以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。各図面を通じて同一もしくは同等の部位や構成要素には、同一もしくは同等の符号を付している。
以下に示す実施形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置等を例示するものであって、この発明の技術的思想は、各構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
図1は、本発明の実施の形態に係る印刷装置の概略構成図である。図2は、図1に示す印刷装置の制御ブロック図である。以下の説明において、図1の紙面に直交する方向を前後方向とし、紙面表方向を前方とする。また、図1における紙面の上下左右を上下左右方向とする。
図1において太線で示す経路が、印刷媒体である用紙が搬送される搬送経路である。搬送経路のうち、実線で示す経路が印刷経路RP、一点鎖線で示す経路が循環経路RC、破線で示す経路が第1排紙経路RD1および第2排紙経路RD2、二点鎖線で示す経路が外部給紙経路RS1および内部給紙経路(請求項の給紙経路に相当)RS2である。以下の説明における上流、下流は、搬送経路における上流、下流を意味する。
図1、図2に示すように、本実施の形態に係る印刷装置1は、給紙部2と、印刷部3と、循環搬送部4と、排紙部5と、制御部6と、各部を収納または保持する筐体7とを備える。
給紙部2は、未印刷の用紙Pを印刷部3に給紙する。また、給紙部2は、両面印刷時に表面印刷後の用紙Pを印刷部3に再給紙する。給紙部2は、搬送経路の最も上流側に配置されている。給紙部2は、外部給紙台11と、外部給紙ローラ12と、内部給紙台13A,13Bと、内部給紙ローラ14A,14Bと、内部給紙モータ15A,15Bと、内部給紙搬送ローラ16A〜16Cと、内部給紙搬送モータ17と、内部給紙センサ18A〜18Cと、縦搬送ローラ(請求項の共通搬送部に相当)19と、縦搬送モータ20と、縦搬送センサ21とを備える。
外部給紙台11は、印刷に用いられる用紙Pが積載されるものである。外部給紙台11は、一部が筐体7の外部に露出して設置されている。
外部給紙ローラ12は、外部給紙台11に積層された用紙Pを1枚ずつ取り出すとともに、外部給紙経路RS1に沿って後述する印刷部3のレジストローラ31へ向けて用紙Pを搬送する。
内部給紙台13A,13Bは、印刷に用いられる用紙Pが積載されるものである。内部給紙台13A,13Bは、筐体7の内部に配置されている。
内部給紙ローラ14A,14Bは、それぞれ内部給紙台13A,13Bに積層された用紙Pを1枚ずつ取り出す。
内部給紙モータ15A,15Bは、それぞれ内部給紙ローラ14A,14Bを回転駆動させる。
内部給紙搬送ローラ16A,16Bは、それぞれ内部給紙ローラ14A,14Bにより内部給紙台13A,13Bから取り出された用紙Pを内部給紙搬送ローラ16Cへ搬送する。内部給紙搬送ローラ16Cは、内部給紙搬送ローラ16Aまたは内部給紙搬送ローラ16Bにより搬送されてきた用紙Pを縦搬送ローラ19へ搬送する。内部給紙搬送ローラ16Cは、内部給紙経路RS2の内部給紙ローラ14Aから延びる部分と内部給紙ローラ14Bから延びる部分との合流地点の下流側に配置されている。
内部給紙搬送モータ17は、内部給紙搬送ローラ16A〜16Cを回転駆動させる。
内部給紙センサ18A〜18Cは、内部給紙台13A,13Bから取り出されて縦搬送ローラ19へ搬送される用紙Pを検出する。内部給紙センサ18A〜18Cは、それぞれ内部給紙搬送ローラ16A〜16Cの下流側近傍の所定位置に配置されている。
縦搬送ローラ19は、内部給紙経路RS2に沿って内部給紙搬送ローラ16Cから搬送されてくる用紙Pを後述する印刷部3のレジストローラ31へ搬送する。また、縦搬送ローラ19は、両面印刷時に循環経路RCに沿って循環搬送された表面印刷後の用紙Pをレジストローラ31へ搬送する。縦搬送ローラ19は、循環経路RCの内部給紙経路RS2への合流地点の下流側において、内部給紙経路RS2に沿って配置されている。
縦搬送モータ20は、縦搬送ローラ19を回転駆動させる。また、縦搬送モータ20は、外部給紙ローラ12を回転駆動させる。縦搬送モータ20は、縦搬送ローラ19および外部給紙ローラ12にそれぞれ図示しないワンウェイクラッチを介して接続されている。これにより、縦搬送モータ20の一方向の回転駆動により縦搬送ローラ19が回転駆動され、縦搬送モータ20の他方向の回転駆動により外部給紙ローラ12が回転駆動されるようになっている。
縦搬送センサ21は、縦搬送ローラ19からレジストローラ31へ搬送される用紙Pを検出する。縦搬送センサ21は、縦搬送ローラ19の下流側近傍の所定位置に配置されている。
印刷部3は、用紙Pを搬送しつつ、用紙Pに画像を印刷する。印刷部3は、給紙部2の下流側に配置されている。印刷部3は、レジストローラ31と、レジストモータ32と、ベルト搬送部33と、ベルトモータ34と、ヘッドユニット35とを備える。
レジストローラ31は、外部給紙ローラ12または縦搬送ローラ19により搬送されてきた用紙Pを一旦止めて斜行補正した後、ベルト搬送部33へ搬送する。レジストローラ31は、印刷部3の上流部の印刷経路RP上に配置されている。
レジストモータ32は、レジストローラ31を回転駆動させる。
ベルト搬送部33は、レジストローラ31により搬送されてきた用紙Pをベルト上に吸着保持して搬送する。ベルト搬送部33は、レジストローラ31の下流側に配置されている。
ベルトモータ34は、ベルト搬送部33を駆動させる。
ヘッドユニット35は、用紙Pの搬送方向と直交する方向(前後方向)に沿って複数のノズルが配列されたラインタイプの複数のインクジェットヘッド(図示せず)を有する。ヘッドユニット35は、ベルト搬送部33の上方に配置されている。ヘッドユニット35は、ベルト搬送部33により搬送される用紙Pにインクジェットヘッドのノズルからインクを吐出して画像を印刷する。
循環搬送部4は、両面印刷時に表面印刷後の用紙Pを循環経路RCに沿って搬送して縦搬送ローラ19へ渡す。循環搬送部4は、複数対の中間搬送ローラ41と、中間搬送モータ42と、反転ローラ43と、反転モータ44と、複数対の水平搬送ローラ45と、水平搬送モータ46と、複数対の上昇搬送ローラ47と、上昇搬送モータ48と、両面センサ49とを備える。
中間搬送ローラ41は、両面印刷時に表面印刷後の用紙Pを反転ローラ43へ搬送する。複数対の中間搬送ローラ41は、印刷部3と反転ローラ43との間の循環経路RCに沿って配置されている。
中間搬送モータ42は、複数対の中間搬送ローラ41を回転駆動させる。また、中間搬送モータ42は、後述する最上流の第1排紙ローラ55、および最下流の第2排紙ローラ57以外の第2排紙ローラ57を回転駆動させる。
反転ローラ43は、中間搬送ローラ41により搬送されてきた用紙Pをスイッチバックして水平搬送ローラ45へ搬送する。反転ローラ43は、循環経路RCに沿って、中間搬送ローラ41の下流側に配置されている。
反転モータ44は、反転ローラ43を回転駆動させる。
水平搬送ローラ45は、反転ローラ43によりスイッチバックされた用紙Pを上昇搬送ローラ47へ搬送する。複数対の水平搬送ローラ45は、反転ローラ43と循環経路RCの内部給紙経路RS2への合流地点との間における循環経路RCの上流部に沿って配置されている。
水平搬送モータ46は、複数対の水平搬送ローラ45を回転駆動させる。
上昇搬送ローラ47は、水平搬送ローラ45により搬送されてきた用紙Pを縦搬送ローラ19へ搬送する。複数対の上昇搬送ローラ47は、反転ローラ43と循環経路RCの内部給紙経路RS2への合流地点との間における循環経路RCの下流部に沿って配置されている。
上昇搬送モータ48は、複数対の上昇搬送ローラ47を回転駆動させる。
