JPWO2014084042A1 - 2層カーボンナノチューブ含有複合体 - Google Patents

2層カーボンナノチューブ含有複合体 Download PDF

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Abstract

内層側カーボンナノチューブおよび外層側カーボンナノチューブからなる2層カーボンナノチューブと、樹脂とを含む2層カーボンナノチューブ含有複合体であって、荷重を加えた状態でラマン分光分析した場合に得られる当該2層カーボンナノチューブ含有複合体の歪みとG’バンドシフトとの関係を示すグラフにおいて、外層側カーボンナノチューブに由来する直線の傾きに対する内層側カーボンナノチューブに由来する直線の傾きの比が、0.5以上1.5以下である。

Description

本発明は、2層カーボンナノチューブ含有複合体に関する。
カーボンナノチューブは、六角網目状の炭素原子配列のグラファイトシートが円筒状に巻かれた構造を有する物質であり、1層に巻かれたものを単層カーボンナノチューブ、多層に巻かれたものを多層カーボンナノチューブという。多層カーボンナノチューブの中でも特に2層に巻かれたものを2層カーボンナノチューブという。カーボンナノチューブは、優れた導電性や高い機械強度を有し、導電性材料や補強材料として使用されることが期待されている。
通常、カーボンナノチューブのうち、層数の少ない単層カーボンナノチューブや2層カーボンナノチューブが、高グラファイト構造を有しているために導電性や熱伝導性などの特性が高いことが知られている。
一方、カーボンナノチューブを樹脂に添加し、樹脂特性を向上させる技術が知られている(例えば、特許文献1を参照)。この技術において、層数の少ない単層カーボンナノチューブが、添加量に対して最も複合体特性を向上させる効果が高いと考えられる。
ここで、複合体の特性を向上させるためには、カーボンナノチューブと樹脂との親和性を向上させることが重要である。これに対し、カーボンナノチューブと樹脂との親和性向上のために、カーボンナノチューブ側壁に官能基を導入して、複合体の特性を向上させる技術が知られている(例えば、特許文献2を参照)。
特表2009−532531号公報 特開2006−240938号公報
ところで、特許文献2に記載の技術において、単層カーボンナノチューブを用いた場合、側壁の官能基化により単層カーボンナノチューブ自身のグラファイト性が低下する。このため、単層カーボンナノチューブ自身が有する機械強度などの特性が大きく低下するという課題を抱えていた。一方、2層カーボンナノチューブなどの多層カーボンナノチューブを用いると、外層を官能基化しても、内層が保持するグラファイト性により、カーボンナノチューブ特性が維持できると期待されていた。
しかしながら、2層カーボンナノチューブを用いた場合、十分な特性を発揮できていないのが現状であった。なお、2層カーボンナノチューブの側壁の官能基化では、2層カーボンナノチューブの外層と内層とがそれぞれ相互作用せず、応力伝搬していないことが十分な特性を発揮できていない原因として考えられる。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、2層カーボンナノチューブと樹脂の親和性が高く、かつ高い機械強度を有する複合体を提供することを目的とする。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる2層カーボンナノチューブ含有複合体は、内層側カーボンナノチューブおよび外層側カーボンナノチューブからなる2層カーボンナノチューブと、樹脂とを含む2層カーボンナノチューブ含有複合体であって、荷重を加えた状態でラマン分光分析した場合に得られる当該2層カーボンナノチューブ含有複合体の歪みとG’バンドシフトとの関係を示すグラフにおいて、前記外層側カーボンナノチューブに由来する直線の傾きに対する前記内層側カーボンナノチューブに由来する直線の傾きの比の値が、0.5以上1.5以下であることを特徴とする。
また、本発明にかかる2層カーボンナノチューブ含有複合体は、上記の発明において、前記2層カーボンナノチューブは、酸素を含む官能基で修飾されていることを特徴とする。
また、本発明にかかる2層カーボンナノチューブ含有複合体は、上記の発明において、前記官能基は、水酸基またはカルボシキル基であることを特徴とする。
また、本発明にかかる2層カーボンナノチューブ含有複合体は、上記の発明において、前記2層カーボンナノチューブ中の炭素原子に対する酸素原子の割合が、0.1at%以上20at%以下であることを特徴とする。
また、本発明にかかる2層カーボンナノチューブ含有複合体は、上記の発明において、前記2層カーボンナノチューブを波長633nmでラマン分光分析した場合のDバンドの高さに対するGバンドの高さの比の値が、20以上であることを特徴とする。
また、本発明にかかる2層カーボンナノチューブ含有複合体は、上記の発明において、前記樹脂は、熱硬化性樹脂であることを特徴とする。
また、本発明にかかる2層カーボンナノチューブ含有複合体は、上記の発明において、前記樹脂は、エポキシ樹脂であることを特徴とする。
また、本発明にかかる2層カーボンナノチューブ含有複合体は、上記の発明において、前記2層カーボンナノチューブは、前記樹脂に対して、0.001重量%以上10重量%以下で含まれることを特徴とする。
また、本発明にかかる2層カーボンナノチューブ含有複合体は、上記の発明において、前記外層側カーボンナノチューブに由来する直線の傾きの絶対値が、10cm−1/%以上50cm−1/%以下であることを特徴とする。
本発明によれば、ある特定の2層カーボンナノチューブと樹脂の複合体とを用いることで、2層カーボンナノチューブと樹脂の親和性が高く、さらには2層カーボンナノチューブの内層と外層が応力伝搬し、良好な力学特性を示す複合体を得ることができる。
図1は、本発明の実施の形態にかかる2層カーボンナノチューブ含有複合体に対するラマン分光分析を説明するための図である。 図2は、本発明の実施の形態にかかる2層カーボンナノチューブ含有複合体のカーボンナノチューブを製造するカーボンナノチューブ製造装置の構成例を示す模式図である。 図3は、本発明の実施例にかかる2層カーボンナノチューブ含有複合体のカーボンナノチューブにおける歪みとG’バンドシフトとの関係を示すグラフである。 図4は、本発明の実施例にかかる2層カーボンナノチューブ含有複合体のカーボンナノチューブにおける歪みとG’バンドシフトとの関係を示すグラフである。 図5は、本発明の実施例にかかる2層カーボンナノチューブ含有複合体のカーボンナノチューブにおける歪みとG’バンドシフトとの関係を示すグラフである。 図6は、本発明の実施例にかかる2層カーボンナノチューブ含有複合体のカーボンナノチューブにおける歪みとG’バンドシフトとの関係を示すグラフである。 図7は、本発明の実施例にかかる2層カーボンナノチューブ含有複合体のカーボンナノチューブにおける歪みとG’バンドシフトとの関係を示すグラフである。 図8は、本発明の実施例にかかる2層カーボンナノチューブ含有複合体のカーボンナノチューブにおける歪みとG’バンドシフトとの関係を示すグラフである。
以下、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。なお、以下の実施の形態により本発明が限定されるものではない。
本発明にかかる2層カーボンナノチューブ含有複合体は、直径の異なる2本のカーボンナノチューブ(内層側カーボンナノチューブおよび外層側カーボンナノチューブ)が同心円状に重なってなる2層カーボンナノチューブと、樹脂とを含む複合体である。また、2層カーボンナノチューブは、複合体に荷重を加えてラマン分光分析した時に得られる複合体の歪みとG’バンドシフトとの関係を示すグラフにおいて、外層側カーボンナノチューブに由来する直線の傾きに対する内層側カーボンナノチューブに由来する直線の傾きの比(内層の傾き/外層の傾き)の値が、0.5以上1.5以下である。
