JP6387282B2 - 銅膜形成用組成物及びそれを用いた銅膜の製造方法 - Google Patents
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Description
本発明は、種々の基体上に銅膜を形成するための銅膜形成用組成物、及びそれを用いた銅膜の製造方法に関する。
銅を電気導体とする導電層や配線を、液体プロセスである塗布熱分解法(MOD法)や微粒子分散液塗布法によって形成する技術は、多数報告されている。
例えば、特許文献1〜4では、各種基体に水酸化銅又は有機酸銅と多価アルコールを必須成分とした混合液を塗布し、非酸化性雰囲気中で165℃以上の温度に加熱することを特徴とする一連の銅膜形成物品の製造方法が提案されている。そして、当該液体プロセスに使用する有機酸銅としてギ酸銅が開示されており、多価アルコールとして、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンが開示されている。
特許文献5では、半田耐熱性に優れる金属膜を下地電極上に形成することができる、銀微粒子と銅の有機化合物を含有する金属ペーストについて提案されている。当該ペーストに使用される銅の有機化合物としてギ酸銅が開示されており、これと反応させてペースト化させるアミノ化合物として、ジエタノールアミンが開示されている。
特許文献6では、回路に用いる金属パターン形成用の金属塩混合物について提案されている。そして、当該混合物を構成する成分のうち、金属塩としてギ酸銅が開示されており、有機成分として、有機溶剤であるジエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、モルホリンが開示されており、金属配位子として、ピリジンが開示されている。
特許文献7では、エレクトロニクス用配線の形成などに有用な、印刷後に低温で熱分解可能なギ酸銅と、3−ジアルキルアミノプロパン−1,2−ジオール化合物とを含有する低温分解性の銅前駆体組成物が開示されている。
特許文献8では、先述した液体プロセスに有用なギ酸銅とアルカノールアミンを含有する銅薄膜形成用組成物が開示されている。そして、アルカノールアミンとして、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、及びトリエタノールアミンが例示されている。
銅膜形成用組成物を使用した液体プロセスにおいて微細な配線や膜を安価に製造するには、下記の要件を満足する組成物が提供されることが望まれる。すなわち、微粒子等の固相を含まない溶液タイプであること、導電性に優れた銅膜を与えること、低温で銅膜に転化できること、塗布性が良好であること、金属銅等の沈殿物の発生が無いこと、1回の塗布により得られる膜厚のコントロールが容易であること、が望まれている。特に、160℃未満で加熱することで導電性に優れた銅膜を形成できることが望まれている。しかしながら、これらの要求の全てを十分に満たす銅膜形成用組成物は、未だ知られていない。
したがって、本発明の目的は、上記した要求の全てを十分に満たす銅膜形成用組成物を提供することにある。より具体的には、基体上に塗布し、160℃未満で加熱することで、十分な導電性を有する銅膜を得ることが可能な、微粒子等の固相を含まない溶液状の銅膜形成用組成物を提供することにある。
本発明者等は、上記の実情に鑑み検討を重ねた結果、ギ酸銅又はその水和物と、4−アミノピペリジンとを特定の割合で含有する銅膜形成用組成物が上記要求性能を満たすことを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、ギ酸銅又はその水和物0.1〜3.0モル/kgと、4−アミノピペリジン0.01〜18.0モル/kgと、を含有する銅膜形成用組成物を提供する。
また、本発明は、上記の銅膜形成用組成物を基体上に塗布する工程と、前記銅膜形成用組成物が塗布された前記基体を200℃以下に加熱して銅膜を形成する工程と、を有する銅膜の製造方法を提供する。
本発明によれば、基体上に塗布し、200℃以下の温度で加熱することで、十分な導電性を有する銅膜を得ることが可能な、微粒子等の固相を含まない溶液状の銅膜形成用組成物が提供される。
本発明の銅膜形成用組成物の特徴の一つは、銅膜の前駆体(プレカーサ)としてギ酸銅を使用したことにある。本発明の銅膜形成用組成物に使用するギ酸銅は、無水和物でもよく、水和物でもよい。具体的には、無水ギ酸銅(II)、ギ酸銅(II)二水和物、ギ酸銅(II)四水和物などを用いることができる。これらのギ酸銅は、そのまま混合してもよく、水溶液、有機溶剤溶液、又は有機溶剤懸濁液として混合してもよい。
