JP6398099B2 - 蓄光性複層樹脂部材 - Google Patents

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Description

本発明は、床材や避難誘導表示材などの用途に好ましく採用される蓄光性複層樹脂部材に関し、更に詳しくは、高価な蓄光材の使用量を少なくしても高輝度で可視光(りん光)を発光し得る視認性の高い経済的に有利な蓄光性複層樹脂部材に関する。
従来より、紫外線照射時に任意の有色可視光を発光でき、配合剤量を少量としても十分な輝度を発生すると共に、透明感とクリスタルな装飾性を有し、内部発光により深みのある印象を与えることが可能な蛍光体組成物として、合成樹脂や塗料などの媒体100重量部当たり蛍光増白剤0.05重量部と蛍光顔料0.05重量部以上とを配合した蛍光体組成物が知られている(特許文献1)。
特開平11−61115号公報
しかしながら、特許文献1のように蛍光増白剤と蛍光顔料を配合した蛍光体組成物は、蛍光増白剤の励起波長領域と蛍光顔料の励起波長領域が全体的又は部分的に重複する場合、蛍光増白剤も蛍光顔料の励起波長領域の光を吸収して蛍光顔料の励起を阻害することになるため、りん光輝度が十分に向上しないという問題があり、しかも、蛍光増白剤によって耐候性と耐汚れが低下するという問題もあった。
本発明は上記問題に対処すべくなされたもので、その目的とするところは、高価な蓄光材の使用量を少なくしても高輝度で可視光(りん光)を発光し、しかも蛍光増白剤による表面層の耐候性の低下がない、経済的に有利な視認性の高い蓄光性複層樹脂部材を提供することにある。
上記目的を達成するため、本発明に係る蓄光性複層樹脂部材は、蓄光材を含有する合成樹脂製の透光性を有する表面層と、合成樹脂製の裏面層とを備えた蓄光性複層樹脂部材であって、表面層が、波長300〜400nm(蓄光材励起波長領域と重複する波長領域)の光線透過率が60%以上で、かつ、波長450〜650nm(蓄光材から出射される可視光線の波長領域)の光線透過率が90%以上である透光性の可塑剤を含有し、裏面層が蛍光増白剤及び白色系顔料を含有し、前記裏面層における蛍光増白剤の含有量が、裏面層のマトリックス樹脂100質量部に対して0.1〜5質量部であることを特徴とするものである。
本発明の蓄光性複層樹脂部材においては、白色系顔料が酸化チタンであり、裏面層略白色の層であることが好ましい。
そして、裏面層における酸化チタンの含有量は、裏面層のマトリックス樹脂100質量部に対して5〜20質量部であることが好ましい。この蛍光増白剤の分子量は200〜700であることが好ましい。
更に、表面層の波長300〜400nmの光線透過率は30%以上であることが好ましい。

本発明の蓄光性複層樹脂部材のように、透明性を有する合成樹脂製の表面層に蓄光材が含有され、合成樹脂製の裏面層に蛍光増白剤が含有されていると、表面層の蓄光材が、表面層に入射した光線のうち蓄光材を励起する波長領域(以下、蓄光材励起波長領域という)の光線を吸収して励起され、蓄光材励起波長領域よりも長波長領域の可視光線(りん光)を出射する。そして、裏面層に含有される蛍光増白剤は、表面層を透過して裏面層に入射した、蛍光増白剤を励起する波長領域(以下、蛍光増白剤励起波長領域という)の光線を吸収して励起され、蛍光増白剤励起波長領域よりも長波長領域の紫外光線ないし可視光線を出射する。このように、本発明の蓄光性複層樹脂部材は、蓄光材と蛍光増白剤を表面層と裏面層に別々に含有させることで、蓄光材励起波長領域と蛍光増白剤励起波長領域とが部分的又は全体的に重複しても、その重複する励起波長領域の光線が表面層を透過する間に蛍光増白剤によって吸収されないようにしてあるため、表面層の蓄光材は蓄光材励起波長領域の光線を蛍光増白剤に阻害されることなく吸収し、十分に励起されてりん光を出射するのでりん光輝度が向上する。そして、表面層の蓄光材から出射される可視光線(りん光)に加えて、裏面層の蛍光増白剤も紫外光線ないし可視光線を出射するので、蓄光性複層樹脂部材全体としてのりん光輝度が一層向上し、特に、蛍光増白剤から出射される紫外光線ないし可視光線の波長領域が蓄光材励起波長領域と重複する場合は、表面層の蓄光材が、表面層に入射した蓄光材励起波長領域の光線と、裏面層の蛍光増白剤から出射される紫外光線ないし可視光線のうち蓄光材励起波長領域と重複する波長領域の光線を吸収して二重に励起されるため、りん光輝度が更に向上する。
また、表面層に蓄光材と蛍光増白剤が含有されている場合は、蛍光増白剤によって表面層の耐候性が低下することになる。具体的には、光線に曝された蛍光増白剤の作用で表面層のマトリックス樹脂が黄変するなどして、表面層の光線透過性が低下し、その結果、表面層中に存在する蓄光材に届く蓄光材励起波長領域の光線量が低下してしまうという不具合を生じる。一方、本発明の蓄光性複層樹脂部材のように、蓄光材と蛍光増白剤が表面層と裏面層に別々に含有されていると、表面層の耐候性を低下させる心配はなく、長期にわたって表面層中の蓄光材に届く蓄光材励起波長領域の光線量を確保できる。また、蓄光材と蛍光増白剤が表面層に含有されていると、蛍光増白剤によって表面層が粘着性を呈することが多いため、特に屋外で使用する場合は表面層に汚れが付着して表面層への光線到達を妨げ、蓄光材の励起や発光が阻害されることになるが、本発明の蓄光性複層樹脂部材のように表面層と裏面層に蓄光材と蛍光増白剤が別々に含有されていると、表面層が粘着性を呈することがなく、表面層に汚れが付着し難いので、蓄光材の励起や発光が阻害される心配もない。
