以下、飛しょう体誘導装置、飛しょう体誘導方法、飛しょう体、および、プログラムに関して、添付図面を参照して説明する。
(用語の定義)
本明細書において、「仮想標的」は、数値計算上の仮想的な標的として定義される。本明細書において、「実在標的」は、飛しょう体が到達すべき標的として定義される。なお、「標的」には、仮想標的と実在標的とが包含される。
本明細書において、「ミスディスタンス」は、飛しょう体と標的との間の最接近距離として定義される。
本明細書において、「会合」は、飛しょう体と標的とのミスディスタンスが、予め設定される設定値よりも小さくなることを意味する。設定値は、例えば、飛しょう体の長手方向に垂直な断面における胴径、または、爆薬の量等に基づいて決定される。設定値は、胴径、または、爆薬の量等に基づいて算出される撃破確率に基づいて決定されてもよい。
本明細書において、「会合点」は、飛しょう体と標的とが会合する位置として定義される。なお、飛しょう体と標的とが会合しない場合には、「会合点」は、飛しょう体と標的とが最接近した時の標的の位置として定義される。
本明細書において、「仮想会合点」は、飛しょう体と仮想標的とが最接近した時の仮想標的の位置として定義される。
本明細書において、「目標会合点」は、飛しょう体と実在標的とが会合すべき位置として定義される。
本明細書において、「会合角」は、飛しょう体と標的とが会合する際に、飛しょう体の飛しょう方向と標的の飛しょう方向とがなす角の補角として定義される。なお、飛しょう体と標的とが会合しない場合には、「会合角」は、飛しょう体と標的とが最接近した時の飛しょう体の飛しょう方向と標的の飛しょう方向とがなす角の補角として定義される。
本明細書において、「経路角」は、水平面と飛しょう体の飛しょう方向とがなす角として定義される。
本明細書において、「進入角」は、会合点における標的の飛しょう方向と水平面とがなす角として定義される。
本明細書において、「無誘導飛しょう」は、飛しょう体が自ら旋回力を発生させることなく飛しょうする状態、すなわち、重力に従って放物運動をする状態として定義される。なお、無誘導飛しょうにおいて、飛しょう体の姿勢を維持・制御することは許容される。
本明細書において、「終末誘導」は、飛しょう体自体に搭載された探査装置によって捕捉される標的情報に基づいて、飛しょう体を標的に向けて誘導する状態として定義される。なお、探査装置には、例えば、レーダまたは赤外線シーカ(IR SEEKER)等が包含される。また、標的情報には、標的の位置情報、飛しょう体から標的に向かう方位情報、または、標的の速度情報等が包含される。
本明細書において、「飛しょう体飛しょう経路」は、飛しょう体が、飛しょう体発射地点から会合点に達するまでに飛しょうする経路として定義される。
本明細書において、「高度」は、海抜高度として定義される。
(第一実施形態)
以下、第一実施形態について、図1乃至図11Bを参照して説明する。図1は、第一実施形態の飛しょう体誘導システム10を説明する図である。なお、飛しょう体誘導システム10に包含される飛しょう体誘導装置は、後述のコンピュータ13A(より具体的には、演算装置130、記憶装置135、および、第1通信インターフェース136を備えるコンピュータ)によって構成されている。第一実施形態では、実在標的の進入角を考慮して、飛しょう体が通過点を通過する際の通過条件が設定される。詳細については、後述される。
飛しょう体誘導システム10は、飛しょう体11と、飛しょう体を発射する発射台12Bを備える発射装置12と、射撃管制装置13と、実在標的の情報を取得するためのレーダ装置14を備える。なお、射撃管制装置13とレーダ装置14とは、一つの装置であってもよい。代替的に、あるいは、付加的に、発射装置12と射撃管制装置13とは、一つの装置であってもよい。代替的に、発射装置12と射撃管制装置13とレーダ装置14とは、一つの装置であってもよい。
飛しょう体飛しょう経路20(以下、単に、「飛しょう経路20」という。)は、実施形態の飛しょう体誘導装置によって誘導される飛しょう体11の飛しょう経路である。実在標的30は、飛しょう体11が到達すべき標的である。標的飛しょう経路40は、実在標的30が飛しょうする経路である。目標会合点50は、飛しょう体11と実在標的30とが会合すべき位置である。目標通過点60は、飛しょう体11が飛しょう経路20に沿って飛しょうする際に、途中で通過すべき点である。
会合角αは、飛しょう体11と実在標的30とが目標会合点50で会合する際の会合角である。経路角βは、飛しょう体11が目標通過点60を通過する際の経路角である。
境界高度H1は、高高度領域の下限値である。境界高度H1以上の高度では、空気力を用いる空力旋回が困難となる。境界高度H1以上の高度では、目標会合点が補正された場合、あるいは、終末誘導を行う場合等を除いて、飛しょう体11が無誘導飛しょうするようにしてもよい。境界高度H1は、例えば、空気密度が所定の第1閾値を下回る領域の下限値としてもよい。例えば、境界高度H1を高度15000メートルとしてもよいし高度20000メートルとしてもよい。境界高度H1の値は、記憶装置135に予め記憶されていてもよい。通過点高度H2は、飛しょう体11が通過すべき位置を特定するために設定された高度である。通過点高度H2は、境界高度H1以下の高度の中から選択される高度である。例えば、通過点高度H2を高度10000メートルとしてもよい。
図2Aおよび図2Bは、レーダ装置14、射撃管制装置13、発射装置12、飛しょう体11の概略構成を示す機能ブロック図である。
(レーダ装置)
レーダ装置14は、実在標的を含む物体の位置、速度、種類等を検出する機能を備えている。レーダ装置14は、射撃管制装置13に、実在標的の位置データ、実在標的の速度データ、実在標的の種類データ等の標的データを、有線または無線によって、送信する。
(射撃管制装置)
射撃管制装置13は、コンピュータ13Aを備える。コンピュータ13Aは、ハードウェアプロセッサを含む演算装置130と、記憶装置135と、第1通信インターフェース136とを備える。
第1通信インターフェース136は、有線または無線を介して、コンピュータ13A外の装置からデータを受信する。例えば、第1通信インターフェース136は、レーダ装置14から送信される標的データを受信する。受信された標的データは、記憶装置135に記憶される。また、第1通信インターフェース136は、有線または無線を介して、コンピュータ13A外の装置にデータを送信する。例えば、第1通信インターフェース136は、発射装置12または飛しょう体11にデータを送信する。
ハードウェアプロセッサは、記憶装置135に記憶されたプログラムを実行することにより、演算装置130を、標的データ取得部131(標的データ取得手段)、目標会合点決定部132(目標会合点決定手段)、あるいは、目標通過条件決定部133(目標通過条件決定手段)として機能させる。また、ハードウェアプロセッサは、記憶装置135に記憶されたプログラムを実行することにより、演算装置130を、第1通信インターフェース136を介してコンピュータ13A外の装置にデータを送信するデータ送信部134(データ送信手段)として機能させる。
記憶装置135は、演算装置130を標的データ取得部131、目標会合点決定部132、目標通過条件決定部133、あるいは、データ送信部134として機能させるプログラムを記憶している。また、記憶装置135は、標的データを含む各種データを記憶する。前記プログラムは、CD−ROM等の情報記録媒体137を介して、記憶装置135にインストールされてもよい。
(発射装置)
発射装置12は、飛しょう体11を発射させる装置である。発射装置12は、コンピュータ12Aを備える。コンピュータ12Aは、発射制御装置120と、記憶装置125と、第2通信インターフェース126とを備える。
第2通信インターフェース126は、有線または無線を介して、コンピュータ12A外の装置からデータを受信する。例えば、第2通信インターフェース126は、射撃管制装置13からデータを受信する。受信されたデータは、記憶装置125に記憶される。また、第2通信インターフェース126は、有線または無線を介して、コンピュータ12A外の装置にデータを送信する。例えば、第2通信インターフェース126は、飛しょう体11にデータを送信する。
発射装置12の発射制御装置120は、射撃管制装置13から受信するデータに基づいて、発射台12Bの角度を調整する信号を、発射台12Bに送信する。また、発射制御装置120は、飛しょう体11を発射するタイミングを決定し、飛しょう体11に発射信号を送信する。なお、発射装置12は、発射台の角度が固定である発射装置であってもよい。発射台の角度が固定である発射装置を用いる場合には、発射台12Bの角度を調整する信号を、発射台12Bに送信する必要はない。
(飛しょう体)
飛しょう体11は、センサ110と、慣性航法装置111と、コンピュータ11Aと、推力発生装置113と、操舵装置114とを備える。コンピュータ11Aは、ハードウェアプロセッサを含む飛しょう体制御装置112と、記憶装置115と、第3通信インターフェース116とを備える。なお、慣性航法装置111と飛しょう体制御装置112とは、1つの装置であってもよい。飛しょう体11は、終末誘導に際して用いる探査装置117(例えば、レーダまたは赤外線シーカ等)を備えていてもよい。
