JP6387903B2 - 超音波信号処理装置 - Google Patents
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Description
前者の検査手法としては、フォーカスイメージング(Focus Imaging:FI)が知られている。このFIでは、フォーカス点を中心に空間分解能を高くすることができる反面、時間分解能の向上が難しい。何故なら、前者の手法では、複数の走査線からなる音響線フレームデータ(DASデータ)を得る際、個々の音響線上の箇所で焦点を結ぶような送信ビームを形成する必要があり、生成すべきDASデータの走査線数が多くなると、送信ビームの形成数も多くなって、データ1つ当りの処理時間が長期化してしまうからである。
合成受信ビームは、複数の平面波の方位方向の空間周波数特性を足し合せた空間周波数特性をもつから、一回の送信当りの角度刻みを小さくすると共に、送信回数を多くすることで、ビーム形状を滑らかにし、ビーム幅を狭めることができる。こうして、合成受信ビームの精度を高めることで、後者の検査手法による空間分解能は、前者のフォーカスイメージングに近いものとなる。
複数のフレーム期間のそれぞれにおいて、進行方向が異なる複数の超音波送信ビームを音響素子アレイに送信させる送信処理部と、
前記超音波送信ビームが反射することにより得られた反射超音波に対して受信処理を実行することで、前記複数の超音波送信ビームのそれぞれに対応する音響線フレームデータを得る受信処理部と、
複数の進行方向の全てに対応する音響線フレームデータを1つに合成することで、合成音響線フレームデータを得る合成部とを備え、
前記送信処理部は、
所定の送信パルス条件に従って、パルス波を作成するパルス波作成部と、
複数の音響素子のそれぞれに応じた遅延時間を与えた上、作成したパルス波を用いて各音響素子を駆動することにより、前記超音波送信ビームを形成する超音波送信ビームフォーマとを備え、
前記複数の進行方向は、第1方向、第2方向を含み、第2方向は、音響素子アレイの法線方向と、超音波送信ビームの進行方向とがなす角度の絶対値が、第1方向よりも小さく、
前記パルス波作成部は、超音波送信ビームを第2方向で進行させる際、超音波送信ビームを第1方向で進行させる場合よりも、被検体のより深い部分にまでエネルギーを到達させることができる送信パルス条件をパルス波作成に用い、
超音波送信ビームを第1方向で進行させる際、超音波送信ビームを第2方向に進行させる場合よりも、空間分解能をより高めることができる送信パルス条件をパルス波作成に用い、
前記受信処理部による受信処理は、受信ビームフォーミングを含み、
前記受信ビームフォーミングは、検体内部の複数の観測位置のそれぞれを合焦点として定めて、各音響素子からの入力波形に対して整相加算を施す処理であり、
前記音響線フレームデータは、複数のデータ要素から構成され、各データ要素は、各観測位置を合焦点として、受信ビームフォーミングを実行することで得られた受信ビーム波形の振幅及び/又は位相を示し、
前記合成部は、
それぞれの音響線フレームデータのデータ要素のうち、所定の進行方向の超音波送信ビームの伝播範囲に属するものを積和演算の対象として、位置的に対応するものに重み係数を乗じ、互いに足し合わせることで、合成音響線フレームデータを得、
前記音響線フレームデータのうち、音響素子からの距離が近い奥行きが浅い領域に属するデータ要素の重み付けには、送信角が大きくなるにつれ、値が増加する重み係数を使用し、
音響素子からの距離が遠い遠部領域に属するデータ要素の重み付けには、送信角が小さくなるにつれ、値が増加する重み係数を使用するるものである。
以下、図面を参照しながら、本発明に係る超音波信号処理装置の実施形態について説明する。以下の説明に係る実施の形態は、本発明の構成上の特徴および当該特徴的構成から得られる作用効果を分かりやすく説明するための1つの例示としての役割が与えられている。よって、本発明は、その本質的な特徴部分を除き、以下の形態に何ら限定を受けるものではない。
表示部103は、LCD(Liquid crystal display、液晶ディスプレイ)などであり、被検体の内部空間を示す画像や診断内容を示すグラフィクス、数値を表示する。
以上が超音波診断システム100についての説明である。
