以下、本発明を実施形態に即して詳細に説明する。
本発明の水性プライマー組成物は、アニオン性基を有するポリウレタン樹脂(A)とポリエステル変性ポリウレタン樹脂(B)を含有することを特徴とする。
アニオン性基を有するポリウレタン樹脂(A)
アニオン性基を有するポリウレタン樹脂(A)は、本発明の水性プライマー組成物において、プライマー塗膜(プライマー層)を形成する主成分であり、水に分散している。すなわち、アニオン性基を有するポリウレタン樹脂(A)の形態は、水に乳化、分散したディスパージョンである。
アニオン性基を有するポリウレタン樹脂(A)は、有機イソシアネート化合物(a)と、アニオン性基を有する活性水素含有化合物(b−1)を含む活性水素含有化合物(b)とを反応させて得られる。
特に、有機イソシアネート化合物(a)と、アニオン性基を有する活性水素含有化合物(b−1)を含む活性水素含有化合物(b)とを反応させてアニオン性基を有するイソシアネート基含有ウレタンプレポリマー(U)(以下、単に「ウレタンプレポリマー(U)」という場合もある。)を合成し、さらに鎖延長剤(c)および接着性付与剤(d)の少なくとも一方を反応させて得られるものが、塗膜形成性、耐水性、接着性の点で好ましい。
アニオン性基を有するポリウレタン樹脂(A)の製造方法としては、従来公知の方法を用いることができ、特に制限はない。具体的には、下記の工程を含む製造方法を挙げることができる。
(I) 有機イソシアネート化合物(a)と、アニオン性基を有する活性水素含有化合物(b−1)を含む活性水素含有化合物(b)とを反応させてアニオン性基を有するイソシアネート基含有ウレタンプレポリマー(U)を合成する工程
(II) 中和剤を用いてアニオン性基を有するイソシアネート基含有ウレタンプレポリマー(U)のアニオン性基を中和する工程
(III) アニオン性基を有するイソシアネート基含有ウレタンプレポリマー(U)を水に乳化、分散する工程
(IV) アニオン性基を有するイソシアネート基含有ウレタンプレポリマー(U)と鎖延長剤(c)および接着性付与剤(d)の少なくとも一方を反応させてアニオン性基を有するポリウレタン樹脂(A)を合成する工程
(V) (I)〜(IV)の工程で有機溶剤を使用した場合は、有機溶剤を除去する工程
(I)有機イソシアネート化合物(a)と、アニオン性基を有する活性水素含有化合物(b−1)を含む活性水素含有化合物(b)とを反応させてアニオン性基を有するイソシアネート基含有ウレタンプレポリマー(U)を合成する工程について説明する。
アニオン性基を有するイソシアネート基含有ウレタンプレポリマー(U)は、ガラス製やステンレス製等の反応容器内で、有機イソシアネート化合物(a)と、アニオン性基を有する活性水素含有化合物(b−1)を含む活性水素含有化合物(b)とを、一括あるいは逐次的に反応させて、ウレタンプレポリマー(U)中にイソシアネート基が残存するようにして合成する。有機イソシアネート化合物(a)と活性水素含有化合物(b)とを反応させる割合は、イソシアネート基と活性水素(基)(ただし、アニオン性基に含まれる活性水素(基)は除く。)との反応モル比(イソシアネート基/活性水素(基))が、好ましくは1.2〜5.0/1.0、さらに好ましくは1.2〜4.0/1.0、特に好ましくは1.3〜3.0/1.0である。前記モル比が1.2/1.0未満であるとウレタンプレポリマー(U)の粘度が高くなり、大量の溶剤が必要となる場合がある。また、前記モル比が5.0/1.0を超えると、ウレタンプレポリマー(U)の分子量が小さく、プライマー塗膜の塗膜形成性が悪くなる場合がある。
アニオン性基を有するイソシアネート基含有ウレタンプレポリマー(U)中のイソシアネート基含有量は、1.0〜20.0質量%が好ましく、さらに3.0〜15.0質量%が好ましく、特に5.0〜10.0質量%が好ましい。イソシアネート基含有量が1.0質量%未満の場合は、ウレタンプレポリマー(U)の粘度が高くなり、大量の溶剤が必要となる場合がある。また、イソシアネート基含有量が20.0質量%を超える場合は、プライマー塗膜の塗膜形成性が悪くなる場合がある。
アニオン性基を有するイソシアネート基含有ウレタンプレポリマー(U)の合成は、イソシアネート基と湿気(水分)との反応を避けるため、反応容器内の空気を予め窒素で置換したり、窒素気流下で行うことが好ましい。また、ウレタンプレポリマー(U)の合成の際には有機溶剤や反応触媒を使用することができる。
有機溶剤は、ウレタンプレポリマー(U)を溶解させ、水との親和性(混和性)があり、イソシアネート基との反応性を有さないものであれば制限なく使用できる。具体的には、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸ペンチル、メトキシプロピルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、2−エチルブチルアセテート、2−エチルヘキシルアセテート、酢酸シクロヘキシル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸ブチル、酪酸ブチル、アジピン酸ジオクチル、グルタル酸ジイソプロピル等のエステル系溶剤:ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジオキサン、ジエトキシエタン等のエーテル系溶剤:ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等のカーボネート系溶剤:アセトン、2−ペンタノン、3−ペンタノン、2−ヘキサノン、メチルイソブチルケトン2−ヘプタノン、4−ヘプタノン、ジイソブチルケトン、イソホロン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン等のケトン系溶剤:ジエチレングリコールジメチルエーテルやジエチレングリコールジエチルエーテルやトリエチレングリコールジメチルエーテル等のポリエチレングリコールジアルキルエーテル系溶剤:ジエチレングリコールジアセテート等のポリエチレングリコールジカルボキシレート系溶剤が挙げられる。これらは、いずれも1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。これらのうち、揮発性が高く後述する除去操作が容易であることから、沸点が100℃以下の有機溶剤が好ましく、さらにウレタンプレポリマー(U)の溶解性が高く、水との親和性に優れることから、酢酸エチル、アセトン、ジメチルカーボネートが好ましい。
反応触媒としては、具体的には、亜鉛、錫、ジルコニウム、ビスマス、コバルト、マンガン、鉄等の金属と、オクテン酸、ナフテン酸等の有機酸との金属塩;ジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジラウレート等の有機金属と有機酸との塩;トリエチレンジアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルアミン、1,4−ジアザビシクロ〔2,2,2〕オクタン(DABCO)、1,8−ジアザビシクロ〔5,4,0〕ウンデセン−7(DBU)等の有機アミンやその塩の公知のウレタン化触媒が挙げられる。これらは、いずれも1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
アニオン性基を有するイソシアネート基含有ウレタンプレポリマー(U)を合成する際の反応温度は、30℃〜120℃が好ましく、さらに50℃〜100℃が好ましく、特に60℃〜80℃が好ましい。
