JP6393368B2 - 腸構造体を分化誘導する方法 - Google Patents

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Description

本発明は、パターン培養用基材を用いて腸構造体を分化誘導する方法に関する。
近年、細胞移植に基づく再生医療が臓器移植に代替する治療法として注目を集めつつある。胚性幹細胞(ES細胞)は多能性及び無限増殖性を有しているため、再生医療に必要とされる細胞を調製するための細胞ソースとして期待されている。また近年ES細胞に相応する性質を備えた人工多能性幹細胞(iPS細胞)が成人の体細胞から調製可能であることが示され、これらの細胞の臨床応用への期待はますます高まってきている。そして、再生医療技術の発展に伴い、これらの幹細胞から短期間で目的細胞に分化誘導させる技術の確立が必須となっている。
通常、分化誘導は、様々な因子を液体培地中に添加することで行われている。非特許文献1に示されているように、因子の種類や組み合わせ、それらを添加するタイミングや期間などは多岐に渡る。これら液性因子は高価であり、培養中、継続的に分化誘導シグナルを細胞に送る為には培地交換のたびに添加せねばならず、かつ分化に数週間を要するという課題があった。
非特許文献2は、ヒト多能性幹細胞から腸構造体を作製できることを報告しているが、培養の際に液性因子であるActivinA、FGF4、Wnt3a、R−spondin1、Noggin、EGFを異なるタイミングで添加している。
Human embryonic and rat adult stem cells with primitive endoderm-like phenotype can be fated to definitive endoderm, and finally hepatocyte-like cells. PloS One 2010 Aug 11;5(8) Directed differentiation of human pluripotent stem cells into intestinal tissue in vitro. Nature 2011 February 3; 470(7332): 105-109.
本発明は、効率良くかつ安定的に、液性因子を用いることなく、腸構造体を分化誘導するための手法を提供することを目的とする。
本発明者らは、基材上にポリエチレングリコールを固定化し、部分的に酸化及び/又は分解処理を施して細胞接着性とした細胞培養基材であって、細胞接着領域が一定の面積範囲を有するものを用い、その細胞接着領域に胚性幹細胞及び/又は人工多能性幹細胞を接着させて培養することにより、腸構造体を分化誘導できることを見出した。
すなわち、本発明は以下を包含する。
(1)胚性幹細胞及び/又は人工多能性幹細胞から腸構造体を作製する方法であって、
基材と、基材上に形成された複数の隔離された細胞接着領域及び各細胞接着領域を囲む細胞非接着領域とを備える細胞培養基材を準備する工程、
胚性幹細胞及び/又は人工多能性幹細胞を、細胞培養基材に対し播種する工程、及び
播種した胚性幹細胞及び/又は人工多能性幹細胞を培地中で培養する工程、
を含み、
細胞培養基材の細胞非接着領域が、ポリエチレングリコールが基材上に固定化されて形成されたものであり、細胞接着領域が基材上に固定化されたポリエチレングリコールの少なくとも一部が酸化及び/又は分解されて形成されたものであり、各細胞接着領域の面積が0.785mmより大きい、前記方法。
(2)細胞接着領域が、直径1.2mm〜6mmの円形の形状で形成されている、(1)記載の方法。
(3)胚性幹細胞及び/又は人工多能性幹細胞を播種後60日以上培養する、(1)又は(2)記載の方法。
(4)細胞接着領域が、基材上に固定化されたポリエチレングリコールが紫外線照射により酸化されて形成されたものである、(1)〜(3)のいずれかに記載の方法。
本発明によれば、効率良くかつ安定的に、液性因子を用いることなく、腸構造体を分化誘導することが可能となる。
直径2.0mmの円形の細胞接着領域のパターンを有する細胞培養基材に、フィーダー細胞とMRC5iPS細胞とを播種して60日間培養後、その切片を免疫染色した結果を示す写真である。 直径2.0mmの円形の細胞接着領域のパターンを有する細胞培養基材に、フィーダー細胞とEdomiPS細胞とを播種して60日間培養後に観察された袋状の構造体を示す写真である。
本発明の腸構造体の作製方法は、基材と、基材上に形成された複数の隔離された細胞接着領域(細胞接着性の領域)及び各細胞接着領域を囲む細胞非接着領域(細胞非接着性の領域)とを備える細胞培養基材を用いることを特徴とする。
