以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の構成要素には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明を省略する場合がある。
なお、実施の形態において例示される各構成要素の寸法、材質、形状、それらの相対配置などは、本発明が適用される装置の構成や各種条件により適宜変更されるものであり、本発明はそれらの例示に限定されるものではない。また、各図における各構成要素の寸法は、実際の寸法と異なる場合がある。
<実施の形態1>
図1は、本発明の実施の形態1に係る投写型映像表示装置1000の断面図である。具体的には、図1は、投写型映像表示装置1000を側面から視た際の、投写型映像表示装置1000の断面図である。
図1において、X,Y,Z方向の各々は、互いに直交する。以下の図に示されるX,Y,Z方向の各々も、互いに直交する。以下においては、X方向と、当該X方向の反対の方向(−X方向)とを含む方向をX軸方向ともいう。また、以下においては、Y方向と、当該Y方向の反対の方向(−Y方向)とを含む方向をY軸方向ともいう。また、以下においては、Z方向と、当該Z方向の反対の方向(−Z方向)とを含む方向をZ軸方向ともいう。また、以下においては、X軸方向およびZ軸方向を含む平面を、XZ面ともいう。
図2は、本発明の実施の形態1に係る投写型映像表示装置1000の斜視図である。図3は、本発明の実施の形態1に係る投写型映像表示装置1000の正面図である。
図1、図2および図3に示すように、投写型映像表示装置1000は、光学エンジン100と、スクリーン200とを備える。
スクリーン200は、例えば、光を反射する反射型のスクリーンである。スクリーン200は、特定方向であるX軸方向およびZ軸方向に延在する。すなわち、スクリーン200は、XZ面に平行な方向に延在する。
スクリーン200は、光学エンジン100の上方に配置される。スクリーン200は、表面200aと、背面200bとを有する。表面200aは、映像光L1が照射される面である。背面200bは、スクリーン200のうち表面200aと反対側の面である。映像光L1は、映像を構成する光である。
光学エンジン100は、映像光L1を出射する映像投射装置である。光学エンジン100は、スクリーン200の表面200aに対して斜めの方向から、映像光L1を出射する。以下においては、スクリーン200が延在する特定方向に対して斜めの方向を、斜め方向DR1ともいう。すなわち、光学エンジン100は、斜め方向DR1に伝搬する映像光L1をスクリーン200に向けて出射する。つまり、光学エンジン100は、スクリーン200の方向へ、すなわち、斜め上方の方向へ、映像光L1を出射する。
光学エンジン100は、光源110と、画像形成素子120と、照明光学系130と、投写光学系50と、投写窓61と、冷却機構54と、筐体60とを含む。筐体60に、光源110と、画像形成素子120と、照明光学系130と、投写光学系50と、投写窓61と、冷却機構54が収容される。
光源110は、光を出射する。光源110は、例えば、高圧水銀ランプ、LED(Light Emitting Diode)光源またはレーザー光源等である。
照明光学系130は、光源110が出射した光を、画像形成素子120に効率良く照射させる。照明光学系130は、例えば、レンズである。
画像形成素子120は、例えば、透過型液晶素子、反射型液晶素子またはデジタルミラーデバイス等である。画像形成素子120は、当該画像形成素子120に照射された光を変調することにより、映像光を生成する。画像形成素子120は、生成した映像光を、投写光学系50へ出射する。
投写光学系50は、映像光L1を広角に投写する短焦点の光学系である。投写光学系50は、スクリーン200の斜め下方に近接して設けられる。投写光学系50は、画像形成素子120が出射した映像光を、映像光L1として、スクリーン200の表面200aへ導く。すなわち、投写光学系50は、斜め上方の方向へ映像光L1を放射状に出射する。つまり、投写光学系50は、斜め上方の方向のスクリーン200へ、映像光L1を近接して(近距離で)投写する。