有機イソシアネート化合物(a)としては、有機ポリイソシアネート化合物(a−1)、有機モノイソシアネート化合物(a−2)を挙げることができる。本明細書では、有機ポリイソシアネート化合物(a−1)を有機ポリイソシアネート(a−1a)と変性有機ポリイソシアネート(a−1b)に大別する。これらはいずれも1種または2種を組み合わせて使用することができる。これらのうち、プライマー塗膜が耐水性、耐熱性に優れることから、変性有機ポリイソシアネート(a−1b)、または、有機ポリイソシアネート(a−1a)と変性有機ポリイソシアネート(a−1b)の混合物が好ましい。
有機ポリイソシアネート(a−1a)は、その化合物中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物であり、具体的には、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート等のトルエンポリイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2′−ジフェニルメタンジイソシアネート等のジフェニルメタンポリイソシアネート、1,2−フェニレンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4,6−トリメチルフェニル−1,3−ジイソシアネート、2,4,6−トリイソプロピルフェニル−1,3−ジイソシアネート等のフェニレンポリイソシアネート、1,4−ナフタレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート等のナフタレンポリイソシアネート、その他の芳香族ポリイソシアネートとして、クロロフェニレン−2,4−ジイソシアネート、4,4′−ジフェニルエーテルジイソシアネート、3,3′−ジメチルジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート、3,3′−ジメトキシジフェニル−4,4′−ジイソシアネート等が挙げられ、更に1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、1,4−テトラメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチル−1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート、o−キシリレンジイソシアネート、m−キシリレンジイソシアネート、p−キシリレンジイソシアネート等の芳香脂肪族ポリイソシアネート、1,4−シクロヘキシルジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加トルエンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂環族ポリイソシアネートが挙げられ、また更に、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、クルードトルエンジイソシアネート等のポリメリックイソシアネートが挙げられる。これらは、いずれも1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。これらのうち、脂肪族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネートが好ましい。
変性有機ポリイソシアネート(a−1b)は、前記有機ポリイソシアネート(a−1a)と同様の有機ポリイソシアネートを少なくとも1つ以上変性して得られるものである。変性有機ポリイソシアネート(a−1b)としては、具体的には、その化合物中にウレトジオン結合、イソシアヌレート結合、アロファネート結合、ビュレット結合、ウレトンイミン結合、カルボジイミド結合、ウレタン結合、ウレア結合を1つ以上有する変性有機ポリイソシアネートが挙げられる。これらは、いずれも1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。これらのうち、プライマー塗膜が耐水性、耐熱性に優れることからイソシアヌレート変性有機ポリイソシアネートが好ましい。
有機ポリイソシアネート(a−1a)と変性有機ポリイソシアネート(a−1b)を混合して使用する場合の割合は、イソシアネート基のモル比(有機ポリイソシアネート(a−1a)のイソシアネート基のモル数/変性有機ポリイソシアネート(a−1b)のイソシアネート基のモル数)で、2.0〜20.0/1.0が好ましく、さらに4.0〜10.0/1.0が好ましい。
有機ポリイソシアネート(a−1a)と変性有機ポリイソシアネート(a−1b)のイソシアネート基のモル比が2.0/1.0未満であるとプライマー塗膜が硬くなり、接着性が悪くなる傾向がある。また、前記モル比が20.0/1.0を超えるとプライマー塗膜の耐水性、耐熱性が悪くなる傾向がある。
有機ポリイソシアネート化合物(a−1)と共に、有機モノイソシアネート化合物(a−2)を用いることができる。すなわち、有機ポリイソシアネート化合物(a−1)と有機モノイソシアネート化合物(a−2)の混合物を、上記有機イソシアネート化合物(a)として用いることができる。
有機モノイソシアネート化合物(a−2)は、その化合物中に1個のイソシアネート基を有する化合物であり、具体的には、n−ブチルモノイソシアネート、n−ヘキシルモノイソシアネート、n−ヘキサデシルモノイソシアネート、n−オクタデシルモノイソシアネート、p−イソプロピルフェニルモノイソシアネート、p−ベンジルオキシフェニルモノイソシアネートが挙げられる。これらは、いずれも1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
活性水素含有化合物(b)は、その化合物中に1つ以上の活性水素(基)を有する化合物である。本発明では、活性水素含有化合物(b)は、アニオン性基を有する活性水素含有化合物(b−1)を含み、必要に応じてその他の活性水素含有化合物(b−2)をさらに含む。
アニオン性基を有する活性水素含有化合物(b−1)は、その化合物中にアニオン性基および活性水素(基)をそれぞれ1つ以上有する化合物である。アニオン性基を有する活性水素含有化合物(b−1)の活性水素(基)を有機イソシアネート化合物(a)のイソシアネート基と反応させてウレタンプレポリマー(U)中にアニオン性基を導入することで、アニオン性基を有するイソシアネート基含有ウレタンプレポリマー(U)は水に乳化、分散しやすくなる。
アニオン性基を有する活性水素含有化合物(b−1)としては、具体的には、カルボキシル基を有する活性水素含有化合物およびスルホン基を有する活性水素含有化合物を挙げることができる。これらは、いずれも1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
カルボキシル基を有する活性水素含有化合物としては、具体的には、2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロールブタン酸、2,2−ジメチロールペンタン酸、2,2−ジメチロールヘキサン酸、2,2−ジメチロールヘプタン酸、2,2−ジメチロールオクタン酸、2,2−ジメチロールノナン酸、2,2−ジメチロールデカン酸が挙げられる。