本発明において「細胞接着性」とは、細胞を接着する強度、すなわち細胞の接着しやすさを意味する。細胞接着領域とは、細胞接着性が良好な領域を意味し、細胞非接着領域とは、細胞の接着性が悪い領域を意味する。従って、細胞接着領域と細胞非接着領域とがパターン化された基材上に細胞を播くと、細胞接着領域には細胞が接着するが、細胞非接着領域には細胞が接着しないため、細胞培養基材表面には細胞がパターン状に配列されることになる。
細胞接着性を判断する指標として、実際に細胞培養した際の細胞接着伸展率を用いることができる。細胞接着性の表面は、細胞接着伸展率が60%以上の表面であることが好ましく、細胞接着伸展率が80%以上の表面であることが更に好ましい。細胞接着伸展率が高いと、効率的に細胞を培養することができる。本発明における細胞接着伸展率は、播種密度が4000cells/cm以上30000cells/cm未満の範囲内で培養しようとする細胞を測定対象表面に播種し、37℃、CO濃度5%のインキュベータ内に保管し、14.5時間培養した時点で接着伸展している細胞の割合({(接着している細胞数)/(播種した細胞数)}×100(%))と定義する。
細胞の播種は、10%FBS入りDMEM培地に懸濁させて測定対象物上に播種し、その後、細胞ができるだけ均一に分布するよう、細胞が播種された測定対象物をゆっくりと振とうすることにより行うものである。さらに、細胞接着伸展率の測定は、測定直前に培地交換を行って接着していない細胞を除去した後に行う。細胞接着伸展率の測定では、細胞の存在密度が特異的になりやすい箇所(例えば、存在密度が高くなりやすい所定領域の中央、存在密度が低くなりやすい所定領域の周縁)を除いた箇所を測定箇所とする。
一方、細胞非接着性とは、細胞が接着しにくい性質をいう。細胞非接着性は、表面の化学的性質や物理的性質等によって細胞の接着や伸展が起こりにくいか否かで決定される。細胞非接着性の表面は、上記で定義した細胞接着伸展率が60%未満の表面であることが好ましく、40%未満の表面であることがより好ましく、5%以下の表面であることが更に好ましく、2%以下の表面であることが最も好ましい。
本発明で用いる細胞培養基材は、細胞非接着領域が、ポリエチレングリコールが基材上に固定化されて形成されたものであり、細胞接着領域が基材上に固定化されたポリエチレングリコールの少なくとも一部が酸化及び/又は分解されて形成されたものである。このような細胞培養基材は、例えば、基材の表面全体にポリエチレングリコール(PEG)の薄膜を形成し、次いで、細胞の接着が望まれる領域に対して酸化処理及び/又は分解処理を施して細胞接着性を付与することにより製造できる。前記処理を施さない部分はPEGが固定化された細胞非接着領域である。
ポリエチレングリコール(PEG)は、1つ以上のエチレングリコール単位((CH−O)からなるエチレングリコール鎖(EG鎖)を少なくとも含むが、直鎖状でも分岐鎖状でもよい。エチレングリコール鎖は、例えば、次式:
−((CH−O)
(mは重合度を示す整数である)
で表される構造を指す。mは、好ましくは1〜13の整数であり、より好ましくは1〜10の整数である。
PEGにはエチレングリコールオリゴマーも包含される。また、PEGには、官能基が導入されたものも包含される。官能基としては、例えば、エポキシ基、カルボキシル基、N−ハイドロキシスクシイミド基、カルボジイミド基、アミノ基、グルタルアルデヒド基、(メタ)アクリロイル基等が挙げられる。官能基は、場合によりリンカーを介して、好ましくは末端に導入されたものである。官能基が導入されたPEGとして、例えば、PEG(メタ)アクリレート、PEGジ(メタ)アクリレートが挙げられる。
細胞培養基材に用いられる基材としては、その表面にPEG薄膜を形成することが可能な材料で形成されたものであれば特に限定されるものではない。具体的には、金属、ガラス、セラミック、シリコン等の無機材料、エラストマー、プラスチック(例えば、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ABS樹脂、ナイロン、アクリル樹脂、フッ素樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、メチルペンテン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、塩化ビニル樹脂)で代表される有機材料を挙げることができる。その形状も限定されず、例えば、平板、平膜、フィルム、多孔質膜等の平坦な形状や、シリンダ、スタンプ、マルチウェルプレート、マイクロ流路等の立体的な形状が挙げられる。フィルムを使用する場合、その厚さは特に制限されないが、通常0.1〜1000μm、好ましくは1〜500μm、より好ましくは10〜200μmである。
