[第1実施形態]
以下、本発明の好適な第1実施の形態について説明する。
(プリンタの全体構成)
図1に示すように、本実施の形態に係るプリンタ1は、キャリッジ2、インクジェットヘッド3、2つの用紙搬送ローラ4、プラテン5、メンテナンスユニット6などを備えている。
キャリッジ2は、走査方向に延びた2本のガイドレール11に、走査方向に移動自在に支持されている。キャリッジ2は、図示しないベルトやプーリなどを介して、キャリッジモータ56(図3参照)と接続され、キャリッジモータ56により駆動されて、走査方向に往復移動する。なお、以下では、図1に示すように走査方向の右側及び左側を定義して説明を行う。
インクジェットヘッド3は、キャリッジ2に搭載され、その下面であるインク吐出面3aに形成された複数のノズル10からインクを吐出させる。複数のノズル10は、走査方向と直交する搬送方向に配列されることによって4つのノズル列9a〜9dを形成している。4つのノズル列9a〜9dは、走査方向の右側からこの順に配列されている。そして、複数のノズル10からは、ノズル列9a〜9dを形成するものからこの順に、ブラック、イエロー、シアン、マゼンタの顔料インクが吐出される。
2つの用紙搬送ローラ4は、搬送方向におけるキャリッジ2の両側に配置されている。用紙搬送ローラ4は、搬送モータ57(図3参照)と接続され、搬送モータ57に駆動されることにより、記録用紙Pを搬送方向に搬送する。プラテン5は、キャリッジ2の下側に、インクジェットヘッド3と対向して配置されている。プラテン5は、用紙搬送ローラ4に搬送された記録用紙Pを下側から支持する。
そして、プリンタ1では、用紙搬送ローラ4により記録用紙Pを搬送方向に搬送させつつ、キャリッジ2とともに走査方向に往復移動するインクジェットヘッド3からインクを吐出させることによって、記録用紙Pに印刷を行う。
(メンテナンスユニット)
メンテナンスユニット6は、プラテン5の右側に配置されている。メンテナンスユニット6は、キャップユニット21、切換バルブ23、吸引ポンプ24、廃液タンク25等を備えている。
キャップユニット21は、プラテン5の右側に隣接して配置されている。キャップユニット21は、2つのノズルキャップ21a、21bが一体となったものである。ノズルキャップ21aと21bとは、ノズルキャップ21bが左側に位置するように走査方向に隣接して配置されている。そして、キャリッジ2を、インクジェットヘッド3がキャップユニット21と対向する位置まで走査方向の右側に移動させると、ブラックインクを吐出するノズル列9aを形成する複数のノズル10がノズルキャップ21aと対向し、カラー(イエロー、シアン、マゼンタ)インクを吐出する3つのノズル列9b〜9dを形成する複数のノズル10がノズルキャップ21bと対向する。また、キャップユニット21は、キャップ昇降機構58(図3参照)により昇降可能となっている。インクジェットヘッド3がキャップユニット21と対向する位置までキャリッジ2を移動させた状態で、キャップ昇降機構58にキャップユニット21を上昇させると、キャップユニット21がインクジェットヘッド3のインク吐出面3aに密着する。これにより、ノズル列9aを形成する複数のノズル10がノズルキャップ21aに覆われ、ノズル列9b〜9cを形成する複数のノズル10がノズルキャップ21b覆われる。
切換バルブ23は、2つのキャップ連通ポート31a、31bと、ポンプ連通ポート32と、大気連通ポート33とを有する。キャップ連通ポート31aは、チューブ26aを介してノズルキャップ21aと連通している。キャップ連通ポート31bは、チューブ26bを介してノズルキャップ21bと連通している。ポンプ連通ポート32は、チューブ26cを介して吸引ポンプ24と連通している。大気連通ポート33は、チューブ26dを介して廃液タンク25と連通している。
そして、切換バルブ23は、これらのポート間の連通関係を切り換える。ここで、切換バルブ23は、詳細な説明は省略するが、例えば、ポート間を連通させるための流路が形成された流路部材と、ポート31a、31b、32、33が形成され、流路部材が移動可能に収容されたカバーとを有し、流路部材がカバー内で移動することによって、ポート間の連通関係を切り換えるものである。
吸引ポンプ24は、チューブポンプであり、図2(a)〜(d)に示すように、ケーシング41、回転板42、チューブ43、コロ44を有している。ケーシング41は、上端部が開口した略円柱形状の部材である。回転板42は、円形の板状体であり、ケーシング41の上端部の開口を塞いでいる。回転板42の中央部には、ギア部42aが設けられている。ギア部42aは、ポンプモータ59に接続され、ポンプモータ59を駆動させると、回転板42が回転する。また、回転板42には、貫通溝42bが形成されている。貫通溝42bは、円弧に沿って延びているが、この円弧の中心は回転板42の中心とずれている。これにより、貫通溝42bは、図2(a)〜(d)の方向から見て、時計周り方向の上流側から下流側に向かうほど、回転板42の径方向において、回転板42の中心に近づく。
チューブ43は、ケーシング41の内部空間41aに収容されている。チューブ43は、内部空間41aの内壁面41bに沿って約1周半にわたってらせん状に延びている。また、チューブ43の両端部は、それぞれ、チューブ26c、26eと接続されている。コロ44は、円柱形状の部材であり、ケーシング41の内部空間41a内に収容されている。コロ44の中央部には、上方に突出した突出部44aが設けられている。突出部44aは、回転板42の貫通溝42bに挿通されている。
これにより、吸引ポンプ24では、回転板42を図2(a)、(b)の時計回り方向(本発明の「第1方向」)に回転させると、図2(a)、(b)に示すように、突起44aが貫通溝42bに案内されることにより、コロ44がケーシング41の径方向の外側に移動して、チューブ43を押し潰す。これにより、チューブ43のチューブ26c側の部分とチューブ26e側の部分との連通が遮断された吸引可能状態となる。そして、この状態で、回転板42を、さらに図2(a)、(b)の時計回り方向に回転させると、コロ44が、チューブ43を押し潰した状態で、ケーシング41の内部空間41aの内壁面41bに沿って、図2(a)、(b)の時計回り方向に移動する。これにより、吸引が行われる。
一方、回転板42を図2(c)、(d)の反時計回り方向(本発明の「第2方向」)に回転させると、図2(c)、(d)に示すように、突起44aが貫通溝42bに案内されることにより、コロ44がケーシング41の径方向の内側に移動して、チューブ43から離れる。これにより、チューブ43を介してチューブ26cとチューブ26e側の部分とが連通した連通状態となる。
