以下、一実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
本実施形態に係る電動倍力装置1は、図1に示すように、タンデム型のマスタシリンダ2と、アクチュエータ3を内装するハウジング4とを備えている。マスタシリンダ2にリザーバ5が接続されている。ハウジング4の上部には、コントローラCが取付けられている。
図1に示すように、ハウジング4は、略有底円筒状のフロントハウジング4Aと、該フロントハウジング4Aの後端側の開口部7に複数のボルト4Cにより結合されて、該開口部7を覆う、第1実施形態に係るリアカバー4Bとから構成される。図2に示すように、図1も参照して、第1実施形態に係るリアカバー4Bは、開口部105を有するカバー本体100と、該カバー本体100の開口部105からマスタシリンダ2と同心状に軸方向に沿って延びて、内部にアクチュエータ3の構成であるボールネジ機構41(回転直動変換機構)のネジ軸47(直動部材)を軸方向に移動可能に支持する円筒体101(筒体)とを別体で構成している。
図2及び図3に示すように、カバー本体100は、フロントハウジング4Aの開口部7の内周面に嵌合する円筒状壁部104と、円筒状壁部104の内側に同心状に配置され、開口部105を有する環状壁部106と、円筒状壁部104と環状壁部106とを接続して、軸方向に沿って延びる円筒状支持部107とから構成される。円筒状壁部104の外周面には、シール部材用の環状溝部108が形成される。円筒状壁部104が前側に、環状壁部106が後側に配置される。円筒状壁部104の後端には、径方向外側に突設され、環状に延びるフランジ部110が形成される。
リアカバー4Bをフロントハウジング4Aに組み付けると、該フランジ部110が、フロントハウジング4Aの開口部7周辺の前面に当接するようになる。フランジ部110の外周面からは、複数の固定部111が径方向外方に突設される。各固定部111は、1箇所を除くほとんどが半円形状に形成される。該固定部111は、周方向に沿って間隔を置いて複数形成される。本実施形態では、固定部111は6箇所形成される。各固定部111には、カバー本体100をフロントハウジング4Aの開口部7に固定するためのボルト4C用の挿通孔112がそれぞれ形成される。
環状壁部106には、マスタシリンダ2と同心状に開口部105が形成される。該開口部105に円筒体101の円筒本体部125が挿通される。環状壁部106の前面で開口部105の周りに、位置決め凹部113が形成される。環状壁部106には、位置決め凹部113の範囲内に軸方向に沿う挿通孔114が複数形成される。該各挿通孔114は、周方向に沿って間隔を置いて複数形成される。本実施形態では、該挿通孔114は4箇所形成される。該各挿通孔114にスタッドボルト120が、かしめ固定される。該スタッドボルト120は、本電動倍力装置1を車両のエンジンルームと車室との隔壁であるダッシュパネル(図示略)に取り付けるためのものであり、軸部120Aと、該軸部120Aの端部に一体的に設けられるヘッド部120Bとから形成される。円筒状支持部107の内周面には、円筒体101の各固定部135に対応する位置に内方に向かう凹部109が複数形成される。
図2及び図4に示すように、円筒体101は、マスタシリンダ2と同心状に軸方向に沿って延びる円筒本体部125と、該円筒本体部125の前側外周面から径方向外側に突設される環状固定部126とから構成される。該円筒本体部125の内部に、ボールネジ機構41のネジ軸47が軸方向に移動可能に支持される。円筒本体部125の後側内周面には、一体的に径方向内側に突出する一対の回り止め部127、127が形成されている。円筒本体部125の後部外周面には、被覆部材76を固定するための止輪84用の環状溝部128が形成される。
環状固定部126の外周面からは、複数の固定部135が突設される。各固定部135は半円形状に形成される。各固定部135は、カバー本体100の環状壁部106に設けた各挿通孔114に対応するように、周方向に間隔を置いて複数形成される。本実施形態では、各固定部135は4箇所形成される。各固定部135には、スタッドボルト120が挿通される挿通孔136がそれぞれ形成される。環状固定部126の後面には、円筒本体部125と同心状に環状溝部137が形成される。該環状溝部137内に、シール部材としてのリング状のシール部材138が配置される。なお、シール部材138は、Oリング、角シール材や液状ガスケット等各種のシール部材が採用される。
