以下、本発明を具体化した一実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1に示すように、本実施形態における土砂排出装置10は、堀削作業中の縦抗Tに設置される。縦抗Tは、図2に示すように、送電用鉄塔、橋脚などの建築物に設けられるコンクリート製の杭基礎を設けるために形成される。縦抗Tは、油圧ショベルS等を用いて地面Gを掘削することによって形成される。縦抗Tの内面には、当該内面の全体にわたって土留め用の壁体141が設けられる。
図1及び図2に示すように、土砂排出装置10は、縦抗Tの内面側に寄った位置に配置されている。その主たる構成要素として、軌道部11と、軌道部11を支持する軌道支持部12と、軌道部11に沿って往復移動する移動バケット13とを有している。これらの構成を有することにより、土砂排出装置10は、次の2つの機能を有している。
第1には、縦抗Tを掘削する際に生じた土砂を地上に排出する機能である。この機能を実現すべく、軌道部11は、地上側から縦抗T内に向かって垂直に延びるとともに、縦抗Tの上方には、逆U字状に湾曲して先端部を地面Gに向ける湾曲部15を有している。移動バケット13には、縦抗Tの底部での掘削によって発生した土砂が装入される。土砂が装入された状態で移動バケット13が軌道部11に沿って地上側へ移動し、さらに軌道部11の湾曲部15にも沿って移動することで移動バケット13が下向きとなり、それによって内容物の土砂が地面Gに排出される。
第2には、掘削するにつれて縦抗Tが徐々に深くなった場合に、軌道部11を構成する構成体を継ぎ足すことにより、軌道部11を延長させる機能である。この機能により、軌道部11の長さを縦抗Tの深さの変化に追従させ、縦抗Tの掘削が進んでも上記第1の土砂排出機能を果たすことが可能となる。
これらの機能を実現すべく、土砂排出装置10の上記主たる構成要素は、それぞれ次の構成を有している。なお、以下の説明では、土砂排出装置10を縦抗T内から見た状態を正面とし、その反対側を背面とする。左右については、正面視を基準とした場合の左右をいうものとする。
はじめに、軌道部11について、図1乃至図7を参照しながら説明する。図1に示すように、軌道部11は、互いに平行をなすように、縦抗Tの底部側から地上に向かって延びる一対の案内レール21,22と、両案内レール21,22の間に設けられた一対のラック23,24とを有している。両案内レール21,22及び両ラック23,24は、左右連結板25,26によって所定間隔で保持されている。
軌道部11は、第1軌道構成体31と第2軌道構成体32とが上下に連結されることによって構成されている。第1軌道構成体31は軌道部11の上端部を構成し、縦抗Tの地上部分に設けられている。第2軌道構成体32は、第1軌道構成体31の下方に設けられ、縦抗T内にその深さ方向に沿って設けられる。第2軌道構成体32は、縦抗Tの深さに応じて複数又は多数設けられ、それらが上下に連結されている。
図6に示すように、第1軌道構成体31は、一対のレール構成部41,42を有している。一対のレール構成部41,42はそれぞれが溝形鋼により同一形状かつ同一寸法によって形成され、開口部分を外側に向けて外面同士が相対向した状態で配置されている。レール構成部41,42同士の間には、レール構成部41,42の下端部、先端部及び中間部にそれぞれ左右連結板25a〜25cが設けられている。各レール構成部41,42は、全体として逆U字状をなすように形成されている。すなわち、各レール構成部41,42の下端部は上下方向に延びる直線状をなすように形成され、そこから上に向かうにつれて背面側へ向かって傾斜し、その後、湾曲してレール構成部41の延びる向きが反転し、先端部が地面Gの側を向くように形成されている。そのため、一対のレール構成部41,42の先端部は地面Gに向かって略鉛直方向に沿って延びている。この湾曲した部分が、軌道部11の上端部に設けられた湾曲部15となっている。
一対のレール構成部41,42の下端部には、それぞれせり上げロッド43,44が設けられている。せり上げロッド43,44は、軌道部11を延長する際に、第1軌道構成体31をせり上げるために用いられる。せり上げロッド43,44は鋼材によって断面四角形状をなすように形成され、長尺状をなして直線状に延びている。各せり上げロッド43,44は、その上端部が各レール構成部41,42の下端部内側にそれぞれ取り付けられ、互いに平行をなすように下方に向かって延びている。各せり上げロッド43,44の下端部には、外側に向けて開口するガイド溝45,46が形成されている(後述する図13を参照)。
一対のレール構成部41,42の間の中央部には、一対のラック構成部47,48が設けられている。一対のラック構成部47,48は、それぞれが同一形状かつ同一寸法によって形成されている。各ラック構成部47,48は、一対のレール構成部41,42間をつなぐ左右連結板25a〜25cに取り付けられている。下端側の左右連結板25bの背面側には、第2軌道構成体32との連結時に、上下連結板27が取り付けられる。各ラック構成部47,48は、一対のレール構成部41,42が延びる方向に沿って当該レール構成部41,42と同じ長さとなるように形成されている。
各ラック構成部47,48には、その延びる方向に沿って所定間隔ごとに多数のラック歯47a,48aが設けられている。ラック歯47a,48a同士の間にはラック溝47b,48bが形成され、ラック溝47b,48bの底部は円弧状をなしている。一対のラック構成部47,48のラック歯47a,48a及びラック溝47b,48bは、ラック構成部47,48が延びる方向にずれた状態で設けられている。そのため、左側のラック構成部47が有するラック歯47aと、右側のラック構成部48が有するラック溝48bとが左右に隣接した状態となっている。
図7に示すように、第2軌道構成体32は、第1軌道構成体31と同じく、一対のレール構成部51,52と、両レール構成部51,52をつなぐ左右連結板25a,25bと、一対のラック構成部57,58とを有している。これらは、第1軌道構成体31のレール構成部41,42、ラック構成部47,48と同様の構成を有しているが、次の点で異なっている。一対のレール構成部51,52及び一対のラック構成部57,58は、上下方向に延びる直線状をなすように形成されている。また、左右連結板26a,26bは、第2軌道構成体32の上端部と下端部とにのみ設けられている。ただ、第2軌道構成体32の長さによっては、中間部の左右連結板26を設けてもよい。その他、一対のレール構成部51,52の内側となる外面(対向面)には、レール構成部51,52の延びる方向の全域にわたってガイド板55,56が設けられている。ガイド板55,56は、各レール構成部51,52の内側(溝形鋼の背面部)から、当該外面に対して垂直をなすように突出して設けられている。