両面センサ49は、循環搬送部4から縦搬送ローラ19へ搬送される用紙Pを検出する。両面センサ49は、最下流の上昇搬送ローラ47の下流側近傍の所定位置に配置されている。
排紙部5は、印刷済みの用紙Pを排紙する。排紙部5は、第1切替部51と、第1ソレノイド52と、第2切替部53と、第2ソレノイド54と、複数対の第1排紙ローラ55と、第1排紙モータ56と、複数対の第2排紙ローラ57と、第2排紙モータ58と、排紙台59とを備える。
第1切替部51は、用紙Pの搬送経路を第1排紙経路RD1と循環経路RCとの間で切り替える。第1排紙経路RD1は、印刷経路RPの下流端から、印刷装置1の右側に配置された後処理装置(図示せず)へ向かって延びる経路である。第1切替部51は、第1排紙経路RD1と循環経路RCとの分岐地点に配置されている。
第1ソレノイド52は、第1切替部51を駆動させる。
第2切替部53は、用紙Pの搬送経路を第1排紙経路RD1と第2排紙経路RD2との間で切り替える。第2排紙経路RD2は、第1排紙経路RD1と循環経路RCとの分岐地点の下流側において、第1排紙経路RD1から分岐して排紙台59へ向かう経路である。第2切替部53は、第2排紙経路RD2が第1排紙経路RD1から分岐する分岐地点に配置されている。
第2ソレノイド54は、第2切替部53を駆動させる。
第1排紙ローラ55は、印刷部3から搬送されてくる用紙Pを後処理装置へ排紙する。複数対の第1排紙ローラ55は、第2排紙経路RD2に沿って配置されている。
第1排紙モータ56は、最上流の第1排紙ローラ55以外の第1排紙ローラ55を回転駆動させる。なお、最上流の第1排紙ローラ55は、中間搬送モータ42により回転駆動される。
第2排紙ローラ57は、印刷部3から搬送されてくる用紙Pを排紙台59へ排紙する。複数対の第2排紙ローラ57は、第1排紙経路RD1に沿って配置されている。
第2排紙モータ58は、最下流の第2排紙ローラ57を回転駆動させる。なお、最下流の第2排紙ローラ57以外の第2排紙ローラ57は、中間搬送モータ42により回転駆動される。
排紙台59は、第2排紙ローラ57により排紙された用紙Pが積載されるものである。排紙台59は、第2排紙経路RD2の下流端に配置されている。
制御部6は、印刷装置1の各部の動作を制御する。制御部6は、CPU、RAM、ROM、ハードディスク等を備えて構成される。
両面印刷を行う際、制御部6は、インターリーフ方式の両面印刷を行う。インターリーフ方式は、複数枚の用紙Pを搬送経路上で搬送させつつ、未印刷の用紙Pの表面と表面印刷後の用紙Pの裏面とを交互に印刷する方式である。
インターリーフ方式による両面印刷時において、制御部6は、未印刷の用紙Pの印刷部3への給紙と、表面印刷後の用紙Pの印刷部3への再給紙とを交互に行うよう給紙部2を制御する。
内部給紙台13Aまたは内部給紙台13Bから未印刷の用紙Pを給紙して両面印刷を行う場合、制御部6は、給紙部2の縦搬送ローラ19の動作を給紙搬送動作と再給紙搬送動作との間で切り替える制御を行う。そして、制御部6は、その切り替えタイミングを印刷部3の印刷スケジュールに応じて制御する。
縦搬送ローラ19の給紙搬送動作は、未印刷の用紙を給紙搬送速度Vkで受け入れて印刷部3へ搬送する動作である。給紙搬送速度Vkは、内部給紙台13Aまたは内部給紙台13Bから縦搬送ローラ19への用紙Pの搬送速度である。給紙搬送速度Vkは、予め設定された固定値である。
縦搬送ローラ19の再給紙搬送動作は、循環搬送部4により両面搬送速度Vrで搬送されてくる表面印刷後の用紙Pを両面搬送速度Vrで受け入れて印刷部3へ搬送する動作である。両面搬送速度Vrは、反転ローラ43でスイッチバックされた用紙Pが水平搬送ローラ45および上昇搬送ローラ47により縦搬送ローラ19へ搬送される際の搬送速度である。循環搬送部4において、反転ローラ43から下流側の区間で、用紙Pを両面搬送速度Vrで搬送して縦搬送ローラ19へ渡す。両面搬送速度Vrは、用紙サイズ、用紙種類、印刷解像度等の印刷条件に基づき、印刷部3の印刷スケジュールに応じた値に設定される。
次に、印刷装置1の片面印刷時の動作について説明する。
片面印刷が開始されると、未印刷の用紙Pが給紙部2から印刷部3へ順次給紙される。印刷部3において、用紙Pは、レジストローラ31に突き当てられて斜行補正された後、用紙長さLp、紙間Lg、および印刷搬送速度Vgに応じたタイミングでレジストローラ31によりベルト搬送部33へ搬送される。そして、用紙Pは、ベルト搬送部33において印刷搬送速度Vgで搬送されつつ、ヘッドユニット35のインクジェットヘッドから吐出されるインクにより印刷される。
ここで、用紙長さLpは、用紙Pの搬送方向における長さである。用紙長さLpは、用紙サイズによって決まる値である。
紙間Lgは、ベルト搬送部33における先行の用紙Pの後端と後続の用紙Pの先端との間の距離である。紙間Lgは、短いほど単位時間あたりの用紙出力枚数が増えることになる。本実施の形態では、紙間Lgは、高生産性を達成するために、ヘッドユニット35のインクジェットヘッドの性能等の条件において実現可能な最小の値が設定される。
印刷搬送速度Vgは、印刷部3における印刷時のベルト搬送部33による搬送速度である。印刷搬送速度Vgは、用紙種類等によって定められる1画素あたりの最大ドロップ数、印刷解像度等に基づいて設定される。
印刷部3で印刷された用紙Pは、排紙部5により排紙される。排紙先が後処理装置である場合、印刷済みの用紙Pは、第1切替部51および第2切替部53により第1排紙経路RD1へ導かれる。そして、用紙Pは、第1排紙ローラ55により後処理装置へ排紙される。一方、排紙先が排紙台59である場合、印刷済みの用紙Pは、第1切替部51および第2切替部53により第2排紙経路RD2へ導かれる。そして、用紙Pは、第2排紙ローラ57により排紙台59へ排紙される。
上述のような片面印刷時の印刷部3における1枚あたりの印刷時間Tpsは、以下の式(1)で表される。
Tps=(Lp+Lg)/Vg …(1)
この1枚あたりの印刷時間Tpsの生産性で印刷を行うため、レジストローラ31は、印刷時間Tpsごとに起動し、用紙長さLpに相当する距離を搬送すると停止する動作を行う。
次に、片面印刷時の内部給紙台13A,13Bからの給紙制御について説明する。
内部給紙台13A,13Bのどちらから給紙する場合でも同様であるため、内部給紙台13Bから給紙するものとして説明する。図3は、片面印刷時の内部給紙台13Bからの給紙制御を説明するためのタイムチャート図である。
印刷ジョブが入力されると、まず、1枚目を給紙するため、図3の時刻t1において、制御部6は、内部給紙モータ15Bにより内部給紙ローラ14Bを起動させる。そして、制御部6は、内部給紙ローラ14Bの搬送速度を給紙搬送速度Vkまで加速させる。これにより、内部給紙ローラ14Bは、内部給紙台13Bから最上位の用紙Pを取り出し、給紙搬送速度Vkで搬送する。
また、制御部6は、内部給紙ローラ14Bの起動後、内部給紙搬送モータ17により内部給紙搬送ローラ16A〜16Cを起動させる。そして、制御部6は、内部給紙搬送ローラ16A〜16Cの搬送速度を給紙搬送速度Vkまで加速させると、給紙搬送速度Vkを維持させる。内部給紙搬送ローラ16Bは、内部給紙ローラ14Bにより搬送されてくる用紙Pを給紙搬送速度Vkで受け入れて搬送する。
用紙Pの先端が内部給紙センサ18Bで検出されると、その時刻t2において、制御部6は、内部給紙ローラ14Bを停止させる。この後、内部給紙ローラ14Bは、用紙Pが抜けるまで連れ回りする。
ここで、内部給紙センサ18Bへの用紙Pの到達タイミングの理論値に対する遅れまたは進みが生じている場合、制御部6は、内部給紙搬送モータ17を制御して給紙搬送速度Vkを補正する。