ここで、吸引ポンプ24には、コロ44の位置を検出するためのセンサなどは設けられておらず、コロ44がどこに位置しているのかを検出することはできない。しかしながら、吸引ポンプ24では、コロ44の位置によらず、回転板42を1周させる間に、吸引可能状態と連通状態との間での切換が行われる。そのため、第1実施形態では、吸引ポンプ24を1周させることで、吸引可能状態と連通状態との切換を行う。
廃液タンク25は、後述の吸引パージ、空吸引、クリーニングなどにより排出されたインク等を貯留するためのものである。また、廃液タンク25のインク等が貯留される空間は大気連通している。これにより、大気連通ポート33は、チューブ26d及び廃液タンク25を介して大気連通している。また、吸引ポンプ24を上記連通状態にすると、ポンプ連通ポート32が、チューブ26c、26e、吸引ポンプ24及び廃液タンク25を介して大気連通する。
(制御装置)
次に、プリンタ1の動作を制御する制御装置ついて説明する。図2に示すように、制御装置50は、CPU(Central Processing Unit)51、ROM(Read Only Memory)52、RAM(Random Access Memory)53、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)54等を備え、これらが協働して、キャリッジモータ56、インクジェットヘッド3、搬送モータ57、キャップ昇降装置58、切換バルブ23、吸引ポンプ24等の動作を制御する。
ここで、図2では、CPU51を1つだけ図示しているが、制御装置50は、CPU51を1つだけ備え、この1つのCPU51が必要な処理を一括して行うようになっていてもよい。あるいは、制御装置50は、CPU51を複数備え、これら複数のCPU51が必要な処理を分担して行うようになってもよい。また、図2では、ASIC54を1つだけ図示しているが、制御装置50は、ASIC54を1つだけ備え、この1つのASIC54が必要な処理を一括して行うようになっていてもよい。あるいは、制御装置50は、ASIC54を複数備え、これら複数のASIC54が必要な処理を分担して行うようになってもよい。
(メンテナンス)
次に、メンテナンスユニット6を用いたメンテナンスについて説明する。第1実施形態では、図4に示すフローチャートに沿ってメンテナンスを行う。ここで、図4のフローで示される処理は、定期的に実行される、あるいは、ユーザによるプリンタ1の図示しない操作部の操作に応じて実行される。
ここで、プリンタ1では、印刷やメンテナンス等が行われていない待機状態において、図5(a)に示すように、キャップユニット21がインク吐出面3aに密着している。また、切換バルブ23は、キャップ連通ポート31a、31bを、ポンプ連通ポート32と連通させている(本発明の「第4状態」)。また、吸引ポンプ24は上記大気連通状態となっている。なお、図5(a)などでは、吸引ポンプ24に図中上下両方に向いた矢印を示すことによって、吸引ポンプ24が大気連通状態であることを示している。
メンテナンスでは、図4に示すように、まず、切換バルブ23が固着しているか否かを判定する(S101)。より詳細に説明すると、後述の吸引パージ等を行ったときには、切換バルブ23内にインクが流れ込む。切換バルブ23に流れ込んだインクが、そのまま放置されて固化すると、固化したインクによって切換バルブ23が固着してしまう。切換バルブ23が固着してしまうと、切換バルブ23によるポート間の連通関係の切換を行うことができなくなってしまうことがある。そこで、S101では、切換バルブ23がポート間の連通関係を切換不可能な程に固着しているか否かを判定する。
切換バルブ23が固着しているか否かを判定する方法はどのようなものであってもよい。例えば、切換バルブ23に、その移動部分の移動量を検出するためのセンサが設けられている場合に、切換バルブ23を所定時間駆動したときに上記センサの検出結果が変化するか否かによって判定することができる。
切換バルブ23が固着していないと判定された場合には(S101:NO)、そのまま、S103に進む。一方、切換バルブ23が固着していると判定された場合には(S101:YES)、固着解消処理を実行してから(S102)、S103に進む。
固着解消処理では、図5(b)に示すように、切換バルブ23の状態に保持させたまま、吸引ポンプ24を駆動させる。すると、ノズル列9a〜9dを形成する複数のノズル10からインクジェットヘッド3内のインクが排出される。そして、排出されたインクが、ノズルキャップ21a、21b及びチューブ26a、26bを介して、キャップ連通ポート31a、31bから切換バルブ23に流れ込む。これにより、固化したインクが、切換バルブ23に流れ込んだインクの水分によって溶かされ、切換バルブ23の固着が解消される。なお、図6(b)などでは、吸引ポンプ24に下向きの矢印を付すことによって、吸引ポンプ24が吸引可能状態となり、吸引を行っていることを示している。
S103では、ブラックの吸引パージ処理(本発明の「吸引処理」)を実行する。ブラックの吸引パージ処理では、図5(c)に示すように、キャップユニット21をインク吐出面3aに密着させたまま、切換バルブ23に、キャップ連通ポート31aとポンプ連通ポート32とを連通させ、キャップ連通ポート31bと大気連通ポート33とを連通させる(本発明の「第1状態」及び「第2状態」)。そして、この状態で、吸引ポンプ24を駆動させる。すると、ノズルノズル列9aを形成する複数のノズル10からインクジェットヘッド3内のブラックインクが排出される、ブラックの吸引パージ(本発明の「吸引動作」)が行われる。
このとき、ノズルキャップ21a内の圧力が低下するため、図5(c)に示すように、キャップユニット21が全体として上に凸となるように変形する。これにより、ノズルキャップ21a、21b内の容積がともに減少する。そのため、仮に、ノズルキャップ21b内が密閉されていると、ノズルキャップ21b内の圧力が上昇し、ノズル列9b〜9dを形成する複数のノズル10内のインクのメニスカスが破壊されてしまう虞がある。これに対して、第1実施形態では、ブラックの吸引パージが行われるときに、ノズルキャップ21bが大気連通されているため、ノズルキャップ21b内の圧力の上昇を抑えることができる。
次に、カラー(イエロー、シアン、マゼンタ)の吸引パージ処理(本発明の「吸引処理」)を実行する。カラーの吸引パージ処理では、図5(d)に示すように、キャップユニット21をインク吐出面3aに密着させたまま、切換バルブ23に、キャップ連通ポート31aと大気連通ポート33とを連通させ、キャップ連通ポート31bとポンプ連通ポート32とを連通させる(本発明の「第1状態」及び「第2状態」)。そして、この状態で、吸引ポンプ24を駆動させる。すると、ノズル列9b〜9dを形成する複数のノズル10からインクジェットヘッド3内のカラーインクが排出される、カラーの吸引パージ(本発明の「吸引動作」)が行われる。