センサ110は、位置センサ、速度センサ、加速度センサ、方位センサ(ジャイロ)等を含む。センサ110は、飛しょう体11の位置、速度、加速度、姿勢等を検出する。
慣性航法装置111は、センサ110が検出する検出信号に基づいて、飛しょう体11の位置データ、速度データ、加速度データ、姿勢データ等を算出する。
慣性航法装置111は、算出された位置データ、速度データ、加速度データ、姿勢データ等の飛しょう体の飛しょうデータを、飛しょう体制御装置112に送信する。
飛しょう体制御装置112は、慣性航法装置111から受信する飛しょう体の飛しょうデータ、および、射撃管制装置13または発射装置12から受信するデータ(後述の目標通過条件、目標会合点に関するデータ等)に基づいて、飛しょう制御指令データを算出する。飛しょう制御指令データには、例えば、推力指令値、操舵量指令値等が包含される。算出された推力指令値は、推力発生装置113に送信され、算出された操舵量指令値は、操舵装置114に送信される。
第3通信インターフェース116は、有線または無線を介して、コンピュータ11A外の装置からデータを受信する。例えば、第3通信インターフェース116は、発射装置12からデータを受信する。受信されたデータは、記憶装置115に記憶される。代替的に、あるいは、付加的に、第3通信インターフェース116は、発射装置12を介さずに、直接的に、射撃管制装置13から、データを受信してもよい。また、第3通信インターフェース116は、有線または無線を介して、コンピュータ11A外の装置にデータを送信する。例えば、第3通信インターフェース116は、推力発生装置113にデータ(推力指令値)を送信し、操舵装置114にデータ(操舵量指令値)を送信する。また、第3通信インターフェース116は、発射装置12または射撃管制装置13にデータを送信してもよい。
推力発生装置113は、飛しょう体制御装置112から受信した飛しょう制御指令データ(推力指令値)に基づいて、推力を発生する。操舵装置114は、飛しょう体制御装置112から受信した飛しょう制御指令データ(操舵量指令値)に基づいて、操舵量を変更する。
(仮想標的、仮想会合点、通過条件)
図3、および、図4を参照して、仮想標的、仮想会合点、通過条件について説明する。説明の複雑化を避けるために、2次元座標系を用いて説明する。しかし、実施形態は、3次元座標系に拡張して適用可能であることが明らかである。座標系の原点Oは、発射装置12の位置を通る鉛直方向の直線と海抜0mの面との交点とする。X軸は、水平方向に沿う軸であり、Y軸は、鉛直方向に沿う軸である。
図3において、複数の仮想標的(70−11、70−12、70−13)に対して、複数の仮想会合点(p11、p12、p13)が設定されている。第1仮想標的70−11に対応する第1仮想会合点p11の座標は(x1、y1)である。第2仮想標的70−12に対応する第2仮想会合点p12の座標は(x2、y1)である。第3仮想標的70−13に対応する第3仮想会合点p13の座標は(x3、y1)である。なお、発射装置12の位置をr(0、hr)で表す時、発射装置12の位置rと第1仮想会合点p11との間の水平距離はx1であり、発射装置12の位置rと第1仮想会合点p11との間の鉛直距離は(y1−hr)である。なお、図3に記載の例では、第1仮想会合点p11における第1仮想標的70−11の進入角φは、進入角φ1であり、第2仮想会合点p12における第2仮想標的70−12の進入角と等しい。また、第1仮想会合点p11における第1仮想標的70−11の進入角は、第3仮想会合点p13における第3仮想標的70−13の進入角と等しい。
飛しょう体11を第1仮想会合点p11に到達させることを考える。飛しょう体11を第1仮想会合点p11に到達させる経路としては、複数の経路が想定される。実施形態においては、想定される複数の経路の中から、1つの経路が算出される。経路算出は、経路算出アルゴリズムを用いることによって行われる。経路算出アルゴリズムとしては、適宜の最適化アルゴリズムを用いることが可能である。経路算出は、射撃管制装置13のコンピュータ13Aによって行われてもよいし、他のコンピュータによって行われてもよい。経路算出に際して、経路算出を行うコンピュータ(以下、「経路算出装置」という。)には、第1仮想会合点p11の位置データ(x1、y1)、第1仮想会合点における第1仮想標的70−11の進入角データ(φ1)を含む入力データが入力される。なお、入力データには、飛しょう体自体の性能が包含されてもよい。飛しょう体自体の性能には、例えば、飛しょう体の重量、飛しょう体の最大推力、飛しょう体の燃料搭載量、低高度領域(すなわち、高度が、境界高度H1以下の高度である領域)における空力旋回性能等が含まれる。経路算出装置は、通過点高度H2を通過する際の通過点位置データ(xx11、hh11)、および、第1経路角データβ11を出力する。任意付加的に、経路算出装置は、飛しょう体11が通過点高度H2を通過する際の第1速度データv11(なお、速度データには、マッハ数等、速度に対応するデータが包含される。)を出力してもよい。任意付加的に、経路算出装置は、飛しょう体11が発射されてから第1通過点q11を通過するまでの経路を示す経路データC11を出力してもよい。
同様に、飛しょう体11を第2仮想会合点p12に到達させることを考える。飛しょう体11を第2仮想会合点p12に到達させる経路としては、複数の経路が想定される。実施形態においては、想定される複数の経路の中から、1つの経路が算出される。経路算出に際して、経路算出装置には、第2仮想会合点p12の位置データ(x2、y1)、第2仮想会合点における第2仮想標的70−12の進入角データ(φ1)を含む入力データが入力される。なお、入力データには、飛しょう体自体の性能が包含されてもよい。経路算出装置は、通過点高度H2を通過する際の通過点位置データ(xx12、hh12)、および、第2経路角データβ12を出力する。任意付加的に、経路算出装置は、飛しょう体11が通過点高度H2を通過する際の第2速度データv12を出力してもよい。任意付加的に、経路算出装置は、飛しょう体11が発射されてから第2通過点q12を通過するまでの経路を示す経路データC12を出力してもよい。
飛しょう体11を第3仮想会合点p13に到達させる場合も同様であるので、説明は省略する。なお、図3に記載の例では、第1通過点q11におけるy座標hh11(すなわち、高度)は、通過点高度H2であり、第2通過点q12におけるy座標hh12(すなわち、高度)は、通過点高度H2であり、両者は互いに等しい。代替的に、1つの通過点におけるy座標(すなわち、通過点高度)が、他の通過点におけるy座標(すなわち、通過点高度)と、異なるようにしてもよい。換言すれば、通過点毎に、通過点高度H2を変化させてもよい。なお、各通過点の高度は、設定最大高度以下に設定される。例えば、設定最大高度は、境界高度H1である。
図4において、複数の仮想標的(70−21、70−22、70−23)に対して、複数の仮想会合点が設定されている。第4仮想標的70−21に対応する第4仮想会合点p21の座標は(x1、y2)である。第5仮想標的70−22に対応する第5仮想会合点p22の座標は(x2、y2)である。第6仮想標的70−23に対応する第6仮想会合点p23の座標は(x3、y2)である。図4に記載の例における各仮想会合点のy座標は、図3に記載の例における各仮想会合点のy座標よりも小さい。すなわち、図4に記載の例における仮想会合点の高度は、図3に記載の例における仮想会合点の高度よりも低い。なお、図4に記載の例では、各仮想会合点における仮想標的の進入角φは、進入角φ1であり、図3に記載の例における仮想標的の進入角と等しい。
飛しょう体11を第4仮想会合点p21に到達させることを考える。飛しょう体11を第4仮想会合点p21に到達させる経路としては、複数の経路が想定される。実施形態においては、想定される複数の経路の中から、1つの経路が算出される。経路算出は、経路算出アルゴリズムを用いることによって行われる。経路算出アルゴリズムとしては、適宜の最適化アルゴリズムを用いることが可能である。経路算出に際して、経路算出装置には、第4仮想会合点p21の位置データ(x1、y2)、第4仮想会合点における第4仮想標的70−21の進入角データ(φ1)を含む入力データが入力される。なお、入力データには、飛しょう体自体の性能が包含されてもよい。経路算出装置は、通過点高度H2を通過する際の通過点位置データ(xx21、hh21)、および、第4経路角データβ21を出力する。任意付加的に、経路算出装置は、飛しょう体11が通過点高度H2を通過する際の第4速度データv21を出力してもよい。任意付加的に、経路算出装置は、飛しょう体11が発射されてから第4通過点q21を通過するまでの経路を示す経路データC21を出力してもよい。
飛しょう体11を第5仮想会合点p22に到達させる場合、飛しょう体11を第6仮想会合点p23に到達させる場合も同様であるので、説明は省略する。
