JP6386407B2 - 鉄鋼スラグの処理方法 - Google Patents

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Description

本発明は、鉄鋼スラグの処理方法に関する。特に、鉄鋼スラグからCa分を分離、回収するとともに、処理に用いるNaOHとHClを低コストで安定して回収する鉄鋼スラグの処理方法に関する。
製鉄所において、転炉、溶銑予備処理炉等の精錬工程から発生する製鋼スラグ(以下でスラグと略すことがある。)は、スラグ中に生石灰が遊離した形(以下で遊離CaOと称す)が残存しているため、そのままの形で道路用材、土木用材などに利用した場合、遊離CaOの水酸化により膨張が起こることが知られている。そこで、現在一般にスラグを自然冷却し、破砕した後、屋外で山積みするかあるいは人為的に水蒸気と接触させること(エージング処理)により遊離CaOを安定化させている。
しかし、このエージングは、他用途でも利用価値が高い水蒸気が大量に必要であるとともに、非常に長時間を要することであり、そのために製鉄所内に非常に広いスペースと長距離の水蒸気配管が必要であるという問題がある。
また、破砕、ふるい分けにより発生する粉状の鉄鋼スラグは、屋外でハンドリング性が低い微粉を多く含むため、そのままでは路盤材として殆ど利用することができない。そこで、前記のエージングをしなければならないという問題がある。
一方、製鋼スラグを養生し、道路用材又は土木用材などへ利用するにしても、その需要は、公共事業への投資状況その他の景気情況により変動するので、その利用促進が滞ることがある。この場合、大量の製鋼スラグが製鉄所内に滞留するというリスクがある。
製鋼スラグ中の遊離CaOを酸で処理し、安定化させるという考え方がある。
遊離CaOを含む製鋼スラグをエージングによらずに製鉄所の酸処理工程で発生する廃酸を用いて、pH=−1〜4、温度60℃以上で処理する製鋼スラグの改質方法の提案がある(特許文献1)。
又、粉粒状の製鋼スラグを酸洗処理した後、高湿潤雰囲気中で炭酸ガスを含有する気体又は炭酸水と接触反応させて炭酸化エージングを行うという提案がある(特許文献2)。
製鋼スラグの改質方法ではないが、キルン又は焼却炉のダストから重金属とCa化合物を分別し、重金属を再生する考え方がある。
都市ごみ等を処理する焼却炉等の高温処理炉から生じる飛灰中に含まれる重金属分を一連の湿式処理によって金属の種類ごとに濃縮し、それぞれを非鉄製錬用原料として使用できる程度の濃縮体として回収する方法の提案がある(特許文献3)。
又、キルン集塵ダストから、非鉄精錬原料として利用可能な重金属化合物と、重金属を含まないセメント原料として利用可能なカルシウム化合物とを分別して回収する処理方法の提案がある(特許文献4)。
本発明者等は、鉄鋼スラグを溶解槽において塩酸溶液で処理することによりCa分はCaCl溶液として分離し、Fe分は未溶解物に分離する工程1と、分離されたCaCl溶液を、電気分解によりCl、H及びCa(OH)とする工程2と、電気分解により製造したCl及びHからHClを焙焼合成する工程3と、を実施することを特徴とする鉄鋼スラグの塩酸溶液による成分分離方法を発明し開示した(特許文献5)。
特開平6−072746号公報 特開2000−350976号公報 特開平8−309313号公報 特開2003−326228号公報 特開2013−081896号公報
特許文献1に記載の提案は、製鋼スラグを温度60℃以上で処理することで、遊離CaOを中和塩に変えてスラグから除去する、あるいは、スラグ中に残存させ、スラグを改質するものである。しかし、60℃以上での酸処理が必要であり、大規模な設備を要し、大量の製鋼スラグを処理するプロセスとしては難点がある。
