JP6395049B2 - 物体に付着した付着物を検出する検査方法および検査装置 - Google Patents
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Description
収容体10は、紙や不透明な樹脂からなる不透明層を含んでいる。このため、可視光や赤外線は、収容体10によって反射または吸収される。すなわち、可視光や赤外線は収容体10を透過することができない。従って、収容体10の外部からは、収容体10の内部の状態を確認することができない。なお「不透明」とは、収容体10や後述する壁40などの物体に赤外線または可視光を照射した際に、赤外線または可視光が物体を全く透過しないこと、及び、赤外線または可視光が物体を透過しても、透過した赤外線または可視光をセンサによって検知できない程度の微小な透過量であることを意味する。
以下、アンテナ素子20について説明する。アンテナ素子20は、収容体10などの物体のうち目に見えない場所における環境を非破壊で確認するために物体に取り付けられるものである。図2に示すように、アンテナ素子20は、収容体10の内面10yに取り付けられた基材21と、基材21上に設けられた導電性パターン22と、を含んでいる。基材21は、第1面21aと、第1面21aの反対側に位置する第2面21bと、を含んでおり、上述の導電性パターン22は基材21の第1面21a側に設けられている。また、基材21の第2面21b側が収容体10の内面10yと対向するように、アンテナ素子20が内面10yに取り付けられている。
はじめに、収容体10に付着した付着物30を検査する検査方法を実施するための検査装置50について、図6を参照して説明する。検査装置50は、収容体10に電磁波L1を照射する照射部51と、収容体10に取り付けられたアンテナ素子20によって反射された電磁波である反射波L2の周波数特性を測定する測定部52と、測定部52によって得られた測定情報を解析する解析部53と、を備えている。なお照射部51、測定部52および解析部53は、一体的に構成されたものであってもよく、個別に構成されたものであってもよい。
照射部51としては、第1周波数f1から、第1周波数f1よりも高周波側の第2周波数f2までの成分を含む電磁波L1を、収容体10に向けて放射可能なものが用いられる。第1周波数f1および第2周波数f2はいずれも、0.1THz〜3THzの範囲内、すなわちテラヘルツ波の帯域内になっている。なお、アンテナ素子20からの反射波L2に現れるピーク波形のピーク周波数を特定することができる限りにおいて、照射部51から放射される電磁波L1は、第1周波数f1から第2周波数f2までの成分を連続的に含んでいてもよく、若しくは第1周波数f1から第2周波数f2までの成分を断続的に含んでいてもよい。
なお非線形光学結晶とは、レーザー光などの強い光が入射した場合に、非線形の、すなわち光の電磁場に比例しない応答をする結晶のことである。また非線形光学効果とは、非線形の、すなわち光の電磁場に比例しない応答のことである。上述の光パラメトリックや差周波混合は、非線形光学効果の一種である。
測定部52としては、アンテナ素子20の導電性パターン22によって反射された反射波L2の強度を周波数ごとに測定して反射波L2の周波数特性を得ることができるものが用いられる。例えば測定部52として、スペクトルアナライザが用いられる。
次に、検査装置50を用いて収容体10に付着した付着物30を検査する検査方法について説明する。
はじめに、照射部51を用いて、収容体10に電磁波L1を照射する照射工程を実施する。ここでは、図7に示すように、アンテナ素子20の導電性パターン22の一部に付着物30が重なっている場合について説明する。上述のように、電磁波Lとして0.1THz〜3THzの周波数範囲のテラヘルツ波が用いられるので、電磁波Lは、収容体10を透過してアンテナ素子20に到達することができる。
次に、測定部52を用いて、収容体10に取り付けられたアンテナ素子20によって反射された反射波L2の周波数特性を測定する測定工程を実施する。図8は、周波数特性の測定結果を示す図である。図8においては、図7に示すようにアンテナ素子20の導電性パターン22の一部に付着物30が重なっている場合に、アンテナ素子20から得られる反射波L2の周波数特性に現れるピーク波形が、符号Smで表されている。また、ピーク波形Smのピーク周波数が符号fmで表されている。また図8において、上述のピーク波形Sr_0,Sr_1が参考のためそれぞれ点線で示されている。図8に示すように、ピーク波形Smは、重なり率が0の場合のピーク波形Sr_0と、重なり率が1の場合のピーク波形Sr_1との間に位置している。
