以下、本発明に係る出庫支援装置について好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照しながら説明する。
[出庫支援装置12の構成]
(自車10の構成)
図1は、本発明の一実施形態に係る出庫支援装置12を搭載した車両(以下、自車10という)の構成を示すブロック図である。
出庫支援装置12は、出庫(PO;Pull Out)支援制御を含む支援制御を行うことで、自動操舵によって自車10の出庫を支援する装置である。出庫支援装置12は主に縦列駐車時の出庫を支援する。ここで、ステアリングホイール70の操作は出庫支援装置12により自動で行われる。アクセルペダル及びブレーキペダル(いずれも図示せず)並びにシフトレバー32の操作は自車10の運転者により行われる。
出庫支援装置12は、支援制御で用いられる各種の物理量を検出するセンサ群14と、ナビゲーション装置16と、支援制御を司るECU(電子制御装置;以下、支援ECU18)と、電動パワーステアリングシステム(Electric Power Steering)ユニット(以下、EPSユニット20)を備える。
図1に示すように、センサ群14には、カメラ群22、ソナー群24と、車輪センサ26と、車速センサ28と、シフト位置センサ30が含まれる。
カメラ群22は、自車10の周辺を撮像可能な1つ又は複数のカメラからなり、自車10の周辺画像を示す撮像信号を逐次出力する。ソナー群24は、音波を発射して他物体からの反射音を受信可能な1つ又は複数のソナーからなり、自車10からの距離Disに相関する検出信号を逐次出力する。
車輪センサ26は、左右の前輪及び/又は左右の後輪(いずれも不図示)の回転角度を検出する角度センサ又は変位センサであり、自車10の走行距離に相関する数の検出パルスを出力する。車速センサ28は、自車10の速度(つまり、車速)を検出するセンサであり、例えば、トランスミッションのカウンタシャフト(不図示)の回転量から車速を検出可能に構成される。
シフト位置センサ30は、シフトレバー32(セレクタともいう)の操作に応じて選択されたシフト位置を示す検出信号を出力する。シフトレバー32は、例えば、6種類のシフト位置、「P」(パーキングレンジ)、「R」(リバースレンジ)、「N」(ニュートラルレンジ)、「D」(ドライブレンジ)、「2」(セカンドレンジ)又は「L」(ローレンジ)のうちのいずれか1種類を選択可能な装置である。
ナビゲーション装置16は、GPS(Global Positioning System)を用いて自車10の現在位置を検出し、運転者を含む乗員に対して目的地までの経路を案内する。ナビゲーション装置16は、タッチパネルディスプレイ40と、スピーカ42と、地図情報データベースが構築された記憶装置(不図示)を含んで構成される。このナビゲーション装置16は、出庫支援装置12におけるHMI(Human-Machine Interface)として機能する。
支援ECU18は、ハードウェアとして、入出力部50、演算部52、及び記憶部54を有する。この演算部52は、記憶部54に記憶されているプログラムを読み出して実行することで、出庫軌道設定部56、支援継続判定部58(支援継続判定手段)、支援制御部60(支援制御手段)及び出力制御部62として機能する。
EPSユニット20は、ステアリングホイール70と、ステアリングコラム71と、舵角センサ72と、トルクセンサ73と、EPSモータ74と、レゾルバ75と、EPS−ECU76を含んで構成される。
舵角センサ72は、ステアリングホイール70の舵角θを検出する。トルクセンサ73は、ステアリングホイール70にかかるトルクを検出する。EPSモータ74は、ステアリングホイール70に連結されたステアリングコラム71に対して駆動力又は反力を付与する。レゾルバ75は、EPSモータ74の回転角度を検出する。
EPS−ECU76は、EPSユニット20全体を制御する装置であり、支援ECU18と同様に、ハードウェアとして、入出力部、演算部及び記憶部(いずれも不図示)を有する。
(カメラ群22及びソナー群24の具体的構成)
図2は、図1の自車10におけるカメラ群22及びソナー群24の配置例を示す概略平面図である。例えば、カメラ群22は、車体80の前方にある前方カメラ81と、車体80の後方にある後方カメラ82と、運転者席側ドアミラーの外側下部にある右側方カメラ83と、助手者席側ドアミラーの外側下部にある左側方カメラ84の4つのカメラで構成される。
ソナー群24は、車体80の前方にある4つの前方ソナー(コーナ左)91、前方ソナー(センタ左)92、前方ソナー(センタ右)93、前方ソナー(コーナ右)94と、車体80の後方にある4つの後方ソナー(コーナ左)95、後方ソナー(センタ左)96、後方ソナー(センタ右)97、後方ソナー(コーナ右)98で構成される。
前方ソナー(センタ左)92と前方ソナー(センタ右)93は、車体80を上方から見たときに車体80の中心を通り車長方向に延びる中心線に対して略左右対称な位置に設けられている。前方ソナー(センタ)92、93は、車体80の前方に向けて音波を発射可能であり、車体80の前方からの音波を受信可能に配置されている。前方ソナー(コーナ左)91と前方ソナー(コーナ右)94は、車体80を上方から見たときに車体80の中心を通り車長方向に延びる中心線に対して略左右対称な位置に設けられている。前方ソナー(コーナ左)91は、車体80を上方から見たときに前方ソナー(センタ左)92よりも左外側に配置されている。前方ソナー(コーナ左)91は、車体80の左前方に向けて音波を発射可能であり、車体80の左前方からの音波を受信可能に配置されている。前方ソナー(コーナ右)94は、車体80を上方から見たときに前方ソナー(センタ右)93よりも右外側に配置されている。前方ソナー(コーナ右)94は、車体80の右前方に向けて音波を発射可能であり、車体80の右前方からの音波を受信可能に配置されている。
後方ソナー(センタ左)96と後方ソナー(センタ右)97は、車体80を上方から見たときに車体80の中心を通り車長方向に延びる中心線に対して略左右対称な位置に設けられている。後方ソナー(センタ)96、97は、車体80の後方に向けて音波を発射可能であり、車体80の後方からの音波を受信可能に配置されている。後方ソナー(コーナ左)95と後方ソナー(コーナ右)98は、車体80を上方から見たときに車体80の中心を通る車長方向の中心線に対して略左右対称な位置に設けられている。後方ソナー(コーナ左)95は、車体80を上方から見たときに後方ソナー(センタ左)96よりも左外側に配置されている。後方ソナー(コーナ左)95は、車体80の左後方に向けて音波を発射可能であり、車体80の左後方からの音波を受信可能に配置されている。後方ソナー(コーナ右)98は、車体80を上方から見たときに後方ソナー(センタ右)97よりも右外側に配置されている。後方ソナー(コーナ右)98は、車体80の右後方に向けて音波を発射可能であり、車体80の右後方からの音波を受信可能に配置されている。
