(第1実施例)
図面を参照して本実施例の電力変換装置を説明する。本実施例の電力変換装置は、電気自動車に搭載され、バッテリの直流電力を交流電力に変換し、走行モータに供給するインバータ100である。インバータ100は、バッテリの直流電力を昇圧する昇圧回路と、直流を交流に変換するインバータ回路を備える。昇圧回路とインバータ回路は良く知られているので回路構成の説明は省略する。
図1にインバータ100の平面図を示す。図1は、インバータ100の上カバーを外した平面図であり、ハウジング53の内部の部品レイアウトを示している。
インバータ100は、ハウジング53の中に、パワーユニット10、リアクトル55、2個のコンデンサ56、制御基板(不図示)を収容している。リアクトル55は、昇圧回路の一部品である。2個のコンデンサ56は、それぞれ、昇圧回路の入力側と出力側に並列に接続されており、電流を平滑化する。不図示の制御基板は、パワーユニット10の上に配置される。
パワーユニット10は、複数の冷却器2a−2dと複数の半導体モジュール3a−3dが一つずつ交互に積層されたユニットである。半導体モジュール3a−3dのそれぞれは、半導体素子であるパワートランジスタを収容している。詳しい構造の説明は省略するが、1個の半導体モジュールには2個のパワートランジスタが収容されている。パワーユニット10は4個の半導体モジュール3a−3dを備えており、合計で8個のパワートランジスタがパワーユニット10に含まれている。複数のパワートランジスタが電力変換の主要部品、すなわち、前述した昇圧回路とインバータ回路の主要部品である。図1で不図示の制御基板が、各パワートランジスタのオンオフを制御する。
以下、説明を簡単にするため、複数の半導体モジュール3a−3dのいずれか一つを区別なく示すときには半導体モジュール3と表記する。同様に、複数の冷却器2a−2eのいずれか一つを区別なく示すときには冷却器2と表記する。積層方向(X方向)の端に位置する冷却器2d、2eの形状は他の冷却器2a−2cとは異なるが、冷却器2a−2eを冷却器2と総称する。冷却器2d、2eと他の冷却器2a−2cとの相違は後に説明する。
図中の座標系について説明する。X方向は複数の冷却器2と複数の半導体モジュール3の積層方向に相当する。冷却器2は、積層方向(X方向)から見て長尺であり、Y方向が冷却器の長手方向に相当する。説明の便宜上、Z方向を上下方向とする。
パワーユニット10は、ハウジング53の側壁53bと支柱53aの間に配置されている。パワーユニット10の積層方向の一端が側壁53bに当接しており、他端と支柱53aの間に板バネ54が挿入されている。板バネ54は、パワーユニット10に積層方向(図中のX方向)の圧力を加える。詳しくは後述するが、冷却器2の本体は半導体モジュール3と対向する側面に開口を有しており、その開口を金属板が封止している。板バネ54による圧力によって開口と金属板の間の封止が確保される。
図2にパワーユニット10の斜視図を示す。半導体モジュール3は、上面に3個のパワー端子59a、59b、59cを備えている。半導体モジュール3の内部では2個のパワートランジスタが直列に接続されており、3個のパワー端子59a、59b、59cは、それぞれ、パワートランジスタの直列接続の高電位側端子、中点端子、低電位側端子に相当する。なお、図には示されていないが、半導体モジュール3の下面には、パワートランジスタのゲートに接続されているゲート端子が設けられている。別言すれば、半導体モジュール3は、Y方向に延びる端子群(パワー端子59a、59b、59c、及び、ゲート端子)を有している。
積層方向(X方向)の一方の端に位置する冷却器2dには各冷却器2に冷媒を供給する供給管51と各冷却器2を通過した冷媒を排出する排出管52が設けられている。図1に示すように、供給管51と排出管52はハウジング53の外へと延びており、これらの管には不図示の冷媒循環器がつながっている。パワーユニット10が用いる冷媒は液体であり、典型的には水あるいは不凍液である。冷却器2の構造と冷媒の流れについては後述する。
半導体モジュール3はカード型であり、各半導体モジュール3を一対の冷却器2が挟み込んでいる。別言すれば、隣接する一対の冷却器2の間にカード型の半導体モジュール3が挟まれている。符号を省略しているが、全ての半導体モジュール3がパワー端子59a−59cを備える。