経路算出装置が出力するデータ(通過点位置データ、経路角データ、速度データ、経路データ等)は、入力データ(仮想会合点の位置データ、仮想会合点における仮想標的の進入角データ等)とともに、コンピュータ13A(例えば、射撃管制装置13のコンピュータ)の記憶装置135に記憶される。より詳細には、記憶装置135には、第1仮想標的70−11について、第1仮想会合点p11の位置データ(x1、y1)と、第1仮想会合点における第1仮想標的70−11の進入角データ(φ1)と、第1通過条件とが関連付けられて記憶される。なお、第1通過条件には、第1通過点q11の位置データ(xx11、hh11)と、第1通過点q11における第1経路角データβ11とが包含される。第1通過条件には、第1速度データv11が包含されてもよい。また、記憶装置135に記憶される第1通過条件は、第1通過点の位置データ(xx11、hh11)と、第1経路角データβ11とを包含する経路データC11であってもよい。第2仮想標的70−12等についても同様である。以上のとおり、記憶装置135には、複数の仮想会合点の位置データと、複数の仮想進入角データと、複数の通過条件とが関連付けられて記憶される。
記憶装置135には、複数の仮想会合点について、複数の仮想会合点の位置データと、複数の仮想進入角データと、複数の通過条件とを関連付けるデータテーブル(換言すれば、射表)が記憶されていてもよい。
図5Aに、記憶装置135が記憶しているデータテーブル80(射表)の一例を示す。図5Aに記載されたデータテーブル80は、各仮想会合点における仮想標的の進入角φが、進入角φ1である場合のデータテーブルである。データテーブル80は、高度(縦軸)と水平距離(横軸)で示される任意の仮想会合点(例えば、p11乃至p33)に対して、飛しょう体が通過すべき通過点位置データと当該通過点位置における経路角データを含む通過条件を示している。例えば、仮想会合点p31のx座標すなわち水平距離がx1、仮想会合点p31のy座標すなわち高度がy3のとき、通過条件に包含される通過点位置データは、(xx31、hh31)であり、通過条件に包含される経路角データは、β31である。
なお、記憶装置135には、各仮想会合点における仮想標的の進入角φが、進入角φ1である場合のデータテーブル80を含む複数のデータテーブルが記憶されている。記憶装置135には、図5Aに記載されたデータテーブル80に加えて、例えば、図5Bに記載されたデータテーブル80’が記憶されている。図5Bに記載されたデータテーブル80’は、各仮想会合点における仮想標的の進入角φが、進入角φ1と異なる進入角φ2(φ2<φ1)である場合のデータテーブルである。
なお、複数のデータテーブル(例えば、データテーブル80、データテーブル80’等)を統合して、1つのデータテーブルとしてもよい。図6に、統合されたデータテーブル80’’の一例を示す。
次に、標的データ取得部、目標会合点決定部、目標通過条件決定部、データ送信部について説明する。
(標的データ取得手段)
演算装置130の標的データ取得部131は、第1通信インターフェース136を介して、レーダ装置14から、実在標的30の位置データと速度データとを含む標的データを取得する。より具体的には、レーダ装置14から送信される標的データは、第1通信インターフェース136を介して、射撃管制装置13によって受信される。受信された標的データは、記憶装置135に記憶される。標的データ取得部131は、記憶装置135から、記憶された標的データを取得する。
(目標会合点決定手段)
目標会合点決定部132は、標的データ取得部131によって取得された標的データに基づいて、飛しょう体11と実在標的30とが会合すべき目標会合点50を決定する。なお、標的データには、実在標的30の位置データと速度データとが包含される。また、速度データには、実在標的30の速さデータと実在標的30の飛しょう方向データとが包含される。なお、目標会合点50を決定する際に使用される標的データには、例えば、標的の種類を示すデータが包含されていてもよい。標的データが、標的の種類を示すデータを包含する場合には、上述のデータテーブル80、80’は、標的の種類毎に準備されてもよい。また、予め、標的の飛しょうパターンが知られている場合には、目標会合点50を決定する際に使用される標的データに、標的の飛しょうパターンが包含されていてもよい。
目標会合点50の決定方法の一例について説明する。目標会合点決定部132は、取得された標的データに基づいて、実在標的30の標的飛しょう経路40を予測する。また、目標会合点決定部132は、記憶装置135が記憶しているデータテーブルに基づいて、高度が一番高い仮想会合点の組を第1グループとして抽出する。図5Aに記載の例では、第1仮想会合点p11の高度y1、第2仮想会合点p12の高度y1、および、第3仮想会合点p13の高度y1が、一番高い高度である。よって、目標会合点決定部132は、第1仮想会合点p11、第2仮想会合点p12、および、第3仮想会合点p13を、第1グループとして抽出する。次に、目標会合点決定部132は、予測された標的飛しょう経路40と高度y1との交点の座標(以下、「第1座標」という。)を算出する。また、目標会合点決定部132は、第1座標における、実在標的の予測進入角φt1を算出する。次に、目標会合点決定部132は、複数のデータテーブル(80、80’)の中から、予測進入角φt1に対応するデータテーブル(例えば、予測進入角φt1と最も近い進入角について与えられたデータテーブル)を抽出する。
代替的に、目標会合点決定部132が抽出するデータテーブルは、下記のような第3のデータテーブルであってもよい。具体的には、例えば、目標会合点決定部132が、複数のデータテーブル(80、80’)の中から、予測進入角φt1より大きく、かつ、予測進入角φt1に最も近い進入角データに対応するデータテーブルである第1のデータテーブル、および、予測進入角φt1より小さく、かつ、予測進入角φt1に最も近い進入角データに対応するデータテーブルである第2のデータテーブルを抽出する。次に、目標会合点決定部132は、第1のデータテーブルの各データと第2のデータテーブルの各データとを補間することによって得られる第3のデータテーブルを作成する。当該作成された第3のデータテーブルを、抽出されたデータテーブルとして用いる。第3のデータテーブルは、記憶装置135に記憶される。第3のデータテーブルには、第1のデータテーブルと同様に、仮想会合点の位置データと、仮想進入角データと、通過条件(例えば、通過点データ、および、経路角データ)とが関連付けられて記憶されている。
図7に、第3のデータテーブル80’’’の例を示す。図8に記載の第3のデータテーブル80’’’は、例えば、図5Aに記載のデータテーブル80を第1のデータテーブルとし、図5Bに記載のデータテーブル80’を第2のデータテーブルとした時に、第1のデータテーブルと第2のデータテーブルとに基づいて算出される補間データテーブルである。予測進入角φt1が、kφ1+(1−k)φ2である場合を想定する。なお、kは、0以上1未満の数である。仮想会合点p11(x1,y1)に対応する通過点は、例えば、q’’’11=kq11+(1−k)q’11=((kxx11+(1−k)xx’11、khh11+(1−k)hh’11))である。また、仮想会合点p11(x1,y1)に対応する経路角は、例えば、β’’’11=kβ11+(1−k)β’11である。通過点データq’’’11および経路角データβ’’’11は、それぞれ、補間により算出された通過点データおよび経路角データである。よって、通過点データq’’’11および経路角データβ’’’11は、それぞれ、補間通過点データおよび補間経路角データということもできる。補間通過点データおよび補間経路角データは、補間通過条件ということもできる。仮想会合点p12、p13、p21、p22、p23、p31、p32、p33に対応する補間通過条件(すなわち補間通過点データおよび補間経路角データ)についても、上記と同様にして算出することが可能である。なお、補間の方式は、図7に記載の例に限定されない。補間の方式としては、任意の方式を採用することが可能である。
ここでは、目標会合点決定部132によって、データテーブル80が抽出されたものと仮定する。次に、目標会合点決定部132は、第1仮想会合点p11、第2仮想会合点p12、および、第3仮想会合点p13の中から、第1座標に最も近い仮想会合点を抽出する(以下、第1座標に最も近い仮想会合点を「第1抽出会合点」という。)。なお、第1抽出会合点は、第1座標に近い少なくとも2つの仮想会合点から、補間によって算出されてもよい。次に、目標会合点決定部132は、実在標的30が、現在位置から第1座標に至るまでの実在標的到達予測時間と、飛しょう体11が、発射装置12から第1抽出会合点に至るまでの飛しょう体到達予測時間とを算出する。なお、記憶装置135に、予め、飛しょう体11が、発射装置12から各仮想会合点に至るまでの飛しょう体到達予測時間を記憶しておけば、飛しょう体到達予測時間の算出を省略することができる。次に、目標会合点決定部132は、飛しょう体到達予測時間が、実在標的到達予測時間よりも短いかどうかを判定する。飛しょう体到達予測時間が、実在標的到達予測時間よりも短い場合、目標会合点決定部132は、前記第1座標を、目標会合点として決定する。