以下、前方ソナー(コーナ左)91、前方ソナー(センタ左)92、前方ソナー(センタ右)93、前方ソナー(コーナ右)94を特に区別しないときには、前方ソナー91〜94と記載する。また後方ソナー(コーナ左)95、後方ソナー(センタ左)96、後方ソナー(センタ右)97、後方ソナー(コーナ右)98を特に区別しないときには、後方ソナー95〜98と記載する。なお、前方ソナー91〜94は本発明の前方検出手段、後方ソナー95〜98は本発明の後方検出手段に相当する。
また、前方ソナー(コーナ左)91、前方ソナー(コーナ右)94を特に区別しないときには前方ソナー(コーナ)91、94と記載し、前方ソナー(センタ左)92、前方ソナー(センタ右)93を特に区別しないときには前方ソナー(センタ)92、93と記載する。後方ソナー(コーナ左)95、後方ソナー(コーナ右)98を特に区別しないときには後方ソナー(コーナ)95、98と記載し、後方ソナー(センタ左)96、後方ソナー(センタ右)97を特に区別しないときには後方ソナー(センタ)96、97と記載する。
図3は、前方ソナー(センタ)92、93に対する距離領域を示す模式図である。ここでは、前方ソナー(センタ)92、93について例を説明するが、他のソナー91、94〜98についても同様である。
支援ECU18(演算部52)は、前方ソナー(センタ)92、93からの距離Disに応じて、3つの距離領域に区分して検出処理を行う。0<Dis≦D2を満たす距離領域を「検出可能領域」と定義する。Dis>D2を満たす距離領域を「検出不可領域」と定義する。「検出可能領域」は更に2つの距離領域に区分される。具体的には、0<Dis≦D1(<D2)を満たす距離領域を「Near領域」と定義する。D1<Dis≦D2を満たす距離領域を「Far領域」と定義する。
前方ソナー(センタ)が「Near領域」において他物体を検出した場合、支援ECU18(演算部52)は検出結果を「Near」と判定する。前方ソナー(センタ)92、93が「Far領域」において他物体を検出した場合、支援ECU18(演算部52)は検出結果を「Far」と判定する。前方ソナー(センタ)92、93が「検出不可領域」において他物体を検出した場合(又は、他物体を検出できなかった場合)、支援ECU18(演算部52)は検出結果を「不検出」と判定する。
[出庫支援装置12の動作]
(出庫支援制御の概要)
この実施形態に係る出庫支援装置12は、以上のように構成される。出庫支援装置12は、ナビゲーション装置16(図1)を介する運転者の入力操作に応じて、図5にて後述する「出庫支援制御モード」に移行し、自車10に対する出庫支援制御を開始する。ナビゲーション装置16は、出庫支援制御の実行中に、出庫支援に関するガイダンス出力(以下、単にガイダンスという)を行う。具体的には、出力制御部62による出力制御に従って、タッチパネルディスプレイ40には出庫支援に関する可視情報(画面)が出力されると共に、スピーカ42には出庫支援に関する音声情報が出力される。
図4は、出庫支援制御による自車10の一連の動作を示す模式図である。ここでは、縦列駐車スペース100内に、前方他車101(前方障害物)、自車10、後方他車102(後方障害物)が一列に駐車している場合を想定する。
[動作1]において、支援ECU18は、ナビゲーション装置16に対して自車10の後進操作(発車指示)を行うための出力信号を供給する。運転者は、ナビゲーション装置16によるガイダンスに従って、シフト位置を「P」から「R」に変更するシフトレバー32の操作を行った後、ブレーキペダルを離す操作を行う。支援ECU18は、ステアリングホイール70の舵角θが中立舵角θo(=0度)となるように自動操舵する。これにより、自車10はクリープ力の作用により真っ直ぐ後方へ移動する。後方ソナー95〜98の検出結果が「Near」となると、支援ECU18はナビゲーション装置16に対して自車10の停止操作(停止指示)を行うための出力信号を供給する。運転者は、ナビゲーション装置16によるガイダンスに従って、ブレーキペダルを踏下する操作を行う。
[動作2]において、支援ECU18は、ナビゲーション装置16に対して自車10の前進操作(発車指示)を行うための出力信号を供給する。運転者は、ナビゲーション装置16によるガイダンスに従って、シフト位置を「R」から「D」に変更するシフトレバー32の操作を行った後、ブレーキペダルを離す操作を行う。支援ECU18はステアリングホイール70の舵角θが目標舵角θtar(時計回り)となるように自動操舵する。これにより、自車10は右方向に旋回しながら前方へ移動する。前方ソナー91〜94の1つ以上の検出結果が「Near」となると、支援ECU18はナビゲーション装置16に対して自車10の停止操作(停止指示)を行うための出力信号を供給する。運転者は、ナビゲーション装置16によるガイダンスに従って、ブレーキペダルを踏下する操作を行う。
[動作3]において、支援ECU18は、ナビゲーション装置16に対して自車10の後進操作(発車指示)を行うための出力信号を供給する。運転者は、ナビゲーション装置16によるガイダンスに従って、シフト位置を「D」から「R」に変更するシフトレバー32の操作を行った後、ブレーキペダルを離す操作を行う。支援ECU18は、ステアリングホイール70の舵角θが目標舵角θtar(反時計回り)となるように自動操舵する。これにより、自車10は左方向に旋回しながら後方へ移動する。後方ソナー95〜98の検出結果が「Near」となると、支援ECU18はナビゲーション装置16に対して自車10の停止操作(停止指示)を行うための出力信号を供給する。運転者は、ナビゲーション装置16によるガイダンスに従って、ブレーキペダルを踏下する操作を行う。
[動作4]において、支援ECU18は、ナビゲーション装置16に対して自車10の前進操作(発車指示)を行うための出力信号を供給する。運転者は、ナビゲーション装置16によるガイダンスに従って、シフト位置を「R」から「D」に変更するシフトレバー32の操作を行った後、ブレーキペダルを離す操作を行う。支援ECU18は、ステアリングホイール70の舵角θが目標舵角θtar(時計回り)となるように自動操舵する。これにより、自車10は右方向に旋回しながら前方へ移動する。前方ソナー(センタ)92、93の検出結果が「不検出」であり、且つ、前方ソナー(コーナ)91、94の検出結果が「Near」でない(「Far」又は「不検出」である)ときには、支援ECU18は出庫可能と判定する。