具体的には、投写光学系50は、非球面ミラー51と、投射レンズ52とから構成される。投射レンズ52は、画像形成素子120が出射する映像光を、非球面ミラー51に照射する。非球面ミラー51は、当該非球面ミラー51に照射された映像光を反射して、映像光L1として、スクリーン200の表面200aへ投写する。
以下においては、非球面ミラー51から、XZ面におけるスクリーン200の上端に向かう映像光L1を、映像光L1uともいう。また、以下においては、非球面ミラー51から、XZ面におけるスクリーン200の下端に向かう映像光L1を、映像光L1dともいう。前述の斜め方向DR1は、非球面ミラー51から、映像光L1uと映像光L1dとの間の領域へ向かう方向である。
また、以下においては、斜め方向DR1に伝搬する映像光L1を、斜め映像光NLまたは斜め映像光ともいう。すなわち、投写光学系50を含む光学エンジン100は、斜め映像光NLを出射する。
冷却機構54は、吸気ファンまたは排気ファンを備え、筐体60に対して吸気および排気を行う。冷却機構54は、温湿度を十分に管理された室内の空気を吸気して、筐体60内に冷たい空気を導入し、発熱部である光学エンジン100を構成する各部品を冷却する。そして、冷却機構54は、温められた空気を筐体60の外部へ排気する。
スクリーン200は、アクリル樹脂系材料を用いて形成され、高平坦なフロートガラス(ガラス材料)製の支持板202の表面にアクリル樹脂系の粘着貼合材201を介して貼り付けられる。
スクリーン200は、映像光L1を視聴位置P1へ反射させる。視聴位置P1とは、映像光が示す映像を観察者7が視聴するための位置である。視聴位置P1は、Y軸方向において、スクリーン200の表面200aと対向する位置である。具体的には、スクリーン200は、映像光L1を、映像光L1aとして、視聴位置P1へ反射させる。なお、スクリーン200の構成については後述する。
次に、実施の形態1に係るマルチ画面表示装置2000について説明する。図2は、本発明の実施の形態1に係るマルチ画面表示装置2000の斜視図であり、図3は、本発明の実施の形態1に係るマルチ画面表示装置2000の正面図である。
図2と図3に示すように、マルチ画面表示装置2000は、複数(例えば3つ)の投写型映像表示装置1000を組み合わせて構成される。複数の投写型映像表示装置1000が備えるスクリーン200は、複数の投写型映像表示装置1000の全体として一体形成された単一部材である。すなわち、1つのスクリーン200が、複数の投写型映像表示装置1000のスクリーンを構成する。
複数の投写型映像表示装置1000は水平方向に並べて配置され、中央の投写型映像表示装置1000の支持板202の左端と左側の投写型映像表示装置1000の支持板202の右端が連結される。また、中央の投写型映像表示装置1000の支持板202の右端と右側の投写型映像表示装置1000の支持板202の左端が連結される。スクリーン200は、連結された複数の支持板202の表面全体に粘着貼合材201を介して貼り付けられる。
これにより、映像光L1が投写されるスクリーン200の表面上には継ぎ目がない。これに加えて、スクリーン200は、高平坦なフロートガラス製の支持板202で支持されているため、部分的な画面歪みおよびフォーカスずれのないパノラマ状で迫力ある高品質な大画面映像を投写することが可能となる。
次に、スクリーン200の構成について説明する。図4は、本発明の実施の形態1に係るスクリーン200の断面図である。図4を参照して、スクリーン200は、透過層211(第1透過層)と、透過層212(第2透過層)とを含む。