本発明の銅膜形成用組成物中のギ酸銅の含有量は、製造しようとする銅膜の厚さに応じて適宜に調整すればよい。ギ酸銅の含有量は0.1〜3.0モル/kgであり、1.0〜2.5モル/kgであることが好ましい。ここで、本発明における「モル(mol)/kg」は、「溶液1kgに対して溶けている溶質の量(モル)」を表している。例えば、ギ酸銅(II)の分子量は153.58であるので、本発明の銅膜形成用組成物1kg中にギ酸銅が153.58g含有されている場合には1.0モル/kgとなる。
本発明の銅膜形成用組成物は、4−アミノピペリジンを必須成分として含有する。検討の結果、本発明者らは、4−アミノピペリジンがギ酸銅及びギ酸銅水和物の可溶化剤として作用することを見出した。また、4−アミノピペリジンとギ酸銅及びギ酸銅水和物を組み合わせて調製した銅膜形成用組成物は、200℃以下で焼成することで銅膜に転化させることができることを見出した。
本発明の銅膜形成用組成物中の4−アミノピペリジンの含有量は、0.01〜18.0モル/kgである。0.01モル/kgより少ないと、得られる銅膜の導電性が不十分となる。一方、18.0モル/kgを超えると塗布性が悪化し、均一な銅膜が得られなくなる。より好ましい範囲は、0.2〜5.0モル/kgである。さらに好ましい範囲は、0.5〜2.0モル/kgである。
本発明の銅膜形成用組成物は、ギ酸銅又はその水和物及び4−アミノピペリジンを必須成分として含有する。ただし、これらの必須成分以外の任意の成分を、本発明の効果を阻害しない範囲で含有してもよい。任意の成分としては、有機溶剤;得られる銅膜の膜厚を厚くするための添加剤;ゲル化防止剤、安定剤等の銅膜形成用組成物に安定性を付与するための添加剤;消泡剤、増粘剤、揺変剤、レベリング剤等の銅膜形成用組成物の塗布性を改善するための添加剤;燃焼助剤、架橋助剤等の成膜助剤が挙げられる。
上記有機溶剤は、上記のギ酸銅又はその水和物及び4−アミノピペリジンを安定に溶解することができれば、いずれのものでもよい。当該有機溶剤は、単一組成でも混合物でもよい。本発明の銅膜形成用組成物に使用することができる有機溶剤の例としては、アルコール系溶剤、ジオール系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、エーテル系溶剤、脂肪族又は脂環族炭化水素系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤、シアノ基を有する炭化水素溶剤、その他の溶剤等が挙げられる。
アルコール系溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノール、イソブタノール、2−ブタノール、第3ブタノール、ペンタノール、イソペンタノール、2−ペンタノール、ネオペンタノール、第3ペンタノール、ヘキサノール、2−ヘキサノール、ヘプタノール、2−ヘプタノール、オクタノール、2−エチルヘキサノール、2−オクタノール、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、シクロヘプタノール、メチルシクロペンタノール、メチルシクロヘキサノール、メチルシクロヘプタノール、ベンジルアルコール、エチレングリコールモノアセタート、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、2−(2−メトキシエトキシ)エタノール、2−(N,N−ジメチルアミノ)エタノール、3−(N,N−ジメチルアミノ)プロパノール等が挙げられる。
ジオール系溶剤としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、イソプレングリコール(3−メチル−1,3−ブタンジオール)、1,2−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,2−オクタンジオール、オクタンジオール(2−エチル−1,3−ヘキサンジオール)、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。
ケトン系溶剤としては、例えば、アセトン、エチルメチルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、エチルブチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソブチルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン等が挙げられる。
