添付図面を参照して本発明に係る実施の形態を詳細に説明する。なお、本発明は、図示例に限定されるものではない。なお、以下の説明において、同一の機能及び構成を有するものについては、同一の符号を付し、その説明を省略する。
先ず、図1〜図3を参照して、本実施の形態の装置構成を説明する。図1は、本実施の形態の超音波画像診断装置Sの外観図である。図2は、超音波画像診断装置Sの機能構成を示すブロック図である。図3は、超音波画像800の構成を示す図である。
図1に示すように、超音波画像診断装置Sは、超音波画像診断装置本体1と、超音波探触子2と、を備える。超音波探触子2は、図示しない生体等の被検体に対して超音波(送信超音波)を送信するとともに、この被検体で反射した超音波の反射波(反射超音波:エコー)を受信する。超音波画像診断装置本体1は、超音波探触子2とケーブル3または電波、赤外線などのワイヤレス通信手段を介して接続され、超音波探触子2に電気信号の駆動信号としての送信信号を送信することによって超音波探触子2に被検体に対して送信超音波を送信させるとともに、超音波探触子2にて受信した被検体内からの反射超音波に応じて超音波探触子2で生成された電気信号である受信信号に基づいて被検体内の内部状態を超音波画像として画像化する。
超音波探触子2は、例えば、バッキング層、圧電層、音響整合層及び音響レンズ等を備えてこれらが積層されることにより構成されている。また、圧電層には、圧電素子を有する振動子2aが備えられており、この振動子2aは、例えば、方位方向に一次元アレイ状に複数配列されている。本実施の形態では、例えば、192個の振動子2aを備えた超音波探触子2を用いている。なお、振動子2aは、二次元アレイ状に配列されたものであってもよい。また、振動子2aの個数は、任意に設定することができる。また、本実施の形態では、超音波探触子2について、リニア走査方式の電子スキャンプローブを採用したが、電子走査方式あるいは機械走査方式の何れを採用してもよく、また、リニア走査方式、セクタ走査方式あるいはコンベックス走査方式の何れの方式を採用することもできる。
超音波画像診断装置本体1は、例えば、図2に示すように、操作入力部11と、送信部12と、受信部13と、画像生成部14と、画像処理部15と、DSC(Digital Scan Converter)16と、表示部17と、制御部18と、送受信制御部18Aと、クロック信号発生部19と、同期信号制御部20と、送信電源部21と、を備える。
操作入力部11は、例えば、診断開始を指示するコマンドや被検体の個人情報等のデータの入力等を行うための各種スイッチ、ボタン、トラックボール、マウス、キーボード等を備えており、操作信号を制御部18に出力する。また、超音波画像診断装置Sは、操作入力部11への操作入力に応じて、画像モードを、例えばBモードと、M(Motion)モードと、カラーモード(カラードップラーモード)と、D(Doppler)モード(パルスドップラーモード)と、BDサイマルモードなどの何れかやこれらの組み合わせなどに設定が可能である。Bモードは、超音波の振幅を点の明るさ(輝度)とした超音波画像を表示するモードである。Mモードは、被検体の断面上のさらにある一直線上に注目し、そこでの音波反射の経時変化を画像化した超音波画像を表示するモードである。
カラーモードは、ドップラー効果を利用して、指定した領域での血流の流速変化を色で表現する血流画像を表示するモードであり、例えば、「赤」、「青」が、それぞれ超音波探触子2に「近づく」、「遠ざかる」血流を示す。カラーモードでは、通常、Bモード画像上にカラーモードの血流画像が表示される。Dモードは、ドップラー効果を利用して、特定位置の超音波の周波数変化を流速に変換しグラフ化して表示するモードである。BDサイマルモードは、Bモード画像とDモードのグラフとを同時に表示するモードである。
送信部12は、制御部18及び送受信制御部18Aの制御に従って、超音波探触子2にケーブル3などを介して送信信号(送信パルス)を供給して超音波探触子2に送信超音波を発生させる回路である。より具体的には、送信部12は、クロック発生回路、パルス発生回路、デューティー設定部及び遅延回路(共に図示略)を備えている。
クロック発生回路は、送信信号の送信タイミングや送信周波数を決定するクロック信号を発生させる回路である。パルス発生回路は、所定の周期で送信信号としてのパルス信号を発生させるための回路である。デューティー設定部は、パルス発生回路から出力されるパルス信号のデューティー比を設定する。遅延回路は、送信信号の送信タイミングを振動子毎に対応した個別経路毎に遅延時間を設定し、設定された遅延時間だけ送信信号の送信を遅延させて送信超音波によって構成される送信ビームの集束を行うための回路である。