スルホン基を有する活性水素含有化合物としては、具体的には、ジヒドロキシブタンスルホン酸、ジヒドロキシプロパンスルホン酸、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−2−アミノエタンスルホン酸、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−2−アミノブタンスルホン酸、1,3−フェニレンジアミン−4,6−ジスルホン酸、ジアミノブタンスルホン酸、ジアミノプロパンスルホン酸、3,6−ジアミノ−2−トルエンスルホン酸、2,4−ジアミノ−5−トルエンスルホン酸、N−(2−アミノエチル)−2−アミノエタンスルホン酸、2−アミノエタンスルホン酸、N−(2−アミノエチル)−2−アミノブタンスルホン酸が挙げられる。
これらのうち、汎用性があり、アニオン性基を有するイソシアネート基含有ウレタンプレポリマー(U)が水に乳化、分散し易く、プライマー塗膜が耐水性に優れることから、2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロールブタン酸が好ましく、特に2,2−ジメチロールプロピオン酸が好ましい。
アニオン性基を有するイソシアネート基含有ウレタンプレポリマー(U)は、有機イソシアネート化合物(a)と、アニオン性基を有する活性水素含有化合物(b−1)に加えて、さらにその他の活性水素含有化合物(b−2)を反応させて得ることもできる。この場合のウレタンプレポリマー(U)の合成は、有機イソシアネート化合物(a)とアニオン性基を有する活性水素含有化合物(b−1)とその他の活性水素含有化合物(b−2)を一括で反応させてもよいし、有機イソシアネート化合物(a)とその他の活性水素含有化合物(b−2)を反応させた後、さらにアニオン性基を有する活性水素含有化合物(b−1)を仕込み逐次に反応させてもよいし、有機イソシアネート化合物(a)とアニオン性基を有する活性水素含有化合物(b−1)を反応させた後、さらにその他の活性水素含有化合物(b−2)を仕込み逐次に反応させてもよい。
その他の活性水素含有化合物(b−2)は、本明細書においては、アニオン性基を有する活性水素含有化合物(b−1)、及び、詳しくは後述するがアニオン性基を有するイソシアネート基含有ウレタンプレポリマー(U)と反応させる鎖延長剤(c)や接着性付与剤(d)以外の活性水素含有化合物である。本明細書では、その他の活性水素含有化合物(b−2)をその他の低分子の活性水素含有化合物(b−2a)とその他の高分子の活性水素含有化合物(b−2b)に大別する。これらは、いずれも1種または2種を組み合わせて使用することができる。
その他の低分子の活性水素含有化合物(b−2a)は、数平均分子量が800未満のアニオン性基を有さない活性水素含有化合物である。なお、本発明における数平均分子量および重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定されるポリスチレン換算の分子量である。
その他の低分子の活性水素含有化合物(b−2a)としては、具体的には、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−2,4−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、3,5−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコールおよびトリプロピレングリコール等の低分子の脂肪族ポリオール;シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオール等の低分子の脂環式ポリオール;ビスフェノールAのエチレンオキサイド(以下、「EO」という場合もある。)付加物であるビスフェノールAのEO2モル付加物、ビスフェノールAのEO4モル付加物、ビスフェノールAのEO6モル付加物、ビスフェノールAのEO8モル付加物、ビスフェノールAのEO10モル付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド(以下、「PO」という場合もある。)付加物であるビスフェノールAのPO2モル付加物、ビスフェノールAのPO3モル付加物およびビスフェノールAのPO5モル付加物等の低分子の芳香族ポリオール;トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ヘキシトール類、ペンチトール類、グリセリン、ポリグリセリン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、テトラメチロールプロパン等の水酸基を3つ以上有する低分子のポリオールが挙げられる。これらは、いずれも1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。これらのうち、プライマー塗膜が耐水性や耐熱性に優れることから、低分子の芳香族ポリオールが好ましく、さらにビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物が好ましく、特にビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物が好ましい。
その他の高分子の活性水素含有化合物(b−2b)は、数平均分子量が800以上のアニオン性基を有さない活性水素含有化合物である。前記数平均分子量は、800〜30,000であることが好ましく、800〜20,000であることがより好ましく、800〜10,000であることがさらに好ましく、800〜5,000であることが特に好ましい。前記数平均分子量が30,000を超えると、ウレタンプレポリマー(U)を合成する際の反応性が低下し、ウレタンプレポリマー(U)の合成に時間がかかる場合や、ウレタンプレポリマー(U)の粘度が高くなり、多量の有機溶剤を必要とする場合がありコスト高となる。
その他の高分子の活性水素含有化合物(b−2b)としては、高分子のポリオール(数平均分子量が800以上のポリオール)を挙げることができる。
高分子のポリオールとしては、具体的には、高分子のポリエステルポリオール、高分子のポリエーテルポリオール、高分子の(メタ)アクリルポリオール、高分子のポリカーボネートポリオール、高分子のポリオレフィンポリオール、高分子の動植物系ポリオールが挙げられる。これらの高分子のポリオールは、いずれも1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。なお、本発明において、「(メタ)アクリル」とは「アクリルおよび/またはメタクリル」を意味する。
これらのうち、得られるウレタンプレポリマー(U)が水に乳化しやすくなる点やプライマー組成物が塗膜形成性に優れる点で高分子のポリエステルポリオール、高分子のポリエーテルポリオール、高分子の(メタ)アクリルポリオール、高分子のポリカーボネートポリオールが好ましく、高分子の(メタ)アクリルポリオール、高分子のポリカーボネートポリオールがさらに好ましい。プライマー組成物が接着性にも優れる点で高分子の(メタ)アクリルポリオールが特に好ましい。
