JP6383792B2 - 金型用離型剤の膜厚計測方法 - Google Patents

金型用離型剤の膜厚計測方法 Download PDF

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Description

本発明は、鋳造、ダイカスト、鍛造或いはプレス加工等の金属塑性加工に用いる金型用離型剤及び熱可塑性樹脂の射出成形に用いる樹脂成形用離型剤(「潤滑剤」、「剥離剤」とも言う)の膜厚計測方法、並びにその膜厚計測方法に用いる塗布液に関する。
周知のごとく、鋳造とは、高温で熱し液体となった金属類(以降、「溶湯」と称す)を、型に流し込み、冷え固まった金属類(以降、「ワーク」と称す)を取り出す金属加工法である。ダイカストは、この鋳造のうち、特殊な鉄鋼材料でできた金型に対して高圧力で溶湯を注入し、迅速に冷却し、凝固したワークを取り出す金属加工法である。鍛造やプレス加工とは、金属材料(被鍛材)を圧縮し、変形させる金属加工法である。また、射出成形とは、鋳造などと同様に、加熱溶融させた樹脂等を、型内に注入し冷え固まった樹脂等を取りだす樹脂加工法である。
これらの金属加工法及び樹脂加工法では、成形するために、金型が用いられている。
離型剤、潤滑剤及び剥離剤等(以降、「離型剤」と称す)が塗布されていない状態では、金属類或いは樹脂類と金型との間で焼付き、カジリ、あるいは転写性の不良を起こすため、これら焼付き等を防止するために、加工前に、金型に離型剤を塗布し、乾燥皮膜を形成させる。
金型に付着した離型剤の皮膜の膜厚が薄い場合には、焼付き等の原因となる。また、膜厚が厚い場合には、寸法精度のばらつきや、製品へ離型剤の成分が堆積するため、製品の外観不良の原因となる。また、金型の皮膜形成が不適切であると、次の成形時の転写性に影響し、成形品の欠肉が起こる。
そのため、皮膜の膜厚を精度高く測定する必要があり、金型に塗布する離型剤の量は、適切な膜厚になるように調整する必要がある。特に、金属加工であるダイカストで用いる油性離型剤では、少量塗布化が進んでおり、上述の不良原因を防止するために、例えば0.5〜5μmの範囲で、高精度に測定する必要がある。
そこで、赤外線画像装置と2色放射温度計とを用いて放射率を求め、膜厚を検出する膜厚測定方法が提案されている(特許文献1)。この方法では、2色の放射温度計で温度を測定することで、放射率の誤差を補正して、膜厚の検出精度を向上させている。しかし、計測機器が多く煩雑であり、測定ポイントを複数の計測機器で測定するため、測定するのに長時間必要となる。また、金型は赤外線放射率が低く、金型の表面の粗さにより精度が落ちるため、より高い精度のものが求められている。
また、最小限の塗布膜の破壊によって塗布膜の厚さを測定できる膜厚測定装置が提案されている(特許文献2)。この方法では、測定刃を塗布膜内に侵入させた状態で、塗布膜の表面にレーザー光を照射して、塗布膜の表面からの反射光を検出することによって得られた値を用いて、塗布膜の厚さを測定している。しかし、塗布膜が薄い場合には対応していないため、より精度が高いものが必要である。
また、連続鋳造機の鋳型内の油離型剤の残油量を紫外線照射による蛍光により検出し、油塗布量を決めることを特徴とする鋳型の油離型剤の塗布方法(特許文献3)が提案されている。また、金型内面に形成した離型剤を目視で確認できるダイカスト用離型剤(特許文献4)が提案されている。また、蛍光物質を含有する離型剤が塗布された金型のキャビティ形成面に紫外線を照射し、前記キャビティ形成面にて発される可視光の発光強度に基づいて離型剤塗布状態を検出して、離型剤の分布や塗布膜などの塗布状態の良否を判定すること(特許文献5)が提案されている。また、金型塗布面の特定領域について蛍光強度を連続的に測定して強度分布を得る強度分布測定ステップを有し、この強度分布に基づき特定領域における離型剤の付着状態を指標する指標値を特定する特定ステップを有するダイカスト用離型剤の付着評価方法(特許文献6)が提案されている。