透過層211および透過層212の各々は、透光性を有する。スクリーン200は、着色剤が添加された透過層211および拡散剤が添加された透過層212が共押出成型にて形成される。すなわち、スクリーン200は、着色剤が添加された透過層211および拡散剤が添加された透過層212による2層構成を有する。着色剤が添加された透過層211および拡散剤が添加された透過層212によりスクリーン基材210が構成される。
透過層211は、着色された着色層である。透過層211は、主面211aを有する。透過層211は、スクリーン200において、透過層211の主面211aがスクリーン200の表面200aとなるように配置される。
透過層212は、主面212bを有する。透過層212は、スクリーン200において、透過層212の主面212bがスクリーン200の背面200b側となるように配置される。詳細は後述するが、透過層212は、主面212b側に照射される光を拡散して反射するように構成される。
スクリーン基材210の表面層には凹凸層220が形成される。すなわち、透過層211の主面211a側には、凹凸層220が形成される。凹凸層220は、可視光の反射を大幅に低減するモスアイ構造を有する。凹凸層220は、光学エンジン100が出射する斜め映像光NLを透過させる構造を有する。
次に、凹凸層220の形成方法について説明する。図5は、凹凸層220の形成方法を説明するための図である。図5を参照して、まず、図5(a)の正弦波LN1に、図5(b)の正弦波LN2を重畳させることにより、図5(c)の疑似的に非周期的に見せた周期曲線LN3が生成される。
正弦波LN1は、例えば、振幅が約50マイクロメートルの正弦波である。正弦波LN2は、例えば、振幅が約5マイクロメートルの正弦波である。すなわち、正弦波LN1の振幅は正弦波LN2の振幅の10倍である。
なお、本明細書において、「第1パラメータ値は第2パラメータ値のk(自然数)倍である」旨を示す表現(以下、表現Aという)は、以下の意味を示す。表現Aは、「第1パラメータ値は第2パラメータ値のちょうどk倍である」ことを示す。また、表現Aは、「第1パラメータ値と、第2パラメータ値のk倍の値とは、わずかな値だけ異なる」ことも示す。例えば、表現Aは、「第1パラメータ値と、第2パラメータ値のk倍の値とは、当該第2パラメータ値のk倍の値の10%未満の値だけ異なる」ことを示す。すなわち、本明細書において、表現Aは、「第1パラメータ値は第2パラメータ値の約k倍である」ことを示す。
ここで、表現Aにおいて、第1パラメータ値が正弦波LN1の振幅であり、第2パラメータ値が正弦波LN2の振幅であるとする。この場合、上記の「正弦波LN1の振幅は正弦波LN2の振幅の10倍である」という表現は、「正弦波LN1の振幅と、正弦波LN2の振幅のk倍の値とは、当該正弦波LN2の振幅のk倍の値の10%未満の値だけ異なる」旨、すなわち、「正弦波LN1の振幅は、正弦波LN2の振幅の約10倍である」旨を示す。
なお、正弦波LN1および正弦波LN2の振幅は、上記の値に限定されない。正弦波LN1の振幅は、例えば、10マイクロメートル〜100マイクロメートルの範囲内の値であってもよい。また、正弦波LN2の振幅は、例えば、1マイクロメートル〜10マイクロメートルの範囲内の値であってもよい。この場合においても、正弦波LN1の振幅は正弦波LN2の振幅の10倍である。
また、正弦波LN1の周期は正弦波LN2の周期の10倍である。すなわち、疑似的に非周期的に見せた周期曲線LN3は、振幅および周期の両方が異なる複数の正弦波を組み合わせることにより生成される。当該複数の正弦波は、正弦波LN1および正弦波LN2から構成される。つまり、振幅および周期の両方が異なる複数の正弦波を組み合わせることにより、擬似的に非周期的に見せた周期曲線LN3が生成される。そのため、数値制御加工機等において、金型表面を加工するためのプログラムを容易に作成することが可能となる。
なお、振幅および周期の両方に限定されず、正弦波LN1,LN2の振幅および周期の一方のみが異なる構成(以下、構成Aという)としてもよい。構成Aでは、正弦波LN1,LN2の振幅および周期の他方は同じである。すなわち、構成Aでは、疑似的に非周期的に見せた周期曲線LN3は、振幅および周期の一方が異なる複数の正弦波を組み合わせることにより生成される。当該複数の正弦波は、正弦波LN1および正弦波LN2から構成される。
