JP6388699B1 - 迷彩柄帯状織物の製造方法、及び迷彩柄帯状織物 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】迷彩柄帯状織物の製造方法は、迷彩柄帯状織物1を製造するものであり、波長域1000nmから1200nmの光に対する反射率が40%から60%である原糸を使用して、厚さZが0.5mmから3.0mmの帯状織物を作製する帯状織物作製工程と、帯状織物作製工程で作製した帯状織物に対し、昇華転写印刷方式によって、複数の色彩2を着色させ、この色彩の1000nmから1200nmの光に対する反射率が40%から60%であり、かつ、それぞれの色彩2の表示面積から算出される1000nmから1200nmの光に対する加重平均反射率が40%から55%となるように迷彩柄3を施す昇華転写印刷工程とを含む構成をとる。
【選択図】図1
Description
特許文献1及び特許文献2では、赤外線吸収剤が添加された繊維を染色した迷彩加工ナイロン布帛に係る発明が提案されている。
一方、特許文献3及び特許文献4では、原糸に赤外線吸収剤と赤外線反射剤、及び着色剤を予め混合させ、色相(H)、明度(V)、彩度(C)及び近赤外領域(1000nmから1200nm)の光に対する反射率を目標値に合致させた原着ポリエステルを作製し、その原糸を用いてジャガード織を施すことによって迷彩柄を作製する方法が提案されている。なお、以下、色相・明度・彩度をHVCとも記す。
この迷彩柄帯状織物の製造方法では、原糸の着色に必要なマスターチップの開発する工程、マスターチップを適用した原糸を生産する工程、原糸を撚糸する工程、撚糸された原糸をジャガード織によってサンプルを作成する工程、サンプルのHVC評価及び赤外線反射率評価を実施する工程を経て、ジャガード織迷彩柄帯状織物が完成する。そのため、ジャガード織迷彩柄帯状織物の開発までには、半年以上の期間を要する。
そのため、迷彩柄が、例えば4色から5色で構成されている場合、1トンを生産するにしても全色では4トンから5トンとなる。一般的な受注量は糸量で換算すると200kgから300kgであり、需要と供給のバランスが全く吊り合わない状況が生じる。この問題を解決するためには、特殊な小型紡糸機を使用することや生産された原着原糸を長期保存することが考えられる。
なお、波長域1000nmから1200nmの光に対する加重平均反射率は、各色彩における区間平均反射率と表示面積比を積算した値である平均寄与率を算出し、それらの平均寄与率を加算して算出したものである。
本発明の迷彩柄帯状織物の製造方法は、個別の色彩の赤外線反射率を規制するのでなく、それぞれの色彩の表示面積から算出される波長域1000nmから1200nmの光に対する加重平均反射率が40%から55%となるように迷彩柄が施された迷彩柄帯状織物を製造するものである。
結果的には、赤外線スコープのレーザー照射がなされても、各色彩に対し規制された赤外線反射率を付与した場合と同様の偽装効果が得られる。
したがって、本発明の迷彩柄帯状織物の製造方法によって、目視及び赤外線スコープのレーザーサーチにより、周囲の環境と区別がつきにくい迷彩柄帯状織物を製造することができる。
したがって、本発明の迷彩柄帯状織物の製造方法は、ジャガード織によって迷彩柄帯状織物の製造方法において問題点であった開発期間及び少Lot品番の在庫を大幅に改善することができる。
以下、本実施形態に係る迷彩柄帯状織物の製造方法及びこの製造方法によって製造された迷彩柄帯状織物1について説明する。
この迷彩柄帯状織物1の製造方法で製造された迷彩柄帯状織物1は、各色彩2の表示面積の積和から算出される、波長域1000nmから1200nmの光に対する加重平均反射率が40%から55%である。ここで、表示面積とは、帯状織物のおもて面4(あるいは、うら面5)に施された迷彩柄を構成する各色の占有面積を意味する。
この迷彩柄帯状織物1の厚さZは、0.5mmから3.0mmが好ましい。厚さZが、0.5mmよりも薄くなると、おもて面4とうら面5に着色した色彩に滲みが生じ、迷彩柄3が不鮮明になり、一方、厚さZが3mmよりも厚くなると、端面部分を均一に染色することが難しく、端面に色むらが生じる。また、厚さZが2.5mmであることがさらに好ましい。