エステル系溶剤としては、例えば、ギ酸メチル、ギ酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸第2ブチル、酢酸第3ブチル、酢酸アミル、酢酸イソアミル、酢酸第3アミル、酢酸フェニル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸イソプロピル、プロピオン酸ブチル、プロピオン酸イソブチル、プロピオン酸第2ブチル、プロピオン酸第3ブチル、プロピオン酸アミル、プロピオン酸イソアミル、プロピオン酸第3アミル、プロピオン酸フェニル、2−エチルヘキサン酸メチル、2−エチルヘキサン酸エチル、2−エチルヘキサン酸プロピル、2−エチルヘキサン酸イソプロピル、2−エチルヘキサン酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸メチル、メトキシプロピオン酸エチル、エトキシプロピオン酸エチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノイソプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノ第2ブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノイソブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノ第3ブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノイソプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノ第2ブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノイソブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノ第3ブチルエーテルアセテート、ブチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ブチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ブチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、ブチレングリコールモノイソプロピルエーテルアセテート、ブチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ブチレングリコールモノ第2ブチルエーテルアセテート、ブチレングリコールモノイソブチルエーテルアセテート、ブチレングリコールモノ第3ブチルエーテルアセテート、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、オキソブタン酸メチル、オキソブタン酸エチル、γ−ラクトン、δ−ラクトン等が挙げられる。
エーテル系溶剤としては、例えば、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、モルホリン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジブチルエーテル、ジエチルエーテル、ジオキサン等が挙げられる。
脂肪族又は脂環族炭化水素系溶剤としては、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカリン、ソルベントナフサ等が挙げられる。
芳香族炭化水素系溶剤としては、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、メシチレン、ジエチルベンゼン、クメン、イソブチルベンゼン、シメン、テトラリンが挙げられる。
シアノ基を有する炭化水素溶剤としては、1−シアノプロパン、1−シアノブタン、1−シアノヘキサン、シアノシクロヘキサン、シアノベンゼン、1,3−ジシアノプロパン、1,4−ジシアノブタン、1,6−ジシアノヘキサン、1,4−ジシアノシクロヘキサン、1,4−ジシアノベンゼン等が挙げられる。
その他の溶剤としては、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミドが挙げられる。