構成Aにおいて、正弦波LN1および正弦波LN2において振幅のみが異なる場合、正弦波LN1の振幅は正弦波LN2の振幅の10倍である。また、構成Aにおいて、正弦波LN1および正弦波LN2において周期のみが異なる場合、正弦波LN1の周期は正弦波LN1の周期の10倍である。
疑似的に非周期的に見せた周期曲線LN3は、算術平均粗さが、数マイクロメートルから数十マイクロメートルの曲線である。算術平均粗さとは、表面(曲線)の粗さを示すパラメータである。具体的には、疑似的に非周期的に見せた周期曲線LN3は、算術平均粗さが1マイクロメートルから100マイクロメートルの範囲内の値で示される曲線である。
なお、疑似的に非周期的に見せた周期曲線LN3は、正弦波LN1,LN2という2つの正弦波を組み合わせたものとしたがこれに限定されない。疑似的に非周期的に見せた周期曲線LN3は、3つ以上の正弦波を組み合わせることにより生成されてもよい。
図5(d)は、疑似的に非周期的に見せた周期曲線LN3の一部を示す、図5(c)の領域R1を拡大して示す図である。疑似的に非周期的に見せた周期曲線LN3に、図5(e)の周期的な周期曲線LN4を重畳させることにより、凹凸曲線LN5が生成される。すなわち、凹凸曲線LN5は、疑似的に非周期的に見せた周期曲線LN3と、周期曲線LN4とを重畳させることにより生成される。
周期曲線LN4は、微細なモスアイ構造を有する曲線である。モスアイ構造とは、可視光の反射を大幅に低減させる構造である。モスアイ構造を有する面は、当該面に照射された光の大部分を透過させる。周期曲線LN4の有する微細なモスアイ構造は、例えば、算術平均粗さが、数十ナノメートルから数百ナノメートルの曲線により構成される構造である。具体的には、周期曲線LN4は、例えば、算術平均粗さが20ナノメートルから900ナノメートルの範囲内の値で示される曲線である。
以上のようにして生成された凹凸曲線LN5は、モスアイ構造を有する。凹凸層220は、凹凸曲線LN5により構成される。具体的には、凹凸層220は、モスアイ構造を有する凹凸曲線LN5により構成される面により形成された層である。したがって、凹凸層220は、モスアイ構造を有する。
なお、凹凸曲線LN5は、以上のようにして作成されるため、凹凸曲線LN5を生成するための加工プログラムを容易に作成することができる。以下においては、凹凸層220を生成するための金型を、凹凸形成用金型ともいう。
なお、凹凸形成用金型は、数値により制御される数値制御加工機により、精密加工を施されることにより作成される。凹凸形成用金型は、透過層211の主面211aを加工するための押出ロール金型である。凹凸形成用金型は、スクリーン基材210を生成するための2層押出成型ラインに設置される。2層押出成型ラインにより生成されたスクリーン基材210の透過層211の主面211aに、凹凸形成用金型を直接押圧するロール転写法により、透過層211の主面211a側に、凹凸層220が形成される。
なお、凹凸層220を形成する方法は、ロール転写法に限定されない。凹凸層220を形成する方法は、例えば、UV(Ultraviolet)硬化樹脂を使用したUV硬化法であってもよい。
再び、図4を参照して、スクリーン基材210の背面層には、フレネルレンズ230が形成される。すなわち、スクリーン200の背面200bには、フレネルレンズ230が形成される。
フレネルレンズ230は、XZ面において行列状に配列された複数のプリズム部23から構成される。各プリズム部23は、反射部23aと、光吸収部23bとから構成される。すなわち、フレネルレンズ230には、反射部23aと光吸収部23bとが交互に配置される。つまり、スクリーン200の背面200bには、フレネルレンズ230に含まれる各プリズム部23の光吸収部23bが形成される。