このときにも、上述したように、キャップユニット21が変形してノズルキャップ21a、21bの容積が減少する。これに対して、第1実施形態では、カラーの吸引パージが行われるときに、ノズルキャップ21aが大気連通されているため、ノズルキャップ21a内の圧力の上昇を抑えることができる。
次に、ブラックの空吸引処理を実行する(S105)。ブラックの空吸引処理では、図6(a)に示すように、キャップ昇降装置58にキャップユニット21をインク吐出面3aから離させ、切換バルブ23にキャップ連通ポート31aとポンプ連通ポート32とを連通させる。そして、この状態で、吸引ポンプ24を駆動させる。すると、ブラックインの吸引パージの際にノズルキャップ21a溜まったインクが排出される。
次に、カラーの空吸引処理を実行する(S106)。カラーの空吸引処理では、図6(b)に示すように、キャップ昇降装置58にキャップユニット21をインク吐出面3aから離させたまま、切換バルブ23にキャップ連通ポート31bとポンプ連通ポート32とを連通させる。そして、この状態で、吸引ポンプ24を駆動させる。すると、カラーインクの吸引パージの際にノズルキャップ21bに溜まったカラーインクが排出される。
なお、ブラック及びカラーの吸引パージ処理、ブラック及びカラーの空吸引処理の順序は図5に示すものには限られない。ブラックの吸引パージ処理の後にブラックの空吸引処理が実行され、カラーの吸引パージ処理の後にカラーの空吸引処理が実行されるような別の順序で、これらの処理を実行してもよい。また、ブラックとカラーの吸引パージ処理及び空吸引処理の両方を行うことにも限られない。ブラックの吸引パージ処理と空吸引処理のみを行ってもよいし、カラーの吸引パージ処理と空吸引処理のみを行ってもよい。
次に、大気連通ポート33及びチューブ26dに溜まったインクを排出させるクリーニングを行わせるためのクリーニング処理を実行する(S107)。ここで、上述の吸引パージや空吸引が行われたときには、切換バルブ23に流れ込んだインクの一部が、大気連通ポート33及びチューブ26dに流れ込んでしまうことがある。一方で、大気連通ポート33及びチューブ26dは、上述の吸引パージや空吸引においてインクを流す経路とはなっていない。そのため、大気連通ポート33及びチューブ26dに流れ込んだインクが、そのまま放置されて固化してしまう虞がある。その結果、大気連通ポート33及びチューブ26dが、固化したインクによって詰まり、大気連通ポート33及びチューブ26dを介してノズルキャップ21a、21bを大気連通させることができなくなってしまう虞がある。
ここで、第1実施形態とは異なり、ノズル10から吐出されるのが染料インクである場合には、かなりの長期間(例えば、数年程度)にわたって、大気連通ポート33及びチューブ26dに流れ込んだインクが放置されなければ、これらの流路が固化したインクによって詰まってしまうことはない。これに対して、第1実施形態では、ノズル10から、染料インクよりも増粘しやすい顔料インクが吐出される。そのため、第1実施形態では、大気連通ポート33及びチューブ26dに流れ込んだインクが放置される期間がそれほど長くなくても、これらの流路が固化したインクで詰まってしまう可能性が高い。そこで、第1実施形態では、これらの流路内に流れ込んだインクを排出させるクリーニングを行わせるためのクリーニング処理を実行する。
クリーニング処理では、図6(c)に示すように、切換バルブ23に、ポンプ連通ポート32と大気連通ポート33とを連通させる(本発明の「第3状態」)。そして、この状態で、吸引ポンプ24を駆動させる。すると、大気連通ポート33及びチューブ26d内のインクが排出される。これにより、大気連通ポート33及びチューブ26dが固化したインクで詰まってしまうのを防止することができる。そして、この後、図5(a)に示す待機状態に戻すための待機処理を実行して(S108)、処理を終了する。
(吸引ポンプの駆動手順)
ここで、上述の固着解消処理、吸引パージ処理、空吸引処理、クリーニング処理等において、制御装置50が吸引ポンプ24を駆動させる手順について説明する。これらの処理において、吸引ポンプ24を駆動させる際には、図7に示すように、まず、制御装置50は、吸引ポンプ24が吸引可能状態となっているか否かを判定する(S201)。吸引ポンプ24が吸引可能状態となっている場合には(S201:YES)、そのまま吸引ポンプ24を回転速度Vdで駆動させることによって吸引動作を開始させる(S203)。
一方、吸引ポンプ24が大気連通状態となっている場合には(S201:NO)、吸引ポンプ24を大気連通状態から吸引可能状態に切り換えてから(S202)、吸引ポンプ24を回転速度Vdで駆動させて吸引動作を開始させる(S203)。これにより、クリーニング処理の直前や、クリーニング処理を行わなかった場合のブラックの吸引パージの直前には、吸引ポンプ24が大気連通状態となっているため、吸引ポンプ24を大気連通状態から吸引可能状態に切り換えてから、吸引動作を開始させることになる。そして、駆動時間Tdが経過するまで(S204:NO)、吸引ポンプ24に吸引動作を継続させ、駆動時間Tdが経過したときに(S204:YES)、吸引動作を停止させて動作を終了する。
固着解消処理や吸引パージ処理において、インクジェットヘッド3から排出されるインクの量は、吸引ポンプ24の回転速度Vdと駆動時間Tdとによって決まる。このとき、本実施の形態とは異なり、駆動時間Tdを、吸引ポンプ24が連通状態から吸引可能状態に切り換わるのにかかる時間も含めた時間とすることも考えられる。しかしながら、上述したように、コロ44の位置によって、回転板42を1周させる間のどの時点で、吸引ポンプ24が吸引可能状態から連通状態に切り換わるかにばらつきが生じる。そのため、駆動時間Tdを、吸引ポンプ24が大気連通状態から吸引可能状態に切り換わるのにかかる時間も含めた時間とすると、吸引ポンプ24が実質的に吸引を行う時間にばらつきが生じ、インクジェットヘッド3から排出されるインクの量にばらつきが生じる虞がある。
そこで、本実施の形態では、吸引ポンプ24の駆動時間Tdを、吸引ポンプ24が吸引可能状態になってからの時間としている。これにより、固着解消処理や吸引パージ処理においてインクジェットヘッド3から排出されるインクの量のばらつきを抑えることができる。