リアカバー4Bは、カバー本体100と円筒体101とを一体に組み付けることで構成される。その組み付け方法としては、まず、円筒体101の環状固定部126の環状溝部137にシール部材138を配置しておく。続いて、円筒体101の円筒本体部125を、カバー本体100の環状壁部106の開口部105内に前方から挿通する。続いて、円筒体101の環状固定部126を、カバー本体100の環状壁部106の位置決め凹部113に当接させると共に、円筒体101の各固定部135の挿通孔136と、カバー本体100の環状壁部106の各挿通孔114とを一致させる。
続いて、各スタッドボルト120を、前方から円筒体101の各固定部135の挿通孔136及びカバー本体100の環状壁部106の各挿通孔114に挿通して、かしめ固定する。この時、スタッドボルト120のヘッド部120Bの前面と、円筒体101の環状固定部126の前面とが略同一平面上に位置する。そして、カバー本体100と円筒体101と各スタッドボルト120とが一体的に組み付けられ、円筒体101の環状固定部126の環状溝部137と、カバー本体100の環状壁部106の位置決め凹部113との間に配置されたシール部材138により、円筒体101の環状固定部126と、カバー本体100の環状壁部106の位置決め凹部113との間がシールされ、ひいては、カバー本体100の開口部105が液密的にシールされる。
そして、本電動倍力装置1は、そのリアカバー4Bの円筒体101の円筒本体部125を車両のエンジンルームと車室との隔壁であるダッシュパネルに貫通させて車室内に延ばした状態で、エンジンルーム内に配置して、各スタッドボルト120を用いてダッシュパネルに固定している。
図1に示すように、マスタシリンダ2は、略有底円筒状のシリンダ本体2Aを含み、その開口部側がハウジング4の底部の開口部にスタッドボルト6A及びナット6Bによって結合されている。マスタシリンダ2のシリンダ本体2A内には、開口側(後側)に、前端部がカップ状に形成された円筒状のプライマリピストン10が挿入され、底部側(前側)に、カップ状のセカンダリピストン11が挿入されている。プライマリピストン10の後端部は、マスタシリンダ2の開口部からハウジング4内に突出して、リアカバー4Bの円筒体101まで延びている。シリンダ本体2A内は、プライマリピストン10及びセカンダリピストン11によってプライマリ室16及びセカンダリ室17の2つの圧力室が形成されている。プライマリ室16及びセカンダリ室17には、液圧ポート(図示略)がそれぞれ設けられている。液圧ポートには、各車輪のブレーキキャリパに液圧を供給するための2系統の液圧回路(図示せず)がそれぞれ接続される。
シリンダ本体2Aの側壁の上部側には、プライマリ室16及びセカンダリ室17をリザーバ5に接続するためのリザーバポート20、21が設けられている。シリンダ本体2Aのシリンダボア12と、プライマリピストン10及びセカンダリピストン11との間は、それぞれ2つのシール部材22A、22B及び23A、23Bによってシールされている。
シール部材22A、22Bは、軸方向に沿ってリザーバポート20を挟むように配置されている。シール部材22Aにより、プライマリピストン10が図1に示す非制動位置にあるときに、プライマリ室16がプライマリピストン10の側壁に設けられたポート24を介してリザーバポート20に連通し、プライマリピストン10が非制動位置から前進したとき、シール部材22Aによってプライマリ室16がリザーバポート20から遮断されるようになっている。また、シール部材23A、23Bは、軸方向に沿ってリザーバポート21を挟むように配置されている。これらのうちシール部材23Aにより、セカンダリピストン11が図1に示す非制動位置にあるとき、セカンダリ室17がセカンダリピストン11の側壁に設けられたポート25を介してリザーバポート21に連通し、セカンダリピストン11が非制動位置から前進したとき、シール部材23Aによってセカンダリ室17がリザーバポート21から遮断されるようになっている。