特許文献2に記載の提案は、製鋼スラグを予め酸洗処理することでスラグの内部にある遊離CaOを表面に出現させ、それらの炭酸化を促進することで、強度不足が起きない固形物を製造可能とするものである。しかし、酸処理に長時間(6時間)を要し、大規模な設備を要し、大量の製鋼スラグを処理するプロセスとしては難点がある。
そして、特許文献1及び特許文献2に記載の提案では、酸により溶解したCa分は、再利用されることなく廃棄されるという問題がある。
特許文献3に記載の提案は、都市ごみ焼却炉等の飛灰中のPb,Zn,Cu等を回収することを主な目的とするものであり、pH=3以下でPbを沈殿回収した後、pH=7以上で硫化剤を添加することによりZn,Cuを硫化物として回収するものである。しかし、Ca分は回収されることが無く廃棄されるという問題がある。
特許文献4に記載の提案は、キルン集塵ダスト中のPb,Zn,Fe,Ca等を回収することを主な目的とするものである。pH=6.5〜8での硫化剤を添加することによりPb及びZn等を硫化物として回収した後、pH=8〜12とし、Fe,Ca等を水酸化物(セメント原料)として回収するものである。Fe分とCa分は、分離されることが無いという問題がある。
製鋼スラグは、エージングにより遊離CaOを安定化させた後、有用な資材として道路用材又は土木用材などに利用されてきた。しかし、このエージングには、非常に長時間を要し、そのために製鉄所内に非常に広いスペースが必要であるという問題があった。又、経済状況によっては、道路用材、土木用材としての需要の変動があり、時には、製鉄所内で非常に広いスペースを占有するという問題があった。
そして、製鉄プロセスにおいては、製鋼スラグに限らず、Ca分とFe分を含有する鉄鋼スラグが大量に発生し、その安定した有効活用が望まれてきた。
従来技術の課題は、第一に、従来の製鋼スラグのエージングによる遊離CaOの安定化技術とは別に、製鋼スラグの外的要素の少ない安定した有用な利用方法を開発することである。そして、第二の課題としては、製鉄スラグに含有されるCa分とFe分をそれぞれ分離し、それぞれを有用な材料として製鉄所内で再活用することである。
本発明者等は、鉄鋼スラグに含有されるCa分とFe分をそれぞれ分離し、それぞれを有用な材料として活用する発明を開示したが(特許文献5)、処理に用いるHClの回収コストが高いという問題があった。
本発明の目的は、鉄鋼スラグからCa分を分離、Ca(OH) 2として回収するとともに、処理に用いるNaOHとHClを低コストで回収する鉄鋼スラグの処理方法を提供することである。
本発明者等は、製鋼スラグに含まれるCa分を分離、回収し、処理に用いるNaOHとHClも安価に回収することができるという知見を得た。本発明は、これらの知見に基づくものである。そして、本発明は、製鋼スラグに限られず、Ca分とFe分を含有する鉄鋼スラグ全般や廃コン、飛灰などに適用できるものである。
本発明の要旨とするところは、以下のとおりである
(1)鉄鋼スラグを溶解槽において、pH=0〜1のNaClを含む塩酸溶液で処理することによりできるCaClを含む溶液と、Fe分を含む未溶解物を、濾別により分離する工程1と、
前記未溶解物が濾別された前記CaClを含む溶液にアルカリを添加し、pH=3〜10.5未満で処理することによりできるFe(OH)を含む沈殿物を、濾別により分離する工程2と、
前記沈殿物が濾別された前記CaClを含む溶液にアルカリを添加し、pH=10.5〜13で処理することによりできるCa(OH)を含む沈殿物とNaClを含む溶液を濾別により分離する工程3と、
前記工程3でできるNaClを含む溶液を電気分解により水素と塩素とNaOH溶液にする工程4と、
前記工程4でできる水素と塩素からHClを合成する工程5と、を実施することを特徴とする鉄鋼スラグの処理方法。
(2)前記工程2及び前記工程3で、pH調整に用いるアルカリが、質量30%〜34%のNaOHであり、前記工程4でできるNaOH溶液をリサイクルして用いることを特徴とする請求項1に記載の鉄鋼スラグの処理方法。