次に、解析部53を用いて、測定工程によって得られた測定情報を解析する解析する解析工程を実施する。ピーク波形Smは、アンテナ素子20の導電性パターン22を構成する導電性材料の導電率および導電性パターン22に設けられた隙間25に基づいて、反射波L2の周波数特性に現れるものである。解析部53を用いた解析工程においては、このピーク波形Smのピーク周波数fmが、導電性パターン22に重なる付着物30の存在に応じて変化することに基づいて、付着物30が検出される。例えば、測定工程において得られたピーク波形Smが、重なり率が0の場合の上述の参照用ピーク波形Sr_0よりも低周波側に位置することに基づいて、アンテナ素子20の導電性パターン22に少なくとも部分的に付着物30が重なっているということを知ることができる。
重なり率が0の場合の上述の参照用ピーク波形Sr_0の参照用ピーク周波数fr_0、および重なり率が1の場合の上述の参照用ピーク波形Sr_1の参照用ピーク周波数fr_1が、0.1THz〜3THzの範囲内に存在する限りにおいて、アンテナ素子20の導電性パターン22の具体的な形状が特に限られることはない。以下、導電性パターン22のいくつかの変形例について説明する。
上述の本実施の形態においては、アンテナ素子20の導電性パターン22が付着物30に直接的に接触する例を示した。しかしながら、図12に示すように、アンテナ素子20が、導電性パターン22を覆うよう設けられたオーバーコート層28をさらに含み、このオーバーコート層28に付着物30が接触するようになっていてもよい。この場合であっても、基材21の法線方向に沿って見た場合に付着物30が導電性パターン22に重なる場合、付着物30の影響によって反射波L2のピーク波形やピーク周波数が変化する。このため、付着物30に関する情報を得ることが可能である。
上述の本実施の形態においては、アンテナ素子20が取り付けられる物体が、所定の収容物を収容することができる収容体10である例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、図13に示すように、アンテナ素子20は、不透明な壁40に取り付けられていてもよい。図13においては、アンテナ素子20が、部屋などを区画するための一対の壁40の外面40x以外の場所、具体的には壁40の内面40yに取り付けられる例が示されている。なお外面40xとは、壁40によって区画される部屋の側を向いている面である。また内面40yとは、壁40によって2つの部屋を区画するために2つの部屋の間に設けられる一対の壁40の間の空間に接する面である。なお図示はしないが、壁40の外面40xは壁紙によって構成されていてもよい。
収容体10や壁40などの物体には、複数のアンテナ素子20が取り付けられていてもよい。例えば図14に示すように、導電性パターン22を含む複数のアンテナ素子20が規則的に配置されていてもよい。これによって、物体に付着している付着物30に関する情報を、より広域にわたって得ることができるようになる。
(例1)
d1=40μm、d2=20μm、d3=35μm、s=10μm、d4=35μm、d5=20μm、d6=40μm、d7=20μm、d8=20μm、d9=20μm
(例2)
d1=40μm、d2=20μm、d3=25μm、s=30μm、d4=25μm、d5=20μm、d6=40μm、d7=20μm、d8=20μm、d9=20μm
(例3)
d1=40μm、d2=20μm、d3=15μm、s=50μm、d4=15μm、d5=20μm、d6=40μm、d7=20μm、d8=20μm、d9=20μm
(例4)
d1=40μm、d2=20μm、d3=35μm、s=10μm、d4=35μm、d5=20μm、d6=40μm、d8=20μm
(例5)
d1=40μm、d2=20μm、d3=25μm、s=30μm、d4=25μm、d5=20μm、d6=40μm、d8=20μm
(例6)
d1=40μm、d2=20μm、d3=15μm、s=50μm、d4=15μm、d5=20μm、d6=40μm、d8=20μm
アンテナ素子20は、上述の特許文献2に開示されている周期的構造体とは異なり、複数のアンテナ素子20の配置の形態がピーク波形やピーク周波数に影響を及ぼすタイプのものではない。従って、複数のアンテナ素子20が不規則に配置されている場合であっても、各アンテナ素子20に電磁波L1を順に照射して反射波L2を測定することにより、物体に付着している付着物30の位置の分布に関する情報を精度良く得ることができる。