高分子のポリエステルポリオールとしては、具体的には、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、ヘキサヒドロオルソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、トリメリット酸等のポリカルボン酸、それらの酸エステルまたは酸無水物の1種以上と、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールAのエチレンオキサイドあるいはプロピレンオキサイド付加物、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール等の低分子アルコール類、ヘキサメチレンジアミン、キシリレンジアミン、イソホロンジアミン等の低分子アミン類、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン等の低分子アミノアルコール類の1種以上との脱水縮合反応で得られる、ポリエステルポリオールまたはポリエステルアミドポリオールが挙げられる。また、低分子アルコール類、低分子アミン類、低分子アミノアルコール類を開始剤として、ε−カプロラクトン、γ−バレロラクトン等の環状エステル(ラクトン)モノマーの開環重合で得られるラクトン系ポリエステルポリオールが挙げられる。
高分子のポリエーテルポリオールとしては、前述のポリエステルポリオールの反応に用いられる低分子アルコール類、低分子アミン類、低分子アミノアルコール類を開始剤として、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、テトラヒドロフラン等を開環重合させて得られるポリエーテルポリオールが挙げられる。具体的には、ポリオキシエチレンポリオール、ポリオキシプロピレンポリオール、ポリテトラメチレンエーテルポリオール、これらを共重合したポリエーテルポリオール、さらに、前述のポリエステルポリオールを開始剤としたポリエステルエーテルポリオールが挙げられる。これらのうち、ポリオキシエチレンポリオール、ポリオキシプロピレンポリオールが好ましい。
高分子の(メタ)アクリルポリオールとしては、水酸基含有(メタ)アクリル系単量体とこれ以外のエチレン性不飽和化合物とを、溶剤の存在下又は不存在下に、バッチ式又は連続重合等のラジカル重合の方法により共重合させて得られるものが挙げられる。さらにいえば、溶剤の不存在下に150〜350℃、より好ましくは210〜250℃の高温で連続塊状共重合反応させて得られるものが、低臭で反応生成物の分子量分布が狭く低粘度になるため好ましい。この高分子の(メタ)アクリルポリオールの水酸基数は1分子中に平均して2個以上であることが好ましく、さらに2個を超えることが好ましく、特に2.2〜4個であることが好ましい。高分子の(メタ)アクリルポリオールの水酸基数が1分子中に平均して2個未満ではプライマー塗膜の接着性が低下する場合がある。
また、高分子の(メタ)アクリルポリオールの示差走査熱量測定(DSC)によるガラス転移温度(Tg)は、好ましくは0℃以下、さらに好ましくは−70〜−20℃、特に好ましくは−70〜−30℃である。また、高分子の(メタ)アクリルポリオールの数平均分子量は、好ましくは800〜10,000、さらに好ましくは800〜5,000、特に好ましくは800〜3,000である。また、高分子の(メタ)アクリルポリオールの重量平均分子量は、1,000〜30,000、さらに1,000〜10,000、特に1,000〜5,000が好ましい。そして、高分子の(メタ)アクリルポリオールの水酸基価は、10〜200mgKOH/gが好ましく、特に20〜150mgKOH/gが好ましい。水酸基価は、JIS K 1557−1(2007)「水酸基価の求め方」に準拠して測定することができる。
水酸基含有(メタ)アクリル系単量体は、分子内に少なくとも1個の水酸基を有する(メタ)アクリル系単量体であり、具体的には、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類;ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレートモノステアレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の多価アルコールのモノ(メタ)アクリレート類または水酸基残存多価(メタ)アクリレート類などが挙げられる。これらはいずれも1種または2種以上を組み合わせて使用できるが、これらのうち得られる高分子の(メタ)アクリルポリオールの粘度が低く、イソシアネート基との反応性が良好な点で、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類が好ましく、さらにヒドロキシエチル(メタ)アクリレートが好ましい。
水酸基含有(メタ)アクリル系単量体以外のエチレン性不飽和化合物としては、水酸基を含有しない(メタ)アクリル系単量体や、(メタ)アクリル系単量体以外のエチレン性不飽和化合物が挙げられ、(メタ)アクリル系単量体以外のエチレン性化合物としては、エチレン、プロピレン、イソブチレン、ブタジエン、クロロプレン、スチレン、クロルスチレン、2−メチルスチレン、ジビニルベンゼン等のビニル化合物などが挙げられ、水酸基を含有しない(メタ)アクリル系単量体としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリシジルトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらはいずれも1種または2種以上を組み合わせて使用できる。これらのうち、得られる高分子の(メタ)アクリルポリオールの粘度が低い点で、(メタ)アクリル酸エステル系化合物のモノマーが好ましく、さらに(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルが好ましい。
高分子のポリカーボネートポリオールとしては、具体的には、前述のポリエステルポリオールの反応に用いられる低分子アルコール類とホスゲンとの脱塩酸反応、あるいは前記低分子アルコール類とジエチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジフェニルカーボネート等とのエステル交換反応で得られるものが挙げられる。具体的には、ポリブタンジオールカーボネート、ポリ−3−メチルペンタンジオールカーボネート、ポリヘキサンジオールカーボネート、ポリノナンジオールカーボネート、ポリブタンジオールヘキサンジオールカーボネートが挙げられる。
高分子のポリオレフィンポリオールとしては、具体的には、水酸基含有ポリブタジエン、水素添加した水酸基含有ポリブタジエン、水酸基含有ポリイソプレン、水素添加した水酸基含有ポリイソプレン、水酸基含有塩素化ポリプロピレン、水酸基含有塩素化ポリエチレンが挙げられる。
高分子の動植物系ポリオールとしては、具体的には、ヒマシ油系ポリオール、絹フィブロインが挙げられる。
その他の活性水素含有化合物(b−2)とアニオン性基を有する活性水素含有化合物(b−1)の配合割合は、活性水素(基)(ただし、アニオン性基に含まれる活性水素(基)は除く。)のモル比(その他の活性水素含有化合物(b−2)のモル数/アニオン性基を有する活性水素含有化合物(b−1)の活性水素(基)のモル数)で、0.2〜5.0/1.0が好ましく、さらに0.3〜2.0/1.0が好ましく、特に0.3〜1.0/1.0が好ましい。
アニオン性基を有するイソシアネート基含有ウレタンプレポリマー(U)中のアニオン性基含有量は0.3〜6質量%が好ましい。
次に、(II)中和剤を用いてアニオン性基を有するイソシアネート基含有ウレタンプレポリマー(U)のアニオン性基を中和する工程について説明する。