本発明の蓄光性複層樹脂部材において、裏面層が酸化チタンを含有した略白色の層であると、表面層の蓄光材から裏面層側に向けて出射された可視光線(りん光)や表面層を透過した全光線が略白色の裏面層によって表面側に反射されるため、蓄光性複層樹脂部材全体としてのりん光輝度が更に向上する。
また、裏面層において蛍光増白剤と酸化チタンが共存すると、後述するように蛍光増白剤から出射される光線の波長領域が短波長側にシフトするため、蛍光増白剤から出射される光線の波長領域と蓄光材励起波長領域との重複領域が広くなり、この重複領域の光線を表面層の蓄光材が吸収して更に強く励起されるので、りん光輝度が一層向上する。
本発明の蓄光性複層樹脂部材において、裏面層の蛍光増白剤の含有量を、裏面層のマトリックス樹脂100質量部に対し0.1〜5質量部としたものは、蓄光性複層樹脂部材全体としてのりん光輝度を満足に向上させることができる。けれども、蛍光増白剤の含有量が0.1質量部を下回ると、りん光輝度を向上させることが難しくなり、5質量部を上回ると、光は裏面層を透過し易くなって、表層への反射率が低下する。また、後述するように蓄光性複層樹脂部材の耐候性が低下すると共に、りん光輝度を向上させることも難しくなる。
そして、裏面層における酸化チタンの含有量を、裏面層のマトリックス樹脂100質量部に対して5〜20質量部としたものは、蓄光性複層樹脂部材全体としてのりん光輝度を更に向上させることができる。けれども、酸化チタンの含有量が5質量部を下回ると、りん光輝度を向上させることが難しくなり、20質量部を上回ると、蓄光性複層樹脂部材の耐熱性が低下する傾向がみられる。
また、蛍光増白剤の分子量が200〜700であると、蛍光増白剤が裏面層のマトリックス合成樹脂に容易に分散し、且つ、裏面層から蛍光増白剤がブリードアウトすることもない。けれども、蛍光増白剤の分子量が200を下回ると、裏面層から蛍光増白剤がブリードアウトし易くなり、分子量が700を上回ると、マトリックス樹脂に対する蛍光増白剤の分散性が低下する。
更に、表面層を構成するマトリックス樹脂の波長300〜400nmにおける光線透過率が30%以上であると、この300〜400nmの波長領域と蛍光増白剤励起波長領域が重複するため、蛍光増白剤励起波長領域のうちの重複する300〜400nmの波長領域の光線が表面層を30%以上の光線透過率で透過し、裏面層の蛍光増白剤を十分励起して、蛍光増白剤励起波長領域よりも長波長領域の光線を蛍光増白剤から出射するので、蓄光性複層樹脂部材全体としてのりん光輝度を確実に向上させることができる。
本発明の一実施形態に係る蓄光性複層樹脂部材の断面図である。
以下、本発明の蓄光性複層樹脂部材の好ましい実施形態について詳細に説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る蓄光性複層樹脂部材の断面図であって、この蓄光性複層樹脂部材Aは、合成樹脂製の表面層1と合成樹脂製の裏面層2を備えた二層構造のシート状の部材であり、表面層1には蓄光材が、また、裏面層2には蛍光増白剤が、それぞれ含有されている。
蓄光性複層樹脂部材の形状は、この実施形態のような二層構造のシート形状に限定されるものではなく、例えば、内層(裏面層)の表面に外層(表面層)を設けた管形状の部材としたり、芯材層(裏面層)の表面に外層(表面層)を設けた棒形状の部材としたり、中実又は中空の基体層(裏面層)の表面に外層(表面層)を設けた異形状の部材とするなど、所望形状の部材とすることができる。
また、場合によって(とくにシート状の部材である場合)は、表面層1と裏面層2との間に、中間層として、透光性のガラス繊維や合成樹脂繊維からなる織布もしくは不織布などを設けたり、裏面層2に上記繊維や無機充填材を含有させたりすることによって、蓄光性複層樹脂部材Aを補強すると共に、熱伸縮を抑制するようにしてもよい。
蓄光性複層樹脂部材Aの表面層1は透光性を有する層であり、このように透光性を有する表面層1を裏面層2の上に積層したため、表面層1に含有される蓄光材が、表面層1を透過する蓄光材励起波長領域の光線により励起されて、蓄光材励起波長領域よりも長波長領域の可視光線(りん光)を出射し、裏面層2に含有される蛍光増白剤が、表面層1を透過して裏面層2に入射した蛍光増白剤励起波長領域の光線により励起されて、蛍光増白剤励起波長領域よりも長波長領域の光線(紫外光線ないし可視光線)を出射するようになっている。
表面層1のマトリックス樹脂としては、例えば、塩化ビニル樹脂や酢酸ビニル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリオレフィン樹脂などの光学的に透明な熱可塑性樹脂が好ましく、これらの樹脂は単独で使用してもよいし、適宜混合して使用してもよい。また、光学的に透明な公知の熱硬化性樹脂を使用してもよい。
この表面層1のマトリックス樹脂には、蓄光材の他に、透光性の可塑剤や添加剤(例えば、光安定剤、熱安定剤、成形助剤など)が適宜添加される。しかし、表面層1の透光性を阻害する顔料などの着色剤や無機充填剤を添加することは望ましくない。