続いて、超音波信号処理装置101の内部構成について説明する。図2(a)は、超音波信号処理装置101の内部構成を示す図である。本図に示すように、超音波信号処理装置101は、操作受付部1、制御部2、超音波送信処理部3、超音波受信処理部4、データ変換部5から構成される。
制御部2は、超音波診断システム100の全体制御を行う。
超音波送信処理部3は、複数のフレーム期間をかけて、複数の進行方向に向けて送信ビームを超音波プローブ102における音響素子102a,b,c,d・・・・・g,hに送信させる。
データ変換部5は、超音波受信処理部4により得られたDASデータを、画像データや数値統計データに変換して、表示部102に表示させたり、内部ドライブ(図示せず)を通じて記録媒体に記録させる。
フレームカウンタ11は、カレントフレーム番号を格納する。初期値として、フレーム番号=1がカレントフレーム番号として格納される。時間経過に伴い、フレームカウンタ11は、カレントフレーム番号をインクリメントしてゆく。カレントフレーム番号が、フレーム総数(以降、フレーム総数Nとする)になれば、カレントフレーム番号を初期値にリセットする。
送信ビームフォーマ16は、遅延プロファイル作成部15により作成された遅延プロファイルに従い、パルス形状作成部13により作成されたパルス波を、遅延プロファイルに規定された遅延時間だけ遅延させて、音響素子102a,b,c,d・・・・・g,hに出力し、音響素子102a,b,c,d・・・・・g,hのそれぞれを駆動する。以上が超音波送信処理部3についての説明である。続いて、超音波受信処理部4の詳細について説明する。
AD変換部21は、送信ビームの反射により生じた反射超音波が音響素子102a,b,c,d・・・・・g,hに到達した際、各音響素子から出力された素子入力信号のアナログ信号波形をデジタル信号波形に変換する。
重み生成部24は、送信角に応じた送信パルス条件に従い、重み係数を作成する。
合成部25は、各フレーム期間で作成されたDASデータに対して合成処理を実行する。フレーム期間毎に生成されたDASデータの合成は、DASデータのうち、同じ座標に位置するものに重み係数を乗じて足し合わせるという積和演算で実現される。
加算器27は、乗算部26a,b,c,dにより重み係数が乗じられたDASデータのデータ要素であって、位置的に対応するものを足し合わせる。こうした足し合わせで得られたデータ要素からなるDASデータを、合成DASデータとして出力する。
続いて、送信ビームフォーマ16、受信ビームフォーマ22による処理過程について説明する。図3(a)は、図2(b)の送信ビームフォーマ16と、超音波プローブ102における音響素子アレイとを抜き出して、信号波形を書き加えた図である。図中のps1,ps2,ps3,ps4は、送信ビームフォーマ16から個々の音響素子に出力されるパルス波形である。図中のCi1,Ci2,Ci3,Ci4は、音響素子が、パルス波形で駆動されることで発生する球面波である。音響素子のそれぞれから、球面波が発せられることで、球面波の包絡線にあたる箇所に、平面波送信ビームpw1が形成される。以上のように、各音響素子にパルス波を出力することで、球面波を送信させ、平面波形状の送信ビームを形成する点は、従来のPWI合成開口との共通点である。このように、平面波を音響素子アレイに連続的に出力して音響素子の駆動を繰り返すことで、被検体の内部空間には、図中の(1)、(2)、(3)に示すように、平面波ビームが進行する。
図3との差異は、各フレーム期間において、各音響素子に出力されるパルス波に、音響素子毎の遅延時間が設定されている点である。パルス波が遅く到達した音響素子については形成される球面波が小さく(Ci1,Ci2)、遅延時間が長いパルス波については、球面波が大きくなる(Ci5)。
以上が図4のタイミングチャートについての説明である。
パルス形状作成部13によりなされる制御のうち、被検体の遠方にエネルギーを伝達させ得る制御は、重要な概念であるから、以下に詳しく説明する。上述したように、被検体の遠方にエネルギーを伝達させ得る制御には、例えば"周波数制御"、"振幅制御"、"波数制御"、"符号化方式制御"がある。始めに周波数制御について説明する。
周波数制御とは、カレント送信角の絶対値が小さくなるにつれ、音響素子アレイの駆動のためのパルス波の周波数をより低くするという可変制御である。周波数制御において、エネルギーをより遠方に伝達させるという送信パルス条件は、超音波プローブの周波数帯域において、中心周波数よりも低い周波数を用いることで実現される。カレントの送信角θiに応じた周波数を周波数F(θi)、周波数帯域の最小周波数をFmin、周波数の変化幅をΔf、角度ピッチをΔθとした場合、カレント送信角に応じた周波数F(θi)を、以下の数1の数式により算出する。