(3)前記工程5で合成されるHClを前記工程4で発生する余剰液で希釈し、塩酸濃度を調整して工程1の塩酸溶液にリサイクルして用いることを特徴とする(1)又は(2)に記載の鉄鋼スラグの処理方法。
(4)前記工程1において、鉄鋼スラグを粉砕し、粒の直径を100μm以下として溶解槽において塩酸溶液で処理することを特徴とする(1)乃至(3)のいずれかに記載の鉄鋼スラグの処理方法。
鉄鋼スラグからCa分を分離、Ca(OH) 2として回収するとともに、処理に用いるNaOHとHClを低コストで回収する鉄鋼スラグの処理方法を提供することができる。
本発明の概要フローを示す図。 HClを含むNaCl液による製鋼スラグの処理の例を示す図。 製鋼スラグの粒径とCa回収率の関係を示す図。 本発明に用いるイオン交換膜法電解槽を示す図。
本発明者等は、前述のように、製鉄スラグに含有されるCa分とFe分をそれぞれ分離し、それぞれを有用な材料として活用する発明を開示した(特許文献5)。しかし、当該発明は、処理に用いるNaOHとHClの回収コストが高いという問題があった。
本発明は、鉄鋼スラグに含まれるCa分を分離、回収し、Ca回収後のNaCl液を塩水分解して、処理に用いるNaOHとHClを安価に回収するシステムである。回収されるCa分は、Ca(OH)として、製鉄プロセスの焼結工程又は製鋼工程で、有用な原料として利用することができる。
図1に、本発明の概要フローを示す。全体のフローは、工程1から工程5から成る。
それぞれの工程は、以下の通りである。
工程1;鉄鋼スラグからCaを溶解する工程
工程2;Ca含有液からFe分等を除去する工程
工程3;Ca含有液からCa(OH)を沈殿させる工程
工程4;Ca(OH)を沈殿除去したNaCl液を塩水電解する工程
工程5;塩水電解で製造したCl,Hから塩酸を合成する工程
(工程1;鉄鋼スラグからCaを溶解する工程)
工程1は、鉄鋼スラグを、HClを含むNaCl液で、塩酸溶解する。製鋼スラグにはCaとFe等が、混在して含まれており、当該工程は、HClを含むNaCl液で、Ca分を溶解し、Fe,SiO等は、残渣とし、Ca分とFe成分等を分離する。
CaO及びFe等を含有する鉄鋼スラグを塩酸で処理すると、下記の式(1)、(2)の反応により、CaCl,FeClとしてCa,Feは、溶解する。
CaO+HO+2HCl→CaCl+HO・・・・・・・(1)
Fe+6HCl→FeCl+3HO・・・・・・・・・・(2)
ここで、HClを含むNaCl液をpH=0〜1にすれば、Caが優先的に溶解し、Fe等と分離することができる。このとき、鉄鋼スラグが100μm以下であれば、Caの溶け出し割合が増え、Ca(OH) 2の回収率が80%以上にできる。
本発明は、HClを含むNaCl液を用いて鉄鋼スラグのCaとFe等を分離することに特徴がある。HClを含むNaCl液を用いる理由は、後述する工程4で詳述するが、塩水電解に用いるNaCl液は一定のNaCl濃度(250g/l程度)を確保する必要がある。工程1から工程3までに処理された濾液3が、所定のNaCl濃度を確保するために、工程1に用いる酸性液は、HClを含むNaCl液とした。
鉄鋼スラグを塩酸溶解した液は、濾過し、濾液1と残渣に分離する。濾過の方法としては、吸引濾過があるがこれに限らない。
図2に、HClを含むNaCl液による製鋼スラグの処理の例を示す。製鋼スラグ10gをNaCl240g/l含む3.6%塩酸水溶液0.2Lに入れ、室温下で10min間撹拌し製鋼スラグを溶解させた。この例では、10min経過後、10gの製鋼スラグに含まれていたCa成分の67%((5.3−1.7)/5.3)が溶解した。一方、Fe、SiO2その他の溶解は、殆んど無かった。このことから、NaClを含む塩酸水溶液により、製鋼スラグのCaを選択的に溶解抽出することができる。
