以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
(第1実施形態)
図1は、本実施形態における冷却装置10の全体構成を示す断面図である。図1に示す冷却装置10は、モータジェネレータ12を走行用の駆動力源として有するハイブリッド車両または電気自動車に設けられる。なお、図1の矢印DR1は、冷却装置10が車両に搭載された車両搭載状態での向きを示す。すなわち、図1の両端矢印DR1は車両上下方向DR1を示している。
図1に示すように、冷却装置10を有する車両では、モータジェネレータ12と、モータジェネレータ12からの動力を変速して駆動輪へ伝達する変速機14とがギヤケース16内に収容されている。そして、モータジェネレータ12および変速機14は、電力供給を受けて駆動輪を駆動する電動駆動ユニット18を構成している。この電動駆動ユニット18は、機械的に作動する機械的構成部181を含んでおり、その機械的構成部181としては例えば、モータジェネレータ12のロータを回転可能に支持するベアリング、および、変速機14を構成する遊星歯車装置141などが該当する。また、モータジェネレータ12を駆動するためのインバータを含むインバータユニット20が、ギヤケース16外に設けられている。
電動駆動ユニット18およびインバータユニット20は何れも発熱する装置である。そのため、冷却装置10は、第1の発熱体としての電動駆動ユニット18、および、第2の発熱体としてのインバータユニット20をそれぞれ冷却する。具体的に、冷却装置10はギヤケース16内の上部に設けられた冷却油出口161から冷却油30を噴霧または滴下し、これにより電動駆動ユニット18が冷却される。すなわち、冷却油30は、電動駆動ユニット18を冷却するための熱交換媒体すなわち第1の冷媒である。なお、この冷却油30は冷却機能のほか、潤滑液としての機能も備えており、冷却油30は電動駆動ユニット18の機械的構成部181に付着し或いは流れることによって、その機械的構成部181を潤滑する。
図1に示すように、冷却装置10は、ヒートパイプ22、冷却ファン24、熱交換部26、およびオイルポンプ28などを備えている。ヒートパイプ22は、作動流体221が封入された密閉容器で構成されている。この作動流体221は、第2の発熱体としてのインバータユニット20を冷却するための第2の冷媒である。ヒートパイプ22の作動流体221としては、例えば、フッ素系流体、水、アルコール、アンモニア等を例示することができる。
ヒートパイプ22は、車両上下方向DR1へ延びるように形成されており、作動流体221を気化させる蒸発部222と、気化した作動流体221を凝縮させる凝縮部223とを備えている。すなわち、ヒートパイプ22を構成する密閉容器のうちの一部が蒸発部222に含まれ、他部が凝縮部223に含まれている。なお、ヒートパイプ22の蒸発部222は、その内部で作動流体221が沸騰気化するので沸騰部と呼ばれてもよい。
ヒートパイプ22は、周知のヒートパイプと同様に、作動流体221の蒸発および凝縮を利用して熱を伝える。すなわち、ヒートパイプ22は、蒸発部222で熱を吸収し凝縮部223で熱を放散する。詳細には、ヒートパイプ22の蒸発部222が、作動流体221へ吸熱させることによりその作動流体221を沸騰蒸発させる。それと共に、ヒートパイプ22の凝縮部223が、その凝縮部223の外部を流れる外部流体である冷却風へ作動流体221から放熱させることにより、その作動流体221を凝縮させる。
ヒートパイプ22は、図1に示すように、凝縮部223が蒸発部222よりも上側に位置するように配設されている。また、ヒートパイプ22内の圧力は作動流体221の飽和蒸気圧になっており、ヒートパイプ22内の作動流体221は液相部分221aと気相部分221bとに分かれている。そのため、作動流体221の液相部分221aと気相部分221bとの境界を成す気液界面221cを境に、その上側が気相部分221bとなっており、下側が液相部分221aとなっている。