送信部12は、制御部18の制御に従って、送信信号を供給する複数の振動子2aを、超音波の送受信毎に所定数ずらしながら順次切り替え、出力の選択された複数の振動子2aに対して送信信号を供給することによりスキャンを行う。
受信部13は、制御部18及び送受信制御部18Aの制御に従って、超音波探触子2からケーブル3などを介して電気信号の受信信号を受信する回路である。受信部13は、例えば、増幅器、A/D変換回路、整相加算回路を備えている。増幅器は、受信信号を、振動子2a毎に対応した個別経路毎に、予め設定された所定の増幅率で増幅させるための回路である。A/D変換回路は、増幅された受信信号をアナログ−デジタル変換(A/D変換)するための回路である。整相加算回路は、A/D変換された受信信号に対して、振動子2a毎に対応した個別経路毎に遅延時間を与えて時相を整え、これらを加算(整相加算)して音線データを生成するための回路である。
画像生成部14は、Bモード時に、受信部13からの音線データ(受信信号)に対して包絡線検波処理や対数増幅などを実施し、ゲインの調整等を行って輝度変換することにより、Bモードの画像データを生成し、当該Bモードの画像データに平滑化処理を施す。Bモードの画像データは、受信信号の強さを輝度によって表したものである。平滑化処理は、画像データ中の画素の輝度値の急激な変化を平滑化する処理であり、例えば、平滑化フィルタのフィルタリング処理により実現される。また、画像生成部14は、Mモード時や、BDサイマルモードのBモード画像部分生成時でも同様に、受信部13からの音線データから、各モードの画像データを生成し、平滑化処理を行う。画像生成部14にて生成された画像データは、画像処理部15に送信される。なお、画像生成部14は、Bモード、Mモード又はBDサイマルモードのBモード画像生成時に、受信部13からの受信信号に対して平滑化処理を施し、当該受信信号から画像データを生成する画像生成手段を有することとしてもよい。画像生成部14は、超音波画像として複数のラインからなるフレームを生成する。ラインは各音線データに対応する線上の画像であり、画像生成部14は複数のラインを合成することで一つのフレームの超音波画像を生成する。
より具体的には、図3に示すように、一例として、画像生成部14で生成される超音波画像800を考える。超音波画像800は、複数のフレーム801,802,803…からなる。図3中の深度方向81Dは、超音波探触子2の走査方向82に垂直な方向であり、超音波探触子2から被検体に向かう深さの方向である。ライン方向81Lは、走査方向82に平行な方向であり、且つラインを生成順に並べる方向である。フレーム方向81Fは、生成されたフレームを生成順に並べる方向である。超音波探触子2から出力される受信信号としてのRF信号83は、画像生成部14により深度方向81Dに沿ったラインの画素形成に使用される。RF信号83に応じた複数のラインは、順に生成されて、ライン方向81Lに順に並べられ、これにより1つのフレームが形成される。このフレーム形成により、超音波画像800のフレーム801が生成され、次いでフレーム802が生成される。このようにして、フレーム801,802,803…は、この順に生成される。
画像処理部15は、DRAM(Dynamic Random Access Memory)などの半導体メモリーによって構成された画像メモリー部15aを備えている。画像処理部15は、画像生成部14から出力された画像データをフレーム単位で画像メモリー部15aに記憶する。フレーム単位での画像データを超音波画像データ、あるいはフレーム画像データということがある。画像処理部15は、画像メモリー部15aに記憶した超音波画像データを適宜読み出して、適宜画像フィルタ処理や時間平滑化処理などの画像処理を施し、DSC16に出力する。
DSC16は、画像処理部15より受信した超音波画像データを表示部17へ表示するための表示画像パターンに走査変換し、表示部17に出力する。
表示部17は、LCD(Liquid Crystal Display)、CRT(Cathode-Ray Tube)ディスプレイ、有機EL(Electronic Luminescence)ディスプレイ、無機ELディスプレイ及びプラズマディスプレイ等の表示装置が適用可能である。表示部17は、DSC16から出力された画像信号に従って表示画面上に超音波画像の表示を行う。
制御部18は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)を備えて構成され、ROMに記憶されているシステムプログラム等の各種処理プログラムを読み出してRAMに展開し、展開したプログラムに従って超音波画像診断装置Sの各部の動作を集中制御する。ROMは、半導体等の不揮発メモリー等により構成され、超音波画像診断装置Sに対応するシステムプログラム及び該システムプログラム上で実行可能な各種処理プログラムや、各種データ等を記憶する。これらのプログラムは、コンピューターが読み取り可能なプログラムコードの形態で格納され、CPUは、当該プログラムコードに従った動作を逐次実行する。RAMは、CPUにより実行される各種プログラム及びこれらプログラムに係るデータを一時的に記憶するワークエリアを形成する。
