JP6391428B2 - 水素充填方法及び水素ステーション - Google Patents

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Description

本発明は、水素ステーションの水素充填方法及び水素ステーションに関する。
従来の水素ステーションとしては、例えば特許文献1に記載されているように、水素を高圧で貯蔵する蓄圧器と、外部から供給される水素を昇圧して蓄圧器に充填する圧縮機と、蓄圧器の水素を車両に充填するためのディスペンサと、を備えたものが知られている。この特許文献1に記載された水素ステーションでは、安全性や作業性を向上させるべく、各種機器をキャビネット内に適宜配置することが図られている。
特開2013−167288号公報
ここで、水素ステーションで水素を充填する充填対象(例えば水素燃料自動車など)は、充填時における残圧が高い場合もあれば、残圧が低い場合もある。このように、水素の残圧が異なる複数の充填対象に対して、効率よく水素を充填する水素充填方法が求められていた。
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、充填対象に対して効率よく水素を充填することができる水素充填方法、及び水素ステーションを提供することを目的とする。
本発明による水素充填方法は、水素を貯蔵する蓄圧部と、水素を昇圧する昇圧部と、水素を充填対象に充填するためのディスペンサと、を備える水素ステーションでの水素充填方法であって、充填対象の水素の残圧を検出する圧力検出工程と、圧力検出工程での検出結果に基づいて、充填対象に対して水素を充填する水素充填工程と、を備え、水素充填工程では、圧力検出工程で検出された残圧が予め設定された閾値より高いと判定された場合、蓄圧部に貯蔵された水素を充填対象に差圧充填する第1の充填工程が実行され、圧力検出工程で検出された残圧が閾値以下と判定された場合、昇圧部で昇圧された水素を充填対象に直充填する第2の充填工程が実行される。
本発明に係る水素ステーションは、水素を貯蔵する蓄圧部と、水素を昇圧する昇圧部と、水素を充填対象に充填するためのディスペンサと、充填対象の水素の残圧を検出する圧力検出部と、圧力検出部での検出結果に基づいて、充填対象に対して水素を充填する水素充填部と、を備え、水素充填部は、圧力検出部で検出された残圧が予め設定された閾値より高いと判定された場合、蓄圧部に貯蔵された水素を充填対象に差圧充填し、圧力検出部で検出された残圧が閾値以下であると判定された場合、昇圧部で昇圧された水素を充填対象に直充填する。
このような水素充填方法及び水素ステーションでは、充填対象の残圧が予め設定された閾値より高い場合には、蓄圧部に貯蔵された水素が充填対象に差圧充填される。充填対象の残圧が高い場合は、充填量も少なく、短時間で充填を行うことが可能である。従って、残圧の高い充填対象に対しては、瞬発力に優れた差圧充填により速やかに充填を行うことができる。また、充填対象の残圧が予め設定された閾値以下である場合には、昇圧部で昇圧された水素が充填対象に直充填される。充填対象の残圧が低い場合は、充填量が多く、長時間の充填が必要である。従って、残圧の低い充填対象に対しては、昇圧部を用い、持続力に優れた直充填を行うことにより、適切な水素充填を行うことができる。以上のように、充填対象の水素の残圧に応じて適切な水素充填を行うことにより、充填対象に対して効率よく水素を充填することができる。
また、本発明に係る水素充填方法において、第2の充填工程では、昇圧部による直充填に加えて、蓄圧部による差圧充填が行われてもよい。これにより、昇圧部による直充填のみでは充填初期の容量が不足する場合であっても、蓄圧部による差圧充填により、補助的に充填を行うことができる。