具体的には、制御部6は、用紙Pの遅れまたは進みが生じている場合、内部給紙搬送モータ17により内部給紙搬送ローラ16A〜16Cの搬送速度を給紙搬送速度Vkから補正速度へ変更する。そして、用紙Pの先端が内部給紙センサ18Cで検出されると、制御部6は、内部給紙搬送ローラ16A〜16Cの搬送速度を給紙搬送速度Vkに戻す。補正速度は、用紙Pが内部給紙センサ18Cに到達して内部給紙搬送ローラ16A〜16Cの搬送速度を給紙搬送速度Vkに戻すまでに、内部給紙センサ18Bへの用紙Pの到達タイミングの遅れ分または進み分を相殺できるように設定される。
用紙Pが内部給紙搬送ローラ16Cに到達し、用紙Pの先端が内部給紙センサ18Cで検出されると、その時刻t3から起動待機時間Tws後の時刻t4において、縦搬送モータ20により縦搬送ローラ19を起動させる。そして、制御部6は、縦搬送ローラ19の搬送速度が給紙搬送速度Vkに達すると、それを維持させる。
起動待機時間Twsは、以下の式(2)で表される。
Tws=(Lk−Vk2/2αu−Lkm)/Vk …(2)
ここで、Lkは、内部給紙センサ18Cと縦搬送ローラ19との間の搬送経路上の距離である。αuは縦搬送ローラ19の加速時の加速度である。αuは固定値とする。Lkmは所定のマージンである。
式(2)におけるVk2/2αuは、縦搬送ローラ19を停止状態から給紙搬送速度Vkまで加速度αuで加速する間の縦搬送ローラ19による搬送距離(加速距離)である。
式(2)で表される起動待機時間Twsは、内部給紙センサ18Cと縦搬送ローラ19との間の距離Lkから加速距離Vk2/2αuおよびマージンLkmを差し引いた距離を、給紙搬送速度Vkで搬送するのに要する時間である。したがって、時刻t3から起動待機時間Tws後の時刻t4で縦搬送ローラ19を起動させることで、用紙Pの先端が縦搬送ローラ19よりマージンLkm分だけ手前(上流側)にある時点で、縦搬送ローラ19を給紙搬送速度Vkに到達させることができる。これにより、用紙Pが縦搬送ローラ19に到達する時点では、縦搬送ローラ19は、給紙搬送速度Vkで搬送されてくる用紙Pを受け入れる準備ができている状態となる。
用紙Pが縦搬送ローラ19に到達すると、縦搬送ローラ19は、給紙搬送速度Vkで用紙Pを受け入れて搬送する。用紙Pの先端が縦搬送センサ21で検出されると、制御部6は、その時刻t5から給紙用減速待機時間Twd後の時刻t6において、縦搬送ローラ19の減速を開始させる。
給紙用減速待機時間Twdは、以下の式(3)で表される。
Twd=(Lv−Vk2/2|αd|−Lm+Ltm)/Vk …(3)
ここで、Lvは、縦搬送センサ21とレジストローラ31との間の搬送経路上の距離である。αdは縦搬送ローラ19の減速時の加速度である。αdは固定値とする。Lmは突き当て搬送距離である。Ltmはたるみ量である。
突き当て搬送距離Lmは、用紙Pをレジストローラ31に突き当て、たるみを形成させて斜行補正するために、突き当て搬送速度Vmで搬送する距離である。突き当て搬送速度Vmは給紙搬送速度Vkより低速である。突き当て搬送距離Lmおよび突き当て搬送速度Vmは、予め設定された固定値である。
たるみ量Ltmは、図4に示すように、用紙Pをレジストローラ31に突き当ててたるみを形成させたときの、用紙長さLpからの縮小分である。なお、図4では説明の便宜のため、レジストローラ31と縦搬送ローラ19とを直線経路上に示している。たるみ量Ltmは、予め最適な量に設定された固定値とする。
時刻t6において縦搬送ローラ19の減速を開始させた後、突き当て搬送速度Vmにまで減速されると、制御部6は、その時刻t7から突き当て搬送距離Lmだけ用紙Pが搬送されるまで突き当て搬送速度Vmを維持させる。
突き当て搬送速度Vmでの搬送距離が突き当て搬送距離Lmに達すると、その時刻t8において、制御部6は、縦搬送ローラ19を停止させるために減速を開始させる。そして、時刻t9において、縦搬送ローラ19が停止する。
また、時刻t6〜t9において、制御部6は、縦搬送ローラ19をアシストするため、内部給紙搬送ローラ16A〜16Cを縦搬送ローラ19と同期して動作させる。
上述の式(3)におけるVk2/2|αd|は、縦搬送ローラ19を給紙搬送速度Vkから加速度αdで減速して停止させるまでの間の縦搬送ローラ19による搬送距離(減速距離)である。縦搬送ローラ19による時刻t6〜t7における搬送距離と、時刻t8〜t9における搬送距離との合計が、減速距離Vk2/2|αd|となる。したがって、時刻t6で減速を開始してから停止する時刻t9までの間における縦搬送ローラ19による搬送距離は、「Vk2/2|αd|+Lm」となる。
式(3)で表される給紙用減速待機時間Twdは、縦搬送センサ21とレジストローラ31との間の距離Lvにたるみ量Ltmを加えた距離から上記の「Vk2/2|αd|+Lm」を差し引いた距離を、給紙搬送速度Vkで搬送するのに要する時間である。したがって、時刻t5から給紙用減速待機時間Twd後の時刻t6で縦搬送ローラ19の減速を開始することで、用紙Pをレジストローラ31に突き当て、用紙Pにたるみ量Ltmのたるみが形成された状態で、縦搬送ローラ19を停止させることができる。
用紙Pがレジストローラ31に突き当てられて斜行補正された後、時刻t10において、制御部6は、レジストモータ32によりレジストローラ31を起動させる。レジストローラ31の起動後、制御部6は、レジストローラ31の搬送速度をトップ速度Vtまで加速させ、その速度を所定時間だけ維持させた後、印刷搬送速度Vgへ減速させる。そして、制御部6は、レジストローラ31に印刷搬送速度Vgを維持させる。制御部6は、用紙Pの先端がベルト搬送部33へ到達するまでに、レジストローラ31を印刷搬送速度Vgまで減速させる。なお、トップ速度Vtは、予め設定された固定値である。
また、制御部6は、レジストローラ31をアシストするため、時刻t10において縦搬送ローラ19および内部給紙搬送ローラ16A〜16Cを起動させる。その後、制御部6は、縦搬送ローラ19および内部給紙搬送ローラ16A〜16Cをレジストローラ31に同期させて、トップ速度Vtまで加速させた後、印刷搬送速度Vgへ減速させる。
また、制御部6は、2枚目の給紙開始タイミングである時刻t11において、内部給紙ローラ14Bを起動させる。起動後の内部給紙ローラ14Bの動作は1枚目の給紙時と同様である。2枚目以降の給紙開始タイミングは、レジストローラ31の起動タイミングに応じて決定されている。前述のように、レジストローラ31は、印刷時間Tpsごとに起動される。
内部給紙ローラ14Bの起動後、時刻t12において、制御部6は、内部給紙搬送ローラ16A〜16Cの印刷搬送速度Vgからの加速を開始させる。制御部6は、内部給紙搬送ローラ16A〜16Cの搬送速度を給紙搬送速度Vkまで加速させると、給紙搬送速度Vkを維持させる。内部給紙搬送ローラ16Bは、内部給紙ローラ14Bにより搬送されてくる2枚目の用紙Pを給紙搬送速度Vkで受け入れて搬送する。
ここで、内部給紙センサ18Bへの用紙Pの到達タイミングの理論値に対する遅れまたは進みが生じている場合、前述した1枚目の場合と同様に、制御部6は、給紙搬送速度Vkを補正する。
用紙Pが内部給紙搬送ローラ16Cに到達し、用紙Pの先端が内部給紙センサ18Cで検出されると、制御部6は、その時刻t13から給紙用加速待機時間Twk後の時刻t14において、縦搬送ローラ19の印刷搬送速度Vgからの加速を開始させる。そして、制御部6は、縦搬送ローラ19の搬送速度が給紙搬送速度Vkに達すると、給紙搬送速度Vkを維持させる。
給紙用加速待機時間Twkは、以下の式(4)で表される。
Twk=(Lk−(Vk2−Vg2)/2αu−Lkm)/Vk …(4)
式(4)における(Vk2−Vg2)/2αuは、縦搬送ローラ19を印刷搬送速度Vgから給紙搬送速度Vkまで加速度αuで加速する間の縦搬送ローラ19による搬送距離(加速距離)である。