送受信制御部18Aは、制御部18の制御に基づき、クロック信号発生部19からのクロック信号CLKに同期して、超音波の送受信のためのトリガ信号TRGを発生し、送信部12、受信部13および同期信号制御部20へ出力する。
送信部12はこのトリガ信号TRGのタイミングで送信処理を行ない、その一方で受信処理は送信処理直後から開始されるため、受信部13も、このトリガ信号TRGに基づいて受信処理を開始する。クロック信号発生部19は、クロック信号CLKを発生して送受信制御部18A及び同期信号制御部20に出力する。
同期信号制御部20は、送受信制御部18Aからのトリガ信号TRGとクロック信号発生部19からのクロック信号CLKとに従って、送信電源部21のスイッチングのための電源同期信号SYNC0〜SYNC5のいずれかを発生し、送信電源部21に出力する。送信電源部21は、同期信号制御部20から入力された電源同期信号SYNC0〜SYNC5のいずれかに従って、送信電源電力(直流電源電圧)を発生し、駆動電力として送信部12に供給する。なお、詳細は後述するが電源同期信号SYNCは0〜5の6種類に限られるわけではない。
次いで、図4を参照して、同期信号制御部20及び送信電源部21の内部の機能構成を説明する。図4は、同期信号制御部20及び送信電源部21の機能構成を示すブロック図である。
図4に示すように、同期信号制御部20は、同期リセット信号発生部201と、位相調整部としての位相調整部202及び電源同期信号発生部203と、を備える。同期リセット信号発生部201は、送受信制御部18Aからのトリガ信号TRGとクロック信号発生部19からのクロック信号CLKとに従って、トリガ信号TRGの立上りに応じて、クロック信号CLKに同期した同期リセット信号RSTHを発生し、位相調整部202に出力する。
位相調整部202は、同期リセット信号発生部201からの同期リセット信号RSTHとクロック信号発生部19からのクロック信号CLKとに従って、同期リセット信号RSTHの位相を6段階に調整する。位相調整部202は、クロック信号CLKに同期し、6通りの異なる位相である同期リセット信号RSTH0〜5のうちのいずれかを発生し、電源同期信号発生部203に出力する。なお、同期リセット信号RSTHについての6段階の位相調整は、一例であり、6以外の複数の段階数での位相調整としてもよい。
電源同期信号発生部203は、位相調整部202からの同期リセット信号RSTH0〜5のいずれかとクロック信号発生部19からのクロック信号CLKとに従って、入力された同期リセット信号RSTHに応じた位相で且つクロック信号CLKに同期した電源同期信号SYNC0〜5のいずれかを発生し、送信電源部21に出力する。
図4に示すように、送信電源部21は、直流電源211と、スイッチング部212と、平滑部213と、を備える。直流電源211は、固定電圧の直流電源電圧を発生し、スイッチング部212に出力する。
スイッチング部212は、DC/DCコンバーター等で構成され、電源同期信号SYNC0〜5に従って、直流電源211からの直流電源電圧のオン/オフをスイッチングし、スイッチング後の直流電源電圧を平滑部213に出力する。平滑部213は、スイッチング部212からのスイッチング後の直流電源電圧を平滑化し、所定の電圧に定電圧化した送信電源電力を送信部12に出力する。
スイッチング部212のスイッチング時には、受信部13にクロストークが発生するおそれがある。位相調整部202がない状態で、受信部13にクロストークが発生すると、従来の超音波画像診断装置と同様に、図12(b)に示すように、当該クロストークによるノイズが受信信号に混入し、画像生成部14で生成される超音波画像に横筋等の画像ノイズとして表れる。
次に、図5及び図6を参照して、同期信号制御部20における動作を説明する。ここでは、超音波画像診断装置SがBモードに設定されている場合の動作を説明する。図5は、本実施の形態のBモードにおける同期信号制御部20に関する信号のタイミングチャートである。図6(a)は、超音波画像診断装置Sにおけるトリガ信号と、同期リセット信号と、電源同期信号と、を示すタイミングチャートである。図6(b)は、超音波画像診断装置Sにおいてノイズの表示が抑制された場合のBモード画像の一例を示す図である。図5は異なる6つの位相を有する同期リセット信号RSTH0〜RSTH5及び、これらにそれぞれ対応する電源同期信号SYNC0〜SYNC5を全て示した図である。実際には、1つのラインの画像を生成するために、同期信号制御部20が生成する同期リセット信号RSTHはRSTH0〜RSTH5のいずれかであり、それに対応する電源同期信号SYNCが生成される。