また、本発明に係る水素充填方法において、蓄圧部は、第1の蓄圧器と、第2の蓄圧器とを少なくとも備え、第1の蓄圧器は、少なくとも第2の蓄圧器より高い圧力に維持され、第1の充填工程では、少なくとも第1の蓄圧器による差圧充填が行われ、第2の充填工程では、昇圧部による直充填に加えて、少なくとも第2の蓄圧器による差圧充填が行われてよい。残圧の低い充填対象に対する直充填を補助するための蓄圧器として、低圧の第2の蓄圧器を用いることで長時間の充填に対応することができる。一方、残圧の高い充填対象に対する差圧充填を行うための蓄圧器として、高圧の第1の蓄圧器を用いて短時間で充填を行うことができる。
本発明によれば、充填対象に対して効率よく水素を充填することができる。
図1は、本発明の実施形態に係る水素ステーションを示すシステム構成図である。 図2は、図1の水素ステーションの要部を示すシステム構成図である。 図3は、図1に示す水素ステーションにおける水素充填方法を含む動作を示すフローチャートである。 図4は、差圧充填シーケンスを示すフローチャートである。 図5は、直充填シーケンスを示すフローチャートである。 図6は、変形例に係る水素ステーションを示すシステム構成図である。
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明において同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
図1は、本発明の実施形態に係る水素ステーション100を示すシステム構成図である。図1に示すように、本実施形態に係る水素ステーション100は、充填対象に水素を供給するための設備である。ここでの水素ステーション100では、水素ステーションとは別の施設で水素を精製してトレーラ(移動体)Tで運び込む所謂オフサイト型が採用されている。充填対象としては、例えば燃料電池自動車(Fuel Cell Vehicle)等の水素燃料自動車、燃料電池フォークリフト及び燃料電池バイク等が挙げられる。
図1に示すように、水素ステーション100は、外部より水素を受容する水素受容部1と、前段側で水素を昇圧する第1の昇圧部2と、前段側で水素を貯蔵する第1の蓄圧部3と、後段側で水素を昇圧する第2の昇圧部4と、後段側で水素を貯蔵する第2の蓄圧部6と、水素を充填対象に充填するためのディスペンサ7A,7Bと、を備えている。なお、本実施形態では、充填対象として水素燃料自動車M1,M2を例示する。
水素受容部1は、例えば、トレーラTに積載された水素輸送容器バンクと接続され、当該水素輸送容器バンクに貯蔵されている水素を受容する。なお、水素受容部1は、トレーラTの水素輸送容器バンクに限られず、水素カードル容器、水素製造装置、外部水素供給のパイプラインなどから水素を受容してもよい。水素受容部1は、ラインL1を介して第1の昇圧部2に接続されている。
第1の昇圧部2は、水素を圧縮する圧縮機によって構成されている。第1の昇圧部2は、第2の昇圧部4の圧縮機(詳細は後述)よりも圧縮の圧力が低い低圧圧縮機によって構成されている。第1の昇圧部2を構成する圧縮機は、例えば水素を20〜45MPaに圧縮することができ、100〜300Nm/hrで水素を圧送することができる。第1の昇圧部2は、ラインL2を介して第1の蓄圧部3の蓄圧バンク8(詳細は後述)に接続されている。
第1の蓄圧部3は、水素を貯蔵する蓄圧バンク8によって構成されている。蓄圧バンク8の最大充填圧力は40〜45MPaに設定されている。蓄圧バンク8は、複数又は単一の容器によって構成されている。なお、図1では、第1の蓄圧部3は、一つの蓄圧バンク8を備えているが、複数の蓄圧器を備えていてもよい。第1の蓄圧部3を構成する蓄圧バンク8は、ラインL3を介して第2の昇圧部4に接続されている。これにより、第1の蓄圧部3の蓄圧バンク8に貯蔵された水素は、ラインL3を介して接続された第2の昇圧部4によって昇圧される。なお、第1の昇圧部2とラインL3とを接続するラインL4を設けることにより、水素受容部1で受容された水素が、第1の昇圧部2で昇圧されてラインL4及びラインL3を介して直接的に第2の昇圧部4へ供給されてもよい。