第1軌道構成体31と第2軌道構成体32とは、図3に示すように、第1軌道構成体31が有する各レール構成部41,42の下端と、第2軌道構成体32が有する各レール構成部51,52の上端とを突き合わせるようにして連結されている。第1軌道構成体31の下端部に設けられた左右連結板25bと、第2軌道構成体32の上端部に設けられた左右連結板26aとが上下に並んだ状態となっている。その両者の背面側において左右それぞれに設けられた縦長の上下連結板27とボルト等の固定具Bとを用いて、第1軌道構成体31の下端と第2軌道構成体32の上端とが連結されている(図6及び図7を参照)。この場合に、第1軌道構成体31のせり上げロッド43,44は、第2軌道構成体32のレール構成部51,52の内側に配置されている。せり上げロッド43,44の下端に設けられたガイド溝45,46には、第2軌道構成体32のガイド板55,56が挿入されている(図6及び図7の他、後述する図13を参照)。
第1軌道構成体31の下方では、複数の第2軌道構成体32が上下に並んで連結されている。上下に並ぶ第2軌道構成体32同士は、上側の第2軌道構成体32が有する各レール構成部51,52の下端と、下側の第2軌道構成体32が有する各レール構成部51,52の上端とを突き合わせるようにして連結されている。上側の第2軌道構成体32の下端部に設けられた左右連結板26bと、下側の第2軌道構成体32の上端部に設けられた左右連結板26aとが上下に並び、その両者の背面側に設けられた縦長の上下連結板27とボルト等の固定具Bとを用いて、上下の第2軌道構成体32同士が連結されている(図7を参照)。
このように第1軌道構成体31と複数の第2軌道構成体32とが相互に連結されて軌道部11が構成されている。軌道部11の案内レール21,22は、第1軌道構成体31のレール構成部41,42と、第2軌道構成体32のレール構成部51,52とが上下につながることによって形成されている。そのため、軌道部11の案内レール21,22は縦抗T内では上下方向に沿って直線状に延び、地上では湾曲して逆U字状をなすように形成され、先端部は地面Gの側を向いている。また、軌道部11のラック23,24は、第1軌道構成体31のラック構成部47,48と、第2軌道構成体32のラック構成部57,58とが上下につながることによって形成されている。
以上の構成を有する軌道部11は、軌道支持部12によって支持されている。軌道支持部12は、図1の他、図4及び図5にも示すように、最上段の第2軌道構成体32における上端の左右連結板26aを受け支える連結板受け部61と、連結板受け部61を駆動する駆動部62とを有している。駆動部62は地面Gにおける縦抗Tの開口縁部に設けられ、連結板受け部61はその駆動部62から縦抗T側へ突出するように設けられている。連結板受け部61は鋼材より形成され、先端部が鉤状をなしている。連結板受け部61は、その先端部において、第1軌道構成体31と第2軌道構成体32との連結部分に存在する左右連結板25,26(より詳しくは、第2軌道構成体32の上端側の左右連結板25a)を受け支えている。この時の連結板受け部61の配置位置を受け位置とする。受け位置に配置された連結板受け部61が左右連結板25,26を受け支えることにより、軌道部11の全体が縦抗Tの内壁側で支持されている。
図5に示すように、連結板受け部61は、駆動部62の駆動により、受け位置から、縦抗Tの外側に配置されて左右連結板25,26から離れた非受け位置(仮想線で図示された位置)まで退避させることが可能となっている。もっとも、土砂排出動作中においては、連結板受け部61は受け位置に配置された状態で保持される。後述するように、軌道部11を延長する場合に、連結板受け部61を非引受け位置に退避させる。
軌道支持部12は、上記連結板受け部61の他、図1、図3及び図4に示すように、軌道部11の支持を安定化させるための構成を有している。当該構成は、軌道部11の上部において当該軌道部11の背面側とその左右両側方に広がるように設けられている。具体的には、一対のガイド柱63,64と、水平支持材65と、軌道部11と水平支持材65とを連結する一対の連結材66,67とを有している。これらはいずれも鋼材によって形成されている。
一対のガイド柱63,64は、軌道部11の左右両側方にそれぞれ設けられ、いずれも長尺状をなす円柱状に形成されている。各ガイド柱63,64は、その下端部において縦抗Tの内壁に設けられた壁体141及びそのフランジ部142に固定され、上下方向に沿って縦抗Tの上方に至るまで延びている。水平支持材65は、軌道部11のうち第1軌道構成体31の背面側に設けられ、平面視において、縦抗Tの開口縁に沿うように円弧状をなしている。水平支持材65の両端部には、縦抗Tの内側に突出する支持突部68,69がそれぞれ設けられている。各支持突部68,69には円筒部68a,69aが設けられ、各円筒部68a,69aのそれぞれに各ガイド柱63,64が挿通されている。一対の連結材66,67は、それぞれの一端部が第1軌道構成体31の先端部に連結され、他端部が水平支持材65に連結され、両者の間をつないでいる。図4に示すように、各連結材66,67は、平面視において、連結材66,67同士の間隔が軌道部11から水平支持材65に向かって広がるように設けられている。
なお、後に図17を参照しながら説明するが、軌道部11を延長させる場合には、軌道部11のうち第1軌道構成体31を上方向へせり上げる。その際、第1軌道構成体31が上方向へ移動するのに伴って、当該第1軌道構成体31と連結材66,67によって連結された水平支持材65も共に移動する。この移動時に、水平支持材65の両端部に設けられた円筒部68a,69aの移動がガイド柱63,64によってガイドされる。これにより、第1軌道構成体31を安定させつつ上方へ移動させることが可能となる。なお、ガイド柱63,64、水平支持材65、連結材66,67及び円筒部68a,69aは、案内手段に相当する。
次に、上記の軌道部11に沿って移動する移動バケット13について、図8乃至図15を参照しながら説明する。図8に示すように、移動バケット13は土砂バケット71と、移動台車80とを有している。土砂バケット71は鋼板によって箱状をなすように形成され、土砂収容空間72と、土砂収容空間72を上方に向けて開放する開口部73とを有している(開口部73については図1を参照)。縦抗Tの掘削によって発生した土砂を、開口部73から土砂収容空間72に装入することで所定量の土砂を保持することか可能となっている。
土砂バケット71は、軌道部11の案内レール21,22に沿って移動する移動台車80に取り付けられている。移動台車80は、図9に示すように、第1枠体81と、第2枠体82と、各枠体81,82に設けられたローラ83〜88と、ピニオン110と、ピニオン110を駆動するピニオン駆動部89とを有している。
図9に示すように、第1枠体81及び第2枠体82は、いずれも同一寸法を有する角形鋼材が用いられ、正面視において四角形状をなすように形成されている。第1枠体81は、第2枠体82よりも移動バケット13の上昇時における前側に設けられている。なお、図9に示された状態では、第1枠体81は第2枠体82よりも上側となっている。以下では、移動台車80の説明における前後とは、移動バケット13の上昇時における前後をいうものとする。