クロック信号CLKは、クロック信号発生部19により生成され、送受信制御部18A及び同期信号制御部20に入力される。クロック信号CLKは、一例として、1.2MHzのクロック信号であるものとするが、この周波数に限定されるものではない。
トリガ信号TRGは、超音波のスキャン(送信信号の送信)のトリガ信号であり、送受信制御部18Aで生成される。トリガ信号TRGのハイレベルの1期間が、送信部12、超音波探触子2、受信部13による超音波の送受信のための超音波画像の1ラインの送受信期間に対応する。また、トリガ信号TRGは、クロック信号CLKに同期されている。
同期リセット信号RSTHは、トリガ信号TRGの立上りに応じて立上がり、クロック信号CLKに同期した同期リセット信号であり、同期リセット信号発生部201で生成される。
同期リセット信号RSTH0〜RSTH5は、クロック信号CLKに同期して同期リセット信号RSTHの位相が調整された同期リセット信号であり、位相調整部202により生成される。同期リセット信号RSTH0は、同期リセット信号RSTHから位相が変化されていない信号である。同期リセット信号RSTH1〜RSTH5は、それぞれ、同期リセット信号RSTH0からクロック信号CLKの1〜5周期分遅れた信号である。同期リセット信号RSTH0からクロック信号CLKの6周期分遅れると、一巡して同期リセット信号RSTH0と位相が同じ信号となる。1つのラインの画像を生成するためのパルス送受信期間(トリガ信号TRGのハイの期間)毎に、位相調整部202から出力される同期リセット信号は、同期リセット信号RSTH0→RSTH2→RSTH5→RSTH3→RSTH1→RSTH4→RSTH0…の順に、循環して変更される。このように循環して位相を設定する場合、5周期目の位相と6周期目の位相(0周期目の位相と同位相)が連続するため、0周期目の位相と5周期目の位相の位相差がなるべく大きくなることが好ましい。このような観点から、4段階以上の位相調整ができるとより好ましい。4段階以上の位相調整において、2周期目に設定される位相と0周期目の位相との間の位相差よりも、1周期目に設定される位相と0周期目の位相との間の位相差及び3周期目に設定される位相と0周期目の位相との間の位相差のほうが大きくなるように設定してもよい。
位相調整部202から出力される各同期リセット信号の上記位相の調整量は、設定者により予め設定されたものである。位相調整部202から出力される同期リセット信号は、第1のラインの画像を生成するために振動子2aから送信される第1の送信超音波と、第1のラインと隣り合う第2のラインの画像を生成するために振動子2aから送信される第2の送信超音波との間で、第1の送信超音波の送信開始タイミングに対する電源同期信号の位相と第2の送信超音波の送信開始タイミングに対する電源同期信号の位相とが互いに異なるように設定される。また、位相調整部202から出力される同期リセット信号の位相の調整量は、設定者により設定されるものに限定されるものではなく、位相調整部202がソフトウェア的にランダムに位相の調整量を設定する構成としてもよい。例えば、位相調整部202により同期リセット信号RSTH0〜5がランダムに出力されるものである。好ましくは、隣り合う順番の信号同士で位相が異なるようにランダムに同期リセット信号RSTH0〜5が出力されるのがよい。
電源同期信号SYNC0〜5は、スイッチング部212のスイッチング用の同期信号であり、電源同期信号発生部203により生成される。電源同期信号SYNC0〜5は、同期リセット信号RSTH0〜5の立上りに応じて、クロック信号CLKに同期して周期がローレベルから開始される。同期リセット信号及び電源同期信号の対応について、図6(a)に例示する。電源同期信号SYNC0〜5の周期は、図12(a)の電源同期信号SYNCの周期と同じであり、例えば、クロック信号CLKの周期の6倍であるものとするがこれに限定されるものではない。ここで、図6(b)は右方向が深さ方向であるBモード画像を示している。
同期リセット信号RSTH0〜5は、Bモードのスキャンのための同期リセット信号となる。図5の下向き矢印で示すように、電源同期信号SYNC0〜5における立下りでのスイッチングに応じて、クロストーク等により受信部13の受信信号のノイズとなる。しかし、各電源同期信号SYNC0〜5の位相が、第1のラインの画像を生成するために振動子2aから送信される第1の送信超音波と、第1のラインと隣り合う第2のラインの画像を生成するために振動子2aから送信される第2の送信超音波との間で、第1の送信超音波の送信開始タイミングに対する電源同期信号の位相と第2の送信超音波の送信開始タイミングに対する電源同期信号の位相とが互いに同じになっていなく位相が分散されるため、超音波画像に1本の横筋による画像ノイズとしては現れない。さらに、画像生成部14は、生成した画像データに対して、同期リセット信号の位相を分散しても現れる画像ノイズを低減するための平滑化処理を施す。