[動作5]において、運転者は、ナビゲーション装置16による報知(出庫支援の終了)を受けて、運転主体が自身に移譲された旨を把握する。運転者は、アクセルペダルを踏下することで、縦列駐車スペース100から離れる。これにより、自車10の出庫動作が完了する。
(状態遷移図)
図5は「出庫支援制御モード」の状態遷移図である。「出庫支援制御モード」は、「前進モード」、「後進モード」、「一次リミット拡大処理モード」、「中立舵角制御モード」及び「支援終了報知モード」の5つのモードから構成される。
「出庫支援制御モード」のイベントの発生に伴って、「前進モード」又は「後進モード」のいずれかのモードに遷移する。通常、「出庫支援制御モード」のイベントが発生すると、支援ECU18はナビゲーション装置16に対してシフト位置を「R」に変更する案内をするように出力信号を供給する。運転者がシフトレバー32を操作し、シフト位置が「R」になると「後進モード」に遷移する。しかし、例えば後方ソナー95〜98の1つ以上の検出結果が「Near」であるときには、支援ECU18はナビゲーション装置16に対してシフト位置を「D」に変更する案内をするように出力信号を供給する。運転者がシフトレバー32を操作し、シフト位置が「D」になると「前進モード」に遷移する。
「後進モード」においてシフト位置が「R」から「D」に変更された場合、「後進モード」から「前進モード」に遷移する。
「前進モード」においてシフト位置が「D」から「R」に変更された場合、「前進モード」から「後進モード」に遷移する。
「前進モード」において「出庫支援制御モード」の終了判定(「出庫可能」判定)が成立した場合、「中立舵角制御モード」に遷移する。「出庫可能」判定は、例えば、前方ソナー(センタ)92、93の検出結果が「不検出」であり、且つ、前方ソナー(コーナ)91、94の検出結果が「Near」でない(「Far」又は「不検出」である)場合に成立する。
「後進モード」又は「前進モード」において一次リミット越え判定、二次リミット越え判定、ヨー角度リミット越え判定、車速リミット越え判定のいずれか1つが成立した場合、「中立舵角制御モード」に遷移する。一次リミット越え判定、二次リミット越え判定、ヨー角度リミット越え判定、車速リミット越え判定については後に詳述する。
「後進モード」又は「前進モード」において一次リミット拡大判定が成立した場合、「一次リミット拡大処理モード」に遷移する。一次リミット拡大判定については、後に詳述する。
「一次リミット拡大処理モード」において一次リミット拡大処理が終了した場合、「後進モード」又は「前進モード」のうち「一次リミット拡大処理モード」に遷移する前の状態に遷移する。一次リミット拡大処理については後に詳述する。
「中立舵角制御モード」において中立舵角制御終了判定が成立した場合、「支援終了報知モード」に遷移する。中立舵角制御終了判定は、ステアリングホイール70の舵角θが中立位置(前輪の舵角が中立となる位置)となったときに成立する。
「支援終了報知モード」において、出庫支援制御の終了判定が成立した場合、「出庫支援制御モード」のイベントを終了する。出庫支援制御の終了判定は、例えば運転者がタッチパネルディスプレイ40上のボタンをタッチする等して、出庫支援制御の終了を了解した意思を示したときに成立する。
(出庫支援制御フロー)
図6は支援ECU18の支援制御部60において行われる出庫支援制御(「出庫支援制御モード」)の処理の流れを示すフローチャートである。
ステップS1において、支援制御部60は出庫方向の確認を行う。出力制御部62は、出庫支援制御の開始時にタッチパネルディスプレイ40に左右いずれの方向に出庫するかを選択するボタンを表示する。運転者はタッチパネルディスプレイ40のボタンをタッチすることで出庫方向を選択する。
ステップS2において、支援制御部60は後方ソナー95〜98の1つ以上の検出結果が「Near」であるか否かを判定する。後方ソナー95〜98の1つ以上の検出結果が「Near」である場合、支援制御部60はステップS6に処理を進める。すべての後方ソナー95〜98の検出結果が「Near」でない場合、支援制御部60はステップS3に処理を進める。出庫支援制御では、基本的に「後進モード」から始めるが、自車10の後方に障害物が接近しているときには例外として「前進モード」から始める。
ステップS3において、支援制御部60はシフトレバー32のシフト位置を「R」に操作するように運転者に案内を行う制御信号をナビゲーション装置16に出力する。
ステップS4において、支援制御部60はシフト位置センサ30がシフト位置「R」を検出したか否かを判定する。シフト位置センサ30がシフト位置「R」を検出した場合、支援制御部60はステップS5へ処理を進める。シフト位置センサ30がシフト位置「R」を検出していない場合、支援制御部60はステップS3へ処理を戻す。
ステップS5において、支援制御部60は後進モード処理を行う。後進モード処理は図7を用いて後に詳述する。
ステップS6において、支援制御部60はシフトレバー32のシフト位置を「D」に操作するように運転者に案内を行う制御信号をナビゲーション装置16に出力する。
ステップS7において、支援制御部60はシフト位置センサ30がシフト位置「D」を検出したか否かを判定する。シフト位置センサ30がシフト位置「D」を検出した場合、支援制御部60はステップS8へ処理を進める。シフト位置センサ30がシフト位置「D」を検出していない場合、支援制御部60はステップS6へ処理を戻す。
ステップS8において、支援制御部60は前進モード処理を行う。前進モード処理は図8を用いて後に詳述する。
ステップS9において、支援制御部60は前進モード処理において「出庫可能」と判定されたか否かを判定する。前進モード処理において「出庫可能」と判定された場合、支援制御部60はステップS10に処理を進める。前進モード処理において「出庫可能」と判定されなかった場合、支援制御部60はステップS3に処理を戻す。
ステップS10において、支援制御部60は中立舵角制御モード処理を行う。支援制御部60は、ステアリングホイール70の舵角θを中立位置(前輪の舵角が中立となる位置)に変更を指示する制御信号をEPS−ECU76に供給する。
ステップS11において、支援制御部60は支援終了報知モード処理を行う。支援制御部60は出庫支援制御が終了する旨を運転者に案内を行う制御信号をナビゲーション装置16に出力する。また、支援制御部60は運転者が出庫支援制御の終了を了解した旨を示すためのボタンをタッチパネルディスプレイ40に表示する制御信号をナビゲーション装置16に出力する。運転者がこのボタンにタッチすると、支援制御部60は「出庫支援制御モード」を終了する。