原糸の強度は、7cN/dtex以上、初期引張抵抗度(見かけヤング率)50cN/dtexから200cN/dtexのものが好ましい。迷彩帯状織物1は、人体に装備して使用される機会が多いため、急激に大きな加重を受けたときに、迷彩柄帯状織物1が必要以上に伸張すると事故を誘発しやすい。また、迷彩柄帯状織物1が伸張しないと、人体が加重の衝撃を受けた場合、人体が損傷を受けることが懸念される。そのため、上記の初期引張抵抗度に制御することが好ましい。
赤外線反射剤には、例えば、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウムを使用することができる。中でも酸化チタンは、ポリエステルやナイロンを溶融紡糸法で作製された繊維の光沢感を消失させる効果(艶消し効果)を有し、迷彩柄帯状織物1の偽装性を高めるために有効である。赤外線反射剤として酸化チタンを使用する場合、原糸における酸化チタンの濃度は0.2%から0.3%であることが好ましい。酸化チタンの濃度が0.2%よりも小さいと、原糸の光沢感を消失させる効果が不十分となり、一方、原糸における酸化チタンの濃度が0.3%よりも大きいと、原糸の強度を低下させる。
これらの赤外線反射剤や赤外線吸収剤は、単独で添加しても、複数添加しても良い。
なお、これらの赤外線反射剤や赤外線吸収剤以外にも、制電性、耐光性、耐熱性を付与する添加剤を含有させてもよい。
まず、バージンチップであるポリエステルチップと、赤外線反射剤及び赤外線吸収剤を混合し、マスターチップを作製した。
赤外線反射剤には、酸化チタンを使用し、この酸化チタンは、マスターチップに対する濃度が6.0%となるように添加した。一方、赤外線吸収剤には、PRO−JET925NPを使用し、この赤外線吸収剤は、マスターチップに対する濃度が0.075%となるように添加した。
そして、各混合物を290℃から300℃で溶融紡糸し、糸状を4.5倍から5.0倍に延伸し、強度が7cN/dtex以上、見かけヤング率が50から200cN/dtexの原糸を作成した。ニードル織機を用いて、図2に示すように、各原糸から厚さZが1.5mm、短手方向の幅Xが50mm、長手方向の幅Yが5mの帯状織物を作製した。
なお、昇華転写印刷される前の帯状織物は、いずれもほぼ無色である。
なお、評価2で用いる迷彩柄帯状織物1には、淡色としてライトグリーン及びライトグレー、中間色としてグリーン及びグレー、濃色としてダークブラウン及びブラックを使用し、評価3で用いる迷彩柄帯状織物1には、ライトグレー、グレー、ダークブルー、ブラウン及びブラックを使用し、それぞれ迷彩柄を施した。
昇華転写印刷する前の状態の各帯状織物(試料1から試料3)の波長域1000nmから1200nmの赤外線反射率を測定した。赤外線反射率の測定には、島津UV−3600を用いた。なお、コントロールには、赤外線吸収剤が添加されていない原糸から作成した帯状織物を使用した。
このことから、原糸における赤外線吸収剤の濃度を調整することで、帯状織物の波長域1000nmから1200nmの光に対する反射率を調整できることが分かった。
昇華転写印刷した後の状態の各迷彩柄帯状織物1(試料4)の波長域1000nmから1200nmにおける赤外線反射率を測定した。赤外線反射率の測定には、島津UV−3600を用いた。コントロールには、着色をしていない帯状織物を使用した。なお、使用した色彩のHVC特性は表2に示した通りである。
また、淡色、中間色、濃色の順で、赤外線反射率が僅かであるが小さくなる傾向にあることがわかった。
迷彩柄帯状織物1の各色彩2における波長域1000nmから1200nmの光に対する赤外線反射率、各色彩の表面面積比、平均寄与率、波長域1000nmから1200nmの光に対する加重平均反射率をそれぞれ算出した。平均寄与率及び加重平均反射率は、下記式から算出した。
平均寄与率=区間平均反射率×表示面積比
加重平均反射率=各色の平均寄与率の総和
波長域1000nmから1200nmの光に対する各色彩の平均反射率(平均赤外線反射率)を算出した結果、50%から52%であることが分かった。また、波長域1000nmら1200nmの光に対する加重平均反射率(平均寄与率の総和)は、51.43であることがわかった。