第1枠体81と第2枠体82との間には、両者を回動可能に連結する回動連結部91が設けられている。回動連結部91には水平方向に延びる連結軸91aが設けられ、当該連結軸91aを中心として回動可能となるように、両枠体81,82が連結されている。第1枠体81と第2枠体82とは、左右方向において同一幅を有している。第1枠体81には、外枠部92が第1枠体81と一体的に設けられている。外枠部92は、第1枠体81や第2枠体82と同じ角形鋼材により形成されている。外枠部92により、第1枠体81はその左右側方へ拡張されるとともに、第1枠体81の後側に、第2枠体82を収容する収容部93が形成されている。第1枠体81、外枠部92及び第2枠体82とで形成される台車全体の正面側には同一平面が形成され、その平面部に土砂バケット71の背面部が当接した状態で、土砂バケット71が移動台車80に取り付けられている。
第1枠体81の前端部には、左右両側にローラ83,84が一対ずつ設けられている。左側の一対のローラ83同士及び右側の一対のローラ84同士は、それぞれが回転可能な状態でローラ連結板94によって連結されている。各ローラ83,84は、軌道部11の案内レール21,22の外側開口からレール内に収容されている。各ローラ83,84の外径は、案内レール21,22の内寸、すなわち案内レール21,22を形成する溝形鋼においてそのフランジ同士の間の寸法よりも若干小さくなっている。各ローラ83,84は、それぞれローラ支持部95,96によって第1枠体81に支持されている。ローラ支持部95,96は、第1枠体81が有する左右の縦材81a,81bにそれぞれ設けられ、案内レール21,22よりも外側において背面側に向かって延びている。
図10に左側のローラ支持部95の側面図を代表して示すように,各ローラ支持部95,96の先端部には回動軸95a,96aが設けられている。回動軸95a,96aには、前後のローラ83,84同士を連結するローラ連結板94が設けられ、当該回動軸95a,96aを中心として回動可能となっている。移動台車80が案内レール21,22に沿って移動する場合には、各ローラ83,84がそれぞれ案内レール21,22の内側を回転しながら第1枠体81の移動を案内する。
図9に戻り、第2枠体82の前端部には、左右両側にローラ85,86が一対ずつ設けられている。第2枠体82の後端部にも、左右両側にローラ87,88が一対ずつ設けられている。ローラ85〜88やその支持構造は第1枠体81に設けられたローラ83,84とその支持構造と同じである。
すなわち、前端部においては、各ローラ84,85は、第2枠体82の縦材82a,82bに設けられたローラ支持部97,98により支持されている。各ローラ支持部97,98の先端部に設けられた回動軸97a,98aには、左側の一対のローラ85同士及び右側の一対のローラ86同士を連結するローラ連結板99が設けられ、当該回動軸97a,98aを中心として回動可能となっている。
また、後端部においては、各ローラ87,88は、第2枠体82の縦材82a,82bに設けられたローラ支持部101,102により支持されている。各ローラ支持部101,102の先端部に設けられた回動軸101a,102aには、左側の一対のローラ87同士及び右側の一対のローラ88同士を連結するローラ連結板103が、当該回動軸101a,102aを中心として回動可能となるように連結されている。移動台車80が案内レール21,22に沿って移動する場合には、ローラ85〜88が案内レール21,22の内側を回転しながら第2枠体82の移動を案内する。
以上のように、第1枠体81については前端部にのみローラ83,84が設けられている。そのため、第1枠体81の前後両端部にローラを設けた構成と比較して、第1枠体81におけるローラ連結板94の回動軸95a,96aと、第2枠体82の前端部に設けられたローラ連結板99の回動軸97a,98aとの軸間距離が長くなっている。そうすると、軌道部11の湾曲部15に第1枠体81が差しかかった場合、図11に仮想線で示すように、第1枠体81は、第2枠体82との連結部分において連結軸91aを中心に回動する。これにより、両枠体81,82は屈曲した状態となる。この場合に、第1枠体81に設けられた外枠部92は、第1枠体81の傾斜に合わせた角度に傾斜する。
図9に戻り、移動台車80のピニオン110は、第2枠体82の内側空間104において、当該内側空間104を正面視した場合の中央部に配置されるように設けられている。ピニオン110は、軌道部11のラック23,24に噛み合っている。ピニオン駆動部89により当該ピニオン110を回動させると、ラックアンドピニオン機構により、移動台車80はラック23,24の延びる方向に沿って案内レール21,22に案内されながら移動する。
図12にラックアンドピニオン部分のみを示すように、ピニオン110は、平行をなすように等間隔に並べられた3枚の円板111a〜111cと、円板111同士の間にそれぞれ3つずつ設けられた歯合軸112,113とを有している。左円板111aと、中央円板111bと、両円板111a,111bの間に設けられた3つの歯合軸112とにより、左側ピニオン114が構成されている。一対のラック23,24のうち左側ラック23は、この左側ピニオン114と噛み合っている。中央円板111bと、右円板111cと、両円板111b,111cの間に設けられた3つの歯合軸113とにより、右側ピニオン115が構成されている。一対のラック23,24のうち右側ラック24は、この右側ピニオン115と噛み合っている。このように、ラック23,24が左右に2列設けられていることから、ピニオン110も左右に2列設けられている。
各円板111a〜111cの水平方向に延びる中心軸部分には、水平方向に延びる回転軸116が設けられている。図9に示すように、第2枠体82の内側空間104には、ピニオン110の左右両側に軸支板105,106が設けられており、両軸支板105,106によって回転軸116が軸支されている。回転軸116の一方側(図においては右側)は外枠部92の外側に至るまで延長されており、外枠部92の外側に設けられたピニオン駆動部89に連結されている。ピニオン駆動部89はエア駆動式のモータ及びギア等により構成され、ピニオン駆動部89の駆動により回転軸116が回転するようになっている。回転軸116の回転により、3枚の円板111a〜111cが一体的に回転する。なお、ピニオン駆動部89を駆動する圧縮エアは、地上に設置されたコンプレッサより供給される。
図12に戻り、各歯合軸112,113は円柱状をなすように形成されている。左側ピニオン114及び右側ピニオン115それぞれにおいて、3つの歯合軸112,113は、回転軸116の軸線方向にみて等角度ごとに設けられている。ただ、左側ピニオン114の各歯合軸112と、右側ピニオン115の各歯合軸113とは、位相をずらして設けられている。また、前述したように、左側ラック23及び右側ラック24の各ラック溝23b,24bは、両ラック23,24の延びる方向に沿ってずらした状態で設けられている。そのため、ピニオン110と一対のラック23,24とは、左側ピニオン114か右側ピニオン115のいずれかが、ラック23,24と噛み合っている状態となる。図示では、左側ピニオン114の歯合軸112が左側ラック23のラック溝23bとの噛み合い状態から外れかかっているものの、右側ピニオン115の歯合軸113が右側ラック24のラック溝24bに噛み合っている状態となっている。