ここで、カーボンナノチューブは、グラファイトの1枚面を巻いて筒状にした形状をなしており、1層に巻いたものを単層カーボンナノチューブ、多層に巻いたものを多層カーボンナノチューブという。多層カーボンナノチューブの中でも特に2層に巻いたものを2層カーボンナノチューブという。本発明において用いられる2層カーボンナノチューブとは、複数の2層カーボンナノチューブが存在している総体を意味し、その存在形態は特に限定されず、それぞれが独立で、あるいは束状、絡まり合うなどの形態あるいはこれらの混合形態で存在していてもよい。また、カーボンナノチューブ製造法由来の不純物(例えば触媒)を含み得るが、実質的には炭素で構成されたものを示す。また、種々の直径のものが含まれていてもよい。
カーボンナノチューブの形態は、高分解能透過型電子顕微鏡で調べることができる。グラファイトの層は、透過型電子顕微鏡でまっすぐにはっきりと見えるほど好ましいが、グラファイトの層は乱れていても構わない。
本発明において用いられるカーボンナノチューブは、種々の層数のカーボンナノチューブを含んでいてもよいが、2層カーボンナノチューブを主成分とする。主成分とは透過型電子顕微鏡で観測した時に100本中50本以上(半数以上)のカーボンナノチューブが2層カーボンナノチューブであることを言う。更には100本中70本以上のカーボンナノチューブが2層カーボンナノチューブであることが好ましい。ここでいう本数は、カーボンナノチューブ集合体中に含まれる任意のカーボンナノチューブの100本を観察し、2層カーボンナノチューブの本数を評価するものとする。
上記任意のカーボンナノチューブの層数と本数の数え方は、例えば、透過型電子顕微鏡にて40万倍で観察し、75nm四方の視野の中で視野面積の10%以上がカーボンナノチューブである視野中から任意に抽出した100本のカーボンナノチューブについて層数を評価する。一つの視野中で100本の測定ができない場合は、100本になるまで複数の視野から測定する。このとき、カーボンナノチューブ1本とは視野中で一部カーボンナノチューブが見えていれば1本と計上し、必ずしも両端が見えている必要はない。また視野中で2本と認識されても視野外でつながって1本となっていることもあり得るが、その場合は2本と計上する。
本発明において用いられるカーボンナノチューブは、その外径の平均値が1.0nm以上3.0nm以下の範囲内であるものが好ましく用いられる。この外径の平均値は、上記透過型電子顕微鏡にて40万倍で観察し、75nm四方の視野の中で視野面積の10%以上がカーボンナノチューブである視野中から任意に抽出した100本のカーボンナノチューブについて層数を評価するのと同様の方法でサンプルを観察し、カーボンナノチューブの外径を測定したときの算術平均値である。
本発明において用いられる2層カーボンナノチューブは、酸素を含む官能基で修飾されている。酸素を含む官能基とは、水酸基やカルボキシル基、カルボニル基、エーテル基などがあるが、酸素を含んでいれば特に限定されるものではない。これらの中でも水酸基、カルボキシル基が好ましい。
これら官能基量は、X線光電子分光法(XPS)によって確認することができる。例えば、以下の条件でO 1sのピークを解析することによって確認することができる。
励起X線:Monochromatic Al K1,2
X線径:1000μm
光電子脱出角度:90°(試料表面に対する検出器の傾き)
また、本発明の2層カーボンナノチューブは、上記のような酸素を含む官能基を有しており、2層カーボンナノチューブ中の炭素原子に対する酸素原子の割合が0.1at%(atomic%)以上20at%以下である。このような炭素原子に対する酸素原子の割合はX線光電子分光法(XPS)の表面組成解析を用いることで評価が可能である。本発明においては、X線光電子分光法(XPS)の表面組成解析の結果、炭素原子に対する酸素原子の割合が0.1at%以上20at%以下であることが、優れた導電性を示すカーボンナノチューブ集合体となるため好ましい。酸素原子の割合があまりに多い場合は、2層カーボンナノチューブの外層自身がグラファイト性を維持できず、もろくなり内層へ応力がうまく伝搬しない。また酸素原子が少なすぎても、2層カーボンナノチューブと樹脂の親和性が低下し、樹脂からの応力が2層カーボンナノチューブに伝搬しない。より好ましくは炭素原子に対する酸素原子の割合が1at%以上15at%以下である。
本発明において用いられるカーボンナノチューブは、ラマン分光分析によるDバンドの高さに対するGバンドの高さの比(G/D比)の値が20以上であることが好ましい。より好ましくは40以上200以下であり、さらに好ましくは50以上150以下である。G/D比とはカーボンナノチューブをラマン分光分析法により評価した時の値である。この際、測定装置としては、例えば顕微レーザーラマン分光光度計分析装置(日本分光株式会社製JASCO NRS2100)を使うことができる。また、ラマン分光分析法で使用するレーザー波長は633nmである。一般に、ラマン分光分析法により得られるラマンスペクトルにおいて1590cm−1付近に見られるラマンシフトはグラファイト由来のGバンドと呼ばれ、1350cm−1付近に見られるラマンシフトはアモルファスカーボンやグラファイトの欠陥に由来のDバンドと呼ばれる。このGバンド、Dバンドの高さ比、G/D比が高いカーボンナノチューブほど、グラファイト化度が高く、高品質であることを示している。また、カーボンナノチューブのような固体のラマン分光分析法は、サンプリングによってばらつくことがある。そこで少なくとも3カ所、別の場所をラマン分光分析し、その相加平均をとるものとする。G/D比が20以上とは相当な高品質カーボンナノチューブであることを示している。G/D比が20以下では、元々の2層カーボンナノチューブのグラファイト性が低すぎて内層と外層の応力がうまく伝搬しない。
本発明で用いられる樹脂とは、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂のいずれでも構わない。好ましくは、熱硬化性樹脂である。
熱硬化性樹脂は、特に限定されるものではなく、いずれの熱硬化性樹脂も好適に使用することができる。具体的には、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、ポリイミド等や、これらの共重合体、変性体、および2種類以上ブレンドした樹脂などを使用することができる。中でも、耐熱性、力学特性、および接着性のバランスに優れるエポキシ樹脂が好ましく使用できる。
エポキシ樹脂としては、特に限定されるものではなく、いずれのエポキシ樹脂も好適に使用することができる。具体的には、ポリオールから得られるグリシジルエーテル、活性水素を複数有するアミンより得られるグリシジルアミン、ポリカルボン酸より得られるグリシジルエステルや、分子内に複数の2重結合を有する化合物を酸化して得られるポリエポキシドなどが用いられる。