これら特許文献3〜6は、紫外線を照射することによる蛍光により、残油量や離型剤の付着状態を確認している。しかし、これらは、蛍光の濃さにより感覚的に適切な膜厚か否かを判断するしかなく、数μm単位での塗布膜の膜厚を測定することはできなかった。
これらの中でも特許文献5の技術では、離型剤塗布量と可視光の発光強度との関係を示す測定ゲージを用いているが、測定ゲージを用いて、目視にて数μmの差を判別することは困難である。
また、特許文献6の技術では、具体的な離型剤の付着量等を測定することなく、蛍光強度及び蛍光強度の分布に基づくベース値(積分平均値)に基づいて、離型剤の付着状態を直接評価している。金型温度が一定であれば、蛍光強度或いはその分布から付着状態を評価することが可能である。しかし、蛍光剤の蛍光強度は、温度によって熱減衰し、蛍光強度に大きな差が生じる。実際に用いる金型では、使用する装置の大きさ及び金型の測定場所等により温度差があることが想定される。塗布膜の厚さの測定精度が悪くなってしまうため、焼付き等や堆積等による製品の外観不良を起こすことがあり、さらに、膜厚の測定精度を改善する必要があった。
被膜の温度及び膜厚を測定する方法としては、照射光と異なった第1帯域光を放射する第1の蛍光物質と、放射光の光を吸収し第2帯域光を放射する第2の蛍光物質とを混合した液であり、第1、第2蛍光物質は、温度に対する消光割合が異なった値を有している。この第1帯域の強度から膜厚を算出し、2つの放射光の計測強度比から被膜の温度を算出する方法が提案されている(特許文献7)。
しかし、特許文献7のように、2種類の蛍光剤を用いる場合には、蛍光剤及びセンサー等が複数必要となるためコストアップにつながる。また、少量塗布を行っている油性離型剤では、さらに膜厚の測定精度を高める必要がある。また、第1及び第2の蛍光剤の温度における蛍光強度の変化量の差が小さくなるように配合量を細かく設定する必要があり、配合組成を決定するために膨大な試験が必要となってしまう。
金型に用いる離型剤は、上記特許文献7の技術で用いられる混合液或いはエンジン用潤滑剤と異なり、開放空間で乾燥皮膜を形成させる。そのため、温度測定が比較的容易であり、コストを抑えつつ、より簡易的に乾燥皮膜の膜厚を測定する方法が求められていた。
特開2005−188994号公報 特開2012−73094号公報 特開昭61−092767号公報 特開2006−068751号公報 特開2007−069217号公報 特開2014−057972号公報 特開平9−311019号公報
本発明は上記事情を鑑みてなされたものであり、薄い皮膜に対しても、高精度でなおかつ簡易的に膜厚を測定することができる金型用離型剤の膜厚計測方法、この膜厚計測方法に用いる塗布液及びこの膜厚計測方法に用いる蛍光強度測定機を提供することである。
本発明に係る金型用離型剤の膜厚計測方法は、蛍光剤と油性離型剤とからなる塗布液を金型に塗布することにより皮膜を形成させる皮膜形成ステップと、前記金型上に形成された前記皮膜に対して、励起光を照射して蛍光を発光させる励起光照射ステップと、前記皮膜が発する蛍光の蛍光強度を検出する蛍光強度検出ステップと、前記蛍光強度から、前記皮膜の膜厚を算出する膜厚算出ステップとを含み、前記膜厚算出ステップは検量線作成ステップを含み、前記検量線作成ステップは、互いに膜厚が異なっている複数の測定点を有した検量線作成用皮膜を用意するステップ、前記複数の測定点の膜厚をレーザー顕微鏡で測定するステップ、前記複数の測定点の蛍光強度を測定するステップ、及び前記複数の測定点の膜厚と前記複数の測定点の蛍光強度とから検量線を作成するステップを含み、前記皮膜の膜厚は、前記検量線に基づいて算出される金型用離型剤の膜厚計測方法である。