したがって、回転軸116を一方向(図12のX方向)へ回転させれば、ピニオン110の回転とラック23,24との噛み合いにより移動台車80、つまり移動バケット13は縦抗Tの底部側から地上へ向かって上昇する。これとは逆に、回転軸116を逆方向(図12のY方向)へ回転させれば、ピニオン110の回転とラック23,24との噛み合いにより移動台車80、つまり移動バケット13は地上側から縦抗Tの底部側へ向かって下降する。
図9に示すように、移動台車80の前後には、水平方向に延びるスイッチバー121,122が設けられている。スイッチバー121,122は、それぞれが移動台車80のフレーム側に押し込まれると、ピニオン駆動部89の駆動が停止するようになっている。そして、図1、図4及び図6に示すように、軌道部11(より詳しくは第1軌道構成体31)の先端には、ストッパ14が連結されている。ストッパ14は、下向きに延びる軌道部11の先端部から斜め上方に向かって延び、鋼材によって四角枠状をなすように形成されている。移動バケット13の上昇時において、移動バケット13が湾曲部15に至り、前側スイッチバー121がストッパ14に当たると、移動バケット13の移動が停止する。また、移動バケット13の下降時において、後側スイッチバー122が障害物に当たった場合にも、移動バケット13の移動が停止する。
図9及び図13に示すように、移動台車80の背面側には、一対のロッド係合部123,124が設けられている。各ロッド係合部123,124は、第2枠体82の後端側における背面側であって、軌道部11(より詳しくは第2軌道構成体32)が有する一対のガイド板55,56と対峙する位置にそれぞれ設けられている。各ロッド係合部123,124は板状をなしており、板面が水平をなす状態で、第2枠体82の背面側へ突出するように設けられている。一対のロッド係合部123,124は、移動台車80の前後方向に延びる軸線を回動中心として回動可能に設けられている。この実施形態では略90度回動するように構成されている。この回動により、ロッド係合部123,124は、軌道部11の第1軌道構成体31が有するせり上げロッド43,44の下方に配置される位置と、当該下方から外れた位置とのいずれかに配置される。前者の位置を係合位置とし、後者の位置を非係合位置とする。そのため、ロッド係合部123,124が係合位置にあると、左側ロッド係合部123は左側せり上げロッド43の下方に、右側ロッド係合部124は右側せり上げロッド44の下方にそれぞれ配置される。
ロッド係合部123,124は、いずれか一方の位置にいったん配置されるとその配置状態が維持され、手動又は自動での操作をしてはじめて他方の位置に変更される構成となっている。その具体的構成は任意であるが、例えば、ロッド係合部123,124を非係合位置から係合位置へ付勢するばね部材(図示略)と、そのばね部材の付勢力に抗してロッド係合部123,124を係止して非係合位置に配置させる係止部(図示略)とが設けられた構成が考えられる。この構成では、係止部による係止を解除するとロッド係合部123,124が係合位置に配置され、再度係止状態とすることでロッド係合部123,124が非係合位置に配置される。後述するように、土砂排出動作はロッド係合部123,124が非係合位置に配置された状態で行われ、軌道部11の延長時にはロッド係合部123,124が係合位置に配置された状態で行われる。
図9及び図14に示すように、移動台車80の背面側には、一対の台車支持部131,132が設けられている。各台車支持部131,132は、バケット支持部に相当する。各台車支持部131,132は、外枠部92の前後中央部の背面側にそれぞれ設けられている。各台車支持部131,132は、平面視において円形状をなす厚板状に形成され、板面が水平をなす状態で、外枠部92の背面側へ突出するように設けられている。各台車支持部131,132には、切込み部133,134が形成されている。切込み部133,134は、内側から円形の中心に向かって斜めに延びるロッド導入部133a,134aと、ロッド導入部133a,134aに連通して円形の中心部(導入奥部)から背面側に向かって短く延びるロッド保持部133b,134bとを有している。ロッド導入部133a,133a及びロッド保持部133b,134bは、それぞれ導入部及び保持部に相当する。
図14の他、図1及び図3にも示すように、軌道部11の左右両側方には、長尺部材としての吊り下げロッド135,136が設けられている。各吊り下げロッド135,136の上端部は壁体141の上端に設けられたフランジ部142に取り付けられ、それぞれが縦抗Tの内壁側において垂れ下がっている。吊り下げロッド135,136は、ねじ方式により継ぎ足し可能に構成されており、新たな構成部品を継ぎ足すたびにロッド長が延長される。各吊り下げロッド135,136には、それぞれ載置部137,138が取り付けられている。各載置部137,138は厚板により円板状に形成され、その円板中心を貫くように吊り下げロッド135,136が設けられている。
図15(a)に示すように、吊り下げロッド135,136は、移動バケット13を移動させる場合に、移動台車80の台車支持部131,132が載置部137,138と干渉しない位置に設けられている。一方で、図15(b)に示すように、左右の載置部137,138の上に、左右の台車支持部131,132を載せることが可能となっている。この場合、図14に示すように、載置部137,138の切込み部133,134において、吊り下げロッド135,136をロッド導入部133a,134aからロッド保持部133b,134bに向かって挿入する。図14では、左側の吊り下げロッド135を左側のロッド導入部133aに導入する要素を仮想線で示している。また、右側の吊り下げロッド136が右側のロッド保持部134bに保持された様子を仮想線で示している。移動台車80に対し当該移動台車80を正面側に向かわせる力Fが作用すると、吊り下げロッド135,136はロッド保持部133b,134bにおいて抜け止めされた状態で保持される。後述するように、延長された軌道部11を縦抗T内に下降させる場合に、この後者の状態とされる。
以上の構成を有する土砂排出装置10を用い、第1の機能としての土砂排出動作及び第2の機能としての軌道部11の延長時における作業方法を次に説明する。
はじめに、土砂排出動作について説明する。この動作中においては、移動台車80に設けられたロッド係合部123,124(図13を参照)は非係合位置に配置され、その状態で維持されている。そのため、移動バケット13の移動中に、ロッド係合部123,124が軌道部11のせり上げロッド43,44と干渉することはない。