飛しょう体到達予測時間が、実在標的到達予測時間よりも長い場合、飛しょう体11と実在標的30とを会合(あるいは、接近)させることができない。このため、目標会合点決定部132は、記憶装置135が記憶しているデータテーブルの中から、高度が二番高い仮想会合点の組を第2グループとして抽出する。図5Aに記載の例では、第4仮想会合点p21の高度y2、第5仮想会合点p22の高度y2、および、第6仮想会合点p23の高度y2が、二番目に高い高度である。よって、目標会合点決定部132は、第4仮想会合点p21、第5仮想会合点p22、および、第6仮想会合点p23を、第2グループとして抽出する。次に、目標会合点決定部132は、予測された標的飛しょう経路40と高度y2との交点の座標(以下、「第2座標」と呼ぶ。)を算出する。また、目標会合点決定部132は、第2座標における、実在標的の予測進入角φt2を算出する。次に、目標会合点決定部132は、複数のデータテーブル(80、80’)の中から、予測進入角φt2に対応するデータテーブル(例えば、予測進入角φt2と最も近い進入角について与えられたデータテーブル)を抽出する。なお、目標会合点決定部132が抽出するデータテーブルは、上述の第3のデータテーブルであってもよい。ここでは、データテーブル80が抽出されたものと仮定する。次に、目標会合点決定部132は、第4仮想会合点p21、第5仮想会合点p22、および、第6仮想会合点p23の中から、第2座標に最も近い仮想会合点を抽出する(以下、第2座標に最も近い仮想会合点を「第2抽出会合点」という。)。なお、第2抽出会合点は、第2座標に近い少なくとも2つの仮想会合点から、補間によって算出されてもよい。次に、目標会合点決定部132は、実在標的30が、現在位置から第2座標に至るまでの実在標的到達予測時間と、飛しょう体11が、発射装置12から第2抽出会合点に至るまでの飛しょう体到達予測時間とを算出する。次に、目標会合点決定部132は、飛しょう体到達予測時間が、実在標的到達予測時間よりも短いかどうかを判定する。飛しょう体到達予測時間が、実在標的到達予測時間よりも短い場合、目標会合点決定部132は、前記第2座標を、目標会合点として決定する。
飛しょう体到達予測時間が、実在標的到達予測時間よりも長い場合、目標会合点決定部132は、記憶装置135が記憶しているデータテーブルの中から、高度が三番目に高い仮想会合点の組を第3グループとして抽出する。以下、繰り返しとなるため、説明は省略する。
なお、目標会合点の決定方法は、上記の例に限定されない。実施形態において、任意の目標会合点の決定方法を採用することが可能である。目標会合点の決定方法として、公知の方法を採用してもよい。
(目標通過条件決定部)
目標通過条件決定部133は、記憶装置135に記憶された複数の通過条件のうちの少なくとも1つに基づいて、目標会合点に対応する目標通過条件を決定する。例えば、目標会合点が、上述の第2座標であり、第2座標に対応する第2抽出会合点が、第5仮想会合点p22であったとする。この場合、目標通過条件決定部133は、記憶装置135に記憶された複数の通過条件の中から、第5仮想会合点p22(第2抽出会合点)に対応する通過条件を、目標通過条件として決定する。図5Aを参照すると、第5仮想会合点p22に対応する通過条件は、通過点位置データが(xx22、hh22)であり、経路角データがβ22である。したがって、目標通過条件決定部133は、通過点位置データ(xx22、hh22)と、通過点位置における経路角データβ22とを目標通過条件として決定する。
付加的に、目標通過条件決定部133は、通過点位置における速度データv22を目標通過条件として決定してもよい。代替的に、あるいは、付加的に、目標通過条件決定部133は、飛しょう体11が発射されてから目標通過点q22(xx22、hh22)を通過するまでの経路を示す経路データC22を目標通過条件として決定してもよい。なお、目標通過条件に包含される通過点位置データを、「目標通過点位置データ」といい、目標通過条件に包含される経路角データを、「目標経路角データ」といい、目標通過条件に包含される速度データを、「目標速度データ」といい、目標通過条件に包含される経路データを、「目標経路データ」という。
なお、第2座標に対応する第2抽出会合点が、第5仮想会合点p22と、第6仮想会合点p23の間にある時は、目標通過条件決定部133は、少なくとも2つの通過条件に基づいて算出される補間通過条件を目標通過条件として決定してもよい。ここでは、2つの通過条件に基づいて算出される補間通過条件を、目標通過条件として決定する例について説明する。2つの通過条件のうちの一方は、記憶装置135に記憶された第5仮想会合点p22に対応する通過条件(通過点位置データ(xx22、hh22)および経路角データβ22)である。2つの通過条件のうちの他方は、記憶装置135に記憶された第6仮想会合点p23に対応する通過条件(通過点位置データ(xx23、hh23)および経路角データβ23)である。目標通過条件決定部133は、2つの通過条件を補間することによって、補間通過条件を算出する。補間通過条件は、例えば、補間通過点位置データ(kxx22+(1−k)xx23、khh22+(1−k)hh23)、および、補間経路角データkβ22+(1−k)β23を包含する。なお、kは、0以上1未満の数である。
以上のとおり、目標通過条件決定部133は、記憶装置135に記憶された複数の通過条件のうちの少なくとも2つの通過条件に基づいて算出される補間通過条件を目標通過条件として決定してもよい。なお、補間の方式は、上述の例に限定されない。補間の方式としては、任意の方式を採用することが可能である。
(データ送信部)
データ送信部134は、目標通過条件決定部133によって決定された目標通過条件を、第1通信インターフェース136を介して、発射装置12に送信する。目標通過条件決定部133によって決定された目標通過条件は、直接的にまたは発射装置12を介して間接的に、飛しょう体11に送信される。
次に、発射装置12、飛しょう体制御装置112について説明する。
(発射装置)
発射装置12の発射制御装置120は、射撃管制装置13から受け取る目標通過条件に基づいて、発射台12Bの角度を調整する信号を、発射台12Bに送信する。また、発射制御装置120は、飛しょう体11に発射信号を送信する。発射制御装置120は、操作者による発射スイッチの操作に基づいて、飛しょう体11に発射信号を送信してもよい。発射スイッチの操作の後、上述の目標会合点、および、上述の目標通過条件が算出され、その後、発射制御装置120が、飛しょう体11に発射信号を送信するようにしてもよい。なお、発射制御装置120自体が、飛しょう体11を発射するタイミングを自動的に決定してもよい。
(飛しょう体制御装置)
飛しょう体11の飛しょう体制御装置112は、第3通信インターフェース116を介して、決定された目標通過条件を取得する。より具体的には、射撃管制装置13または発射装置12から目標通過条件を示すデータ(換言すれば、信号)が送信される。飛しょう体11は、第3通信インターフェース116を介して、目標通過条件を示すデータを受信する。受信された目標通過条件は、飛しょう体11の記憶装置115に記憶される。飛しょう体制御装置112は、記憶装置115から、記憶された目標通過条件を取得する。
飛しょう体制御装置112は、取得された目標通過条件に基づいて、目標通過条件を満たす目標飛しょう経路を算出する。目標通過条件は、例えば、目標通過点q22(xx22、hh22)を目標経路角(β22)で通過することである。飛しょう体制御装置112は、経路算出アルゴリズムを用いて、目標飛しょう経路を算出してもよい。なお、目標飛しょう経路の算出は、飛しょう体制御装置112以外の装置(コンピュータ)によって、実行されてもよい。経路算出アルゴリズムとしては、適宜の最適化アルゴリズムを用いることが可能である。なお、目標飛しょう経路は、飛しょう体11の仕様や使用環境等を考慮して、最適化アルゴリズムを用いて算出されてもよい。換言すれば、目標飛しょう経路は、飛しょう体11の仕様や使用環境に応じて、変化してもよい。目標飛しょう経路の算出に際して、飛しょう体制御装置112には、目標通過条件を含む入力データが入力される。飛しょう体制御装置112は、目標飛しょう経路を出力する。なお、目標通過条件に、飛しょう体11が発射されてから目標通過点位置を通過するまでの目標経路データ、例えば、飛しょう体11が発射されてから目標通過点q22(xx22、hh22)を通過するまでの経路を示す経路データC22が包含される時、飛しょう体制御装置112による目標飛しょう経路の算出を省略することができる。
飛しょう体制御装置112は、目標通過条件、または、目標通過条件を包含する目標飛しょう経路を含むデータを入力データとして、公知の誘導アルゴリズムを用いて、飛しょう制御指令データを算出する。飛しょう制御指令データは、加速度指令データということもできる。飛しょう制御指令データには、例えば、推力指令データ、および、操舵量指令データが包含される。誘導アルゴリズムにおいては、例えば、目標飛しょう経路に対応して選定される複数の中間点と、各中間点に対応する経路角と、飛しょう体自体の飛しょうデータとに基づいて、飛しょう制御指令データが自動的に算出されるようにしてもよい。