式(4)で表される給紙用加速待機時間Twkは、内部給紙センサ18Cと縦搬送ローラ19との間の距離Lkから加速距離(Vk2−Vg2)/2αuおよびマージンLkmを差し引いた距離を、給紙搬送速度Vkで搬送するのに要する時間である。したがって、時刻t13から給紙用加速待機時間Twk後の時刻t14で縦搬送ローラ19の加速を開始させることで、用紙Pの先端が縦搬送ローラ19よりマージンLkm分だけ手前(上流側)にある時点で、縦搬送ローラ19を給紙搬送速度Vkに到達させることができる。これにより、2枚目の用紙Pが縦搬送ローラ19に到達する時点では、縦搬送ローラ19は、給紙搬送速度Vkで搬送されてくる用紙Pを受け入れる準備ができている状態となる。
用紙Pが縦搬送ローラ19に到達すると、縦搬送ローラ19は、給紙搬送速度Vkで用紙Pを受け入れて搬送する。用紙Pの先端が縦搬送センサ21で検出されると、制御部6は、その時刻t15から給紙用減速待機時間Twd後の時刻t16において、縦搬送ローラ19および内部給紙搬送ローラ16A〜16Cの減速を開始させる。この後、前述の時刻t6〜t9と同様の動作により、時刻t17で縦搬送ローラ19および内部給紙搬送ローラ16A〜16Cが停止する。
一方、1枚目の用紙Pがレジストローラ31を抜けたタイミングで、制御部6は、レジストローラ31を停止させる。
そして、制御部6は、1枚目の給紙時のレジストローラ31の起動タイミング(時刻t10)から印刷時間Tps後の時刻t18において、2枚目の用紙Pをベルト搬送部33へ送るためにレジストローラ31を起動させる。また、それとともに、制御部6は、縦搬送ローラ19および内部給紙搬送ローラ16A〜16Cも起動させる。これ以降、時刻t10〜t18の動作が繰り返される。ただし、最後の用紙Pの給紙時には、制御部6は、用紙Pの後端が内部給紙センサ18Cで検出されると、内部給紙搬送ローラ16A〜16Cを停止させる。また、制御部6は、用紙Pの後端が縦搬送センサ21で検出されると、縦搬送ローラ19を停止させる。
外部給紙台11から給紙する場合は、制御部6は、外部給紙ローラ12により用紙Pを外部給紙台11から取り出しつつ搬送させる。そして、制御部6は、用紙Pがレジストローラ31に突き当て搬送速度Vmで突き当たり、たるみ量Ltmだけたるんで停止するよう外部給紙ローラ12を制御する。
その後、制御部6は、レジストローラ31の起動とともに外部給紙ローラ12のアシスト動作を開始させる。具体的には、外部給紙ローラ12をレジストローラ31と同時に起動させ、レジストローラ31より小さい加速度で加速させる。これにより、用紙Pが搬送されつつ、用紙Pのたるみが徐々に減少する。そして、制御部6は、用紙Pのたるみが吸収されるタイミングで外部給紙ローラ12の減速を開始させ、その後、外部給紙ローラ12を停止させる。これにより、アシスト動作が終了する。外部給紙ローラ12は用紙Pを外部給紙台12から取り出しつつ搬送するものであるため、次の用紙Pを誤って取り出さないように、制御部6は、用紙Pの後端が外部給紙ローラ12を抜けないうちに、アシスト動作が終了するよう制御する。
次に、両面印刷時の印刷部3の印刷スケジュールについて説明する。
両面印刷時の印刷部3の印刷スケジュールは、インターリーフ方式で、片面印刷時と同等の片面あたりの生産性を実現するものである。具体的には、両面印刷時の印刷スケジュールは、図5に示すように、表面印刷と裏面印刷とを片面あたりの印刷時間Tpsで交互に行うものである。なお、図5において、用紙Pの内部の数字は、何枚目の用紙であるかを示している。また、白地の用紙Pは表面印刷されるものであり、ドットハッチングされた用紙Pは裏面印刷されるものであることを示す。
ただし、表面印刷後の1枚目の用紙Pが再給紙されて裏面印刷されるまでは、表面印刷が連続して行われる。この期間においては、図5に示すように、先行の用紙Pの印刷と後続の用紙Pの印刷との間において1枚分の印刷時間Tpsの空きが生じる。また、最後の用紙Pの表面印刷後は、裏面印刷が連続して行われる。この期間においても、先行の用紙Pの印刷と後続の用紙Pの印刷との間において1枚分の印刷時間Tpsの空きが生じる。このため、片面印刷時と同等の片面あたりの生産性の実現は、実質的には表面印刷と裏面印刷とが交互に行われる期間が対象となる。
次に、両面搬送速度Vrの算出方法について説明する。
両面搬送速度Vrは、両面印刷の際の給紙時のレジストローラ31の起動タイミングから、表面印刷後の再給紙時のレジストローラ31の起動タイミングまでの1サイクルの時間が、印刷時間Tpsの(2N−1)倍となるように算出される。
Nは片面連続枚数である。片面連続枚数Nは、1枚目が再給紙されて裏面印刷されるまでに連続して表面印刷される枚数である。また、片面連続枚数Nは、最後の用紙Pの表面印刷後に連続して裏面印刷される枚数でもある。片面連続枚数Nは、用紙サイズに応じた用紙長さLpによって決まる。図5の例では、N=3である。この場合、2N−1=5であるため、1サイクルの時間が5Tpsになれば、図5のように、3枚目の表面印刷と4枚目の表面印刷との間に、1枚目の裏面印刷が行われるようにすることができる。これにより、3枚目の表面印刷以降、表面印刷と裏面印刷とが片面あたりの印刷時間Tpsで交互に行われる。
1サイクルにおける用紙Pの搬送速度の推移を図6に示す。図6に示すように、1サイクルは、第1変速期間、等速期間、第2変速期間に分けられる。
第1変速期間は、給紙部2からの給紙時にレジストローラ31が起動される時点から、レジストローラ31の搬送速度がトップ速度Vtまで加速された後、減速されて印刷搬送速度Vgになるまでの期間である。なお、両面印刷時においても、レジストローラ31の動作は、図3に示した片面印刷時の動作と同様である。
第1変速期間の開始時点では、用紙Pがレジストローラ31に突き当てられ、たるみが形成されて停止している。第1変速期間において、レジストローラ31は、用紙Pの搬送を開始してトップ速度Vtまで加速させた後、印刷搬送速度Vgまで減速させる。
等速期間は、用紙Pが印刷搬送速度Vgで等速搬送される期間である。等速期間では、レジストローラ31、ベルト搬送部33、および中間搬送ローラ41が用紙Pを印刷搬送速度Vgで搬送する。また、ベルト搬送部33により搬送される用紙Pにヘッドユニット35からインクが吐出され、画像が印刷される。
第2変速期間は、用紙Pが最下流の中間搬送ローラ41を抜けて加速され始める時点から、裏面印刷のためにレジストローラ31が起動される時点までの期間である。第2変速期間では、最下流の中間搬送ローラ41を抜けた用紙Pを、反転ローラ43が印刷搬送速度Vgから加速させる。反転ローラ43は、用紙Pを反転速度Vsまで加速させ、その速度を所定時間だけ維持した後、減速させて停止させる。なお、反転速度Vsは、予め設定された固定値である。
所定時間だけ停止した後、反転ローラ43は、反転駆動を開始し、用紙Pを両面搬送速度Vrまで加速させる。この後、反転ローラ43、水平搬送ローラ45、上昇搬送ローラ47が用紙Pを両面搬送速度Vrで縦搬送ローラ19へ搬送する。縦搬送ローラ19は、用紙Pを両面搬送速度Vrで受け入れる。そして、用紙Pがレジストローラ31に達する前に、縦搬送ローラ19および上昇搬送ローラ47が用紙Pを突き当て搬送速度Vmまで減速させる。縦搬送ローラ19は、突き当て搬送速度Vmで突き当て搬送距離Lmだけ用紙Pを搬送した後、用紙Pを停止させる。これにより、用紙Pがレジストローラ31に突き当てられ、たるみ量Ltmのたるみが形成された状態で停止する。その後、レジストローラ31が起動されるタイミングで第2変速期間が終了する。
ここで、第1変速期間、等速期間の長さ(時間)を、それぞれT1,T2とする。また、第2変速期間の開始時点から反転ローラ43の反転駆動の開始時点までの時間をT3とする。反転ローラ43の反転駆動の開始時点から第2変速期間の終了時点までの時間をT4とする。