(振幅制御)
振幅制御とは、カレント送信角の絶対値が小さくなるにつれ、音響素子アレイの駆動のためのパルス波の振幅をより大きくするという可変制御である。
周波数制御と比較した際、周波数制御、振幅制御の差異は以下の通りである。
第2に変化傾向が異なる。これは、周波数制御では送信角の絶対値が小さくなると、変化量(周波数)が低くなり、送信角が大きくなると、変化量(周波数)が高くなるのに対し、振幅制御では送信角の絶対値が小さくなると、変化量(振幅)が大きくなり、送信角が大きくなると、変化量(振幅)が小さくなるというものである。
(波数制御)
波数制御とは、カレント送信角の絶対値が小さくなるにつれ、音響素子アレイの駆動のためのパルス波の波数をより多くするという可変制御である。波数制御を振幅制御と比較した場合、変化量が異なる。具体的にいうと、振幅制御では振幅を、可変制御の変化量にしていたのに対し、波数制御では、パルス波の波数を変化量としている点が、振幅制御との差となる。一方、変化傾向は振幅制御と同じであり、波数制御においても、角度が増えるにつれ、パルス波の波数を減少させるという変化傾向で、可変制御を実現する。
最大値から変化幅の倍数を減じた値を、カレント送信角に応じた変化量としていること、その倍数が、カレント送信角と、角度ピッチとから定まることは振幅制御と同じである。そのため波数制御では、カレント送信角が最小になった場合、N(θi)は波数の最大値となり、カレント送信角の絶対値が大きくなるにつれ、N(θi)が減少してゆくことになる。
パルス波の波数が1個、2個の範囲で変化する場合を例に説明する。例えば図5においてフレーム期間(2)及びフレーム期間(3)に対応する期間、すなわちカレント送信角の絶対値が他の期間において送信するカレント送信角の絶対値と比較して小さい場合における波数を2個とする。このとき、フレーム期間(1)及びフレーム期間(4)に対応する期間、すなわちカレント送信角の絶対値が他の期間において送信するカレント送信角の絶対値と比較して大きい場合における波数を、1個とする。つまり、周波数制御では図5のフレーム期間(1)〜(4)において音響素子に出力されるパルス波の周波数を、10MHz,6MHz,6MHz,10MHzに設定していたのに対し、波数制御では、図5のフレーム期間(1)〜(4)において音響素子に出力されるパルス波の波数を、1個、2個、2個、1個に設定する。各フレーム期間におけるパルス波の波数をこのように設定することで、波数制御を実行する場合でも、奥行きが深い領域におけるS/N比の向上と、奥行きが浅い領域における空間分解能の向上とを両立させることができる。
(符号化方式制御)
符号化方式制御とは、パルス波に符号化パルス波列を使用することで、より深い部分に対するエネルギー伝達を可能とする可変制御である。符号化方式制御を、周波数制御〜波数制御と比較した場合、周波数制御〜波数制御では、カレント送信角の大小に応じて、変化量である周波数、振幅、波数を増減させていたのに対し、符号化方式制御では、カレント送信角が、閾値以上であるか、下回っているかに応じて、所定の符号化方式による符号化を実行するかどうかの切り替えを実現している点が差異となる。かかる所定の符号化方式には、位相変調型の符号化方式、周波数変調方式の符号化方式がある。
パルス波の符号化状態が“符号化あり”、“符号化なし”で変化する場合を例に説明する。例えば図5においてフレーム期間(2)及びフレーム期間(3)に対応する期間、すなわちカレント送信角の絶対値が他の期間において送信するカレント送信角の絶対値と比較して小さい場合における符号化状態を“符号化あり”とする。このとき、フレーム期間(1)及びフレーム期間(4)に対応する期間、すなわちカレント送信角の絶対値が他の期間において送信するカレント送信角の絶対値と比較して大きい場合における符号化状態を、“符号化なし”とする。
(DASデータに対する処理の詳細)