図6(a)に、トリガ信号TRG0,TRG1,TRG2…と、同期リセット信号RSTH0,RSTH1,RSTH2…と、電源同期信号SYNC0,SYNC1,SYNC2…と、を示す。トリガ信号TRG0は、l回目に超音波が送信される際の超音波のスキャンのトリガ信号である。トリガ信号TRG2は、m回目に超音波が送信される際の超音波のスキャンのトリガ信号である。トリガ信号TRG2は、n回目に超音波が送信される際の超音波のスキャンのトリガ信号である。同期リセット信号RSTH0は、l回目に超音波が送信される際のクロック信号CLKに同期した同期クロック信号である。同期リセット信号RSTH1は、m回目に超音波が送信される際のクロック信号CLKに同期した同期クロック信号である。同期リセット信号RSTH2は、n回目に超音波が送信される際のクロック信号CLKに同期した同期クロック信号である。
電源同期信号SYNC0は、l回目に超音波が送信される際に送信電源部21に供給される電源同期信号である。電源同期信号SYNC1は、m回目に超音波が送信される際に送信電源部21に供給される電源同期信号である。電源同期信号SYNC2は、n回目に超音波が送信される際に送信電源部21に供給される電源同期信号である。
図6(a)の下向き矢印は、送信電源部21が電源同期信号SYNC0,SYNC1,SYNC2…の立下りを基準にスイッチングを行う場合のスイッチングタイミングである。この電源同期信号SYNC0,SYNC1,SYNC2…の立下りが各送受信で異なるタイミングで発生する。このため、図6(b)に示すように、スイッチング部212のスイッチングにより発生するノイズに起因する画像ノイズとしての横筋がBモード画像でほとんど観測されない。
次いで、図7〜図9を参照して、超音波画像診断装置SがBDサイマルモード又はカラーモードに設定される場合の動作を説明する。図7は、BDサイマルモードにおけるトリガ信号TRG及び同期リセット信号のタイミングチャートである。図8(a)は、図7からBモードに対応する同期リセット信号を抽出したタイミングチャートである。図8(b)は、図7からDモードに対応する同期リセット信号を抽出したタイミングチャートである。図9(a)は、カラーモードにおける電源同期信号の位相分散前の超音波画像を示す図である。図9(b)は、カラーモードにおける電源同期信号の位相分散後の超音波画像を示す図である。
先ず、超音波画像診断装置SがBDサイマルモードに設定される場合の動作を説明する。図7に示すように、送受信制御部18Aでトリガ信号TRGが生成され、同期リセット信号発生部201で同期リセット信号RSTHが発生され、位相調整部202により、同期リセット信号RSTHの位相が調整(分散)され、Bモードの同期リセット信号RSTHB0〜B5、Dモードの同期リセット信号RSTHDが生成される。
BDサイマルモードでは、超音波画像1ライン分の超音波の送受信の動作を1サイクルとして、Bモードのサイクルと、Dモードのサイクルと、が交互に実行される場合を説明する。図7、図8では、上から下へ、実行されるサイクル順に同期リセット信号が並べられている。しかし、これに限定されるものではなく、Bモード及びDモードのサイクルが交互に実行される構成において、Bモードのサイクルが複数回続く構成や、Dモードのサイクルが複数回続く構成や、両方のサイクルそれぞれが複数回続く構成としてもよい。
Bモードの同期リセット信号RSTHB0〜B5は、図5の同期リセット信号RSTH0〜5と同様にして位相が分散される。Dモードの同期リセット信号RSTHDは、位相が分散されず、同期リセット信号RSTHと位相が同じである。というのは、Bモードは、受信信号の強度が超音波画像の画素値(輝度値)となって表れて画像化される画像モードである。これに対して、Dモードは、受信信号の位相の変化がスペクトルとなって表れて画像化される画像モードである。よって、Dモードにおいてノイズの位置を動かしてしまうと、逆に画像ノイズとして観測されてしまう。
このため、Bモードでは同期リセット信号の位相を分散させて電源同期信号の位相を分散させ、Dモードでは同期リセット信号及び電源同期信号の位相を分散させない。図8(a)に示すように、図7のタイミングチャートから、Bモードの同期リセット信号RSTHB0〜B5のみを抽出すると、位相が分散されているのがよく分かる。図8(b)に示すように、図7のタイミングチャートから、Dモードの同期リセット信号RSTHDのみを抽出すると、位相が分散されていないのがよく分かる。