この迷彩柄帯状織物1をリュックのショルダーベルトに使用して、赤外線スコープでサーチしたところ、迷彩柄3を着色していない場合と比べ、偽装性が向上していることが明らかであった。
以上の理由から、迷彩柄帯状織物1の波長域1000nmから1200nmの光に対する加重平均反射率が40%から55%が好ましいことが分かった。
そうすると、赤外線スコープのレーザー照射が迷彩柄帯状織物1のある一色だけではなく、全体に照射されてサーチされる場合に、各色彩2に対し、規制された反射率を付与した場合と同様な偽装効果が得られる。
したがって、本実施形態に係る迷彩柄帯状織物1の製造方法は、目視及び赤外線スコープのレーザーサーチにより、周囲の環境と区別がつきにくい迷彩柄帯状織物1を製造することができる。
したがって、本実施形態に係る迷彩柄帯状織物1の製造方法は、迷彩柄帯状織物1のおもて面4(うら面5)及びその内部まで所望の迷彩柄3をむらなく、均一に施すことができ、偽装性を高めた迷彩柄帯状織物1を製造することができる。
そのため、施された迷彩柄3は、こすれたりした場合でも剥がれ落ちづらく、さらに迷彩柄3が劣化されにくい。そのため、迷彩柄帯状織物1の偽装性を長期に亘り維持できる。
また、昇華転写印刷方式のインクに使用される分散染料は、各色彩2の色相において、波長域1000nmから1200nmの光に対する反射率がほぼ同じである。そのため、赤外線吸収剤を含有させることにより、各色彩の反射率を一律に下げることが容易にできる。
さらに、加工量の数百m単位で生産対応が可能であり、製品を在庫させる必要がない。
したがって、この迷彩柄帯状織物1の製造方法は、ジャガード織によって迷彩柄帯状織物の製造方法と比較し、開発期間及び在庫を大幅に改善できる。
2 色彩
3 迷彩柄
4 おもて面
5 うら面
X 幅(短手方向の幅)
Y 幅(長手方向の幅)
Z 厚さ
Claims (1)
- 航空自衛隊員のリュックのショルダーベルト用の迷彩柄帯状織物を製造する迷彩柄帯状織物の製造方法において、
0.2%から0.3%の添加濃度で添加された酸化チタン及び赤外線吸収剤が含有され、波長域1000nmから1200nmの光に対する反射率が40%から60%であり、強度が7cN/dtex以上のポリエステル原糸を使用して、短手方向の幅が10mmから100mm、厚さ0.5mmから3.0mmの帯状織物をニードル織機で作製する帯状織物作製工程と、
前記帯状織物作製工程で作製した前記帯状織物に対し、昇華転写印刷方式によって、
マンセル表色系において色相(H)が3.6GY、明度(V)が4.5、彩度(C)が1.8で表色され、波長域1000〜1200nmの光に対する区間平均反射率が52%であるライトグレー、
マンセル表色系において色相(H)が8.3B、明度(V)が3.6、彩度(C)が1.8で表色され、波長域1000から1200nmの光に対する区間平均反射率が51%であるグレー、
マンセル表色系において色相(H)が8.4YR、明度(V)が3.5、彩度(C)が1.2で表色され、波長域1000から1200nmの光に対する区間平均反射率が51%であるダークブラウン、
マンセル表色系において色相(H)が2.6B、明度(V)が3.3、彩度(C)が2.5で表色され、波長域1000から1200nmの光に対する区間平均反射率が51%であるダークブルー、
マンセル表色系において色相(H)が7.2P、明度(V)が2.5、彩度(C)が0.4で表色され、波長域1000から1200nmの光に対する区間平均反射率が52%であるブラック、
の色彩を、前記ライトグレーの表面面積比が48%、前記グレーの表面面積比が17%、前記ダークブラウンの表面面積比が10%、前記ダークブルーの表面面積比20%、前記ブラックの表面面積比が5%となるように、かつ、航空自衛隊用の多色方形柄となるように、着色させ、前記色彩の波長域1000nmから1200nmの光に対する反射率が40%から60%であり、かつ、それぞれの前記色彩の表示面積から算出される波長域1000nmから1200nmの光に対する加重平均反射率が51%となるように迷彩柄を施す昇華転写印刷工程と、を含む、
ことを特徴とする迷彩柄帯状織物の製造方法。
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