グリシジルエーテルの具体例としては、以下のようなものが挙げられる。まず、ビスフェノールAから得られるビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールFから得られるビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールSから得られるビスフェノールS型エポキシ樹脂、テトラブロモビスフェノールAから得られるテトラブロモビスフェノールA型エポキシ樹脂などのビスフェノール型エポキシ樹脂が挙げられる。ビスフェノールA型エポキシ樹脂の市販品としては、“エピコート(登録商標、以下同じ)”825、“エピコート”828、“エピコート”834、“エピコート”1001、“エピコート”1002、“エピコート”1003、“エピコート”1004、“エピコート”1007、“エピコート”1009、“エピコート”1010(以上、ジャパンエポキシレジン株式会社製)、“エポトート(登録商標、以下同じ)”YD−128、“エポトート”YD−011、“エポトート”YD−014、“エポトート”YD−017、“エポトート”YD−019、“エポトート”YD−022(以上、東都化成株式会社製)、“エピクロン(登録商標、以下同じ)”840、“エピクロン”850、“エピクロン”830、“エピクロン”1050、“エピクロン”3050、“エピクロン”HM−101(以上、大日本インキ化学工業株式会社製)、“スミエポキシ(登録商標、以下同じ)”ELA−128(住友化学株式会社製)、DER331(ダウケミカル社製)等を挙げることができる。ビスフェノールF型エポキシ樹脂の市販品としては、“エピコート”806、“エピコート”807、“エピコート”E4002P、“エピコート”E4003P、“エピコート”E4004P、“エピコート”E4007P、“エピコート”E4009P、“エピコート”E4010P(以上、ジャパンエポキシレジン株式会社製)、“エピクロン”830(大日本インキ化学工業株式会社製)、“エポトート”YDF−2001、“エポトート”YDF−2004(以上、東都化成株式会社製)などを挙げることができる。ビスフェノールS型エポキシ樹脂の市販品としては、“デナコール(登録商標、以下同じ)”EX−251(ナガセ化成工業株式会社製)、“エピクロン”EXA−1514(大日本インキ化学工業株式会社製)を挙げることができる。テトラブロモビスフェノールA型エポキシ樹脂の市販品としては、“エピコート”5050(ジャパンエポキシレジン株式会社製)、“エピクロン”152(大日本インキ化学工業株式会社製)、“スミエポキシ”ESB−400T(住友化学工業株式会社製)、“エポトート”YBD−360(東都化成株式会社製)を挙げることができる。
また、フェノールやアルキルフェノール、ハロゲン化フェノールなどのフェノール誘導体から得られるノボラックのグリシジルエーテルであるノボラック型エポキシ樹脂の市販品としては、“エピコート”152、“エピコート”154、“エピコート”157(以上、ジャパンエポキシレジン株式会社製)、DER438(ダウケミカル社製)、“アラルダイト(登録商標、以下同じ)”EPN1138(BASF社製)、“アラルダイト”EPN1139(BASF社製)、“エポトート”YCPN−702(東都化成株式会社製)、BREN−105(日本化薬株式会社製)を挙げることができる。
その他にも、レゾルシンジグリシジルエーテルである“デナコール”EX−201(ナガセ化成工業株式会社製)、ヒドロキノンジグリシジルエーテルである“デナコール”EX−203(ナガセ化成工業株式会社製)、トリス(p−ヒドロキシフェニル)メタンのトリグリシジルエーテルであるTACTIX742(ダウケミカル社製)、テトラキス(p−ヒドロキシフェニル)エタンのテトラグリシジルエーテルである“エピコート”1031S(ジャパンエポキシレジン株式会社製)、グリセリンのトリグリシジルエーテルである“デナコール”EX−314(ナガセ化成工業株式会社製)、ペンタエリスリトールのテトラグリシジルエーテルである“デナコール”EX−411(ナガセ化成工業株式会社製)などを挙げることができる。
グリシジルアミンの具体例としては、ジグリシジルアニリン、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタンである“スミエポキシ”ELM434(住友化学工業株式会社製)、テトラグリシジル−m−キシリレンジアミンであるTETRAD(登録商標、以下同じ)−X(三菱ガス化学株式会社製)などを挙げることができ、樹脂の伸度を著しく損なわない範囲で使用できる。
さらに、グリシジルエーテルとグリシジルアミンの両構造を併せ持つエポキシ樹脂として、トリグリシジル−m−アミノフェノールである“スミエポキシ”ELM120(住友化学工業株式会社製)、およびトリグリシジル−p−アミノフェノールである“アラルダイト”MY0510(チバガイギー社製)を挙げることができ、樹脂の伸度を著しく損なわない範囲で使用できる。
グリシジルエステルの具体例としては、フタル酸ジグリシジルエステル、テレフタル酸ジグリシジルエステル、ダイマー酸ジグリシジルエステルなどを挙げることができる。
さらに、これら以外のグリシジル基を有するエポキシ樹脂として、トリグリシジルイソシアヌレートを挙げることができる。
分子内に複数の2重結合を有する化合物を酸化して得られるエポキシ樹脂としては、エポキシシクロヘキサン環を有するエポキシ樹脂が挙げられ、具体例としては、ユニオン・カーバイド社のERL−4206、ERL−4221、ERL−4234などを挙げることができる。さらにエポキシ化大豆油なども挙げることができる。
これらエポキシ樹脂の中でも、ビフェニル、ナフタレン、フルオレン、ジシクロペンタジエン、およびオキサゾリドン環から選ばれる少なくとも1つの骨格を有する1種以上のエポキシ樹脂を含むことが好ましい。かかるエポキシ樹脂を1種以上含むことにより、カーボンナノファイバーとの相乗効果により力学特性が著しく向上し、樹脂硬化物の耐熱性も向上できる。
ビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂の市販品としては、例えば“エピコート”YX4000、YX4000H、YL6121(以上、ジャパンエポキシレジン株式会社製)、NC3000、NC3000H(以上、日本化薬株式会社製)などを挙げることができる。
ナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂の市販品としては、“エピクロン”HP4032、HP4032D、H4032H、EXA4750、EXA4700、EXA4701(以上、大日本インキ工業株式会社製)、NC7000L、NC7300L(以上、日本化薬株式会社製)などが挙げられる。
フルオレン骨格を有するエポキシ樹脂の市販品としては、“エポン(登録商標、以下同じ)” HPTレジン1079(シェル社製)、“オグソール(登録商標、以下同じ)”PG、EG(以上、ナガセケムテックス株式会社製)などを挙げることができる。
ジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂の市販品としては、“エピクロン”HP7200L、HP7200、HP7200H、HP7200HH(以上、大日本インキ化学工業株式会社製)、XD−1000−L、XD−1000−2L(以上、日本化薬株式会社製)、“Tactix(登録商標、以下同じ)”556(Huntsman社製)などを挙げることができる。
オキサゾリドン環骨格を有するエポキシ樹脂の市販品としては、“アラルダイト”AER4152、XAC4151(以上、旭化成エポキシ株式会社製)などを挙げることができる。
また、これら樹脂をブレンドしたものなども使用できる。例えば“アラルダイト LY5052”(Huntsman社製)等がある。
本発明において、硬化剤を用いてもよい。硬化剤とは、熱硬化性樹脂との共存下で硬化反応をもたらすものであり、一般的な硬化剤のみならず、開始剤、触媒、硬化促進剤、硬化助剤、およびこれらの組み合わせを含んでもよい。具体的には、硬化剤としては、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、m−フェニレンジアミン、m−キシリレンジアミンのような活性水素を有する芳香族アミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、イソホロンジアミン、ビス(アミノメチル)ノルボルナン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ポリエチレンイミンのダイマー酸エステルのような活性水素を有する脂肪族アミン、これらの活性水素を有するアミンにエポキシ化合物、アクリロニトリル、フェノールとホルムアルデヒド、チオ尿素などの化合物を反応させて得られる変性アミン、ジメチルアニリン、ジメチルベンジルアミン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノールや1−置換イミダゾールのような活性水素を持たない第三アミン、ジシアンジアミド、テトラメチルグアニジン、ヘキサヒドロフタル酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物、メチルナジック酸無水物のようなカルボン酸無水物、アジピン酸ヒドラジドやナフタレンジカルボン酸ヒドラジドのようなポリカルボン酸ヒドラジド、ノボラック樹脂などのポリフェノール化合物、チオグリコール酸とポリオールのエステルのようなポリメルカプタン、三フッ化ホウ素エチルアミン錯体のようなルイス酸錯体、芳香族スルホニウム塩などが挙げられるが、特にこれに限定されるものではない。