製鋼スラグからCaOを溶解抽出した残渣は、遊離CaOが少ないことから、炭酸化・水酸化により膨張が少なくなり、路盤材への活用が期待できる。
(工程2;Ca含有液からFe分等を除去する工程)
工程2は、工程1でできた濾液1のCa含有液からFe分等を除去する工程である。
工程1でできる濾液1には、Ca以外に鉄鋼スラグに含まれている金属イオンが溶解している。次の工程3で製造するCa(OH)が、製鉄プロセスの焼結工程及び製鋼工程で有用な原料として利用できるには、Ca以外の金属イオンを除去しなければならない。これらの金属イオンは液性をアルカリ性にすることで沈殿として分離除去できる。
表1に金属が、pH調整により析出する順序を示す。
濾液1にNaOHを添加し、pH=3〜10.5にすることにより、下記の式(3)、(4)により、Fe(OH)及びFe(OH)等の沈殿として、除去することができる。
FeCl+2Na(OH)→Fe(OH)+2NaCl・・・(3)
FeCl+3Na(OH)→Fe(OH)+3NaCl・・・(4)
(工程3;Ca含有液からCa(OH)を沈殿させる工程)
工程2で、Fe分等を除去してできる濾液2をpH=10.5〜13にすることにより、下記の式(5)により、Ca(OH)の沈殿を得る。
CaCl+2NaOH→Ca(OH)+2NaCl・・・・・(5)
当該Ca(OH)は、製鉄プロセスで有用な原料として利用することができる。粒の直径が、ほぼ1μm程度であり、製鉄プロセスの焼結工程では、良質なバインダー、製鋼工場では、脱硫・脱リン材として利用することができる。但し、当該Ca(OH)は、NaCl液から沈殿するので、NaClの付着があり、洗浄が必要である。
工程1において、製鋼スラグを事前に微粉砕することにより、Caの回収率を高めることができる。
図3に、製鋼スラグの粒径とCa回収率の関係を示す。製鋼スラグを微粉砕することにより粒の核部に存在するCa酸化物の溶解が促進されると考えられる。
(工程4;Ca(OH)を沈殿除去したNaCl液を塩水電解する工程)
工程3でCa含有液からCa(OH)を沈殿除去した濾液3(NaCl液)を塩水電解する工程である。
図4に、本発明に用いるイオン交換膜法電解槽を示す。
電解槽の構造は、イオン交換膜2を挟んで陽極1のある陽極室と陰極3のある陰極室に分かれている。陽極室にNaCl溶液を送液する。電解槽内で、Naイオンを陽極室から陰極室へ移行させるために、陽イオン交換膜2がある。陽極1では、下記の式(6)により、Clが発生し、陰極3では、下記の式(7)(8)により、Hが発生し、NaOHが生成される。
2Cl → Cl+2e・・・・(6)
O → H+OH・・・(7)
2H+2e → H・・・・・・・(8)
濾液3のNaCl液の中に、Naイオン以外の金属イオン(Caイオン等)があると、Naイオンと同様、陽極室から陰極室へ移行し、イオン交換膜2の中で、Ca(OH)等がデポジットする。これが電解槽電圧の上昇、電流効率の低下の原因となる。その理由は、イオン交換膜2の陽極室(NaCl)側は、pHが低いが、陰極室(NaOH)側は、pHが高く(pH=14程度)、Ca(OH)等がイオン交換膜2の陰極室側にデポジットするからである。
そこで、工程3において、Ca(OH)を十分に沈殿させ、濾液3のCaイオン濃度を低下させておくことが重要である。
濾液3のCaイオン濃度を低下させるために、キレート樹脂を用いて塩水前処理を実施し、電解槽に供給することもできる。
電解槽に供給されるNaCl液は、通常、約250g/LのNaClが必要である。NaCl液の塩水濃度が低いと、電流密度(A/dm)が小さく、生産性が悪くなるからである。
本発明の工程1は、「NaClを含む塩酸溶液で処理すること」を要件にしているが、この要件の必要性を確認するため、「NaClを含まない塩酸溶液で処理すること」の実験を行った。
