JP6385756B2 - 凍結用酸性乳性飲料 - Google Patents
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このとき、いわゆるかち割り氷のようなものであると、水部と氷部が分離した状態となり、シャーベット状あるいはフロート状の冷菓を飲食するような良好な食感を得ることはできない。すなわち、液体部と凍結部(氷塊部)とが明確に分離し、凍結部は固く、ある程度の柔らかさを有するシャーベットやアイスキャンディーを食するような食感を得ることができない。また、味の濃淡が経時により発生し、最後は、ほとんど味のないものとなってしまうこともある。
しかしながら、当該飲料のような水以外のいわゆる食材部(糖分、脂肪分、蛋白質分、ミネラル分、その他栄養素分等)の濃度が低い場合、凍結させて飲食しようとすると、上記かち割り氷のような状態となり、その凍結後の飲食感覚は決して良好なものではない。
さらに、特許文献3には、常温で流通することができ、従来の常温流通タイプの冷菓より品質のよい冷菓として、凍結による比重差沈殿を防止するための粘性食材および粘性材と、氷結晶を小さな核形成させるための食材とを含む冷菓が提案されている。
すなわち、無脂乳固形分量が0.1〜3質量%、及び脂肪分が0〜0.5質量%と低い、低無脂乳固形分及び低脂肪分の酸性乳性飲料は、飲用するときの風味及び後味の良さを良好に調整すると、凍結状態において氷塊に近い状態の硬さとなり、その食感が不良で、かじったときの歯ごたえが硬く、さらには風味も感じにくい状態であり、上記方法でもこれを改善できないという問題がある。
また、本発明の別の課題は、当該凍結用飲料の製造方法を提供することにある。
本発明のさらに別の課題は、凍結用飲料の凍結時の硬さを緩和する方法、及び凍結させた凍結用飲料の融解速度を遅くする方法を提供することにある。
また、本発明によれば、(A)乳、(B)大豆多糖類、(C)グアガム、タマリンドシードガム及びHMペクチンの少なくとも一つ、糖及び甘味料の少なくとも一つ、並びに水を混合して混合液を調製する工程と、該混合液中の無脂乳固形分量を0.1〜3質量%、及び脂肪分を0〜0.5質量%、並びに前記混合液の糖度を10〜18、及びpHを3.0〜4.2に調整する工程と、を有する、凍結用酸性乳性飲料の製造方法が提供される。
またさらに、(A)乳、(B)大豆多糖類、(C)グアガム、タマリンドシードガム及びHMペクチンの少なくとも一つ、糖及び甘味料の少なくとも一つ、並びに水を混合して混合液を調製し、該混合液中の無脂乳固形分量を0.1〜3質量%、及び脂肪分を0〜0.5質量%、並びに前記混合液の糖度を10〜18、及びpHを3.0〜4.2に調整することを特徴とする、凍結用酸性乳性飲料の融解速度を遅くする方法が提供される。
また、本発明の製造方法は、特定の多糖類を組み合わせて混合する工程、及び糖度及びpHを特定の範囲に制御する工程を有するので、良飲用性を維持した、凍結後の食感が良好で、かつ、融解速度が遅くその食感が長時間持続する凍結用酸性乳性飲料を製造することができる。
また、本発明の凍結用酸性乳性飲料の凍結時の硬さを緩和する方法、及び融解速度を遅くする方法は、低無脂乳固形分及び低脂肪分の酸性乳性飲料を、良飲用性を維持した状態で、良好な食感を有し、融解速度が遅くその食感を長時間持続できる凍結用酸性乳性飲料とすることができる。
本発明の凍結用飲料は、酸性乳性飲料であって、飲料として飲用する以外に、凍結させた後、室温又は外気温中で自然解凍させながらの飲食に供するものであり、飲食による経時により、凍結状態、半融解状態、及び場合によっては全融解した溶液状態と変化するものである。さらに、初期の凍結状態の時点において、いわゆるシャーベット状を呈しており、噛んだときに硬すぎず、良好な食感を有すると共に、経時によりその硬さが低下して柔らかくなるものの、液部と凍結部の分離が少なく、シャーベットの心地よい食感が長時間持続するものである。