基材上に形成されるPEG薄膜の平均厚さは、0.8nm〜500μmが好ましく、0.8nm〜100μmがより好ましく、1nm〜10μmがさらに好ましく、1.5nm〜1μmが最も好ましい。平均厚さが0.8nm以上であれば、タンパク質の吸着や細胞の接着において、基材表面のPEG薄膜で覆われていない領域の影響を受けにくいため好ましい。また、平均厚さが500μm以下であればコーティングが比較的容易である。さらに、PEG薄膜の厚みを一定以上とすることで、細胞非接着性が低下して、細胞が細胞接着領域以外の領域まで接着伸展するのを抑制できる。またPEG薄膜の厚みを一定以下とすることで、培養液中に含まれる細胞生存に必要な因子を、細胞接着領域内の基材に近い細胞にもゆきわたらせることができる。
基材表面へのPEG薄膜の形成方法としては、基材へPEGを直接吸着させる方法、基材へPEGを直接コーティングする方法、基材へPEGをコーティングした後に架橋処理を施す方法、基材との密着性を高めるために基材上に下地層を形成し、次いでPEGをコーティングする方法、基材表面に重合開始点を形成し、次いでPEGを重合する方法等を挙げることができる。基材上に下地層を形成し、次いでPEGをコーティングする方法が好ましい。
下地層は、例えば、特開2012−175983に記載の方法により形成することができ、好ましくはPEG末端のヒドロキシル基又は導入された官能基と反応して共有結合を形成することができる官能基、あるいは、そのような官能基に変換可能な官能基を有するシランカップリング剤を用いて形成できる。そのような官能基としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、(1H−イミダゾール−1−イル)カルボニル基、スクシンイミジルオキシカルボニル基、グリシジル基、エポキシ基、アルデヒド基、アミノ基、チオール基、カルボキシル基、アジド基、シアノ基、活性エステル基(1H−ベンゾトリアゾール−1−イルオキシカルボニル基、ペンタフルオロフェニルオキシカルボニル基、パラニトロフェニルオキシカルボニル基等)、ハロゲン化カルボニル基、イソシアネート基、マレイミド基等が挙げられ、なかでも(メタ)アクリロイル基、グリシジル基又はエポキシ基が好ましい。
例えば、メタクリロイル基を末端に有するシランカップリング剤(メタクリロイルシラン)を例にとると、メタクリロイルシランを付加した基材表面の水接触角は、典型的には45°以上、望ましくは47°以上、より望ましくは48°以上、さらにより望ましくは50°以上である。それにより、次にPEGを固定化することによって十分な細胞非接着領域を形成することができる。
基材上に固定化されるPEGの密度及び細胞非接着性は、表面における水の接触角を指標として簡便に評価することができる。例えば、PEG固定化後の表面の水接触角が典型的には48°以下、好ましくは40°以下、より好ましくは30°以下であれば、PEGが十分な密度で存在し、細胞非接着性と考えられる。なお、本発明において水接触角とは、23℃において測定される水接触角をさす。
本発明において「酸化」とは狭義の意味であり、有機化合物、すなわちPEGが酸素と反応して酸素の含有量が反応以前よりも多くなる反応を意味する。本発明において「分解」とは有機化合物、すなわちPEGの結合が切断される反応を指す。「分解」としては典型的には、酸化による分解、紫外線照射による分解などが挙げられるがこれらには限定されない。「分解」が酸化を伴う分解(つまり酸化分解)である場合、「分解」と「酸化」とは同一の処理を指す。
紫外線照射による分解は、PEGが紫外線を吸収し、励起状態を経て分解することを指す。なお、PEGが、酸素を含む分子種(酸素、水など)とともに存在している系中に紫外線を照射すると、紫外線がPEGに吸収されて分解が起こる以外に、該分子種が活性化してPEGと反応する場合がある。後者の反応は「酸化」に分類できる。そして活性化された分子種による酸化によりPEGが分解する反応は、「紫外線照射による分解」ではなく「酸化による分解」に分類できる。以上のように「酸化」と「分解」は操作としては重複する場合があり、両者を明確に区別することはできない。そこで本明細書では「酸化及び/又は分解」という用語を使用する。
酸化及び/又は分解の方法としては、PEG薄膜を紫外線照射処理する方法、光触媒処理する方法、酸化剤で処理する方法などが挙げられる。PEG薄膜を部分的に酸化及び/又は分解する場合は、フォトマスクやステンシルマスク等のマスクを用いたり、スタンプを用いたりするとよい。また、紫外線レーザ等のレーザを用いた方式等の直描方式で酸化及び/又は分解してもよい。
紫外線照射処理の場合は、波長185nmや254nmの紫外線を出す水銀ランプや波長172nmの紫外線を出すエキシマランプなどのVUV領域からUV−C領域の紫外線を出すランプを光源として用いることが好ましい。光触媒処理する場合は、波長365nm以下の紫外線を出す光源を用いることが好ましく、波長254nm以下の紫外線を出す光源を用いることがより好ましい。光触媒としては、酸化チタン光触媒、金属イオンや金属コロイドで活性化された酸化チタン光触媒を用いるのが好ましい。酸化剤としては、有機酸や無機酸を特に制限なく用いることができるが、高濃度の酸は取り扱いが難しいので、10%以下の濃度に希釈して用いると良い。最適な紫外線処理時間、光触媒処理時間、酸化剤処理時間は、用いる光源の紫外線強度、光触媒の活性、酸化剤の酸化力や濃度などの諸条件に応じて適宜決定することができる。