飛しょう体制御装置112は、慣性航法装置111から送信される飛しょう体11の実際の飛しょうデータ(例えば、飛しょう体11の位置データ、速度データ、加速度データ、姿勢データ等)を受信する。飛しょう体制御装置112は、目標飛しょう経路と、実際の飛しょうデータから算出される実際の飛しょう経路とを比較して、飛しょう制御指令データを補正してもよい。
算出された飛しょう制御指令データ、あるいは、算出され且つ補正された飛しょう制御指令データは、飛しょう体制御装置112から、推力発生装置または操舵装置に送信される。例えば、推力指令データ、および、操舵量指令データは、飛しょう体制御装置112から、推力発生装置113、および、操舵装置114に、それぞれ送信される。推力発生装置113は、推力指令データに基づいて、推力を発生し、操舵装置114は、操舵量指令データに基づいて、操舵量を変化させる。なお、飛しょう体11は、推力発生装置113を備えていない飛しょう体であってもよい。推力発生装置113を備えていない飛しょう体を用いる場合には、推力指令データは不要である。代替的に、飛しょう体11は、推力発生装置113を終末誘導時のみに用いる飛しょう体であってもよい。この場合、終末誘導時以外においては、推力指令データは不要である。
飛しょう体制御装置112は、飛しょう体11を、目標通過条件を満たすように誘導制御する。より具体的には、飛しょう体制御装置112は、目標通過条件を満たすように、飛しょう制御指令データを算出する。そして、飛しょう体制御装置112は、推力発生装置113、操舵装置114等に、飛しょう制御指令データを伝達する。
第一実施形態では、記憶装置135が、複数の仮想会合点の位置データと、複数の仮想進入角データと、複数の通過条件とを関連付けて記憶している。換言すれば、通過点を通過する時の通過条件は、仮想標的の進入角を考慮して設定されている。このため、仮想会合点の位置のみを考慮して通過条件を設定する場合と比較して、より適切な通過条件の設定が可能となる。
なお、図2Aおよび図2Bに記載の例では、飛しょう体誘導装置(より具体的には、演算装置130、記憶装置135、および、第1通信インターフェース136)が、射撃管制装置13に設けてられている。代替的に、飛しょう体誘導装置は、射撃管制装置13以外の装置に設けられていてもよい。
次に飛しょう体が、各仮想会合点に向かう経路を算出する際に使用される制約条件について説明する。
(仮想会合点に向かう経路を算出する際に使用される制約条件)
経路算出装置が、仮想会合点に向かう経路を算出するに際して、経路算出装置には、所定の制約条件が入力されてもよい。
制約条件の第1例について説明する。第1例では、飛しょう体11が仮想会合点に向かう経路(以下、「仮想経路」という。)を算出するに際して、経路算出装置には、仮想標的70と飛しょう体11との間のミスディスタンスMDが設定最大値MDmax以下であるとの第1制約条件が入力される。図8に、ミスディスタンスMDが図示されている。ミスディスタンスMDは、仮想標的飛しょう経路90を飛しょうする仮想標的70と、仮想経路95を飛しょうする飛しょう体11との間の最接近距離である。仮想会合点pにおいて、飛しょう体11と仮想標的70とを最接近させる場合には、前記第1制約条件は、仮想会合点pと飛しょう体11との間の最接近距離が設定最大値以下であるとの制約条件と等価である。なお、設定最大値MDmaxは、例えば、0m以上、かつ、所定の閾値以下の範囲から、選択される値である。所定の閾値は、例えば、飛しょう体11の性能(例えば、飛しょう体11の胴径、爆薬量等)に基づいて、決定される。所定の閾値は、例えば、0.5m、1m、または、2mであってもよい。
第1制約条件を用いて飛しょう体11が仮想会合点に向かう仮想経路を算出する場合、あるいは、第1制約条件を用いて通過条件を算出する場合、通過条件を満たして飛しょうする飛しょう体11は、仮想会合点に近接する位置に到達することが可能となる。その結果、最終的に飛しょう体11の終末誘導を行う場合に、飛しょう体11と目標会合点に向かう実在標的30とが会合しないリスクを低減することが可能となる。このため、誘導の信頼性が向上する。
制約条件の第2例について説明する。第2例では、飛しょう体11が仮想会合点に向かう仮想経路を算出するに際して、経路算出装置には、飛しょう体11と仮想標的との会合角αが設定最大会合角αmax以下であるとの第2制約条件が入力される。図9に、会合角αが図示されている。会合角αは、飛しょう体11の飛しょう経路(仮想経路95)を、仮想会合点pを通るように平行移動させた経路95’と、仮想標的飛しょう経路90とのなす角の補角である。第2制約条件を用いて仮想経路を算出する場合、あるいは、第2制約条件を用いて通過条件を算出する場合、通過条件を満たして飛しょうする飛しょう体11は、仮想標的70に対して、小さな会合角で接近することが可能となる。
飛しょう体11が、仮想標的70に対して、小さな会合角で接近することの技術的意義について、図10を参照して、説明する。
飛しょう体11aが、仮想会合点pに向かって、仮想標的70に対して会合角θaで飛しょうする場合を想定する。なお、飛しょう体11aの飛しょう経路は、仮想経路95aで示されている。また、飛しょう体11aが仮想会合点pに到達する時刻において、仮想標的70が、想定されていた位置Aではなく、位置Bに存在する場合を想定する。この場合、飛しょう体11aが位置Bに存在する仮想標的70に到達するためには、仮想経路95aを仮想経路95’aに変更する必要がある。会合角θaが相対的に大きな角度である時、仮想経路の変更角γaも相対的に大きな角度となる。そして、相対的に大きな変更角γaを実現するためには、相対的に多くの燃料を要することとなる。
これに対して、飛しょう体11bが、仮想会合点pに向かって、仮想標的70に対して会合角θbで飛しょうする場合を想定する。なお、飛しょう体11bの飛しょう経路は、仮想経路95bで示されている。また、飛しょう体11bが仮想会合点pに到達する時刻において、仮想標的70が、想定されていた位置Aではなく、位置Bに存在する場合を想定する。この場合、飛しょう体11bが位置Bに存在する仮想標的70に到達するためには、仮想経路95bを仮想経路95’bに変更する必要がある。会合角θaが相対的に小さな角度である時、仮想経路の変更角γbも相対的に小さな角度となる。そして、相対的に小さな変更角γbを実現するために、相対的に少ない燃料を要することとなる。
以上のとおり、飛しょう体11が、仮想標的70に対して、小さな会合角で接近する場合には、相対的に少ない燃料で、飛しょう体11を、会合点に向かう標的に終末誘導することが可能となる。また、変更角γbが小さいことによって、飛しょう体11と標的とが会合しないリスクを低減することが可能となる。このため、誘導の信頼性が向上する。
なお、図10に記載の例において、ミスディスタンスMDを設定最大値MDmaxよりも小さくするためには(換言すれば、飛しょう体11により標的を撃破するためには)、飛しょう体11の経路変更が必要となる。変更角が小さい場合、変更角が大きい場合と比較して、飛しょう体11の経路変更が小さくて済む。そして、飛しょう体11の経路変更が小さいことは、飛しょう体11による標的の撃破確率が上昇することを意味する。以上のとおり、飛しょう体11が、標的に対して、小さな会合角で接近する場合には、飛しょう体11の経路変更が小さくて済むことにより、飛しょう体11による標的の撃破確率が上昇する。
なお、第1制約条件と第2制約条件とは、組み合わされてもよい。すなわち、飛しょう体11が仮想会合点に向かう仮想経路を算出するに際して、経路算出装置には、仮想標的70と飛しょう体11とのミスディスタンスが設定最大値以下であるとの第1制約条件、および、前記飛しょう体11と仮想標的70との会合角が設定最大会合角以下であるとの第2制約条件が入力されてもよい。
制約条件の第3例について説明する。第3例では、飛しょう体11が仮想会合点に向かう仮想経路を算出するに際して、経路算出装置には、飛しょう体11の飛しょう時間(より具体的には、飛しょう体が発射されてから仮想標的70と最接近するまでの飛しょう時間)が最小であるとの第3制約条件が入力される。第3制約条件を用いて仮想経路を算出する場合、あるいは、第3制約条件を用いて通過条件を算出する場合、通過条件を満たして飛しょうする飛しょう体11は、より遠くの仮想会合点に到達することが可能となる。
なお、第3制約条件は、第1制約条件、第2制約条件、または、第1制約条件および第2制約条件と、組み合わされてもよい。例えば、第3制約条件と、第1制約条件および第2制約条件とを組み合わせる場合、飛しょう体11が仮想会合点に向かう仮想経路を算出するに際して、経路算出装置には、仮想標的70と飛しょう体11との間のミスディスタンスが設定最大値以下であるとの第1制約条件、飛しょう体11と仮想標的70との会合角が設定最大会合角以下であるとの第2制約条件、および、第1制約条件および第2制約条件を満たしつつ飛しょう体11の飛しょう時間が最小であるとの第3制約条件が入力される。