次に、固着解消処理、吸引パージ処理、空吸引処理及びクリーニング処理における、吸引ポンプ24の回転速度Vd及び駆動時間Tdの関係について説明する。これらの処理における、吸引ポンプ24の回転速度Vd及び駆動時間Tdは、図8に示すような関係になっている。すなわち、固着解消処理では、吸引ポンプ24を回転速度Vd1で駆動時間Td1だけ駆動させる。また、ブラック、カラーの吸引パージ処理では、吸引ポンプ24を回転速度Vd1よりも速い回転速度Vd2で、駆動時間Td1よりも短い駆動時間Td2だけ駆動させる。また、ブラック、カラーの空吸引処理では、吸引ポンプ24を、回転速度Vd1よりも速い回転速度Vd3で、駆動時間Td1よりも長い駆動時間Td3だけ駆動させる。また、クリーニング処理では、吸引ポンプ24を、回転速度Vd2、Vd3よりも速い回転速度Vd4で、駆動時間Td2、Td3よりも長い駆動時間Td4だけ駆動させる。なお、回転速度Vd2とVd3、及び、駆動時間Td2とTd3は、それぞれ、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
ここで、吸引パージでは、インクジェットヘッド3内の増粘したインクなどを排出させるために、インクジェットヘッド3からのインクの排出量をある程度多くする必要がある。また、空吸引において、ノズルキャップ21a、21bから排出されるインクの量もある程度多い。これに対して、固着解消処理では、それほど多くのインクを切換バルブ23に流れ込まさなくても、切換バルブ23内の固化したインクを溶かすことができる。
そこで、第1実施形態では、上記のとおり、吸引パージ処理及び空吸引処理において、固着解消処理よりも、吸引ポンプ24の回転速度を速くし、吸引ポンプ24の駆動時間を長くしている。これにより、吸引パージ処理や空吸引処理によって排出されるインクの量が、固着解消処理によって排出されるインクの量よりも多くなる。また、この場合、固着解消処理では、インクジェットヘッド3から排出されたインクが、切換バルブ23内をゆっくりと流れる。これにより、切換バルブ23に流れ込んだインクの水分を効率よく固化したインクに吸収させることができる。
なお、本実施の形態では、ブラックの吸引パージ処理とカラーの吸引パージ処理とで、吸引ポンプ24の回転速度及び駆動時間を同じとしたが、これには限られない。ブラックの吸引パージ処理とカラーの吸引パージ処理とで、吸引ポンプ24の回転速度及び駆動時間の少なくとも一方を異ならせてもよい。
また、本実施の形態では、ブラックの空吸引処理とカラーの空吸引処理とで、吸引ポンプ24の回転速度及び駆動時間を同じとしたが、これには限られない。ブラックの空吸引パージ処理とカラーの空吸引処理とで、吸引ポンプ24の回転速度及び駆動時間の少なくとも一方を異ならせてもよい。
また、大気連通ポート33及びチューブ26dに溜まったインクは大きく増粘していることがある。そこで、第1実施形態では、クリーニング処理において、吸引パージ処理よりも、吸引ポンプ24の回転速度を速くし、吸引ポンプ24の駆動時間を長くしている。これにより、大気連通ポート33及びチューブ26dに溜まったインクを確実に排出させることができる。
[第2実施形態]
次に、本発明の好適な第2実施形態について説明する。図9に示すように、第2実施形態に係るプリンタ100のメンテナンスユニット106は、キャップユニット121と、切換バルブ123と、第1実施形態と同様の、吸引ポンプ24及び廃液タンクとを備えている。切換バルブ123は、切換バルブ23と同様の構成に加えて、2つのキャップ連通ポート134a、134bをさらに備えている。
また、キャップユニット121の、ノズル列9aを形成する複数のノズル10を覆うためのノズルキャップ121aは、チューブ26aを介してキャップ連通ポート31aと連通しているのに加えて、チューブ111aを介して、キャップ連通ポート134aと連通している。また、キャップユニット121の、ノズル列9b〜9dを形成する複数のノズル10を覆うためのノズルキャップ121bは、チューブ26bを介してキャップ連通ポート31bと連通しているのに加えて、チューブ111bを介して、キャップ連通ポート134bと連通している。また、プリンタ100は、図10に示すようにタイマー101を備えている。タイマー101は、後述するキャップ側クリーニング処理が実行されてからの経過時間Tを計測するためものである。
次に、第2実施形態でのメンテナンスについて説明する。第2実施形態では、図11に示すフローチャートに沿って処理を実行することで、メンテナンスを行う。ここで、プリンタ100では、待機状態において、図12(a)に示すように、キャップユニット121がインク吐出面3aに密着している。また、切換バルブ123が、キャップ連通ポート31a、31bとポンプ連通ポート32とが連通させ(本発明の「第4状態」)、キャップ連通ポート134a、134bの他のポートとの連通を遮断している。
メンテナンスでは、図11に示すように、まず、切換バルブ123が固着しているか否かを判定する(S301)。切換バルブ123が固着していないと判定された場合には(S301:YES)、そのまま、S303に進む。一方、切換バルブ123が固着していると判定された場合には(S301:NO)、固着解消処理を実行してから(S302)、S303に進む。
固着解消処理では、図12(b)に示すように、切換バルブ123の状態に保持させたまま、吸引ポンプ24を駆動させる。これにより、インクジェットヘッド3から排出されたインクが、キャップ連通ポート31a、31bから切換バルブ123に流れ込む。そして、切換バルブ123内の固化したインクが、切換バルブ123に流れ込んだインクの水分によって溶かされ、切換バルブ123の固着が解消される。
S303では、ブラックの吸引パージ処理を実行する。ブラックの吸引パージ処理では、図12(c)に示すように、キャップ昇降装置58にキャップユニット121をインク吐出面3aに密着させる。また、切換バルブ123に、キャップ連通ポート31aとポンプ連通ポート32とを連通させ、キャップ連通ポート134aと他のポートとの連通を遮断させる。また、切換バルブ123に、キャップ連通ポート31bの他のポートとの連通を遮断させ、キャップ連通ポート134bと大気連通ポート33とを連通させる。そして、この状態で吸引ポンプ24を駆動させる。これにより、インクジェットヘッド3内のブラックインクが排出される、ブラックの吸引パージが実行される。
なお、このときの切換バルブ123の状態は、ともにノズルキャップ121aに連通するキャップ連通ポート31aと134aとの関係では、本発明の「第7状態」にあり、ノズルキャップ121aに連通するキャップ連通ポート31aと、ノズルキャップ121bに連通するキャップ連通ポート134bとの関係では、本発明の「第1状態」及び「第2状態」にある。
次に、カラーの吸引パージ処理を実行する(S304)。カラーの吸引パージでは、図12(d)に示すように、キャップ昇降装置58にキャップユニット121をインク吐出面3aに密着させる。また、切換バルブ123に、キャップ連通ポート31bとポンプ連通ポート32とを連通させ、キャップ連通ポート134bの他のポートとの連通を遮断させる。また、切換バルブ123に、キャップ連通ポート31aの他のポートとの連通を遮断させ、キャップ連通ポート134aと大気連通ポート33とを連通させる。そして、この状態で吸引ポンプ24を駆動させる。これにより、インクジェットヘッド3内のカラーインクが排出される、カラーの吸引パージが行われる。
