないし実施例18においては、磁性材料100の膜厚が適切な範囲に制御されていたため、良好な透磁率特性および良好な温度サイクル特性が得られた。
(実施例19)
高周波誘導熱プラズマ装置のチャンバー内にプラズマ発生用ガスとしてアルゴンを40L/分で導入し、プラズマを発生させる。このチャンバー内のプラズマに原料である平均粒径10μmのFe粉末と平均粒径10μmのCo粉末と、平均粒径3μmのAl粉末をFe:Co:Alが総量に対する質量比で69:31:5になるようにアルゴン(キャリアガス)と共に3L/分で噴射した。
同時に、チャンバー内に炭素被覆の原料としてメタンガスをArキャリアガスと共に導入し、ガス温度と粉末温度を制御して、FeCoAl合金粒子を炭素で被覆された磁性金属粒子10を得た。
この炭素被覆磁性金属粒子を、約5分間酸化し、炭素含有材料層22と酸化物層21で被覆された、平均粒径19nmの磁性金属粒子10を得た。
このような磁性金属粒子10と、第1の樹脂30としてPVBを混合して、厚膜化した。
上記の厚膜化した材料に、第2の樹脂40としてエポキシ系樹脂を真空中(−0.08MPa以下)で含浸し、乾燥・硬化させて磁性材料100を作製した。磁性材料100の膜厚は1mmであった。PVBの体積充填率は、磁性材料の第1の領域102において55vol%、磁性材料の第2の領域において63vol%、磁性材料の表面106において7vol%であった。また、エポキシ樹脂の体積充填率は、磁性材料の第1の領域102において10vol%、磁性材料の第2の領域104において3vol%、磁性材料の表面106において20vol%であった。
(実施例20)
実施例19と同様に磁性材料100を作製した。ただし、エポキシ系樹脂の体積充填率は、磁性材料の表面106において50vol%であった。
(実施例21)
実施例19と同様に磁性材料100を作製した。ただし、エポキシ系樹脂の体積充填率は、磁性材料の表面106において90vol%であった。
(比較例11)
実施例19と同様に磁性材料100を作製した。ただし、エポキシ系樹脂の体積充填率は、磁性材料の表面106において1vol%であった。
(比較例12)
実施例19と同様に磁性材料100を作製した。ただし、エポキシ系樹脂の体積充填率は、磁性材料の表面106において5vol%であった。
実施例19ないし実施例21、比較例11および比較例12において得られた結果を表5に示す。比較例11および比較例12については、―54℃と75℃との間での温度サイクル試験を150サイクルおこなった。この前後で透磁率を評価したところ、透磁率が5%以上変動していた。そのため、比較例11および比較例12については、温度サイクル試験の結果を×とした。実施例19ないし実施例21については、上記の温度サイクル試験の前後において、透磁率の変動は5%未満であった。そのため、温度サイクル試験の結果を○とした。
比較例11および比較例12については、磁性材料の表面106における第2の樹脂40の体積充填率が低すぎるため、環境試験(高温放置試験、温度サイクル試験)に対しての耐候性が低下し、長期信頼性が低下した。
一方実施例20ないし実施例22については、磁性材料の表面106における第2の樹脂の体積充填率が、磁性材料の第2の領域104における第2の樹脂の体積充填率より高くなっており、磁性金属粒子がよく保護されたため、耐環境性が向上した。
(実施例22)
高周波誘導熱プラズマ装置のチャンバー内にプラズマ発生用ガスとしてアルゴンを40L/分で導入し、プラズマを発生させる。このチャンバー内のプラズマに原料である平均粒径10μmのFe粉末と平均粒径10μmのCo粉末と、平均粒径3μmのAl粉末をFe:Co:Alが総量に対する質量比で69:31:5になるようにアルゴン(キャリアガス)と共に3L/分で噴射した。
同時に、チャンバー内に炭素被覆の原料としてメタンガスをArキャリアガスと共に導入し、ガス温度と粉末温度を制御して、FeCoAl合金粒子を炭素で被覆された磁性金属粒子10を得た。
この炭素被覆磁性金属粒子を、約5分間酸化し、炭素含有材料層22と酸化物層21で被覆された、平均粒径19nmの磁性金属粒子10を得た。
このような磁性金属粒子10と、第1の樹脂30としてPVBを混合して、厚膜化した。