また、この飲食による経時によって、風味や味の変化が小さく、飲食開始から終了まで、良好な風味及び味を堪能できるものである。
これらの乳を原料乳として使用する場合、その形態は特に限定されず、例えば、全脂乳、脱脂乳、乳清、乳蛋白濃縮物を用いることができ、また、粉乳、濃縮乳から還元した乳も使用できる。
大豆多糖類は、乳蛋白質を含めた乳固形分量が比較的少ない、清涼飲料水に分類されるような酸性の乳性飲料に対する安定化剤として使用される。しかし、通常、安定化剤は安定化対象物を凍結させた後、該対象物を再融解した時にはその安定性機能を失うことが多い。すなわち、飲料の凍結復元性が悪いことが多い。凍結用飲料においても、大豆多糖類のみの配合では、自然解凍しながらの飲食時において、食感及び風味が好ましくない。
本発明で使用する(C)タマリンドシードガムは、タマリンドの種子から抽出される増粘多糖類であり、冷菓やドレッシングなどに利用されている。市販のものとしては、三栄源エフ・エフ・アイ(株)製のビストップD−171などを使用できる。
本発明で使用する(C)HMペクチンは、主に柑橘類から抽出される多糖類である。市販のものとしては、三晶(株)製のYM−115−LJなどを使用できる。
本発明の飲料において水の含有割合は、他の成分の含有割合や、後述する糖度及びpHが所望範囲となるように適宜選択することができる。
果汁としては、例えば、オレンジ、レモン、グレープフルーツ等の柑橘系の果汁や、ブドウ、モモ、リンゴ、バナナ等が挙げられる。
糖度調整剤としては、例えば、ショ糖、麦芽糖、果糖、ブドウ糖、果糖ブドウ糖液糖、オリゴ糖等の糖類や、エリスリトール、マルチトール、キシリトール等の糖アルコールや、難消化性デキストリン、寒天等の食物繊維が挙げられる。
大豆多糖類以外の安定化剤としては、例えば、HMペクチン、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ジェランガム、キサンタンガム、アラビアガムが挙げられる。
高甘味度甘味料としては、例えば、スクラロース、ステビア、アセスルファムカリウム、サッカリンナトリウム、アスパルテーム、グリチルリチン、グリチルリチン酸ジカリウム、ソーマチンが挙げられる。
なお、本発明において糖度とは、ブリックス値(Bx)とも称され、20℃における糖用屈折計の示度であり、例えば、デジタル屈折計Rx−5000(アタゴ社製)を使用して20℃で測定した本発明の飲料における可溶性固形分量を意味する。
本発明の凍結用飲料は、(A)乳、(B)大豆多糖類、(C)グアガム、タマリンドシードガム及びHMペクチンの少なくとも一つ、糖及び甘味料の少なくとも一つ、並びに水を混合して混合液を調製し、該混合液中の無脂乳固形分量を0.1〜3質量%、及び脂肪分を0〜0.5質量%、並びに前記混合液の糖度を10〜18、及びpHを3.0〜4.2に調整することにより行うことができる。これらの調整は、上述の各原材料の種類や含有割合を調整することにより行うことができる。なお、C成分については、その含有量を凍結用飲料全量中0.05〜0.35質量%の範囲に調整することが好ましい。また、その下限値は0.1質量%がより好ましく、その上限値は0.3質量%がより好ましく、0.2質量%がさらに好ましい。
本発明の凍結用飲料は、例えば、常温下で製造することができる。
均質化処理は、通常、ホモゲナイザーを用いて行うことができる。均質化条件は特に限定されないが、温度5〜25℃で圧力10〜50Mpaの条件が好ましく挙げられる。また、均質化処理は、殺菌処理の前後のいずれか、もしくは両方で行うことができる。