透過層211の凹凸層220を透過した斜め映像光NLは、透過層211の内部と透過層212の内部とを透過して、各プリズム部23の反射部23aに照射される。
反射部23aは、光を反射する面で構成される。各プリズム部23の反射部23aは、当該反射部23aに照射される斜め映像光NLを、当該斜め映像光NLが示す映像を観察者7が視聴するための視聴位置P1(−Y方向)へ反射させるように構成される。
なお、フレネルレンズ230における反射部23aの位置により、当該反射部23aに斜め映像光NLが照射される角度が異なる。そのため、各反射部23aは、当該反射部23aの位置に応じて、斜め映像光NLを視聴位置P1(−Y方向)へ反射させるように構成される。すなわち、各反射部23aの配置角度は、フレネルレンズ230における当該反射部23aの位置に応じて、微妙に異なる。
なお、各反射部23aの配置角度は異なる構成としたが、これに限定されない。各反射部23aの配置角度は全て同じとする構成としてもよい。この構成の場合、各反射部23aの配置角度は、例えば、フレネルレンズ230の中央部に配置される反射部23aが、斜め映像光NLを視聴位置P1(−Y方向)へ反射させるための配置角度に設定される。
光吸収部23bは、光を吸収する部材である。
なお、凹凸層220を透過した光は、スクリーン200の表面200aから背面200bへ伝搬する。そのため、各プリズム部23には、スクリーン200の表面200aから背面200bへ伝搬する、凹凸層220を透過した様々な光が照射される。以下においては、スクリーン200の表面200aから背面200bへ伝搬する、凹凸層220を透過した様々な光を、内部透過光ともいう。
各プリズム部23の光吸収部23bは、当該光吸収部23bに照射される光を吸収する。各プリズム部23の光吸収部23bは、内部透過光のうち斜め映像光NL以外の光の少なくとも一部を吸収する。
具体的には、各プリズム部23の光吸収部23bは、当該プリズム部23に照射される内部透過光のうち、当該プリズム部23に照射される斜め映像光NL以外の光であって、かつ、当該光吸収部23bに照射される光を吸収する。すなわち、各プリズム部23の光吸収部23bは、当該プリズム部23に照射される内部透過光のうち、当該プリズム部23に照射される斜め映像光NL以外の光の少なくとも一部を吸収する。
次に、フレネルレンズ230の形成方法について説明する。フレネルレンズ230は、フレネルレンズ金型を用いて、UV硬化法により形成される。フレネルレンズ金型とは、フレネルレンズ230を形成するための平板状の金型である。
具体的には、UV硬化樹脂をフレネルレンズ金型に供給した状態で、紫外線の照射により、当該UV硬化樹脂を硬化させる。これにより、フレネルレンズ230が形成される。そして、スクリーン基材210の透過層212に、フレネルレンズ230が貼り付けられる。
そして、透過層212にフレネルレンズ230が形成されたスクリーン基材210を円筒状に曲げた状態で、アルミ蒸着を行うアルミ蒸着機に設置する。これにより、アルミが蒸着された反射部23aが形成される。
次に、アルミが蒸着された面上の一部を黒色化させる。当該黒色化には、黒色塗装、黒色印刷、黒色樹脂の充填等の工程が行われる。これにより、光吸収部23bが形成される。
以上説明したように、本実施の形態によれば、投写型映像表示装置1000は、特定方向に延在するスクリーン200と、特定方向に対して斜めの方向である斜め方向に伝搬する映像光L1をスクリーン200に向けて出射する光学エンジン100と、光学エンジン100を冷却する冷却機構54とを備えた。
したがって、スクリーン200の表面側である室内に光学エンジン100を配置することが可能となる。室内において温湿度を十分に管理することで、投写型映像表示装置1000およびマルチ画面表示装置2000において、投写型映像表示装置1000が備える冷却機構54だけで発熱部である光学エンジン100を十分に冷却することができる。