図3に、パワーユニット10の部分分解斜視図を示す。図3は、パワーユニット10において隣接する一対の冷却器2a、2bの分解図と、それらに挟まれる半導体モジュール3bを示している。なお、図示は省略しているが、冷却器2bの後方(X軸の負の方向)には半導体モジュール3cと冷却器2cが配置されている。隣接する冷却器2b、2cとそれらに挟まれる半導体モジュール3cの構造的関係は、冷却器2a、2b、半導体モジュール3bの構造的関係と同じである。また、図示は省略しているが、冷却器2aの前方(X軸の正の方向)には半導体モジュール3aと冷却器2dが配置されている。隣接する冷却器2d、2aとそれらに挟まれる半導体モジュール3aの構造的関係は、冷却器2a、2b、半導体モジュール3bの構造的関係と同じである。なお、パワーユニット10の一端に位置する冷却器2dは、半導体モジュール3aとは反対側の構造が他の冷却器と異なるが、半導体モジュール3aに面している側の構造は冷却器2a、2bと同じである。同様に、パワーユニット10の他端に位置する冷却器2eは、半導体モジュール3dとは反対側の構造が他の冷却器と異なるが、半導体モジュール3dに面している側の構造は冷却器2a、2bと同じである。冷却器2dの半導体モジュール3aとは反対側には、開口は設けられておらず、また、供給管51と排出管52が接続されている。冷却器2eの半導体モジュール3dとは反対側には、開口は設けられていない。
以下では、冷却器2aと2bの半導体モジュール3b側の構造を説明する。冷却器2aの半導体モジュール3aの側の構造、及び、冷却器2bの半導体モジュール3cの側の構造も同じであることに留意されたい。
冷却器2bは、本体20と、金属板252と、ガスケット241と、を備える。本体20は、樹脂の射出成型で作られており、その内部に冷媒が通る流路201が設けられている。本体20の半導体モジュール3bと対向する側面231に開口211が設けられている。開口211は、内部の流路201と連通している。
金属板252は、一方の面が本体20に対向し、他方の面が半導体モジュール3bと対向するとともに半導体モジュール3bに固定されている。金属板252のうち、本体20と対向する側の面(以下では、「本体20側の面」と呼ぶ場合がある)には、多数のピンフィン26が設けられている。一方、半導体モジュール3bと対向する側の面(以下では、「半導体モジュール3b側の面」と呼ぶ場合がある)は、絶縁板19を挟んで、半導体モジュール3bに固定されている。図4に示すように、本実施例では、半導体モジュール3bの金属板252側の面には、2個のパワートランジスタ(図5、図6の符号58a、58b参照)と導通している導電性の放熱板57bが露出している。絶縁板19は、その放熱板57bと金属板252とを絶縁する。図4に示すように、半導体モジュール3bと、金属板252の半導体モジュール3b側の面の間に挟まれる絶縁板19の表面積は、金属板252の表面積よりも小さい。詳しく言うと、絶縁板19のZ方向の長さは金属板252のZ方向の長さとほぼ同じであるが、絶縁板19のY方向の長さが金属板252のY方向の長さよりも短い。金属板252の半導体モジュール3b側の面のうち、絶縁板19のY方向の両側には、絶縁板19の縁に沿って延びる凸条252aが形成されている。凸条252aは、半導体モジュール3b側に突出している。これにより、一対の凸条252aの間に、絶縁板19を収容可能な形状の凹部262が形成される。
絶縁板19は、金属板252が半導体モジュール3bに固定される前に、一対の凸条252aの間(即ち凹部262内)に収容される。図4では、金属板252から離れた位置に絶縁板19を描き、一対の凸条252aの間に収容された状態の絶縁板19を仮想線で描いてある。一対の凸条252aの間に絶縁板19が収容された状態では、絶縁板19の表面(即ち、半導体モジュール3bと対向する側の面)と、一対の凸条252aの頭頂面(即ち、半導体モジュール3bと対向する側の面)とは、略面一に形成される。このように、本実施例では、絶縁板19は、一対の凸条252aの間(即ち凹部262内)に収まる大きさであればよいため、金属板252よりも表面積の小さい絶縁板19を使用することができる。