また上述の本実施の形態および各変形例においては、導電性パターン22が基材21上に設けられる例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、導電性パターン22が収容体10や壁40などの物体の面上に直接的に設けられていてもよい。すなわち、「アンテナ素子20を物体に取り付ける」とは、導電性パターン22が設けられた基材21を物体に取り付けるという形態だけでなく、導電性パターン22を直接的に物体の面上に形成する形態をも含む概念である。
アンテナ素子20に電磁波L1を照射した場合に得られる反射波L2の周波数特性を、シミュレーションにより算出した。シミュレーションにおいて、アンテナ素子20の基材21としては、紙基材を用いた。また、基材21の第1面21a上に設けられる導電性パターン22としては、上述の図3Aに示す、一対の第1要素23A,23Bおよび一対の第2要素24A,24Bを含む導電性パターン22を用いた。導電性パターン22を構成する導電性材料は、厚み0.2μmの完全導体に設定した。基材21の幅w1およびw2はそれぞれ200μmに設定した。一対の第1要素23A,23Bの間の隙間25の、第1方向D1における寸法sは、10μmに設定した。また、第1方向D1における一対の第2要素24A,24Bの幅tは、20μmに設定した。
一対の第1要素23A,23Bの間の隙間25の、第1方向D1における隙間25の寸法sを、10μm、30μmまたは50μmの3通りに設定し、また第2方向D2における一対の第2要素24A,24Bの長さを200μmに設定したこと以外は、上述の実施例1の場合と同様にして、重なり率が0の場合に得られる反射波L2をシミュレーションにより算出した。結果を図19に示す。隙間25の寸法sが10μm、30μmおよび50μmの場合に得られる反射波L2のピーク波形のピーク周波数は、それぞれ約0.82THz、約0.95THzおよび約1.03THzであった。
基材21の幅w1およびw2をそれぞれ2000μmに設定し、隙間25の寸法sを300μmに設定し、一対の第2要素24A,24Bの幅tを200μmに設定したこと以外は、上述の実施例1の場合と同様にして、重なり率が0の場合に得られる反射波L2をシミュレーションにより算出した。結果を図20に示す。比較例1においては、反射波L2のピーク波形のピーク周波数が、約0.095THzであった。すなわち、ピーク波形が0.1THz〜3THzの範囲内に現れなかった。
20 アンテナ素子
21 基材
22 導電性パターン
23 第1要素
24 第2要素
25 隙間
28 オーバーコート層
30 付着物
40 壁
50 検査装置
51 照射部
52 測定部
53 解析部
Claims (14)
- 物体に電磁波を照射して、物体に付着した付着物を検出する検査方法であって、
前記物体には、隙間を空けて設けられた導電性パターンを含むアンテナ素子が取り付けられており、
前記検査方法は、
前記物体に前記電磁波を照射する照射工程と、
前記物体に取り付けられた前記アンテナ素子によって反射された前記電磁波である反射波の周波数特性を測定する測定工程と、
前記測定工程によって得られた測定情報を解析する解析する解析工程と、を備え、
前記物体に照射される前記電磁波は、第1周波数から、前記第1周波数よりも高周波側の第2周波数までの成分を、連続的または断続的に含み、
前記第1周波数および前記第2周波数はいずれも、0.1THz〜3THzの範囲内であり、
前記解析工程においては、前記アンテナ素子の前記導電性パターンを構成する導電性材料の導電率および前記導電性パターンに設けられた前記隙間に基づいて前記反射波の周波数特性に現れるピーク波形のピーク周波数が、前記アンテナ素子に重なる前記付着物の存在に応じて変化することに基づいて、前記付着物が検出される、検査方法。 - 前記アンテナ素子の前記導電性パターンの一定の部分または全部に前記付着物が重なっている場合に、前記アンテナ素子によって反射された前記電磁波の周波数特性に現れるピーク波形のピーク周波数が、参照用ピーク周波数として予め取得されており、
前記解析工程においては、前記測定工程において測定された前記反射波の周波数特性に現れる前記ピーク波形の前記ピーク周波数と、前記参照用ピーク周波数とを比較することにより、前記アンテナ素子の前記導電性パターンのうち前記付着物に重なっている部分の比率が算出される、請求項1に記載の検査方法。 - 前記物体には、複数の前記アンテナ素子が取り付けられており、