また、スクリーン200は、透光性を有する透過層211および透過層212が形成される。透過層211は、スクリーン200において、透過層211の主面211aがスクリーン200の表面200aとなるように配置される。
また、透過層211の主面211a側には、光学エンジン100が出射する斜め映像光を透過させる構造を有する凹凸層220が形成される。スクリーン200の背面200bには、斜め映像光を、視聴位置P1へ反射させる反射部23aが形成される。
これにより、光学エンジン100が出射する斜め映像光は、凹凸層220を透過する。凹凸層220を透過した斜め映像光は、透過層211および透過層212の内部を透過して、スクリーン200の背面200bへ伝搬する。
また、スクリーン200の背面200bには、斜め映像光を、視聴位置P1へ反射させる反射部23aが形成される。そのため、斜め映像光は、反射部23aにより反射して、視聴位置P1へ伝搬する。すなわち、反射部23aにより、斜め映像光を効率的に視聴位置P1へ伝搬することができる。
以上により、スクリーン200に対し斜めに映像光が入射される構成において、視聴位置に向かう映像光の光量の低下を抑制することができる。
また、本実施の形態によれば、スクリーン200は、上記のように構成される。そのため、光学エンジン100が出射した斜め映像光の大部分は、凹凸層220が有するモスアイ構造により、一定の反射防止効果を得て、スクリーン200の内部を効率良く透過する。斜め映像光は、透過層211および透過層212の内部を透過した後、フレネルレンズ230の反射部23aにより、観察者7に向けて、効率良く反射される。
そして、当該斜め映像光は、再び、凹凸層220の主面(ベース面)を透過する。これにより、斜め映像光が示す映像には、所定の視野角が付与される。その後、斜め映像光は、モスアイ構造を有する凹凸層220の界面により、一定の反射防止効果を得て、観察者7に向けて、効率良く出射される。
一方、光学エンジン100が出射した斜め映像光の一部の界面反射損失である迷光成分Lb1は、凹凸層220の主面(ベース面)により、所定の発散角を持って上方に拡散反射される。そのため、迷光成分Lb1による反射像は、天井面TJ10上に結像しにくい。その結果、迷光成分Lb1は、迷光として認識されにくいという効果がある。
また、明るい環境下においては、スクリーン200の表面層にある凹凸層220が有する微細なモスアイ構造による一定の反射防止効果により、外光の反射が抑えられる。明るい環境下とは、日中、外光照明のある環境等である。
さらに、例えば、天井照明などの上方から入射する外光が、スクリーン200の内部に透過した外光成分は、透過層211を透過することにより光量が減少する。また、当該外光成分は、透過層212を拡散透過した後、背面層のフレネルレンズ230の光吸収部23bにより、当該外光成分の大部分は吸収される。
さらに、光吸収部23bに吸収されなかった残りの外光成分は、再び、拡散剤が添加された透過層212の拡散透過作用と着色剤が添加された透過層211の減光作用とにより微弱な光となる。また、当該残りの外光成分は、凹凸層220の主面(ベース面)により、所定の発散角を持って拡散される。そのため、映像のコントラストの低下を抑制することが可能となる。
以上により、明るい環境下においても、高輝度、高コントラストおよび高解像度の映像を提供することができる。
また、本実施の形態では、上記構成により、光学エンジン100の筐体60の奥行きを小さくすることができる。そのため、筐体60による威圧感を、観察者に与えることを防ぐことができる。
なお、斜め方向に映像光の投写を行う広角投写系に、表面に凹凸のあるマットタイプのスクリーンを組み合わせて使用する構成も考えられる。しかしながら、この構成の場合、視野角が広い分、スクリーンの正面輝度は低い。また、日中の環境下、外光照明がある明るい環境下等においては、投影された映像光に外光が重なる。そのため、映像が白浮きしてコントラスト、映像の解像感等の表示品質が損なわれる。そのため、マットタイプのスクリーンを使用する場合、照明を落とした比較的暗い室内で使用せざるを得ないという問題点がある。