図16(a)に示すように、移動バケット13を、案内レール21,22に案内されながら縦抗Tの底部側の所定位置に移動させ、そこで移動停止させる。この状態で、図2に示すように、油圧ショベルS等を用いて縦抗Tの底を掘削する。掘削によって発生する土砂を、移動バケット13の土砂バケット71に装入する。土砂バケット71に所定量の土砂が溜まった段階で土砂の装入をいったん止め、図16(a)に示すように、移動バケット13を案内レール21,22に案内されながら上昇方向へ前進させる。この場合において、装入された土砂に左右の片寄りが生じたとしても、移動台車80のローラ83〜88が溝形鋼よりなる案内レール21,22の内面に当接することによって受け止められ、前進中の移動バケット13の水平状態が維持される。
図16(b)に示すように、前進した移動バケット13が軌道部11の上端部に設けられた湾曲部15に至ると、回動可能に連結された移動台車80の第1枠体81は第2枠体82に対してお辞儀し始めるように屈曲し始める。第1枠体81には土砂バケット71が取り付けられる外枠部92と一体化されていることから、第1枠体81の屈曲により、土砂バケット71についても第1枠体81と平行をなす状態となって傾き、前かがみの状態となる。
そこからさらに移動バケット13の移動が進むと、図16(c)に示すように、移動台車80は、第1枠体81の前端部が下向きで、第2枠体82の前端部が上向きとなった屈曲状態となる。これにより、第1枠体81とともに土砂バケット71も斜め下向きとなる。それとともに、前側スイッチバー121がストッパ14に当たり、それまで前進していた移動台車80の移動が停止する。土砂バケット71が斜め下向きの状態になったことと、移動台車80が停止したことによる衝撃とがあいまって、土砂バケット71の土砂収容空間72に収容されていた土砂が地面Gに向けて排出される。なお、排出された土砂が落下する位置には土砂搬送装置(図示略)のコンベアが配置されている。コンベアによって運ばれた土砂は、その後、コンベアによってトラック等の運搬車両の荷台まで運ばれて積載される。
土砂排出終了後、移動バケット13を後進させる。図16(a)に示すように、移動バケット13を縦抗Tの底部側の所定位置まで移動させ、そこで移動停止させる。その後、前述した動作を繰り返すことにより、土砂が順次地上に排出される。
次に、軌道部11を延長させる場合の動作及び作業方法について説明する。上記の土砂排出動作を繰り返して縦抗Tを掘り進めると、縦抗Tの底部が深くなり、軌道部11の下端部に移動バケット13を配置した場合でも、油圧ショベルS等で掘削した土砂を移動バケット13に装入することが困難となる。このように軌道部11の長さが足らなくなる場合に備え、所定深さ(例えば、第2軌道構成体32の長さ分)が掘り進められるごとに、掘削作業をいったん停止し、軌道部11を延長させる。この場合、2つの過程を経る。第1過程では、第1軌道構成体31を上昇させて第2軌道構成体32との間に隙間を形成した後、その隙間に第2軌道構成体32を継ぎ足して軌道部11それ自体を延長させる。続く第2過程では、第1過程で延長された軌道部11を下降させ、第1軌道構成体31を元の位置に復帰させる。以下それぞれの過程についてより詳しく説明する。
はじめに、第1過程の初期段階では、土砂を装入していない空の状態の移動バケット13を縦抗Tの底部側に配置する。その状態で、移動台車80のロッド係合部123,124を回動させて、土砂排出動作時に非係合位置に配置されていた状態を変更し、係合位置に配置させる。また、図17(a)に示すように、第1軌道構成体31とその直下の第2軌道構成体32とを連結する上下連結板27を取り外しておく。
続く段階で、移動バケット13を上昇させる。すると、図17(a)に示すように、ロッド係合部123,124がせり上げロッド43,44の下端部に当接する。そこからさらに移動バケット13を上昇させると、図7(b)に示すように、せり上げロッド43,44は、移動バケット13の上昇に伴ってロッド係合部123,124によって持ち上げられる。せり上げロッド43,44は第1軌道構成体31の一要素であるため、せり上げロッド43,44の持ち上がりにより、第1軌道構成体31の全体がせり上がる。これにより、第1軌道構成体31とその直下の第2軌道構成体32との間には、継ぎ足し用空間151が形成される。継ぎ足し用空間151は新たに第2軌道構成体32を継ぎ足すための空間であるため、その継ぎ足しが可能となるだけのスペースが確保された状態で、移動バケット13の移動を停止させる。
なお、以上の動作から、せり上げロッド43,44及びロッド係合部123,124がせり上げ手段に相当する。
第1軌道構成体31のせり上がり時において、第1軌道構成体31に設けられた水平支持材65及び円筒部68a,69aも一緒にせり上がる。円筒部68a,69aがガイド柱63,64に挿通されているため、第1軌道構成体31、水平支持材65及び円筒部68a,69aのせり上がりは、ガイド柱63,64によってガイドされる。これにより、第1軌道構成体31は安定した状態でせり上がる。
その後、図18に示すように、第1過程によって形成された継ぎ足し用空間151に、新たな第2軌道構成体32aを背面側から取り付ける。追加される第2軌道構成体32aが有する各レール構成部51,52の上下両端を、それぞれ第1軌道構成体31が有する各レール構成部41,42の下端と、既存の第2軌道構成体32が有する各レール構成部51,52の上端とを突き合わせた状態とする。そして、上下に並ぶ左右連結板25,26同士を上下連結板27とボルト等の固定具Bとを用いて連結する。これにより、新たな第2軌道構成体32aが追加され、軌道部11が延長される。
新たな第2軌道構成体32aが追加されただけの状態では、図19(a)に示すように、第1軌道構成体31は、上記第1過程によってせり上げられた位置に配置されている。そのため、続く第2過程にて、軌道部11を下降させて、第1軌道構成体31を元の位置に復帰させる。この場合、まず、図14に示すように、移動台車80の各台車支持部131,132に設けられた切込み部133,134に、左右の吊り下げロッド135,136をそれぞれ導入し、ロッド保持部133b,134bにおいてこれらを保持する。さらに、図15(b)に示すように、各台車支持部131,132を各吊り下げロッド135,136にそれぞれ設けられた載置部137,138に載せる。
その上で、図19(b)に示すように、軌道支持部12において、連結板受け部61を駆動する駆動部62を駆動し、連結板受け部61を受け位置から非受け位置に退避させる(図5を参照)。これにより、軌道部11は軌道支持部12によって支持された状態が解除される。その結果、移動バケット13は、左右両側の吊り下げロッド135,136によって吊り下げ支持された状態となる。移動バケット13が吊り下げ支持されることにより、軌道部11も移動バケット13とともに吊り下げ支持される。この場合に、移動バケット13は、その下側にピニオン110やピニオン駆動部89等が設けられるなど、上側よりも下側に多くの構成部品が設けられている。そのため、移動バケット13の重心は下側に存在している。これにより、移動バケット13が吊り下げられた状態では、その移動バケット13には上側が正面側へ傾こうとする力Fが作用する。図14に示すように、この力Fの作用により、吊り下げロッド135,136は、切込み部133,134のロッド保持部133b,134bに嵌った状態が維持されて抜け止めされる。