また、Mモードが設定される場合には、Bモードと同様に、受信信号の強度が超音波画像の画素値となって表れるので、同期リセット信号の位相が分散される。
また、カラーモードは、Dモードと同様に、受信信号の位相の変化が超音波画像の画素値となって表れるので、同期リセット信号の位相が分散される。
ここで、超音波画像診断装置Sがカラーモードに設定される場合の超音波画像を説明する。カラーモードでは、通常、Bモード画像とカラーモード画像とが1つの超音波画像中に同時に表示されるため、それぞれを、Bモード画像部分、カラーモード画像部分とする。先ず、位相調整部202で、Bモード画像部分及びカラーモード画像部分の両方に対応する同期リセット信号の位相が分散されない位相分散前の場合を説明する。図9(a)に示すように、位相調整部202で、Bモードの同期リセット信号の位相が分散されないため、得られる超音波画像において、画像中央の長方形領域のBモード画像部分に画像ノイズとしての横筋が見られる。なお、超音波画像の平行四辺形で囲まれた領域が、カラーモード画像部分である。カラーモード画像部分において、本来、遠ざかる方向の血流の値が青い画素で示され、近づく方向の血流の値が赤い画素で示されるのであるが、図9(a)、図9(b)上では、遠ざかる方向の血流の値を黒い画素で表し、近づく方向の血流の値を白い画素で表している。図9(a)のカラーモード画像部分においては、画像ノイズは目立っていない。
次いで、位相調整部202で、Bモード画像部分に対応する同期リセット信号の位相が分散され、カラーモード画像部分に対応する同期リセット信号の位相が分散されない、位相分散後の場合を説明する。図9(b)に示すように、位相調整部202で、Bモードの同期リセット信号の位相が分散されるため、得られる超音波画像において、Bモード画像部分に画像ノイズが低減されている。図9(b)のカラーモード画像部分においては、図9(a)と同様に、画像ノイズは目立っていない。
次に、図10を参照して、位相調整部202における位相の調整の方法を説明する。図10(a)は、送受信間で位相の調整が不要の場合のトリガ信号TRG、同期リセット信号RSTH及び電源同期信号SYNCのタイミングチャートである。図10(b)は、複数回の送受信間で位相の変化がありその位相の調整を1クロックで行う場合のトリガ信号TRG、同期リセット信号RSTH及び電源同期信号SYNC6のタイミングチャートである。図10(c)は、複数回の送受信間で位相の変化がありその位相の調整を複数クロックで行う場合のトリガ信号TRG、同期リセット信号RSTH及び電源同期信号SYNC6のタイミングチャートである。
図10(a)に示すように、トリガ信号TRGのハイレベルの一度目の送受信期間と2度目の送受信期間とを考える。トリガ信号TRGの立下りに応じて、同期リセット信号RSTHの立上りが発生する。電源同期信号SYNCは、同期リセット信号RSTHの立上りに応じて、クロック信号CLKに同期して周期が開始される。一度目の送受信期間を終えて、2度目の送受信期間が始まった際に、電源同期信号SYNCの位相を変化させないのであれば、2度目の送受信開始時に電源同期信号SYNCの位相が急に変化することはない。
次いで、図10(b)に示すように、一度目の送受信期間を終えて、2度目の送受信期間が始まった際に、位相調整部202による同期リセット信号RSTHの位相調整により電源同期信号の位相を変化させる場合を考える。2度目の送受信期間で位相を変化させた位相調整後の電源同期信号をSYNC6とし、その調整後の位相は何でもよい。電源同期信号SYNC6は、トリガ信号TRGのローレベル期間である期間t1で位相を変化させることになる。期間t1では、電源同期信号SYNCの周波数が変化される。期間t1が短いと、スイッチング部212等の回路が追従できないおそれがある。例えば、スイッチング部212のDC/DCコンバーターが同期信号として取り得る周波数範囲が狭い場合に、当該DC/DCコンバーターが電源同期信号SYNC6の期間t1での位相の変化に追従できない。
このため、位相を調整する期間を長くとり、電源同期信号SYNC6の位相を徐々に変化させることが好ましい。図10(c)に示すように、一回目の送受信期間を終えて、2回目の送受信期間が始まった際に、位相調整部202による同期リセット信号RSTHの位相調整により、電源同期信号SYNC6の最初のクロック(一周期、一波長)の位相を少しだけずらす(少しだけ周波数を上げる)。1クロックでの位相をずらす調整量は、スイッチング部212のDC/DCコンバーターが同期信号として取り得る周波数範囲に入る周波数に対応する量である。そして、電源同期信号SYNC6の次のクロックの位相を少しだけずらすことを複数回(ここでは、例えば、全てで4回)繰り返し、目標の位相に調整される。この位相を調整する期間を位相調整期間t2とする。1クロックあたりの位相をずらす調整量は、例えば、位相調整期間t2の開始から目標の位相に調整する調整量を位相調整期間t2の電源同期信号のクロック数で除算した値である。位相調整期間t2では、同期リセット信号RSTHに4度立上りを発生させ、徐々に電源同期信号SYNC6を追従させている。