これらの硬化剤には、硬化活性を高めるために適宜硬化助剤を組み合わせることができる。好ましい例としては、ジシアンジアミドに、3−フェニル−1,1−ジメチル尿素、3−(3,4−ジクロロフェニル)−1,1−ジメチル尿素(DCMU)、3−(3−クロロ−4−メチルフェニル)−1,1−ジメチル尿素、2,4−ビス(3,3−ジメチルウレイド)トルエンのような尿素誘導体を硬化助剤として組み合わせる例、カルボン酸無水物やノボラック樹脂に第三アミンを硬化助剤として組み合わせる例などがあげられる。硬化助剤として使用される化合物は、単独でもエポキシ樹脂を硬化させる能力を持つものが好ましい。
また、熱可塑性樹脂は、特に限定されるものではなく、いずれの熱可塑性樹脂も好適に使用することができる。具体的には、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)樹脂、ポリ(メチルメタクリレート)樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリビニルアルコール樹脂などを使用することができる。
本発明の2層カーボンナノチューブ含有複合体は、このような樹脂に対して2層カーボンナノチューブを0.001wt%(重量%)以上10wt%以下で含む複合体である。好ましくは0.005wt%以上5wt%以下で含む。これにより、2層カーボンナノチューブ含有複合体の樹脂特性を好適に向上させることができる。
図1は、本発明の実施の形態にかかる2層カーボンナノチューブ含有複合体に対するラマン分光分析を説明するための図である。2層カーボンナノチューブ含有複合体に対して、所定の荷重を加えた状態でラマン分光分析し、歪みと、G’バンドシフトとの関係を示すグラフを取得する。この場合、次の様な操作を行って歪みに対するG’バンドシフトを取得する。
まず、2層カーボンナノチューブと樹脂の複合体1を基材10の上に固定し、基材10に応力を掛けて複合体1を歪ませる(図1参照)。このとき、基材10に加える応力は、シート状の基材10において、表面(図中上面)および裏面(図中下面)から各表面を押圧する方向であって、裏面側における加圧位置が、表面側における加圧位置より中央部に位置するようにそれぞれ加えられる。この基材10の歪みにより、複合体1は、表面側が凸となる弧状をなして歪む。この時の歪み(割合)を歪みゲージで測定し、グラフの横軸にプロットする。
ラマン分光分析は、複合体1が歪んだ状態で波長514nmまたは633nmのレーザーを用いて行う。ラマン分光分析では、照射されたレーザーに応じた複合体1からの散乱光を検出する。このとき、約2600cm−1付近に2層カーボンナノチューブ由来のG’バンドが出現する。ここで、内層側カーボンナノチューブ由来のG’バンドは2590cm−1付近に検出され、外層側カーボンナノチューブ由来のG’バンドは2630cm−1付近に検出される。歪みとG’バンドシフトとの関係を示すグラフにおいて、歪みを加圧率(Strain(%))として横軸にプロットし、内層、外層それぞれのG’バンドシフトを(G’−Band frequency(cm−1))として縦軸にプロットする。
本発明にかかる2層カーボンナノチューブ含有複合体は、引張歪み範囲が0%〜0.4%においてグラフを作製したときに、引張歪みに対するG’バンドシフト(プロット)が、内層側カーボンナノチューブ、外層側カーボンナノチューブにおいてそれぞれ近似直線近傍に位置する。近似直線の作製法は、最小二乗法が好ましい。また、このような直線を作製したときに、それぞれの傾き(cm−1/%)を求めることができる。この傾きの値を用いて、外層側カーボンナノチューブの傾きに対する内層側カーボンナノチューブの傾きの比(内層の傾き/外層の傾き)の値を求めたとき、本発明にかかる複合体は、0.5以上1.5以下となる。さらに好ましくは内層の傾き/外層の傾きの値が、0.8以上1.2以下である。内層の傾き/外層の傾きの値が、0.5以上1.5以下であることは、2層カーボンナノチューブにおいて内層と外層との応力が伝搬していることを示している。外層に加えられた応力が内層に応力伝搬している場合には、同じようなG’バンドのシフトが起こり、この傾きが平行に近くなる。この傾きが規定範囲を超えると外層に加わった力が内層へ伝搬されていないことを示す。2層カーボンナノチューブの外層が樹脂との親和性を発揮し、外部から加わった力が樹脂−外層−内層と応力伝搬することで、内層の非常に高品質なカーボンナノチューブ自身の高機械強度を発揮するため、複合体として非常に高い機械強度を発揮するのである。
本発明にかかる2層カーボンナノチューブ含有複合体は、この外層に由来する傾きの絶対値が10cm−1/%以上50cm−1/%以下であることが好ましく、15cm−1/%以上30cm−1/%以下であることがさらに好ましい。この傾きが規定範囲内であるとは、2層カーボンナノチューブ含有複合体において、マトリックス樹脂と2層カーボンナノチューブの外層との応力が伝搬していること、および2層カーボンナノチューブの弾性率が高いことを示す。
ここで、本発明で好ましく用いられる2層カーボンナノチューブの製造方法は、例えば以下のように製造される。
縦型流動床型反応器中、反応器の水平断面方向全面に、マグネシアに鉄を担持した粉末状の触媒による流動床を形成し、該反応器内にメタンを鉛直方向に流通させ、該メタンを500〜1200℃で、該触媒に接触させ、カーボンナノチューブを製造した後、得られたカーボンナノチューブを精製処理することにより得られる。
触媒である鉄を、担体であるマグネシアに担持させることにより、鉄の粒径をコントロールしやすく、また高密度で鉄が存在しても高温下でシンタリングが起こりにくい。そのため、高品質なカーボンナノチューブを効率よく多量に合成することができる。さらに、マグネシアは酸性水溶液に溶けるので、酸性水溶液で処理するだけでマグネシアおよび鉄の両者を取り除くこともできるため、精製工程を簡便化することができる。
マグネシアは、市販品を使用しても良いし、合成したものを使用しても良い。マグネシアの好ましい製法としては、金属マグネシウムを空気中で加熱する、水酸化マグネシウムを850℃以上に加熱する、または炭酸水酸化マグネシウム3MgCO・Mg(OH)・3HOを950℃以上に加熱する等の方法がある。
マグネシアの中でも軽質マグネシアが好ましい。軽質マグネシアとは、かさ密度が小さいマグネシアであり、具体的には0.20g/mL以下であることが好ましく、0.05〜0.16(g/mL)であることが触媒の流動性の点から好ましい。かさ密度とは単位かさ体積あたりの粉体質量のことである。以下にかさ密度の測定方法を示す。粉体のかさ密度は、測定時の温度および湿度に影響されることがある。ここで言うかさ密度は、温度20±10℃、湿度60±10%で測定したときの値である。測定は、50mLメスシリンダーを測定容器として用い、メスシリンダーの底を軽く叩きながら、予め定めた容積を占めるように粉末を加える。かさ密度の測定に際しては10mLの粉末を加えるものとするが、測定可能な試料が不足している場合には、可能な限り10mLに近い量で行う。その後、メスシリンダーの底を床面1cmの高さから落とすことを20回繰り返した後、目視にて粉末が占める容積値の変化率が±0.2mL(試料が少ない場合は±2%)以内であることを確認し、詰める操作を終了する。もし容積値に目視にて±0.2mL(±2%)を越える変化があれば、メスシリンダーの底を軽く叩きながら粉末を追加し、再度メスシリンダーの底を床面1cmの高さから落とすことを20回繰り返し、目視にて粉末が占める容積値に±0.2mL(±2%)を越える変化がないことを確認して操作を終了する。上記の方法で詰めた一定量の粉末の重量を求めることを3回繰り返し、その平均重量を粉末が占める容積で割った値(=重量(g)/体積(mL))を粉末のかさ密度とする。