制約条件の第4例について説明する。第4例では、飛しょう体11が仮想会合点に向かう仮想経路を算出するに際して、経路算出装置には、予め設定された設定高度以上の高度では、飛しょう体11は、無誘導飛しょうするとの第4制約条件が入力される。設定高度は、例えば、通過点高度H2、または、境界高度H1、あるいは、その他の高度である。第4制約条件を用いる場合、設定高度以上の高度において、飛しょう体11は、無誘導飛しょうによって、仮想会合点(または、仮想会合点の近傍)に到達することが可能となる。よって、設定高度以上の高度において、飛しょう体11の飛しょう経路を変更するための燃料の使用が少なくてすむ。なお、レーダ装置14により取得される標的データ(実在標的の位置データ、実在標的の速度データ、実在標的の種類データ等)に誤りがなく、かつ、実在標的の挙動が予測の範囲内である場合には、飛しょう体11の飛しょう経路の変更は不要である。
なお、第4制約条件は、第1制約条件、第2制約条件、または、第3制約条件、あるいは、第1制約条件乃至第3制約条件のうちの少なくとも2つ以上の組み合わせ、と組み合わせされてもよい。
(飛しょう体装置の動作)
次に、第一実施形態における飛しょう体誘導装置の動作について、図11Aおよび図11Bを参照して説明する。図11Aおよび図11Bは、飛しょう体誘導システムの動作をフローチャート形式で表現したものである。
第1工程S001において、演算装置130の標的データ取得部131が、レーダ装置14から、実在標的30の位置データと速度データとを含む標的データを取得する(S001)。
第2工程S002において、目標会合点決定部132が、標的データ取得部131によって取得された標的データに基づいて、目標会合点50を決定する(S002)。目標会合点を決定するためのアルゴリズムとしては、上述の「(目標会合点決定手段)」において説明したアルゴリズムを採用してもよいし、他のアルゴリズムを採用してもよい。
第3工程S003において、目標通過条件決定部133が、記憶装置135に保存されているデータテーブル(例えば、データテーブル80、データテーブル80’等)を読み込む。なお、データテーブルは、複数の仮想会合点の位置データと、複数の仮想進入角データと、複数の通過条件とを関連付けるデータテーブルである。なお、データテーブルは、上述の第1制約条件乃至第4制約条件のうちのいずれか1つの制約条件の下で取得されたデータテーブルであってもよい。あるいは、データテーブルは、上述の第1制約条件乃至第4制約条件のうちのいずれか2つ以上の制約条件の組み合わせの下で取得されたデータテーブルであってもよい。
第4工程S004において、目標通過条件決定部133は、目標会合点決定部132によって決定された目標会合点50に基づいて、データテーブルの中から少なくとも1つの通過条件を抽出する。そして、目標通過条件決定部133は、抽出された通過条件に基づいて、目標通過条件を決定する(S004)。
第5工程S005において、演算装置130すなわちコンピュータ13Aは、決定された目標通過条件を、発射装置12または飛しょう体制御装置112に送信する(S005)。第5工程において、演算装置130あるいは射撃管制装置13は、決定された目標通過条件に加えて、目標会合点の位置データ、または、目標会合点における飛しょう体11の経路角データを、発射装置12または飛しょう体11に送信してもよい。
飛しょう体誘導システム10の動作は、上述の飛しょう体誘導装置の動作に加えて、以下の第6工程S006乃至第10工程S010を備える。
第6工程S006において、発射装置12は、射撃管制装置13から受信する目標通過条件に基づいて、発射台12Bの飛しょう体発射角度を調整する(S006)。なお、発射台の角度が固定である発射装置を用いる場合には、飛しょう体発射角度を調整する工程は省略される。発射装置12は、想定会合時刻に、飛しょう体11と実在標的30とが会合または最接近するように、飛しょう体11を発射する。なお、飛しょう体11の発射は、操作者による発射スイッチの操作に基づいて、行われてもよい。発射スイッチの操作に基づいて飛しょう体11の発射を行う場合には、発射スイッチの操作後に、上記第1工程乃至第5工程が実行され、第5工程の実行後、自動的に、飛しょう体11の発射が行われるようにしてもよい。
第7工程S007において、飛しょう体11の飛しょう体制御装置112は、射撃管制装置13から直接受信する目標通過条件、あるいは、射撃管制装置13から発射装置12を介して受信する目標通過条件に基づいて、飛しょう体11(より具体的には、推力発生装置113、または、操舵装置114)に、飛しょう制御指令データを送信する(S007)。第7工程S007において、飛しょう体11は、射撃管制装置13から直接的に、あるいは、射撃管制装置13から発射装置12を介して間接的に、目標会合点の位置データ、または、目標会合点における飛しょう体11の経路角データを受信してもよい。
第8工程S008において、飛しょう体11は、目標通過条件に対応する目標通過点を、目標通過条件に対応する経路角で通過する。
第9工程S009において、飛しょう体11は、目標会合点に向かって飛しょうする。第9工程S009において、レーダ装置14は、実在標的30の位置データ、および、速度データを随時取得してもよい。第9工程S009において、射撃管制装置13は、レーダ装置14から、実在標的30の位置データ、および、速度データを随時取得してもよい。第9工程S009において、飛しょう体11の飛しょう体制御装置112は、レーダ装置14または射撃管制装置13から、実在標的30の位置データ、および、速度データを随時取得してもよい。第9工程S009において、射撃管制装置13または飛しょう体制御装置112は、想定会合時刻に実在標的30が存在すると見込まれる位置を、実在標的30の位置データ、および、速度データに基づいて算出してもよい。想定会合時刻に実在標的30が存在すると見込まれる位置と、目標会合点の位置とが異なる場合、射撃管制装置13または飛しょう体制御装置112は、飛しょう体11の飛しょう経路を補正する補正指令値を算出してもよい。飛しょう体制御装置112は、補正指令値に基づいて、飛しょう制御指令データを補正する。補正された飛しょう制御指令データは、飛しょう体制御装置112から推力発生装置113または操舵装置114に送信される。飛しょう経路の補正は、操舵量を調整することによる空力旋回によって行われてもよいし、推力発生の方向を変化させることによって行われてもよいし、サイドスラスタによって行われてもよい。経路の補正が不要な期間においては、飛しょう体11は、無誘導飛しょうしてもよい。また、飛しょう体11に搭載された探査装置117が、実在標的30を捕捉した後には、飛しょう体11は、探査装置117によって取得されるデータに基づいて、実在標的30を自動追尾するようにしてもよい。
第10工程S010において、飛しょう体11と実在標的30とは会合する。
上述の飛しょう体誘導装置または飛しょう体誘導システムによれば、記憶装置135は、複数の仮想会合点の位置データと、複数の仮想進入角データと、複数の通過条件とを関連付けて記憶する。換言すれば、通過条件は、仮想標的の進入角を考慮して設定されている。このため、仮想会合点のみを考慮して通過条件を設定する場合と比較して、より適切に通過条件が設定される。通過条件が適切に設定されることにより、飛しょう体が通過条件に対応する目標通過点を通過した後、飛しょう体11の誘導に必要とされる燃料の量を低減することが可能となる。これにより、飛しょう体11が備えるべき推力偏向装置やサイドスラスタのサイズを小さくすることができる。その結果、飛しょう体11のサイズを小さくすることが可能となる。また、通過条件が適切に設定されることにより、ミスディスタンスMDを小さくすることができる。その結果、飛しょう体11による、実在標的30の撃破確率を増加させることが可能となる。
第1実施形態のうちのいくつかの例において、通過条件は、飛しょう体と仮想標的との会合角が設定最大会合角以下となるように設定されている。このような場合、図10を参照して説明されたとおり、飛しょう体11の誘導に必要とされる燃料の量をさらに低減することが可能となる。これにより、飛しょう体11が備えるべき推力偏向装置やサイドスラスタの規模をさらに小さくすることができる。
また、第1実施形態のうちのいくつかの例において、通過条件は、飛しょう体11が発射されてから仮想標的と最接近するまでの飛しょう時間が最小となるように設定されている。このため、通過条件を満たして飛しょうする飛しょう体11は、より遠くの会合点に到達することが可能となる。その結果、より拡大された要撃範囲に対して飛しょう体11を誘導することが可能となる。
また、第1実施形態のうちのいくつかの例において、通過条件は、飛しょう体11と仮想標的70とのミスディスタンスMDが設定最大値以下となるように設定されている。このため、より確実に飛しょう体11が実在標的と会合するよう、飛しょう体11を誘導することが可能となる。