第2の昇圧部4は、水素を圧縮する圧縮機によって構成されている。第2の昇圧部4は、第1の昇圧部2の圧縮機よりも高圧に水素を圧縮可能な高圧圧縮機によって構成されている。第2の昇圧部4を構成する圧縮機は、例えば水素を70〜95MPaに圧縮することができ、100〜1200Nm/hrの水素を圧送することができる。
第2の蓄圧部6は、水素を貯蔵する複数の蓄圧バンク9によって構成されている。蓄圧バンク9の最大充填圧力は70〜95MPaに設定されている。蓄圧バンク9は、複数又は単一の容器によってそれぞれ構成されている。なお、図1では、第2の蓄圧部6は、三つの蓄圧バンク9を備えているが、蓄圧バンク9の数量は特に限定されない。
第2の昇圧部4には、各蓄圧バンク9へ水素を分配するためのラインL5が接続されている。また、ラインL5からはラインL6、ラインL7、及びラインL8が分岐しており、各蓄圧バンク9の入口にそれぞれ接続されている。また、各蓄圧バンク9の出口からはラインL10、ラインL11、及びラインL12がそれぞれ引き出されており、各蓄圧バンク9からの水素を通過させるラインL13に接続されている。ラインL13は、ラインL14を介してディスペンサ7Aに接続される。なお、第2の昇圧部4から圧送された水素を蓄圧バンク9を介さずにディスペンサ7Aへ供給するラインとして、ラインL5とラインL14とを接続するラインL9がさらに設けられている。
また、ラインL10からはラインL16が引き出され、ラインL11からはラインL17が引き出され、ラインL12からはラインL18が引き出される。ラインL16,L17,L18は、ラインL19を介してディスペンサ7Bに接続される。なお、第2の昇圧部4から圧送された水素を蓄圧バンク9を介さずにディスペンサ7Bへ供給するラインとして、ラインL9とラインL19とを接続するラインL20がさらに設けられている。
ここで、図1に示す三つの蓄圧バンク9のうち、蓄圧バンク9Aは高い圧力で水素の充填を行うための蓄圧器(以下、説明のために「高圧バンク9A」と称する)として機能し、蓄圧バンク9Cは高圧バンク9Aより低い圧力で水素の充填を行うための蓄圧器(以下、「低圧バンク9C」と称する)として機能し、蓄圧バンク9Bは高圧バンク9Aと低圧バンク9Cとの間の圧力で水素の充填を行うための蓄圧器(以下、「中圧バンク」と称する)として機能する。水素ステーション100の稼働中において、高圧バンク9Aの水素の残圧は、少なくとも中圧バンク9B及び低圧バンク9Cの残圧以上の圧力に維持される。中圧バンク9Bの水素の残圧は、少なくとも低圧バンク9Cの残圧以上の圧力に維持される。
以上のような構成により、水素ステーション100の前段側においては、水素受容部1で受容された水素は、第1の昇圧部2で昇圧されて、第1の蓄圧部3の蓄圧バンク8に貯蔵される。第1の蓄圧部3の蓄圧バンク8に貯蔵された水素は、ラインL3を介して水素ステーション100の後段側の第2の昇圧部4へ供給される。あるいは、第1の昇圧部2とラインL3とを接続するラインL4を設けることにより、水素受容部1で受容された水素が、第1の昇圧部2で昇圧されてラインL4を介して直接的に水素ステーション100の後段側の第2の昇圧部4へ供給されてもよい。更に、ラインL3及びラインL4の両方から同時に水素が第2の昇圧部4へ供給されてもよい。
水素ステーション100の後段側においては、第2の昇圧部4から圧送された水素は、第2の蓄圧部6の各蓄圧バンク9に貯蔵される。ここで、高圧バンク9A、中圧バンク9B、低圧バンク9Cの順で残圧を高く維持しておく必要がある。従って、第2の昇圧部4から圧送された水素は、まず高圧バンク9Aへ供給され、高圧バンク9Aが満杯(最大充填圧力に達する)になった後、中圧バンク9Bへ供給され、中圧バンク9Bが満杯になった後、低圧バンク9Cへ供給される。