なお、このときの切換バルブ123の状態は、ともにノズルキャップ121bに連通するキャップ連通ポート31bと134bとの関係では、本発明の「第7状態」にあり、ノズルキャップ121bに連通するキャップ連通ポート31bと、ノズルキャップ121aに連通するキャップ連通ポート134aとの関係では、本発明の「第1状態」及び「第2状態」にある。
次に、タイマー101が示す経過時間Tが、所定時間Tm以下である場合には(S305:NO)、ブラックの空吸引処理を実行する(S306)。ブラックの空吸引処理では、図13(a)に示すように、キャップ昇降機構58にキャップユニット121をインク吐出面3aに密着させたままにさせる。また、切換バルブ123に、キャップ連通ポート31aとポンプ連通ポート32とを連通させ、キャップ連通ポート134aと大気連通ポート33とを連通させる(本発明の「第5状態」)。また、切換バルブ123に、キャップ連通ポート31bの他のポートとの連通を遮断させ、キャップ連通ポート134bと大気連通ポート33とを連通させる。そして、この状態で吸引ポンプ24を駆動させる。これにより、ブラックの吸引パージでノズルキャップ121aに溜まったブラックインクが排出される、ブラックの空吸引が行われる。
続いて、カラーの空吸引処理を実行する(S307)。カラーの空吸引処理では、図13(b)に示すように、キャップ昇降機構58にキャップユニット121をインク吐出面3aに密着させたままにさせる。また、切換バルブ123に、キャップ連通ポート31bとポンプ連通ポート32とを連通させ、キャップ連通ポート134bと大気連通ポート33とを連通させる(本発明の「第5状態」)。また、切換バルブ123に、キャップ連通ポート31aの他のポートとの連通を遮断させ、キャップ連通ポート134aと大気連通ポート33とを連通させる。そして、この状態で吸引ポンプ24を駆動させる。これにより、カラーの吸引パージでノズルキャップ121bに溜まったカラーインクが排出される、カラーの空吸引が行われる。
また、ブラック及びカラーの空吸引処理では、キャップユニット121をインク吐出面3aに密着させたままにするため、ノズルキャップ121a、121bからカラーインクがこぼれてしまうのを防止することができる。そして、ブラック及びカラーの空吸引処理が完了したときにS310に進む。
一方、タイマー101が示す経過時間Tが、所定時間Tmを超えている場合には(S305:YES)、キャップ連通ポート134a、134b及びチューブ111a、111bに溜まったインクを排出させるキャップ側クリーニング動作を行わせるためのキャップ側クリーニング処理を実行する(S308)。
ここで、第2実施形態では、吸引パージや空吸引の際に、ノズルキャップ121a、121b内のインクの一部が、チューブ111a、111bやキャップ連通ポート134a、134bに流れ込むことがある。一方で、第2実施形態では、チューブ111a、111bやキャップ連通ポート134a、134bは、吸引パージや空吸引において、インクが流れる経路とはなっていない。そのため、チューブ111a、111bやキャップ連通ポート134a、134bに流れ込んだインクが、長期間そのまま放置されて固化してしまう虞がある。その結果、キャップ連通ポート134a、134b及びチューブ111a、111bが固化したインクによって詰まり、空吸引の際に、キャップ連通ポート134a、134b及びチューブ111a、111bを介してノズルキャップ121a、121bを大気連通させることができなくなってしまう虞がある。
ここで、第2実施形態とは異なり、ノズル10から吐出されるのが染料インクである場合には、かなりの長期間(例えば、数年程度)にわたって、チューブ111a、111bやキャップ連通ポート134a、134bに流れ込んだインクが放置されなければ、これらの流路が固化したインクによって詰まってしまうことはない。これに対して、第2実施形態では、ノズル10から、染料インクよりも増粘しやすい顔料インクが吐出される。そのため、第2実施形態では、チューブ111a、111bやキャップ連通ポート134a、134bに流れ込んだインクが放置される期間がそれほど長くなくても、これらの流路が固化したインクで詰まってしまう可能性が高い。そこで、第2実施形態では、これらの流路内のインクを排出させるために、キャップ側クリーニング処理を実行する。
キャップ側クリーニング処理では、まず、図13(c)に示すように、キャップ昇降装置58に、キャップユニット121をインク吐出面3aから離させる。また、切換バルブ123に、キャップ連通ポート134aとポンプ連通ポート32とを連通させる(本発明の「第6状態」)。また、切換バルブ123に、キャップ連通ポート134bと大気連通ポート33とを連通させ、キャップ連通ポート31a、31bの他のポートとの連通を遮断させる。そして、この状態で吸引ポンプ24を駆動させる。これにより、キャップ連通ポート134a及びチューブ111aに溜まったブラックインクを排出することができる。さらに、このとき、ブラックの吸引パージでノズルキャップ121aに溜まったインクが、チューブ111a及びキャップ連通ポート134aに流れ込む。これにより、チューブ111a及びキャップ連通ポート134aに溜まったインクが増粘していても、増粘したインクが流れ込んだインクの水分によって粘度が低下し、確実に排出される。
続いて、図13(d)に示すように、切換バルブ123に、キャップ連通ポート134bとポンプ連通ポート32とを連通させる(本発明の「第6状態」)。また、切換バルブ123に、キャップ連通ポート134bと大気連通ポート33とを連通させ、キャップ連通ポート31a、31bと他のポートとの連通を遮断させる。そして、この状態で、吸引ポンプ24を駆動させる。これにより、キャップ連通ポート134b及びチューブ111bに溜まったカラーインクを排出することができる。さらに、このとき、カラーの吸引パージでノズルキャップ121bに溜まったカラーインクが、チューブ111b及びキャップ連通ポート134bに流れ込む。これにより、チューブ111b及びキャップ連通ポート134bに溜まったインクが増粘していても、増粘したインクが流れ込んだインクの水分によって粘度が低下し、確実に排出される。そして、キャップ側クリーニング処理が完了した後には、タイマー101をリセットしてから(S309)、S310に進む。
ここで、キャップ側クリーニング処理では、キャップ昇降装置58に、キャップユニット121をインク吐出面3aから離させるため、ノズルキャップ121a、121bに溜まったインクがこぼれてしまう可能性がある。そこで、第2実施形態では、前回のキャップ側クリーニング処理からの経過時間Tが所定時間Tmを超えており、チューブ111a、111b及びキャップ連通ポート134a、134bに溜まったインクを排出する必要がある可能性が高いと推定される場合にのみ、キャップ側クリーニング処理を実行している。