担体に担持する鉄は、0価の状態とは限らない。反応中は0価の金属状態になっていると推定できるが、広く鉄を含む化合物または鉄種でよい。例えば、ギ酸鉄、酢酸鉄、トリフルオロ酢酸鉄、クエン酸アンモニウム鉄、硝酸鉄、硫酸鉄、ハロゲン化物鉄などの有機塩または無機塩、エチレンジアミン4酢酸錯体やアセチルアセトナート錯体のような錯塩などが用いられる。また鉄は微粒子であることが好ましい。微粒子の粒径は0.5〜10nmであることが好ましい。鉄が微粒子であると外径の細いカーボンナノチューブが生成しやすい。
カーボンナノチューブ製造用触媒の製造方法は、特に限定されない。例えば、鉄の金属塩を溶解させた非水溶液中(例えばメタノール溶液)又は水溶液中に、マグネシアを含浸し、充分に分散混合した後、乾燥させる。またその後、大気中あるいは窒素、アルゴン、ヘリウムなどの不活性ガス中あるいは真空中において高温(100℃〜600℃)で加熱してもよい(含浸法)。あるいは鉄の金属塩を溶解させた水溶液中に、マグネシアなどの担体を含浸して十分に分散混合し、加熱加圧下(100℃〜200℃、4〜15(kgf/cm))で反応させた後に、大気中あるいは窒素などの不活性ガス中で、高温(400℃〜700℃)で加熱しても良い(水熱法)。水熱法によるカーボンナノチューブ製造用触媒の製造方法は、鉄化合物とMg化合物とを水中で混合撹拌し、該混合液を加熱、加圧による水熱反応で触媒前駆体が得られ、該触媒前駆体を特定の温度で加熱することで得られる。水熱反応を行うことで、鉄化合物とMg化合物とがそれぞれ加水分解され、脱水重縮合を経由して複合水酸化物となる。これにより鉄が水酸化Mg中に高度に分散された状態の触媒前駆体になる。
Mg化合物としては硝酸塩、亜硝酸塩、硫酸塩、硫酸アンモニウム塩、炭酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、酸化物および水酸化物が好ましく、酸化物がより好ましい。
鉄化合物とMg化合物との使用量は、鉄化合物中の鉄成分量が、Mg化合物のMgO換算量に対して、0.1wt%以上1wt%以下となるよう混合しておくことが2層を含有する比較的細いカーボンナノチューブを製造しやすい点で好ましく、より好ましくは0.2wt%以上0.6wt%以下の範囲である。上記範囲より鉄成分量が多い場合には、担持される鉄粒子の粒子径が大きくなり、得られるカーボンナノチューブも太くなる傾向にあるため、比較的細いカーボンナノチューブを製造しようとする場合には注意を要するが、水熱反応後、加熱して薄片状MgO触媒を製造する場合には、直接MgOに鉄化合物を担持する場合に比較して鉄粒子の粒度のバラツキも少なく、比較的直径の揃った2層カーボンナノチューブを得ることができる。
また水とMg化合物とはモル比で4:1〜100:1で混合することが好ましく、より好ましくは9:1〜50:1であり、更に好ましくは9:1〜30:1である。
尚、鉄化合物とMg化合物とはあらかじめ混合、濃縮乾固したものを水中で混合撹拌して水熱反応を行っても良いが、工程を簡略化するために、鉄化合物とMg化合物とを直接水中に加えて、水熱反応に供することが好ましい。水熱反応は加熱、加圧下で行われるが、オートクレーブなどの耐圧容器中で懸濁状態を含む混合水を100℃〜250℃の範囲で加熱し、自生圧を発生させることが好ましい。加熱温度は100℃〜200℃の範囲がより好ましい。尚、不活性ガスを加えて圧力をかけてもかまわない。カーボンナノチューブ製造用触媒の製造方法において、水熱反応時の加熱時間は加熱温度と密接に関係しており、通常は30分〜10時間程度で行われ、温度が高いほど短時間で水熱反応は短くてすむ。例えば250℃で行う場合は30分〜2時間が好ましく、100℃で行う場合は2時間〜10時間が好ましい。
水熱反応後、触媒前駆体は、スラリー状の懸濁液になっている。回収方法はこだわらないが、好ましくは濾過あるいは遠心分離することにより、容易に触媒前駆体を回収することができる。より好ましくは濾別であり、吸引濾過または自然濾過のどちらで行ってもかまわない。
水熱処理後、固液分離した触媒前駆体は、鉄とMgとの複合水酸化物であり、加熱することにより鉄とMgとの複合酸化物となる。加熱処理は大気または窒素、アルゴン、ヘリウムなどの不活性ガス中で行われ、400℃〜1000℃の範囲で加熱することが好ましく、400℃〜700℃の範囲がさらに好ましい。加熱時間は1時間〜5時間の範囲で行うことが好ましい。加熱前の触媒前駆体は、水酸化Mgが主体であるため、薄片状の1次構造をとっている。加熱温度が高すぎると脱水の際に焼結が起こり、薄片状の2次構造を維持できず、球形あるいは立方体、直方体の構造をとってしまう。これにより、鉄がMgO内部に取り込まれ、カーボンナノチューブの合成に際しては不効率となる可能性がある。
本発明において反応方式は特に限定しないが、縦型流動床型反応器を用いて反応させることが好ましい。縦型流動床型反応器とは、原料(炭素源)となるメタンが、鉛直方向(以下「縦方向」と称する場合もある)に流通するように設置された反応器である。該反応器の一方の端部から他方の端部に向けた方向にメタンが流通し、触媒層を通過する。反応器は、例えば管形状を有する反応器を好ましく用いることができる。なお、上記において、鉛直方向とは、鉛直方向に対して若干傾斜角度を有する方向も含む(例えば水平面に対し90°±15°、好ましくは90°±10°)。なお、横型(水平方向)であっても反応させることができるが、好ましいのは縦型(鉛直方向)である。なお、メタンの供給部および排出部は、必ずしも反応器の端部である必要はなく、メタンが前記方向に流通し、その流通過程で触媒層を通過すればよい。
図2は、本実施の形態にかかる2層カーボンナノチューブ含有複合体のカーボンナノチューブを製造するカーボンナノチューブ製造装置の構成例を示す模式図である。図2に示す合成装置100は、メタンなどの炭素源を用いてカーボンナノチューブを合成する反応管101と、反応管101の外周に設けられ、通電により発熱し、発生した熱によって反応管101内を加熱する電気炉102と、一端が反応管101に連通し、反応管101内に炭素源を導入する導入管103と、導入管103の他端に接続し、気体状の炭素源を供給する炭素源供給部104aからの炭素源の線速を制御する線速制御部104と、導入管103の中央部で分岐された側管103aに接続し、移動相としてのキャリアガスを供給するキャリアガス供給部105aからのキャリアガスの線速を制御する線速制御部105と、導入管103の反応管101側の端部に設けられ、触媒を保持する石英焼結板106aを有する触媒保持部106と、反応管101内で生成されたカーボンナノチューブを回収する回収部107と、触媒保持部106の温度を計測する温度計108と、を備える。また、回収部107には、反応管101および回収部107を通過したキャリアガスなどを排出するガス排出管107aが設けられている。
触媒は、縦型流動床型反応器中、反応器の水平断面方向全面に存在させた状態にあり、反応時には流動床を形成した状態とする。このようにすることにより、触媒とメタンを有効に接触させることができる。触媒保持部106では、反応管101の中に触媒を置く台である石英焼結板106aが設置され、その上に形成された触媒層が、反応管101の水平断面方向全体に存在している。
流動床型は、触媒を連続的に供給し、反応後の触媒とカーボンナノチューブを連続的に取り出すことにより、連続的な合成が可能であり、カーボンナノチューブを効率よく得ることができ好ましい。