金属板252の一対の凸条252aの間に絶縁板19が収容された状態で、金属板252は、半導体モジュール3bに固定される。この際、絶縁板19の表面、及び、凸条252aの頭頂面の双方は、半導体モジュール3bの表面と当接する。この際、半導体モジュール3bの表面に露出した放熱板57bは、絶縁板19の表面と当接する。これにより、放熱板57bと金属板252とが電気的に絶縁される。また、金属板252と半導体モジュール3bとを固定する際には、凸条252aの頭頂面と半導体モジュール3bとの間に緩衝材272が挟まれる。即ち、凸条252aの頭頂面は、緩衝材272を介して半導体モジュール3bに当接される。緩衝材272は、例えば弾性を有する樹脂製のシート材である。
図3に示すように、金属板252の半導体モジュール3b側の面が半導体モジュール3bに固定された後で、金属板252の反対側の面(即ち本体20側の面)は、ガスケット241を介して開口211に取り付けられる。ガスケット241は、リング状であり、開口211を囲むように、本体20の側面231に配置される。開口211は、ガスケット241を介して金属板252で塞がれる。別言すれば、金属板252のうちの一方の面(即ち、開口211に対向する側の面)は、ガスケット241を挟んで開口211に取り付けられる。別言すれば、金属板252は、一方の面がガスケット241を挟んで開口211を塞いでおり、他方の面が半導体モジュール3bと対向する。
冷却器2bの半導体モジュール3bとは反対側の構造を説明する前に、冷却器2aと半導体モジュール3bの構造的関係を説明する。冷却器2aも、冷却器2bと同様に、本体20と、金属板251と、ガスケット241と備える。冷却器2aの本体も、内部に流路201を備えており、半導体モジュール3bに対向する側面232に開口212が設けられている。開口212は流路201と連通する。開口212は、ガスケット242を挟んで金属板251で封止される。金属板251は、金属板252と同様の構成を備えている。即ち、金属板251は、一方の面がガスケット242を挟んで開口212を塞いでおり、他方の面が絶縁板19を挟んで半導体モジュール3bと対向する。
図4に示すように、金属板251の半導体モジュール3b側の面は、絶縁板19を挟んで、半導体モジュール3bに固定されている。なお、半導体モジュール3bの金属板251側の面にも、パワートランジスタ(図5、図6の符号58a、58b参照)と導通している導電性の放熱板57a、57cが露出している。絶縁板19は、それらの放熱板57a、57cと金属板251とを電気的に絶縁する。図4に示すように、半導体モジュール3bと、金属板251の半導体モジュール3b側の面の間に挟まれる絶縁板19の表面積も、金属板251の表面積よりも小さい。即ち、絶縁板19のZ方向の長さは金属板252のZ方向の長さとほぼ同じであるが、絶縁板19のY方向の長さが金属板252のY方向の長さよりも短い。金属板251の半導体モジュール3b側の面のうち、絶縁板19のY方向の両側には、絶縁板19の縁に沿って延びる凸条251aが形成されている。これにより、一対の凸条251aの間には、絶縁板19を収容可能な形状の凹部261が形成される。
金属板251の半導体モジュール3bに対向する側の面は、一対の凸条251aの間(即ち凹部261内)に絶縁板19が収容された後で、半導体モジュール3bに固定される。この際、絶縁板19の表面、及び、凸条251aの頭頂面の双方は、半導体モジュール3bの表面と当接する。この際、半導体モジュール3bの表面に露出した放熱板57a、57cは、絶縁板19の表面と当接する。これにより、放熱板57a、57cと金属板251とが電気的に絶縁される。また、金属板251と半導体モジュール3bとを固定する際には、凸条251aの頭頂面と半導体モジュール3bとの間に緩衝材271が挟まれる。即ち、凸条251aの頭頂面は、緩衝材271を介して半導体モジュール3bに当接される。
冷却器2bの半導体モジュール3bとは反対側の構造は、冷却器2aの半導体モジュール3bの側の構造と同じである。また、冷却器2aの半導体モジュール3bとは反対側の構造は冷却器2bの半導体モジュール3bの側の構造と同じである。すなわち、冷却器2bの開口212もガスケットを挟んで別の金属板に封止される。冷却器2aの開口211もガスケットを挟んでさらに別の金属板に封止される。冷却器2a、2bは、積層方向の両側に開口211、212を備えており、それらの開口はガスケットを挟んで金属板で封止される。