図7は支援制御部60の「後進モード」における処理の流れを示すフローチャートである。
ステップS20において、支援制御部60は目標舵角θtarを設定する。今回の「後進モード」が最初の「後進モード」の処理である場合、目標舵角θtarは中立舵角θoに設定される。今回の「後進モード」が最初の「後進モード」の処理でない場合、目標舵角θtarは制御最大舵角θmaxに設定される。制御最大舵角θmaxは、操舵機構の構造上、前輪を最も転舵させたときのステアリングホイール70の限界舵角θlimよりもわずかに小さい値(例えば、限界舵角θlimの95%相当)に設定される。目標舵角θtarを制御最大舵角θmaxに設定することにより、ステアリングホイール70の舵角θが限界舵角θlim付近であるときに発生しやすくなる操舵機構の作動音を抑制することができる。また、EPSユニット20によるステアリングホイール70の自動操舵制御におけるオーバシュートに対するマージンを残すことができる。なお、最初の「後進モード」の処理とは、出庫支援制御開始後、最初の「後進モード」の処理の前に、「後進モード」の処理も「前進モード」の処理も行われていないことを示す。
ステップS21において、支援制御部60はEPSユニット20に対して、ステアリングホイール70の舵角θが目標舵角θtarになるように自動操舵する出力信号を供給する。ステップS1において出庫方向として右が選択されている場合、EPSユニット20はステアリングホイール70を反時計回りに操舵する。ステップS1において出庫方向として左が選択されている場合、EPSユニット20はステアリングホイール70を時計回りに操舵する。
ステップS22において、支援制御部60はブレーキペダルを離して後進するように運転者に案内を行う制御信号をナビゲーション装置16に出力する。
ステップS23において、支援制御部60は後方ソナー95〜98の1つ以上が「Near」であるか否かを判定する。後方ソナー95〜98の1つ以上が「Near」である場合、支援制御部60はステップS24へ処理を進める。すべての後方ソナー95〜98が「Near」でない場合、支援制御部60はステップS22へ処理を戻す。
ステップS24において、支援制御部60はブレーキペダルを踏下し停止するように運転者に案内を行う制御信号をナビゲーション装置16に出力する。
ステップS25において、支援制御部60は自車10が停止したか否かを判定する。自車10が停止した場合、支援制御部60は後進モード処理を終了する。自車10が停止していない場合、支援制御部60はステップS24へ処理を戻す。
図8は支援制御部60の「前進モード」における処理の流れを示すフローチャートである。
ステップS30において、支援制御部60は目標舵角θtarを設定する。目標舵角θtarは制御最大舵角θmaxに設定される。
ステップS31において、支援制御部60はEPSユニット20に対して、ステアリングホイール70の舵角θを目標舵角θtarになるように自動操舵する出力信号を供給する。ステップS1において出庫方向として右が選択されている場合、EPSユニット20はステアリングホイール70を時計回りに操舵する。ステップS1において出庫方向として左が選択されている場合、EPSユニット20はステアリングホイール70を反時計回りに操舵する。
ステップS32において、支援制御部60はブレーキペダルを離して前進するように運転者に案内を行う制御信号をナビゲーション装置16に出力する。
ステップS33において、支援制御部60は前方ソナー91〜94の1つ以上が「Near」であるか否かを判定する。前方ソナー91〜94の1つ以上が「Near」である場合、支援制御部60はステップS34へ処理を進める。すべての前方ソナー91〜94が「Near」でない場合、支援制御部60はステップS36へ処理を進める。
ステップS34において、支援制御部60はブレーキペダルを踏下し停止するように運転者に案内を行う制御信号をナビゲーション装置16に出力する。
ステップS35において、支援制御部60は自車10が停止したか否かを判定する。自車10が停止した場合、支援制御部60は前進モード処理を終了する。自車10が停止していない場合、支援制御部60はステップS34へ処理を戻す。
ステップS36において、前方ソナー(センタ)92、93の検出結果が「不検出」である、且つ、前方ソナー(コーナ)91、94の検出結果が「Near」でない、であるか否かを判定する。前方ソナー(センタ)92、93の検出結果が「不検出」である、且つ、前方ソナー(コーナ)91、94の検出結果が「Near」でない場合、支援制御部60はステップS37に処理を進める。前方ソナー(センタ)92、93の検出結果が「不検出」でない、又は、前方ソナー(コーナ)91、94の検出結果が「Near」である場合、支援制御部60はステップS32に処理を戻す。
ステップS37において、支援制御部60は「出庫可能」と判定する。そして支援制御部60は「前進モード」を終了する。
(支援継続判定制御フロー)
図9は支援継続判定部58において行われる支援継続判定制御の処理の流れを示すフローチャートである。支援継続判定制御は、支援制御部60において行われる出庫支援制御と並列して処理される。支援継続判定制御では、自車10の状況を監視し、自車10の状況に応じて出庫支援制御を強制的に終了させる。例えば、自車10の状況が出庫完了と判断できる状況であるにも関わらず、出庫支援制御が終了できていないときに、支援継続判定制御により出庫支援制御を強制的に終了させる。
ステップS40において、支援継続判定部58は、支援制御部60において出庫支援制御が開始されている否かを判定する。支援制御部60において出庫支援制御が開示されている場合、支援継続判定部58はステップS41に処理を進める。支援制御部60により出庫支援が開始されていない場合、支援継続判定部58は支援継続判定処理を終了する。
ステップS41において、一次リミット、二次リミット、ヨー角度リミット及び車速リミットを設定する。一次リミット、二次リミット、ヨー角度リミット及び車速リミットは、出庫支援制御を継続するか終了するかを判定する範囲として設定される。一次リミット及び二次リミットは、出庫支援制御開始時の自車10の位置を基準とする所定範囲に設定される。ヨー角度リミットは、出庫支援制御開始時の自車10の車長方向を基準とする所定角度に設定される。一次リミット、二次リミット及び角ヨー度リミットについては、後に詳述する。