また、ディスペンサ7A,7Bが水素燃料自動車M1,M2に水素を充填する場合、第2の蓄圧部6のいずれかの蓄圧バンク9に貯蔵された水素が、ディスペンサ7A,7Bを介して水素燃料自動車M1,M2に充填される。なお、低圧バンク9C、あるいは中圧バンク9Bの水素が水素燃料自動車M1,M2に充填された後、仕上げ充填として、高い圧力に維持されている高圧バンク9Aの水素が水素燃料自動車M1,M2に充填される。更に、所定の圧力に到達した後、第2の昇圧部4から圧送された水素が、ラインL9,L20を通過して、直接的に水素燃料自動車M1,M2へ充填される。
ここで、本実施形態の水素ステーション100の要部について、図2を参照しつつ具体的に説明する。
図2は、図1の水素ステーション100の要部を示すシステム構成図である。水素ステーション100は、水素燃料自動車M1,M2の残圧を検出する圧力検出部11、水素の流量を調整する流量調整弁12、及び制御部20を備えている。圧力検出部11及び流量調整弁12はディスペンサ7A,7Bのそれぞれの内部に設けられている。なお、水素ステーション100の各ラインには、水素の流れを制御するために、図示されないバルブが適宜設けられている。圧力検出部11は、ディスペンサ7A,7Bにて水素を充填するときに、水素燃料自動車M1,M2に貯蔵された水素の残圧を検出するものであり、圧力伝送器などによって構成されている。この圧力検出部11は、検出結果を制御部20へ出力する。なお、圧力検出部11の構成は特に限定されず、水素燃料自動車M1,M2の残圧を検出できれば様々なものを用いることができる。例えば、水素燃料自動車に少量の水素を供給し、停止したときの配管の残圧を圧力検出部11によって測定してもよい。
制御部20は、圧力検出部11での検出結果に基づいて充填対象である水素燃料自動車M1,M2への水素の充填を制御するものであり、例えばCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read OnlyMemory)、RAM(Random Access Memory)を含むコンピュータにより構成されている。
具体的には、制御部20は、圧力検出部11によって検出された残圧が予め設定された閾値より高いか否かを判定する機能を有する。また、制御部20は、圧力検出部11での検出結果に基づいて、水素燃料自動車M1,M2に対する水素の充填を制御する機能を有している。
制御部20は、圧力検出部11で検出された残圧が予め設定された閾値より高いと判定した場合、第2の蓄圧部6に貯蔵された水素を水素燃料自動車M1,M2に差圧充填する。閾値は例えば20〜50MPaの範囲で任意に設定可能である。この差圧充填では、圧力の高い中圧バンク9B及び高圧バンク9Aによる差圧充填が行われる。このように、残圧が高い水素燃料自動車M1,M2に対しては、短時間で充填可能であり、且つ瞬発力に優れた差圧充填により充填することができる。また、制御部20は、圧力検出部11で検出された残圧が閾値以下であると判定された場合、第2の昇圧部4で昇圧された水素を水素燃料自動車M1,M2に直充填する。この直充填では、当該直充填に加えて、第2の蓄圧部による補助の差圧充填が行われる。補助の差圧充填では、低圧バンク9Cによる差圧充填が行われる。このように、残圧が低い水素燃料自動車M1,M2に対しては、長時間の充填が必要であるため、持続力に優れた直充填が行われる。また、第2の昇圧部4による直充填だけでは充填初期の容量が不足する場合があるため、低圧バンク9Cの直充填による補助を行うことができる。具体的に、制御部20は、圧力検出部11の検出結果に基づいて水素燃料自動車M1,M2の残圧が高いか低いかを判定する圧力判定部21と、水素燃料自動車M1,M2に対する水素充填を制御する充填制御部22と、各バンク9A,9B,9Cに対する蓄圧を制御する蓄圧制御部23と、を備えている。ちなみに、後述するように、本実施形態の水素ステーション100は、制御部20を備えない構成を採用することもできる。