プライマリ室16内のプライマリピストン10とセカンダリピストン11との間には、バネアセンブリ26が介装されている。また、セカンダリ室17内のマスタシリンダ2の底部とセカンダリピストン11との間には、圧縮コイルバネである戻しバネ27が介装されている。バネアセンブリ26は、圧縮コイルバネ28を伸縮可能なリテーナ29によって所定の圧縮状態で保持し、その付勢力に抗して圧縮可能としたものである。リテーナ29とプライマリピストン10の中間壁30(後述)との間には、円筒状のスペーサ29Aが介装されている。
プライマリピストン10は、全体として円筒状に形成され、内部を軸方向に仕切る中間壁30を備えている。該中間壁30には、案内ボア31が軸方向に沿って貫通されている。案内ボア31には、段部32Aを有する段付形状の入力ピストン32の小径の前端部が摺動可能かつ液密的に挿入されている。案内ボア31と入力ピストン32の前端部との間は、2つのシール部材33A、33Bによってシールされており、プライマリピストン10の中間壁30には、案内ボア31のシール部材33A、33B間に開口する通路33が径方向に沿って貫通されている。この通路33がシール部材22Bの内側に開口している。
ハウジング4内に延びるプライマリピストン10の中間部は、フロントハウジング4Aの底部の開口部に嵌合する円筒状のバネ受部材70に挿入されて軸方向に沿って摺動可能に案内されている。バネ受部材70は、一端部に形成された外側フランジ部71がフロントハウジング4Aの底部の開口部に嵌合して固定されて、マスタシリンダ2のシリンダボア12に連接している。バネ受部材70の後端内周部に取付けられたシール部材72によってプライマリピストン10との間をシールしている。
入力ピストン32の後端部には、リアカバー4Bの円筒体101及びプライマリピストン10の後部に挿入された、入力ロッド34の前端部が連結されている。入力ロッド34の後端側は、円筒体101から外部に延出されている。円筒体101から外部に延出された入力ロッド34の後端部にはネジ部34Bが形成されている。このネジ部34Bには、ブレーキペダル(図示略)を連結するためのクレビス73及びクレビス73のロックナット74が螺着されている。プライマリピストン10の後端部には、フランジ状のバネ受35が取付けられ、プライマリピストン10は、バネ受部材70の後端部とバネ受35との間に介装された圧縮コイルバネである戻しバネ36によって後退方向に付勢されている。また、入力ピストン32は、プライマリピストン10の中間壁30との間及びバネ受35との間にそれぞれ介装された圧縮コイルバネであるバネ37、38によって、図1に示す中立位置に弾性的に保持されている。入力ロッド34の後退位置は、入力ロッド34の中間部に設けられた大径の当接部34Aがリアカバー4Bの円筒体101に設けた一対の回り止め部127に当接することによって規定されている。
ハウジング4内には、電動モータ40及び電動モータ40の回転を直線運動に変換してプライマリピストン10に推力を付与する、回転直動変換機構であるボールネジ機構41を含むアクチュエータ3が設けられている。電動モータ40は、永久磁石埋め込み型同期モータであって、ステータ42とロータ45とを含んでいる。ステータ42は、フロントハウジング4Aの底部の後側の段部に固定された複数のコイルを有している。ロータ45は、円筒状に形成されてステータ21の内周面に対向して周方向に沿って配置された複数の永久磁石を有している。なお、電動モータ40は、ロータ45の内部に永久磁石を配置した同期モータ、あるいは、誘導モータ等の他の形式のモータとしてもよい。
ボールネジ機構41は、ナット部材46と、直動部材である中空のネジ軸47と、これらの対向面に形成されたネジ溝間に装填された複数のボール48とを有している。ナット部材46は、フロントハウジング4Aの底部付近からリアカバー4B付近にわたって軸方向に沿って延ばされ、その両端部がベアリング43、44によってフロントハウジング4A及びリアカバー4Bに回転可能に支持されている。特に、ベアリング44は、リアカバー4Bのカバー本体100の円筒状支持部107の内側に固定される。ナット部材46の前側の外周部にロータ45の内周部が固定されている。ネジ軸47は、ナット部材46及びハウジング4の円筒体101内に挿入されて軸方向に沿って移動可能で、かつ、軸回りに回転しないように支持されている。具体的には、ネジ軸47の円筒体101から突出する後端部には、その直径方向の2箇所に軸方向に沿って端部まで延びる案内溝47Aが形成されている。各案内溝47Aに、ハウジング4のリアカバー4Bの円筒体101に設けた一対の回り止め部127がそれぞれ係合して、ネジ軸47を軸方向に移動可能に、かつ、軸回りに回転しないように支持している。