その後、図19(c)に示すように、移動バケット13においてピニオン駆動部89を駆動し、移動バケット13を前進させる方向へピニオン110を回転させる。すると、吊り下げロッド135,136に吊り下げられた移動バケット13と異なり、軌道部11自体はフリーな状態にあるため、移動バケット13の位置はそのまま、ピニオン110と歯合するラック23,24を有する軌道部11のみが下降する。仮想線で図示するように、第1軌道構成体31がせり上がる前の元の位置に配置されるまで軌道部11が下降した時点で、ピニオン110の回転を停止し、軌道部11の下降を停止する。それと合わせて、連結板受け部61を駆動する駆動部62を駆動して、非受け位置に退避させていた連結板受け部61を受け位置に復帰させ、再び、軌道支持部12によって軌道部11が支持される状態とする。これにより、延長された軌道部11の下端部は、延長動作前よりも下方に配置されることとなる。
所定深さが掘り進められるごとに、以上の第1過程及び第2過程を繰り返すことにより、軌道部11が延長され、縦抗Tの深さの変化に追従することが可能となる。
なお、軌道部11を延長させる上記の動作及び作業を応用し、縦抗Tの掘削作業が終了した後の土砂排出装置10の撤去を行うことができる。すなわち、土砂排出装置10を撤去する場合には、まず、第1軌道構成体31と第2軌道構成体32とを連結する上下連結板27を外し、地上側に存在する第1軌道構成体31を撤去する。次いで、上記第2過程の時のように、軌道支持部12によって軌道部11が支持された状態を解除するとともに、移動バケット13及び軌道部11(第2軌道構成体32のみで構成されたもの)が吊り下げロッド135,136に吊り下げられた状態とする。その後、ピニオン駆動部89を駆動し、移動バケット13を後進させる方向へピニオン110を回転させる。すると、上記第2過程の場合とは逆に、軌道部11は上昇する。最上段の第2軌道構成体32が地上に現れた段階で、ピニオン110の回転を停止し、いったん軌道部11の上昇を停止させる。地上に現れた第2軌道構成体32を、その直下の第2軌道構成体32から外して撤去する。その後、再びピニオン110を回転させて、軌道部11を上昇させる。これらの動作を繰り返すことにより、軌道部11を構成する第2軌道構成体32を順次撤去できる。なお、撤去の最終段階では、移動バケット13や第2軌道構成体32を、クレーン等の吊り下げ装置を用いて撤去する。
以上詳述した本実施形態の土砂排出装置10によれば、次の効果を得ることができる。
(1)軌道部11を移動バケット13が往復移動する構成であるため、従来の循環式コンベアのように往復それぞれの軌道は設置されない。これにより、土砂排出装置10をコンパクト化でき、縦抗T内での作業空間を確保することができる。また、第1軌道構成体31を上方へせり上げると、第2軌道構成体32との間に継ぎ足し用空間151が形成される。この継ぎ足し用空間151に新たな第2軌道構成体32aを追加し、その上側に配置された第1軌道構成体31及びその下側に配置された既存の第2軌道構成体32とそれぞれ連結することにより、軌道部11が延長される。この場合において、第1軌道構成体31のせり上げは、既存の第2軌道構成体32を保持しながら行われるため、第2軌道構成体32の追加を容易に行える。したがって、掘削によって縦抗Tの深さが変化したとしても、第2軌道構成体32を順次追加していくことにより、その深さの変化に容易に追従させることができる。
(2)第1軌道構成体31のせり上げは、第1軌道構成体31に設けられたせり上げロッド43,44の下端部に、移動バケット13に設けられたロッド係合部123,124を下方から当接させ、移動バケット13の上昇に伴って持ち上げるようにして行われる。このロッド係合部123,124は、せり上げロッド43,44の下方に配置される係合位置と、せり上げロッド43,44の下方から外れた非係合位置との間で移動可能とされ、いずれかの位置で保持されるようになっている。そのため、移動バケット13により土砂排出動作を行う場合にはロッド係合部123,124を非係合位置に配置して、移動バケット13の上昇によってせり上げロッド43,44が持ち上げられないようにしている。軌道部11の延長時において、ロッド係合部123,124を係合位置に配置して、移動バケット13の上昇によりせり上げロッド43,44が持ち上げられる。これにより、土砂排出に用いられる移動バケット13の移動を利用しつつ第1軌道構成体31のせり上げを行うことができるため、せり上げのための装置を別途設けて構成が複雑化することを避け、せり上げのための構成を簡素化できる。
(3)せり上げロッド43,44の下端部にはガイド溝45,46が設けられ、そのガイド溝45,46には、第2軌道構成体32に設けられたガイド板55,56が挿通されている。これにより、せり上げロッド43,44が移動バケット13の移動によって持ち上げられる際に、その持ち上がりの移動がガイドされるため、第1軌道構成体31のせり上がり時に、せり上げロッド43,44が第2軌道構成体32から外れることを抑制し、せり上げロッド43,44のせり上がりをスムーズに行うことができる。
(4)第1軌道構成体31がせり上げる際には、第1軌道構成体31と連結された水平支持材65やその両端部に設けられた円筒部68a,69aも第1軌道構成体31とともに上昇する。この上昇時において、円筒部68a,69aの移動は、軌道部11の左右両側に設けられた各ガイド柱63,64によってガイドされる。これにより、第1軌道構成体31の水平状態を維持しながら安定した状態でせり上げることができる。また、このガイドにより、第1軌道構成体31は、第2軌道構成体32の上方に配置された状態のまま第2軌道構成体32の上方へせり上がる。第2軌道構成体32の上に第1軌道構成体31が配置された状態のまま、両者の間に継ぎ足し用空間151が形成される。継ぎ足し用空間151に新たな第2軌道構成体32aを追加すれば、この新たな第2軌道構成体32aは第1軌道構成体31の下方でかつ既存の第2軌道構成体32の上方に配置される。そのため、第2軌道構成体32の継ぎ足しに際しての位置調整作業を容易に行うことができる。
(5)軌道部11を支持する軌道支持部12として、最上段に配置された第2軌道構成体32の上端にある左右連結板26aを受け支える連結板受け部61が設けられている。このように第2軌道構成体32が受け支えられることによって軌道部11全体が支持されるため、第1軌道構成体31をせり上げて第2軌道構成体32から離れるようにしても、第2軌道構成体32を支持したままの状態を維持することができる。