殺菌処理は、例えば、65℃で10分間と同等以上の殺菌価を有する加熱殺菌により行うことができる。殺菌処理の方法は特に制限されず、通常のプレート式殺菌、チューブラー式殺菌、レトルト殺菌、バッチ殺菌、オートクレーブ殺菌等の方法を採用することができる。また、殺菌処理は、均質化処理の前後のいずれか、もしくは両方で行うか、または容器充填前後のいずれか、もしくは両方で行うことができる。
殺菌処理後の本発明の凍結用飲料を容器詰め飲料とする方法としては、例えば、容器にホットパック充填し、充填した容器を冷却する方法、又は容器充填に適した温度まで冷却して、予め洗浄殺菌した容器に無菌充填する方法により行うことができる。
なお、実施例及び比較例中、大豆多糖類は、商品名「SM−1200」(三栄源エフ・エフ・アイ(株)製)を、グアガムは商品名「VIDOCREM A」(ユニテックフーズ(株)製)を、タマリンドシードガムは商品名「ビストップD−171」(三栄源エフ・エフ・アイ(株)製)を、ペクチンは商品名「YM−115−LJ」(三晶(株)製)を用いた。
また、均質化処理は、試験室用ホモゲナイザー(型式15MR、APVゴーリン社製)を用いて、処理温度20℃、処理圧15MPaで行なった。
20質量%還元脱脂粉乳500gと、50質量%グラニュ糖水溶液2560gを混合して均一になるよう撹拌し、グラニュ糖含有還元脱脂粉乳液を調製した。次いで、当該脱脂粉乳液に3質量%大豆多糖類水溶液233g、10質量%クエン酸水溶液191g、及び1質量%グアガム水溶液500gを順次添加した。続いて、香料18g、及び10質量%クエン酸三ナトリウム(クエン酸三Na)水溶液20gを添加した後、イオン交換水を用いて調合液の全量を10,000gとした。
このようにして得られた調合液を均質化処理し、加熱殺菌した後に、PETボトルにホットパック充填し、室温まで水冷して実施例1に係る凍結用飲料を得た。該凍結用飲料の配合組成及び各性状を表1に示す。
1.凍結後の硬さ及び噛み砕きやすさの評価
実施例1の凍結用飲料が充填されたPETボトルから25gずつ密封可能なプラスチック製袋に分注して−20℃の冷凍庫に一晩以上静置し、凍結用飲料を凍結させた後、冷凍庫から取り出して5℃の冷蔵庫中で10分間静置した。当該冷蔵庫中での静置後に、凍結した凍結用飲料(以後、凍結試料と称する)について以下のように官能評価を行った。判定員として習熟したパネラー4名により、上記袋から出して食したときの凍結試料の「硬さ」、及び「噛み砕きやすさ」について評価した。
「硬さ」、「噛み砕きやすさ」いずれも下記の採点基準に従って、0〜8点までの9段階で評価し、その平均点数を算出した。評価結果を表2に示す。
(硬さ)
0点:かなり硬い
2点:硬い
4点:やや硬い
6点:わずかに硬い
8点:硬くない
(噛み砕きやすさ)
0点:噛み砕きにくい
2点:やや噛み砕きにくい
4点:どちらとも言えない
6点:やや噛み砕きやすい
8点:噛み砕きやすい
実施例1の凍結試料20gをプラスチックカップに入れ、25℃下に40分間静置した後、融解して液体となった部分のみを回収し、その液体部の重量を測定した。液体部の量が少ないほど融解速度が遅いと判断できる。結果を表3に示す。
実施例1の凍結用飲料について、非凍結時の飲料としての評価を以下のように行った。調製した実施例1の凍結用飲料を10℃にて、習熟したパネラー10名により、「味」、「さわやかさ」、及び「後味」の各項目について官能評価した。
いずれも下記の採点基準に従って、0〜8点までの9段階で評価し、その平均点数を算出した。結果を表5に示す。
(味)
0点:まずい
2点:ややまずい
4点:どちらとも言えない
6点:ややおいしい
8点:おいしい
(さわやかさ)
0点:ない
2点:わずかにある
4点:ややある
6点:ある
8点:かなりある
(後味)
0点:悪い
2点:やや悪い
4点:どちらとも言えない
6点:やや良い
8点:良い
表1に示した配合(調合)組成とした以外は実施例1と同様にして、各実施例及び比較例の凍結用飲料を得た。該凍結用飲料の配合組成及び各性状を表1に示す。また、その評価結果を表2〜5に示す。