また、比較的表面が平滑な、アルミ反射スクリーン等の正反射型スクリーンが使用される構成の場合、以下の問題点がある。具体的には、例えば、下方に設置された広角投射系から投影される映像光は、正反射型スクリーンの正面に位置する観察者に向かわない。そのため、スクリーンの正面輝度が得られない上、上方に正反射される成分が多く、天井面に反射像が映り込むという問題点がある。
また、入射する映像光または外光のうち主に映像光を分離選択して観察者の方向に拡散反射するフレネルレンズなどの選択的反射手段を備えた表面選択反射型スクリーンを使用する構成の場合、以下の問題点がある。具体的には、複数の選択的反射手段それぞれの入射面によって投写レンズの瞳像も反射され、スクリーン上に輝線状の迷光として認識される。その結果、映像の品質を損なうという問題点があった。
また、表面は比較的平滑であり、かつ、内面にフレネルレンズなどの選択的反射手段を有した内面選択反射型スクリーンを使用する構成の場合、以下の問題点がある。具体的には、例えば、下方に設置された短焦点広角投射系から投影される映像光は主に内面の選択的反射手段により、スクリーン正面の観察者の方向に反射されるが、映像光の一部は比較的平滑な表面で正反射する成分が多い。
そのため、正反射型スクリーンと同様、天井面に反射像が映り込むという問題点がある。また、上方の天井側に短焦点広角投射系を配置した場合は、床面側に、迷光が強く映写されるという問題点がある。
そこで、本実施の形態に係る投写型映像表示装置1000は、上記のように構成される。そのため、上記の各種のスクリーンを使用した構成における問題点を解決することができる。
各投写型映像表示装置1000は、スクリーン200の背面側を支持する支持板202をさらに備え、マルチ画面表示装置2000においては、各投写型映像表示装置1000の支持板202同士が水平方向に連結されることで投写型映像表示装置1000が複数組み合わせられる。したがって、支持板202により、スクリーン200の平面性を保持した状態で大画面を構成することができる。
複数の投写型映像表示装置1000が備えるスクリーン200は、複数の投写型映像表示装置1000の全体として一体形成された単一部材であるため、映像光L1が投写されるスクリーン200の表面上に継ぎ目がなく、パノラマ状で迫力ある高品質で高コントラストな大画面を違和感なく視聴することが可能となる。
支持板202は、ガラス材料を用いて形成され、スクリーン200の背面に固定されたため、温湿度環境の変化が生じた場合にも、ガラス材料を用いて形成された支持板202に貼り付けられたスクリーン200自体が反り難くなり、画面歪みおよび部分的なフォーカスずれに起因する映像品質の劣化が起こり難くなる。
<実施の形態2>
図6は、本発明の実施の形態2に係る投写型映像表示装置1000Aの断面図である。具体的には、図6は、投写型映像表示装置1000Aを側面から視た際の、投写型映像表示装置1000Aの断面図である。
図7は、本発明の実施の形態2に係るマルチ画面表示装置2000Aの斜視図である。図8は、本発明の実施の形態2に係るマルチ画面表示装置2000Aの正面図である。
図6〜図8に示すように、投写型映像表示装置1000Aは、図1の投写型映像表示装置1000と比較して、連結部材300をさらに備える点と支持板202の材質が異なっている。投写型映像表示装置1000Aのそれ以外の構成は、投写型映像表示装置1000と同様なので詳細な説明は繰り返さない。
支持板202は、スクリーン200のスクリーン基材210と同様にアクリル樹脂系材料(樹脂材料)を用いて形成される。このため、スクリーン基材210と支持板202は、同等の線膨張係数および飽和吸水特性を有する。また、スクリーン200は、支持板202の表面にアクリル樹脂系の粘着貼合材201を介して貼り付けられる。
スクリーン200は、連結部材300により、光学エンジン100に固定されている。すなわち、スクリーン200と光学エンジン100とは、連結部材300により、一体化される。