流動床型反応において、原料のメタンと触媒が均一に効率よく接触するためにカーボンナノチューブ合成反応が均一に行われ、アモルファスカーボンなどの不純物による触媒被覆が抑制され、触媒活性が長く続くと考えられる。
縦型反応器とは対照的に、横型反応器は横方向(水平方向)に設置された反応器内に、石英板上に置かれた触媒が設置され、該触媒上をメタンが通過して接触、反応する態様の反応装置を指す。この場合、触媒表面ではカーボンナノチューブが生成されるが、触媒内部にはメタンが到達しないため、縦型反応器に比較して収量が少なくなる傾向にある。これに対して、縦型反応器では触媒全体に原料のメタンが接触することが可能となるため、効率的に、多量のカーボンナノチューブを合成することが可能である。反応器は耐熱性であることが好ましく、石英製、アルミナ製等の耐熱材質からなることが好ましい。
メタンの線速は8cm/sec以上で流通させる。カーボンナノチューブ合成反応においては、メタンの分解効率をあげて、収率を上げるためにメタンを低線速にて流通させることが通常であったが、本発明では触媒の凝集体を従来よりも大きくしている。そのため、低線速にて加熱温度下流通させると触媒層が流動せず、メタンは触媒層の最も通りやすい箇所だけを通ってしまうという、いわゆるショートパスの問題が生じる。よって、線速は、8cm/sec以上、10cm/sec以下が好ましい。
合成された2層カーボンナノチューブは、通常触媒を除去し、必要に応じ、精製や酸化処理等を経て複合体形成に供される。
上述した実施の形態によれば、荷重を加えた状態でラマン分光分析した場合に得られる歪みとG’バンドシフトとの関係を示すグラフにおいて、外層側カーボンナノチューブに由来する直線の傾きに対する内層側カーボンナノチューブに由来する直線の傾きの比が、0.5以上1.5以下となるようにしたので、2層カーボンナノチューブと樹脂の親和性が高く、かつ高い機械強度を有する2層カーボンナノチューブ含有複合体を得ることができる。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、下記の実施例は例示のために示すものであって、いかなる意味においても、本発明を限定的に解釈するものとして使用してはならない。
<参考例>
[カーボンナノチューブ製造例]
(触媒調製)
約24.6gのクエン酸鉄(III)アンモニウム(和光純薬工業株式会社製)をイオン交換水6.7kgに溶解した。この溶液に、酸化マグネシウム(岩谷化学工業株式会社製 MJ−30)を約1000g加え、撹拌機で60分間激しく撹拌処理した後に、得られた懸濁液を、容量が10Lのオートクレーブ容器中に導入した。密閉した状態で撹拌しながら、160℃に加熱し6時間保持した。その後オートクレーブ容器を放冷し、容器からスラリー状の白濁物質を取り出し、過剰の水分を吸引濾過により濾別した。このときの濾取物中の含水分率は2.16であった。さらに、濾取物を120℃の乾燥機中で加熱乾燥し、水分を蒸発させた。その後、得られた固形分を乳鉢で細粒化しながら、篩いを用いることによって0.85mm〜2.36mmの範囲の粒径の触媒を回収した。得られた触媒中、2.0mm〜2.36mmの範囲の粒径の触媒は27.5%含まれていた。これらの顆粒状触媒を電気炉中に導入し、大気下600℃で3時間加熱した。また、エネルギー分散型X線分析装置(EDX)により触媒に含まれる鉄含有量を分析した結果、触媒中の鉄含有率は0.40wt%であった。
(カーボンナノチューブ製造)
図2に示した合成装置100を用いてカーボンナノチューブの合成を行った。反応管101には、内径75mm、中心軸方向の長さ1100mmである円筒形石英管を用いた。また、反応管101を任意温度に保持できるように、反応管101の円周を取り囲む円環状をなす電気炉102を3台配置した。
上述したような合成装置100において、調製した固体触媒132gをとり、鉛直方向に設置した反応管101の中央部の石英焼結板106a上に導入することで触媒保持部106に触媒層を形成させた。反応管101内の温度が約860℃になるまで、触媒層を加熱しながら、反応管101底部から反応管101上部方向へ向けて線速制御部105の制御のもと窒素ガスを21.6L/minで供給し、触媒層を通過するように流通させた。その後、窒素ガスを供給しながら、さらに線速制御部104の制御のもとメタンガスを1.0L/minで46分間導入して触媒層を通過するように通気し、反応させた。この際のメタンを含むガスの線速(v)は8.55cm/secであった。メタンガスの導入を止め、窒素ガスを21.6L/min通気させながら、反応管101の内部を室温まで冷却した。加熱を停止させ室温まで放置し、室温になってから反応器から触媒とカーボンナノチューブを取り出した。
(精製工程1:液相酸化処理+アンモニア処理+硝酸ドープ)
得られたカーボンナノチューブが付着した触媒担体を約130g用いて4.8Nの塩酸水溶液2000mL中で1時間撹拌することで触媒金属である鉄とその担体であるMgOを溶解した。得られた黒色懸濁液は濾過した後、濾取物を再度4.8Nの塩酸水溶液400mLに投入し脱MgO処理をし、濾取した。本実施例では、この操作を2回繰り返して脱MgO処理を行った。その後、イオン交換水で濾取物の懸濁液が中性となるまで水洗後、水を含んだウェット状態のままカーボンナノチューブを得た。
得られたウェット状態のカーボンナノチューブの乾燥重量分に対して、約0.3倍の重量の濃硝酸(キシダ化学株式会社製 1級 Assay60%)を添加した。その後、約140℃に加熱したオイルバスで24時間攪拌しながら加熱還流した。加熱還流後、室温まで放冷し、カーボンナノチューブを含む硝酸溶液をイオン交換水で3倍に希釈して、オムニポアメンブレンフィルター(ミリポア社製、フィルタータイプ:1.0μmJA)を設置した内径90mmの濾過器を用いて吸引濾過した(液相酸化処理)。イオン交換水で濾取物の懸濁液が中性となるまで水洗後、水を含んだウェット状態のままカーボンナノチューブ(第1ウェットケーク)を得た。
得られた第1ウェットケークを28%アンモニア水溶液(キシダ化学株式会社製 特級)0.3Lに添加し、室温下で1時間撹拌した。その後、該溶液をオムニポアメンブレンフィルター(ミリポア社製、フィルタータイプ:1.0μmJA)を設置した内径90mmの濾過器を用いて吸引濾過した(アンモニア処理)。その後メンブレンフィルター上のウェットケークが中性付近になるまでイオン交換水で洗浄し、水を含んだウェット状態のままカーボンナノチューブ(第2ウェットケーク)を得た。
得られた第2ウェットケークを60%硝酸水溶液(キシダ化学株式会社製 1級 Assay60%)0.3L中に添加した。室温で24時間撹拌した後にミリポア社製オムニポアメンブレンフィルター(フィルタータイプ:1.0μmJA)を設置した内径90mmの濾過器を用いて吸引濾過した(硝酸ドープ)。その後メンブレンフィルター上のウェットケークが中性付近になるまでイオン交換水で洗浄した。この洗浄処理により得られた水を含んだウェット状態のカーボンナノチューブ(第3ウェットケーク)を保存した。
得られたウェット状態のカーボンナノチューブ(第3ウェットケーク)は適宜、120℃の乾燥機にて水分を蒸発させ、乾燥した形で用いた。
(精製工程2:気相酸化処理)
得られたカーボンナノチューブが付着した触媒担体30gを磁性皿(φ150mm)に取り、マッフル炉(ヤマト科学株式会社製、FP41)にて大気下、500℃まで60分かけて昇温し、さらに500℃を維持した状態で60分保持した後、自然放冷し、焼成したカーボンナノチューブ集合体を得た。
さらに、上記の焼成したカーボンナノチューブ集合体から触媒を除去するため、次のように精製処理を行った。まず、6Nの塩酸水溶液を焼成したカーボンナノチューブ集合体に添加し、80℃のウォーターバス内で2時間攪拌した。孔径1μmのフィルターを用いて濾過して得られた回収物を、6Nの塩酸水溶液に添加し、80℃のウォーターバス内で60分攪拌した。これを孔径1μmのフィルターを用いて濾過し、数回水洗した後、濾過物を120℃のオーブンで一晩乾燥することでマグネシアおよび金属を除去でき、カーボンナノチューブを精製した。