アニオン性基を有するイソシアネート基含有ウレタンプレポリマー(U)の水への乳化、分散を向上させるため、中和剤を用いてウレタンプレポリマー(U)中のアニオン性基を中和することが好ましい。アニオン性基を中和剤で中和することでアニオン性基がアニオン性基塩となり水との親和性が向上し、ウレタンプレポリマー(U)が水へ乳化、分散しやすくなる。
中和剤は、ウレタンプレポリマー(U)を水に乳化、分散する前、または水に乳化、分散するのと同時に使用することができる。さらにいえば、ウレタンプレポリマー(U)を合成する際にアニオン性基を有する活性水素含有化合物(b−1)を仕込む操作と同時に使用してもよい。ウレタンプレポリマー(U)が水に乳化、分散し易い点で、ウレタンプレポリマー(U)を水に乳化、分散する前に使用することが好ましい。
中和剤としては、具体的には、アンモニア、エチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、トリブチルアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−フェニルジエタノールアミン、モノエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、モルホリン、N−メチルモルホリン、2−アミノ−2−エチル−1−プロパノール等の有機アミン類、リチウム、カリウム、ナトリウム等のアルカリ金属、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムの無機アルカリ類が挙げられる。これらはいずれも1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。これらのうち、水性プライマー組成物の貯蔵安定性が良好となることや、水性プライマー組成物の乾燥硬化後に中和剤をプライマー塗膜に極力残留させないために揮発性の高い、アンモニア、トリメチルアミン、トリエチルアミンが好ましく、特にトリエチルアミンが好ましい。
中和剤の使用量は、ウレタンプレポリマー(U)中のアニオン性基に対し、モル比(アニオン性基と塩を形成可能な中和剤のモル数/アニオン性基のモル数)で0.6〜1.1/1.0が好ましく、さらに0.8〜1.0/1.0が好ましい。中和剤の使用量が前記モル比で0.6未満であるとウレタンプレポリマー(U)が水へ乳化、分散しづらくなる場合や、水性プライマー組成物の貯蔵安定性が低下する場合がある。また、中和剤の使用量が前記モル比で1.1を超えると、特に中和剤として有機アミンを使用した場合、水性プライマー組成物の臭気が強くなる。
(III)アニオン性基を有するイソシアネート基含有ウレタンプレポリマー(U)を水に乳化、分散させる工程について説明する。
アニオン性基を有するイソシアネート基含有ウレタンプレポリマー(U)を水に乳化、分散させる方法としては、容器中で攪拌しながらウレタンプレポリマー(U)に水を一括または逐次に加え乳化、分散させる方法、または容器中で攪拌しながら水にウレタンプレポリマー(U)を一括または逐次に加え乳化、分散させる方法がある。
アニオン性基を有するイソシアネート基含有ウレタンプレポリマー(U)を水に乳化、分散させる操作は、従来公知の攪拌機によって行うことができる。アニオン性基を有するポリウレタン樹脂(A)の粒子径の調整が比較的容易で均一な水分散体を得るためにホモミキサー、ホモジナイザー、ディスパー、ラインミキサー、衝突混合を利用した分散装置、超音波振動を利用した分散装置を使用することができる。
(IV)アニオン性基を有するイソシアネート基含有ウレタンプレポリマー(U)と鎖延長剤(c)および接着性付与剤(d)の少なくとも一方を反応させてアニオン性基を有するポリウレタン樹脂(A)を合成する工程について説明する。なお、この工程は、(III)アニオン性基を有するイソシアネート基含有ウレタンプレポリマー(U)を水に乳化、分散させる工程と同時に行うこともできる。
アニオン性基を有するイソシアネート基含有ウレタンプレポリマー(U)に鎖延長剤(c)および密着性付与剤(d)の少なくとも一方を一括または逐次に加え、ウレタンプレポリマー(U)のイソシアネート基と反応させてウレタンプレポリマー(U)を高分子化させることでアニオン性基を有するポリウレタン樹脂(A)が得られる。この反応温度としては、0〜60℃が好ましく、さらに5〜40℃が好ましく、特に5〜30℃が好ましい。
鎖延長剤(c)は、その化合物中に活性水素(基)を有する化合物であり、且つウレタンプレポリマー(U)のイソシアネート基と反応(鎖延長)してウレタンプレポリマー(U)を高分子化させるものである。ウレタンプレポリマー(U)を高分子化させてアニオン性基を有するポリウレタン樹脂(A)とすることで、水性プライマー組成物の塗膜形成性が向上し、プライマー塗膜が下地材との接着性、耐水性に特に優れるものとなる。
鎖延長剤(c)としては、具体的には、エチレンジアミン、1,4−テトラメチレンジアミン、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン、1,4−ブタンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、1,4−ヘキサメチレンジアミン、3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、キシリレンジアミン、ピペラジン、アジポイルヒドラジド、ヒドラジン(水和物を含む)、2,5−ジメチルピペラジン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等のアミン化合物、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等のジオール化合物、ポリエチレングリコールに代表されるポリアルキレングリコール類、水が挙げられる。これらはいずれも1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。なお、鎖延長剤として水を使用する場合は、分散媒体である水が鎖延長剤を兼ねることになる。これらのうち、水への溶解性やウレタンプレポリマー(U)のイソシアネート基との反応性に優れることから一級ジアミンが好ましく、さらにヒドラジン(水和物を含む)、イソホロンジアミンが好ましく、特にヒドラジン(水和物を含む)が好ましい。
接着性付与剤(d)は、アニオン性基を有するイソシアネート基含有ウレタンプレポリマー(U)のイソシアネート基と反応性を有する活性水素(基)および加水分解性(架橋性)シリル基を有する化合物である。イソシアネート基と反応性を有する活性水素(基)および加水分解性シリル基を有する化合物をウレタンプレポリマー(U)のイソシアネート基と反応させてアニオン性基を有するポリウレタン樹脂(A)中に加水分解性シリル基を導入することで、プライマー塗膜が下地材との接着性、耐水性に特に優れるものとなる。すなわち、アニオン性基を有するポリウレタン樹脂(A)中の加水分解性シリル基が下地材と化学的に作用し接着性が向上するとともに、加水分解性シリル基が互いに縮合しアニオン性基を有するポリウレタン樹脂(A)が高分子化し耐水性が向上する。
加水分解性シリル基は、プライマー塗膜の下地材に対する接着性、耐水性の点から、次の一般式(1)で示されるものが好ましい。