工程1で、鉄鋼スラグ10gを3%塩酸水溶液0.2Lに入れ、室温下で10min撹拌し溶解させ、濾過し、工程2で、その濾液に0.2Lに32%NaOH溶液を入れ撹拌し、pH=10.5〜11にした後、吸引濾過を行い、工程3で、その濾液0.18Lに32%NaOH溶液を添加して、pH=10.5〜13とし、Ca(OH)を沈殿させ、吸引濾過後の濾液として38g/lのNaCl溶液を得た。この場合、工程3で得られる濾液のNaCl濃度が38g/lでは、工程4の塩水電解をすることができない。
本発明の濾過3のNaCl濃度を38g/lから250g/lに高める方策として、工程1で用いる塩酸を水で希釈するのではなく、工程4の塩水電解で発生する余剰NaCl液で希釈することを考えた。
ここで、余剰NaCl液の説明をする。工程4の塩水電解では、陽極室入口のNaCl濃度は、250g/l程度であるが、電解が進行すると、陽極室のNaイオンが減少し陽極室出口のNaCl濃度は、200g/l程度に減少する。余剰NaCl液とは、陽極室出口のNaCl液をいう。したがって、工程1に用いられる「NaClを含む塩酸溶液」とは、塩酸をNaCl液で希釈した250g/l程度のNaCl溶液である。
そこで、本発明の工程1は、「NaClを含む塩酸溶液で処理すること」とし、具体的にはHClが3%程度、NaClが250g/l程度の混合溶液とした。
(工程5;塩水電解で製造したCl,Hから塩酸を合成する工程)
電解槽で生成したClガス,Hガスは、冷却洗浄、ミスト分離された後、ブロアーなどで昇圧され、塩酸合成の工程5に送られる。工程5では、Clガス,Hガスの流量制御・比率制御をし、焙焼合成装置のバーナーで、下記の式(9)により発熱、燃焼し、HClが合成される。
Cl+H → 2HCl・・・・・・・(9)
合成されたHClは、吸水させるミスト水と接触し吸収され、約35%HClとして焙焼合成装置から取り出される。
工程5で合成した塩酸を工程4の塩水電解の余剰NaCl液で塩水希釈し、工程1に用いる「NaClを含む塩酸溶液」を作成する。具体的には、約250g/l・NaClのHClを含むNaCl溶液とする。
鉄鋼スラグをpH=0で処理した。
鉄鋼スラグ10gをNaCl濃度240g/lを含む3%塩酸の混合水溶液0.2Lに入れ、室温下で10min撹拌し製鋼スラグを溶解させた。当初の液のpH=0.2が、10min後はpH=0.3であった。塩酸処理した液を吸引濾過して、残渣と濾液1に分離した。10min経過後の残渣物は、6gであり、4gが溶解した。表2に処理前のスラグ及び10min経過後の残渣物の組成を示す。表3に濾液1の組成を示す。
スラグ中のCaOは、60.3質量%((10g×0.526−6×0.349)/10g×0.526)が溶解し、濾液1に移行しCaClになった。Feは、15.9質量%((10g×0.251−6g×0.352)/10g×0.251)が溶解し、FeClになった。SiO他は若干の溶解があった。
同様に鉄鋼スラグをpH=1、2で処理した。結果を表2、表3に示す。
以上の結果より、スラグをpH=0〜1の酸性液で処理することで、Ca分を選択的に溶解させ、Fe分を残渣とし、液を吸引濾過することによりCaとFeを分離することができた。pH=2の酸性液では、Caの溶解が進まなかった。

次に、前記pH=0で処理した濾液1に水酸化ナトリウム溶液の添加処理を行った。
前記濾液10.2Lに32%水酸化ナトリウム溶液を撹拌しながら少しづつ添加して、液のPHをアルカリ性にし、沈殿を生成させた。32%水酸化ナトリウム溶液の添加により液性は徐々にアルカリになり、pH=3を越えたところで3価鉄水酸化物と推測される茶色沈殿が生成し、更に32%水酸化ナトリウム溶液の添加を続けるとpH=10付近まで2価鉄水酸化物と推測される緑色沈殿が生成した。pH=10.5〜11にした後、吸引濾過を行い、濾液2と沈殿(以下、「Fe沈殿物」と記すことがある。)を得た。