本発明においては、上記の有機溶剤のなかでも、アルコール系溶剤、ジオール系溶剤、及びエステル系溶剤が安価であり、しかも溶質に対する十分な溶解性を示し、さらに、シリコン基体、金属基体、セラミックス基体、ガラス基体、樹脂基体等の様々な基体に対する塗布溶媒として良好な塗布性を示すので、好ましい。なかでも、アルコール系溶剤が、溶質に対する溶解性が高く、特に好ましい。
本発明の銅膜形成用組成物中の上記の有機溶剤の含有量は、特に限定されるものではなく、形成しようとする銅膜の厚さや、銅膜の製造方法に応じて適宜調節すればよい。例えば、塗布法によって銅膜を製造する場合には、ギ酸銅(ギ酸銅水和物の場合であってもギ酸銅で換算、以下同様)100質量部に対して、有機溶剤を0.01質量部〜5,000質量部使用することが好ましい。有機溶剤の量が0.01質量部より少ないと、得られる銅膜にクラックが発生する、或いは塗布性が悪化する等の不具合が生ずる場合がある。また、有機溶剤の割合が増すほど得られる銅膜が薄くなるので、生産性の面から5,000質量部を超えないことが好ましい。より具体的には、スピンコート法によって銅膜を製造する場合には、ギ酸銅100質量部に対して、有機溶剤を20質量部〜1,000質量部使用することが好ましい。また、スクリーン印刷法によって銅膜を製造する場合には、ギ酸銅100質量部に対して、有機溶剤を0.01質量部〜20質量部使用することが好ましい。
得られる銅膜の膜厚を厚くするための添加剤としては、例えば酢酸銅又はその水和物を使用することができる。このような添加剤を添加することにより、銅膜形成用組成物中の銅濃度を濃くすることができ、膜厚の厚い銅膜を得ることができる。例えば、当該添加剤として酢酸銅又はその水和物を使用する場合における、酢酸銅又はその水和物の含有量は、特に限定されるものではなく、形成しようとする銅膜の厚さに応じて適宜に調整すればよい。ギ酸銅又はその水和物と、酢酸銅又はその水和物との濃度比率は、特に限定されるものではないが、銅膜形成用組成物中のすべての銅の40質量%以上がギ酸銅の添加によるものであることが好ましい。酢酸銅又はその水和物の含有量は、ギ酸銅又はその水和物を1モル/kgとした場合に、0.1〜2.0モル/kgの範囲であることが好ましく、0.5〜1.5モル/kgの範囲であることがさらに好ましい。また、ギ酸銅と酢酸銅の濃度(モル/kg)の比が、約1:1であることが、電気特性に優れた銅膜が得られるため、特に好ましい。
銅膜形成用組成物に安定性を付与するための添加剤としては、ピペリジン、1−アミノピペリジン、N−エチルピペリジン、N−メチルピペリジン、2−メチルピペリジン、3−メチルピペリジン、4−メチルピペリジン、2,6−ジメチルピペリジン、3,5−ジメチルピペリジン等に代表される4−アミノピペリジン以外の含窒素複素環化合物;ジエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、N−アミノプロピルジエタノールアミンに代表されるアルカノールアミン;3−ジメチルアミノ−1,2−プロパンジオールに代表される1つ以上のアミノ基を有するジオール化合物が挙げられる。N−メチルジエタノールアミンを安定剤として添加した場合は、金属銅等の沈殿物の発生を抑制する効果が高くなることから特に好ましい。
次に、本発明の銅膜の製造方法について説明する。本発明の銅膜の製造方法は、これまでに説明した本発明の銅膜形成用組成物を基体上に塗布する工程(塗布工程)と、銅膜形成用組成物が塗布された基体を200℃以下に加熱して銅膜を形成する工程(成膜工程)とを有する。必要に応じて成膜工程の前に、基体を50℃以上100℃未満に保持し、有機溶剤等の低沸点成分を揮発させる乾燥工程をさらに有してもよい。また、成膜工程の後に、基体を100℃以上200℃以下に保持して銅膜の導電性を向上させるアニール工程をさらに有してもよい。
成膜工程において、銅膜形成用組成物が塗布された基体を加熱する温度が160℃未満であっても、十分な導電性を有する銅膜を製造することができる。160℃未満で加熱する場合は、少ないエネルギーで銅膜を製造することができるので、コスト面で優位である。また、銅膜形成用組成物が塗布された基体を加熱する温度が120℃以下であっても、十分な導電性を有する銅膜を製造することができる。120℃以下で加熱する場合は、より少ないエネルギーで銅膜を製造することができる。さらに、基体としてポリエチレンテレフタラート樹脂等に代表される樹脂製の基体を用いた場合であっても、基体を劣化させることなく銅膜を形成することができるために好ましい。