凍結時の食感に関して、上記1.の官能評価以外の評価として、実施例3及び比較例1の凍結試料を使用して、その破断強度及び破断変形距離を以下のようにして測定した。破断強度は破断荷重(gf)で表し、該荷重が小さい方が柔らかいことを示す。また、破断変形距離(mm)の経時による変化が小さい方が、融解速度が遅くその食感が長時間持続すると判断した。
実施例3と比較例1の凍結試料20gをプラスチック製カップに入れ、測定機器RHEONERII CREEP METER RE2−33005B((株)山電製)を用いて、破断強度および破断変形距離を測定した。上記カップに入れた凍結飲料に対し、真上に直径3mmのプラスチック製円柱状プランジャーを設置し、凍結飲料の液面に対し垂直に速度0.1mm/secで荷重をかけ、試料(厚さ15mm)がプランジャーの力で破断したときの荷重(gf)および破断変形距離(mm)を測定した。気温は25℃(常温下)にて行った。計測は2回行い、平均値を算出した。結果を表5に示す。
なお、比較例2は、凍結後の食感及び融解速度とも良好であるが、表4に示すように非凍結時の飲料としての味等が劣った。それに対して、実施例1〜7の凍結用飲料は、非凍結時の飲料としても良好な味等を有していた。
Claims (7)
- (A)乳、(B)大豆多糖類、並びに(C)グアガム、タマリンドシードガム及びHMペクチンの少なくとも一つ、を含有し、
飲料中に含まれる、グアガム、タマリンドシードガム及びHMペクチンの少なくとも一つの含有量が0.05〜0.35質量%、無脂乳固形分量が0.1〜3質量%、並びに脂肪分が0〜0.5質量%であり、
該飲料の糖度が10〜18、及びpHが3.0〜4.2である、
凍結用酸性乳性飲料。 - (A)乳、(B)大豆多糖類、(C)グアガム、タマリンドシードガム及びHMペクチンの少なくとも一つ、糖及び甘味料の少なくとも一つ、並びに水を混合して混合液を調製する工程と、
該混合液中の無脂乳固形分量を0.1〜3質量%、及び脂肪分を0〜0.5質量%、並びに前記混合液の糖度を10〜18、及びpHを3.0〜4.2に調整する工程と、を有する、
凍結用酸性乳性飲料の製造方法。 - 前記(C)グアガム、タマリンドシードガム及びHMペクチンの少なくとも一つの、飲料中の含有量を0.05〜0.35質量%に調整する、
請求項2に記載の凍結用酸性乳性飲料の製造方法。 - (A)乳、(B)大豆多糖類、(C)グアガム、タマリンドシードガム及びHMペクチンの少なくとも一つ、糖及び甘味料の少なくとも一つ、並びに水を混合して混合液を調製し、
該混合液中の無脂乳固形分量を0.1〜3質量%、及び脂肪分を0〜0.5質量%、並びに前記混合液の糖度を10〜18、及びpHを3.0〜4.2に調整することを特徴とする、
凍結用酸性乳性飲料の凍結時の硬さを緩和する方法。 - 前記(C)グアガム、タマリンドシードガム及びHMペクチンの少なくとも一つの、飲料中の含有量を0.05〜0.35質量%に調整する、
請求項4に記載の凍結用酸性乳性飲料の硬さを緩和する方法。 - (A)乳、(B)大豆多糖類、(C)グアガム、タマリンドシードガム及びHMペクチンの少なくとも一つ、糖及び甘味料の少なくとも一つ、並びに水を混合して混合液を調製し、
該混合液中の無脂乳固形分量を0.1〜3質量%、及び脂肪分を0〜0.5質量%、並びに前記混合液の糖度を10〜18、及びpHを3.0〜4.2に調整することを特徴とする、
凍結用酸性乳性飲料の融解速度を遅くする方法。 - 前記(C)グアガム、タマリンドシードガム及びHMペクチンの少なくとも一つの、飲料中の含有量を0.05〜0.35質量%に調整する、
請求項6に記載の凍結用酸性乳性飲料の融解速度を遅くする方法。
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