式(1)中、Rは炭化水素基であり、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基または炭素数7〜20のアラルキル基が好ましく、メチル基が最も好ましい。Xで示される反応性基はハロゲン原子、水素原子、水酸基、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミド基、酸アミド基、メルカプト基、アルケニルオキシ基およびアミノオキシ基より選ばれる基であり、Xが複数の場合には、Xは同じ基であっても異なる基であってもよい。このうちXはアルコキシ基が好ましく、メトキシ基またはエトキシ基が最も好ましい。aは0、1または2であり、0または1が最も好ましい。
アニオン性基を有するポリウレタン樹脂(A)中の加水分解性シリル基のケイ素原子の含有量は、0.01質量%〜3.0質量%が好ましく、さらに0.1質量%〜3.0質量%が好ましく、特に0.3質量%〜2.0質量%が好ましい。アニオン性基を有するポリウレタン樹脂(A)中の加水分解性シリル基のケイ素原子の含有量が0.01質量%未満であると下地材(特に無機材料)に対する接着性が低下する場合があり、また加水分解性シリル基のケイ素原子の含有量が3.0質量%を超えると水性プライマー組成物の貯蔵安定性が悪くなる場合がある。
アニオン性基を有するイソシアネート基含有ウレタンプレポリマー(U)のイソシアネート基と反応性を有する活性水素(基)および加水分解性(架橋性)シリル基を有する化合物としては、具体的には、アミノシランカップリング剤、メルカプトシランカップリング剤が挙げられる。これらはいずれも1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
アミノシランカップリング剤としては、具体的には、アミノメチルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)アミノメチルトリメトキシシラン、アミノメチルジエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)メチルトリブトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3−アミノイソブチルトリメトキシシラン、N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノ−2−メチルプロピルトリメトキシシランが挙げられる。
メルカプトシランカップリング剤としては、具体的には、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルエチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルエチルジエトキシシラン、3−メルカプトプロピルジメチルメトキシシラン、2−メルカプトエチルメチルジメトキシシラン、2−メルカプトエチルトリメトキシシラン、2−メルカプトエチルトリエトキシシランが挙げられる。
これらのうち、ウレタンプレポリマー(U)のイソシアネート基との反応性が高く、水性プライマー組成物の接着性、耐水性に優れることから、アミノシランカップリング剤が好ましく、さらにN−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシランが好ましく、特にN−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシランが好ましい。
鎖延長剤(c)および接着性付与剤(d)の合計の使用量は、アニオン性基を有するイソシアネート基含有ウレタンプレポリマー(U)のイソシアネート基とのモル比(ウレタンプレポリマー(U)のイソシアネート基のモル数/鎖延長剤(c)および接着性付与剤(d)の活性水素(基)の合計モル数)で1.0〜1.3/1.0であることが好ましく、さらに1.0〜1.2/1.0が好ましく、特に1.0〜1.1/1.0が好ましい。
(V)上述の(I)〜(IV)の工程で有機溶剤を使用した場合の有機溶剤を除去する工程について説明する。(I)〜(IV)の工程で有機溶剤を使用した場合は、有機溶剤を除去する必要がある。水性プライマー組成物中に多量の有機溶剤があると、臭気や作業環境の悪化、環境汚染の原因となり、また、水性プライマー組成物の貯蔵安定性が悪くなる。
有機溶剤を除去する方法としては、常圧蒸留または減圧蒸留が挙げられる。蒸留の際に有機溶剤を留去しやすくするため加温してもよい。加温常圧蒸留または加温減圧蒸留により有機溶剤を留去する場合は、有機溶剤と同時に水も留去することがあるため、留去する有機溶剤の種類に応じて加温温度を適宜設定する必要がある。
アニオン性基を有するポリウレタン樹脂(A)の平均粒子径は、10〜1,000nmであることが好ましく、さらに20〜500nmであることが好ましく、特に40〜400nmであることが好ましい。アニオン性基を有するポリウレタン樹脂(A)の平均粒子径が10nm未満であると水性プライマー組成物の乾燥性、耐水性が悪くなり、平均粒子径が1,000nmを超えると水性プライマー組成物の貯蔵安定性が悪くなるため好ましくない。なお、アニオン性基を有するポリウレタン樹脂(A)の平均粒子径やポリエステル変性ポリウレタン樹脂(B)の平均粒子径等、本発明における平均粒子径は、レーザー回折分散法粒度分布測定によって求められる数値である。
ポリエステル変性ポリウレタン樹脂(B)
本発明におけるポリエステル変性ポリウレタン樹脂(B)は、本発明の水性プライマー組成物において、プライマー塗膜の接着性を向上させる成分である。特に水性プライマー組成物のアルミニウムや塩ビに対する接着性が良好となる。ポリエステル変性ポリウレタン樹脂(B)は、例えばポリエステルポリオール、ポリイソシアネート及びイソシアネート基と反応する活性水素化合物を反応させて得ることができる。ポリエステル変性ポリウレタン樹脂(B)の市販品としては、バイヒドロールUH−650(バイエルマテリアルサイエンス社製)が挙げられる。ポリエステル変性ポリウレタン樹脂(B)は、ポリエステル変性ポリウレタン樹脂の水分散体ディスパージョン)であることが好ましい。
ポリエステル変性ポリウレタン樹脂(B)の平均粒子径は、50〜500nmが好ましく、さらに50〜400nmが好ましく、特に50〜300nmが好ましい。
また、ポリエステル変性ポリウレタン樹脂(B)の引張強さ(N/mm2)は、15N/mm2以下が好ましく、10N/mm2以下が特に好ましい。ポリエステル変性ポリウレタン樹脂(B)の切断時伸び(%)は、500%以上が好ましく、500〜1,500%がさらに好ましく、800〜1,200%が特に好ましい。ポリエステル変性ポリウレタン樹脂(B)の引張強さ(N/mm2)および切断時伸び(%)は、JIS K 6251「加硫ゴムの引張試験方法(1993)、ダンベル状4号形」で求めることができる。
ポリエステル変性ポリウレタン樹脂(B)の使用量は、アニオン性基を有するポリウレタン樹脂(A)100質量部に対し、1〜30質量部が好ましく、特に2〜20質量部が好ましい。
本発明の水性プライマー組成物は、上記成分の他に本発明の目的を損なわない範囲で添加剤を使用することができる。添加剤としては、具体的には、接着性付与剤(d)以外の接着性付与剤、消泡剤、レベリング剤、着色剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、フィラー、安定剤、増粘剤を挙げることができる。これらの添加剤は、いずれも1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