本実施例において、カーボンナノチューブの合成と各種物性評価は以下の方法で行った。
[カーボンナノチューブの分析]
上述した参考例により製造した2層カーボンナノチューブについて各種分析を行った。
(精製工程1により得られた2層カーボンナノチューブの高分解能透過型電子顕微鏡分析)
上記のようにして得た2層カーボンナノチューブを高分解能透過型電子顕微鏡で観察したところ、カーボンナノチューブはきれいなグラファイト層で構成されており、層数が2層のカーボンナノチューブが観察された。またカーボンナノチューブ100本中、91本を2層のカーボンナノチューブが占めていた。また任意に抽出した100本のカーボンナノチューブについてカーボンナノチューブの外径を測定したときの算術平均値は1.7nmであった。
(精製工程1により得られた2層カーボンナノチューブのラマン分光分析)
上記のようにして得た2層カーボンナノチューブに対し、ラマン分光測定を行った。ラマン分光計(ホリバ ジョバンイボン社製 INF-300)に粉末試料を設置し、633nmのレーザー波長を用いて測定を行った。測定に際しては3箇所、別の場所にて分析を行い、相加平均をとった。その結果、G/D比は52であり、グラファイト化度の高い高品質2層カーボンナノチューブであった。
(精製工程1により得られた2層カーボンナノチューブのXPS分析)
上記のようにして製造した2層カーボンナノチューブに対し、XPS(X-ray Photoelectron Spectroscopy、X線光電子分光)測定を行った。XPS測定は以下の条件で測定を行った。
励起X線:Monochromatic Al K1,2
X線径:1000μm
光電子脱出角度:90°(試料表面に対する検出器の傾き)
XPS測定による表面組成(at%)解析の結果、C;94.4%、N;0.2%、O;5.1%であった。したがって、カーボンナノチューブ中の炭素原子に対する酸素原子の割合は5.4%(at%)であった。
[コンポジットの調製1]
ナノチューブコンポジットは、エポキシ樹脂(Araldite(登録商標) LY 5052)と硬化剤(Araldite(登録商標) HY 5052)とからなる2液混合型エポキシを用いて調製した。超音波プローブ(Cole−Parmer社製 Ultrasonic Processor CPX 750、振幅 35%、出力 750W)を用いてカーボンナノチューブを硬化剤に分散した。サンプルの過熱を避けるため、30秒のプローブの使用後は次のプローブ処理までの間隔を3分間とし、この処理を6回繰り返して計5分の超音波を照射した。その後、樹脂:硬化剤が100:38の重量部割合となるよう、エポキシ樹脂を硬化剤に加えた。カーボンナノチューブ−エポキシコンポジットを、カーボンナノチューブを含まない同組成のエポキシ硬化物材の上にキャストし、室温で7日間静置して硬化させた。コンポジットのカーボンナノチューブ濃度は約0.01wt%とした。
[コンポジットの調製2]
2mgのカーボンナノチューブを超音波プローブ(Cole−Parmer社製 Ultrasonic Processor CPX 750、振幅 35%、出力 750W)を用いて30分間、超音波により5gの水に分散させた。カーボンナノチューブの懸濁液を15gのPVA(Polyvinyl Alcohol)水溶液に混合し、超音波バスを用いて15時間超音波照射した。このとき、PVAの濃度は10%であり、投入したカーボンナノチューブは0.1wt%(ポリマーに対して)である。PVA/2層カーボンナノチューブ複合体フィルム(コンポジット)はPMMA(Poly Methyl Methacrylate)上に超音波処理液をキャストし、12時間乾燥することで作製した。
[ラマン分光分析法によるG’バンドシフト測定]
ラマンスペクトルは、波長633nmまたは514nmを用いたRenishaw 2000(Renishaw社製)で測定した。このとき、サンプルの加熱を避けるために、レーザーパワー密度は14μW、スポットサイズは2μmとした。G’バンドスペクトルについては、GramsAIソフトウェアを使ってカーブフィッティングした。カーブフィッティングでは、G’バンドを、外層側カーボンナノチューブを示す2630cm−1(G’)付近のピークと、内層側カーボンナノチューブを示す2590cm−1(G’)付近のピークとにフィッティングした。カーボンナノチューブ−エポキシコンポジットに対し、それをサポートするエポキシ材ごと4点曲げにより機械的に歪みを与えた(図1参照)。コンポジットフィルムへの歪みはエポキシ材の表面歪みと同等に与えられ、歪みゲージで歪みを測定した。カーボンナノチューブからのラマンスペクトルを0〜0.4%引張歪み範囲の異なる歪みレベルで採取した。
<実施例1>
参考例(精製工程1)で記載した方法により得た2層カーボンナノチューブと、参考例(コンポジットの調製1)により得た2層カーボンナノチューブコンポジットとを用いた。
図3は、本発明の実施例にかかる2層カーボンナノチューブ含有複合体のカーボンナノチューブにおける歪みとG’バンドシフトとの関係を示すグラフである。ラマン分光分析は、633nmのレーザー波長を用いて行った。図3に示すように、付加歪みに対し、2つにピーク分割したG’バンドシフトであるG’バンドシフトおよびG’バンドシフトをプロットした。外層側カーボンナノチューブを示すG’に応じた傾きは−18.2cm−1/%、内層側カーボンナノチューブを示すG’に応じた傾きは−17.0cm−1/%であった。これにより、外層側カーボンナノチューブに由来する直線の傾きに対する内層側カーボンナノチューブに由来する直線の傾き(内層の傾き/外層の傾き)は、0.93であった。このことは、コンポジットに歪みを与えたときの内層側カーボンナノチューブと外層側カーボンナノチューブとの応力伝達が大きく、ほとんど同等の応力を負担していることを示すばかりでなく、後述する比較例1に対比してマトリックスエポキシ樹脂と外層側カーボンナノチューブとの応力伝達が大きいことを示している。
<実施例2>
参考例(精製工程1)で記載した方法により得た2層カーボンナノチューブと、参考例(コンポジットの調製2)により得た2層カーボンナノチューブコンポジットとを用いた。
図4は、本実施例にかかる2層カーボンナノチューブ含有複合体のカーボンナノチューブにおける歪みとG’バンドシフトとの関係を示すグラフである。ラマン分光分析は633nmのレーザー波長を用いて行った。図4に示すように、付加歪みに対し、2つにピーク分割したG’バンドシフトであるG’バンドシフトおよびG’バンドシフトをプロットした。内層側カーボンナノチューブを示すG’2に応じた傾きは−23.0cm−1/%、外層側カーボンナノチューブを示すG’1に応じた傾きは−29.0cm−1/%であった。これにより、外層側カーボンナノチューブに由来する直線の傾きに対する内層側カーボンナノチューブに由来する直線の傾き(内層の傾き/外層の傾き)は、0.79であった。このことは、コンポジットに歪みを与えたときの内層側カーボンナノチューブと外層側カーボンナノチューブとの応力伝達が大きく、ほとんど同等の応力を負担していることを示すばかりでなく、後述する比較例1に対比してマトリックスエポキシ樹脂と外層側カーボンナノチューブとの応力伝達が大きいことを示している。
<実施例3>
ラマン分光分析を514nmのレーザー波長を用いた以外は、実施例2と同様の操作を行った。
図5は、本実施例にかかる2層カーボンナノチューブ含有複合体のカーボンナノチューブにおける歪みとG’バンドシフトとの関係を示すグラフである。図5に示すように、付加歪みに対し、2つにピーク分割したG’バンドシフトであるG’バンドシフトおよびG’バンドシフトをプロットした。内層側カーボンナノチューブを示すG’2に応じた傾きは−19.0cm−1/%、外層側カーボンナノチューブを示すG’1に応じた傾きは−26.0cm−1/%であった。これにより、外層側カーボンナノチューブに由来する直線の傾きに対する内層側カーボンナノチューブに由来する直線の傾き(内層の傾き/外層の傾き)は、0.73であった。
