JP5620795B2 - 銅膜形成用組成物及び該組成物を用いた銅膜の製造方法 - Google Patents

銅膜形成用組成物及び該組成物を用いた銅膜の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、種々の基体上に銅膜を形成するための銅膜形成用組成物および該組成物を基体に塗布し、加熱することによる銅膜の製造方法に関する。
銅を電気導体とする導電層や配線を液体プロセスであるMOD法、ゾル−ゲル法、微粒子分散液塗布法によって形成する技術は、多数報告されている。
例えば、特許文献1〜4には、各種基体に水酸化銅又は有機酸銅と多価アルコールを必須成分とした混合液を塗布し、非酸化性雰囲気中で165℃以上の温度に加熱することを特徴とする銅膜形成物品の製造方法が報告されている。有機酸銅としては、ギ酸銅が開示されており、多価アルコールとしては、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンが開示されている。
特許文献5には、銀微粒子と銅の有機化合物を含有する金属ペーストが報告されている。当該ペーストに使用される銅の有機化合物としては、ギ酸銅が開示されており、これと反応させてペースト化せしめるアミノ化合物としてジエタノールアミンが開示されている。
特許文献6には、金属パターン形成用の金属塩混合物が報告されている。当該混合物の成分としては、金属塩としてギ酸銅が開示されており、有機成分として、有機溶剤であるジエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、モルホリンが開示されており、金属配位子として、ピリジンが開示されている。
特許文献7には、ギ酸銅と3−ジアルキルアミノプロパン−1,2−ジオール化合物を含有する低温分解性の銅前駆体組成物が開示されている。
特許文献8には、ギ酸銅とアルカノールアミンを含有する銅薄膜形成用組成物が開示されている。アルカノールアミンとしては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンが例示されている。
特開平1−168865号公報 特開平1−168866号公報 特開平1−168867号公報 特開平1−168868号公報 特開2007−35353号公報 特開2008−205430号公報 特開2009−256218号公報 特開2010−242118号公報
銅膜形成用組成物を使用した液体プロセスにおいて、微細な配線や膜を安価に製造するには、下記の要件を満足する組成物であることが望まれる。すなわち、微粒子等の固相を含まない溶液タイプであること、導電性に優れた銅膜を与えること、低温で銅膜に転化できること、塗布性が良好であること、保存安定性が良好であること、1回の塗布により得られる膜厚のコントロールが容易であることが望まれ、特に厚い膜の形成ができることが望まれている。しかし、これらの要求を充分に満たす銅膜形成用組成物は、未だ知られていない。
本発明者等は、上記の実情に鑑み検討を重ねた結果、ギ酸銅又はその水和物、特定のジオール化合物、特定のピペリジン化合物を含有してなる銅膜形成用組成物が上記要求性能を満たすことを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、必須成分として、ギ酸銅又はその水和物を1モル部、下記一般式(1)または下記一般式(1’)のいずれかで表されるジオール化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種のジオール化合物を0.25〜2.0モル部、下記一般式(2)で表されるピペリジン化合物を0.25〜2.0モル部並びにこれらを溶解せしめる有機溶剤を含有してなることを特徴とする銅膜形成用組成物を提供するものである。
Figure 0005620795
(一般式(1)中、Xは、水素原子、メチル基、エチル基又は3−アミノプロピル基のいずれかを表わす。一般式(1’)中、R1及びR2は、それぞれ独立に炭素数1〜4のアルキル基を表し、場合によっては互いに結合して隣接するNとともに5員環又は6員環を形成してもよい。)
Figure 0005620795
(式中、mは0又は1を表す。)
また、本発明は、上記に記載の銅膜形成用組成物を基体上に塗布した後、該基体を100〜400℃に加熱することによって銅膜を形成することを特徴とする銅膜の製造方法を提供するものである。