前述のように、1サイクルの時間が印刷時間Tpsの(2N−1)倍であれば、両面印刷において片面印刷時と同等の片面あたりの生産性を実現できる。したがって、以下の式(5)が満たされれば、両面印刷において片面印刷時と同等の片面あたりの生産性を実現できる。
T1+T2+T3+T4=Tps(2N−1) …(5)
ここで、レジストローラ31の加速時および減速時の加速度は、それぞれ固定値であるとする。反転ローラ43の加速時および減速時の加速度も、それぞれ固定値であるとする。また、前述のように、レジストローラ31のトップ速度Vt、および反転ローラ43の反転速度Vsは固定値である。このため、時間T1,T3は、印刷搬送速度Vgによって変わるものである。また、時間T2は、印刷搬送速度Vgおよび用紙長さLpによって変わるものである。両面搬送速度Vrが変わっても、時間T1〜T3は変わらない。
これに対し、時間T4は、両面搬送速度Vrによって変わるものである。式(5)より、時間T4は以下の式(6)で表される。両面搬送速度Vrは、時間T4が式(6)を満たすような値として算出される。
T4=Tps(2N−1)−(T1+T2+T3) …(6)
そこで、時間T4の起点から用紙Pが両面搬送速度Vrに達するまでの時間をT41、用紙Pが両面搬送速度Vrで等速搬送される時間をT42、両面搬送速度Vrからの減速開始から時間T4の終点までの時間をT43とする。すなわち、以下の式(7)が成り立つ。
T4=T41+T42+T43 …(7)
ここで、反転ローラ43の加速時の加速度を、縦搬送ローラ19の加速時の加速度と同じ固定値のαuとする。時間T41は、以下の式(8)で表される。
T41=Vr/αu …(8)
両面搬送速度Vrでの搬送距離をL42とすると、時間T42は、以下の式(9)で表される。
T42=L42/Vr …(9)
時間T43は、以下の式(10)で表される。
T43=Vr/|αd|+Lm/Vm+Tsc …(10)
式(10)におけるVr/|αd|は、両面搬送速度Vrからの減速開始から突き当て搬送速度Vmに達するまでの時間と、突き当て搬送速度Vmからの減速開始から停止までの時間との合計である。Lm/Vmは、突き当て搬送速度Vmでの搬送時間である。Tscは、再給紙タイミング調整時間である。再給紙タイミング調整時間Tscは、表面印刷後の用紙Pがレジストローラ31に突き当てられて停止してからレジストローラ31が起動されるタイミングまでの時間の理論値である。
両面搬送速度Vrでの搬送距離L42は、以下の式(11)で表される。
L42=Lsr+Ltm−Ls−L41−L43 …(11)
ここで、Lsrは、反転ローラ43からレジストローラ31までの搬送経路上の距離である。Lsは、反転時後端残し量である。反転時後端残し量Lsは、反転ローラ43がスイッチバック時に逆転駆動するために停止したときにおける反転ローラ43から正転時の搬送方向における用紙Pの後端までの距離である。L41,L43は、それぞれ時間T41,T43に対応する期間における搬送距離である。
搬送距離L41,L43は、それぞれ以下の式(12),(13)で表される。
L41=Vr2/2αu …(12)
L43=Vr2/2|αd|+Lm …(13)
式(13)におけるVr2/2|αd|は、両面搬送速度Vrからの減速開始から突き当て搬送速度Vmに達するまでの間における搬送距離と、突き当て搬送速度Vmからの減速開始から停止までの間における搬送距離との合計である。
式(9),(11)〜(13)から、以下の式(14)が得られる。
T42=(Lsr+Ltm−Ls−Lm)/Vr
−(1/2αu+1/2|αd|)Vr …(14)
そして、式(6)〜(8),(10),(14)から、以下の式(15)が得られる。
(1/2αu+1/2|αd|)Vr2
+(Lm/Vm+Tsc−Tps(2N−1)+(T1+T2+T3))Vr
+(Lsr+Ltm−Ls−Lm)=0 …(15)
式(15)をVrについて解くことで、両面搬送速度Vrが算出される。なお、式(15)の解のうち、Vr>Vgを満たす解が両面搬送速度Vrとして採用される。
次に、内部給紙台13A,13Bから給紙する両面印刷時の表面印刷と両面印刷とが交互に行われる期間における縦搬送ローラ19の動作について説明する。
内部給紙台13A,13Bから給紙して両面印刷を行う場合、表面印刷と両面印刷とが交互に行われる期間においては、縦搬送ローラ19には、未印刷の用紙Pと表面印刷後の用紙Pとが交互に到来する。ここで、未印刷の用紙Pは内部給紙搬送ローラ16Cから給紙搬送速度Vkで搬送されてくるのに対し、表面印刷後の用紙Pは循環搬送部4から両面搬送速度Vrで搬送されてくる。このため、縦搬送ローラ19の動作が、未印刷の用紙Pの給紙時の動作である給紙搬送動作と、表面印刷後の用紙Pの再給紙時の動作である再給紙搬送動作との間で切り替えられる。
表面印刷も裏面印刷も印刷時間Tpsが同じであるため、表面印刷と両面印刷とが交互に行われる期間において、縦搬送ローラ19は、給紙搬送動作の動作時間と再給紙搬送動作の動作時間とが同じになるように制御される。ここで、給紙搬送動作は、未印刷の用紙Pを受け入れてレジストローラ31に突き当てる給紙動作と、レジストローラ31とともに用紙Pを搬送するアシスト動作とを含むものである。また、再給紙搬送動作は、表面印刷後の用紙Pを受け入れてレジストローラ31に突き当てる再給紙動作と、アシスト動作とを含むものである。
図7は、内部給紙台13A,13Bから給紙する両面印刷時の表面印刷と両面印刷とが交互に行われる期間における縦搬送ローラ19の動作を説明するためのタイムチャート図である。
図7の時刻t21において、内部給紙台13Aまたは内部給紙台13Bから取り出された未印刷の用紙Pの先端が内部給紙センサ18Cで検出されると、制御部6は、前述の給紙用加速待機時間Twk後の時刻t22において、縦搬送ローラ19の加速を開始させる。この時点から給紙搬送動作の開始となる。時刻t22までは、縦搬送ローラ19は、直前の再給紙搬送動作におけるアシスト動作のため、印刷搬送速度Vgで駆動されている。
ここで、未印刷の用紙Pは、印刷スケジュールに対応するレジストローラ31の起動タイミングに応じたタイミングで、内部給紙台13Aまたは内部給紙台13Bから取り出されて搬送される。表面印刷と両面印刷とが交互に行われる期間においては、レジストローラ31は、前述した片面印刷時と同様に、印刷時間Tpsごとに起動される。
時刻t22〜t23における縦搬送ローラ19の動作は、前述した図3の時刻t14〜t17における縦搬送ローラ19の動作と同様である。
時刻t21から給紙用加速待機時間Twk後の時刻t22で縦搬送ローラ19の加速を開始させることで、用紙Pの先端が縦搬送ローラ19よりマージンLkm分だけ手前(上流側)にある時点で、縦搬送ローラ19を給紙搬送速度Vkに到達させることができる。これにより、用紙Pが縦搬送ローラ19に到達する時点では、縦搬送ローラ19は、給紙搬送速度Vkで搬送されてくる用紙Pを受け入れる準備ができている状態となる。
用紙Pが到達すると、縦搬送ローラ19は、給紙搬送速度Vkで用紙Pを受け入れて搬送する。そして、縦搬送ローラ19は、突き当て搬送速度Vmで用紙Pをレジストローラ31に突き当ててたるみを形成し、時刻t23で停止する。
この後、レジストローラ31の起動タイミングである時刻t24において、制御部6は、アシスト動作のため縦搬送ローラ19を起動させる。そして、制御部6は、縦搬送ローラ19をレジストローラ31に同期して動作させる。
次いで、表面印刷後の用紙Pの先端が両面センサ49で検出されると、制御部6は、その時刻t25から再給紙用加速待機時間Twr後の時刻t26において、縦搬送ローラ19の印刷搬送速度Vgからの加速を開始させる。この時点で給紙搬送動作が終了し、再給紙搬送動作の開始となる。制御部6は、縦搬送ローラ19の搬送速度が両面搬送速度Vrに達すると、両面搬送速度Vrを維持させる。