<実施例4>
参考例(精製工程2)で記載した方法により得た2層カーボンナノチューブと、参考例(コンポジットの調製2)により得た2層カーボンナノチューブコンポジットとを用いた。また、ラマン分光分析は633nmのレーザー波長を用いて行った。
図6は、本実施例にかかる2層カーボンナノチューブ含有複合体のカーボンナノチューブにおける歪みとG’バンドシフトとの関係を示すグラフである。図6に示すように、付加歪みに対し、2つにピーク分割したG’バンドシフトであるG’バンドシフトおよびG’バンドシフトをプロットした。内層側カーボンナノチューブを示すG’2に応じた傾きは−20.0cm−1/%、外層側カーボンナノチューブを示すG’1に応じた傾きは−24.0cm−1/%であった。これにより、外層側カーボンナノチューブに由来する直線の傾きに対する内層側カーボンナノチューブに由来する直線の傾き(内層の傾き/外層の傾き)は、0.83であった。このことは、コンポジットに歪みを与えたときの内層側カーボンナノチューブと外層側カーボンナノチューブとの応力伝達が大きく、ほとんど同等の応力を負担していることを示すばかりでなく、後述する比較例1に対比してマトリックスエポキシ樹脂と外層側カーボンナノチューブとの応力伝達が大きいことを示している。
<実施例5>
ラマン分光分析を514nmのレーザー波長を用いた以外は、実施例4と同様の操作を行った。
図7は、本実施例にかかる2層カーボンナノチューブ含有複合体のカーボンナノチューブにおける歪みとG’バンドシフトとの関係を示すグラフである。図7に示すように、付加歪みに対し、2つにピーク分割したG’バンドシフトであるG’バンドシフトおよびG’バンドシフトをプロットした。内層側カーボンナノチューブを示すG’2に応じた傾きは−18.0cm−1/%、外層側カーボンナノチューブを示すG’1に応じた傾きは−24.0cm−1/%であった。これにより、外層側カーボンナノチューブに由来する直線の傾きに対する内層側カーボンナノチューブに由来する直線の傾き(内層の傾き/外層の傾き)は、0.75であった。
<比較例1>
[ピーポッド由来2層カーボンナノチューブの調製]
市販のアーク放電法単層カーボンナノチューブ(Nanocarblab社製)を原料に2層カーボンナノチューブを製造した。まず、単層カーボンナノチューブを硝酸処理、空気中熱処理、アルゴン中での1000℃熱処理を経て高純度化して供給した。単層カーボンナノチューブの断片化(短尺化)効果を最小限にするため、および後に続くポリマーへの分散工程を容易にするため、乾燥工程を、フリーズドライ法により行った。この処理の結果としての材料は、約70%の単層カーボンナノチューブと約30%の多層炭素シェルとを含む粉末であった(詳細は、S.Cui,et.al., Advanced Materials, 21 (2009) 3591のSupporting Informationを参照)。その単層カーボンナノチューブ(SWNTs)を市販のフラーレン(ALFA AESAR製、98%C60+2%C70、purity>98%)と混合した後、石英アンプルに導入した。水分散性を容易にするためにアンプル内を200℃に維持しつつ、窒素置換、真空引きを繰り返し、最後に真空状態でシールした。そのアンプルは約500℃に維持された熱処理炉に入れ、ピーポッド材料(C60を含むSWNTs)となるように24時間処理した。ピーポッド材料の収率は、75%程度であった。その他の成分は単層カーボンナノチューブのままであった。石英アンプルを開封し、熱処理炉に入れて1300℃まで真空中で処理した。この処理でフラーレンを合一させて単層カーボンナノチューブとし、単層カーボンナノチューブ中に単層カーボンナノチューブを、すなわち2層カーボンナノチューブを合成した。単層カーボンナノチューブに導入されなかった余剰のフラーレンは熱処理昇温過程における昇華によって除去した。ピーポッド材料中のフラーレン間のスペースにより、合一させた単層カーボンナノチューブは、外層側カーボンナノチューブの全長に渡って完全な一本のチューブである内層側カーボンナノチューブに生成することは出来ず、空の部分を含む結果となった。X線回折法によって、内層側カーボンナノチューブと外層側カーボンナノチューブのナノチューブ長さ比は0.6以下と計算された。ただし、フラーレンのまま存在しているものや20nm以下の短い内層側カーボンナノチューブはほとんど見つからなかった。
図8は、本実施例(比較例1)にかかる2層カーボンナノチューブ含有複合体のカーボンナノチューブにおける歪みとG’バンドシフトとの関係を示すグラフである。図8に示すように、付加歪みに対し、2つにピーク分割したG’バンドシフトであるG’バンドシフトおよびG’バンドシフトをプロットした。外層側カーボンナノチューブを示すG’に応じた傾きは−11cm−1/%、内層側カーボンナノチューブを示すG’に応じた傾きは−0.7cm−1/%であった。これにより、外層側カーボンナノチューブに由来する直線の傾きに対する内層側カーボンナノチューブに由来する直線の傾き(内層の傾き/外層の傾き)は、0.06であった。このことは、内層側カーボンナノチューブと外層側カーボンナノチューブとの間で応力伝搬されていないことを示している。
本発明の2層カーボンナノチューブ含有複合体は、2層カーボンナノチューブと樹脂との親和性が高く、かつ機械強度が高い2層カーボンナノチューブ含有複合体を取得することに好適に採用できる。
1 複合体
10 基材
100 合成装置
101 反応管
102 電気炉
103 導入管
103a 側管
104,105 線速制御部
104a 炭素源供給部
105a キャリアガス供給部
106 触媒保持部
106a 石英焼結板
107 回収部
107a ガス排出管
108 温度計

Claims (9)

  1. 内層側カーボンナノチューブおよび外層側カーボンナノチューブからなる2層カーボンナノチューブと、樹脂とを含む2層カーボンナノチューブ含有複合体であって、
    荷重を加えた状態でラマン分光分析した場合に得られる当該2層カーボンナノチューブ含有複合体の歪みとG’バンドシフトとの関係を示すグラフにおいて、前記外層側カーボンナノチューブに由来する直線の傾きに対する前記内層側カーボンナノチューブに由来する直線の傾きの比の値が、0.5以上1.5以下である2層カーボンナノチューブ含有複合体。
  2. 前記2層カーボンナノチューブは、酸素を含む官能基で修飾されている請求項1に記載の2層カーボンナノチューブ含有複合体。
  3. 前記官能基は、水酸基またはカルボシキル基である請求項2に記載の2層カーボンナノチューブ含有複合体。
  4. 前記2層カーボンナノチューブ中の炭素原子に対する酸素原子の割合が、0.1at%以上20at%以下である請求項2または3に記載の2層カーボンナノチューブ含有複合体。
  5. 前記2層カーボンナノチューブを波長633nmでラマン分光分析した場合のDバンドの高さに対するGバンドの高さの比の値が、20以上である請求項1〜4のいずれか一つに記載の2層カーボンナノチューブ含有複合体。
  6. 前記樹脂は、熱硬化性樹脂である請求項1〜5のいずれか一つに記載の2層カーボンナノチューブ含有複合体。
  7. 前記樹脂は、エポキシ樹脂である請求項1〜6のいずれか一つに記載の2層カーボンナノチューブ含有複合体。
  8. 前記2層カーボンナノチューブは、前記樹脂に対して、0.001重量%以上10重量%以下で含まれる請求項1〜7のいずれか一つに記載の2層カーボンナノチューブ含有複合体。
  9. 前記外層側カーボンナノチューブに由来する直線の傾きの絶対値が、10cm−1/%以上50cm−1/%以下である請求項1〜8のいずれか一つに記載の2層カーボンナノチューブ含有複合体。
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