細胞接着領域(下地層が存在する場合には下地層も含む)の炭素量は、細胞非接着領域(下地層が存在する場合には下地層も含む)の炭素量と比較して低いことが好ましい。具体的には、細胞接着領域の炭素量が、細胞非接着領域の炭素量に対して20〜99%であることが好ましい。また、細胞接着領域(下地層が存在する場合には下地層も含む)における炭素のうちで酸素と結合している炭素の割合(%)の値は、細胞非接着領域(下地層が存在する場合には下地層も含む)における炭素のうちで酸素と結合している炭素の割合(%)の値に対して小さい値であることが好ましい。具体的には、細胞接着領域における炭素のうちで酸素と結合している炭素の割合(%)の値が、細胞非接着領域における炭素のうちで酸素と結合している炭素の割合(%)の値に対して35〜99%であることが好ましい。パターニング時の紫外線露光量の増加に伴い、細胞接着性が増加するが、細胞回収時に接着性が高いと細胞が剥がれにくくなり、回収が困難になるからである。
本発明において、「炭素量」は、「X線光電子分光装置を用いて得られるC1sピークの解析値から求められる炭素量」と定義され、「酸素と結合している炭素の割合」は、「X線光電子分光装置を用いて得られるC1sピークの解析値から求められる酸素と結合している炭素の割合」と定義される。
本発明で用いる細胞培養基材においては、各細胞接着領域の面積は0.785mmより大きく、好ましくは1.0mm以上、より好ましくは1.2mm以上、さらに好ましくは1.5mm以上、最も好ましくは1.7mm以上であり、好ましくは25mm以下、より好ましくは15mm以下、さらに好ましくは10mm以下、最も好ましくは5mm以下の範囲となるようパターン形成されている。胚性幹細胞及び/又は人工多能性幹細胞を0.785mmより大きい面積を有する細胞接着領域に接着させて培養することにより、細胞が剥離することなく、細胞を接着させたまま培養することができ、腸構造体への分化誘導を促進できる。また、胚性幹細胞及び/又は人工多能性幹細胞を25mm以下の面積を有する細胞接着領域に接着させて培養することにより、腸構造体への分化を効果的に誘導することができる。
各細胞接着領域の形状は特に制限されないが、四角形を初めとする多角形、円形、楕円形等であることができる。円形のものが好ましく、直径が1.0mmより大きく、好ましくは1.2mm以上、より好ましくは1.5mm以上であり、好ましくは6mm以下、より好ましくは4mm以下、さらに好ましくは3mm以下、さらに好ましくは2mm以下の円形が好ましい。1つの細胞培養基材において、複数存在する細胞接着領域は、いずれも同じ面積を有することが好ましく、同じ面積と形状を有することがさらに好ましいが、異なる面積や形状が混在していてもよい。
また、細胞培養基材において、各細胞接着領域は、細胞非接着領域に囲まれており、すなわち互いに隔離されており、好ましくは0.75mm以上、より好ましくは1.5mm以上互いに離れて配置されている。すなわち、細胞接着領域間の最短距離(円の場合、二つの円の中心間の距離が、各半径の合計に上記値を加えた値となる)が好ましくは0.75mm以上、より好ましくは1.5mm以上となるように配置される。各細胞接着領域を一定距離以上隔離することにより、各細胞接着領域内の細胞が他の細胞接着領域の細胞と細胞間結合を形成することなく均一に一定間隔で培養され、再現性の高い実験系を構築できる。
細胞培養基材における細胞接着領域の割合は、通常5〜80%、好ましくは20〜470%、より好ましくは40〜60%である。なお、この割合は、基材をディッシュ等に配置する場合でも、ディッシュの底面は含めずに基材全体に対する細胞接着領域の割合とする。培養液に対する細胞の量を一定以上とすることで細胞の死滅を防止でき、一定以下とすることで生存に必要な因子の枯渇とそれによる細胞へのダメージを防止できる。
また、各細胞接着領域は、規則的に一定の間隔で、例えば格子状に、縦横同じピッチで配置されていることが好ましい。各細胞接着領域の細胞からの産生物質によるパラクライン効果を一定にすることで、分化に与える影響を一定にすることができる。
例えば、円形の細胞接着領域を複数有するパターンは、複数の円形の開口部を有するフォトマスクを用い、PEG薄膜が形成されたガラス基板とフォトマスクを対向するように配置し、フォトマスクの側から紫外線を照射し、PEG薄膜においてフォトマスクの開口部に相当する領域を酸化処理することにより形成することができる。