すなわち、作動流体221の気液界面221cは、作動流体221の蒸発および凝縮により、ヒートパイプ22の蒸発部222と凝縮部223との間で車両上下方向DR1に変動する。そして、その気液界面221cが作動流体221の蒸発および凝縮により変動しても、蒸発部222内は作動流体221の少なくとも液相部分221aが入っている状態に保たれ、凝縮部223内は作動流体221の少なくとも気相部分221bが入っている状態に保たれる。
冷却ファン24は電動の送風機である。冷却ファン24は、ヒートパイプ22の凝縮部223へ冷却風としての空気を吹き付け、それによりその凝縮部223を冷却する。すなわち、冷却ファン24は、凝縮部223の外部に外部流体である冷却風を流す外部流体流通装置であり、冷却風を流通させることによって凝縮部223の熱を冷却風へ放散させる。
熱交換部26は例えばコイル管で構成され、熱交換部26の内部には冷却油30が流通する。熱交換部26はヒートパイプ22内に配置されており、冷却油30を作動流体221と熱交換させる。詳細には、熱交換部26は、作動流体221の気液界面221cが作動流体221の蒸発および凝縮により変動しても、作動流体221の液相部分221aと気相部分221bとの両方にわたって設けられるように構成されている。
すなわち、熱交換部26の上側部分は作動流体221の気相部分221bに覆われている一方で、熱交換部26の下側部分は作動流体221の液相部分221aに覆われている。要するに、熱交換部26は、冷却油30を作動流体221のうちの液相部分221aと熱交換させる液相熱交換部261と、冷却油30を作動流体221のうちの気相部分221bと熱交換させる気相熱交換部262とを有している。従って、液相熱交換部261はヒートパイプ22の蒸発部222内に配置され、気相熱交換部262はヒートパイプ22の凝縮部223内に配置されている。また、液相熱交換部261および気相熱交換部262は1つのコイル管から成り一体的に構成されている。
オイルポンプ28は、電動駆動ユニット18と熱交換部26との間で冷却油30を循環させる駆動部である。具体的にオイルポンプ28は、電動機を備えた電動ポンプである。オイルポンプ28は、ギヤケース16の底部を構成し冷却油30が溜まる油溜り162から冷却油30を吸い込むと共に、その冷却油30を熱交換部26へ吐出する。
オイルポンプ28および熱交換部26は、冷却油30が循環する冷却油循環回路32の一部を構成している。その冷却油循環回路32では、オイルポンプ28はギヤケース16の油溜り162に溜まった冷却油30を吸い込むと共に吐出し、そのオイルポンプ28から吐出された冷却油30は液相熱交換部261へ流入する。液相熱交換部261へ流入した冷却油30は液相熱交換部261から気相熱交換部262へと流れ、次に気相熱交換部262からギヤケース16内へ流れ、ギヤケース16内の冷却油出口161から噴霧または滴下される。そして、ギヤケース16内に設けられた電動駆動ユニット18を冷却しつつギヤケース16の油溜り162に戻る。
インバータユニット20は通電により発熱するので、冷却装置10によって冷却されるように、ヒートパイプ22の蒸発部222において作動流体221の液相部分221aに浸漬されている。このような配置により、蒸発部222は、インバータユニット20と作動流体221の液相部分221aとを熱交換させ、それにより作動流体221を沸騰蒸発させると共にインバータユニット20を冷却する。なお、ヒートパイプ22内への作動流体221の封入量は、作動流体221の気液界面221cが作動流体221の蒸発により低下してもインバータユニット20の全体が作動流体221の液相部分221aに浸漬されるように定められている。
次に、電動駆動ユニット18およびインバータユニット20から発せられた熱の流れを図2および図3を用いて説明する。図2は、冷却装置10の熱抵抗モデルを示した図である。
図2のTmgはモータジェネレータ12の表面温度を示し、Tjは、インバータユニット20の筐体内に設けられた電気部品(例えばインバータ)の温度を示し、Tw_pcはインバータユニット20の筐体の表面温度を示し、Toil_avは、ギヤケース16内の冷却油30の平均温度を示し、Tairは、冷却ファン24によりヒートパイプ22の凝縮部223へ吹き付けられる冷却風の温度を示し、Tw_conは、冷却風が吹き付けられる凝縮部223の壁の温度を示している。また、Trefはヒートパイプ22の作動流体221の温度を示し、この作動流体221は飽和状態になっているので、液相部分221aの温度TLは気相部分221bの温度Tvと同じである。すなわち、「Tref=Tv=TL」となっている。なお、図2に示す各温度の測定箇所が図1に例示されている。また、冷却油30の平均温度Toil_avは、例えば冷却油出口161での冷却油30の温度Toilと油溜り162での冷却油30の温度Toilとの平均値として算出される。