図6は、図2の内部構成から受信ビームフォーマ22、送信角別DASデータ記憶部23、合成部25を抜き出して、その処理過程を書き加えた図である。図6に描かれた受信ビームフォーマ22の処理過程について説明する。図6では、受信ビームフォーマ22に、3回のビームフォーミングの過程(bf1,bf2,bf3)が書き加えられている。bf1は、フレーム期間(1)におけるビームフォーミングの過程、bf2は、フレーム期間(2)におけるビームフォーミングの過程、bf3は、フレーム期間(3)におけるビームフォーミングの過程を示す。これらbf1,bf2,bf3のうち、フレーム期間(1)におけるビームフォーミング過程bf1について説明する。bf1において、ec10は、送信ビームの送信で発生した反射超音波である。WV1,2,3,4は、反射超音波が、音響素子102a.b,c,dに到達することで発生する素子入力信号の波形であり、pf1は、焦点fc1で入力信号波形を整相するためのプロファイル曲線を示す。Sg1は、整相後の入力信号波形を加算することで得られた音響線信号波形を示す。
また加算器27による加算の過程とは、乗算器26a,b,cによる重付け結果を足し合わせ、合成DASデータにおける上記共通座標(図中の(2,2))の位相、振幅とするものである。
(重み係数の定め方)
重み係数の定め方について説明する。PWI合成開口と比較した場合、差異点は、従来のPWI合成開口において、DASデータの重み付けに用いる重み係数は固定値になっているのに対し、本実施形態において、DASデータの合成時に用いる重み係数は、重み付けの対象となるデータ要素の位置や平面波の送信角に応じて変化するというものである。
eiψ=α(cosψ+isinψ)
このψは、素子配列方向に対して平面波の進行方向がなす仰角である。
この式1の指数関数eiψの実数成分をRe(eiψ)とし、虚数成分をIm(eiψ)とする。そしてこの実数部分Re(eiψ)を、奥行きが浅い領域に対する重み係数として使用する。また、虚数成分im(eiψ)を、奥行きが深い領域に対する重み係数とし使用する。
eiψ1=α(cosψ1+isinψ1)
仰角ψが小さい場合、cosψの値は大きく、sinψの値は小さくなるので、奥行きが浅い領域に対する重み係数である指数関数の実数部分Re(eiψ)により、奥行きが浅い領域が強く重み付けされることになる。
(式3)
ei(ψ1+ψ2)=α(cos(ψ1+ψ2)+isin(ψ1+ψ2))
仰角ψが大きい場合、cosψの値は小さく、sinψの値は大きくなるので、奥行きが深い領域に対する重み係数である指数関数の虚数部分Im(eiψ)により、遠部領域が強く重み付けされることになる。尚、上記例では、重み係数の生成に指数関数を使用したが、奥行きが浅い領域に属するデータ要素に適用されるべき重み係数の特性(送信角が大きくなるにつれ、値が増加するというもの)、及び、音響素子からの距離が近い遠部領域に属するデータ要素に適用されるべき重み係数の特性(送信角が小さくなるにつれ、値が増加するというもの)を実現できるものであれば、他の関数を用いてもかまわない。またそのような関数は、線形関数、非線形関数のどちらでもよい。
図8において、ステップS1〜S11は、フレームカウンタiを制御変数としたループを構成する。当該ループの処理のうち、従来のPWI合成開口の考え方を引き継いでいる箇所は、以下の通りである。具体的にいうと、フレームカウンタiを1で初期化し(ステップS1)、送信角θiを0で初期化して(ステップS2)、進行方向をθiだけ傾かせるよう、各音響素子の遅延時間を算出し(ステップS5)、超音波プローブ102の音響素子毎に算出された遅延時間だけ球面波を遅延させた上、送信する(ステップS6)。超音波プローブ102の各音響素子が反射超音波を受信したかの受信待ちを行う(ステップS7でwait)。音響素子が反射超音波を受信すれば(ステップS7でYes)、複数の観測点を合焦点としたビームフォーミングを実行し、DASデータ(θi)を得て(ステップS8)、その後、フレームカウンタiがフレーム総数Nに到達したかどうかを判定し(ステップS9)、フレーム総数以下である場合(ステップS9でYes)、フレームカウンタiをインクリメントして(ステップS10)、送信角θiを増加させる(ステップS11)。その後、ステップS3に戻る。
。以下、個々の判定ステップの内容について説明する。
本フローチャートにおいて、iはフレームカウンタ、SumDAS(x,y)は、座標(x,y)におけるデータ要素の積算値を格納するための変数である。
先ず、DAS(θi)(x,y)が浅い領域に属する場合について説明する。DAS(θi)(x,y)が浅い領域に属する場合、ステップS44がYesとなり、ステップS45において、指数関数eiψの実数部分Re(eiψ)を、(x,y)についての重み係数(Weight(x,y))として設定する。