表面層1に含有させる蓄光材としては、ラジウム系化合物、プロメチウム系化合物、ストロンチウム系化合物、亜鉛系化合物(ZnS系)等が挙げられるが、そのなかでも特に好ましい蓄光材は、ジスプロシウム、ユウロピウムで付活したアルミン酸ストロンチウム(イエローグリーン発色のSrAl:Eu,Dyと、ブルーグリーン発色のSrAl1425:Eu,Dy)である。これらの蓄光材は、単独で又は複数種組み合わせて、表面層1に含有される。
後述の実施例で使用する蓄光材(イエローグリーン発色のSrAl:Eu,Dy)は、蓄光材励起波長領域が250〜450nm(ピーク波長350nm)であり、この波長領域の光線(紫外光線ないし可視光線)を吸収して、人が視認できる波長450〜650nm(ピーク波長525nm)のイエローグリーン発色の可視光線(りん光)を出射することにより、暗所での避難誘導や危険指示を可能とするものである。
蓄光材の好ましい平均粒子径は40〜350μmであり、この範囲の平均粒子径であると、後掲の[表2]の試料片No.11、No.4、No.12のように、合格水準以上の高いりん光輝度を得ることができる。しかし、蓄光材の平均粒子径が25μmと小さ過ぎるもの(試料片No.10)や、400μmと大き過ぎるもの(試料片No.13)は、りん光輝度が低下し、合格水準を下回るようになる。また、後掲の[表2]に示すように、蓄光材の平均粒子径が大きいほど、蓄光性複層樹脂部材の耐候性が低下すると共に、蓄光材が脱落し易くなり、平均粒子径が400μm以上と大き過ぎるもの(試料片No.13)は、耐候性が合格水準を下回るだけでなく、蓄光材が容易に脱落するようになる。また、成形時、設備の損傷が激しいなどの問題もある。
蓄光材の更に好ましい平均粒径は50〜300μmである。
表面層1における蓄光材の含有量は、表面層1のマトリックス樹脂100質量部に対して50〜300質量部であることが好ましく、この範囲内の含有量であると、後掲の[表3]の試料片No.15、No.4、No.16、No.17、No.18のように、合格水準以上のりん光輝度と耐候性を得ることができる。しかし、蓄光材の含有量が25質量部と少な過ぎるもの(試料片No.14)は、りん光輝度も耐候性も大幅に低下して、合格水準を下回るようになる。また、後掲の[表3]に示すように、蓄光性複層樹脂部材の脆さは蓄光材の含有量が多くなるほど増し、蓄光材の含有量が300質量部のもの(No.18)は合格水準をクリアできない。従って、りん光輝度と耐候性に加えて蓄光性複層樹脂部材の脆さまで合格水準をクリアできる蓄光材の更に好ましい含有量は、100〜250質量部である。
表面層1の蓄光材の好ましい目付量は0.6〜1.8kg/mであり、この範囲内の目付量であれば、後掲の[表4]の試料片No.4、No.20のように、合格水準以上のりん光輝度と耐候性を得ることができる。けれども、蓄光材の目付量が0.5kg/mと少な過ぎるもの(試料片No.19)は、りん光輝度も耐候性もかなり低下して、合格水準を下回るようになる。後掲の[表4]に示すように、蓄光材の目付量が多くなるほど、りん光輝度も耐候性も向上するが、目付量が多過ぎると蓄光材コストが高くなり、そのわりには蓄光材コストに見合うだけの顕著なりん光輝度向上効果や耐候性向上効果が得られないので、目付量の上限を上記のように1.8kg/mとするのが適当である。
後掲の[表5]の試料片No.21、No.4、No.22のように、表面層1の蓄光材の目付量を同一にした場合は、表面層1の厚さが増加するほど、即ち、表面層1における蓄光材の密度が小さくなるほど、りん光輝度が向上したものの、耐候性は低下する。これは、表面層1の厚さの増加により蓄光材の密度が小さくなるにしたがって、蓄光材の粒子と粒子の間隔が広がり、波長300〜700nmの光線(蓄光材に吸収される蓄光材励起波長領域の光線と蓄光材から出射される可視光線)が表面層1を透過し易くなること、及び、表面層1を光線が透過しやすくなることによって、表面層と裏面層を構成するマトリックス樹脂の紫外線による劣化が進むからであると考えられる。
表面層1のマトリックス樹脂に含有させる可塑剤や添加剤(例えば光安定剤、熱安定剤、成形助剤など)は、マトリックス樹脂の透明性を実質的に損なわない透光性のもの使用する必要がある。
塩化ビニル樹脂などのマトリックス樹脂に含有させる可塑剤としては、波長300〜400nm(蓄光材励起波長領域と重複する波長領域)の光線透過率が60%以上で、かつ、波長450〜650nm(蓄光材から出射される可視光線の波長領域)の光線透過率が90%以上である透光性の可塑剤、例えば、共役二重結合を有しないフタル酸系エステルの水添物、アジピン酸系エステル、アジピン酸系ポリエステル、エポキシ系エステル、ポリエーテルエステルなどが好ましく使用される。この中でも、フタル酸系エステルの水添物である、下記の[化1]の構造式で示されるジイソノニル−シクロヘキサン−ジカルボキシレートは、特に好ましく使用される。このジイソノニル−シクロヘキサン−ジカルボキシレートは、BASF社製の「DINCH」(登録商標)の商品名で市販されている。なお、共役二重結合を有するフタル酸系エステル、トリメリット酸系エステル、安息香酸系エステルなどの可塑剤は、紫外線を吸収して、前記波長域の透光性の低下を招き、りん光輝度を低下させるので好ましくない。