また、図2のRoilはモータジェネレータ12の表面と冷却油30との間の熱抵抗(単位は例えばK/W)を示し、Rpcはインバータユニット20内の電気部品とインバータユニット20の筐体表面との間の熱抵抗を示し、Rboはインバータユニット20の筐体表面と作動流体221の液相部分221aとの間の熱抵抗を示し、Roilcは液相熱交換部261における冷却油30と作動流体221の液相部分221aとの間の熱抵抗を示し、Roilhは気相熱交換部262における冷却油30と作動流体221の気相部分221bとの間の熱抵抗を示し、Rairは冷却風と凝縮部223の壁との間の熱抵抗を示し、Rconは凝縮部223の壁と作動流体221の気相部分221bとの間の熱抵抗を示している。
冷却装置10の熱抵抗モデルは、上述したような各部の配置により図2に示したようになる。また、冷却油30と作動流体221との間において、熱が冷却油30から作動流体221へ伝わるときには、その冷却油30の熱の殆どが作動流体221の沸騰蒸発によって作動流体221へ伝わるので、図2では熱抵抗Roilc、Roilhのうち専ら熱抵抗Roilcを介して熱が伝わる。逆に、熱が作動流体221から冷却油30へ伝わるときには、その作動流体221の熱の殆どが作動流体221の凝縮によって冷却油30へ伝わるので、図2では熱抵抗Roilc、Roilhのうち専ら熱抵抗Roilhを介して熱が伝わる。
このような図2の熱抵抗モデルにおける熱の流れが図3に矢印AR1mg、AR1invとして示されている。図3は、図2の熱抵抗モデルに熱の流れを追記した図である。図3のQmgはモータジェネレータ12の発する熱を示し、矢印AR1mgはそのモータジェネレータ12からの熱Qmgの流れを示している。また、Qinvはインバータユニット20内の電気部品の発する熱を示し、矢印AR1invはそのインバータユニット20からの熱Qinvの流れを示している。なお、図3は、例えば車両の暖機が完了して車両が定常走行中であり、冷却ファン24が作動中であるファンON状態での熱の流れを示すものである。すなわち、図3の状態では、冷却ファン24がファンON状態であるので、図3の熱抵抗Rairは、凝縮部223の壁と冷却風とを熱交換させる上で十分に小さい値となっている。そして、熱交換部26(図1参照)へ流入する冷却油30の温度Toilは作動流体221の温度Trefよりも高くなっている(Toil>Tref)。
図3の矢印AR1mgに示すように、モータジェネレータ12からの熱Qmgは、先ず、モータジェネレータ12の表面から熱抵抗Roilを介してギヤケース16内の冷却油30へと伝わる。その冷却油30はオイルポンプ28によって熱交換部26へ送られ、その熱交換部26の中の液相熱交換部261にて冷却油30の熱は冷却油30から熱抵抗Roilcを介して作動流体221へと伝わる。すなわち、液相熱交換部261は、冷却油30を冷却するオイルクーラとして機能する。このとき作動流体221は沸騰蒸発し、気化した作動流体221は凝縮部223へ流れる。
次に、気化した作動流体221の熱すなわち作動流体221の気相部分221bの熱は、ヒートパイプ22の凝縮部223にて熱抵抗Rconを介して凝縮部223の壁へと伝わる。このとき作動流体221は凝縮し、凝縮した作動流体221はヒートパイプ22の内壁面を伝わって蒸発部222へと流れる。そして、その凝縮部223の壁の熱は、熱抵抗Rairを介して冷却ファン24が流す冷却風へと伝わる。すなわち冷却風へ放散される。