DAS(θi)(x,y)のデータ要素が深い領域に存在する場合、当該領域に属するデータ要素は、指数関数eiψの虚数部分が重み係数として乗じられ、積和演算に供されることになる(ステップS46、ステップS47)。
尚、DAS(θi)(x,y)が、内部空間において奥行きが深い領域に存在する場合、送信パルス条件(θi)の周波数、振幅、波数、符号化方式に応じた重み係数として、Weight(P(θi))を決定し、DASデータ(θi)(x,y)に、Weight(P(θi))を乗じたものを、SumDAS(x,y)に加算してもよい。以上で、制御手順についての説明を終える。
図4〜図9では、-20°〜+20°の範囲で、送信角を10°ずつ変化させることにより、被検体に対する送信ビームの送信を実行した。しかしこれは一例であり、平面波の角度ピッチ及び送信回数を任意 の数値に変更することができる。より現実的な角度ピッチ及び送信回数としては、4°の角度ピッチで、θiをー20°〜0°、0°〜+20°の範囲で変化させることで、計10回のビーム送信を実行するというものである。
図11(b)の上側は、超音波プローブの周波数特性のうち、-6dB以上の利得を有している帯域を抜き出して示す。図11(b)では、かかる帯域が、所定の変化幅(1MHz)で分割されている。下側は、複数送信角のそれぞれで送信される送信ビームを示す。bm1,2,3は、絶対値が比較的低い送信角(θsmallとする)で送信される送信ビームであり、bm4,5,6は、絶対値が比較的大きい送信角(θlargeとする)で送信される送信ビームである。
この変形例では、送信ビームを送信させる際の送信角の角度ピッチを細かくしてビーム送信回数を増やすと共に、この送信角の角度変化に応じた周波数変化、振幅変化も細かくするので、PWI合成開口パルス条件制御によるエネルギー伝達精度、空間分解能の精度をより一層向上させることができる。
以上、本願の出願時点において、出願人が知り得る最良の実施形態について説明したが、特に以下の項目については、更なる改良や変更実施を加えることができる。
(送信角の変化量に応じた送信パルス条件の変更)
送信角の変化量を算出して、この変化量に応じて、パルス波作成に用いる送信パルス条件を変更してもよい。具体的にいうと、算出された変化量が減少傾向であれば、エネルギーをより遠方に伝達させる送信パルス条件でパルス波作成を行ってもよい。逆に、算出された変化量が増加傾向であれば、空間分解能を高める送信パルス条件でパルス波作成を行ってもよい。
送信角と閾値との比較により、パルス波作成に用いる送信パルス条件を変更してもよい。具体的にいうと、送信角が閾値以下又は閾値未満であれば、エネルギーをより遠方に伝達させる可変制御を実行してもよい。
(符号化方式の選択)
パルス波の符号化にあたっては、特許文献2に記載されたゴレイコードを用いてもよい。ゴレイコードは、直交特性を有した複数の符号化列を、音響素子の駆動に用いてもよい。また重みチャープ符号を用いてもよい。重みチャープ符号は、周波数バンドを分割し、。分割で得られた個々の領域で、重みチャープ信号を用いてもよい。
本実施形態では、角度が小さい場合、符号化を行わず、送信角が大きいと符号化を行うとしたが、送信角の大小変化に応じて、異なる符号化方式を選択してもよい。具体的にいうと、送信角が小さくなるにつれ、複数の符号化方式のうち、被検体のより深い部分に、エネルギーを伝達しえる符号化方式をパルス波作成に用い、送信角が大きくなるにつれ、空間分解能をより高くすることができる符号化方式をパルス波作成にも用いてもよい。
ここで、周波数制御、振幅制御、波数制御、符号化方式制御の有効/無効の指定を受け付ける際、周波数制御、振幅制御、波数制御、符号化方式制御の一覧表示を行い、個々の制御の有効/無効の指定を、チェックボックスやボタンのGUIを通じて受け付けてもよい。
図1では、超音波信号処理装置101が超音波診断システムに用いられるとの仮定下で超音波信号処理装置101の実施形態を提示したが、これは一例に過ぎない。超音波信号処理装置101は、機械や建造物の内部を超音波で検査するための非破壊検査システムで用いられてもよい。また、超音波信号の処理を行うものであれば、原子力施設の内部検査システムや海底探査システムで用いられてもよい。