各アンテナ素子は、隣接する2つの前記アンテナ素子のうちの一方の前記アンテナ素子によって反射された前記電磁波の前記ピーク周波数が、他方の前記アンテナ素子の影響を受けないよう、配置されている、請求項1または2に記載の検査方法。 - 前記アンテナ素子の前記導電性パターンは、前記隙間を空けて配置された一対の第1要素と、前記一対の第1要素にそれぞれ接続された一対の第2要素と、を含み、
前記一対の第2要素は、前記一対の第1要素が延びる方向とは異なる方向に延び、かつ、前記一対の第2要素の間の距離が前記隙間よりも大きくなるよう、構成されている、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の検査方法。 - 検出される前記付着物は、水である、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の検査方法。
- 前記物体は、紙又は不透明な樹脂で形成された収容体であり、
前記アンテナ素子は、前記収容体の外面以外の場所に取り付けられている、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の検査方法。 - 前記物体は、不透明な壁であり、
前記アンテナ素子は、前記壁の外面以外の場所に取り付けられている、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の検査方法。 - 物体に電磁波を照射して、物体に付着した付着物を検出する検査装置であって、
前記物体には、隙間を空けて設けられた導電性パターンを含むアンテナ素子が取り付けられており、
前記検査装置は、
前記物体に前記電磁波を照射する照射部と、
前記物体に取り付けられた前記アンテナ素子によって反射された前記電磁波である反射波の周波数特性を測定する測定部と、
前記測定部によって得られた測定情報を解析する解析する解析部と、を備え、
前記物体に照射される前記電磁波は、第1周波数から、前記第1周波数よりも高周波側の第2周波数までの成分を、連続的または断続的に含み、
前記第1周波数および前記第2周波数はいずれも、0.1THz〜3THzの範囲内であり、
前記解析部においては、前記アンテナ素子の前記導電性パターンを構成する導電性材料の導電率および前記導電性パターンに設けられた前記隙間に基づいて前記反射波の周波数特性に現れるピーク波形のピーク周波数が、前記アンテナ素子に重なる前記付着物の存在に応じて変化することに基づいて、前記付着物が検出される、検査装置。 - 前記アンテナ素子の前記導電性パターンの一定の部分または全部に前記付着物が重なっている場合に、前記アンテナ素子によって反射された前記電磁波の周波数特性に現れるピーク波形のピーク周波数が、参照用ピーク周波数として予め取得されており、
前記解析部においては、前記測定部において測定された前記反射波の周波数特性に現れる前記ピーク波形の前記ピーク周波数と、前記参照用ピーク周波数とを比較することにより、前記アンテナ素子の前記導電性パターンのうち前記付着物に重なっている部分の比率が算出される、請求項8に記載の検査装置。 - 前記物体には、複数の前記アンテナ素子が取り付けられており、
各アンテナ素子は、隣接する2つの前記アンテナ素子のうちの一方の前記アンテナ素子によって反射された前記電磁波の前記ピーク周波数が、他方の前記アンテナ素子の影響を受けないよう、配置されている、請求項8または9に記載の検査装置。 - 前記アンテナ素子の前記導電性パターンは、前記隙間を空けて配置された一対の第1要素と、前記一対の第1要素にそれぞれ接続された一対の第2要素と、を含み、
前記一対の第2要素は、前記一対の第1要素が延びる方向とは異なる方向に延び、かつ、前記一対の第2要素の間の距離が前記隙間よりも大きくなるよう、構成されている、請求項8乃至10のいずれか一項に記載の検査装置。 - 検出される前記付着物は、水である、請求項8乃至11のいずれか一項に記載の検査装置。
- 前記物体は、紙又は不透明な樹脂で形成された収容体であり、
前記アンテナ素子は、前記収容体の外面以外の場所に取り付けられている、請求項8乃至12のいずれか一項に記載の検査装置。 - 前記物体は、不透明な壁であり、
前記アンテナ素子は、前記壁の外面以外の場所に取り付けられている、請求項8乃至12のいずれか一項に記載の検査装置。
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