再給紙用加速待機時間Twrは、以下の式(16)で表される。
Twr=(Lr−(Vr2−Vg2)/2αu−Lkm)/Vr …(16)
ここで、Lrは、両面センサ49と縦搬送ローラ19との間の搬送経路上の距離である。
式(17)における(Vr2−Vg2)/2αuは、縦搬送ローラ19を印刷搬送速度Vgから両面搬送速度Vrまで加速度αuで加速する間の縦搬送ローラ19による搬送距離(加速距離)である。
式(17)で表される再給紙用加速待機時間Twrは、両面センサ49と縦搬送ローラ19との間の距離Lrから加速距離(Vr2−Vg2)/2αuおよびマージンLkmを差し引いた距離を、両面搬送速度Vrで搬送するのに要する時間である。したがって、時刻t25から再給紙用加速待機時間Twr後の時刻t26で縦搬送ローラ19の加速を開始させることで、用紙Pの先端が縦搬送ローラ19よりマージンLkm分だけ手前(上流側)にある時点で、縦搬送ローラ19を両面搬送速度Vrに到達させることができる。これにより、2枚目の用紙Pが縦搬送ローラ19に到達する時点では、縦搬送ローラ19は、両面搬送速度Vrで搬送されてくる用紙Pを受け入れる準備ができている状態となる。
用紙Pが縦搬送ローラ19に到達すると、縦搬送ローラ19は、両面搬送速度Vrで用紙Pを受け入れて搬送する。用紙Pの先端が縦搬送センサ21で検出されると、制御部6は、その時刻t27から再給紙用減速待機時間Twg後の時刻t28において、縦搬送ローラ19の減速を開始させる。
再給紙用減速待機時間Twgは、以下の式(17)で表される。
Twg=(Lv−Vr2/2|αd|−Lm+Ltm)/Vr …(17)
時刻t28において縦搬送ローラ19の減速を開始させた後、突き当て搬送速度Vmにまで減速されると、制御部6は、突き当て搬送距離Lmだけ用紙Pが搬送されるまで突き当て搬送速度Vmを維持させた後、時刻t29で縦搬送ローラ19を停止させる。
式(17)で表される再給紙用減速待機時間Twgは、前述の式(3)で表される給紙用減速待機時間Twdにおける給紙搬送速度Vkを両面搬送速度Vrに置き換えたものである。すなわち、再給紙用減速待機時間Twgは、縦搬送センサ21とレジストローラ31との間の距離Lvにたるみ量Ltmを加えた距離から、時刻t28〜t29における搬送距離である「Vr2/2|αd|+Lm」を差し引いた距離を、両面搬送速度Vrで搬送するのに要する時間である。したがって、時刻t27から再給紙用減速待機時間Twg後の時刻t28で縦搬送ローラ19の減速を開始することで、用紙Pをレジストローラ31に突き当て、用紙Pにたるみ量Ltmのたるみが形成された状態で、縦搬送ローラ19を停止させることができる。
この後、レジストローラ31の起動タイミングである時刻t30において、制御部6は、アシスト動作のため縦搬送ローラ19を起動させる。そして、制御部6は、縦搬送ローラ19をレジストローラ31に同期して動作させる。
次の給紙搬送動作における縦搬送ローラ19の加速開始タイミングである時刻t31において、再給紙搬送動作が終了となり、給紙搬送動作に切り替わる。以上のようにして、給紙搬送動作と再給紙搬送動作とが交互に繰り返される。
次に、内部給紙台13A,13Bから給紙する両面印刷時の印刷装置1の動作について説明する。
図8は、内部給紙台13A,13Bから給紙する両面印刷時の印刷装置1の動作を説明するためのフローチャートである。図8のフローチャートの処理は、印刷装置1に印刷ジョブが入力されることにより開始となる。
図8のステップS1において、制御部6は、印刷条件に基づき両面搬送速度Vrを算出する。具体的には、制御部6は、印刷ジョブに含まれる印刷設定情報から用紙サイズ、用紙種類、印刷解像度等の印刷条件を示す情報を取得する。そして、制御部6は、用紙サイズから用紙長さLpを取得するとともに、用紙長さLpに応じた片面連続枚数Nを設定する。また、制御部6は、用紙種類、印刷解像度等に基づき、印刷搬送速度Vgを設定する。制御部6は、これらの設定値を含む各種の値を用いて、式(15)により両面搬送速度Vrを算出する。そして、制御部6は、算出した両面搬送速度Vrを、印刷実行時に用いる値として設定する。
次いで、ステップS2において、制御部6は、設定した印刷搬送速度Vgに応じた給紙用加速待機時間Twkを算出する。また、制御部6は、印刷搬送速度Vgおよび両面搬送速度Vrに応じた再給紙用加速待機時間Twrおよび再給紙用減速待機時間Twgを算出する。そして、制御部6は、算出した給紙用加速待機時間Twk、再給紙用加速待機時間Twr、および再給紙用減速待機時間Twgを、印刷実行時に用いる値として設定する。なお、起動待機時間Twsおよび給紙用減速待機時間Twdは印刷条件によらないため、予め算出され、設定されている。
次いで、ステップS3において、制御部6は、給紙および印刷を開始させる。まず、1枚目の給紙時において、制御部6は、内部給紙ローラ14Aまたは内部給紙ローラ14B、内部給紙搬送ローラ16A〜16C、および縦搬送ローラ19を、前述した図3の時刻t1〜t9と同様に動作させる。これにより、用紙Pが内部給紙台13Aまたは内部給紙台13Bから取り出されて搬送され、レジストローラ31に突き当てられて停止する。
1枚目の用紙Pをレジストローラ31に突き当てて停止させた後、制御部6は、レジストローラ31を起動させるとともに、アシスト動作のため、内部給紙搬送ローラ16A〜16Cおよび縦搬送ローラ19を起動させる。レジストローラ31の駆動と、内部給紙搬送ローラ16A〜16Cおよび縦搬送ローラ19によるアシスト動作とにより、用紙Pがベルト搬送部33へ送られる。
ここで、制御部6は、1枚目の用紙Pの後端が内部給紙センサ18Cで検出されると、内部給紙搬送ローラ16A〜16Cを停止させてアシスト動作を終了させる。また、1枚目の用紙Pの後端が縦搬送センサ21で検出されると、縦搬送ローラ19を停止させてアシスト動作を終了させる。
2枚目以降の給紙時の内部給紙ローラ14A,14Bおよび内部給紙搬送ローラ16A〜16Cの動作は、上述した1枚目の給紙時の動作と同様である。両面印刷の場合、図5のような印刷スケジュールに応じて、内部給紙ローラ14A,14Bの起動が2Tpsの間隔で行われ、未印刷の用紙Pが順次給紙される。
内部給紙台13Aまたは内部給紙台13Bから給紙されてレジストローラ31から送り出された未印刷の用紙Pは、設定された印刷搬送速度Vgでベルト搬送部33により搬送されつつ、ヘッドユニット35から吐出されるインクにより表面印刷される。表面印刷された用紙Pは、第1切替部51により循環経路RCに導かれ、中間搬送ローラ41により反転ローラ43へ搬送される。
次いで、用紙Pは、反転ローラ43によりスイッチバックされることで表裏反転される。スイッチバックされた用紙Pは、水平搬送ローラ45および上昇搬送ローラ47により、設定された両面搬送速度Vrで縦搬送ローラ19へ搬送される。
ここで、縦搬送ローラ19の動作は、N−1枚目までは、上述した1枚目の給紙時の動作と同様である。N枚目の給紙の場合、N+1枚目の給紙との間に表面印刷後の用紙Pが循環搬送部4から搬送されてくる。このため、縦搬送ローラ19は、1枚目の用紙Pの後端が縦搬送センサ21で検出されても停止せず、アシスト動作時の印刷搬送速度Vgを維持したまま、前述の再給紙搬送動作へ移行する。この後、縦搬送ローラ19は、図7に示したように、給紙搬送動作と再給紙搬送動作とを交互に行う。制御部6は、給紙搬送動作と再給紙搬送動作との切り替えの際のタイミングを決定するために用いる給紙用加速待機時間Twkおよび再給紙用加速待機時間Twrとして、ステップS2で算出して設定した値を用いる。