接着性付与剤(d)以外の接着性付与剤としては、具体的には、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3,4−エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシラン、3,4−エポキシシクロヘキシルトリエトキシシラン、3,4−エポキシシクロヘキシルエチルメチルジメトキシシラン等のエポキシシランカップリング剤、ビニルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプルピルトリメトキシシラン、3−アクリキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のビニル基や(メタ)アクリロイル基を有する不飽和炭化水素シランカップリング剤、およびメチルシリケート、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジブチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、トリエチルメトキシシラン、トリフェニルメトキシシラン等の炭化水素シランカップリング剤、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン等のウレイドシランカップリング剤が挙げられる。
消泡剤としては、具体的には、鉱物油系ノニオン系界面活性剤、ポリジメチルシロキサンオイル、EOまたはPO変性のジメチルシリコーンまたはジメチルシリコーンエマルジョン等のシリコーン系消泡剤、鉱物油、アセチレンアルコール等のアルコール系消泡剤が挙げられる。
着色剤としては、水溶性で視認性があれば公知の着色剤を使用することができる。具体的には、食用青色1号、食用赤色3号、食用赤色102号、食用赤色104号、食用赤色105号、食用赤色106号、食用緑色3号が挙げられる。これらは、水性プライマー組成物に良好な塗布視認性を付与し、またプライマー塗布後に太陽光等の紫外線で容易に退色し無色となるため好ましい。
本発明の水性プライマー組成物は、アニオン性基を有するポリウレタン樹脂(A)、ポリエステル変性ポリウレタン樹脂(B)および添加剤(ただし、乾燥硬化後にプライマー塗膜となる成分)の合計量が水性プライマー組成物全体の5質量%〜50質量%であることが好ましく、特に15質量%〜40質量%であることが好ましい。アニオン性基を有するポリウレタン樹脂(A)、ポリエステル変性ポリウレタン樹脂(B)および添加剤の合計量が水性プライマー組成物全体の5質量%未満であると、揮発成分が多いためプライマー塗布後の乾燥硬化が遅くなる場合や、塗布する樹脂(塗膜成分)量が少なくなり十分にプライマー塗膜を確保できない場合がある。アニオン性基を有するポリウレタン樹脂(A)、ポリエステル変性ポリウレタン樹脂(B)および添加剤の合計量が水性プライマー組成物全体の50質量%を超えるとプライマーの貯蔵安定性が悪くなる場合や、塗布作業性が悪くなる場合がある。
本発明の水性プライマー組成物は、建築用途、土木用途に使用することが好ましい。本発明の水性プライマー組成物を塗布することができる下地材としては、特に制限はないが、具体的には、無垢材、合板、集成材等の木質材料、鉄、銅、ステンレス、ガルバニウム鋼板、トタン、アルミニウム、チタン等の金属材料、塩ビ樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ABS(Acrylonitrile-Butadiene-Styrene copolymer)、FRP(Fiber Reinforced Plastic)等の合成樹脂材料、天然ゴム等のゴム材料、瓦、ガラス、レンガ、タイル、モルタル、コンクリート、スレート、ALC(Autoclaved Lightweight Concrete)、サイディング、磁器、大理石、御影石等の無機材料が挙げられる。
本発明の水性プライマー組成物の塗布方法としては、特に制限はないが、具体的には、下地材の被着面に刷毛、ローラー、スプレー等を用いて塗布する方法がある。
本発明の水性プライマー組成物の塗布量は、10〜400g/m2が好ましく、さらに50〜300g/m2が好ましく、特に100〜200g/m2が好ましい。水性プライマー組成物の塗布量が10g/m2未満であるとプライマー塗膜(プライマー層)が十分に形成されず接着性が向上しない場合がある。また、水性プライマー組成物の塗布量が400g/m2を超えるとプライマー塗布後の乾燥硬化性が悪くなることやコスト高となり好ましくない。
また、本発明の水性プライマー組成物から形成されたプライマー塗膜(プライマー層)上に設けることができるシーリング材、防水材や、コーティング材に特に限定はないが、例えばウレタン系シーリング材や、変成シリコーン系のシーリング材を挙げることができる。
以下、本発明について実施例等でさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定して解釈されるものではない。
[合成例1]
攪拌機、温度計、還流冷却管および窒素導入管付きの反応容器に窒素気流下でジメチルカーボネートを96.1g、アクリルポリオール(ARUFON UH−2041、東亞合成社製、水酸基価120mgKOH/g−resin、ガラス転移温度−50℃、数平均分子量1,320、重量平均分子量2,260、水酸基価と数平均分子量から算出した水酸基数が、1分子中に平均して2.8個)を53.5g、ビスフェノールAのオキシプロピレン3付加物(BAP−3G、日本乳化剤社製、水酸基価280mgKOH/g)を5.0g、イソホロンジイソシアネートを71.5g、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体(イソシアヌレート3量体、スミジュールN3300、住化バイエルウレタン社製、イソシアネート基含有量21.8%、NCO当量193)を17.9g、反応触媒としてオクチル酸第一錫を0.1g仕込み、発熱に注意しながら70℃まで徐々に加熱し、反応系中のイソシアネート基含有量が10.3質量%以下になるまで反応を行った後、2,2−ジメチロールプロピオン酸を18.0g、トリエチルアミンを12.9g加えてさらに反応しアニオン性基を有するイソシアネート基含有ウレタンプレポリマー溶液(U−1)を得た。アニオン性基を有するイソシアネート基含有ウレタンプレポリマー溶液(U−1)のイソシアネート基含有量は5.0質量%であった。次いで、水を546.8g加えてアニオン性基を有するイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーを乳化、分散させた後、水253.8gとN−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン(アミノシランカップリング剤KBM−602、信越シリコーン社製)16.7gとヒドラジン一水和物3.8gとの混合液を加えて30℃で鎖延長反応を行った。さらに、ジメチルカーボネートを系外へ留去させるため、減圧しながら50℃まで徐々に加熱した。ジメチルカーボネートの留出がなくなるのを確認した後、30℃以下まで冷却しながら減圧を解除し、アニオン性基を有するポリウレタン樹脂(A−1)を含有する組成物(理論樹脂成分19.8質量%)を得た。なお、レーザー回折分散法粒度分布測定によるアニオン性基を有するポリウレタン樹脂(A−1)の平均粒子径は、84nmであった。