(6)移動バケット13には台車支持部131,132が設けられ、縦抗T内に垂れ下がる吊り下げロッド135,136の載置部137,138に台車支持部131,132が載置可能に構成されている。この載置状態を形成した後に、連結板受け部61による軌道部11の支持状態を解除すると、移動バケット13及び軌道部11が吊り下げロッド135,136に吊り下げ支持される。この状態で、移動バケット13のピニオン110を移動バケット13が上昇する方向へ駆動すれば、軌道部11が下降する。第1軌道構成体31がせり上がる前の元の位置に配置されるまで軌道部11を下降させた後、連結板受け部61によって軌道部11が再び支持される状態とすれば、延長された軌道部11の下端部を延長動作前よりも下方に配置することができる。
(7)台車支持部131,132には切込み部133,134が形成され、移動バケット13及び軌道部11が吊り下げロッド135,136に吊り下げられた状態では、吊り下げロッド135,136がロッド保持部133b,134bに保持される。この場合に、移動バケット13の重心が下側に存在するため、移動バケット13の上側が正面側へ傾こうとする力Fが移動バケット13に作用する。この力Fの作用により、吊り下げロッド135,136は、鉤状をなすロッド保持部133b,134bに嵌った状態が維持されるため、切込み部133,134からの抜け止めされる。これにより、移動バケット13及び軌道部11が吊り下げロッド135,136に吊り下げられた状態を確実に保持することができる。
(8)軌道部11の延長方法として、次の段階を経る。すなわち、まず第1軌道構成体31のせり上げロッド43,44を移動バケット13の上昇によってせり上げ、継ぎ足し用空間151を形成する。継ぎ足し用空間151に、新たな第2軌道構成体32aを挿入する。挿入した新たな第2軌道構成体32aの上端部を第1軌道構成体31の下端部と接続するとともに、新たな第2軌道構成体32aの下端部を既存の第2軌道構成体32の上端部と接続し、軌道部11を延長する。その後、移動バケット13及び延長された軌道部11を吊り下げロッド135,136に吊り下げた状態とし、移動バケット13を上昇させる方向へピニオン110を回動させ、延長された軌道部11を第1軌道構成体31がせり上がる前の位置まで下降させる。以上の段階を経ることにより、第2軌道構成体32の継ぎ足しと軌道部11全体の下降を容易に行えるため、掘削によって縦抗Tの深さが変化したとしても、その深さの変化に容易に追従させることができる。
なお、本実施形態の土砂排出装置10は、上記した実施形態の構成に限られるものではなく、例えば次のような構成を採用してもよい。
(a)上記実施形態では、地面Gから縦抗Tを直接掘削する場合を想定して説明したが、図20に示すように、縦抗Tの開口部Taの周囲に広がる作業空間143を形成するようにしてもよい。この場合、作業空間143の周囲の内面にも土止め用の壁体141が設けられる。縦抗Tがこのような構成を有する場合には、軌道部11の上端部は、作業空間143よりも上にある地面Gまで延び、軌道部11の先端部は当該地面Gに向けて湾曲するように形成されている。
(b)上記実施形態では、移動バケット13を移動させる駆動部の要素として、ラックアンドピニオン機構が用いられ、ラック23,24が軌道部11の側に、ピニオン110が移動バケット13の側にそれぞれ設けられた構成を作用した。この構成に代えて、ピニオン110の歯合軸112,113と同じ円柱状をなす歯合軸がその軸線を水平とし、かつ軌道部11の延びる方向に沿って多数並んで設けられた構成を採用してもよい。この場合、移動バケット13の移動台車80には、当該歯合軸と噛み合うスプロケットが回転可能に設けられ、このスプロケットを回転駆動するスプロケット駆動部が設けられる。
図21は、この歯合軸及びスプロケットの構成を採用した場合の一例として、第1軌道構成体181のせり上げロッド182,183と、第2軌道構成体191とを示している。第1軌道構成体181については全体の図示を省略しているが、せり上げロッド182,183の他には第2軌道構成体191と同じ構成要素を備えているとともに、湾曲部15を備える等の全体形状については上記実施形態の第1軌道構成体31と同じとなっている。そして、当該別例の第1軌道構成体181と第2軌道構成体191とで別例の軌道部が構成される。
図21に示すように、第1軌道構成体181のせり上げロッド182,183は一対設けられ、左右の中央部において、縦方向(上下方向)に沿って延びるとともに、左右に隣接した状態で設けられている。せり上げロッド182,183の下端部には、抜け止め部184が設けられている。抜け止め部184は、せり上げロッド182,183の背面側で、当該せり上げロッド182,183から離間した状態で左右に広がるガイド板部184aと、隣り合うせり上げロッド182,183同士の間に挿通される挿通板部184bとを有している。挿通板部184bが各せり上げロッド182,183に溶接等で取り付けられ、これにより抜け止め部184が両せり上げロッド182,183に取り付けられている。ガイド板部184aと挿通板部184bとで、抜け止め部184は、平面視においてT字状をなしている。
第2軌道構成体191において、一対のレール構成部51,52の背面側には、背面板192が設けられている。背面板192は、第2軌道構成体191の背面側全域に広がるように設けられ、一対のレール構成部51,52に取り付けられて両レール構成部51,52を所定間隔に保持している。各レール構成部51,52の間には、溝形鋼よりなる一対の縦材193,194がその開口部を正面側に向けた状態で設けられ、それぞれの背面側が背面板192に取り付けられている。各縦材193,194はレール構成部51,52から離れた状態で設けられており、案内レール21,22との間には縦方向、つまり第2軌道構成体191が延びる方向に沿った軸配列スペース195,196が左右それぞれに設けられている。
左右の各軸配列スペース195,196には、縦方向に沿って、それぞれ多数の歯合軸197,198が設けられている。各列に設けられた多数の歯合軸197,198は、歯合軸群に相当する。各歯合軸197,198は、各軸配列スペース195,196を形成する両側の壁部(案内レール21,22のウェブと縦材193,194のフランジ)に、軸線方向が水平となる状態で架け渡され、両端部がボルトや溶接等によって両側の壁部に取り付けられている。左右各列の歯合軸197,198は、縦方向にずれた状態で設けられている。そのため、一方の列の歯合軸197,198の軸線の延長上には、他方の列の歯合軸197,198が存在していない。
一対の縦材193,194の内側フランジには、各縦材193,194の内側面(溝形鋼のウェブ外面)から、当該外面に対して垂直をなすように突出する突出板部201,202が設けられている。突出板部201,202と背面板192との間には、ガイド空間203が設けられている。突出板部201,202の突出端同士の間には、スリット204が形成されている。第1軌道構成体181と第2軌道構成体191とを連結すると、せり上げロッド182,183は、第2軌道構成体191の中央部において、一対の縦材193,194の間に設けられる。この場合に、せり上げロッド182,183の下端部に設けられた抜け止め部184のうち、背面側に突出する挿通板部184bはスリット204に挿通され、ガイド板部184aはガイド空間203に挿入される。これにより、せり上げロッド182,183が持ち上がる際に、その持ち上がりがガイドされるとともに、一対の縦材193,194の間のスペースからせり上げロッド182,183が外れてしまうことが抑制される。
以上の構成を有する第1軌道構成体181と第2軌道構成体191とが連結されてなる軌道部に対し、移動バケット13(より詳しくは移動台車80(図21では図示略))には、左右の列の歯合軸197,198とそれぞれ噛み合う一対のスプロケット211,212が設けられている。両スプロケット211,212は、外径、歯数、ピッチ円直径等の寸法や形状が同一のものであり、同一の回転中心軸線を有し、スプロケット駆動部(図示略)の駆動によって一体的に回転する。左側スプロケット211の歯部211aと右側スプロケット212の歯部212aとは回転方向へ位相がずらされた状態となっており、その状態で両スプロケット211,212が回転軸(図示略)に取り付けられている。なお、図示した両スプロケット211,212はボス無しタイプであるが、ボスが設けられたタイプのものを用いてもよい。
移動バケット13を往復移動させる駆動部を以上のように構成することにより、ラックアンドピニオン機構を採用した構成よりも、移動時のがたつきが軽減されて移動バケット13のスムーズな往復移動を実現することができる。
(c)上記実施形態では、ピニオン110及びラック23,24が2列設けられているが、1列であっても、3列以上の複数列設けられた構成を採用してもよい。
(d)上記実施形態では、ラックアンドピニオン機構が左右中央部分に設けられるとともに、その両側方にせり上げロッド43,44が設けられた構成を採用したが、せり上げロッド43,44が中央部分に配置された構成を採用してもよい。この場合、せり上げロッド43,44の左右両側方に、ラックアンドピニオン機構が1列ずつ設けられた構成となる。この構成では、移動バケット13を往復移動させる機構が中央部分に集中せず、左右に分かれて存在するため、土砂が装入された移動バケット13にかかる荷重を左右に分散して受け止めることが可能となる。これにより、移動バケット13を前進(上昇)させる場合に、土砂が左右アンバランスな状態で装入された場合でも、移動バケット13をバランスよく支持することができる。また、移動バケット13のバランス悪化によって過度な力がローラ83〜88にかかることが抑制され、ローラ83〜88の不具合発生を抑制できる。
(e)上記実施の形態では、左右2列のラックアンドピニオン機構が設けられ、ラック23,24のラック溝23b,24bをずらし、さらにピニオン110の歯合軸112,113の位相もずらした状態で設けられている。ラックアンドピニオン機構について、これらを採用しない構成としてもよい。例えば、ラックアンドピニオン機構を1列としたり、2列とした場合であっても、ラック溝23b,24bや歯合軸112,113をずらさない構成としたりしてもよい。
(f)上記実施形態では、第1軌道構成体31の支持を安定化させたり、第1軌道構成体31のせり上げをガイドしたりする構成として、水平支持材65やガイド柱63,64が設けられている。図22に示すように、上記構成に代わる一対のガイド柱161,162と、直線状をなす水平支持材163とを備えた構成を採用してもよい。
一対のガイド柱161,162は角柱状をなす筒体であり、それぞれの下端部において、壁体141のフランジ部142に取り付けられたボールねじ164,165に挿通されたねじ挿通部166,167と連結されている。ねじ挿通部166,167の下方にはナット部168,169が設けられており、ナット部168,169を回動させてその上下方向の位置を変更することにより、ガイド柱161,162の上端の高さ位置を変更することが可能となっている。ボールねじ164,165は、その下端部において傾きの調整が可能となるように設けられている。また、ガイド柱161,162が有する4つの各外面には、それぞれスペーサ161a,162aがガイド柱161,162の延びる方向の略全域にわたって設けられている。
水平支持材163は連結板171により軌道部11(より詳しくは第1軌道構成体31)と連結され、軌道部11が有する一対の案内レール21,22と直交するように直線状に延びている。水平支持材163の両端部には、ガイド挿通部172,173が設けられている。各ガイド挿通部172,173は四角形状をなす筒体であり、各ガイド挿通部172,173のそれぞれに各ガイド柱161,162が挿通されている。各ガイド柱161,162に設けられたスペーサ161a,162aの存在により、各ガイド挿通部172,173が各ガイド柱161,162に挿通された状態でのガタつきが抑制される。そのため、第1軌道構成体31、ひいては軌道部11全体の支持や第1軌道構成体31のせり上げを安定化させることができる。さらに、ボールねじ164,165の傾きを調整することにより、縦抗Tの開口部が若干傾斜している場合であっても、水平支持材163を水平状態に調整することができる。
なお、ガイド挿通部172,173には、左右側方に延びる高さ位置調整部174が設けられている。高さ位置調整部174の内部には、円柱状をなすピン部材175が設けられている。ピン部材175は、その中心軸線が水平方向に沿うようにして設けられ、高さ位置調整部174の内部をその中心軸線方向に沿って移動することが可能となっている。ピン部材175の移動は、ソレノイド等を用いた適宜の手段によって行われるように構成されている。一方、ガイド柱161,162には、4つの外面のうち、高さ位置調整部174が設けられた箇所と対応する外面に、当該外面及びスペーサ161a,162aを貫通するピン挿入孔176が設けられている。ピン挿入孔176は、各ガイド柱161,162が延びる方向に沿って、所定間隔ごとに複数設けられている。
そして、図示されているように、ピン挿入孔176にピン部材175が挿通されており、これによってガイド挿通部172,173の上下方向の位置が決められている。ガイド挿通部172,173の位置を変更しようとする場合、連結板171による軌道部11と水平支持材163との連結をいったん外した後、現状のピン挿入孔176に挿通されているピン部材175をいったん抜く。次いで、ガイド柱161,162に案内されながらガイド挿通部172,173及び水平支持材163を所望の位置に配置し、その位置に設けられたピン挿入孔176にピン部材175を挿通する。これにより、ガイド挿通部172,173及び水平支持材163が異なる位置に配置される。この状態で、再度、水平支持材163を軌道部11に連結すれば、水平支持材163と軌道部11との連結位置を所望の位置に変更することができる。
(g)上記実施の形態では、せり上げ手段として、第1軌道構成体31にせり上げロッド43,44と、移動バケット13の移動台車80に設けられたロッド係合部123,124とを備えて構成されている。これに代えて、第1軌道構成体31を上昇させる昇降機等を移動バケット13とは別に設けて、当該昇降機を用いて第1軌道構成体31をせり上げるようにしてもよい。
(h)上記実施の形態では、長尺部材として吊り下げロッド135,136を採用したが、ワイヤ等であってもよい。