本発明で用いる細胞培養基材は、胚性幹細胞(ES細胞)及び/又は人工多能性幹細胞(iPS細胞)の細胞接着領域への接着を促進する目的で、プレコート処理されていることが好ましい。プレコート処理は、細胞外マトリックス(コラーゲン、フィブロネクチン、プロテオグリカン、ラミニン、ビトロネクチン)、ゼラチン、リジン、ペプチド、それらを含むゲル状マトリックス、血清等で細胞培養基材をコーティングすることにより実施できる。プレコート処理を実施することにより、接着性の低いES細胞やiPS細胞の細胞接着領域への接着を促進でき、細胞の接着培養及び分化誘導を効果的に実施できる。
同様に、ES細胞やiPS細胞の細胞接着領域への接着を促進する目的で、ES細胞やiPS細胞の播種前にフィーダー細胞を播種して24時間程度培養し、フィーダー細胞上でES細胞やiPS細胞の培養を実施することが好ましい。フィーダー細胞としては、当技術分野で通常用いられるものを使用でき、特に制限されないが、例えば、線維芽細胞等が挙げられる。フィーダー細胞は、細胞培養基材に対し1.26×10cells/cm未満の密度、好ましくは6.3×10cells/cm以下の密度で、好ましくは3.15×10cells/cm以上の密度で播種する。
本発明においては、プレコート処理とフィーダー細胞の播種を双方実施してもよく、プレコート処理のみを行ってもよく、又はプレコート処理を行わずフィーダー細胞の播種のみを行ってもよいが、好ましくはプレコート処理とフィーダー細胞の播種のいずれかを実施する。
本発明においては、細胞培養基材に、胚性幹細胞(ES細胞)のみを播種してもよく、人工多能性幹細胞(iPS細胞)のみを播種してもよく、双方を播種してもよいが、好ましくはいずれかを播種する。
本発明において使用される胚性幹細胞(ES細胞)は、好ましくは哺乳動物由来のES細胞であり、例えば、マウスなどのげっ歯類又はヒトなどの霊長類由来のES細胞などを使用することができる。特に好ましくは、マウス又はヒト由来のES細胞を使用する。ES細胞は、動物の発生初期段階である胚盤胞期の胚の一部に属する内部細胞塊より作られる幹細胞株をさし、生体外にて、理論上すべての組織に分化する分化多能性を保ちつつ、ほぼ無限に増殖させることができる。ES細胞としては、例えば、その分化の程度の確認を容易とするために、Pdx1遺伝子付近にレポーター遺伝子を導入した細胞を用いることができる。例えば、Pdx1座にLacZ遺伝子を組み込んだ129/Sv由来ES細胞株又は、Pdx1プロモーター制御下のGFPレポータートランスジーンをもつES細胞SK7株などを使用することができる。あるいは、Hnf3β内胚葉特異的エンハンサー断片制御下のmRFP1レポータートランスジーン及びPdx1プロモーター制御下のGFPレポータートランスジーンを有するES細胞PH3株を使用することもできる。
本発明において使用される人工多能性幹細胞(iPS細胞)は、体細胞を初期化することによって得られる多能性を有する細胞である。人工多能性幹細胞の作製は、京都大学の山中伸弥教授らのグループ、マサチューセッツ工科大学のルドルフ・ヤニッシュ(Rudolf Jaenisch)らのグループ、ウイスコンシン大学のジェームス・トムソン(James Thomson)らのグループ、ハーバード大学のコンラッド・ホッケドリンガー(Konrad Hochedlinger)らのグループなどを含む複数のグループが成功している。例えば、国際公開WO2007/069666号公報には、Octファミリー遺伝子、Klfファミリー遺伝子及びMycファミリー遺伝子の遺伝子産物を含む体細胞の核初期化因子、並びにOctファミリー遺伝子、Klfファミリー遺伝子、Soxファミリー遺伝子及びMycファミリー遺伝子の遺伝子産物を含む体細胞の核初期化因子が記載されており、さらに体細胞に上記核初期化因子を接触させる工程を含む、体細胞の核初期化により誘導多能性幹細胞を製造する方法が記載されている。
ここで用いる体細胞の種類は特に限定されず、任意の体細胞を用いることができる。即ち、本発明で言う体細胞とは、生体を構成する細胞の内生殖細胞以外の全ての細胞を包含し、分化した体細胞でもよいし、未分化の幹細胞でもよい。体細胞の由来は、哺乳動物、鳥類、魚類、爬虫類、両生類の何れでもよく特に限定されないが、好ましくは哺乳動物(例えば、マウスなどのげっ歯類、又はヒトなどの霊長類)であり、特に好ましくはマウス又はヒトである。また、ヒトの体細胞を用いる場合、胎児、新生児又は成人の何れの体細胞を用いてもよい。体細胞の具体例としては、例えば、線維芽細胞(例えば、皮膚線維芽細胞)、上皮細胞(例えば、胃上皮細胞、肝上皮細胞、肺胞上皮細胞)、内皮細胞(例えば血管、リンパ管)、神経細胞(例えば、ニューロン、グリア細胞)、すい臓細胞、血球細胞、骨髄細胞、筋肉細胞(例えば、骨格筋細胞、平滑筋細胞、心筋細胞)、肝実質細胞、非肝実質細胞、脂肪細胞、骨芽細胞、歯周組織を構成する細胞(例えば、歯根膜細胞、セメント芽細胞、歯肉線維芽細胞、骨芽細胞)、腎臓・眼・耳を構成する細胞などが挙げられる。