次に、上述した水素ステーション100において、水素燃料自動車M1,M2に水素を充填する水素充填方法を含む動作(制御部20による動作)の一例について、図2〜図5を参照して説明する。
図3は、図1及び図2に示す水素ステーション100における水素充填方法を含む動作を示すフローチャートである。ここでは、水素の残圧が高い水素燃料自動車M1に対してディスペンサ7Aが水素の充填を行い、水素の残圧が低い水素燃料自動車M2に対してディスペンサ7Bが水素の充填を行う場合を例にして説明する。まず、水素の残圧が高い水素燃料自動車M1に対して水素を充填する場合の処理について、図2〜図4を参照して説明する。まず、少量の水素を高圧バンク9Aから差圧で供給した後、停止して配管内に残った圧力を圧力検出部11で測定することによって車載タンク残圧を測定する。これにより、圧力検出部11の検出結果に基づいて水素燃料自動車M1の残圧を確認する(ステップS10:残圧検出工程)。制御部20の圧力判定部21は、S10で検出した残圧が、予め設定された閾値よりも高いか否かを判定する(ステップS20:残圧判定工程)。閾値の具体的な圧力は特に限定されるものではなく適宜調整可能であるが、例えば20MPaに設定してよい。S20において、水素燃料自動車M1の残圧が閾値より高いと判定された場合、制御部20は中圧バンク9B及び高圧バンク9Aを用いた差圧充填シーケンスを実行する(ステップS30:水素充填工程、第1の充填工程)。
差圧充填シーケンスについて図4を参照して詳細に説明する。図4に示すように、まず、中圧バンク9Bによる差圧充填が実行される(ステップS100)。S100では、充填制御部22が、各バルブの開閉を制御する。これによって、中圧バンク9Bに貯蔵された水素が経路R1を通過して(図2参照)ディスペンサ7Aを介して水素燃料自動車M1に供給される。充填制御部22は、中圧バンク9Bからの水素を、ディスペンサ7A内に設置された流量調整弁(バルブ)12を徐々に開くことによって、中圧バンク9Bと水素燃料自動車M1のバンクとの間の差圧によって水素を充填する(ステップS110)。次に、圧力判定部21は、流量調整弁12が全開(100%開度)となった時点で、圧力検出部11の検出結果に基づいて、水素燃料自動車M1の充填圧力Pstaが予め設定された目標圧より低いか否かを判定する(ステップS120:充填圧力判定工程)。S120において充填圧力Pstaが予め設定された目標圧より低いと判定された場合、高圧バンク9Aによる差圧充填が行われる(ステップS130)。S130では、充填制御部22が、各バルブの開閉を制御する。これによって、高圧バンク9Aに貯蔵された水素が経路R2を通過して(図2参照)ディスペンサ7Aを介して水素燃料自動車M1に供給される。高圧バンク9Aによる差圧充填によって、水素燃料自動車M1の充填圧力Pstaが予め設定された目標圧に達する(ステップS140)。以上によって、差圧充填シーケンスが終了し、水素燃料自動車M1に対する水素充填が終了する。また、S120において充填圧力Pstaが目標圧に達したと判定された場合も、差圧充填シーケンスが終了する。
差圧充填シーケンスが終了すると、図3の処理へ戻り、各バンクに対する第2の昇圧部4の蓄圧運転が実行される(ステップS50:蓄圧工程)。この工程では、第2の昇圧部4が、高圧バンク9A、中圧バンク9B、及び低圧バンク9Cに対してこの順序で水素を圧送することによって、各バンク9A,9B,9Cに水素を蓄圧させる。例えば、第2の昇圧部4が82MPaに高圧圧縮可能な圧縮機で構成されている場合、S50の蓄圧運転により、各バンク9A,9B,9Cの充填圧力は82MPaとなる。S50が終了したら、図3の処理が終了する。