上記の塗布工程における塗布方法としては、スピンコート法、ディップ法、スプレーコート法、ミストコート法、フローコート法、カーテンコート法、ロールコート法、ナイフコート法、バーコート法、スリットコート法、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、オフセット印刷法、インクジェット法、刷毛塗り等が挙げられる。
また、必要な膜厚を得るために、上記の塗布工程から任意の工程までを複数繰り返すことができる。例えば、塗布工程から成膜工程の全ての工程を複数回繰り返してもよく、塗布工程と乾燥工程を複数回繰り返してもよい。
本発明の銅膜の製造方法で用いることができる基体としては、例えば、樹脂、紙、金属、ガラス等を挙げることができる。より具体的には、低密度ポリエチレン樹脂、高密度ポリエチレン樹脂、ABS樹脂(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体)、アクリル樹脂、スチレン樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリエステル樹脂(ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート)、ポリアセタール樹脂、セルロース誘導体等の樹脂基材;非塗工印刷用紙、微塗工印刷用紙、塗工印刷用紙(アート紙、コート紙)、特殊印刷用紙、コピー用紙(PPC用紙)、未晒包装紙(重袋用両更クラフト紙、両更クラフト紙)、晒包装紙(晒クラフト紙、純白ロール紙)、コートボール、チップボール段ボール等の紙基材;銅板、鉄板、アルミ板等の金属基材;ソーダガラス、ホウケイ酸ガラス、シリカガラス、石英ガラス等のガラス基材;アルミナ;サファイア;ジルコニア;チタニア;酸化イットリウム;ITO(インジウム錫オキサイド)等を挙げることができる。
上記の乾燥工程、成膜工程、及びアニール工程の雰囲気は、通常、還元性ガス雰囲気と不活性ガス雰囲気のいずれかである。還元性ガス雰囲気のほうが、より導電性に優れた銅膜を得ることができる。還元性ガスとしては水素が挙げられ、不活性ガスとしては、ヘリウム、窒素、及びアルゴンが挙げられる。不活性ガスは、還元性ガスの希釈ガスとして使用してもよい。また、各工程においてプラズマ;レーザー;キセノンランプ、水銀ランプ、水銀キセノンランプ、キセノンフラッシュランプ、アルゴンフラッシュランプ、重水素ランプ等の放電ランプ;各種放射線等の熱以外のエネルギーを印加又は照射してもよい。
本発明の銅膜の製造方法によって形成された銅膜は、タッチパネルや液晶表示素子や有機EL素子等に代表される電子機器の配線又は電極として利用することができる。例えば、本発明の銅膜の製造方法によって形成された銅膜を引き出し配線として用いたタッチパネルを構成することで、そのようなタッチパネルを備えた液晶表示素子や有機EL素子等の電子機器を提供することができる。
以下、実施例をもって本発明をさらに詳細に説明する。しかしながら、本発明は以下の実施例等によって何ら制限を受けるものではない。
<銅膜形成用組成物>
[実施例1〜7]
表1に記載の化合物をそれぞれカッコ内の数値の濃度(mol/kg、質量%)となるように配合して銅膜形成用組成物1〜7を得た。なお、表1に記載した各化合物の濃度は、製造した銅膜形成用組成物1kg中の量である(以下、同様)。なお、残分は全てエタノールとした。
[実施例1〜7]
表1に記載の化合物をそれぞれカッコ内の数値の濃度(mol/kg、質量%)となるように配合して銅膜形成用組成物1〜7を得た。なお、表1に記載した各化合物の濃度は、製造した銅膜形成用組成物1kg中の量である(以下、同様)。なお、残分は全てエタノールとした。
[比較例1〜4]
表2に記載の化合物をそれぞれカッコ内の数値の濃度(mol/kg、質量%)となるように配合して比較組成物1〜4を得た。なお、残分は全てエタノールとした。
表2に記載の化合物をそれぞれカッコ内の数値の濃度(mol/kg、質量%)となるように配合して比較組成物1〜4を得た。なお、残分は全てエタノールとした。
<銅膜の製造>
[実施例8〜21]
銅膜形成用組成物1〜7をそれぞれ使用し、塗布法により銅薄膜を製造した。具体的には、まず、各銅膜形成用組成物を表3に記載の各種基板上にキャストした。その後、500rpmで5秒及び2,000rpmで20秒の条件にてスピンコート法によって各銅膜形成用組成物を塗布した。次いで、ホットプレートを用いて大気中、100℃で30秒間乾燥した。乾燥後の基板を、赤外線加熱炉(RTP−6(商品名):アルバック理工社製)を用いてアルゴン雰囲気下、表3に記載の所定の温度で20分間加熱(本焼成工程)し、銅薄膜を得た。なお、本焼成工程時のアルゴンのフロー条件は300mL/minとし、昇温速度は本焼成温度が100℃である場合は100℃/30秒とし、120℃である場合は120℃/30秒とし、150℃である場合は150℃/30秒とした。