金属板251、252は、ねじ等で本体20に固定されていない。図1を参照して説明したように、板バネ54がパワーユニット10を積層方向に加圧しており、板バネ54の加圧力によって開口211(212)と金属板252(251)との間の封止(水密性)が確保される。この構造はいずれの冷却器でも同じである。ただし、パワーユニット10の積層方向の両端面(冷却器2eの一方の側面と冷却器2dの一方の側面)には開口が設けられていない。
冷却器2bの本体20のY方向の両側には、積層方向(X方向)に突出する筒部22が形成されている。筒部22は、リング状のガスケット25を挟んで隣接する冷却器2aの筒部22と接続される。すなわち、隣接する冷却器同士は筒部22でつながっている。筒部22の内側には、本体20を積層方向(X方向)に貫通する貫通孔221a(221b)が設けられており、その貫通孔221a(221b)は、本体20の内部で流路201と連通している。冷却器2bの後方には冷却器2cが配置されており、冷却器2bと冷却器2cの連結構造は、冷却器2aと冷却器2bの連結構造と同じである。パワーユニット10では、隣接する冷却器2同士が2個の貫通孔221a、221bで連通する。そして、供給管51(図1、図2参照)から供給された冷媒が一方の貫通孔221aを通じて各冷却器2に分配され、流路201をY方向に流れる。先に述べたように冷却器2bの本体20はY方向に長尺であり、冷媒は本体20の内部をその長尺方向に流れる。
冷媒は流路201を通過する間に隣接する半導体モジュール3の熱を、金属板251、252を介して吸収する。半導体モジュール3の熱を吸収した冷媒は、他方の貫通孔221bを通じて排出管52(図1、図2参照)から排出される。先に述べたようにパワーユニット10には不図示の冷媒循環器が接続されており、排出管52から排出された冷媒はラジエータなどで冷却されて再びパワーユニット10へと送られる。
金属板251(252)は、開口212(211)を通じて流路201に面している。また、金属板251の本体20側の面に設けられている多数のピンフィン26も、開口212(211)を通じて流路201内に突出している。そのため、金属板251(252)及びピンフィン26は、流路201内を通過する冷媒と直接接触する。従って、半導体モジュール3bの熱は金属板251(252)とピンフィン26を介して流路201を通る冷媒に効率よく吸収される。
他の半導体モジュール3a、3c、3dも、半導体モジュール3bと同様にカード型であり、その両側から一対の冷却器2に挟まれている。半導体モジュール3a、3c、3dも、両側の冷却器2によって効果的に冷却される。冷却器2の本体20の上部には、軽量化のための溝204(肉抜き溝)が設けられている。
半導体モジュール3bと金属板251とそれらの間に挟まれるガスケット242の位置関係を説明する。図5に、積層方向(X方向)からみたときの半導体モジュール3bと金属板251とガスケット242の位置関係を示す模式図を示す。図5では、金属板251及び絶縁板19は破線で示してあり、冷却器2aは仮想線で示してある。また、冷却器2aの本体に設けられる開口212も仮想線で示してある。また、理解の容易のため、積層方向からみたときに、半導体モジュール3bが占める領域のうち、冷却器2の開口212と重なる範囲を除いた領域をハッチングで示してある。別言すれば、ハッチングを施した領域は、冷却器2aの本体20の開口212を除く側面と半導体モジュール3bが対向する領域である。
なお、上記の通り、図5中の符号57a、57cは、半導体モジュール3bの表面に露出している放熱板である。放熱板57aは、半導体モジュール3bの内部でパワー端子59aと連続している。また、放熱板57aは、半導体モジュール3bの内部でパワートランジスタ58aのドレイン電極と接続している。放熱板57cは、半導体モジュール3bの内部でパワー端子59cと連続している。また、放熱板57cは、半導体モジュール3bの内部でパワートランジスタ58bのソース電極と接続している。上記の通り、放熱板57a、57cは、絶縁板19と当接しており、絶縁板19によって金属板251と電気的に絶縁されている。なお、半導体モジュール3bの裏面には放熱板57b、57dが露出している(図4、図6、図7参照)。放熱板57bは、半導体モジュール3bの内部でパワー端子59bと連続している。また、放熱板57bは、半導体モジュール3bの内部で、導電体のスペーサ62(図6、図7参照)を介してパワートランジスタ58aのソース電極、及び、パワートランジスタ58bのドレイン電極と接続している。すなわち、放熱板57bは、2個のパワートランジスタ58a、58bを直列に接続する。上記の通り、放熱板57bは、絶縁板19と当接しており、絶縁板19によって金属板252と絶縁されている。また、図5では、半導体モジュール3bの下面から延びるゲート端子61も図示されている。