車速リミットは、自車10の出庫が完了したと判定できる車速に設定される。車速リミットは、出庫支援開始時の自車10の車速を基準とする車速の幅として設定される。通常、出庫支援開始時の自車10の車速はゼロであるため、車速リミットはマイナス値の車速(後進時の車速の大きさ)からプラス値の車速(前進時の車速の大きさ)の範囲(支援範囲)として設定される。
自車10が縦列駐車から出庫するときは、限られたスペース内で自車10の前進、後進及び停止を繰り返す必要がある。そのため、自車10が縦列駐車から出庫中である場合、自車10の車速の大きさは比較的小さい。よって、自車10の車速の大きさが十分に大きければ、自車10はすでに縦列駐車から出庫していると判定できる。
なお、自車10を駐車させる駐車支援制御においても、駐車支援制御を終了するための上限車速が設定されることがある。しかし、本実施形態で設定する車速リミットと駐車支援制御において設定される上限車速は、設定する理由が全く異なる。駐車支援制御においては、自車10が駐車を完了するまでの駐車軌道を設定する。駐車支援制御では、自車10が駐車軌道をトレースするように自動操舵を行う。しかし、自車10の車速が高すぎると駐車軌道を自車10がトレースできなくなる。そのため、駐車支援制御においては自車10の車速に上限値を設け、自車10の車速が上限値を越えた場合には駐車支援制御を終了するようにしている。
ステップS42において、支援継続判定部58は、前方ソナー91〜94によって別の障害物を検出したか否かを判定する。前方ソナー91〜94によって別の障害物を検出した場合、支援継続判定部58はステップS43に処理を進める。前方ソナー91〜94によって別の障害物を検出しなかった場合、支援継続判定部58はステップS44に処理を進める。前方ソナー91〜94によって別の障害物を検出したか否かの判定については、後に詳述する。
ステップS43において、支援継続判定部58は一次リミット拡大処理を行う。一次リミット拡大処理とは、ステップS41において設定した一次リミットの範囲を拡大する処理である。一次リミット拡大処理については後に詳述する。
ステップS44において、支援継続判定部58は自車10の位置が一次リミットを越えたか否かを判定する。自車10の位置が一次リミットを越えた場合、支援継続判定部58はステップS48へ処理を進める。自車10の位置が一次リミットを越えていない場合、支援継続判定部58はステップS45へ処理を進める。
ステップS45において、支援継続判定部58は自車10の車長方向がヨー角度リミットを越えたか否かを判定する。自車10の車長方向がヨー角度リミットを越えた場合、支援継続判定部58はステップS48へ処理を進める。自車10の車長方向がヨー角度リミットを越えていない場合、支援継続判定部58はステップS46へ処理を進める。
ステップS46において、支援継続判定部58は自車10の車速が車速リミットを越えたか否かを判定する。自車10の車速が車速リミットを越えた場合、支援継続判定部58はステップS48へ処理を進める。自車10の車速が車速リミットを越えていない場合、支援継続判定部58はステップS47へ処理を進める。
ステップS47において、支援継続判定部58は自車10の位置が二次リミットを越えたか否かを判定する。自車10の位置が二次リミットを越えた場合、支援継続判定部58はステップS48へ処理を進める。自車10の位置が二次リミットを越えていない場合、支援継続判定部58は支援継続判定制御を終了する。
ステップS48において、支援継続判定部58は、支援制御部60において行われている出庫支援制御に介入し、出庫支援制御を終了させる。
ステップS49において、支援継続判定部58は支援終了報知モード処理を行う。支援継続判定部58は出庫支援制御が終了する旨を運転者に案内を行う制御信号をナビゲーション装置16に出力する。また、支援制御部60は運転者が出庫支援制御の終了を了解した旨を示すためのボタンをタッチパネルディスプレイ40に表示する制御信号をナビゲーション装置16に出力する。運転者がこのボタンにタッチすると、支援継続判定部58は支援継続判定制御を終了する。
(出庫軌道Tの設定について)
図10は前進モードにおける出庫軌道Tについて説明する図である。図10は、駐車中の自車10の前方に前方他車101、後方に後方他車102が駐車している縦列駐車スペース100から自車10が出庫しようとしている状態を示している。以下、前進モードにおける出庫軌道Tの設定について説明する。
出庫軌道設定部56は出庫支援制御の開始時における自車10の位置を原点Oとして設定する出庫座標系110を設定する。出庫座標系110は路面と平行な平面上に設定される平面座標系である。出庫座標系110のX軸は、自車10の車幅方向に平行する軸であり自車10の前方に向かって右方を正方向とする。出庫座標系110のY軸は、自車10の車長方向に平行する軸であり自車10の前方を正方向とする。
自車10の位置は、左右後輪の車軸を結ぶ直線上であって左右後輪の中央の点に設定されている。出庫支援制御の開始時における自車10の位置を支援開始位置Psとする。支援開始位置Psは出庫座標系110の原点Oと一致する。現在の自車10の位置を現在位置Pcとする。出庫支援制御中に自車10が停止し、後進モードから前進モードに切り替わったときの自車10の位置を中間位置Pmとする。中間位置Pmは、前進モードと後進モードとが切り替わる度に更新される。
支援ECU18は、出庫支援制御中において、前方ソナー91〜94により自車10と前方他車101との距離(以下、前方距離Df)を常時検出する。前方距離Dfは、Y軸方向における自車10のY軸正方向側端部と前方他車101のY軸負方向側端部との間の距離を示す。支援ECU18は、出庫支援制御中において、後方ソナー95〜98により自車10と後方他車102との距離(以下、後方距離Db)を常時検出する。後方距離Dbは、Y軸方向における自車10のY軸負方向側端部と後方他車102のY軸正方向側端部との間の距離を示す。
出庫軌道設定部56は後進モードから前進モードに切り替わったときに中間位置Pmを始点とする出庫軌道Tを設定する。出庫軌道設定部56は、自車10が中間位置Pmにあるときに、ステアリングホイール70の舵角θを目標舵角θtarに設定した状態で自車10が通過し得る軌道を出庫軌道Tとして設定する。なお、出庫軌道設定部56は、出庫支援制御の開始後に初めて出庫軌道Tを設定する場合、支援開始位置Psを始点とする出庫軌道Tを設定する。
自車10の現在位置Pcは、GPSにより検出してもよいし、中間位置Pm(又は支援開始位置Ps)からのステアリングホイール70の舵角θと走行距離を用いて求めてもよい。
以上、前進モードにおける出庫軌道Tの設定について説明したが、後進モードにおける出庫軌道Tの設定についても同様である。
(一次リミット112及び二次リミット114の設定について)