超音波プローブ102と、表示部103とは、超音波信号処理装置101の内部にあってもよい。また、超音波プローブ102と、表示部103とがなくてもよい。超音波信号については、超音波プローブ102からの入力を超音波信号処理装置101が処理すれば足りるからである。表示部103については、弾性率画像を示す映像信号を超音波信号処理装置101が出力して表示部103が表示すれば足りるからである。各実施の形態における超音波信号処理装置101に含まれる処理部の一部又は全部が、超音波プローブ102に含まれてもよい。
超音波プローブ102は、超音波振動子が1次元方向に配列されているプローブであってもよいし、超音波振動子がマトリックス状に配置された2次元アレイプローブであってもよい。
(重み係数のバリエーション)
第1実施形態では、指数関数を用いて、重み係数を決定したが、送信パルス条件の制御パラメータ(周波数の低さ、振幅の大きさ、波数の多さ)に応じて、重み係数を決定してもよい。また、送信パルス条件の制御パラメータ(周波数の低さ、振幅の大きさ、波数の多さ)と、重み係数との関係については、線形的な関係であってもよいし、非線形な関係であってもよい。例えば、制御パラメータと、重み係数との関係を規定してもよいし、線形的な関係を示す直線に対してアンダーシュート気味に変化する曲線に従い、制御パラメータと、重み係数との関係を、線形的な関係と規定してもよい。更に、n次元の次数をもつ変化曲線に従い、制御パラメータと、重み係数との関係を規定してもよい。
上記の各装置の全部、もしくは一部を、マイクロプロセッサ、ROM、RAM、ハードディスクユニットなどから構成されるコンピュータシステムで構成した場合、前記RAM又はハードディスクユニットに、上記超音波信号処理装置101と同様の動作を達成するコンピュータプログラムが記憶させることが望ましい。前記マイクロプロセッサが、前記コンピュータプログラムにしたがって動作することにより、各装置はその機能を達成する。
上記の超音波信号処理装置101を構成する構成要素の一部又は全部は、1つのシステムLSI(Large Scale Integration(大規模集積回路))から構成されているとしてもよい。システムLSIは、複数の構成部を1個のチップ上に集積して製造された超多機能LSIであり、具体的には、マイクロプロセッサ、ROM、RAMなどを含んで構成されるコンピュータシステムである。前記RAMには、上記各装置と同様の動作を達成するコンピュータプログラムが記憶されている。前記マイクロプロセッサが、前記コンピュータプログラムにしたがって動作することにより、システムLSIは、その機能を達成する。また、LSIに限るものではなく、専用回路又は汎用プロセッサで実現してもよい。LSI製造後にプログラムすることが可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)、又はLSI内部の回路セルの接続や設定を再構成可能なリコンフィギュラブル・プロセッサを利用してもよい。
上記の各装置を構成する構成要素の一部又は全部は、各装置に脱着可能なICカード又は単体のモジュールから構成されているとしてもよい。前記ICカード又は前記モジュールは、マイクロプロセッサ、ROM、RAMなどから構成されるコンピュータシステムである。前記ICカード又は前記モジュールは、上記の超多機能LSIを含むとしてもよい。マイクロプロセッサが、コンピュータプログラムにしたがって動作することにより、前記ICカード又は前記モジュールは、その機能を達成する。このICカード又はこのモジュールは、耐タンパ性を有するとしてもよい。
本発明は、上記に示すコンピュータの処理で実現する方法であるとしてもよい。また、本発明は、これらの方法をCPU等のプロセッサが実行することで実現するコンピュータプログラムとしてもよいし、前記コンピュータプログラムからなるデジタル信号であるとしてもよい。
上記実施の形態及び上記変形例をそれぞれ組み合わせるとしてもよい。
また、上記で用いた数字は、全て本発明を具体的に説明するために例示するものであり、本発明は例示された数字に制限されない。
また、ブロック図における機能ブロックの分割は一例であり、複数の機能ブロックを一つの機能ブロックとして実現したり、一つの機能ブロックを複数に分割したり、一部の機能を他の機能ブロックに移してもよい。また、類似する機能を有する複数の機能ブロックの機能を単一のハードウェア又はソフトウェアが並列又は時分割に処理してもよい。
更に、本発明の主旨を逸脱しない限り、本実施の形態に対して当業者が思いつく範囲内の変更を施した各種変形例も本発明に含まれる。
本願による開示は、以下の(1)、(2)、(3)・・・という技術的思想の体系を形成する。