以上、本実施の形態によれば、超音波画像診断装置Sは、送信部12により、超音波探触子2の振動子2aから被検体に向けて送信超音波を送信させる送信信号を生成し、受信部13により、振動子2aが受信した反射超音波に基づいて受信信号を受信し、画像生成部14により、受信信号に基づいて複数のラインからなるフレームとして超音波画像データを生成し、送受信制御部18Aにより、周期的な制御信号としての電源同期信号を生成する。超音波画像診断装置Sは、位相調整部202及び電源同期信号発生部203により、第1のラインの画像を生成するために振動子2aから送信される第1の送信超音波と、第1のラインと隣り合う第2のラインの画像を生成するために振動子2aから送信される第2の送信超音波との間で、第1の送信超音波の送信開始タイミングに対する電源同期信号(例えば、電源同期信号SYNC2)の位相と第2の送信超音波の送信開始タイミングに対する電源同期信号(例えば、電源同期信号SYNC0,SYNC5)の位相とが互いに異なるように電源同期信号の位相を調整する。
このため、電源同期信号の位相を空間的及び時間的に分散し、電源同期信号による送信電源部21のスイッチングのノイズに起因する画像ノイズの超音波画像上の出現位置を分散でき、超音波画像の画像ノイズの視認性を容易に低減できる。さらに、電源同期信号を停止しないので、送信電源部21の電力効率が変化することを防ぐことができる。
また、超音波画像診断装置Sは、送信電源部21により、送信部12に電力を供給し、送受信制御部18Aが、送信電源部21をスイッチングさせるための電源同期信号を生成する。このため、送信電源部21への電力供給に基づく超音波画像の画像ノイズの視認性を容易に低減できる。
また、超音波画像診断装置Sは、画像生成部14により、生成した超音波画像データに平滑化処理を施し、又は受信信号に平滑化処理を施して超音波画像データを生成する。このため、超音波画像の画像ノイズが平滑化されるので、超音波画像の画像ノイズの視認性をさらに低減できる。
また、位相調整部202及び電源同期信号発生部203は、受信信号の強度を画像化する画像モードとしてBモード又はMモードが設定されている場合に、Bモード又はMモードに対応する電源同期信号の位相を調整し、受信信号の位相の変化を画像化する画像モードとしてカラーモード又はDモードが設定されている場合に、Bモード以外に対応する電源同期信号の位相を調整しない。このため、Bモード又はMモードでは、超音波画像の画像ノイズの視認性を低減でき、カラーモード又はDモードでは、Bモード以外の画像部分に、電源同期信号の位相調整により新たな画像ノイズが発生することを防ぐことができる。
また、位相調整部202及び電源同期信号発生部203は、電源同期信号を複数の波長にわたり徐々に位相を変化させて所定の位相に調整する。このため、位相を調整する場合に、送信電源部21が電源同期信号に追従できなくなることを防ぐことができ、送信電源部21を同期信号として取り得る周波数範囲が広いもの又は高いものに交換することを防ぐことができる。
また、位相調整部202及び電源同期信号発生部203は、電源同期信号の位相を4段階以上に調整する。このため、電源同期信号の位相を循環させる場合に、循環の最初の周期目の位相と循環の最後の周期目の位相との位相差を大きくすることができる。
また、位相調整部202及び電源同期信号発生部203は、隣り合う送受信期間の電源同期信号の位相を異にするように、当該位相をランダムに調整する。このため、超音波画像の画像ノイズの視認性をさらに低減できるとともに、位相の調整量の設定を手動で設定する負担を低減できる。
なお、位相調整部202及び電源同期信号発生部203により、第1のラインの画像を生成するために振動子2aから送信される第1の送信超音波と、第1のラインと隣り合う第2のラインの画像を生成するために振動子2aから送信される第2の送信超音波との間で、第1の送信超音波の送信開始タイミングに対する電源同期信号の位相と第2の送信超音波の送信開始タイミングに対する電源同期信号の位相とが互いに異なるように、少なくとも2つの電源同期信号の位相を調整する構成としてもよい。
(変形例)
図11を参照して、上記実施の形態の変形例を説明する。図11は、本変形例のBモードにおける同期信号制御部20に関する信号のタイミングチャートである。本変形例は、超音波画像診断装置Sを用いるが、位相調整部202の動作が上記実施の形態と異なる。