図5の放熱板57a、57cは、内部のパワートランジスタ58a、58bの電極と接続しているため、パワートランジスタ58a、58bの熱をよく伝える。図5に示すように、冷却器2の開口212は、積層方向からみて放熱板57a、57cの全領域と重なるように設けられている。即ち、金属板251は、一方の面で絶縁板19を介して放熱板57a、57cと対向しており、他方の面は冷媒に直接に接する。金属板251の他方の面には前述したように多数のピンフィン26が設けられている。パワートランジスタ58a、58bの熱は、放熱板57a、57cと金属板251を通じて冷媒によく伝達される。半導体モジュール3bの図5に表された面とは反対側の面でも同様である。
ガスケット242は、積層方向(X方向)からみて開口212を囲むように、開口212の周囲で本体20の側面に配置されている。半導体モジュール3bを効率よく冷却するため、開口212は大きく設けられている。図5に示すように、積層方向(X方向)からみたとき、開口212を囲むリング状のガスケット242は、その全周において、半導体モジュール3bと重なっている。それとともに、ガスケット242の一部は、凸条251aと重なっている。また、他の一部は、絶縁板19と重なっている。即ち、ガスケット242は、その全周において、金属板251の凸条251aと絶縁板19とのどちらかと重なっていると言うこともできる。
先に述べたように、板バネ54(図1参照)によって金属板251はガスケット242に押しつけられており、金属板251は、ガスケット242から反力を受ける。上記の通り、本実施例では、絶縁板19、及び、凸条251aの頭頂部は、ともに半導体モジュール3bと当接する。即ち、図5によく示されているように、金属板251は、ガスケット242の全周にわたってその反対側(即ち半導体モジュール3b側)を半導体モジュール3bによって支持されていると言える。そのため、金属板251は、ガスケット242から反力を受けても撓むことがない。上記の通り、本実施例では、金属板251よりも表面積の小さい絶縁板19を用いた場合においても、金属板251のうち、ガスケット242の反力を受ける部分は、全て半導体モジュール3bで支持される。そのため、金属板251がガスケット242の反力を受けて撓むことがなく、開口212と金属板252の間の封止性を高めることができる。
図6は、隣接する一対の冷却器2a、2bとそれらに挟まれる半導体モジュール3bの積層体を、図5のVI−VI線に相当する断面でカットした図である。ただし、図6では積層体の下半分は図示を省略した。また、図6の断面においては、積層方向(X方向)からみて、ガスケット241(242)と絶縁板19と半導体モジュール3bが重なっている。先に述べたように、パワーユニット10は、板バネ54(図1参照)によって積層方向(X方向)に加圧されており、その加圧力によって、開口212(211)と金属板251(252)の封止が確保されている。金属板251(252)は、ガスケット242(241)から反力(板バネ54の加圧力に対する反力)を受ける。一方、絶縁板19は、半導体モジュール3bの放熱板57a、57b、57cに当接している。即ち、金属板251(252)のガスケット242(241)の反対側の面(即ち半導体モジュール3b側の面)は、絶縁板19を介して、半導体モジュール3bによって支えらえている。よって、金属板251(252)は、ガスケット242(241)から反力を受けても撓むことはない。