上記の厚膜化した材料に、第2の樹脂40としてエポキシ系樹脂を真空中(−0.08MPa以下)で含浸し、乾燥・硬化させて磁性材料100を作製した。複合磁性粒子50の平均粒径は10μmであった。PVBの体積充填率は、磁性材料の第1の領域102において55vol%、磁性材料の第2の領域104において63vol%、磁性材料の表面106において7vol%であった。また、エポキシ系樹脂の体積充填率は、磁性材料の第1の領域102において10vol%、磁性材料の第2の領域104において3vol%、磁性材料の表面106において90vol%であった。
(実施例23)
実施例22と同様に磁性材料100を作製した。ただし複合磁性粒子50の平均粒径は50μmであった。
(実施例24)
実施例22と同様に磁性材料100を作製した。ただし複合磁性粒子50の平均粒径は300μmであった。
(比較例13)
実施例22と同様に磁性材料100を作製した。ただし複合磁性粒子50の平均粒径は1μmであった。また、PVBの体積充填率は、磁性材料の第1の領域102において41vol%、磁性材料の第2の領域104において55vol%、磁性材料の表面106において7vol%であった。さらに、エポキシ系樹脂の体積充填率は、磁性材料の第1の領域102において19vol%、磁性材料の第2の領域104において9vol%、磁性材料の表面106において90vol%であった。
(比較例14)
実施例22と同様に磁性材料100を作製した。ただし複合磁性粒子50の平均粒径は5μmであった。また、PVBの体積充填率は、磁性材料の第1の領域102において48vol%、磁性材料の第2の領域104において63vol%、磁性材料の表面106において7vol%であった。さらに、エポキシ系樹脂の体積充填率は、磁性材料の第1の領域102において14vol%、磁性材料の第2の領域104において6vol%、磁性材料の表面106において90vol%であった。
(比較例15)
実施例22と同様に磁性材料100を作製した。ただし複合磁性粒子50の平均粒径は500μmであった。また、PVBの体積充填率は、磁性材料の第1の領域102において52vol%、磁性材料の第2の領域104において40vol%、磁性材料の表面106において7vol%であった。さらに、エポキシ系樹脂の体積充填率は、磁性材料の第1の領域102において13vol%、磁性材料の第2の領域104において5vol%、磁性材料の表面106において90vol%であった。
実施例22ないし実施例24、比較例13ないし比較例15において得られた結果を表6に示す。透磁率特性を評価したところ、比較例13および比較例14については、実使用に耐えるものではなかった。そのため、透磁率特性の結果を×とした。比較例15については、うまく厚膜化することができなかったため、透磁率特性の結果を×とした。実施例22ないし実施例24については、良好な透磁率特性が得られたため、透磁率特性の結果を○とした。
比較例13および比較例14については、複合磁性粒子の粒径が小さすぎたため、厚膜化した後の磁性材料の内部における空隙率が高くなりすぎた。磁性材料の内部における第2の樹脂の体積充填率が高くなったのはこのためである。結果として、磁性材料の内部において磁性金属粒子10の密度が小さくなってしまい、透磁率特性が劣化した。
比較例15については、複合磁性粒子の粒径が大きすぎたため、うまく厚膜化することができなかかった。
これに対して、実施例22ないし実施例24については、複合磁性粒子50の粒径が適切に制御されていたため、良好な透磁率特性が得られた。
なお上記の実施例および比較例は被覆層20を有する磁性金属粒子10を用いたものであるが、被覆層20を有しない磁性金属粒子10についても同様の結果が得られた。
以上、本発明のいくつかの実施形態および実施例を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態および実施例は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態や実施例およびその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。