その一方で、インバータユニット20内の電気部品からの熱Qinvは、図3の矢印AR1invに示すように、先ず、その電気部品から熱抵抗Rpcを介してインバータユニット20の筐体表面へと伝わる。次に、そのインバータユニット20の筐体表面の熱は熱抵抗Rboを介して作動流体221へと伝わる。このとき作動流体221は沸騰蒸発し、気化した作動流体221は凝縮部223へ流れる。そして、気化した作動流体221の熱は、上記の矢印AR1mgと同様に冷却風へ放散される。
上述したように、本実施形態によれば、ヒートパイプ22の蒸発部222はインバータユニット20と作動流体221の液相部分221aとを熱交換させ、熱交換部26は、電動駆動ユニット18を冷却する冷却油30をヒートパイプ22の作動流体221のうちの少なくとも液相部分221aと熱交換させる。従って、電動駆動ユニット18およびインバータユニット20の両方を冷却装置10で冷却することができる。
そして、インバータユニット20はヒートパイプ22の蒸発部222で作動流体221の液相部分221aと熱交換されて冷却されるので、そのインバータユニット20を冷却するヒートパイプ22の作動流体221をポンプ等の駆動源で強制的に循環させる必要がない。すなわち、その作動流体221を循環させる駆動源が不要である。
例えば、特許文献1のモータ冷却システムではヒートパイプの姿勢を変化させる機械的機構が必要であるが、本実施形態の冷却装置10ではそのような機械的機構は必要ない。要するに、冷却装置10に含まれる機械的な駆動部分はオイルポンプ28および冷却ファン24のみであるので、冷却装置10に含まれる部品の点数を削減し装置全体の簡素化を図ることが容易である。
また、本実施形態によれば、冷却油30とヒートパイプ22の作動流体221との熱交換は、コイル管で構成された熱交換部26で行われる。従って、冷却油循環経路と冷却液循環回路とがヒートパイプで熱接続された特許文献1のモータ冷却システムと比較して、電動駆動ユニット18を冷却する流体(冷却油30)とインバータユニット20を冷却する流体(作動流体221)との間の熱の伝わりを良好にすることが可能である。
また、本実施形態によれば、熱交換部26は、冷却油30をヒートパイプ22の作動流体221のうちの液相部分221aと熱交換させる液相熱交換部261と、冷却油30をヒートパイプ22の作動流体221のうちの気相部分221bと熱交換させる気相熱交換部262とを有している。そして、その液相熱交換部261および気相熱交換部262は一体的に構成されている。従って、液相熱交換部261と気相熱交換部262とを別個に構成する場合と比較して、熱交換部26を簡素に構成することが可能である。
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態では、前述の第1実施形態と異なる点を主として説明する。また、前述の実施形態と同一または均等な部分については省略または簡略化して説明する。後述の第3実施形態でも同様である。
図4は、本実施形態における冷却装置10の全体構成を示す断面図であって、図1に相当する図である。図4に示すように、本実施形態の冷却装置10では、前述の第1実施形態とは異なり、液相熱交換部261および気相熱交換部262が互いに分離されて設けられている。
具体的には、液相熱交換部261および気相熱交換部262は各々別個のコイル管で構成されている。そして、液相熱交換部261の冷却油入口はオイルポンプ28の吐出口に接続され、液相熱交換部261の冷却油出口は接続配管263を介して気相熱交換部262の冷却油入口に接続されている。そして、気相熱交換部262の冷却油出口はギヤケース16内の冷却油出口161に接続されている。
また、液相熱交換部261は、ヒートパイプ22内において出来るだけ下方に配置されている。すなわち、液相熱交換部261は、車両上下方向DR1において凝縮部223から出来るだけ離れるように配置されている。その一方で、気相熱交換部262は、ヒートパイプ22内において出来るだけ上方に配置されている。すなわち、気相熱交換部262は、車両上下方向DR1において蒸発部222から出来るだけ離れるように配置されている。
本実施形態では、前述の第1実施形態と共通の構成から奏される効果を第1実施形態と同様に得ることができる。