本発明によれば、塗布性が良好であり、保存安定性に優れた溶液タイプの銅膜形成用組成物を提供できる。本発明の組成物は、これを基体上に塗布し、比較的低温で加熱することで、充分な導電性を有する銅膜を得ることが可能である。また、本発明によれば、ギ酸銅又はその水和物の濃度を調整することで1回の塗布で得られる膜厚を調整することができ、特に厚い膜の製造が可能となる。
本発明の銅膜形成用組成物の特徴の一つは、銅膜のプレカーサとしてギ酸銅を使用することにある。ギ酸銅は、無水和物でもよく、水和していてもよい。ギ酸銅の水和物としては、四水和物が知られている。これに対し、ギ酸銅の代わりに、酢酸塩、β−ジケトン錯体、EDTA錯体等、他の可溶性銅化合物を使用した場合には、膜に転化したとき充分な導電性を示す膜にはならない。
本発明の銅膜形成用組成物中のギ酸銅又はギ酸銅水和物の含有量は、所望の銅膜の厚さに応じて適宜に調整すればよい。ギ酸銅の含有量は、例えば、0.5〜3.0モル/kgが好ましく、0.75〜2.5モル/kgがより好ましい。本発明の銅膜形成用組成物は、ギ酸銅濃度を高濃度としても、安定性が高く、塗布性に優れ、膜に転化したときに島状となることがない。このため、1回の塗布で、基板全面に100nm以上の厚い銅膜を形成することができる。
本発明の銅膜形成用組成物に使用される下記一般式(1)または(1’) のいずれかで表されるジオール化合物は、1つ以上のアミノ基を有することが特徴である。当該ジオール化合物は、銅膜形成用組成物に対し、保存安定性を与え、膜に転化したときの導電性を向上させる効果を与える。
Figure 0005620795
上記一般式(1’)のR1及びR2は、それぞれ独立に炭素数1〜4のアルキル基を表し、場合によっては互いに結合して隣接するNとともに5員環又は6員環を形成してもよい。炭素数1〜4のアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、2−プロピル、ブチル、2−ブチル、イソブチル、第3ブチルが挙げられる。R1及びR2が互いに結合して隣接するNとともに形成する5〜6員環としては、例えば、ピロール、ピロリジン、メチルピロリジン、ピリジン、2−メチルピリジン、3−メチルピルジン、4−メチルピリジン、2,4−ルチジン、2,6−ルチジン、ピペリジン、2−メチルピペリジン、3−メチルピペリジン、4−メチルピペリジンが挙げられる。
上記一般式(1)で表されるジオール化合物としては、例えば、下記化合物No.1〜No.4が挙げられる。
Figure 0005620795
上記一般式(1’)で表されるジオール化合物の例としては、下記化合物No.5〜No.10が挙げられる。
Figure 0005620795
上記ジオール化合物の中でも、ジエタノールアミン(化合物No.1)、N−メチルジエタノールアミン(化合物No.2)、N−アミノプロピルジエタノールアミン(化合物No.4)又は3−ジメチルアミノ−1,2−プロパンジオール(化合物No.5)は、銅膜形成用組成物に対して、特に良好な保存安定性を与えるので好ましい。また、ジエタノールアミン(化合物No.1)、N−メチルジエタノールアミン(化合物No.2)又は3−ジメチルアミノ−1,2−プロパンジオール(化合物No.5)を用いることにより、銅膜形成用組成物から得られる膜の導電性が良好となるので、好ましい。
さらに、N−メチルジエタノールアミン(化合物No.2)を用いることにより、低い加熱温度で銅膜への転化が可能であるのでより好ましい。
本発明の銅膜形成用組成物における、上記ジオール化合物の使用量は、ギ酸銅1モル部に対して、0.25〜2.0モル部である。0.25モル部より少ないと、得られる銅膜の導電性が不十分となり、2.0モル部を超えると塗布性が悪化し、均一な銅膜が得られなくなる。より好ましい範囲は、0.5〜1.5モル部である。また、上記ジオール化合物は、単独で使用してもよく、2種類以上を混合して使用してもよい。
本発明の銅膜形成用組成物に使用される上記一般式(2)で表されるピペリジン化合物は、銅膜形成用組成物に対し、良好な塗布性と保存安定性を与える。
上記一般式(2)で表されるピペリジン化合物の例としては、下記化合物No.11〜No.14が挙げられる。
Figure 0005620795
本発明の銅膜形成用組成物における上記ピペリジン化合物の使用量は、ギ酸銅1モル部に対して、0.25〜2.0モル部である。0.25モル部より少ないと、塗布性が悪化し、均一な銅膜が得られなくなり、2.0モル部を超えると得られる銅膜の導電性が不十分となる。より好ましい範囲は、0.5〜1.5モル部である。
また、本発明の銅膜形成用組成物における上記ジオール化合物と上記ピペリジン化合物の使用量の和は、ギ酸銅1モル部に対して、1.5〜3.0モル部であると、塗布性、得られる膜の導電性、保存安定性が良好となるので好ましい。