このことは、後掲の[表1]における試料片No.5(共役二重結合を有しないフタル酸系エステルの水添物「DINCH」を含有させたもの)と、試料片No.9(共役二重結合を有するフタル酸系エステル「DOP」を含有させたもの)とを対比すれば、「DOP」を含有させた試料片No.9よりも、「DINCH」を含有させた試料片No.5の方が、りん光輝度も耐久性も優れていることから明らかである。
可塑剤の含有量は特に限定されないが、表面層1のマトリックス樹脂100質量部に対して可塑剤を30〜100質量部含有させることが好ましい。
Figure 0006398099
上記のように、波長300〜400nmの光線透過率が60%以上で、かつ、波長450〜650nmの光線透過率が90%以上である可塑剤は、蓄光材と共に表面層1のマトリックス樹脂に含有させても、可塑剤による蓄光材励起波長領域の光線の吸収が少ないので蓄光材の励起を阻害することが少なく、しかも、蓄光材から出射する可視光線(りん光)を殆ど吸収しないので、りん光輝度を高めるのに有効である。
表面層1のマトリックス樹脂に添加される添加剤である光安定剤としては、例えば、ステアリン酸のバリウム塩・亜鉛塩などの金属石鹸が好ましく使用され、紫外線を吸収するヒンダードアミン系の光安定材などは使用できない。
また、添加剤である熱安定剤としては、例えば、透明性が良いエポキシ系熱安定剤などが好ましく使用される。
光安定剤や熱安定剤などの添加剤の添加量は少量でよく、例えば、表面層1のマトリックス樹脂100質量部に対して10質量部以下の添加量とすれば十分である。
表面層1は、蛍光増白剤励起波長領域と重複する波長300〜400nmの光線透過率が30%以上であることが好ましい。このようにすると、蛍光増白剤励起波長領域と重複する300〜400nmの波長領域の光線が表面層1を30%以上の光線透過率で透過し、裏面層2に含有される蛍光増白剤を十分励起して、蛍光増白剤励起波長領域より長波長領域の光線を蛍光増白剤から出射するので、蓄光性複層樹脂部材全体としてのりん光輝度を確実に向上させることができる。
表面層1の厚さは特に限定されないが、0.5〜3mmの厚さとするのが適当である。
一方、蓄光性複層樹脂部材Aの裏面層2は透光性が要求されない層であり、この裏面層2のマトリックス樹脂には、蛍光増白剤の他に、可塑剤、無機充填剤、顔料、添加剤(例えば、光安定剤、熱安定剤、成形助剤など)等が適宜含有される。
裏面層2のマトリックス樹脂としては、前述した表面層1のマトリックス樹脂と同種又は異種の熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂が使用される。
裏面層2に含有させる蛍光増白剤としては、オキサゾール系、クマリン系、トリアゾール系、ビラゾロン系、ナフタルイミド系などの蛍光増白剤が挙げられるが、これらの中では、オキサゾール系蛍光増白剤である2,5−チオフェンジイルビス(5−tert−ブチル−1,3−ベンゾキサゾール)が特に好ましく使用される。その構造式を下記の[化2]に示す。
Figure 0006398099
このオキサゾール系蛍光増白剤は、波長320〜400nm(ピーク波長370nm)の紫外光線を吸収して励起され、波長400〜460nm(ピーク波長430nm)の紫青から青緑の可視光線を出射するものであるが、後述するように、このオキサゾール系蛍光増白剤と酸化チタン(白色系顔料)が共存して複合体化すると、吸収する波長領域も、出射する波長領域も、短波長側にシフトし、波長250〜350nm(ピーク波長280nm)の紫外光線を吸収して、波長350〜450nm(ピーク波長405nm)の紫外光線ないし可視光線を出射する。
蛍光増白剤は200〜700の分子量を有するものが好ましく、この範囲の分子量を有する蛍光増白剤は、裏面層2のマトリックス樹脂に容易に分散し、且つ、裏面層2からブリードアウトし難いという利点がある。しかし、分子量が200を下回ると、裏面層2から蛍光増白剤がブリードアウトし易くなり、また、分子量が700を上回ると、マトリックス樹脂に対する蛍光増白剤の分散性が低下するという不都合を生じる。ちなみに、上記のオキサゾール系蛍光増白剤である2,5−チオフェンジイルビス(5−tert−ブチル−1,3−ベンゾキサゾール)の分子量は318であるので、裏面層2の塩化ビニル樹脂などのマトリックス樹脂に容易かつ均一に分散し、裏面層2からブリードアウトすることも殆どない。なお、低分子量の蛍光増白剤の例としては、下記[化3]に示すウンベリフェロンなどが挙げられる。
Figure 0006398099
蛍光増白剤の含有量は、裏面層2のマトリックス樹脂100質量部に対して0.1〜5質量部とすることが好ましく、この範囲の含有量であると、後掲の[表1]の試料片No.3、No.4、No.5、No.6のように、合格水準以上のりん光輝度と耐候性を得ることができる。けれども、後掲の[表1]に示すように、蛍光増白剤を含有しないもの(試料片No.1、No.2)はりん光輝度が合格水準を下回り、蛍光増白剤が8質量部と多過ぎるもの(試料片No.7)はりん光輝度も耐候性も合格水準を下回るようになる。
蛍光増白剤の更に好ましい含有量は0.5〜3質量部であり、この範囲内の含有量であるもの(試料No.3、No.4、No.5)は、後掲の[表1]に示すように、りん光輝度も耐候性も良好である。