また、本実施形態によれば、液相熱交換部261および気相熱交換部262が互いに分離されて設けられているので、液相熱交換部261および気相熱交換部262の各々を作動流体221の気液界面221cから車両上下方向DR1に離して配置することが容易である。すなわち、作動流体221の気液界面221cは作動流体221の蒸発および凝縮により変動するが、液相熱交換部261が作動流体221の液相部分221aに確実に覆われるように液相熱交換部261を配置し、且つ気相熱交換部262が作動流体221の気相部分221bに確実に覆われるように気相熱交換部262を配置することが容易である。
また、作動流体221の気液界面221cはヒートパイプ22内への作動流体221の封入量に応じて定まるが、液相熱交換部261と気相熱交換部262とを車両上下方向DR1に離して配置することで、その封入量の誤差を許容しやすくなる。
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について説明する。本実施形態では、前述の第2実施形態と異なる点を主として説明する。
図5は、本実施形態における冷却装置10の全体構成を示す断面図であって、図4に相当する図である。図5に示すように、本実施形態の冷却装置10は、前述の第2実施形態とは異なり、油温センサ40と、その油温センサ40の検出温度に基づいて冷却ファン24およびオイルポンプ28を制御する制御部42とを備えている。
油温センサ40は、ギヤケース16の油溜り162に設けられている。油温センサ40は、冷却油30の温度Toilすなわち冷却油温度Toilを検出する温度検出部である。
制御部42は、CPU、ROM、RAM等からなる周知のマイクロコンピュータとその周辺回路とから構成されており、ROM等に予め記憶されたコンピュータプログラムに従って種々の制御処理を実行する。
図5に示すように、制御部42には、例えば、油温センサ40が検出した冷却油温度Toilを示す検出信号が逐次入力される。また、制御部42からは、例えば、冷却ファン24のオンオフまたは回転速度を指示する信号が冷却ファン24へ逐次出力され、オイルポンプ28のオンオフまたは回転速度を指示する信号がオイルポンプ28へ逐次出力される。
制御部42は放熱制御手段421と駆動部制御手段422とを機能的に備えている。放熱制御手段421は、油温センサ40によって検出された冷却油温度Toilに基づいて冷却ファン24のオンオフおよび冷却ファン24の回転速度を制御し、それによりヒートパイプ22の凝縮部223からの放熱を制御する。すなわち、放熱制御手段421は、冷却ファン24を制御することにより、ヒートパイプ22の凝縮部223での作動流体221の冷却を制御する。
具体的には、冷却ファン24のオンオフを制御するための冷却油温度Toilの閾値としてファン動作閾値が予め設定されており、放熱制御手段421は、油温センサ40によって検出された冷却油温度Toilがファン動作閾値以上である場合に、冷却ファン24をオン(ON)にする。すなわち、冷却ファン24を回転させ冷却ファン24に送風させる。その一方で、放熱制御手段421は、冷却油温度Toilがファン動作閾値未満である場合には、冷却ファン24をオフ(OFF)にする。すなわち、冷却ファン24を停止させる。
要するに、冷却ファン24の送風量が大きいほど凝縮部223内の作動流体221から冷却風への放熱が促進されるので、放熱制御手段421は、冷却ファン24を制御することにより、冷却油温度Toilが高いほど、ヒートパイプ22の凝縮部223において作動流体221から冷却風へ放熱され易くする。ファン動作閾値は、冷却油30が高粘度とならないように冷却油30を昇温する必要がある場合には冷却ファン24がオフになるように予め実験的に定められている。例えば、このファン動作閾値の設定により、冷却ファン24は低温起動時の暖機運転の際にはオフになり、車両の定常走行中や夏季の高負荷時にはオンになる。
但し、放熱制御手段421は、インバータユニット20内の温度Tj(図1、2参照)を逐次取得しており、インバータユニット20内の温度Tjが所定のインバータ温度上限値を超えている場合には、冷却油温度Toilに関わらず冷却ファン24をオンにする。インバータユニット20の動作を保障する為である。そのインバータ温度上限値は、インバータユニット20内の温度Tjがインバータユニット20の動作可能な許容範囲の上限値を超えないように予め実験的に定められている。このインバータ温度上限値は上記のファン動作閾値よりも高い温度に設定されている。