本発明の銅膜形成用組成物に使用される有機溶剤は、上記のギ酸銅(又はその水和物)、ジオール化合物及びピペリジン化合物を安定に溶解せしめることができれば、いずれでもよい。当該有機溶剤は、単一組成でも混合物でもよい。本願発明に係る組成物に使用される有機溶剤の例としては、アルコール系溶剤、ジオール系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、エーテル系溶剤、脂肪族又は脂環族炭化水素系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤、シアノ基を有する炭化水素溶剤、その他の溶剤等が挙げられる。
アルコール系溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノール、イソブタノール、2−ブタノール、第3ブタノール、ペンタノール、イソペンタノール、2−ペンタノール、ネオペンタノール、第3ペンタノール、ヘキサノール、2−ヘキサノール、ヘプタノール、2−ヘプタノール、オクタノール、2−エチルヘキサノール、2−オクタノール、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、シクロヘプタノール、メチルシクロペンタノール、メチルシクロヘキサノール、メチルシクロヘプタノール、ベンジルアルコール、2−メトキシエチルアルコール、2−ブトキシエチルアルコール、2−(2−メトキシエトキシ)エタノール、2−(N,N−ジメチルアミノ)エタノール、3−(N,N−ジメチルアミノ)プロパノール等が挙げられる。
ジオール系溶剤としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、イソプレングリコール(3−メチル−1,3−ブタンジオール)、1,2−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,2−オクタンジオール、オクタンジオール(2−エチル−1,3−ヘキサンジオール)、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。
ケトン系溶剤としては、例えば、アセトン、エチルメチルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、エチルブチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソブチルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン等が挙げられる。
エステル系溶剤としては、例えば、ギ酸メチル、ギ酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸第2ブチル、酢酸第3ブチル、酢酸アミル、酢酸イソアミル、酢酸第3アミル、酢酸フェニル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸イソプロピル、プロピオン酸ブチル、プロピオン酸イソブチル、プロピオン酸第2ブチル、プロピオン酸第3ブチル、プロピオン酸アミル、プロピオン酸イソアミル、プロピオン酸第3アミル、プロピオン酸フェニル、2−エチルヘキサン酸メチル、2−エチルヘキサン酸エチル、2−エチルヘキサン酸プロピル、2−エチルヘキサン酸イソプロピル、2−エチルヘキサン酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸メチル、メトキシプロピオン酸エチル、エトキシプロピオン酸エチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノイソプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノ第2ブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノイソブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノ第3ブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノイソプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノ第2ブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノイソブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノ第3ブチルエーテルアセテート、ブチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ブチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ブチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、ブチレングリコールモノイソプロピルエーテルアセテート、ブチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ブチレングリコールモノ第2ブチルエーテルアセテート、ブチレングリコールモノイソブチルエーテルアセテート、ブチレングリコールモノ第3ブチルエーテルアセテート、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、オキソブタン酸メチル、オキソブタン酸エチル、γ−ラクトン、δ−ラクトン等が挙げられる。
エーテル系溶剤としては、例えば、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、モルホリン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジブチルエーテル、ジエチルエーテル、ジオキサン等が挙げられる。
脂肪族又は脂環族炭化水素系溶剤としては、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカリン、ソルベントナフサ等が挙げられる。
芳香族炭化水素系溶剤としては、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、メシチレン、ジエチルベンゼン、クメン、イソブチルベンゼン、シメン、テトラリンが挙げられる。
シアノ基を有する炭化水素溶剤としては、1−シアノプロパン、1−シアノブタン、1−シアノヘキサン、シアノシクロヘキサン、シアノベンゼン、1,3−ジシアノプロパン、1,4−ジシアノブタン、1,6−ジシアノヘキサン、1,4−ジシアノシクロヘキサン、1,4−ジシアノベンゼン等が挙げられる。
その他の有機溶剤としては、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミドが挙げられる。
上記の有機溶剤の中でもアルコール系溶剤は、安価であり、溶質に対する充分な溶解性を示し、シリコン基体、金属基体、セラミックス基体、ガラス基体、樹脂基体等の様々な基体に対する塗布溶媒として良好な塗布性を示すので好ましい。また、混合溶剤を用いる場合でもアルコール系溶剤を50質量%以上使用することがより好ましい。
本発明の銅膜形成用組成物における上記の有機溶剤の含有量は、ギ酸銅(ギ酸銅水和物の場合であってもギ酸銅で換算)100質量部に対して、20質量部〜5000質量部が好ましい。20質量部より小さいと得られる膜にクラックが発生する、塗布性が悪化する等の不具合をきたす場合がある。また、有機溶剤の割合が増すほど得られる膜が薄くなるので生産性の面から5000質量部を超えないことが好ましい。より好ましくは、250〜1000質量部である。
本発明の銅膜形成用組成物には、前記のギ酸銅又はその水和物、ジオール化合物、ピペリジン化合物、有機溶剤以外に、任意の成分を本発明の効果を阻害しない範囲で含有してもよい。任意の成分としては、ゲル化防止剤、安定剤等の塗布液組成物に安定性を付与する添加剤;消泡剤、増粘剤、揺変剤、レベリング剤等の塗布液組成物の塗布性を改善する添加剤;燃焼助剤、架橋助剤等の成膜助剤が挙げられる。これらの任意の成分を使用する場合の含有量は、本発明の組成物全量中において10質量%以下であること好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。
次に本発明の銅膜の製造方法について説明する。
本発明の銅膜の製造方法は、上記で説明した本発明の塗布液組成物を基体上に塗布する塗布工程と、その後、該基体を100〜400℃に加熱する成膜工程とを有する。必要に応じて成膜工程の前に、基体を50〜200℃に保持し、有機溶剤等の低沸点成分を揮発させる乾燥工程を加えてもよく、成膜工程の後に、基体を200℃〜500℃に保持して銅膜の導電性を向上させるアニール工程を加えてもよい。
上記の塗布工程における塗布方法としては、スピンコート法、ディップ法、スプレーコート法、ミストコート法、フローコート法、カーテンコート法、ロールコート法、ナイフコート法、バーコート法、スクリーン印刷法、刷毛塗り等が挙げられる。