iPS細胞は、所定の培養条件下(例えば、ES細胞を培養する条件下)において長期にわたって自己複製能を有し、また所定の分化誘導条件下において外胚葉、中胚葉及び内胚葉への多分化能を有する幹細胞のことを言う。また、本発明におけるiPS細胞はマウスなどの試験動物に移植した場合にテラトーマを形成する能力を有する幹細胞でもよい。
体細胞からiPS細胞を製造するためには、まず、少なくとも1種類以上の初期化遺伝子を体細胞に導入する。初期化遺伝子とは、体細胞を初期化してiPS細胞とする作用を有する初期化因子をコードする遺伝子である。初期化遺伝子の組み合わせの具体例としては、以下の組み合わせを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
(i)Oct遺伝子、Klf遺伝子、Sox遺伝子、Myc遺伝子
(ii)Oct遺伝子、Sox遺伝子、NANOG遺伝子、LIN28遺伝子
(iii)Oct遺伝子、Klf遺伝子、Sox遺伝子、Myc遺伝子、hTERT遺伝子、SV40 largeT遺伝子
(iv)Oct遺伝子、Klf遺伝子、Sox遺伝子
細胞培養基材に播種する前のES細胞及び/又はiPS細胞は、非分化誘導化培地を用いて未分化性を維持したものとする。細胞培養基材表面へ播種する前後において分化誘導化培地に切り換え、基材表面へ播種し、そのまま細胞を細胞接着領域内でコンフルエントになるまで増殖させる。得られた細胞集合体に対し酵素処理を行うことで目的とする分化誘導細胞を得ることができる。
本発明で用いる非分化誘導化培地は、ES細胞やiPS細胞を分化誘導させない培地であれば特に限定されないが、例えば、マウス胚性幹細胞及びマウス人工多能性幹細胞の未分化性を維持する性質を有していることが知られているleukemia inhibitory factorを含む培地や、ヒトiPS細胞の未分化性を維持する性質を有していることが知られているbasic FGFを含む培地等が挙げられる。分化誘導化培地は、ES細胞やiPS細胞を分化誘導させる培地であれば特に限定されるものではないが、例えば、血清含有培地や、血清に代替する性質を有する既知成分を含有した無血清培地等が挙げられる。用いる細胞の種類に応じて、MEM培地、BME培地、DMEM培地、DMEM−F12培地、αMEM培地、IMDM培地、ES培地、DM−160培地、Fisher培地、F12培地、WE培地及びRPMI1640培地等を用いることができる。
培地に、各種増殖因子、抗生物質、アミノ酸などを加えてもよい。例えば、0.1〜2%のピルビン酸、0.1〜2%の非必須アミノ酸、0.1〜2%のペニシリン/ストレプトマイシン、0.1〜1%のグルタミン、0.1〜2%のβメルカプトエタノール、1mM〜20mMのROCK阻害剤(例えば、Y27632)を添加してもよい。分化誘導培地には、液性因子を添加してもよいが、本発明の分化誘導方法は液性因子を添加しなくても腸構造体を分化誘導できる点を特徴とする。したがって、一実施形態においては、液性因子を含まない分化誘導培地を用いて培養を行う。
細胞培養基材へのES細胞及び/又はiPS細胞の播種密度は常法に従えばよく特に限定されるものではない。本発明においては、iPS細胞を細胞培養基材に対し1.2×10cells/cm未満の密度、好ましくは3×10cells/cm以下の密度で、好ましくは1.5×10cells/cm以上の密度で播種する。
培養温度は、通常37℃である。CO細胞培養装置などを利用して、5%程度のCO濃度雰囲気下で培養するのが好ましい。
ES細胞及び/又はiPS細胞を細胞培養基材へ播種後の培養期間は、好ましくは28日以上、より好ましくは56日以上、さらに好ましくは119日以上であり、好ましくは210日以下、より好ましくは140日以下である。本発明者らは、ES細胞及び/又はiPS細胞を細胞培養基材へ播種後60日目において、腸の分化マーカーであるVillin及び5THが検出されること、さらには袋状の構造体が確認され、蠕動運動様の動きが観察されることを見出した。特定の液性因子を添加することなく、このような腸構造体を分化誘導できることは、驚くべき結果である。本発明の方法は、腸細胞を分化誘導する方法ということもでき、本発明により得られる腸構造体は、少なくとも腸細胞を含むが、その他の細胞を含んでいてもよい。本発明の方法は、内胚葉を経て腸細胞及び腸構造体を分化誘導するものと考えられる。したがって、腸細胞以外のその他の細胞としては、内胚葉系細胞、例えば、その他消化管の細胞、ならびに肺、甲状腺、膵臓、肝臓、消化管に開口する分泌腺、腹膜、胸膜、喉頭、耳管、気管、気管支、尿路、膀胱、尿道の細胞が含まれると考えられる。また、発明により得られる腸構造体は、薬剤や栄養物質の吸収能があると考えられる。