駆動部制御手段422は、油温センサ40によって検出された冷却油温度Toilに基づいてオイルポンプ28の回転速度を制御する。具体的には、駆動部制御手段422は、冷却油温度Toilが高いほどオイルポンプ28の回転速度を大きくする。これにより、冷却油温度Toilが高いほど、冷却油循環回路32を循環する冷却油30の流量をオイルポンプ28に増大させる。このようにオイルポンプ28が制御される結果、冷却油30が高温であればオイルポンプ28の回転速度上昇により、熱交換部26における冷却油30と作動流体221との熱交換量が増加する。逆に、冷却油30が低温であればオイルポンプ28の回転速度低下により、冷却油出口161の温度が高くなる。
次に、電動駆動ユニット18およびインバータユニット20から発せられた熱の流れを説明する。図6は、冷却ファン24がオフであるときの熱の流れを図2の熱抵抗モデルに追記した図である。なお、冷却ファン24がオンであるときの熱の流れは前述の図3の矢印AR1mg、AR1invの通りであるので、その説明は省略する。
冷却装置10の熱抵抗モデルにおいて、冷却ファン24がオフであるときの熱の流れは図6の矢印AR2mg、AR2inv、AR3invのようになる。具体的に、冷却ファン24がオフである場合においてモータジェネレータ12からの熱Qmgは、図6の矢印AR2mgに示すように、モータジェネレータ12の表面から熱抵抗Roilを介してギヤケース16内の冷却油30へと伝わる。
その一方で、インバータユニット20内の電気部品からの熱Qinvは、図6の矢印AR2invに示すように、先ず、その電気部品から熱抵抗Rpcを介してインバータユニット20の筐体表面へと伝わる。次に、そのインバータユニット20の筐体表面の熱は熱抵抗Rboを介して作動流体221へと伝わる。このとき作動流体221は沸騰蒸発し、気化した作動流体221は凝縮部223へ流れる。
ここで、冷却ファン24がオフであるので図6の熱抵抗Rairは、冷却ファン24のオン時と比較して非常に大きくなっている。そのため、ヒートパイプ22の凝縮部223から外部へは殆ど放熱されず、インバータユニット20への通電後直ちに、ヒートパイプ22の作動流体221の温度Trefは冷却油30の平均温度Toil_avを上回る。詳細には、作動流体221の温度Trefは、熱交換部26(図1参照)へ流入する冷却油30の温度Toilを上回る。
その結果、気化した作動流体221の熱のうちの大部分は、凝縮部223内の気相熱交換部262にて熱抵抗Roilhを介して冷却油30へと伝わる。すなわち、気相熱交換部262は、冷却油30を加熱するオイルヒータとして機能する。このとき作動流体221は気相熱交換部262表面で凝縮し、凝縮した作動流体221は蒸発部222へと流れる。気相熱交換部262にて加熱された冷却油30はギヤケース16内へと流れる。
その一方で、気化した作動流体221の熱のうちの僅かな残部は、矢印AR3invのように、前述の矢印AR1mg(図3参照)と同様の経路を経て凝縮部223からヒートパイプ22の外部へと放散される。
このように、冷却ファン24がオフである場合には、作動流体221が、モータジェネレータ12の発熱に加えてインバータユニット20の発熱によっても加熱されるので、早期に電動駆動ユニット18の暖機を完了することができる。そして、低温起動時に冷却油30の粘度を早期に低下させることにより、電動駆動ユニット18における機械的なエネルギ損失を抑えることが可能である。
そして、モータジェネレータ12およびインバータユニット20の発熱が継続し、油温センサ40によって検出される冷却油温度Toilがファン動作閾値以上になると、冷却ファン24がオンに切り替えられる。冷却ファン24がオンになると、図6の熱抵抗Rairが冷却ファン24のオフ時と比較して格段に小さくなることにより、作動流体221の温度Trefは、熱交換部26(図1参照)へ流入する冷却油30の温度Toilを下回るようになる。その結果、前述の図3に示すような熱の流れになる。