上記のように、蛍光増白剤が裏面層2に含有されていると、表面層1を透過して裏面層2に入射した蛍光増白剤励起波長領域の光線を蛍光増白剤が吸収して励起され、蛍光増白剤励起波長領域よりも長波長領域の紫外光線ないし可視光線を出射するので、蓄光性複層樹脂部材A全体としてのりん光輝度が向上する。そして、表面層1の蓄光材が、表面層1に入射した蓄光材励起波長領域の光線に加えて、蛍光増白剤から出射された光線のうち蓄光材励起波長領域の光線をも吸収して二重に励起されるため、りん光輝度が更に向上する。また、蛍光増白剤が裏面層2に含有されていると、蛍光増白剤が表面層1に含有されている場合のように、蓄光増白剤が蓄光材励起波長領域の光線を吸収して蓄光材の励起を阻害することがなく、また、蛍光増白剤によって表面層1の耐候性が低下したり、表面層1が粘着性を呈して汚れが付着することも防止できるようになる。
蛍光増白剤が表面層1に含有されていると、蓄光材の励起が阻害されてりん光輝度が低下し、耐候性も低下する。このことは、後掲の[表1]における試料片No.5(蛍光増白剤を裏面層に含有させたもの)と、試料片No.8(蛍光増白剤を表面層に含有させたもの)とを対比すれば明らかである。
裏面層2は、白色系顔料として酸化チタンを含有させることにより、略白色の層とすることが好ましく、そのようにすると、表面層1の蓄光材から裏面層2側に出射された可視光線(りん光)が略白色の裏面層2によって表面側に反射されるため、蓄光性複層樹脂部材A全体としてのりん光輝度が更に向上する。このことは、後掲の[表1]における試料片No.1(裏面層に酸化チタンが含有されていないもの)のりん光輝度と、試料片No.2(裏面層に酸化チタンが含有されているもの)のりん光輝度を対比すれば明らかである。
また、裏面層2において蛍光増白剤と酸化チタンが共存すると、前述したように、蛍光増白剤から出射される光線の波長領域が短波長側にシフトする(オキサゾール系蛍光増白剤では波長350〜450nmにシフトする)ため、蛍光増白剤から出射される光線の波長領域全体が蓄光材励起波長領域(SrAl:Eu,Dyでは波長250〜450nm)と重複するようになり、この蛍光増白剤から出射される重複波長領域の光線を表面層1の蓄光材が吸収して二重に励起されるので、りん光輝度が一層向上するようになる。
酸化チタンの含有量は、裏面層2のマトリックス樹脂100質量部に対して5〜20質量部とすることが好ましく、この範囲内で酸化チタンを含有させると、後掲の[表6]の試料片No.24、No.4、No.25、No.26のように、合格水準以上のりん光輝度と耐候性を得ることができる。けれども、酸化チタンの含有量が3質量部と少な過ぎるもの(試料片No.23)は、りん光輝度も耐候性も合格水準を下回る。また、酸化チタンの含有量が20質量部のもの(試料片No.26)は、りん光輝度も耐候性も合格水準以上であるが、耐熱性が合格水準を下回るようになるので、耐熱性も合格水準以上とするために、酸化チタンの含有量を5〜15質量部とすることが更に好ましい。後掲の[表6]に示すように、耐候性は酸化チタンの含有量が増加するにつれて向上し、耐熱性は酸化チタンの含有量が増加するにつれて低下する。
裏面層2に含有させる充填剤としては、炭酸塩(炭酸カルシウム等)、珪酸塩(珪酸カルシウム等)、珪酸などの白色系の無機充填剤が好ましく使用される。黒色系や濃色系の充填剤は、裏面層2の光線反射を損ない、表面層1の蓄光材から裏面層2側に出射された光線の反射が不充分になって、りん光輝度が向上し難くなるので、好ましくない。裏面層2に充填剤を含有させると、その増量効果によって裏面層2のマトリックス樹脂の使用量が相対的に少なくなるので、経済的に有利である。
充填剤の含有量は特に限定されないが、裏面層2のマトリックス樹脂100質量部に対して100〜300質量部含有させることが好ましい。100質量部未満では光が裏面層を透過し、充填剤による増量効果も不充分であり、一方、300質量部を超えると、酸化チタンが炭酸カルシウムに囲まれて酸化チタンの効果が低下し、また、裏面層2が脆弱化するからである。
裏面層2に添加する光安定剤としては、前述の表面層1に添加する光安定剤と同じもの、つまりステアリン酸のバリウム塩・亜鉛塩などの金属石鹸が好ましく使用される。この光安定剤の含有量は少量でよく、裏面層2のマトリックス樹脂100質量部に対して5質量部以下の添加量とすれば十分である。
なお、裏面層2には、前述した熱安定剤を添加してもよいし、添加しなくてもよい。
裏面層2の厚さは特に限定されないが、表面層1と同様の厚さ、即ち、0.5〜3mmの厚さとするのが好ましい。
蓄光性複層樹脂部材Aの製造は、マトリックス樹脂に蓄光材などを配合した表面層形成用組成物と、マトリックス樹脂に蛍光増白剤、酸化チタンなどの配合した裏面層形成用組成物を調製し、これらの組成物を用いて、粉体成形、カレンダー成形、押出成形、又はそれらの組み合わせにより、表面層1と裏面層2を別々に形成して積層一体化するか、或いは、積層した状態で同時に成形するなど、所望の方法で製造すればよい。