Bモードでは、リアルタイムでスキャンされたBモード画像が表示部17にライブ画像として表示される。つまり、時間経過で順にスキャンされた複数フレームのBモード画像が、スキャン順に表示される。このとき、位相調整部202及び電源同期信号発生部203は、Bモード画像の異なるフレームで同じ位置に対応する電源同期信号の位相を異にする動作を行う。
具体的には、図11に示すように、位相調整部202は、同期リセット信号発生部201から入力された同期リセット信号RSTHの位相を調整して、クロック信号CLKに同期した同期リセット信号RSTHF0〜RSTH5を生成し、電源同期信号発生部203に出力する。上記実施の形態の同期リセット信号RSTH0〜RST5は、それぞれ1フレーム内の異なるラインに対応する同期リセット信号であった。同期リセット信号RSTHF0〜RSTF5は、それぞれ異なるフレームに対応する同期リセット信号である。
つまり、Bモード画像の最初のフレームでは、全ての送受信期間で同期リセット信号RSTHF0が生成され、次のフレームでは、全ての送受信期間で同期リセット信号RSTHF2が生成される。このようにして、Bモード画像のフレームが変わるごとに、同期リセット信号がRSTHF0→RSTHF2→RSTHF5→RSTHF3→RSTHF1→RSTHF4→RSTHF0→…のように変更される。同期リセット信号RSTHF0〜RSTF5の位相の調整量は、同期リセット信号RSTH0〜RST5の位相の調整量と同じである。しかし、本変形例の位相の調整量の段階数は、6段階に限定されるものではない。
電源同期信号発生部203は、位相調整部202から入力された同期リセット信号RSTHF0〜RSTF5に応じて、クロック信号CLKに同期した電源同期信号SYNCF0〜SYNCF5を生成し、スイッチング部212に出力する。電源同期信号SYNCF0〜SYNCF5は、上記実施の形態の電源同期信号SYNC0〜SYNC5と同様の位相調整量となるが、それぞれ異なるフレームの電源同期信号となる。
本変形例によれば、超音波画像診断装置Sは、位相調整部202及び電源同期信号発生部203により、第1のフレームにおける第1のラインの画像を生成するために超音波探触子2の振動子2aから送信される第1の送信超音波と、第1のフレームと連続する第2のフレームにおいて第1のラインと同じ位置に相当する第2のラインの画像を生成するために振動子2aから送信される第2の送信超音波との間で、第1の送信超音波の送信開始タイミングに対する電源同期信号(例えば、電源同期信号SYNCF2)の位相と前記第2の送信超音波の送信開始タイミングに対する電源同期信号(例えば、電源同期信号SYNCF0,SYNCF5)の位相とが互いに異なるように電源同期信号の位相を調整する。
表示部17に表示されるBモード画像では、各フレームに横筋等の画像ノイズが混入するおそれがあるが、複数フレームにわたり、同じ位置に画像ノイズが現れない。このため、電源同期信号の位相を複数フレームで分散し、電源同期信号による送信電源部21のスイッチングのノイズに起因する画像ノイズの複数フレームでの出現位置を分散でき、超音波画像の画像ノイズの視認性を容易に低減でき、また送信電源部21の電力効率が変化することを防ぐことができる。
なお、位相調整部202及び電源同期信号発生部203が、第1のフレームにおける第1のラインの画像を生成するために振動子2aから送信される第1の送信超音波と、第1のフレームと連続する第2のフレームにおいて第1のラインと同じ位置に相当する第2のラインの画像を生成するために振動子2aから送信される第2の送信超音波との間で、第1の送信超音波の送信開始タイミングに対する電源同期信号の位相と前記第2の送信超音波の送信開始タイミングに対する電源同期信号の位相とが互いに異なるように、Bモード画像の少なくとも2つのフレームの電源同期信号の位相を調整する構成としてもよい。また、本変形例を、Bモード以外の画像モードに適用する構成としてもよい。
なお、上記実施の形態及び変形例における記述は、本発明に係る好適な超音波画像診断装置の一例であり、これに限定されるものではない。
例えば、上記実施の形態及び変形例の構成を組み合わせる構成としてもよい。つまり、1つのフレームでは隣り合うラインで互いに位相が異なるようにし、更に異なるフレーム間で同じ位置のラインについて異なる位相に調整される構成としてもよい。
また、上記実施の形態及び変形例のように、制御信号の位相を調整する構成と、受信部13へ混入するノイズを物理的なシールド等の部品により除去する構成と、を組み合わせる構成としてもよい。
また、以上の実施の形態及び変形例における超音波画像診断装置Sを構成する各部の細部構成及び細部動作に関して本発明の趣旨を逸脱することのない範囲で適宜変更可能である。