(1)は、技術的思想の体系の根幹であり、それは、焦点を結ばない波面形状の超音波送信ビームを、音響素子を複数配してなる音響素子アレイに送信させると共に、当該超音波送信ビームの反射で得られた反射超音波の受信を音響素子アレイに実行させることで、被検体の内部空間の計測を行う超音波信号処理装置であって、
複数のフレーム期間のそれぞれにおいて、進行方向が異なる複数の超音波送信ビームを音響素子アレイに送信させる送信処理部と、
前記超音波送信ビームが反射することにより得られた反射超音波に対して受信処理を実行することで、前記複数の超音波送信ビームのそれぞれに対応する音響線フレームデータを得る受信処理部と、
複数の進行方向の全てに対応する音響線フレームデータを1つに合成することで、合成音響線フレームデータを得る合成部とを備え、
前記送信処理部は、
所定の送信パルス条件に従って、パルス波を作成するパルス波作成部と、
複数の音響素子のそれぞれに応じた遅延時間を与えた上、作成したパルス波を用いて各音響素子を駆動することにより、前記超音波送信ビームを形成する超音波送信ビームフォーマとを備え、
前記複数の進行方向は、第1方向、第2方向を含み、第2方向は、音響素子アレイの法線方向と、超音波送信ビームの進行方向とがなす角度の絶対値が、第1方向よりも小さく、
前記パルス波作成部は、超音波送信ビームを第2方向で進行させる際、超音波送信ビームを第1方向で進行させる場合よりも、被検体のより深い部分にまでエネルギーを到達させることができる送信パルス条件をパルス波作成に用い、
超音波送信ビームを第1方向で進行させる際、超音波送信ビームを第2方向に進行させる場合よりも、空間分解能をより高めることができる送信パルス条件をパルス波作成に用いるというものである。
(7)パルス波の符号化に用いる符号化方式には、以下のものがある。具体的にいうと、所定の符号化方式とは、位相変調型の符号化方式である。本態様の超音波信号処理装置によると、位相変調型の既存の符号化方式を利用することで、送信パルス条件の可変制御を好適に実現することができる。
前記受信ビームフォーミングは、検体内部の複数の観測位置のそれぞれを合焦点として定めて、各音響素子からの入力波形が設定された合焦点でピークをなすよう、各音響素子からの入力波形に対して整相加算を施す処理であり、
前記音響線フレームデータは、複数のデータ要素から構成され、各データ要素は、各観測位置を合焦点として、受信ビームフォーミングを実行することで得られた受信ビーム波形の振幅及び/又は位相を示し、
前記合成部は、
それぞれの音響線フレームデータのデータ要素のうち、所定の進行方向の超音波送信ビームの伝播範囲に属するものを積和演算の対象として抽出し、
積和演算の対象として抽出されたデータ要素であって、位置的に対応するものに重み係数を乗じ、互いに足し合わせることで、合成音響線フレームデータを得てもよい。本態様の超音波信号処理装置によると、音響線フレームデータの合成にあたって、積和演算の対象となるデータ要素を、超音波送信ビームの伝播範囲に属するものに絞るから、様々な送信角の超音波送信ビーム送信で得られた音響線フレームデータのうち、ノイズが目立つ部位については、音響線フレームデータの合成から除外することができる。これにより、医療現場においては、診断目的に応じた好適な超音波画像を生成することができる。
音響素子からの距離が遠い遠部領域に属するデータ要素の重み付けには、送信角が小さくなるにつれ、値が増加する重み係数を使用してもよい。本態様の超音波信号処理装置によると、重み付けの対象となるデータ要素が何処に存在するかによって、異なる指針の重み付けを実行するので、ユーザの要望に沿った出力データの生成が可能になる。
本態様の超音波信号処理装置によると、音響線フレームデータの合成に用いられる重み係数が、超音波送信ビームの送信時に、音響素子駆動に用いられた送信パルス条件と関連するから、端部深遠領域をより高輝度で表示する等の措置が可能になり、ユーザの要望に沿った出力データの生成が可能になる。
2 制御部
3 超音波送信処理部
4 超音波受信処理部
5 データ変換部
11 フレームカウンタ
12 角度カウンタ
13 パルス形状作成部
14 送信パルス条件テーブル保持部
15 遅延プロファイル作成部
16 送信ビームフォーマ
Claims (9)
- 焦点を結ばない波面形状の超音波送信ビームを、音響素子を複数配してなる音響素子アレイに送信させると共に、当該超音波送信ビームの反射で得られた反射超音波の受信を音響素子アレイに実行させることで、被検体の内部空間の計測を行う超音波信号処理装置であって、