表4にpH=10.5〜11処理、吸引濾過後のFe沈殿物の成分を示す。表5にFe沈殿物濾過後の濾液2の成分を示す。
次に、鉄水酸化物濾別後の濾液2の0.18Lに32%水酸化ナトリウム溶液を添加して、pHを13以上とし、水酸化カルシウムの沈殿を得た。吸引濾過を行い水酸化カルシウム沈殿と、濾液3を分離した。水酸化カルシウムを80℃で乾燥させ秤量したところ3.2gであった。
表6にCa(OH)沈殿物の成分を示す。表7に吸引濾過によりCa(OH)沈殿物を分離後の濾液3の成分を示す。濾液3とし、217g/lのNaCl溶液0.18Lが得られた。また、Caの回収率は80%であった。
2室式電解セルを準備し、水酸化カルシウム濾別後の濾液3を陽極液原料として電解を行った。表8は、前記表7の濾液3をキレート処理なしで用いる際に、塩酸による中性化処理だけを行った電解液の成分分析結果である。
陽極には塩素発生用DSE(R)電極(ペルメレック電極株式会社)、陰極にはNiを基材とした水素発生用活性化陰極、IEM(イオン交換膜)を用いた。陽極液は、水酸化カルシウム濾別後の濾液3に塩化ナトリウムを追加し250g-NaCl/Lになるように調整したものを、陰極液には32%水酸化ナトリウム溶液を用いた。表7に陽極液に用いた水酸化カルシウム溶液の組成を示す。両極液を室温で極間0(ゼロ)mmとし、2室式電解セルに直流電流を60A供給し、食塩電解を実施した。陽極の投影面積基準の電流密度60A/dm2において、セル電圧は3.12Vであり、陽極からは塩素が発生しその塩素発生電流効率は97%であった。陰極においては水素ガスと水酸化ナトリウムが発生し、水酸化ナトリウム生成電流効率は99%であった。
鉄鋼スラグからCa分を分離、回収するとともに、処理に用いるNaOHとHClを低コストで回収する鉄鋼スラグの処理で利用することができる。
1…陽極、2…イオン交換膜、3…陰極。

Claims (4)

  1. 鉄鋼スラグを溶解槽においてpH=0〜1のNaClを含む塩酸溶液で処理することによりできるCaClを含む溶液と、Fe分を含む未溶解物を、濾別により分離する工程1と、
    前記未溶解物が濾別された前記CaClを含む溶液にアルカリを添加し、pH=3〜10.5未満で処理することによりできるFe(OH)を含む沈殿物を、濾別により分離する工程2と、
    前記沈殿物が濾別された前記CaClを含む溶液にアルカリを添加し、pH=10.5〜13で処理することによりできるCa(OH)を含む沈殿物とNaClを含む溶液を濾別により分離する工程3と、
    前記工程3でできるNaClを含む溶液を電気分解により水素と塩素とNaOH溶液にする工程4と、
    前記工程4でできる水素と塩素からHClを合成する工程5と、
    を実施することを特徴とする鉄鋼スラグの処理方法。
  2. 前記工程2及び前記工程3で、pH調整に用いるアルカリが、質量30%〜34%のNaOHであり、前記工程4でできるNaOH溶液をリサイクルして用いることを特徴とする請求項1に記載の鉄鋼スラグの処理方法。
  3. 前記工程5で合成されるHClを前記工程4で発生する余剰液で希釈し、塩酸濃度を調整して工程1の塩酸溶液にリサイクルして用いることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の鉄鋼スラグの処理方法。
  4. 前記工程1において、鉄鋼スラグを粉砕し、粒の直径を100μm以下として溶解槽において塩酸溶液で処理することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の鉄鋼スラグの処理方法。
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