次に、水素の残圧が低い水素燃料自動車M2に対して水素を充填する場合の処理について、図2、図3及び図5を参照して説明する。まず、少量の水素を高圧バンク9Aから差圧で供給した後、停止して配管内に残った圧力を圧力検出部11で測定することによって車載タンク残圧を測定する。これにより、圧力検出部11の検出結果に基づいて水素燃料自動車M2の残圧を確認する(ステップS10:残圧検出工程)。制御部20の圧力判定部21は、S10で検出した残圧が、予め設定された閾値よりも高いか否かを判定する(ステップS20:残圧判定工程)。S20において、水素燃料自動車M2の残圧が閾値より低いと判定された場合、制御部20は第2の昇圧部4による直充填シーケンスを実行する(ステップS40:水素充填工程、第2の充填工程)。
直充填シーケンスについて図5を参照して詳細に説明する。図5に示すように、まず、第2の昇圧部4である高圧圧縮機を起動させることによって直充填を行うと共に、低圧バンク9Cによる補助充填が実行される(ステップS200)。S200では、充填制御部22が、第2の昇圧部4及び各バルブの開閉を制御する。これによって、第2の昇圧部4から圧送された水素が経路R3を通過して(図2参照)ディスペンサ7Bを介して水素燃料自動車M2に供給される。また、低圧バンク9Cに貯蔵された水素が経路R4を通過して(図2参照)ディスペンサ7Bを介して水素燃料自動車M2に供給される。充填制御部22は、低圧バンク9Cからの水素をディスペンサ7B内に設置された流量調整弁(バルブ)12を徐々に開くことによって、第2の昇圧部4からの直充填水素に加え、低圧バンク9Cと水素燃料自動車M2のバンクとの間の差圧によって水素を充填する(ステップS205)。なお、直充填シーケンスにおいては、第2の昇圧部4による直充填が行われているため、図5中のどのタイミングであっても充填圧力Pstaが目標圧に達することがある。従って、後述のS210及びS230の充填圧力判定工程以外のタイミングにおいても圧力判定部21によって充填圧力Pstaを監視しておき、当該充填圧力Pstaが目標圧に達した時点で図5に示す直充填シーケンスを終了することができる。
次に、圧力判定部21は、流量調整弁12が全開(100%開度)となった時点で、圧力検出部11の検出結果に基づいて、水素燃料自動車M2の充填圧力Pstaが予め設定された目標圧より低いか否かを判定する(ステップS210:充填圧力判定工程)。S210において充填圧力Pstaが目標圧に達したと判定された場合、直充填シーケンスが終了する。S210において充填圧力Pstaが目標圧より低いと判定された場合、中圧バンク9Bによる差圧充填が実行される(ステップS215)。S215では、充填制御部22が、各バルブの開閉を制御する。これによって、中圧バンク9Bに貯蔵された水素が経路R5を通過して(図2参照)ディスペンサ7Bを介して水素燃料自動車M2に供給される。充填制御部22は、中圧バンク9Bからの水素をディスペンサ7B内に設置された流量調整弁(バルブ)12を徐々に開くことによって、第2の昇圧部4からの直充填水素に加え、中圧バンク9Bと水素燃料自動車M2のバンクとの間の差圧によって水素を充填する(ステップS220)。次に、圧力判定部21は、流量調整弁12が全開(100%開度)となった時点で、圧力検出部11の検出結果に基づいて、水素燃料自動車M2の充填圧力Pstaが予め設定された目標圧より低いか否かを判定する(ステップS230:充填圧力判定工程)。S230において充填圧力Pstaが目標圧より低いと判定された場合、高圧バンク9Aによる差圧充填が行われる(ステップS240)。S240では、充填制御部22が、各バルブの開閉を制御する。これによって、高圧バンク9Aに貯蔵された水素が経路R6を通過して(図2参照)ディスペンサ7Bを介して水素燃料自動車M2に供給される。高圧バンク9Aによる差圧充填によって、水素燃料自動車M2の充填圧力Pstaが目標圧に達する(ステップS250)。以上によって、直充填シーケンスが終了し、水素燃料自動車M2に対する水素充填が終了する。また、S230において充填圧力Pstaが目標圧に達したと判定された場合も、直充填シーケンスが終了する。また、直充填により図5中のどのタイミングであっても、充填圧力Pstaが目標圧に達した時点で直充填シーケンスを終了する。