図11は一次リミット112及び二次リミット114の設定について説明する図である。図11は、駐車中の自車10の前方に前方他車101、後方に後方他車102が駐車している縦列駐車スペース100から自車10が出庫しようとしている状態を示している。図11において、自車10の前方に向かって左側に縁石104があるため、自車10は右側に出庫しようとしている。以下、一次リミット112及び二次リミット114の設定について説明する。
支援継続判定部58は、出庫支援制御の開始時に一次リミット112及び二次リミット114を設定する。一次リミット112及び二次リミット114は、出庫支援制御の開始時の自車10の位置を基準として、出庫座標系110上に設定される矩形の領域である。一次リミット112及び二次リミット114は、出庫座標系110上において支援開始位置Psを含む閉領域として設定される。出庫支援制御中に自車10の現在位置Pcが一次リミット112又は二次リミット114から逸脱したときには出庫支援制御を終了する。支援継続判定部58は、出庫支援制御の開始時のソナー91〜98の検出結果等に応じて一次リミット112の領域を可変に設定してもよい。一方、支援継続判定部58は、出庫支援制御の開始時のソナー91〜98の検出結果等に関わらず、二次リミット114の領域を固定して設定する。
支援継続判定部58は、自車10のY軸正方向側端部よりもY軸正方向側に距離Lf1離れた位置に一次リミット112のY軸正方向側端部を設定する。距離Lf1の値は、自車10の前進時の最小旋回半径Rfminにマージンを加算した値に設定されている。
支援継続判定部58は、自車10のY軸負方向側端部よりもY軸負方向側に距離Lb1離れた位置に一次リミット112のY軸負方向側端部を設定する。距離Lb1の値は、自車10の後進時の最小旋回半径Rrminにマージンを加算した値に設定されている。
支援継続判定部58は、自車10のX軸正方向側端部よりもX軸正方向側に距離Wr1離れた位置に一次リミット112のX軸正方向側端部を設定する。距離Wr1の値は適宜設定してよい。例えば、距離Wr1の値を自車10の全幅の半分の長さにマージンを加算した値に設定してもよい。これにより、自車10の現在位置Pcが一次リミット112のX軸正方向側端部から逸脱した場合、自車10と前方他車101及び後方他車102とのX軸方向におけるオーバラップが解消したと判定することができる。よって、自車10はステアリングホイール70の舵角θを中立にした状態で出庫することが可能となる。また距離Wr1の値を自車10の全幅の半分の長さの値よりも小さな値に設定してもよい。この場合、自車10の最小旋回半径Rrminに応じて距離Wr1の値を設定すればよい。
支援継続判定部58は、自車10のX軸負方向側端部よりもX軸負方向側に距離Wl1離れた位置に一次リミット112のX軸負方向側端部を設定する。距離Wl1の値は、距離Wr1の値よりも小さな範囲で適宜設定してよい。距離Wl1の値は、例えば、自車10の現在位置Pcが一次リミット112のX軸負方向側端部から逸脱した場合、出庫支援装置12に何らかの不具合が生じて自車10が出庫方向とは反対側に移動していると判定できる値に設定すればよい。自車10の支援開始位置Psは、一次リミット112のX軸方向の中心よりもX軸負方向側(出庫方向と反対側)に位置する。
支援継続判定部58は、自車10のY軸正方向側端部よりもY軸正方向側に距離Lf2離れた位置に二次リミット114のY軸正方向側端部を設定する。距離Lf2の値は、距離Lf1の値以上となる範囲で適宜設定してよい。
支援継続判定部58は、自車10のY軸負方向側端部よりもY軸負方向側に距離Lb2離れた位置に二次リミット114のY軸負方向側端部を設定する。距離Lb2の値は、距離Lb1の値以上となる範囲で適宜設定してよい。
支援継続判定部58は、自車10のX軸正方向側端部よりもX軸正方向側に距離Wr2離れた位置に二次リミット114のX軸正方向側端部を設定する。距離Wr2の値は、距離Wr1の値以上となる範囲で適宜設定してよい。自車10の支援開始位置Psは、二次リミット114のX軸方向の中心よりもX軸負方向側(出庫方向と反対側)に位置する。
支援継続判定部58は、自車10のX軸負方向側端部よりもX軸負方向側に距離Wl2離れた位置に二次リミット114のX軸負方向側端部を設定する。距離Wl2の値は、距離Wl1の値以上となる範囲で適宜設定してよい。
(一次リミット112の拡大について)
一次リミット112は、駐車車両の車列が一列である一重縦列駐車において自車10の位置が一次リミット112を越えると、自車10が確実に出庫したと判定できる範囲に設定される。しかし、駐車車両の車列が二列である二重縦列駐車においては自車10の位置が一次リミット112を越えても自車10が確実に出庫したとは判定できない場合がある。図12は一次リミット112の拡大について説明する図である。図12は二重縦列駐車から自車10が出庫する様子を示している。
前方ソナー91〜94が、出庫支援制御開始時に認識していた前方他車101とは別の障害物である前方他車106を出庫支援制御開始後に検出した場合、出庫支援制御開始時に設定していた一次リミット112を拡大する。
一次リミット112の拡大は、例えば図12において点線で示す範囲から実線で示す範囲に拡大する。一次リミット112の拡大範囲は、最大でも二次リミット114の範囲とする。自車10が二重縦列駐車から出庫する場合、自車10の現在位置Pcが点線で示す拡大前の一次リミット112の範囲を逸脱した場合であっても、実線で示す拡大後の一次リミット112の範囲内にあるときには出庫支援制御を継続することができる。
前方ソナー91〜94が出庫支援制御開始時に認識していた障害物(前方他車101)とは別の障害物(前方他車106)を認識したことの判定は次のように行う。
[1]出庫支援制御開始時の前方ソナー(センタ)92、93の検出結果が「Far」又は「Near」である。[2]出庫支援制御開始後、前方ソナー(センタ)92、93の検出結果が「不検出」となる。[3]その後、前方ソナー(センタ)92、93の検出結果が再び「Far」又は「Near」となる。上記の条件[1]〜[3]をすべて満たしたときに、前方ソナー91〜94が出庫支援制御開始時に認識していた障害物(前方他車101)とは別の障害物(前方他車106)を認識したと判定する。
図12の例を用いて、前方ソナー91〜94が出庫支援制御開始時に認識していた障害物(前方他車101)とは別の障害物(前方他車106)を認識したことの判定について説明する。
出庫支援制御開始時には、自車10の前方には前方他車101がある。そのため、前方ソナー(センタ)92、93は前方他車101からの反射波(音波)を受信し、前方ソナー(センタ)92、93の検出結果は「Near」又は「Far」となる。