本実施形態では、前述の第2実施形態と共通の構成から奏される効果を第2実施形態と同様に得ることができる。
また、本実施形態によれば、放熱制御手段421は、冷却ファン24を制御することにより、冷却油温度Toilが高いほど、ヒートパイプ22の凝縮部223において作動流体221から冷却風へ放熱され易くする。従って、インバータユニット20の発熱を利用して電動駆動ユニット18の暖機を促進することができると共に、適宜、電動駆動ユニット18およびインバータユニット20の冷却を行うことが可能である。
また、本実施形態によれば、駆動部制御手段422は、冷却油温度Toilが高いほど、冷却油循環回路32を循環する冷却油30の流量をオイルポンプ28に増大させる。従って、冷却油30を冷却する必要性に応じて、冷却油30とヒートパイプ22の作動流体221との間の熱交換量を調節することができる。
なお、本実施形態は前述の第2実施形態を基にした実施形態であるが、本実施形態を前述の第1実施形態と組み合わせることも可能である。
(他の実施形態)
(1)上述の第1および第2実施形態において、熱交換部26は液相熱交換部261と気相熱交換部262とを備えているが、気相熱交換部262を備えていなくても差し支えない。言い換えれば、熱交換部26は、冷却油30を作動流体221のうちの少なくとも液相部分221aと熱交換させる熱交換器であればよい。
(2)上述の各実施形態において、電動駆動ユニット18は冷却油30によって冷却されるが、その電動駆動ユニット18を冷却する熱交換媒体は油でなくても差し支えない。
(3)上述の各実施形態において、冷却装置10が冷却する第1の発熱体は電動駆動ユニット18であり、第2の発熱体はインバータユニット20であるが、冷却装置10が冷却する対象は電動駆動ユニット18およびインバータユニット20以外の発熱体であっても差し支えない。また、第1の発熱体は機械的構成部181を備える必要もない。
(4)上述の各実施形態において、ヒートパイプ22の作動流体221は混合物ではないが、混合物であっても差し支えない。
(5)上述の第3実施形態において、放熱制御手段421は、冷却油温度Toilが高いほどファン動作閾値を境に段階的に、冷却ファン24の送風量を増大するが、冷却油温度Toilが高いほど連続的に冷却ファン24の送風量を増大しても差し支えない。
(6)上述の第1実施形態において、インバータユニット20は、ヒートパイプ22の蒸発部222内に設けられているが、図7に示すように、ヒートパイプ22外に設けられていても差し支えない。この図7は、第1実施形態の第1の変形例において冷却装置10の全体構成を示す断面図であって、図1に相当する図である。図7の冷却装置10では、インバータユニット20は、蒸発部222を構成する壁の外側に密着するように固定されており、その壁を介して作動流体221の液相部分221aと熱交換させられる。
(7)上述の第1実施形態において、熱交換部26はヒートパイプ22内に配置されているが、図8に示すように、ヒートパイプ22外に配置されていても差し支えない。この図8は、第1実施形態の第2の変形例において冷却装置10の全体構成を示す断面図であって、図1に相当する図である。
図8の冷却装置10では、熱交換部26はヒートパイプ22の壁の外側に密着するように固定されており、作動流体221の気液界面221cが作動流体221の蒸発および凝縮により変動しても、蒸発部222と凝縮部223との両方にわたって設けられるように構成されている。そして、熱交換部26のうち蒸発部222の壁に固定されている部分が液相熱交換部261に該当し、凝縮部223の壁に固定されている部分が気相熱交換部262に該当する。
(8)上述の第1実施形態において、熱交換部26は例えばコイル管で構成されているが、図9および図10に示すように、コイル管以外のもので構成されていても差し支えない。この図9は、第1実施形態の第3の変形例において冷却装置10の全体構成を示す断面図であって、図1に相当する図である。また、図10は、図9のX−X断面図である。