直充填シーケンスが終了すると、図3の処理へ戻り、各バンクに対する第2の昇圧部4の蓄圧運転が実行される(ステップS50:蓄圧工程)。S50が終了したら、図3の処理が終了する。
次に、本実施形態に係る水素ステーション100の作用・効果について説明する。
本実施形態に係る水素充填方法及び水素ステーション100では、水素燃料自動車M1の残圧が予め設定された閾値より高い場合には、蓄圧部6(ここでは中圧バンク9B及び高圧バンク9A)に貯蔵された水素が充填対象である水素燃料自動車M1に差圧充填される。水素燃料自動車M1の残圧が高い場合は、充填量も少なく、短時間で充填を行うことが可能である。従って、残圧の高い水素燃料自動車M1に対しては、瞬発力に優れた差圧充填により速やかに充填を行うことができる。また、水素燃料自動車M2の残圧が予め設定された閾値以下である場合には、第2の昇圧部4で昇圧された水素が水素燃料自動車M2に直充填される。水素燃料自動車M2の残圧が低い場合は、充填量が多く、長時間の充填が必要である。従って、残圧の低い水素燃料自動車M2に対しては、第2の昇圧部4を用い、持続力に優れた直充填を行うことにより、確実に目標圧力までの水素充填を行うことができる。以上のように、水素燃料自動車M1,M2の水素の残圧に応じて適切な水素充填を行うことにより、水素燃料自動車M1,M2に対して効率よく水素を充填することができる。
また、本実施形態に係る水素充填方法において、直充填シーケンスでは、第2の昇圧部4による直充填に加えて、蓄圧部6(ここでは低圧バンク9C)による差圧充填が行われる。これにより、第2の昇圧部4による直充填のみでは充填初期の容量が不足する場合であっても、蓄圧部6による差圧充填により、補助的に充填を行うことができる。
また、本実施形態に係る水素充填方法において、差圧充填シーケンスでは、高圧バンク9A及び中圧バンク9Bによる差圧充填が行われ、直充填シーケンスでは、第2の昇圧部4による直充填に加えて、低圧バンク9Cによる差圧充填が行われる(なお、直充填及び低圧バンク9Cの補助充填により、ある程度の充填が行われた後は、仕上げ充填として中圧バンク9B、高圧バンク9Aによる差圧充填が行われてよい)。残圧の低い水素燃料自動車M2に対する直充填を補助するための蓄圧器として、低圧バンク9Cを用いることができる。一方、残圧の高い水素燃料自動車M1に対する差圧充填を行うための蓄圧器として、中圧バンク9B及び高圧バンク9Aを用いて短時間で充填を行うことができる。
以上のように、水素ステーション100が複数のディスペンサ7を有している場合に、例えばディスペンサ7Aで残圧の高い水素燃料自動車M1の水素充填を行い、ディスペンサ7Bで残圧の低い水素燃料自動車M2の水素充填を行うとき、ディスペンサ7B側においては、持続性に優れる直充填によって時間をかけて水素燃料自動車M2に水素を充填する。一方、ディスペンサ7A側においては、中圧バンク9B及び高圧バンク9Aを用いて短時間で充填を行うことで、速やかに次の水素燃料自動車の充填へ移行することができる。従って、水素充填の回転率を上げることができる。なお、補助充填に用いる蓄圧器として高圧バンク9Aや中圧バンク9Bを用いる場合は、長時間の充填によって各バンク9A,9Bの圧力が下がってしまうと共に、長時間の補助充填に拘束されている最中は、他の水素燃料自動車に対する仕上げ充填を行えなくなる可能性がある。従って、補助充填のための蓄圧器として、低圧バンク9Cを用いることが好ましい。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲で変形し、又は他のものに適用したものであってもよい。