また、第1実施形態のうちのいくつかの例において、通過点高度H2が境界高度H1よりも低い高度とされている。このため、境界高度H1以上の領域において、飛しょう体11の旋回の必要性を低減するように、通過条件を設定することが可能となる。
なお、実施形態において、飛しょう体制御装置112は、飛しょう体11に備えられている例を説明したが、この例に限定されることはない。射撃管制装置13が飛しょう体制御装置112を備えていても良い。また、実施形態において、コンピュータ13Aが、射撃管制装置13に備えられている例を説明したが、この例に限定されることはない。コンピュータ13Aは、発射装置12に備えられていてもよいし、あるいは、飛しょう体11に備えられていてもよい。
(第二実施形態)
次に、本発明の第二実施形態について、図12A乃至図13Bを参照して説明する。なお、第二実施形態では、上述した第一実施形態との相違点を中心の記述し、同様の部分についてはその説明を省略する。第二実施形態における構成要素について、第一実施形態と同じ構成要素については、同じ図番を用いている。
第二実施形態の飛しょう体誘導装置において、射撃管制装置13は、目標会合点決定部132の代わりに、目標会合点算出部138を備えている。また、射撃管制装置13は、目標通過条件決定部133の代わりに、飛しょう体の目標飛しょう経路を算出する飛しょう経路算出部139を備えている。
図12Aおよび図12Bは、第二実施形態におけるレーダ装置14、射撃管制装置13、発射装置12、飛しょう体11の概略構成を示す機能ブロック図である。
図12Aおよび図12Bに示されるように、射撃管制装置13のコンピュータ13Aは、標的データ取得部131と、目標会合点算出部138と、飛しょう経路算出部139を備えている。演算装置130のハードウェアプロセッサは、記憶装置135に記憶されたプログラムを実行することにより、演算装置130を、標的データ取得部131(標的データ取得手段)、目標会合点算出部138(目標会合点算出手段)、あるいは、飛しょう経路算出部139(飛しょう経路算出手段)として機能させる。また、ハードウェアプロセッサは、記憶装置135に記憶されたプログラムを実行することにより、演算装置130を、第1通信インターフェース136を介してコンピュータ13A外の装置にデータを送信するデータ送信部134(データ送信手段)として機能させる。
標的データ取得部131は、レーダ装置14から、実在標的30の位置データと速度データとを含む標的データの入力を、第1通信インターフェース136を介して受信する。なお、標的データには、実在標的30の種類データが包含されていてもよい。
受信された標的データは、目標会合点算出部138と、飛しょう経路算出部139とに伝達される。
目標会合点算出部138は、標的データ取得部131によって取得された標的データに基づいて、目標会合点50の位置を示す第1位置データ、および、目標会合点50の位置における実在標的30の進入角を示す進入角データを算出する。算出された第1位置データ、および、進入角データは、目標会合点算出部138から飛しょう経路算出部139に伝達される。
飛しょう経路算出部139は、目標会合点算出部138によって算出された第1位置データ、および、進入角データに基づいて、目標会合点50に向かう飛しょう体11の目標飛しょう経路データを算出する。
目標飛しょう経路データの算出について、より詳細に説明する。飛しょう経路算出部139には、目標会合点算出部138によって算出された第1位置データ、および、第1進入角データが入力される。また、飛しょう経路算出部139には、飛しょう体11の目標飛しょう経路を算出するに際しての制約条件が入力される。制約条件は、例えば、実在標的30と飛しょう体11との間のミスディスタンスが設定最大値以下であるとの第1制約条件、および、飛しょう体11と実在標的30との会合角が設定最大会合角以下であるとの第2制約条件である。なお、第1制約条件と第2制約条件とは、予め記憶装置135に記憶されている。
飛しょう経路算出部139には、第1位置データ、進入角データ、第1制約条件、および、第2制約条件が入力される。また、飛しょう経路算出部139は、経路算出アルゴリズムに基づいて、目標飛しょう経路データを出力する。経路算出アルゴリズムとしては、適宜の最適化アルゴリズムを用いることが可能である。出力される目標飛しょう経路データは、例えば、飛しょう体11の位置と経路角とを対応付けるデータであってもよい。代替的に、目標飛しょう経路データは、飛しょう体11の飛しょう時間(すなわち、発射装置12から発射されてからの経過時間)と飛しょう体11に与えられるべき加速度指令値とを対応付けるデータであってもよい。出力された目標飛しょう経路データは、演算装置130(例えば、飛しょう経路算出部139)から、第1通信インターフェース136を介して、飛しょう体11の発射装置12または飛しょう体制御装置112に伝達される。
飛しょう体11の飛しょう体制御装置112は、演算装置130から、直接的に取得した目標飛しょう経路データまたは発射装置12を介して間接的に取得した目標飛しょう経路データに基づいて、飛しょう制御指令データ(例えば、推力指令値、あるいは、操舵角指令値)を算出する。飛しょう体制御装置112は、算出された飛しょう制御指令データを、推力発生装置113、または、操舵装置114に送信する。
推力発生装置113は、飛しょう体制御装置112から受信した飛しょう制御指令データに基づいて、推力を発生する。操舵装置114は、飛しょう体制御装置112から受信した飛しょう制御指令データに基づいて、操舵量を変更する。
第二実施形態では、飛しょう経路算出部139は、会合角αが所定の範囲内の値となること、および、ミスディスタンスMDが所定の範囲内の値となることを制約条件として、目標飛しょう経路データを算出している。このため、第一実施形態と同様に、飛しょう体11と実在標的30とが会合しないリスクを低減することが可能となる。このため、誘導の信頼性が向上する。
なお、第二実施形態において、第一実施形態と同様に、第1制約条件および第2制約条件を満たすことを前提として、飛しょう体が発射されてから実在標的と最接近するまでの飛しょう時間が最小となるとの第3制約条件を、飛しょう経路算出部139に入力してもよい。
また、第二実施形態において、第一実施形態と同様に、第1制約条件および第2制約条件に加えて、予め設定された設定高度以上の高度では、飛しょう体11は無誘導飛しょうするとの第4制約条件を、飛しょう経路算出部139に入力してもよい。代替的に、第1制約条件乃至第3制約条件に加えて、第4制約条件を、飛しょう経路算出部139に入力してもよい。
なお、目標飛しょう経路データは、飛しょう体11の仕様や使用環境等に基づき最適化手法等により算出される。よって、目標飛しょう経路は、飛しょう体11の仕様や使用環境が変われば、変化する。
また、第二実施形態における飛しょう体制御装置112は、飛しょう経路算出部139から、目標飛しょう経路データを取得するのに加えて、目標会合点50の位置データを取得してもよい。さらに、飛しょう体制御装置112は、慣性航法装置111から飛しょう体の位置、速度、姿勢等の飛しょう体11の飛しょうデータを取得してよい。そして、飛しょう体制御装置112は、取得された飛しょうデータに基づいて、推力発生装置113、または、操舵装置114に送信する飛しょう制御指令データを補正してもよい。
(飛しょう体誘導装置の動作方法)
次に、第二実施形態における飛しょう体誘導装置、飛しょう体誘導システムの動作について、図13Aおよび図13Bを参照して説明する。図13Aおよび図13Bは、飛しょう体誘導装置の動作をフローチャート形式で表現したものである。
第1工程S101において、記憶装置135に、第1制約条件および第2制約条件が記憶される(S101)。第1制約条件は、実在標的30と飛しょう体11との間のミスディスタンスMDが設定最大値以下であるとの制約条件である。第2制約条件は、飛しょう体11と実在標的30との会合角が設定最大会合角以下であるとの制約条件である。
第2工程S102において、演算装置130の標的データ取得部131が、レーダ装置14から、実在標的30の位置データと速度データとを含む標的データを取得する(S102)。
第3工程S103において、演算装置130の目標会合点算出部138が、標的データ取得部131によって取得された標的データに基づいて、目標会合点50の位置を示す第1位置データ、および、目標会合点50の位置における実在標的30の進入角データを算出する(S103)。目標会合点を決定するためのアルゴリズムとしては、第1実施形態で説明したアルゴリズムを採用してもよいし、他のアルゴリズムを採用してもよい。
第4工程S104において、演算装置130(具体的には、飛しょう経路算出部139)に、記憶装置135に記憶された第1制約条件および第2制約条件、並びに、目標会合点算出部138によって算出された第1位置データおよび第1進入角データを含む入力データが入力される(S104)。