以上のような構成の蓄光性複層樹脂部材Aは、表面層1に蓄光材が含有され、裏面層2に蛍光増白剤が含有されているので、表面層1の蓄光材が、表面層1に入射した光線のうち蓄光材励起波長領域の光線を吸収して励起され、蓄光材励起波長領域よりも長波長領域の可視光線(りん光)を出射すると共に、裏面層2の蛍光増白剤が、表面層1を透過して裏面層2に入射した蛍光増白剤励起波長領域の光線を吸収して励起され、蛍光増白剤励起波長領域よりも長波長領域の紫外光線ないし可視光線を出射する。この蓄光性複層樹脂部材Aは、上記のように蓄光材と蛍光増白剤を表面層1と裏面層2に別々に含有させることで、蓄光材励起波長領域と蛍光増白剤励起波長領域とが部分的又は全体的に重複する場合でも、その重複する励起波長領域の光線が表面層1を透過する間に蛍光増白剤によって吸収されないようにしてあるため、表面層1の蓄光材は蓄光材励起波長領域の光線を蛍光増白剤に阻害されることなく吸収し、十分に励起されてりん光を出射するのでりん光輝度が向上する。そして、表面層1の蓄光材から出射される可視光線(りん光)に加えて、裏面層2の蛍光増白剤も蛍光増白剤励起波長領域より長波長領域の紫外光線ないし可視光線を出射するので、蓄光性複層樹脂部材A全体としてのりん光輝度が一層向上し、特に、蛍光増白剤から出射される光線の波長領域が蓄光材励起波長領域と重複する場合は、表面層1の蓄光材が、表面層1に入射した蓄光材励起波長領域の光線と、裏面層2の蛍光増白剤から出射された重複波長領域の光線を吸収して二重に励起されるため、りん光輝度が更に向上する。
また、この蓄光性複層樹脂部材Aのように、蓄光材と蛍光増白剤が表面層1と裏面層2に別々に含有されていると、表面層に蓄光材と蛍光増白剤が一緒に含有されている場合のように、表面層1の耐候性が低下する心配がなく、しかも、表面層1が粘着性を呈しないので、表面層1に汚れが付着して蓄光材の励起や発光が阻害される心配もない。
更に、この蓄光性複層樹脂部材Aのように、裏面層2が酸化チタンを含有した略白色の層であると、表面層1の蓄光材から裏面層側に出射された可視光線(りん光)が略白色の裏面層2によって表面側に反射されるため、りん光輝度が一層向上し、しかも、裏面層2において蛍光増白剤と酸化チタンが共存すると、蛍光増白剤から出射される光線の波長領域が短波長側にシフトして蓄光材励起波長領域と全体的に重複し、この重複領域の光線を表面層1の蓄光材が吸収して更に強く励起されるので、りん光輝度が一層向上する。
次に、本発明の更に具体的な実施例と比較例を挙げて説明する。
[実施例]
下記[表1]に示す組成の表面層用組成物と裏面層用組成物を調製し、厚さ1.5mmの表面層用シートと厚さ1.5mmの裏面層用シートを成形すると共に、両シートを積層して蓄光性複層樹脂部材の試料片No.3〜No.7、試料片No.9を作製した。
これらの試料片について、JIS Z 9107 りん光輝度の測定法に準じて2時間後のりん光輝度を測定し、更に、メタルハライドランプ方式による促進耐候試験を行い、各暴露時間での変色の度合いをブランク品と目視対比し、明らかな変色のない時間を測定値とする方法で耐候性を測定した。その結果を下記[表1]に示す。
[比較例]
比較のために、上記と同様の製法で、裏面層に蛍光増白剤も酸化チタンも含有しない試料片No.1と、裏面層に蛍光増白剤を含有しない試料片No.2と、表面層に蛍光増白剤を含有する試料片No.8を作製し、上記と同様に2時間後のりん光輝度と耐候性を測定した。その結果を下記[表1]に示す。
Figure 0006398099
この表1を見ると、表面層のPVC樹脂100質量部に対して蓄光材(SrAl)を150質量部含有させ、裏面層のPVC樹脂100質量部に対してオキサゾール系の蛍光増白剤[2,5−チオフェンジイルビス(5−tert−ブチル−1,3−ベンゾキサゾール)]を0.5〜5質量部、酸化チタンを10質量部含有させた試料片No.3〜No.6は、いずれも2時間後のりん光輝度が合格水準の70mcd/cm以上、耐候性が合格水準の140hr以上であり、りん光輝度も耐候性も向上していることが判る。
これに対し、裏面層に蛍光増白剤も酸化チタンも含有されない比較用の試料片No.1は、2時間後のりん光輝度が55mcd/mと悪く、また、裏面層に蛍光増白剤を含有させないで酸化チタンを含有させた比較用の試料片No.2は、試料片No.1に比べると、りん光輝度が69mcd/mと大幅に向上するが、それでも合格水準(70mcd/m)に達しない。
更に、蛍光増白剤を裏面層に含有させないで表面層に2.5質量部含有させた比較用の試料片No.8と、裏面層に蛍光増白剤を2.5質量部含有させた試料片No.5を対比すると、両者は蛍光増白剤の含有量が同じであるにも拘わらず、前者の試料片No.8はりん光輝度が65mcd/mと低く、合格水準を下回っている。これは、表面層に含有される蛍光増白剤が蓄光材励起波長領域の光線を吸収して、蓄光材の励起を阻害するからである。
以上のことから、蛍光増白剤を裏面層に含有させることは、蓄光性複層樹脂部材のりん光輝度を向上させるために必須であることが判る。
但し、裏面層における蛍光増白剤の含有量が8質量部と多過ぎる試料No.7は、りん光輝度も耐候性も低下して合格水準を下回るようになり、また、試料片No.2〜No.7のように、蛍光増白剤の含有量の増加に伴って耐候性も低下することから、裏面層における蛍光増白剤の含有量は0.1〜5質量部とするのが好ましく、そのなかでも、りん光輝度と耐候性の成績が良い試料片No.3〜No.6が包含される0.5〜3質量部の範囲内とするのが更に好ましいことが判る。