さて、表面印刷後の用紙Pは、両面搬送速度Vrで縦搬送ローラ19へ搬送されると、縦搬送ローラ19によりレジストローラ31へ再給紙され、たるみ量Ltmのたるみが形成された状態で停止する。スイッチバック後、両面搬送速度Vrで縦搬送ローラ19へ搬送されることで、表面印刷後の用紙Pは、印刷スケジュールに応じたタイミングでレジストローラ31へ再給紙される。
この後、表面印刷後の用紙Pは、レジストローラ31の駆動および縦搬送ローラ19によるアシスト動作によりベルト搬送部33へ送られる。次いで、用紙Pは、印刷搬送速度Vgでベルト搬送部33により搬送されつつ、ヘッドユニット35から吐出されるインクにより裏面印刷される。そして、両面印刷済みの用紙Pは、排紙部5により排紙される。
ステップS3の後、ステップS4において、制御部6は、印刷ジョブにおける指定印刷枚数分の印刷が終了したか否かを判断する。指定印刷枚数分の印刷は終了していないと判断した場合(ステップS4:NO)、制御部6は、ステップS4を繰り返す。指定印刷枚数分の印刷が終了したと判断した場合(ステップS4:YES)、制御部6は、一連の動作を終了する。
以上説明したように、印刷装置1では、縦搬送ローラ19により、給紙用の搬送ローラと再給紙用の搬送ローラとを共通化している。これにより、搬送ローラを減らし、装置の小型化を実現している。
また、印刷装置1では、制御部6は、両面印刷時において、印刷条件に基づき印刷部3の印刷スケジュールに応じた両面搬送速度Vrを設定する。制御部6は、両面印刷時の給紙元が内部給紙台13Aまたは内部給紙台13Bである場合、縦搬送ローラ19の動作を、未印刷の用紙を給紙搬送速度Vkで受け入れて印刷部3へ搬送する給紙搬送動作と、表面印刷後の用紙Pを両面搬送速度Vrで受け入れて印刷部3へ搬送する再給紙搬送動作との間で切り替える制御を行う。そして、制御部6は、その切り替えタイミングを印刷スケジュールに応じて制御する。
具体的には、制御部6は、印刷スケジュールに応じたタイミングで内部給紙台13A,13Bから取り出されて給紙搬送速度Vkで搬送される未印刷の用紙Pが内部給紙センサ18Cで検出されたタイミングに基づき、縦搬送ローラ19を再給紙搬送動作から給紙搬送動作へ切り替える。また、制御部6は、循環搬送部4において両面搬送速度Vrで搬送される表面印刷後の用紙Pが両面センサ49で検出されたタイミングに基づき、縦搬送ローラ19を給紙搬送動作から再給紙搬送動作へ切り替える。
これにより、縦搬送ローラ19の動作終了の待機時間を発生させることなく、印刷部3の印刷スケジュールに応じたタイミングで給紙および再給紙を行うことができる。この結果、印刷部3による印刷物の生産性の低下を抑制できる。
したがって、印刷装置1によれば、装置を小型化しつつ、印刷物の生産性の低下を抑制できる。
また、制御部6は、縦搬送ローラ19の給紙搬送動作から再給紙搬送動作への切り替え時において、縦搬送ローラ19の上流側の循環経路RC上の所定位置に配置された両面センサ49に用紙Pが到達したタイミングから再給紙用加速待機時間Twr後のタイミングで切り替える。ここで、再給紙用加速待機時間Twrは、式(16)から分かるように、両面搬送速度Vrに応じた設定距離である「Lr−(Vr2−Vg2)/2αu−Lkm」を両面搬送速度Vrで搬送するのに要する時間である。
また、制御部6は、縦搬送ローラ19の再給紙搬送動作から給紙搬送動作への切り替え時には、縦搬送ローラ19の上流側の内部給紙経路RS2上の所定位置に配置された内部給紙センサ18Cに用紙Pが到達したタイミングから給紙用加速待機時間Twk後のタイミングで切り替える。ここで、給紙用加速待機時間Twkは、式(4)から分かるように、給紙搬送速度Vkに応じた設定距離である「Lk−(Vk2−Vg2)/2αu−Lkm」を給紙搬送速度Vkで搬送するのに要する時間である。
これにより、印刷装置1は、複雑な制御を要することなく、両面搬送速度Vrおよび給紙搬送速度Vkに応じた適切なタイミングで縦搬送ローラ19の動作を切り替えることができる。
また、制御部6は、表面印刷と両面印刷とが交互に行われる期間において、給紙搬送動作の動作時間と再給紙搬送動作の動作時間とが同じになるように縦搬送ローラ19を制御する。これにより、片面印刷時と同等の片面当たりの生産性でのインターリーフ方式による両面印刷に対応できる。
(変形例)
次に、上述した実施の形態における内部給紙台13A,13Bからの給紙制御の一部を変更した変形例について説明する。
上述した実施の形態では、内部給紙台13A,13Bからの用紙Pの給紙時に縦搬送ローラ19を起動または加速開始させるタイミングを決定するために、内部給紙センサ18Cによる用紙先端の検出タイミングを用いた。また、上述した実施の形態では、用紙Pの遅れまたは進みが生じた場合に行う内部給紙搬送ローラ16A〜16Cの搬送速度の補正を終了するためのトリガとして、内部給紙センサ18Cによる用紙先端の検出タイミングを用いた。
これに対し、本変形例では、内部給紙センサ18Cの検出出力を用いることなく、内部給紙台13A,13Bからの用紙Pの給紙時に縦搬送ローラ19を起動または加速開始させるタイミングを決定する。また、本変形例では、内部給紙センサ18Cの検出出力を用いることなく、内部給紙搬送ローラ16A〜16Cの搬送速度の補正を終了するタイミングを決定する。
まず、本変形例における、内部給紙台13A,13Bからの用紙Pの給紙時に縦搬送ローラ19を起動または加速開始させるタイミングについて説明する。
本変形例では、内部給紙台13A,13Bからの給紙時に縦搬送ローラ19を起動または加速開始させるに際して、上述の実施の形態における内部給紙センサ18Cによる用紙先端の検出タイミングを、内部給紙ローラ14A,14Bの起動タイミングから設定到達時間後のタイミングに置き換える。
設定到達時間は、内部給紙ローラ14A,14Bの起動から用紙先端が内部給紙センサ18Cの位置に到達するまでの時間の理論値である。ここで、設定到達時間としては、内部給紙台13A,13Bのそれぞれに対応した値がある。内部給紙台13Aに対応する設定到達時間をTra、内部給紙台13Bに対応する設定到達時間をTrbとする。設定到達時間をTra,Trbは、それぞれ以下の式(18),(19)で表される。
Tra=Vk/αk+(Lpa/β−Vk2/2αk+Lna)/Vk …(18)
Trb=Vk/αk+(Lpb/β−Vk2/2αk+Lnb)/Vk …(19)
ここで、αkは、内部給紙ローラ14A,14Bの加速時の加速度である。Lpaは、内部給紙ローラ14Aと内部給紙搬送ローラ16Aとの間の搬送経路上の距離である。
Lnaは、内部給紙搬送ローラ16Aと内部給紙センサ18Cとの間の搬送経路上の距離である。Lpbは、内部給紙ローラ14Bと内部給紙搬送ローラ16Bとの間の搬送経路上の距離である。Lnbは、内部給紙搬送ローラ16Bと内部給紙センサ18Cとの間の搬送経路上の距離である。βは、内部給紙ローラ14A,14Bの搬送率である。搬送率βは、内部給紙ローラ14A,14Bの搬送量の理論値に対する、実際の搬送量の比率である。搬送率βは、実験的に求められる。
例えば、内部給紙台13Aからの1枚目の給紙時に縦搬送ローラ19を起動させる場合、制御部6は、内部給紙ローラ14Aの起動から設定到達時間Tra後のタイミングから、さらに起動待機時間Tws後のタイミングで、縦搬送ローラ19を起動させる。
また、例えば、内部給紙台13Bから給紙する場合において、縦搬送ローラ19を再給紙搬送動作から給紙搬送動作へ切り替える場合、制御部6は、内部給紙ローラ14Bの起動から設定到達時間Trb後のタイミングから、さらに給紙用加速待機時間Twk後のタイミングで、縦搬送ローラ19の加速を開始させる。
次に、本変形例における内部給紙搬送ローラ16A〜16Cの搬送速度の補正について説明する。