第5工程S105において、演算装置130の飛しょう経路算出部139は、入力された入力データ(具体的には、第1制約条件、第2制約条件、第1位置データおよび第1進入角データ)に基づいて、経路算出アルゴリズムを用いて、目標飛しょう経路データを算出する。算出される目標飛しょう経路データは、第1制約条件および第2制約条件を満たす目標飛しょう経路データである。目標飛しょう経路は、目標会合点に向けて飛しょう体を飛しょうさせる飛しょう経路である。
なお、演算装置130(具体的には、飛しょう経路算出部139)に入力される入力データには、飛しょう体11が発射されてから実在標的30と最接近するまでの飛しょう時間が最小となるとの第3制約条件が含まれていてもよい。この場合、演算装置130は、第1制約条件、第2制約条件、第3制約条件、第1位置データおよび第1進入角データに基づいて、経路算出アルゴリズムを用いて、目標飛しょう経路データを算出する。算出される目標飛しょう経路データは、第1制約条件、第2制約条件、および、第3制約条件を満たす目標飛しょう経路データである。
代替的に、演算装置130(具体的には、飛しょう経路算出部139)に入力される入力データには、予め設定された設定高度以上の高度では、前記飛しょう体11は無誘導飛しょうするとの第4制約条件が含まれていてもよい。この場合、演算装置130は、第1制約条件、第2制約条件、第4制約条件、第1位置データおよび第1進入角データに基づいて、経路算出アルゴリズムを用いて、目標飛しょう経路データを算出する。算出される目標飛しょう経路データは、第1制約条件、第2制約条件、および、第4制約条件を満たす目標飛しょう経路データである。
なお、演算装置130(具体的には、飛しょう経路算出部139)に入力される入力データには、第3制約条件および第4制約条件が含まれていてもよい。この場合、演算装置130は、第1制約条件、第2制約条件、第3制約条件、第4制約条件、第1位置データおよび第1進入角データに基づいて、経路算出アルゴリズムを用いて、目標飛しょう経路データを算出する。算出される目標飛しょう経路データは、第1制約条件、第2制約条件、第3制約条件、および、第4制約条件を満たす目標飛しょう経路データである。
第6工程S106において、演算装置130は、算出された、目標飛しょう経路データを、発射装置12または飛しょう体制御装置112に送信する。
上述の第1工程S101乃至第6工程S106は、飛しょう体誘導装置によって、実行される動作である。また、飛しょう体誘導システム10の動作は、上述の飛しょう体誘導装置の動作に加えて、以下の第7工程S107乃至第10工程S110を備える。
第7工程S107において、発射装置12は、射撃管制装置13から受信する目標飛しょう経路データに基づいて、発射台12Bの飛しょう体発射角度を調整する(S107)。なお、発射台の角度が固定である発射装置を用いる場合には、飛しょう体発射角度を調整する工程は省略される。発射装置12は、想定会合時刻に、飛しょう体11と実在標的30とが会合または最接近するように、飛しょう体11を発射する。なお、飛しょう体11の発射は、操作者による発射スイッチの操作に基づいて、行われてもよい。発射スイッチの操作に基づいて飛しょう体11の発射を行う場合には、発射スイッチの操作後に、上記第1工程乃至第6工程が実行され、第6工程の実行後、自動的に、飛しょう体11の発射が行われるようにしてもよい。
第8工程S108において、飛しょう体11の飛しょう体制御装置112は、射撃管制装置13から直接受信する目標飛しょう経路データ、あるいは、射撃管制装置13から発射装置12を介して受信する目標飛しょう経路データに基づいて、公知の誘導アルゴリズムを用いて、飛しょう制御指令データを算出する。飛しょう体制御装置112は、飛しょう体11(より具体的には、推力発生装置113、または、操舵装置114)に、算出された飛しょう制御指令データを送信する(S108)。第8工程S108において、飛しょう体11は、射撃管制装置13から直接的に、あるいは、射撃管制装置13から発射装置12を介して間接的に、目標会合点の位置データ、または、目標会合点における飛しょう体11の経路角データを受信してもよい。
第9工程S109において、飛しょう体11は、目標会合点に向かって飛しょうする。第9工程S109において、レーダ装置14は、実在標的30の位置データ、および、速度データを随時取得してもよい。第9工程S109において、射撃管制装置13は、レーダ装置から、実在標的30の位置データ、および、速度データを随時取得してもよい。第9工程S109において、飛しょう体制御装置112は、レーダ装置14または射撃管制装置13から、実在標的30の位置データ、および、速度データを随時取得してもよい。第9工程S109において、射撃管制装置13または飛しょう体11(例えば、飛しょう体制御装置112)は、想定会合時刻に実在標的30が存在すると見込まれる位置を、実在標的30の位置データ、および、速度データに基づいて算出してもよい。想定会合時刻に実在標的30が存在すると見込まれる位置と、目標会合点の位置とが異なる場合、射撃管制装置13または飛しょう体制御装置112は、飛しょう体11の目標飛しょう経路を補正する補正指令値を算出してもよい。飛しょう体制御装置112は、補正指令値に基づいて、飛しょう制御指令データを補正する。補正された飛しょう制御指令データは、飛しょう体制御装置112から推力発生装置113または操舵装置114に送信される。飛しょう経路の補正は、操舵量を調整することによる空力旋回によって行われてもよいし、推力発生の方向を変化させることによって行われてもよいし、サイドスラスタによって行われてもよい。経路の補正が不要な期間においては、飛しょう体11は、無誘導飛しょうしてもよい。また、飛しょう体11に搭載された探査装置117が、実在標的30を捕捉した後には、飛しょう体11は、実在標的30を自動追尾するようにしてもよい。
第10工程S010において、飛しょう体11と実在標的30とは会合する。
第二実施形態では、演算装置が、実在標的と飛しょう体との間のミスディスタンスが設定最大値以下であるとの第1制約条件、および、飛しょう体と実在標的との会合角が設定最大会合角以下であるとの第2制約条件に基づいて、飛しょう体の目標飛しょう経路を算出している。このため、飛しょう体11の誘導に必要とされる燃料の量を低減することが可能となる。これにより、飛しょう体11が備えるべき推力偏向装置やサイドスラスタの規模を小さくすることができる。
また、第二実施形態のうちのいくつかの例において、演算装置が、飛しょう体11が発射されてから仮想標的と最接近するまでの飛しょう時間が最小となる第3制約条件に基づいて、飛しょう体の目標飛しょう経路を算出している。このため、飛しょう体11は、より遠くの目標会合点に到達することが可能となる。その結果、より拡大された要撃範囲に対して飛しょう体11を誘導することが可能となる。
また、第二実施形態のうちのいくつかの例において、演算装置が、予め設定された設定高度以上の高度では、前記飛しょう体は無誘導飛しょうするとの第4制約条件に基づいて、飛しょう体の目標飛しょう経路を算出している。このため、予め設定された高度以上の領域において、飛しょう体11の旋回の必要性を低減することが可能となる。
なお、実施形態において、飛しょう体制御装置112は、飛しょう体11に備えられている例を説明したが、この例に限定されることはない。射撃管制装置13が飛しょう体制御装置112を備えていても良い。また、実施形態において、コンピュータ13Aが、射撃管制装置13に備えられている例を説明したが、この例に限定されることはない。コンピュータ13Aは、発射装置12に備えられていてもよいし、あるいは、飛しょう体11に備えられていてもよい。
なお、上述の飛しょう体誘導装置は、内部にコンピュータ13Aを有している。そして、上述した飛しょう体誘導装置を作動させるプログラムは、コンピュータによって読み取り可能な記録媒体(非一時的なコンピュータ可読記録媒体)または記憶装置に記憶されている。当該プログラムをコンピュータが読み出して実行することによって、上記の各工程に対応する処理が行われる。ここでコンピュータによって読み取り可能な記録媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、DVD−ROM、半導体メモリ等をいう。また、このコンピュータプログラムを通信回線によってコンピュータに配信し、この配信を受けたコンピュータが当該プログラムを実行するようにしても良い。
また、上記プログラムは、当該プログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。また、上記プログラムは、前述した工程あるいは機能の一部を実現するためのものであっても良い。さらに、上記プログラムは、前述した工程あるいは機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であっても良い。
本発明は上記各実施形態に限定されず、本発明の技術思想の範囲内において、各実施形態は適宜変形又は変更され得ることは明らかである。また、各実施形態又は変形例で用いられる種々の技術は、技術的矛盾が生じない限り、他の実施形態又は変形例にも適用可能である。