なお、ガラス基板には、液晶画面用のガラス基板(Eagle XG(商品名):コーニング社製)を用いた。また、PET基板には、コスモシャインA4100(商品名)(東洋紡社製、フィルム厚100μm)を用いた。
[実施例8〜21]
銅膜形成用組成物1〜7をそれぞれ使用し、塗布法により銅薄膜を製造した。具体的には、まず、各銅膜形成用組成物を表3に記載の各種基板上にキャストした。その後、500rpmで5秒及び2,000rpmで20秒の条件にてスピンコート法によって各銅膜形成用組成物を塗布した。次いで、ホットプレートを用いて大気中、100℃で30秒間乾燥した。乾燥後の基板を、赤外線加熱炉(RTP−6(商品名):アルバック理工社製)を用いてアルゴン雰囲気下、表3に記載の所定の温度で20分間加熱(本焼成工程)し、銅薄膜を得た。なお、本焼成工程時のアルゴンのフロー条件は300mL/minとし、昇温速度は本焼成温度が100℃である場合は100℃/30秒とし、120℃である場合は120℃/30秒とし、150℃である場合は150℃/30秒とした。
なお、ガラス基板には、液晶画面用のガラス基板(Eagle XG(商品名):コーニング社製)を用いた。また、PET基板には、コスモシャインA4100(商品名)(東洋紡社製、フィルム厚100μm)を用いた。
[比較例5〜8]
比較組成物1〜4をそれぞれ使用し、塗布法により銅薄膜を製造した。具体的には、まず、各銅膜形成用組成物をPET基板(コスモシャインA4100(商品名):東洋紡社製、フィルム厚100μm)上にキャストした。その後、500rpmで5秒及び2,000rpmで20秒の条件にてスピンコート法によって各銅膜形成用組成物を塗布した。次いで、ホットプレートを用いて大気中、100℃で30秒間乾燥した。乾燥後の基板を、赤外線加熱炉(RTP−6(商品名):アルバック理工社製)を用いてアルゴン雰囲気下、表3に記載の所定の温度で20分間加熱(本焼成工程)し、銅薄膜を得た。なお、本焼成工程時のアルゴンのフロー条件は300mL/minとし、昇温速度は120℃/30秒とした。
比較組成物1〜4をそれぞれ使用し、塗布法により銅薄膜を製造した。具体的には、まず、各銅膜形成用組成物をPET基板(コスモシャインA4100(商品名):東洋紡社製、フィルム厚100μm)上にキャストした。その後、500rpmで5秒及び2,000rpmで20秒の条件にてスピンコート法によって各銅膜形成用組成物を塗布した。次いで、ホットプレートを用いて大気中、100℃で30秒間乾燥した。乾燥後の基板を、赤外線加熱炉(RTP−6(商品名):アルバック理工社製)を用いてアルゴン雰囲気下、表3に記載の所定の温度で20分間加熱(本焼成工程)し、銅薄膜を得た。なお、本焼成工程時のアルゴンのフロー条件は300mL/minとし、昇温速度は120℃/30秒とした。
<評価>
[比抵抗の測定]
抵抗率計(ロレスタGP(商品名):三菱化学アナリテック社製)を使用し、実施例8〜21及び比較例5〜8で製造した基板上に形成した各銅薄膜の比抵抗を測定した。測定した比抵抗の値を表3に示す。
[比抵抗の測定]
抵抗率計(ロレスタGP(商品名):三菱化学アナリテック社製)を使用し、実施例8〜21及び比較例5〜8で製造した基板上に形成した各銅薄膜の比抵抗を測定した。測定した比抵抗の値を表3に示す。
表3に示すように、比較例5〜8では120℃で焼成したが、導電性を示す銅薄膜を形成することができなかった。これに対して、実施例8〜21では、150℃又は150℃未満の温度で焼成しても電気特性の良好な銅薄膜が形成されたことが確認できた。なかでも、実施例9、10、12、13、15、及び17〜21では、120℃以下の温度で焼成しても電気特性の良好な銅薄膜が形成されたことが確認できた。以上より、実施例1〜7の銅膜形成用組成物を用いれば、160℃未満の低温で焼成した場合であっても電気特性の良好な銅膜を形成可能であることが確認された。
Claims (2)
- ギ酸銅又はその水和物0.1〜3.0モル/kgと、
4−アミノピペリジン0.01〜18.0モル/kgと、を含有する銅膜形成用組成物。 - 請求項1に記載の銅膜形成用組成物を基体上に塗布する工程と、
前記銅膜形成用組成物が塗布された前記基体を200℃以下に加熱して銅膜を形成する工程と、を有する銅膜の製造方法。
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