複数のフレーム期間のそれぞれにおいて、進行方向が異なる複数の超音波送信ビームを音響素子アレイに送信させる送信処理部と、
前記超音波送信ビームが反射することにより得られた反射超音波に対して受信処理を実行することで、前記複数の超音波送信ビームのそれぞれに対応する音響線フレームデータを得る受信処理部と、
複数の進行方向の全てに対応する音響線フレームデータを1つに合成することで、合成 音響線フレームデータを得る合成部とを備え、
前記送信処理部は、
所定の送信パルス条件に従って、パルス波を作成するパルス波作成部と、
複数の音響素子のそれぞれに応じた遅延時間を与えた上、作成したパルス波を用いて各音響素子を駆動することにより、前記超音波送信ビームを形成する超音波送信ビームフォーマとを備え、
前記複数の進行方向は、第1方向、第2方向を含み、第2方向は、音響素子アレイの法線方向と、超音波送信ビームの進行方向とがなす角度の絶対値が、第1方向よりも小さく、
前記パルス波作成部は、超音波送信ビームを第2方向で進行させる際、超音波送信ビームを第1方向で進行させる場合よりも、被検体のより深い部分にまでエネルギーを到達させることができる送信パルス条件をパルス波作成に用い、
超音波送信ビームを第1方向で進行させる際、超音波送信ビームを第2方向に進行させる場合よりも、空間分解能をより高めることができる送信パルス条件をパルス波作成に用い、
前記受信処理部による受信処理は、受信ビームフォーミングを含み、
前記受信ビームフォーミングは、検体内部の複数の観測位置のそれぞれを合焦点として定めて、各音響素子からの入力波形に対して整相加算を施す処理であり、
前記音響線フレームデータは、複数のデータ要素から構成され、各データ要素は、各観測位置を合焦点として、受信ビームフォーミングを実行することで得られた受信ビーム波形の振幅及び/又は位相を示し、
前記合成部は、
それぞれの音響線フレームデータのデータ要素のうち、所定の進行方向の超音波送信ビームの伝播範囲に属するものを、位置的に対応するものに重み係数を乗じ、互いに足し合わせることで、合成音響線フレームデータを得、
前記音響線フレームデータのうち、音響素子からの距離が近い奥行きが浅い領域に属するデータ要素の重み付けには、送信角が大きくなるにつれ、値が増加する重み係数を使用し、
音響素子からの距離が遠い遠部領域に属するデータ要素の重み付けには、送信角が小さくなるにつれ、値が増加する重み係数を使用する
超音波信号処理装置。 - 前記被検体のより深い部分にまでエネルギーを伝達させ得る送信パルス条件とは、第2方向に進行させる超音波送信ビームの音響素子の駆動のためのパルス波の周波数を、第1方向に進行させる超音波送信ビームの音響素子の駆動のためのパルス波の周波数より低くすることである、請求項1記載の超音波信号処理装置。
- 前記被検体のより深い部分にまでエネルギーを伝達させ得る送信パルス条件とは、第2方向に進行させる超音波送信ビームの音響素子の駆動のためのパルス波の振幅を、第1方向に進行させる超音波送信ビームの音響素子の駆動のためのパルス波の振幅より大きくすることである、請求項1記載の超音波信号処理装置。
- 前記被検体のより深い部分にまでエネルギーを伝達させ得る送信パルス条件とは、第2方向に進行させる超音波送信ビームの音響素子の駆動のためのパルス波の連続数を、第1方向に進行させる超音波送信ビームの音響素子の駆動のためのパルス波の連続数より多くすることである、請求項1記載の超音波信号処理装置。
- 前記被検体のより深い部分にまでエネルギーを伝達させ得る送信パルス条件とは、個々の音響素子が発するパルス波に、所定の符号化方式による符号化を施すことである
請求項1記載の超音波信号処理装置。 - 前記所定の符号化方式とは、周波数変調型の符号化方式である、請求項5記載の超音波信号処理装置。
- 前記所定の符号化方式とは、位相変調型の符号化方式である、請求項5記載の超音波信号処理装置。
- 超音波送信ビームを送信する際、パルス波の作成に用いた送信パルス条件の制御パラメータに従い、重み付けに用いる重み係数を定める
請求項1記載の超音波信号処理装置 - 前記超音波送信ビームの波面形状は、平面波形状である、請求項1〜8の何れかに記載の超音波信号処理装置。
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