例えば、上記実施形態では、制御部20を設け、この制御部20により残圧の判定、直充填シーケンスと差圧充填シーケンスの選択を行ったが、これに限定されるものではなく、制御部20は設けられていなくともよい。この場合、例えば作業者が圧力検出部11の検出結果に基づき各弁の開閉等を適宜制御することにより、上記作用効果を実現することができる。要は、本発明は、圧力検出工程で検出された残圧が予め設定された閾値より高いと判定された場合、蓄圧部に貯蔵された水素を充填対象に差圧充填する第1の充填工程が実行され、圧力検出工程で検出された残圧が閾値以下と判定された場合、昇圧部で昇圧された水素を充填対象に直充填する第2の充填工程を実行できればよい。
上述の実施形態では、蓄圧部が高圧バンク9A、中圧バンク9B及び低圧バンク9Cを有するものであった。これに代えて、蓄圧部が低圧バンクと、当該低圧バンクよりも高い圧力に維持されるバンクとによって構成されていてもよい。また、ディスペンサの数量や、ラインの構成も特に限定されるものではない。
なお、上記実施形態では図1に示すように水素ステーションがディスペンサを複数有していたが、図6に示すようにディスペンサが1基であってもよい。ディスペンサが1基の場合であっても、本発明によって車両の残圧に基づいて最適な充填方法を選択して素早く水素の充填を行うことにより、2台目の車両の待ち時間を短縮することができる。
4…第2の昇圧部(昇圧部)、6…蓄圧部、9…蓄圧バンク、9A…高圧バンク(第1の蓄圧器)、9B…中圧バンク(第1,2の蓄圧器)、9C…低圧バンク(第2の蓄圧器)、7A,7B…ディスペンサ、11…圧力検出部、20…制御部(水素充填部)、100…水素ステーション、M1,M2…水素燃料自動車(充填対象)。

Claims (3)

  1. 水素を貯蔵する蓄圧部と、
    水素を昇圧する昇圧部と、
    水素を充填対象に充填するためのディスペンサと、を備える水素ステーションでの水素充填方法であって、
    前記充填対象の水素の残圧を検出する圧力検出工程と、
    前記圧力検出工程での検出結果に基づいて、前記充填対象に対して水素を充填する水素充填工程と、を備え、
    前記水素充填工程では、
    前記圧力検出工程で検出された残圧が予め設定された閾値より高いと判定された場合、前記昇圧部による直充填を行うことなく、前記蓄圧部に貯蔵された水素を前記充填対象に差圧充填する第1の充填工程が実行され、
    前記圧力検出工程で検出された残圧が前記閾値以下と判定された場合、前記昇圧部で昇圧された水素を前記充填対象に直充填し、且つ、当該直充填に加えて前記蓄圧部による差圧充填を行う、第2の充填工程が実行される、水素充填方法。
  2. 前記蓄圧部は、第1の蓄圧器と、第2の蓄圧器とを少なくとも備え、
    前記第1の蓄圧器は、少なくとも第2の蓄圧器より高い圧力に維持され、
    前記第1の充填工程では、少なくとも前記第1の蓄圧器による差圧充填が行われ、
    前記第2の充填工程では、前記昇圧部による直充填に加えて、少なくとも前記第2の蓄圧器による差圧充填が行われる、請求項1に記載の水素充填方法。
  3. 水素を貯蔵する蓄圧部と、
    水素を昇圧する昇圧部と、
    水素を充填対象に充填するためのディスペンサと、
    前記充填対象の水素の残圧を検出する圧力検出部と、
    前記圧力検出部での検出結果に基づいて、前記充填対象に対して水素を充填する水素充填部と、を備え、
    前記水素充填部は、
    前記圧力検出部で検出された残圧が予め設定された閾値より高いと判定された場合、前記昇圧部による直充填を行うことなく、前記蓄圧部に貯蔵された水素を前記充填対象に差圧充填し、
    前記圧力検出部で検出された残圧が前記閾値以下であると判定された場合、前記昇圧部で昇圧された水素を前記充填対象に直充填し、且つ、当該直充填に加えて前記蓄圧部による差圧充填を行う、水素ステーション。
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