そして、ボールネジ機構41は、電動モータ40のロータ45の回転に伴うナット部材46の回転により、ネジ溝に沿ってボール48が転動することにより、ネジ軸47が軸方向に移動するようになっている。また、ボールネジ機構41は、ナット部材46とネジ軸47との間で、回転及び直線運動を相互に変換可能となっている。なお、本実施形態においては、介装していないが、電動モータ40とボールネジ機構41との間に、遊星歯車機構、差動減速機構等の公知の減速機構を介装して、電動モータ40の回転を減速してボールネジ機構41に伝達するようにしてもよい。
ボールネジ機構41のネジ軸47は、バネ受部材70の外側フランジ部71との間に介装された圧縮テーパコイルバネである戻しバネ49によって後退方向に付勢されている。ネジ軸47は、その後端部がリアカバー4Bの円筒体101に設けられた回り止め部127に当接することよって後退位置が規制されている。ネジ軸47内には、プライマリピストン10の後端部が挿入され、ネジ軸47の内周部に形成された段部50にバネ受35が当接することによってプライマリピストン10の後退位置が規制されている。これにより、プライマリピストン10は、ネジ軸47の前進により、段部50に押されて前進し、また、段部50から離間して単独で前進することができる。そして、図1に示すように、回り止め部127に当接したネジ軸47によってプライマリピストン10の非制動位置が規定され、非制動位置にあるプライマリピストン10及びバネアセンブリ26の最大長によって、セカンダリピストン11の後退位置、すなわち、非制動位置が規定されている。
ハウジング4内には、電動モータ40のロータ43の回転位置を検出する回転位置センサとしてのレゾルバ60が設けられている。レゾルバ60は、ナット部材46の後部側の外周部に固定されたセンサロータ60Aと、該センサロータ60Aに対向してリアカバー4B取付けられたセンサステータ60Bとから構成されている。
また、リアカバー4Bの円筒体101の後端部には反力付与手段75が設けられている。該反力付与手段75は、円筒状のカバー部材76と、可動バネ受78と、反力バネ79とから大略構成されている。カバー部材76は、リアカバー4Bの円筒体101の後端部に取付けられて、ネジ軸47の外周を覆うように設けられる。詳しくは、カバー部材76は、リアカバー4Bの円筒体101の環状溝部128に備えた止輪84を介してリアカバー4Bの後端部に取付けられている。可動バネ受78は、ネジ軸47内を軸方向に沿って移動可能に、且つネジ軸47及びカバー部材76に対して相対回転不能に設けられる。反力バネ79は、一対の回り止め部127と、可動バネ受78との間に介装された圧縮コイルばねである。なお、反力バネ79は、自由長または所定のセット荷重で圧縮された状態(本実施形態では各部品間のがたつきを抑えるため自由長より僅かに圧縮された状態)で、一対の回り止め部127と可動バネ受78との間に介装されている。回り止め部127の後側にワッシャ80とスプリングワッシャ82とが重ねられている。
そして、入力ロッド34が円筒体101、すなわち、ハウジング4に対して、所定の距離だけ前進したとき、ロックナット74が可動バネ受78に当接し、入力ロッド34が更に前進すると、反力バネ79が圧縮されてその付勢力が入力ロッド34の前進に対して反力として付与される。
また、電動倍力装置1には、ブレーキペダル、すなわち、入力ピストン32及び入力ロッド34の変位を検出するストロークセンサ(図示せず)、電動モータ40のロータ43の回転位置を検出するレゾルバ60、電動モータ40に供給する電流を検出する電流センサ、プライマリ室16、セカンダリ室17の液圧を検出する液圧センサ等の各種センサ(いずれも図示せず)が接続されている。制御回路としてのコントローラCは、ECU及びRAMを含むマイクロプロセッサベースの電子制御装置であり、これらの各種センサから検出信号に基づき、入力ロッド34とボールネジ機構41のネジ軸47(プライマリピストン10)との相対位置を調整して所望の倍力比をもってマスタシリンダ2内のプライマリ室16及びセカンダリ室17にブレーキ液圧を発生させるべく、電動モータ40の作動を制御するものである。
次に、本実施形態に係る電動倍力装置1の作用について説明する。