また、必要な膜厚を得るために、上記の塗布工程から任意の工程までを複数繰り返すことができる。例えば、塗布工程から成膜工程の全ての工程を複数回繰り返してもよく、塗布工程と乾燥工程を複数回繰り返してもよい。
上記の乾燥工程、成膜工程、アニール工程の雰囲気は、通常、還元性ガス、不活性ガスのいずれかである。還元性ガスの存在下のほうが、より導電性の優れた銅膜を得ることができる。還元性ガスとしては水素が挙げられ、不活性ガスとしては、ヘリウム、窒素、アルゴンが挙げられる。不活性ガスは還元性ガスの希釈ガスとして使用してもよい。また、各工程においてプラズマや各種放射線等の熱以外のエネルギーを印加又は照射してもよい。
以下、製造例、実施例をもって本発明を更に詳細に説明する。しかしながら、本発明は以下の実施例等によって何ら制限を受けるものではない。
[実施例1](銅膜形成用組成物No.1〜10の製造)
ギ酸銅四水和物を1.0mol/kg、表1に記載のジオール化合物およびピペリジン化合物をそれぞれカッコ内の値(mol/kg)となるように配合し、本発明の実施例である銅膜形成用組成物No.1〜10を得た。なお、残分は全て有機溶剤である。上記濃度は、製造した組成物1kg中における各成分の使用量である(以下、同様)。
Figure 0005620795
[比較例1](比較用の銅膜形成用組成物1〜11の製造)
ギ酸銅四水和物を1.0mol/kgおよび表2に記載の化合物をそれぞれカッコ内の値(mol/kg)となるように配合し、比較用の銅膜形成用組成物1〜11を得た。なお、残分は全て有機溶剤である。
Figure 0005620795
[実施例2](銅膜形成用組成物No.11〜14の製造)
ギ酸銅四水和物を1.0mol/kg、表3に記載のジオール化合物及びピペリジン化合物をそれぞれカッコ内の値(mol/kg)となるように配合し、本発明の実施例である銅膜形成用組成物No.11〜14を得た。なお、残分は全て有機溶剤である。
Figure 0005620795
[評価例]
(保存安定性)
上記で得た組成物のうち、実施例の銅膜形成用組成物No.1〜No.14、比較用の銅膜形成用組成物1〜8は、いずれも溶液となった。また、これらの溶液状の銅膜形成用組成物を24時間静置し、沈殿が生じるか否かを目視で観察したところ、銅膜形成用組成物No.1〜No.3、No.5〜No.14、比較用銅膜形成用組成物2、3、6〜8は、24時間放置しても沈殿が発生せず、良好な保存安定性が確認できた。比較用の銅膜形成用組成物のうちの、9、10、11は、全成分が溶解せずに溶液とならなかった。また、比較用の銅膜形成用組成物1、4、5は、数時間放置後沈殿が発生した。実施例の銅膜形成用組成物No.4は、24時間放置後、沈殿が発生し、比較用のものに比べると格段に保存安定性に優れるものの、実施例の組成物の中では保存安定性に劣ることがわかった。
[実施例3および比較例2](銅膜の製造)
先に説明した実施例1及び比較例1で得た銅膜形成用組成物のいくつかを使用して、膜形成を行った。具体的には、まず、銅膜形成用組成物をガラス基板上にキャストし、500rpmで5秒、3000rpmで15秒スピンコート法によって塗布した。その後、ホットプレートを用いて、150℃で1分間乾燥を行い、次いで、乾燥後のガラス基板をアルゴン95体積%、水素5体積%の還元雰囲気中で350℃にて20分間加熱して、膜形成を行った。得られた膜について、膜の状態、導電性、膜の厚さを下記の方法で評価した。
[評価]
膜の状態は、目視で状態、光沢等を確認した。導電性は、Loresta−EP MCP−T360(三菱化学社製)を用いて四探針法による体積抵抗率により評価した。体積抵抗率の測定は任意の数箇所で行い、測定値を最小値と最大値の幅で表した。また、測定値が測定限界を超えているものを∞で表し、測定ができなかったものは−とした。膜厚は、銅膜の中央部をFE−SEMを用いて測定した。結果を表4に示す。
Figure 0005620795
[実施例3](銅膜の製造)
上記の実施例1で得た銅膜形成用組成物のうち表5に記載のものを使用して、それぞれ膜形成を行った。具体的には、まず、銅膜形成用組成物をガラス基板上にキャストし、500rpmで5秒、3000rpmで15秒スピンコート法によって塗布した。その後、ホットプレートを用いて150℃で1分間乾燥を行い、次いで、乾燥後のガラス基板をアルゴン95体積%、水素5体積%の還元雰囲気中で20分間加熱して、膜形成を行った。加熱温度は、350℃と250℃の2条件で行った。得られた膜について、上記実施例3と同様の方法で、膜の状態、導電性を評価した。結果を表5に示す。