具体的には、連結部材300は、部材310,部材320とから構成される。部材310は、板状の部材である。部材310は、スクリーン200の背面200bに貼り付けられる。部材320は、板状の部材である。部材320は、ピン70により、部材310に固定される。すなわち、部材320および部材310は、スクリーン200に固定される。
また、部材320は、ピン70により、光学エンジン100の筐体60に固定される。すなわち、部材310に固定された部材320は、光学エンジン100の筐体60に固定される。以上の構成により、スクリーン200は、連結部材300により、光学エンジン100に固定されている。
以上説明したように、本実施の形態によれば、スクリーン200は、連結部材300により、光学エンジン100に固定されている。すなわち、スクリーン200と光学エンジン100とは、連結部材300により、一体化される。
これにより、スクリーン200に対する光学エンジン100の相対位置を精度よく設定することができる。すなわち、スクリーン200および光学エンジン100の位置を精度よく設定することができる。その結果、光学エンジン100から斜め上方のスクリーン200に近接投写される映像の歪み等を、工場出荷前の調整時において、精度良く調整することができる。
また、投写型映像表示装置1000Aの設置時には、光学エンジン100とスクリーン200との相対位置が維持される。そのため、スクリーン200に投写される映像の歪みの調整に手間がかからない投写型映像表示装置1000Aを提供することが可能となる。
また、スクリーン基材210(すなわち、透過層211および透過層212)と支持板202は、同等の線膨張係数および飽和吸水特性を有する樹脂材料であるアクリル樹脂系材料を用いて形成され、支持板202は、スクリーン200の背面に固定されたため、温湿度環境の環境変化が生じた場合にも、スクリーン200と支持板202の伸縮差が生じ難い。そのため、映像光L1が投写されるスクリーン200自体が反り難くなり、画面歪みおよび部分的なフォーカスずれに起因する映像品質の劣化が起こり難くなる。
(変形例A)
なお、実施の形態1の投写型映像表示装置1000、または、実施の形態2の投写型映像表示装置1000Aにおいて、スクリーン200の代わりに以下のスクリーン200Aが使用されてもよい。スクリーン200Aのサイズおよび形状は、スクリーン200と同様である。以下、スクリーン200Aについて詳細に説明する。
図9は、変形例Aに係るスクリーン200Aの断面図である。図9を参照して、スクリーン200Aは、図4のスクリーン200と比較して、スクリーン基材210の代わりにスクリーン基材210Aを含む点が異なる。スクリーン200Aのそれ以外の構成は、スクリーン200と同様なので詳細な説明は繰り返さない。
スクリーン200Aは、スクリーン200と同様に、表面200aと、背面200bとを有する。
スクリーン基材210Aは、スクリーン基材210と比較して、透過層211の代わりに透過層211Aを含む点が異なる。スクリーン基材210Aのそれ以外の構成は、スクリーン基材210と同様なので詳細な説明は繰り返さない。
透過層211Aは、透光性を有する。スクリーン200Aは、透過層211Aおよび透過層212が貼り合わされて構成される。
具体的には、透過層211Aは、基材部211nと、樹脂シート84と、凹凸層220とを含む。
基材部211nは、透過層211と同様に、着色された層である。基材部211nは、凹凸面211sを有する。凹凸面211sは、疑似的に非周期的に見せた周期的な曲線からなる。樹脂シート84は、軟質の薄いシートである。樹脂シート84の表面には、モスアイ構造を有する凹凸層220が形成されている。凹凸層220は、前述の図5(e)の周期曲線LN4により構成される。
なお、本発明は、その発明の範囲内において、各実施の形態を自由に組み合わせたり、各実施の形態を適宜、変形、省略することが可能である。