ブレーキペダルを操作して入力ロッド34を介して入力ピストン32を前進させると、入力ピストン32の変位をストロークセンサによって検出し、コントローラCによって入力ピストン32の変位に基づいて電動モータ40の作動を制御し、ボールネジ機構41を介してプライマリピストン10を前進させて入力ピストン32の変位に追従させる。これにより、プライマリ室16に液圧が発生し、また、この液圧がセカンダリピストン11を介してセカンダリ室17に伝達される。このようにして、マスタシリンダ2で発生したブレーキ液圧は、液圧ポートを介して各車輪のブレーキキャリパに供給され、制動力が発生する。ブレーキペダルの操作を解除すると、入力ピストン32、プライマリピストン10及びセカンダリピストン11が後退してマスタシリンダ2のブレーキ液圧が減圧し、ブレーキパッドが後退して制動が解除される。ここで、プライマリピストン10とセカンダリピストン11とは、同様に作動するので、以下においては、プライマリピストン10についてのみ説明する。
このとき、プライマリ室16の液圧の一部を入力ピストン32によって受圧し、その反力を、入力ロッド34を介してブレーキペダルにフィードバックする。これにより、所定の倍力比をもって所望の制動力を発生させることができる。そして、入力ピストン32と、これに追従するプライマリピストン10との相対位置を調整して、バネ37、38のバネ力を入力ピストン32に作用させて、入力ロッド34に対する反力を加減することにより、倍力比を調整することができる。入力ピストン32の変位量に対して、プライマリピストン10の変位量を前方に調整することにより倍力比が大きくなり、後方に調整することにより倍力比が小さくなる。これにより、倍力制御、ブレーキアシスト制御、車間車両安定性制御、車間制御、回生協調制御等のブレーキ制御を実行することができる。なお、入力ピストン32に対して、プライマリピストン10が後方となるように調整して倍力比を小さくし、プライマリ室16の液圧を低下させることで、液圧による制動力を抑えて回生協調時の回生量を大きくすることができる。
また、電動モータ40は、所定の最大出力を有している。電動モータ40の最大出力は、電力の供給によって最大限可能な出力、あるいは、過大な電力の供給による電動モータ40の損傷を防止すべく、予め定めた最大電力の供給時の出力としてもよい。コントローラCによって制御された電動モータ40の出力が最大出力に達し、プライマリ室16の液圧とプライマリピストン10の推力が釣合うとプライマリピストン10は、それ以上前進できなくなり停止する。このような全負荷状態で、ブレーキペダルを更に踏込むと、入力ロッド34の前進に対して、プライマリピストン10は停止したままで、入力ピストン32のみが前進することになるが、プライマリピストン10が停止しているため、入力ピストン32の前進量に対するプライマリ室16の液圧の上昇によって入力ピストン32および入力ロッド34を介してブレーキペダルにフィードバックされる反力増加量の割合が減少する。しかしながら、ブレーキペダルの操作による入力ピストン32のハウジング4に対する移動距離が所定の距離に達すると、ロックナット74が反力付与手段75の可動バネ受78に当接し、反力バネ79が圧縮されることにより、その付勢力が反力としてブレーキペダルに付与される。
ブレーキペダルを更に踏込むと、入力ピストン32の段部32Aがプライマリピストン10の中間壁30に当接し、プライマリピストン10が入力ピストン32と共に前進し、プライマリ室16の液圧の上昇による反力が増大する。このとき、反力付与手段75により、ブレーキペダルの操作に対して適度な反力が付与されているので、急激な反力増加量の増大による違和感を緩和することができる。
次に、第2実施形態に係るリアカバー4B’を、図5〜図7に基づいて説明する。第2実施形態に係るリアカバー4B’については、第1実施形態に係るリアカバー4Bとの相違点のみを説明する。