本発明の方法により、ES細胞及び/又はiPS細胞から分化誘導された腸の治療用細胞を得ることができる。例えば、クリプト細胞などの腸前駆細胞を得た場合には、これをカテーテルなどで移植することにより、潰瘍性大腸炎、クローン病、短腸症などの治療へ利用できる。腸における治療用組織を、高分子支持担体などを利用して培養することにより得ることもできる。あるいは、得られた腸構造体を被検物質の薬効/毒性評価や作用メカニズムの解明、あるいは生物現象メカニズムの解析に用いることも可能である。
以下に実施例を示して、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は実施例の範囲に限定されるものではない。
<実施例1>細胞培養基材の作製
トルエン39.0g、メタクリロイルシランTSL8370(GE東芝シリコーン製)13.5gを混合し、攪拌しながらトリエチルアミンを450μl添加した。そのまま室温で数分間攪拌してから、全量をガラス皿へ移した。ここにUV洗浄済みの5cm角のガラス基板を浸漬し、室温で16時間放置した。その後、ガラス基板をエタノールと水で洗浄し、窒素ブローで乾燥させた。これによりガラス基板表面にメタクリロイル基を含む薄膜が形成された。
ポリエチレングリコールジアクリレート(PEGdA、アルドリッチ製)10gに重合開始剤2,2’−ジメトキシ−2−フェニル−アセトフェノン(DMPA、アルドリッチ製)0.1gを室温で溶かした。これを上記メタクリロイル化基板に1500rpmで5秒間スピンコートした。その後、速やかに窒素雰囲気下で3秒間紫外線を基板全面に照射した。次いで160℃で10分間ポストベークした。このPEGdA化基板を一晩水に浸漬した後に水洗し、次いで乾燥させた。平均乾燥膜厚は、0.33μmであった。
フォトマスクは、同じ大きさの円形の開口部が複数形成されたパターンを有する5インチサイズのものを3種類用いた。3種類のフォトマスクは、円形の開口部の直径が異なり、それぞれ直径1.0mm、1.5mm、2.0mmの円形の開口部が形成され、開口部間のスペース、すなわち開口部間の最短距離は全て0.35mmのパターンを有するものであった。
マスクをPEGdA化基板のPEGdA面に静かに載せ、マスクの裏面側からキセノンエキシマーランプ(172nm、10mW/cm)を光源とする真空紫外線を1分間照射した。これにより、PEGdA膜表面のフォトマスクの開口部に相当する領域を酸化処理した。基板を2.5cm角に切断し細胞培養に用いた。
得られた細胞培養基材における細胞接着領域の形状は円形で、その直径はそれぞれ1.0mm、1.5mm、2.0mmであり、細胞接着領域間のスペース、すなわち細胞接着領域間の最短距離は全て0.35mmであった。また、細胞培養基材における細胞接着領域の割合は、それぞれ、43.1%、51.8%、56.9%であった。比較例として、全面を露光して細胞接着領域とした細胞培養基材、ならびにガラス基板及びポリスチレン基板を用意した。
<実施例2>
実施例1で作製した細胞培養基材のうち、直径2.0mmの円形の細胞接着領域のパターンを有するものにヒトiPS細胞又はヒトES細胞を播種し、細胞が未分化のまま接着することを検証した。以下その詳細を記載する。
実施例1で作製した細胞培養基材を滅菌処理し、35mmディッシュ(IWAKI)上に配置してフィブロネクチン(R&Dsystems)を室温で30分プレコートし、PBSで2回洗浄した。ヒトiPS細胞はヒト胎児肺組織由来細胞から取得した細胞に山中4因子(Oct3/4、Sox2、Klf4、c−Myc)をレトロウイルスベクターによって一過的に発現させて樹立したものである(PLoS ONE 5: e13017. doi:10.1371/journal.pone.0013017.(2010))。
以下、この細胞をMRC5iPS細胞とする。ヒトES細胞は国立成育医療研究センターの生殖・細胞医療研究部で樹立されたものである。培養にはhuman FGF basic(PeproTech)を添加したiPSellon培地(Cardio)を用いた。細胞播種2日後に4%パラホルムアルデヒドで固定処理を行い、免疫染色法によって細胞接着領域の細胞全てに未分化マーカーとして、NANOG、SSEA4、OCT3/4、TRA1−60が各々検出された。
免疫染色には、ウサギIgG標識抗Nanog抗体(Sigma 希釈率1/500)、マウスIgG2b標識抗OCT3/4抗体(Santa Cruz 希釈率1/300)、マウスIgG1標識抗SSEA4抗体(Promega社 希釈率1/500)及びマウスIgM標識抗TRA1−60抗体(Millipore 希釈率1/300)をそれぞれ用いた。
<実施例3>