出庫支援制御開始後、自車10は図12のY軸方向(出庫支援制御開始時の車長方向)に対して斜めになり、自車10の前方から前方他車101がいなくなる。そのため、前方ソナー(センタ)92、93の検出結果は「不検出」となる。
その後、自車10は図12のY軸方向に対して更に斜めになり、自車10の前方に前方他車106が位置するようになる。そのため、前方ソナー(センタ)92、93は前方他車106からの反射波(音波)を受信し、前方ソナー(センタ)92、93の検出結果は「Near」又は「Far」となる。
よって、前述の条件[1]〜[3]をすべて満たしたときには、前方ソナー91〜94は、出庫支援制御開始時に認識していた前方他車101とは別の障害物である前方他車106を出庫支援制御開始後に検出したと判定することができる。
(ヨー角度リミット116の設定について)
図13はヨー角度リミット116の設定について説明する図である。以下、ヨー角度リミット116の設定について説明する。
支援継続判定部58は、出庫支援制御の開始時にヨー角度リミット116を設定する。ヨー角度リミット116は、出庫座標系110のY軸方向に対して出庫方向側に所定の範囲の角度を持って設定される。例えば、ヨー角度リミット116をY軸方向に対して出庫方向側に90[deg]の範囲として設定してもよい。自車10がY軸方向と略平行である縦列駐車の車列の方向に対して略直角であれば、自車10はステアリングホイール70の舵角θを中立にした状態で出庫可能であると判定できる。
[出庫支援装置12による作用効果]
駐車場に自車を駐車させる支援を行う駐車支援制御では、自車が駐車スペースの領域内に収まったことを判定したときに駐車支援制御を終了すればよい。そのため、駐車支援制御では制御の終了を判定するための自車の目標位置が明確である。一方、駐車場からの自車を出庫させる支援を行う出庫支援制御では、駐車支援制御に比べて制御の終了を判定するための自車の目標位置が不明確である。駐車支援制御における制御の終了を判定するための自車の目標位置は、自車と駐車スペース、又は、自車と他車(障害物)との相対位置関係で決まるからである。
従来、出庫支援制御を終了する自車の目標位置を特定するために、次のような手法が提案されている。[1]ソナーにより障害物との距離が所定距離以上となった場合に出庫支援制御を終了する。[2]車載カメラにより自車が駐車スペースの領域から出た場合に出庫支援制御を終了する。[3]後進距離が所定距離以上となった場合に出庫支援制御を終了する。後進距離が長くなれば前進可能な距離を確保することができるため出庫可能であると判断する。[4]前進距離が所定距離以上となった場合に出庫支援制御を終了する。前進可能な距離が十分にあったため、すでに出庫が完了していると判断する。
上記の各手法は、センサの検出値が所定値を越えたときに出庫支援制御を終了するものである。しかし、各手法は次のような問題を有する。[1]ソナーに向かって強風が吹いているときや豪雨のときには、ソナーは近辺に障害物がない状態であっても障害物が接近していると誤検出するおそれがある。ソナーの外装表面に汚れや付着物があるときにも同様に誤検出するおそれがある。そのため、出庫が完了しているにも関わらず、出庫支援制御を終了できないおそれがある。[2]自車が駐車スペースの領域から出たとしても、自車に近接する障害物の存在により運転者は引き続き出庫支援制御を必要とする場合がある。図14Aは縦列駐車の車列が一列(一重縦列駐車)の状態を示す図である。図14Bは縦列駐車の車列が二列(二重縦列駐車)の状態を示す図である。図14Aに示す一重縦列駐車では、自車10が縦列駐車スペース100の領域から出たことを検出したことによって適切に出庫支援制御を終了することができる。一方、図14Bに示す二重縦列駐車では、自車10が縦列駐車スペース100の領域から出たことを検出しても、自車10の縦列駐車スペース100に隣接する車列に対する出庫支援制御が引き続き必要とされる。[3]出庫支援制御中に自車が前後進を繰り返すと後進距離は長くなる。そのため実際には前進可能距離が十分に確保できていないにも関わらず出庫支援制御を終了してしまうおそれがある。[4]出庫支援制御中に自車が前後進を繰り返すと前進距離は長くなる。そのため実際には前進可能な距離は十分でなく、出庫が完了していないにも関わらず出庫支援制御を終了してしまうおそれがある。
そこで本実施形態の出庫支援装置12において、支援継続判定部58は、自車10の支援開始位置Psによって決まる一次リミット112、二次リミット114、ヨー角度リミット116及び車速リミットを設定する。一次リミット112、二次リミット114、ヨー角度リミット116及び車速リミットを、自車10と他車(障害物)との相対位置を考慮せずに設定することが可能となる。よって、自車10と他車(障害物)との相対位置を検出するセンサの誤検出等により、予期しない車両状態になったとしても、自車10が支援対象範囲から逸脱することで、出庫支援制御を強制的に終了することができる。
一次リミット112及び二次リミット114を、出庫支援制御開始時の自車10の位置を基準とする距離に関する支援範囲として設定した。出庫支援制御開始時の自車10の位置と出庫支援制御開始後の自車10の位置との間に十分な距離があれば、自車10は出庫が完了していると判断できる。
ヨー角度リミット116を、出庫支援制御開始時の自車10の車長方向を基準とする角度に関する支援範囲として設定した。出庫支援制御開始時の自車10の車長方向に対して出庫支援制御開始後の自車10の車長方向が十分な角度を持っていれば、自車10はそのまま前進して出庫できると判断できる。
車速リミットを、出庫支援制御開始時の自車10の車速を基準とする車速に関する支援範囲として設定した。出庫支援制御開始時の自車10の車速の大きさに対して出庫支援制御開始後の自車10の車速の大きさが十分大きければ、自車10の周辺には障害物はなく、自車10は出庫が完了していると判断できる。
自車10が出庫した後も支援制御部60によるステアリングホイール70の自動操舵が行われると、出庫支援の範疇を越えて自動運転の範疇となり、出庫支援制御としては支援過剰となる。自車10の状態が一次リミット112、二次リミット114、ヨー角度リミット116及び車速リミットを越え、自車10の出庫が完了したと判定できるときには、支援継続判定部58により出庫支援制御を終了することにより、ステアリングホイール70の操舵を自動操舵から運転者による手動操作に移行することができる。