S310では、大気連通ポート33及びチューブ26dに溜まったインクを排出する排気側クリーニング動作を行わせるための排気側クリーニング処理を実行する。排気側クリーニング処理は、図13(e)に示すように、切換バルブ123に、ポンプ連通ポート32と大気連通ポート33とを連通させる(本発明の「第3状態」)。また、切換バルブ123に、キャップ連通ポート31a、31b、134a、134bの他のポートとの連通を遮断させる。そして、この状態で吸引ポンプ24を駆動させる。これにより、大気連通ポート33及びチューブ26dに溜まったインクを排出することができる。
ここで、キャップ側クリーニング処理及び排気側クリーニング処理では、第1実施形態のクリーニング処理と同様、吸引ポンプ24を、吸引パージ処理及び空吸引処理での回転速度Vd2、Vd3よりも速い回転速度Vd4で、吸引パージ処理及び空吸引処理での駆動時間Td2、Td3よりも長い駆動時間Td4だけ駆動させる。これにより、キャップ側クリーニング処理によって、チューブ111a、111b及びキャップ連通ポート134a、134bに溜まったインクを確実に排出させることができる。また、排気側クリーニング処理において、大気連通ポート33及びチューブ26dに溜まったインクを確実に排出することができる。
そして、第2実施形態では、排気側クリーニング処理の後、上記待機状態に戻すための待機処理を実行して(S311)、処理を終了する。
[第3実施形態]
次に、本発明の好適な第3実施形態について説明する。第3実施形態では、図14に示すように、プリンタ200のメンテナンスユニット206が、ノズルキャップ221と、切換バルブ223と、第1実施形態と同様の吸引ポンプ24及び廃液タンク25とを備えている。ノズルキャップ221は、複数のノズル列9a〜9dを形成する全てのノズル10を覆う。切換バルブ223は、1つのキャップ連通ポート231と、第1実施形態と同様のポンプ連通ポート32及び大気連通ポート33とを有している。そして、ノズルキャップ221が、チューブ226を介して、キャップ連通ポート231と連通している。
プリンタ200においてメンテナンスを行うときには、制御装置50は、図15に示すフローチャートに沿って処理を実行する。ここで、プリンタ200では、待機状態において、図16(a)に示すように、切換バルブ223が、キャップ連通ポート231と大気連通ポート33と連通させている(本発明の「第1状態」)。なお、図16(a)では、吸引ポンプ24を大気連通状態として図示しているが、吸引可能状態となっていてもよい。
メンテナンスでは、図15に示すように、まず、吸引パージ処理を実行する(S401)。吸引パージ処理では、図16(b)に示すように、キャップ昇降機構58にノズルキャップ221をインク吐出面3aに密着させる。また、切換バルブ223に、キャップ連通ポート231とポンプ連通ポート32とを連通させる(本発明の「第2状態」)。そして、この状態で吸引ポンプ24を駆動させる。これにより、インクジェットヘッド3内のインクが排出される、吸引パージが行われる。
次に、空吸引処理を実行する(S402)。空吸引処理では、切換バルブ223の状態を維持したまま、キャップ昇降機構58に、ノズルキャップ221をインク吐出面3aから離させる。そして、この状態で吸引ポンプ24を駆動させる。すると、吸引パージによってノズルキャップ221に溜まったインクが排出される、空吸引が行われる。
次に、クリーニング処理を実行する(S403)。クリーニング処理では、切換バルブ223に、ポンプ連通ポート32と大気連通ポート33とを連通させた状態(本発明の「第3状態」)で、吸引ポンプ24を駆動させる。これにより、大気連通ポート33及びチューブ26dに溜まったインクを排出させることができる。そして、クリーニング処理の完了後、上記待機状態に戻すための待機処理を実行して(S404)、制御を終了する。
ここで、第3実施形態では、切換バルブ223が固着していると、S401において切換バルブ223を上記第1状態から第2状態に切り換えることはできない。ただし、かなりの長期間にわたって吸引パージや空吸引が行われていない場合などでなければ、切換バルブ223が、ポート間の連通関係が切り換え不可能になるほどに固着してしまうことはない。また、第3実施形態では、吸引ポンプ24は、上記待機連通状態を取る必要がないため、上記吸引可能状態のみを取ることが可能なものであってもよい。
[第4実施形態]
次に、本発明の好適な第4実施形態について説明する。図17に示すように、第4実施形態に係るプリンタ300のメンテナンスユニット306は、ノズルキャップ321と、切換バルブ323と、第1実施形態と同様の吸引ポンプ24及び廃液タンク25とを備えている。切換バルブ223は、キャップ連通ポート334と、切換バルブ223と同様のキャップ連通ポート231、ポンプ連通ポート32及び大気連通ポート33とを有している。そして、ノズルキャップ321は、チューブ226を介してキャップ連通ポート231と連通しているのに加えて、チューブ311aを介して、キャップ連通ポート334と連通している。また、プリンタ300は、第2実施形態と同様のタイマー101(図11参照)を備えている。
プリンタ300においてメンテナンスを行うときには、制御装置50は、図18に示すフローチャートに沿って処理を実行する。ここで、プリンタ300では、待機状態において、図19(a)に示すように、切換バルブ323が、キャップ連通ポート231と他のポートとの連通を遮断し、キャップ連通ポート334と大気連通ポート33とを連通させている。なお、図19(a)では、吸引ポンプ24を大気連通状態として図示しているが、吸引可能状態となっていてもよい。
メンテナンスでは、図18に示すように、まず、吸引パージ処理を実行する(S501)。吸引パージ処理では、図19(b)に示すように、キャップ昇降機構58にノズルキャップ321をインク吐出面3aに密着させる。また、切換バルブ323に、キャップ連通ポート231とポンプ連通ポート32とを連通させ、キャップ連通ポート334と他のポートとの連通を遮断させる(本発明の「第7状態」)。そして、この状態で吸引ポンプ24を駆動させる。これにより、インクジェットヘッド3内のインクが排出される、吸引パージが行われる。
次に、タイマー101が示す経過時間Tが、所定時間Tm以下である場合には(S502:NO)、空吸引処理を実行する(S503)。空吸引処理では、図19(c)に示すように、キャップ昇降機構58にノズルキャップ321をインク吐出面3aに密着させたままにする。また、切換バルブ323に、キャップ連通ポート231をポンプ連通ポート32と連通させ、キャップ連通ポート334を大気連通ポート33と連通させる(本発明の「第5状態」)。そして、この状態で吸引ポンプ24を駆動させる。これにより、吸引パージの際にノズルキャップ321に溜まったインクが排出される。空吸引処理が完了した後には、S505に進む。