また、表1の比較用の試料片No.1と試料片No.2を対比すると、酸化チタンを裏面層に含有する試料片No.2は、酸化チタンを裏面層に含有しない試料片No.1に比べて、2時間後のりん光輝度が14mcd/mも向上しており、このことから、酸化チタンを裏面層に含有させることは、りん光輝度の向上に極めて有効であることが判る。
また、試料片No.9と試料片No.5を対比すると、表面層に含有させる可塑剤として、DOP(共役二重結合を有する光線透過率の低いフタル酸系エステル)を用いた試料片No.9は、可塑剤として、DINCH(共役二重結合を有しない光線透過率の高いフタル酸系エステルの水添物)を用いた試料片No.5に比べて、りん光輝度も耐候性も低下している。これより、表面層に含有させる可塑剤は、共役二重結合を有しない光線透過率の高いものが好適であることが判る。
[実施例]
下記[表2]に示す組成の表面層用組成物と裏面層用組成物を調製し、厚さ1.5mmの表面層用シートと厚さ1.5mmの裏面層用シートを成形すると共に、両シートを積層して蓄光性複層樹脂部材の試料片No.10、No.11、No.12、No.13を作製した。
これらの試料片について、前記と同様にして2時間後のりん光輝度と耐候性を測定すると共に、蓄光材の脱落の難易は、シートを直径30mmの円柱に巻付けて固定した後、円周に沿ってセロハンテープをシート表面に圧着しながら貼付け、そのテープを剥離して、セロハンテープに付着した蓄光材の多寡を目視で確認して調べた。その結果を下記[表2]に示す。なお、前述の試料片No.4のりん光輝度、耐候性、蓄光材の脱落の難易についても、下記[表2]に併記する。
Figure 0006398099
この表2を見ると、表面層に含有される蓄光材の平均粒子径が40〜350μmの範囲内にある試料片No.11、No.4、No.12は、2時間後のりん光輝度も耐候性も合格水準(70mcd/m、140hr)以上であり、蓄光材の脱落の難易についても「しない」もしくは「し難い」となっている。これに対し、蓄光材の平均粒子径が25μmと小さ過ぎる試料片No.10や、蓄光材の平均粒子径が500μmと大き過ぎる試料片No.13は、りん光輝度が低下して合格水準を下回るようになる。そして、蓄光材の平均粒子径が大きい試料片ほど、耐候性が低下し、蓄光材が脱落し易くなる傾向みられる。
以上より、蓄光材は、平均粒子径が40〜350μmのものが好ましく使用され、更に好ましい蓄光材の平均粒子径は50〜300μmであることが判る。
[実施例]
下記[表3]に示す組成の表面層用組成物と裏面層用組成物を調製し、厚さ1.5mmの表面層用シートと厚さ1.5mmの裏面層用シートを成形すると共に、両シートを積層して蓄光性複層樹脂部材の試料片No.14、No.15、No.16、No.17、No.18を作製した。
これらの試料片について、前記と同様にして2時間後のりん光輝度と耐候性を測定すると共に、曲げもろさは試料片を直径50mm、40mm、30mm、20mm、10mm、5mmの円柱に順に沿わせ、試料片に亀裂を生じない最大直径を評価値とした。その結果を下記[表3]に示す。なお、前述の試料片No.4のりん光輝度、耐候性、曲げもろさについても、下記[表3]に併記する。
Figure 0006398099
この表3を見ると、蓄光材の含有量が表面層の塩化ビニル樹脂100質量部に対して50〜300質量部の範囲内にある試料片No.15、No.4、No.16、No.17、No.18は、蓄光材の含有量が多いものほど、りん光輝度も耐候性も向上し、合格水準を上回っているが、蓄光材の含有量が25質量部と少な過ぎる試料片No.14は、りん光輝度も耐候性も合格水準を大きく下回っている。また、曲げもろさは、蓄光材の含有量が多くなるほど低下し、含有量が300質量部の試料片No.14は、曲げもろさが合格水準をクリアできなくなる。
これより、合格水準以上のりん光輝度と耐候性を得るためには、蓄光材の含有量を50〜300質量部とし、併せて合格水準以上の曲げもろさも得る場合は、蓄光材の含有量を50〜250質量部とすればよく、100〜250質量部とすれば一層好ましいことが判る。
[実施例]
下記[表4]に示す組成の表面層用組成物と裏面層用組成物を調製し、厚さがそれぞれ0.5mm、2.0mmの表面層用シートと、厚さ1.5mmの裏面層用シートを成形すると共に、これらのシートを積層して、表面層の厚さが0.5mmで蓄光材の目付量が0.39kg/mの試料片No.19と、表面層の厚さが2.0mmで蓄光材の目付量が1.57kg/mの試料片、No.20を作製した。
これらの試料片について、前記と同様にして2時間後のりん光輝度と耐候性を測定し、その結果を下記[表4]に示した。なお、前述の試料片No.4(表面層の厚さ1.5mm、蓄光材の目付量0.78kg/m)のりん光輝度と耐候性の測定値も、下記[表4]に併記した。
Figure 0006398099
この表4を見ると、表面層の厚さが増して、蓄光材の目付量が多くなるほど、りん光輝度も耐候性も向上するようになり、目付量が0.6〜1.8kg/mの範囲内にある試料片No.4、No.20は、りん光輝度も耐候性も合格水準以上である。これに対し、蓄光材の目付量が0.39kg/mと少な過ぎる試料片No.19は、りん光輝度も耐候性も合格水準を下回っている。