また本実施形態の出庫支援装置12では、支援継続判定部58において、一次リミット112及び二次リミット114を、自車10の支援開始位置Psを含む閉領域として設定する。出庫支援制御を終了する閾値(一次リミット112及び二次リミット114)を、自車10が支援開始位置Psから移動した累積距離ではなく、支援開始位置Psから移動した相対距離により設定することができる。よって、出庫支援制御中の自車10の移動経路に関わらず、自車10の出庫を適切に判定することができる。
また本実施形態の出庫支援装置12では、支援継続判定部58において、一次リミット112及び二次リミット114の自車10の車長方向の長さが車幅方向の長さよりも大きくなるように設定する。よって、車長方向の長さが車幅方向の長さよりも大きい自車の形状に沿って適切な支援範囲を設定することができる。
また本実施形態の出庫支援装置12では、支援継続判定部58において、一次リミット112及び二次リミット114を、自車10の支援開始位置Psが一次リミット112及び二次リミット114のX軸方向の中心よりもX軸負方向側(出庫方向と反対側)に位置するように設定する。自車10の出庫方向とは反対側の出庫支援対象範囲に比べて、自車10の出庫方向側の出庫支援対象範囲を広く設定することが可能となる。よって、自車10の支援開始位置Psに対して自車10が出庫方向と反対側に移動する場合には、出庫不可能であるとして早めに出庫支援制御を終了することができる。一方、自車10の支援開始位置Psに対して自車10が出庫方向側に移動する場合には、出庫支援制御を継続することにより、自車10の出庫の可能性を向上させることができる。
また本実施形態の出庫支援装置12では、支援継続判定部58において、出庫支援制御中に、出庫支援制御の開始時に前方ソナー91〜94が検出した他車(障害物)とは異なる別の障害物を検出した場合、一次リミット112を拡大する。縦列駐車の車列は一列であることが多いが、二列以上であることもある。出庫支援制御の開始時から一次リミット112の範囲を拡大して設定すると、自車10の出庫が完了しているにも関わらず出庫支援制御を終了することができないおそれがある。出庫支援制御中に別の障害物を検出したときに一次リミット112を拡大することにより、別の障害物を検出しないときには早く出庫支援制御を終了することができる。また別の障害物を検出したときには出庫支援制御を継続することにより、運転者への出庫支援を適切に行うことができる。
[補足]
なお、この発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、この発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
この実施形態では、自動操舵を例に挙げて説明したが、アクセルペダル(不図示)、ブレーキペダル(不図示)及びシフトレバー32の自動操作/手動操作を組み合わせた種々の運転形態を採り得る。
この実施形態では、ステアリングホイール70の操舵を自動で行うようにしているが、これに限られない。ステアリングホイール70と転舵輪とが機械的に接続していないステアバイワイヤの場合、転舵輪の転舵量を自動で行い、ステアリングホイール70は回転しないものであってもよい。或いは、車輪自体は転舵せずに、旋回内輪の回転速度と旋回外輪の回転速度との間に速度差を設けて自車10を旋回させるようにしてもよい。
この実施形態では、前方距離Df又は後方距離Dbを検出する手段としてソナー91〜98を用いているが、この構成に限られない。ソナー91〜98に代えて、例えば、測距レーダであってもよいし、ステレオカメラを用いてもよい。
この実施形態では、自車10の現在位置Pcが一次リミット112又は二次リミット114の範囲から逸脱した場合、出庫支援制御を終了するようにしているが、この処理に限られない。例えば、自車10の現在位置Pcが一次リミット112の出庫方向とは反対側の端部から逸脱した場合、出庫支援制御を中断し、駐車支援制御を行って自車10を再度駐車させた状態で出庫支援制御を再開するようにしてもよい。
この実施形態では、一次リミット112及び二次リミット114を矩形の領域として設定しているが、一次リミット112及び二次リミット114の形状は矩形に限らない。例えば、一次リミット112及び二次リミット114を自車10の支援開始位置Psを中心とする円形としてもよい。
この実施形態では、一次リミット112及び二次リミット114を自車10の支援開始位置Psに対するX軸方向の距離、及び、Y軸方向の距離を規定して設定しているが、一次リミット112及び二次リミット114の設定はこの方法に限らない。例えば、一次リミット112及び二次リミット114を、自車10の支援開始位置Psに対するX軸方向の距離、又は、Y軸方向の距離の一方を規定して設定してもよい。
この実施形態では、一次リミット112及び二次リミット114を出庫座標系110上の領域として設定しているが、一次リミット112及び二次リミット114は出庫座標系110上の領域に限らなくともよい。例えば、自車10のX軸方向又はY軸方向の移動距離に閾値を設定してもよい。
この実施形態では、出庫支援開始時からの前方ソナー(センタ)92、93の検出結果の推移に応じて、前方ソナー91〜94が出庫支援開始時に認識していた障害物とは別の障害物を出庫支援開始後に検出したか否かを判定していたが、これに限らなくてもよい。例えば、障害物からの反射波の波形の違いから上記判定を行うようにしてもよい。前方ソナー91〜94に代えてステレオカメラを用いる場合、出庫支援開始時に取得した障害物の画像と出庫支援開始後に取得した障害物の画像を用いて、出庫支援開始時に認識している障害物と出庫支援開始後に認識している障害物とが一致するか否かを判定するようにしてもよい。
この実施形態では、前方ソナー91〜94の検出結果によって自車10が駐車している場所が二重縦列駐車であることを判断するようにしていたが、後方ソナー95〜98の検出結果によって自車10が駐車している場所が二重縦列駐車であることを判断するようにしてもよい。
この実施形態では、支援継続判定部58において、自車10の状態が一次リミット越え、二次リミット越え、ヨー角度リミット越え又は車速リミット越えとなった場合、支援制御部60による出庫支援制御を終了するようにした。例えば、支援制御部60による出庫支援制御中はステアリングホイール70の操舵、シフト位置の変更の操作、ブレーキペダルの操作を自動で行っていた場合、出庫支援制御の中断又は終了後にすべての操作を運転者による手動の操作に移行させてもよいし、一部を運転者による手動の操作に移行させるようにしてもよい。また、出庫支援制御中には自動で行っていた操作を、出庫支援制御の中断又は終了後には運転者による操作をアシストするようにしてもよい。