一方、タイマー101が示す経過時間Tが、所定時間Tmを超えている場合には(S502:YES)、キャップ側クリーニング処理を実行する(S504)。キャップ側クリーニング処理では、図19(d)に示すように、キャップ昇降装置58にノズルキャップ321をインク吐出面3aから離させる。また、切換バルブ323に、キャップ連通ポート334とポンプ連通ポート32とを連通させたる(本発明の「第6状態」)。そして、この状態で、吸引ポンプ24を駆動させる。これにより、キャップ連通ポート334及びチューブ311に溜まったインクを排出させることができる。さらに、このとき、吸引パージでノズルキャップ321に溜まったインクが、チューブ311及びキャップ連通ポート334に流れ込む。これにより、チューブ311及びキャップ連通ポート334に溜まったインクが増粘していても、増粘したインクが流れ込んだインクの水分を吸収することで粘度が低下し、確実に排出される。そして、キャップ側クリーニング処理が完了した後、タイマー101をリセットしてから、(S505)、S506に進む。
ここで、第4実施形態でも、第2実施形態と同様、キャップ側クリーニング処理において、ノズルキャップ121a、121bからインクがこぼれてしまう可能性がある。そのため、第4実施形態でも、前回のキャップ側クリーニング処理からの経過時間Tが所定時間Tmを超えている場合にのみ、キャップ側クリーニング処理を実行している。
S506では排気側クリーニング処理を実行する。排気側クリーニング処理では、図19(e)に示すように、切換バルブ223に、ポンプ連通ポート32と大気連通ポート33とを連通させた状態で(本発明の「第3状態」)、吸引ポンプ24を駆動させる。これにより、大気連通ポート33及びチューブ26dに溜まったインクを排出させることができる。そして、排気側クリーニング処理の完了後、上記待機状態に戻すための待機処理を実行して(S506)、制御を終了する。
[第5実施形態]
次に、本発明の好適な第5実施形態について説明する。第5実施形態は、切換バルブ423が、図20(a)〜(c)に示すような構造を有している。切換バルブ423は、流路部材431と、カバー432とを備えている。流路部材431は、ゴム材料からなる、略円柱形状の部材である。流路部材431は、図示しないモータによって回転させることができるようになっている。
流路部材431の下面431aには、流路部材431の径方向に延びた4つの溝441〜444が形成されている。溝441〜444は、流路部材431の中央部と外周面との間にわたって延びている。また、溝442は、下側(図20(a)〜(c)の方向)から見て、流路部材431の中心を軸として、溝41から時計回り方向に角度A1だけずれて配置されている。また、溝441と溝442とは、流路部材31の径方向において、中央部と外周面431bとの間の中間部分よりも中央部側の部分において互いに連通している。
溝443は、下側から見て、流路部材431の中心を軸として、溝442から時計回り方向に角度A2だけずれて配置されている。溝443は、流路部材431の中央部においてのみ、他の溝441、442、444と連通している。溝444は、下側から見て、流路部材431の中心を軸として、溝443から時計回り方向に角度A3だけずれて配置されている。溝444は、流路部材431の中央部においてのみ、他の溝441〜443と連通している。
また、図19に示すように、流路部材431の外周面431bには、凹部451〜455が形成されている。凹部451〜454は、流路部材431の外周面431bの溝441〜444と重なる部分に形成され、溝441〜444とそれぞれ接続されている。また、凹部451、452、454は、上下方向(図20(a)〜(c)の紙面垂直方向)に、流路部材431の略下半分にわたって延びている。一方、凹部453は、上下方向に流路部材431のほぼ全長にわたって延びている。
凹部455は、流路部材431の外周面431bの略上半分の、凹部453が配置されている部分を除いた部分にまたがって延びている。また、凹部455は、下側から見て、流路部材431の中心を軸として、凹部451、453、454と反時計回り方向に隣接する部分455a〜455cにおいて、それぞれ、流路部材431の略下半分まで延びている。
カバー432は、下端(図19の紙面手前側の端)が塞がれた円柱形状の部材である。流路部材431は、カバー432の内部空間432aに収容されている。流路部材431の外周面432bは、内部空間432aの内周面32dと密着している。また、流路部材431の下面は、内部空間432aの下側の壁面に密着している。
また、カバー432には、2つのキャップ連通ポート461、462と、大気連通ポート463とが設けられている。ポート461〜463は、カバー432の径方向外側に突出している。キャップ連通ポート461は、チューブ26b(図1参照)を介してノズルキャップ21b(図1参照)と連通している。キャップ連通ポート462は、チューブ26a(図1参照)を介してノズルキャップ21a(図1参照)と連通している。大気連通ポート463は、チューブ26d(図1参照)を介して廃液タンク25と連通している。
ポート461〜463の位置関係について説明すると、図20(a)〜(c)に示すように、ポート461、462は、流路部材431の凹部451、452とほぼ同じ高さに配置されている。一方、大気連通ポート463は、凹部455の、流路部材431の略上半分に位置する部分とほぼ同じ高さに配置されている。また、キャップ連通ポート462は、下側から見て、円筒部432aの中心を軸として、キャップ連通ポート461から時計回り方向に角度A1だけずれて配置されている。大気連通ポート463は、下側から見て、収容部材432の中心を軸として、キャップ連通ポート462から時計回り方向に角度A4(<A2)だけずれて配置されている。
また、収容部材432の下端部には、ポンプ連通ポート465が形成されている。ポンプ連通ポート465は、収容部材432の中央において内部空間432aと連通しており、収容部材432の中央部から収容部材432の径方向の外側に突出するように延びている。そして、ポンプ連通ポート465は、チューブ26c(図1参照)を介して吸引ポンプ24(図1参照)と連通している。
そして、第5実施形態では、待機状態及び固着解消処理時において、図19(a)〜(c)に示すように、切換バルブ423を、溝441とキャップ連通ポート461とが連通させ、溝442がキャップ連通ポート462と連通させる位置に位置づける。