第2実施形態に係るリアカバー4B’では、図5及び図6に示すように、カバー本体100の環状壁部106の後面で、開口部105周りに環状凹部150が形成されている。一方、図5及び図7に示すように、円筒体101には、円筒本体部125の前側の外周面から径方向に突設され、カバー本体100の環状壁部106の環状凹部150に位置する環状壁部151が形成される。図5(b)に示すように、カバー本体100の環状凹部150と、円筒体101の環状壁部151との間にはリング状のシール部材138が配置される。また、図5に示すように、カバー本体100、円筒体101及び各スタッドボルト120を一体的に固定する固定プレート155を備えている。該固定プレート155は、略矩形状に形成され、略中央部に円筒体101の円筒本体部125が挿通される開口部156が形成される。該固定プレート155には、その4隅に各スタッドボルト120が挿通される挿通孔157がそれぞれ形成される。
そして、まず、カバー本体100の環状凹部150にシール部材138を配置しておく。続いて、円筒体101の円筒本体部125を、カバー本体100の環状壁部106の開口部105内に後方から挿通して、円筒体101の円筒本体部125の環状壁部151をカバー本体100の環状凹部150のシール部材138上に配置する。続いて、固定プレート155の開口部156に円筒体101の円筒本体部125を挿通して、固定プレート155を円筒体101の環状壁部151からカバー本体100の環状壁部106に亘って当接させて、カバー本体100の環状壁部106の各挿通孔114と、固定プレート155の各挿通孔157とを一致させる。
続いて、各スタッドボルト120を、前方からカバー本体100の環状壁部106の各挿通孔114及び固定プレート155の各挿通孔157に挿通して、かしめ固定する。これにより、カバー本体100、円筒体101、固定プレート155及び各スタッドボルト120が一体的に組み付けられ、カバー本体100の環状壁部106の環状凹部150と、円筒体101の環状壁部151との間に配置されたシール部材138により、カバー本体100の環状壁部106の環状凹部150と、円筒体101の環状壁部151との間がシールされ、ひいては、カバー本体100の開口部105が液密的にシールされる。
以上説明した、本実施形態に係る電動倍力装置1によれば、第1及び第2実施形態に係るリアカバー4B、4B’は、開口部105を有するカバー本体100と、該カバー本体100の開口部105からマスタシリンダ2と同心状に軸方向に沿って延びて、内部にボールネジ機構41のネジ軸47を軸方向に移動可能に支持する円筒体101とを別体で構成している。これにより、従来のようにカバー本体と円筒体とが一体成型されたリヤカバーを加工するのに、比して、加工のためのチャッキングやハンドリングが容易になり、円筒体101の円筒本体部125の内周面の加工精度を向上させることができ、本電動倍力装置1の作動時における異音の発生を抑制することができる。
また、第1実施形態に係るリアカバー4Bでは、カバー本体100の開口部105に連通する、円筒体101の環状固定部126とカバー本体100の環状壁部106の位置決め凹部113との間が、シール部材138により液密的にシールされ、一方、第2の実施形態に係るリアカバー4B’では、カバー本体100の開口部105に連通する、カバー本体100の環状壁部106の環状凹部150と円筒体101の環状壁部151との間が、シール部材138により液密的にシールされるので、防水機能を有することができる。また、シール部材138により、円筒体101とカバー本体100との間の組付けガタを吸収することができ、さらに、ボールネジ機構41のネジ軸47と円筒体101の円筒本体部125との間の摺動音の、カバー本体100への伝播を抑制することもできる。
さらに、本実施形態に係る電動倍力装置1によれば、第1及び第2実施形態に係るリアカバー4B、4B’が、カバー本体100と円筒体101とを別体で構成しているので、カバー本体100及び円筒体101の材質や表面処理を相違させることが可能になる。例えば、電動モータ40の推力やブレーキペダルの踏力を受けるカバー本体100に対して、円筒体101は、ボールネジ機構41のネジ軸47、プライマリピストン10や入力ロッド34等を後退位置に付勢する戻しバネ36、49等の付勢力に耐える程度の強度を有するものであればよいので、カバー本体100を鉄材として、円筒体101を鉄材より強度の低いアルミ材とするような異なる材質で構成することが可能になる。さらに、カバー本体100及び円筒体101を共に鉄材で形成する場合でも、はめあい公差の厳しいカバー本体100を膜厚管理の容易な無電解めっきによる表面処理とし、円筒体101は安価な亜鉛めっきによる表面処理とするような異なった表面処理を施すことが可能になる。