これより、表面層のマトリックス樹脂に対する蓄光材の含有量が一定である場合は、表面層の厚さを変えることにより、蓄光材の目付量が0.6〜1.8kg/mとなるように調節すればよいことが判る
[実施例]
下記[表5]に示す組成の表面層用組成物と裏面層用組成物を調製し、厚さがそれぞれ2.0mm、1.0mmの表面層用シートと、厚さ1.5mmの裏面層用シートを成形すると共に、これらのシートを積層して、表面層の厚さが2.1mm、蓄光材の目付量が1.22kg/m、蓄光材の密度が0.58g/cmである試料片No.21と、表面層の厚さが1.1mm、蓄光材の目付量が1.22kg/m、蓄光材の密度が1.11g/cmである試料片No.22を作製した。
これらの試料片について、前記と同様にして2時間後のりん光輝度と耐候性を測定し、その結果を下記[表5]に示した。なお、前述の試料片No.4(表面層の厚さ1.5mm、蓄光材の目付量1.22kg/m、蓄光材の密度0.81g/cm)のりん光輝度と耐候性の測定値も、下記[表5]に併記した。
Figure 0006398099
この表5を見ると、表面層の蓄光材の目付量が適量で一定している場合は、蓄光材の密度が小さくなるにつれて、りん光輝度が向上するが、耐候性は低下することが判る。蓄光材の密度が0.5〜1g/cmの範囲にある試料片No.21、No4は、りん光輝度も耐候性も合格水準以上であるが、蓄光材の密度が1.11g/cmと大きい試料片No.22は、耐候性が155hrと良好で合格水準を上回るが、りん光輝度は合格水準を下回るようになる。蓄光材の密度が大きくなると、りん光輝度が低下するのは、波長300〜700nmの光線は、蓄光材の密度が大きくなって蓄光材粒子の間隔が短くなるほど、透過しにくくなるからであるからと考えられる。これに対し、蓄光材の密度が大きくなるほど耐候性が向上するのは、表面層1を透過する紫外線量が少なくなるため、表面層と裏面層の紫外線による樹脂劣化が少なくなるからであると考えられる。
[実施例]
下記[表6]に示す組成の表面層用組成物と裏面層用組成物を調製し、厚さが1.5mmの表面層用シートと、厚さ1.5mmの裏面層用シートを成形すると共に、これらのシートを積層して、裏面層の酸化チタンの含有量が異なる蓄光材複層樹脂部材の試料片No23、No.24、No.25、No.26、No.27を作製した。
これらの試料片について、前記と同様にして2時間後のりん光輝度と耐候性を測定すると共に、耐熱性を200℃のオーブン中に20分間放置し、それによる試料片の色相変化を目視で確認するという方法で測定し、その結果を下記[表6]に示した。なお、前述の試料片No.4のりん光輝度、耐候性、耐熱性の測定値も、下記[表6]に併記した。
Figure 0006398099
この表6を見ると、裏面層の酸化チタンの含有量が多い試料片ほど、耐候性が向上し、耐熱性が低下することが判る。そして、りん光輝度は、酸化チタンの含有量が10〜15質量部に達するまで上昇し、それより多くなると低下する傾向がある。酸化チタンの含有量が5〜20質量部である試料片No.24、No.4、No.25、No.26は、りん光輝度も、耐候性も、耐熱性も合格水準以上となるが、酸化チタンの含有量が3質量部と少な過ぎる試料片No.23は、りん光輝度と耐候性が合格水準を下回り、酸化チタンの含有量が30質量部と多過ぎる試料片No.27は、りん光輝度と耐熱性が合格水準を下回るようになる。
これより、合格水準以上のりん光輝度と耐候性と耐熱性を得るために好ましい酸化チタンの含有量は、裏面層のマトリックス樹脂100質量部に対して5〜20質量部であることが判る。
1 表面層
2 裏面層
A 蓄光性複層樹脂部材

Claims (5)

  1. 蓄光材を含有する合成樹脂製の透光性を有する表面層と、合成樹脂製の裏面層とを備えた蓄光性複層樹脂部材であって、
    表面層が、波長300〜400nmの光線透過率が60%以上で、かつ、波長450〜650nmの光線透過率が90%以上である透光性の可塑剤を含有し、
    裏面層が蛍光増白剤及び白色系顔料を含有し、
    前記裏面層における蛍光増白剤の含有量が、裏面層のマトリックス樹脂100質量部に対して0.1〜5質量部であること
    を特徴とする蓄光性複層樹脂部材。
  2. 前記白色系顔料が酸化チタンであり、前記裏面層略白色の層であることを特徴とする、請求項1に記載の蓄光性複層樹脂部材。
  3. 前記裏面層における酸化チタンの含有量が、裏面層のマトリックス樹脂100質量部に対して5〜20質量部であることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の蓄光性複層樹脂部材。
  4. 前記蛍光増白剤の分子量が200〜700であることを特徴とする、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の蓄光性複層樹脂部材。
  5. 前記表面層の波長300〜400nmの光線透過率が30%以上であることを特徴とする、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の蓄光性複層樹脂部材。
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