また、ブラックの吸引パージ処理では、図21(a)に示すように、切換バル423を、溝43とキャップ連通ポート62とを連通させる位置に位置づける。また、カラーの吸引パージ処理では、図21(b)に示すように、切換バルブ423を、溝441をキャップ連通ポート461とを連通させる位置に位置づける。また、ブラックの空吸引処理では、図21(c)に示すように、切換バルブ423を、溝444をキャップ連通ポート462とを連通させる位置に位置づける。また、カラーの空吸引処理では、図21(d)に示すように、切換バルブ423を、溝443とキャップ連通ポート461とを連通させる位置に位置づける。また、クリーニング処理では、図21(e)に示すように、切換バルブ423を、溝443と大気連通ポート463とを連通させる位置に位置づける。
また、第5実施形態では、流路部材431を図20(a)〜(c)の反時計回り方向に回転させることによって、図20(a)〜(c)、図21(a)〜(e)の状態への切換を行う。
次に、第5実施形態において、制御装置50が吸引ポンプ24を駆動させる手順について説明する。第5実施形態では、図22に示すように、制御装置50は、吸引ポンプ24が吸引可能状態となっているか否かを判定する(S601)。吸引ポンプ24が吸引可能状態となっている場合には(S601:YES)、切換バルブ423による切換が完了するまで待機し(S602:NO)、切換バルブ423による切換が完了したときに(S602:YES)、吸引ポンプ24を駆動させることによって吸引動作を開始させる(S606)。
一方、吸引ポンプ24が連通状態となっている場合には(S601:NO)、続いて、切換バルブ423による切換の途中において、大気連通ポート463とポンプ連通ポート464とが連通している状態(図21(e)の状態)となっているか否かを判定する(S603)。例えば、吸引パージを行うために、切換バル423が、図20(a)〜(c)の状態から図21(a)、(b)の状態に切り換わるときには、その途中で、一時的に図21(e)に示す状態となる。
そして、大気連通ポート463とポンプ連通ポート464とが連通した場合には(S603:YES)、そのタイミングで、吸引ポンプ23を連通状態から吸引可能状態に切り換える(S605)。このとき、吸引ポンプ23は、多少吸引を行うことになるため、大気連通ポート423及びチューブ26dに溜まったインクを排出させることができる。
また、途中で大気連通ポート463とポンプ連通ポート464とが連通することなく(S603:NO)、切換バルブ423による切換が完了した場合には(S604:YES)、そのタイミングで、吸引ポンプ23を連通状態から吸引可能状態に切り換える(S605)。そして、その後、吸引ポンプ24を駆動させることによって、吸引動作を開始させる(S606)。そして、S606で吸引ポンプ24に吸引動作を開始させた後、駆動時間Tdが経過するまで吸引動作を継続させる(S607:NO)。そして、駆動時間Tdが経過したときに(S607:YES)、吸引ポンプ24を停止させて(S608)、処理を終了する。
次に、第1〜第5実施形態に、種々の変更を加えた変形例について説明する。
第1、第2実施形態では、待機状態において、切換バルブ23、123が、キャップ連通ポート31a、31bとポンプ連通ポート32とを連通させていたが、これには限られない。第1、第2実施形態でも、待機状態で、切換バルブ23、123が、キャップ連通ポート31a、31bと大気連通ポート33とを連通させていてもよい。
また、第1〜第5実施形態では、クリーニング処理において、吸引ポンプ24を、吸引パージ処理及び空吸引での回転速度Vd2、Vd3よりも速い回転速度Vd4で、吸引パージ処理及び空吸引での駆動時間Td2、Td3よりも長い駆動時間Td4だけ駆動させたが、これには限られない。クリーニング処理において、吸引ポンプ24の回転速度Vd及び駆動時間Tdの少なくとも一方を、吸引パージ又は空吸引と同じとしてもよい。
また、第1〜第5実施形態では、メンテナンスにおいてクリーニング処理を実行したが、これには限られない。例えば、プリンタにおいて印刷やメンテナンスが行われていないときに、定期的にクリーニング処理を実行するようにしてもよい。
第2実施形態では、キャップ側クリーニング処理において、図13(c)、(d)に示す処理を順に実行したが、これには限られない。例えば、図13(c)に示す処理が実行されてからの経過時間T1を計測するタイマーと、図13(d)に示す処理が実行されてからの経過時間T2を計測するタイマーとを別々に備えていてもよい。そして、経過時間T1が所定時間を超えているときに図13(c)に示す処理を実行し、経過時間T2が所定時間Tmを超えているときに図13(d)に示す処理を実行してもよい。
また、第2、第4実施形態では、経過時間Tが所定時間Tm以下のときに、空吸引処理を実行し、経過時間Tが所定時間Tmを超えているときに、キャップ側クリーニング処理を実行したが、これには限られない。例えば、第2、第4実施形態においてタイマー101がなく、吸引パージ処理の後、常にキャップ側クリーニング処理を実行するようにしてもよい。あるいは、第2、第4実施形態において、吸引パージ処理の後、空吸引処理を実行し、さらにその後にキャップ側クリーニング処理を実行するようにしてもよい。
また、第2、第4実施形態では、キャップ側クリーニング処理と、排気側クリーニング処理の両方を実行させたが、これには限られない。第2、第4実施形態において、キャップ側クリーニング処理及び排気側クリーニング処理のいずれか片方のみを実行させてもよい。
また、第1〜第4実施の形態では、吸引ポンプ24の駆動時間Tdを、吸引ポンプ24が吸引可能状態になってからの時間としたが、これには限られない。駆動時間Tdを、吸引ポンプ24が大気連通状態から吸引可能状態に切り換わるのにかかる時間も含めた時間としてもよい。
また、第1〜第4実施形態では、チューブ26dの大気連通ポート33と反対側の端部が、大気連通した廃液タンク25に接続されていたが、これには限られない。チューブ26dの大気連通ポート33と反対側の端部がどこにも接続されておらず、直接大気連通していてもよい。また、チューブ26dが設けられておらず、大気連通ポート33が直接大気連通していてもよい。
また、ノズルキャップを昇降させるキャップ昇降装置は、制御装置50に制御されるモータなどの駆動源を有するものには限られない。キャップ昇降装置は、キャリッジ2がノズルキャップに近づいたときに、キャリッジ2に走査方向に押され、キャリッジ2に押される力を利用して、ノズルキャップを上昇させるように構成されたものなどでもよい。
また、以上では、ノズルからインクを吐出することによって印刷を行うインクジェットプリンタに本発明を適用した例について説明したが、これには限られない。ノズルからインク以外の液体を吐出する、インクジェットプリンタ以外の液体吐出装置に本発明を適用することも可能である。