Figure 0005620795
[実施例4](銅膜の製造)
上記の実施例2で得た銅膜形成用組成物No.11〜No.14を使用して、それぞれ膜形成を行った。具体的には、まず、銅膜形成用組成物をガラス基板上にキャストし、500rpmで5秒、3000rpmで15秒スピンコート法によって塗布した。その後、ホットプレートを用いて150℃で1分間乾燥を行い、次いで、乾燥後のガラス基板をアルゴン95体積%、水素5体積%の還元雰囲気中で250℃にて20分間加熱して、膜形成を行った。得られた膜について、上記実施例3と同様の方法で、膜の状態、導電性を評価した。結果を表6に示す。
Figure 0005620795
[実施例5](銅膜形成用組成物No.15〜20の製造)
表7に記載した配合により、銅膜形成用組成物No.15〜20をそれぞれ得た。なお、残分は全てエタノールである。
Figure 0005620795
[比較例3](比較用の銅膜形成用組成物12、13の製造)
表8に記載の配合により、比較用銅膜形成用組成物を得た。なお、残分は全てエタノールである。
Figure 0005620795
[実施例6および比較例4](銅膜の製造)
上記の実施例5および比較例3で得た各銅膜形成用組成物を使用して、膜形成を行った。具体的には、まず、銅膜形成用組成物をガラス基板上にキャストし、500rpmで5秒、3000rpmで15秒スピンコート法によって塗布した。その後、ホットプレートを用いて150℃で1分間乾燥を行い、次いで、乾燥後のガラス基板をアルゴン95体積%、水素5体積%の還元雰囲気中で20分間加熱して、膜形成を行った。加熱温度は、銅膜形成用組成物No.15〜17、比較用銅膜形成用組成物12は、350℃、銅膜形成用組成物No.18〜20、比較用銅膜形成用組成物13は、250℃である。得られた膜について、上記実施例3と同様の方法で、膜の状態、膜厚を評価した。結果を表9に示した。
Figure 0005620795
上記、表9に示される通り、本発明の実施例の銅膜形成用組成物では、ギ酸銅の濃度を調整することで、膜厚のコントロールが可能であり、1回あたりの塗布で50〜500nmの膜厚を得ることができた。
これに対し、ピペリジン化合物を使用しない比較用銅膜形成用組成物では、ギ酸銅の濃度を0.5mol/kgとすることで、50nmの銅膜の形成は可能であった。しかし、ギ酸銅の濃度を増加すると、表4の比較用銅形成用組成物2、3の結果に示されるように、膜が局所的な島状となってしまい、基板全面に100nmを超える厚さの銅膜を形成することはできなかった。

Claims (5)

  1. 必須成分として、ギ酸銅又はその水和物を1モル部、下記一般式(1)または下記一般式(1’)のいずれかで表されるジオール化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種のジオール化合物を0.25〜2.0モル部、下記一般式(2)で表されるピペリジン化合物を0.25〜2.0モル部並びにこれらを溶解せしめる有機溶剤を含有してなることを特徴とする銅膜形成用組成物。
    Figure 0005620795
    (一般式(1)中、Xは、水素原子、メチル基、エチル基、又は3−アミノプロピル基のいずれかを表わす。一般式(1’)中、R1及びR2は、それぞれ独立に炭素数1〜4のアルキル基を表し、場合によっては互いに結合して隣接するNとともに5員環又は6員環を形成してもよい。)
    Figure 0005620795
    (式中、mは0又は1を表す。)
  2. 前記ジオール化合物が、ジエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−アミノプロピルジエタノールアミン及び3−ジメチルアミノ−1,2−プロパンジオールからなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の銅膜形成用組成物。
  3. 前記ギ酸銅又はその水和物の濃度が0.75〜2.5モル/kgの範囲にある請求項1又は2に記載の銅膜形成用組成物。
  4. 前記有機溶剤が、炭素数1〜6のアルコールである請求項1〜3のいずれか1項に記載の銅膜形成用組成物。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の銅膜形成用組成物を基体上に塗布した後、該基体を100〜400℃に加熱することによって銅膜を形成することを特徴とする銅膜の製造方法。
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