[実施例1]
攪拌機、窒素導入管付きの混合容器に窒素気流下で合成例1で得たアニオン性基を有するポリウレタン樹脂(A−1)を含有する組成物100g、ポリエステル変性ポリウレタン樹脂ディスパージョン(バイヒドロールUH−650、バイエルマテリアルサイエンス社製、不揮発分50質量%)を2.0g仕込み、攪拌混合して水性プライマー組成物(P−1)を得た。なお、バイヒドロールUH−650は、レーザー回折分散法粒度分布測定による平均粒子径が101nm、JIS K 6251(1993、ダンベル状4号形)に準拠して測定した引張強さ(N/mm2)が1N/mm2、切断時伸び(%)が1058%であった。
[実施例2]
実施例1においてポリエステル変性ポリウレタン樹脂ディスパージョン(UH−650)を4.0gとした以外は同様の操作を行い水性プライマー組成物(P−2)を得た。
[比較例1]
合成例1で得たアニオン性基を有するポリウレタン樹脂(A−1)を含有する組成物100gを水性プライマー組成物(P−3)とした。
[比較例2]
実施例1においてポリエステル変性ポリウレタン樹脂ディスパージョン(UH−650)に替えてポリカーボネート変性ウレタン樹脂ディスパージョン(バイヒドロールUH−2606、不揮発分35.0質量%)を2.8g仕込んだ以外は同様の操作を行い水性プライマー組成物(P−4)を得た。なお、バイヒドロールUH−2606は、レーザー回折分散法粒度分布測定による平均粒子径が68nm、JIS K 6251(1993、ダンベル状4号形)に準拠して測定した引張強さ(N/mm2)が34N/mm2、切断時伸び(%)が269%であった。
[比較例3]
比較例2においてポリカーボネート変性ウレタン樹脂ディスパージョン(UH−2606)を5.6g仕込んだ以外は同様の操作を行い水性プライマー組成物(P−5)を得た。
[比較例4]
実施例1においてポリエステル変性ポリウレタン樹脂(UH−650)に替えてポリカーボネート変性ウレタン樹脂ディスパージョン(インプラニールDLC−F、不揮発分40質量%)を2.5g仕込んだ以外は同様の操作を行い水性プライマー組成物(P−6)を得た。なお、インプラニールDLC−Fは、レーザー回折分散法粒度分布測定による平均粒子径が170nm、JIS K 6251(1993、ダンベル状4号形)に準拠して測定した引張強さ(N/mm2)が40N/mm2、切断時伸び(%)が296%であった。
[比較例5]
比較例4においてポリカーボネート変性ウレタン樹脂ディスパージョン(DLC−F)を5.0g仕込んだ以外は同様の操作を行い水性プライマー組成物(P−7)を得た。
[評価方法]
実施例1〜2および比較例1〜5で得た水性プライマー組成物を用いて下記に示す評価を行った。
<スレート、アルミニウム、塩ビに対する接着性試験>
縦50mm×横50mmのスレート、縦50mm×横50mmのアルミニウム(アルミニウムサッシ)、縦50mm×横50mmの硬質ポリ塩化ビニル(硬質塩ビ)、縦50mm×横50mmの軟質ポリ塩化ビニル(軟質塩ビ)の被着面に実施例1〜2および比較例1〜5の水性プライマー組成物をそれぞれ塗布量140g/m2で刷毛塗りし、室温で30分間乾燥硬化させてプライマー塗膜(プライマー層)を形成することにより、接着性試験体を作製した。
接着性試験体をJIS K 5600−5−6(1999)「塗料一般試験方法、第5部:塗膜の機械的性質、第6節:付着性(クロスカット法)」に準じて試験を行った。具体的には、単一刃切込み工具を使用し接着性試験体のプライマー塗膜に切込みを入れ、縦2mm×横2mmの大きさの100個の格子を作製した。次いで、この格子の表面に付着テープを貼りつけた後、付着テープを引き剥がし、水性プライマー組成物の接着性を下記の基準で評価した。評価基準の分子の数値はプライマー塗膜が付着している格子の数であり、分母の数値は試験を行った格子の合計数である。結果を表2の碁盤目試験欄に示す。
評価基準
◎:100/100×100 (どの格子も剥がれない)
○:95〜99/100×100(全体の1〜5%の格子が剥がれる)
△:85〜94/100×100(全体の6〜15%の格子が剥がれる)
×:65〜84/100×100(全体の16〜35%の格子が剥がれる)
××:35〜64/100×100(全体の36〜65%の格子が剥がれる)
×××:34以下/100×100 (全体の34%以上の格子が剥がれる)
<シーリング材に対する接着性試験(初期および水浸漬後)>
縦50mm×横50mmのスレート、縦50mm×横50mmのアルミニウム(アルミニウムサッシ)、縦50mm×横50mmの硬質ポリ塩化ビニル(硬質塩ビ)、縦50mm×横50mmの軟質ポリ塩化ビニル(軟質塩ビ)の被着面に実施例1〜2および比較例1〜5の水性プライマー組成物をそれぞれ塗布量140g/m2で刷毛塗りし、室温で30分間乾燥硬化してプライマー塗膜(プライマー層)を形成した。次いで、一液湿気硬化型ウレタン系シーリング材(オートンサイディングシーラント、オート化学工業社製)をプライマー塗膜表面(塗布面)におおよそ幅20mm×高さ10mm×長さ40mmのビード状(線状)に打設し、23℃50%RH(相対湿度)の条件で14日間養生し硬化させ初期の接着性試験体とした。この接着性試験体の表面に形成されたビード状の硬化物の片端部を手で摘み、硬化物の片端部とプライマー塗膜間にカッターナイフで切り込みを入れ、長さ方向に180°折り返して引張り、接着性を確認した。下記の基準で評価した結果を表2に示す。なお、表2の括弧内は引張りにより生じた破壊状況を示し、CFはシーリング材の凝集破壊であり、TCFはシーリング材の薄層凝集破壊であり、PFはプライマー塗膜と被着体(スレート、アルミニウムサッシ、硬質塩ビ、軟質塩ビ)との界面剥離であり、AFはシーリング材とプライマー塗膜との界面剥離である。シーリング材の凝集破壊は、シーリング材とプライマー塗膜、及び、プライマー塗膜と被着体の両方の接着性がよいため、引張り力を大きくすると最終的にシーリング材が破壊する現象である。また、プライマー塗膜と被着体との界面剥離は、プライマー塗膜と被着体との接着強度がシーリング材の破壊強度及びシーリング材とプライマー塗膜との接着強度より弱い場合に生じる現象であり、シーリング材とプライマー塗膜との界面剥離は、シーリング材とプライマー塗膜との接着強度がシーリング材の破壊強度及びプライマー塗膜と被着体との接着強度より弱い場合に生じる現象である。
評価基準
○:強く引張ってもはがれず、シーリング材の凝集破壊となる
△:強く引張るとはがれ、界面剥離となる
×:引張ると簡単にはがれ、界面剥離となる
同様に初期の接着性試験体を作製した後、この接着性試験体を23℃の水中に7日間浸漬させた。水浸漬後、試験体を取り出しウエスで軽く拭き、これを水浸漬後の接着性試験体とした。この水浸漬後の接着性試験体の表面に形成されたビード状の硬化物の片端部を手で摘み、硬化物の片端部とプライマー塗膜間にカッターナイフで切り込みを入れ、長さ方向に180°折り返して引張り、上記と同様の評価基準で接着性を確認した。結果を表2に示す。
表2に示すように、本発明の水性プライマー組成物は、耐水性が高く、また、スレート、アルミニウム、塩ビ等の下地材やシーリング材等に対する接着性に優れ、シーリング材、防水材、コーティング材を施工する際の(下地処理用)プライマーとして使用することができる。特にウレタン系、変成シリコーン系のシーリング材、防水材、コーティング材として好適である。