上記の通り、半導体モジュール3bは、パワートランジスタ58a、58bを樹脂で封止したデバイスであり、そのボディは樹脂モールド31で作られている。他の半導体モジュール3a、3c、3dについても同様である。図5において、符号26は金属板251(252)に設けられているピンフィンを示している。符号204は、先に説明したように、本体20を軽量化するための溝(肉抜き溝)を示している。符号205は、ガスケット241(242)を収めるための溝を示している。
図7は、隣接する一対の冷却器2a、2bとそれらに挟まれる半導体モジュール3bの積層体を、図6のVII−VII線に相当する断面でカットした図である。ただし、Y方向の一部を省略している。図7の断面においても、積層方向(X方向)からみて、ガスケット242(241)と半導体モジュール3bは重なっている。さらに、ガスケット242(241)凸条251a(252a)も重なっている。図7に示した部分とY方向で反対側の部位も同じ構造を有している。従って、図4−図7に示されているように、積層方向からみたときに、リング状のガスケット241、242の全周にわたってガスケット241、242と半導体モジュール3bは重なっている。それとともに、ガスケット242の一部は、凸条251aと重なっている。また、他の一部は、絶縁板19と重なっている。
なお、本体20の開口212、211の周囲には溝205が設けられており、その溝205にガスケット241、242が配置される。溝205は、図1〜図5では図示を省略してあった。また、冷却器2a、2bの筒部22の端面には、貫通孔221a(221b)を囲むように溝207が設けられており、その溝207にガスケット25が配置される。図1〜図5では溝207の図示を省略してあった。
(本実施例の作用効果)
以上、本実施例のインバータ100の構造を説明した。上記の通り、本実施例では、絶縁板19は、一対の凸条251a(252a)の間(即ち凹部261、262内)に収まる大きさであればよいため、金属板251(252)よりも表面積の小さい絶縁板19を使用することができる。さらに、本実施例では、積層方向(X方向)からみたときに、凸条251a(252a)はガスケット242(241)の一部と重なるが、各凸条251a(252a)の頭頂面は半導体モジュール3bと当接している。そのため、金属板251(252)よりも表面積の小さい絶縁板19を用いた場合においても、金属板251(252)のうち、ガスケット242(241)の反力を受ける部分は、全て半導体モジュール3bで支持することができる。従って、金属板251(252)がガスケット242(241)の反力を受けて撓むことがなく、開口212(211)と金属板251(252)の間の封止性を高めることができる。
(対応関係)
本実施例と請求項の対応関係について述べておく。本実施例の板バネ54が「弾性部材」の一例である。金属板251(252)のうちの本体20側の面が「一方の面」の一例であり、金属板251(252)のうちの半導体モジュール3b側の面が「他方の面」の一例である。
(第2実施例)
第1実施例と異なる点を中心に説明する。図8に示すように、本実施例では、絶縁板19のY方向の長さが金属板252のY方向の長さよりも短いとともに、絶縁板19のZ方向の長さも金属板252のZ方向の長さよりも短い点で第1実施例とは異なる。そのため、本実施例では、金属板252の半導体モジュール3b側の面のうち、絶縁板19のY方向の両側には凸条252aが形成されているとともに、絶縁板19のZ方向の両側にも凸条252bが形成されている。即ち、一対の凸条252aの間、かつ、一対の凸条252bの間に、上記の絶縁板19を収容可能な形状の凹部262が形成される。本実施例でも、凸条252a、凸条252bの間(即ち凹部262内)に絶縁板19が収容された状態では、絶縁板19の表面と、凸条252aの頭頂部及び凸条252bの頭頂部とは、略面一に形成される。
金属板252の凸条252a、252b(即ち凹部262内)の間に絶縁板19が収容された状態で、金属板252は、半導体モジュール3bに固定される。この際、絶縁板19の表面、凸条252aの頭頂面、凸条252bの頭頂面は、いずれも半導体モジュール3bの表面と当接する。絶縁板19は、放熱板57bと当接し、放熱板57bと金属板252とを電気的に絶縁する。また、固定の際、凸条252aの頭頂面と半導体モジュール3bとの間には、緩衝材272が挟まれる。即ち、凸条252aの頭頂面は、緩衝材272を挟んで半導体モジュール3bに当接される。また、図示しないが、凸条252bの頭頂面と半導体モジュール3bとの間にも、同様に緩衝材を挟んでもよい。