図9および図10に示す冷却装置10では、熱交換部26は周知の車両用ラジエータと同様の構造を備えている。すなわち、熱交換部26は、積層配置された複数本の熱交換チューブ26aと、複数本の熱交換チューブ26aの一端が接続されオイルポンプ28から冷却油30が流入する第1ヘッダタンク26bと、複数本の熱交換チューブ26aの他端が接続され冷却油出口161へと冷却油30を流出させる第2ヘッダタンク26cとから構成されている。
また、ヒートパイプ22の凝縮部223には、冷却ファン24からの冷却風が通り抜けるように貫通したスリット形状の通風路223aが複数形成されている。そして、複数の通風路223a内にはそれぞれ、熱交換を促進するために波状に成形されたコルゲートフィン223bが設けられている。
(9)上述の第3実施形態において、冷却油循環回路32では、液相熱交換部261と気相熱交換部262とが直列的に接続され、冷却油30が液相熱交換部261と気相熱交換部262との両方に流れるようになっているが、図11に示すように、液相熱交換部261と気相熱交換部262との一方に択一的に流れるようになっていても差し支えない。この図11は、第3実施形態の変形例において冷却装置10の全体構成を示す断面図であって、図5に相当する図である。図11では、簡潔な図示とするために、油温センサ40および制御部42(図5参照)の図示が省略されている。
図11に示す変形例では、冷却装置10は、冷却油30の流通経路を切り替える切替弁44を備えている。液相熱交換部261および気相熱交換部262は冷却油循環回路32において互いに並列に設けられている。そして、切替弁44は、オイルポンプ28の吐出口と液相熱交換部261の冷却油入口および気相熱交換部262の冷却油入口との間に接続されている。
切替弁44は、オイルポンプ28の吐出口を液相熱交換部261の冷却油入口へ接続する一方で気相熱交換部262の冷却油入口を閉塞する第1位置と、オイルポンプ28の吐出口を気相熱交換部262の冷却油入口へ接続する一方で液相熱交換部261の冷却油入口を閉塞する第2位置とに択一的に切り替えられる。この切替弁44は電動式であり、放熱制御手段421(図5参照)によって切り替えられる。具体的には、切替弁44は、冷却ファン24がオンにされている場合には上記第1位置へ切り替えられ、冷却ファン24がオフにされている場合には上記第2位置へ切り替えられる。
(10)上述の各実施形態において、ヒートパイプ22の凝縮部223は冷却ファン24によって送風される冷却風によって冷却されるが、凝縮部223はそのように空冷である必要はない。例えば、冷却液が循環する冷却液配管が凝縮部223の外側に設けられ、凝縮部223はその冷却液によって冷却されても差し支えない。
(11)上述の各実施形態において、ヒートパイプ22の凝縮部223へ吹き付けられる冷却風は、冷却ファン24によって送風されるが、冷却ファン24による冷却風に加えて又はそれに替えて、車両の前進走行によって生じる走行風がその冷却風として凝縮部223へ吹き付けられても差し支えない。但し、第3実施形態では、冷却ファン24が冷却油温度Toilに基づいてオンオフされるので、第3実施形態の冷却装置10にて走行風が上記冷却風として用いられるのであれば、走行風の流通と遮断とを切り替える送風切替装置が設けられる。そして、その送風切替装置は、冷却ファン24のオフ時には走行風を遮断し、冷却ファン24のオン時には走行風をヒートパイプ22の凝縮部223へと流す。
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能である。また、上記各実施形態は、互いに無関係なものではなく、組み合わせが明らかに不可な場合を除き、適宜組み合わせが可能である。また、上記各実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。また、上記各実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではない。また、上記各実施形態において、構成要素等の材質、形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の材質、形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その材質、形状、位置関係等に限定されるものではない。