月経血から取得した細胞に山中4因子をセンダイウイルスベクターによって一過的に発現させてヒトiPS細胞を樹立した(PLoS Genet. 2011 May; 7(5): e1002085. Published online 2011 May 26. doi: 10.1371/journal.pgen.1002085PMCID: PMC3102737)。
以下、この細胞をEdomiPS細胞とする。実施例1で作製した細胞培養基材のうち、直径1.0mm、1.5mm、2.0mmの円形の細胞接着領域のパターンを有するものと、全面を露光して細胞接着性にしたものと、ガラス基材と、ポリスチレン基材に、フィーダー細胞と、MRC5iPS細胞又はEdomiPS細胞とを播種して60日間培養後、その切片を免疫染色し、腸の構造体であることを検証した。以下その詳細を記載する。
細胞培養基材にゼラチン(Sigma)を30分間室温でプレコートし、マウス胎児線維芽細胞をフィーダー細胞として3.15×10cells/cmの濃度で播種した。24時間後、Accutase(Invitrogen)で分散したヒトiPS細胞を2.93×10cells/cmの濃度で播種して60日間分化誘導し、切片を作製した。切片を腸のマーカーとなる抗体で免疫染色した結果、直径1.5mm及び2.0mmの円形の細胞接着領域のパターンを有する細胞培養基材を用いた場合に、腸の分化マーカーであるVillin及び5THが検出された(図1)。また、袋状の構造体が確認され、蠕動運動様の動きも観察された(図2)。直径1.0mmの円形の細胞接着領域のパターンを有する細胞培養基材では細胞が剥離してしまい、培養を維持できなかった。また、全面露光基材、ガラス、ポリスチレン上で培養したものは腸の構造体を獲得することができなかった。
フィーダー細胞の維持には10%のウシ血清(HyClone)と1%のペニシリン/ストレプトマイシン及びGlutamax(Invitrogen)を添加したDMEM(SIGMA)を用い、iPS細胞及びES細胞の分化誘導には20%の血清代替物KSR(Invitrogen)と1%のピルビン酸、非必須アミノ酸、ペニシリン/ストレプトマイシン及びGlutamax(Invitrogen)及び0.1%のβメルカプトエタノールとY27632(WAKO)を添加したDMEM−F12(Invitrogen)を用いた。4日目以降はY27632非添加の培地を使用した。免疫染色には、マウスIgG1標識抗5HT抗体(Abcam 希釈率1/50)、ヤギ抗Villinポリローナル抗体(Santa Cruz 希釈率1/100)をそれぞれ用いた。
<実施例4>
実施例1で作製した細胞培養基材のうち、直径1.5mmの円形の細胞接着領域のパターンを有するものにMRC5iPS細胞又はEdomiPS細胞を播種し、90日間分化誘導した後、実施例3と同様に切片を取得し、腸のマーカーとなる抗体で免疫染色した。その結果、腸の分化マーカーであるVillin及び5THが検出された。また、蠕動運動様の動きも観察された。
但し、iPS細胞又はES細胞の播種前に、細胞培養基材に接着タンパク質であるビトロネクチン(Invitrogen)、コラーゲン(医療用コラーゲン、日本ハム)、フィブロネクチン(R&Dsystems)、ラミニン(Veritas)を各々プレコートしたものを用いた。また、培養には15%の血清代替物KSR Xeno Free(Invitrogen)を含む培地、20%の血清代替物KSR(Invitrogen)を含む培地、又は10%のウシ血清(HyClone)を含む培地を各々用いた。いずれの培地を用いた場合も、いずれのタンパク質でプレコートした場合も、いずれの細胞を用いた場合も、同様の結果が得られた。

Claims (4)

  1. 胚性幹細胞及び/又は人工多能性幹細胞から腸構造体を作製する方法であって、
    基材と、基材上に形成された複数の隔離された細胞接着領域及び各細胞接着領域を囲む細胞非接着領域とを備える細胞培養基材を準備する工程、
    胚性幹細胞及び/又は人工多能性幹細胞を、細胞培養基材に対し播種する工程、及び
    播種した胚性幹細胞及び/又は人工多能性幹細胞を培地中で培養する工程、
    を含み、
    細胞培養基材の細胞非接着領域が、ポリエチレングリコール若しくはエチレングリコールオリゴマー、又はそれらの官能基導入体が基材上に固定化されて形成されたものであり、各細胞接着領域の面積が0.785mmより大きい、前記方法。
  2. 細胞接着領域が、直径1.2mm〜6mmの円形の形状で形成されている、請求項1記載の方法。
  3. 胚性幹細胞及び/又は人工多能性幹細胞を播種後60日以上培養する、請求項1又は2記載の方法。
  4. 細胞接着領域が、基材上に固定化されたポリエチレングリコールが紫外線照射により酸化されて形成されたものである、請求項1〜3のいずれか1項記載の方法。
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