図9は、内部給紙搬送ローラ16A〜16Cの搬送速度の補正を説明するためのタイムチャート図である。図9は、内部給紙台13Bから給紙する場合のタイムチャート図を示している。
内部給紙台13Bから給紙する場合、内部給紙台13Bから内部給紙ローラ14Bによって取り出された用紙Pの先端が内部給紙センサ18Bに到達すると、制御部6は、その到達タイミングの理論値に対して遅れまたは進みが生じているか否かを判断する。用紙Pの遅れまたは進みは生じていない場合は、制御部6は、内部給紙搬送ローラ16A〜16Cの搬送速度の補正は行わない。
用紙Pの遅れまたは進みが生じている場合、制御部6は、図9に示すように、用紙Pの先端が内部給紙センサ18Bに到達した時刻t41において、内部給紙搬送ローラ16A〜16Cの搬送速度を給紙搬送速度Vkから補正速度Vhbへ変更する。ここで、制御部6は、内部給紙センサ18Bへの到達タイミングの理論値に対する遅れ時間Tdに基づき、補正速度Vhbを算出する。補正速度Vhbの算出方法は後述する。
この後、制御部6は、内部給紙搬送ローラ16A〜16Cの搬送速度を、時刻t41から補正時間Thb後の時刻t42に補正速度Vhbから給紙搬送速度Vkへ戻すよう制御する。これにより、内部給紙搬送ローラ16A〜16Cの搬送速度の補正が終了する。
補正時間Thbは、用紙Pの先端が内部給紙センサ18Bに到達してから補正終了位置に到達するまでの時間である。補正終了位置は、縦搬送ローラ19の上流側近傍に設定された搬送経路上の位置である。
補正時間Thbは、以下の式(20)により算出される。
Thb=Tcb−Td …(20)
ここで、Tcbは、内部給紙台13Bから給紙する場合の標準搬送時間である。標準搬送時間Tcbは、以下の式(21)により算出される。
Tcb=Lhb/Vk …(21)
ここで、Lhbは、内部給紙センサ18Bと補正終了位置との間の搬送経路上の距離である。すなわち、標準搬送時間Tcbは、搬送速度の補正をせずに給紙搬送速度Vkで用紙Pを内部給紙センサ18Bから補正終了位置まで搬送するのに要する時間である。
遅れ時間Tdは、内部給紙センサ18Bへの用紙Pの到達タイミングが理論値より遅れている場合は正の値とし、理論値より進んでいる場合は負の値とする。
次に、補正速度Vhbの算出方法を説明する。
補正速度Vhbは、補正時間Thbにおける用紙Pの搬送距離が、内部給紙センサ18Bと補正終了位置との間の距離Lhbと等しくなるように決定される。
用紙Pの遅れが生じている場合(Td>0の場合)、遅れを取り戻すため、補正速度Vhbは、給紙搬送速度Vkより速い速度に設定される。この場合、補正時間Thbにおける用紙Pの搬送距離は、図10において斜線で示す領域の面積に相当する。ここで、内部給紙搬送ローラ16A〜16Cの加速時の加速度は、縦搬送ローラ19の加速時の加速度と同じαuとする。また、内部給紙搬送ローラ16A〜16Cの減速時の加速度は、縦搬送ローラ19の減速時の加速度と同じαdとする。
したがって、以下の式(22)が成り立つ。
(Vhb2−Vk2)/2αu
+(Thb−(Vhb−Vk)/αu−(Vhb−Vk)/|αd|)Vhb
+(Vhb2−Vk2)/2|αd|=Lhb …(22)
式(20),(22)から、以下の式(23)が得られる。
(1/2αu+1/2|αd|)Vhb2
−((Tcb−Td)+(1/αu+1/|αd|)Vk)Vhb
+(1/2αu+1/2|αd|)Vk2+Lhb=0 …(23)
式(23)をVhbについて解くことで、用紙Pの遅れが生じている場合における補正速度Vhbが得られる。なお、式(23)の解のうち、正の数である解が補正速度Vhbとして採用される。
一方、用紙Pの進みが生じている場合(Td<0の場合)、進みを調整するため、補正速度Vhbは、給紙搬送速度Vkより遅い速度に設定される。この場合、補正時間Thbにおける用紙Pの搬送距離は、図11において斜線で示す領域の面積に相当する。
したがって、以下の式(24)が成り立つ。
(Vk2−Vhb2)/2αu
+(Thb−(Vk−Vhb)/αu−(Vk−Vhb)/|αd|)Vhb
+(Vk2−Vhb2)/2|αd|=Lhb …(24)
式(20),(24)から、以下の式(25)が得られる。
(1/2αu+1/2|αd|)Vhb2
+((Tcb−Td)−(1/αu+1/|αd|)Vk)Vhb
+(1/2αu+1/2|αd|)Vk2−Lhb=0 …(25)
式(25)をVhbについて解くことで、用紙Pの進みが生じている場合における補正速度Vhbが得られる。なお、式(25)の解のうち、正の数である解が補正速度Vhbとして採用される。
内部給紙台13Aから給紙する場合、制御部6は、用紙Pの先端が内部給紙センサ18Aに到達すると、その到達タイミングの理論値に対して遅れまたは進みが生じているか否かを判断する。そして、用紙Pの遅れまたは進みが生じている場合、制御部6は、内部給紙搬送ローラ16A〜16Cの搬送速度を給紙搬送速度Vkから補正速度Vhaへ変更する。
この後、制御部6は、内部給紙搬送ローラ16A〜16Cの搬送速度を、用紙Pの内部給紙センサ18Aへの到達タイミングから補正時間Tha後に、補正速度Vhaから給紙搬送速度Vkへ戻すよう制御する。これにより、内部給紙搬送ローラ16A〜16Cの搬送速度の補正が終了する。
内部給紙台13Aから給紙する場合の補正時間Thaは、以下の式(26)により算出される。
Tha=Tca−Td …(26)
ここで、Tcaは、内部給紙台13Aから給紙する場合の標準搬送時間である。標準搬送時間Tcaは、以下の式(27)により算出される。
Tca=Lha/Vk …(27)
ここで、Lhaは、内部給紙センサ18Aと補正終了位置との間の搬送経路上の距離である。すなわち、標準搬送時間Tcaは、搬送速度の補正をせずに給紙搬送速度Vkで用紙Pを内部給紙センサ18Aから補正終了位置まで搬送するのに要する時間である。
用紙Pの遅れが生じている場合(Td>0の場合)における補正速度Vhaは、以下の式(28)をVhaについて解くことで得られる。
(1/2αu+1/2|αd|)Vha2
−((Tca−Td)+(1/αu+1/|αd|)Vk)Vha
+(1/2αu+1/2|αd|)Vk2+Lha=0 …(28)
また、用紙Pの進みが生じている場合(Td<0の場合)における補正速度Vhaは、以下の式(29)をVhaについて解くことで得られる。
(1/2αu+1/2|αd|)Vha2
+((Tca−Td)−(1/αu+1/|αd|)Vk)Vha
+(1/2αu+1/2|αd|)Vk2−Lha=0 …(29)
式(28),(29)は、前述の式(23),(25)と同様の手法で導かれるものである。
なお、制御部6は、給紙搬送速度Vkの補正を行った場合、補正速度Vha,Vhbに応じて前述の設定到達時間をTra,Trbも補正する。
以上説明したように、本変形例では、制御部6は、内部給紙センサ18Cの検出出力を用いることなく、内部給紙台13A,13Bからの用紙Pの給紙時に縦搬送ローラ19を起動または加速開始させるタイミングを決定する。また、制御部6は、内部給紙センサ18Cの検出出力を用いることなく、内部給紙搬送ローラ16A〜16Cの搬送速度の補正を終了するタイミングを決定する。
これにより、スペースの制約等により内部給紙センサ18Cを省略した構成としても、内部給紙台13A,13Bからの給紙時に縦搬送ローラ19を起動または加速開始させるタイミング、および内部給紙搬送ローラ16A〜16Cの搬送速度の補正を終了するタイミングを決定できる。
また、レジストローラ31に突き当てられた用紙Pの後端部が内部給紙センサ18Cより上流側にまで残っていることにより内部給紙センサ18Cがチャタリングしても、縦搬送ローラ19が誤動作することを防止できる。
本発明は上記実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。