半導体モジュール3bの反対側に固定される金属板251も、金属板252と同様の構成を備えている。即ち、金属板251の半導体モジュール3b側の面のうち、絶縁板19のY方向の両側に凸条251aが形成されているとともに、絶縁板19のZ方向の両側にも凸条251bが形成されている。即ち、一対の凸条251aの間、かつ、一対の凸条251bの間に、絶縁板19を収容可能な形状の凹部261が形成される。なお、図8では、理解の容易のため、凹部261の開口縁部を破線で示している。凸条251a、凸条251bの間(即ち凹部261内)に絶縁板19が収容された状態では、絶縁板19の表面と、凸条251aの頭頂部及び凸条251bの頭頂部とは、略面一に形成される。
金属板251の凸条251a、251bの間に絶縁板19が収容された状態で、金属板251は、半導体モジュール3bに固定される。この際、絶縁板19の表面、凸条251aの頭頂面、凸条251bの頭頂面は、いずれも半導体モジュール3bの表面と当接する。絶縁板19は、放熱板57a、57cと当接し、放熱板57a、57cと金属板251とを電気的に絶縁する。また、固定の際、凸条251aの頭頂面と半導体モジュール3bとの間には、緩衝材271が挟まれる。即ち、凸条251aの頭頂面は、緩衝材271を挟んで半導体モジュール3bに当接される。また、図示しないが、凸条251bの頭頂面と半導体モジュール3bとの間にも、同様に緩衝材を挟んでもよい。
本実施例の構造を採用する場合も、積層方向からみてガスケット242(241)の全周が半導体モジュール3bと重なる。それとともに、ガスケット242(241)の一部は、凸条251a(252a)と重なり、他の一部は、凸条251b(252b)と重なっている。即ち、ガスケット242(241)は、その全周において、凸条251a(252a)又は凸条251b(252b)と重なっていると言うことができる。
(本実施例の作用効果)
本実施例でも、絶縁板19は、凸条251a(252a)の間、かつ、凸条251b(252b)の間(即ち凹部261、262内)に収まる大きさであればよいため、金属板251(252)よりも表面積の小さい絶縁板19を使用することができる。さらに、本実施例では、積層方向(X方向)からみたときに、凸条251a(252a)、及び、凸条251b(252b)はいずれもガスケット242(241)と重なるが、凸条251a(252a)、凸条251b(252b)の頭頂面はいずれも半導体モジュール3bと当接している。そのため、金属板251(252)よりも表面積の小さい絶縁板19を用いた場合においても、金属板251(252)のうち、ガスケット242(241)の反力を受ける部分は、全て半導体モジュール3bで支持される。従って、金属板251(252)がガスケット242(241)の反力を受けて撓むことがなく、開口212(211)と金属板251(252)の間の封止性を高めることができる。
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。例えば、以下の変形例を採用してもよい。
(変形例1)上記の各実施例の電力変換装置はバッテリの直流電力を交流電力に変換するインバータ100であった。本明細書が開示する技術は、インバータ以外の電力変換装置に適用することも好適である。また、本明細書が開示する技術は、一つの半導体モジュールが一対の冷却器に挟まれているパワーユニットだけでなく、複数の冷却器と複数の半導体モジュールを含んでおり隣接する冷却器の間に半導体モジュールが挿入されているパワーユニットを備えた電力変換装置にも適用することができる。
(変形例2)上記の各実施例では、図4、図8に示すように、金属板251(252)の凸条251a(252a)は、緩衝材271(272)を介して、半導体モジュール3bと当接している。これに限られず、凸条251a(252a)は、緩衝材271(272)を介さずに、直接半導体モジュール3bと当接していてもよい。
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組み合わせによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。