また、本願発明に係る金型塗布用塗布液は、前記膜厚計測方法における金型塗布用塗布液であって、前記塗布液は、前記蛍光剤の配合量が前記塗布液に対して0.01〜5質量%である
本発明によれば、例えば、0.5〜20μmといった薄い皮膜に対しても、膜厚を測定することができ、また従来よりも簡易的かつ精度の高い金型用離型剤の膜厚計測方法及びこの膜厚計測方法に用いる塗布液を提供することが可能となる。
図1は、蛍光強度測定機の概略図である。 図2は、蛍光強度と膜厚の相関を示す検量線のグラフである。 図3は、蛍光強度の温度補正を行うための温度による蛍光膜厚定数を示すグラフである。
以下、蛍光発光法の測定原理について説明し、その後、本発明を詳細に説明する。
1)蛍光発光法の測定原理
蛍光とは、X線、紫外線、或いは可視光線等の入射光が照射された物質が、入射光のエネルギーを吸収することで励起し、その物質が基底状態に戻る際、発光する光のことである。また蛍光発光法(レーザー誘起蛍光法(LIF, Laser Induced Fluorescence)とも言う)とは、この蛍光を観測することによって、粒子の密度やその空間分布を測定する計測法である。この蛍光発光法では、入射光(以降、「励起光」と称す)の波長と強度を一定にした場合、放出される蛍光強度は、蛍光剤の量に正比例する。
鋭意研究の結果、これら蛍光に関する原理を活用し、金型に塗布された離型剤の乾燥皮膜の膜厚を、高精度でなおかつ簡易的に測定することが可能となった。
以下、本発明の金型用離型剤の膜厚計測方法について、詳細に説明する。
2)金型用離型剤の膜厚計測方法
本発明の金型用離型剤の膜厚計測方法は、(I)蛍光剤と離型剤とを含む塗布液を金型に塗布することにより皮膜を形成させる皮膜形成ステップと、(II)金型上に形成された皮膜に対して、所定波長の励起光を照射して蛍光を発光させる励起光照射ステップと、(III)励起光が発光させる蛍光の蛍光強度を検出する蛍光強度検出ステップと、(IV)蛍光強度から、皮膜の膜厚を算出する膜厚算出ステップとを含む。
以下、各ステップについて詳細に説明する。
(I)皮膜形成ステップ
皮膜(検体)を形成する方法としては、スプレー塗布を用いるのが一般的であり、これ以外にも、ローラー塗り、刷毛塗り等を用いて皮膜を形成する方法がある。
また、金型が開放空間に設置されている必要がある。金型が開放空間に設置されていることにより、主成分である石油系炭化水素溶剤、基油、有機溶剤、水などが揮発し、乾燥する。これにより、強固な乾燥皮膜が形成する。一方、密閉空間である自動車の内燃機関内の場合、そこに用いられているエンジンオイルは、揮発しにくいため、強固な乾燥皮膜が形成されない。
鋳造、ダイカスト、鍛造及びプレス加工等の金属成形法の場合、金型温度は高く、例えば、アルミダイカストでは150℃〜400℃になることがある。ライデンフロスト現象により突沸を起こすため、水溶性離型剤は付着しにくい。そのため、冷却効果の高い水で水溶性離型剤を希釈し、多量にスプレー塗布する。これにより、水溶性離型剤を金型に付着させ、皮膜を形成することが可能となる。
油性の離型剤では、ライデンフロスト温度が高いので、水溶性の離型剤と比較して突沸を起こしにくい。そのため、少量のスプレー塗布でも油性離型剤を金型に付着させ、皮膜を形成することが可能である。
また、熱可塑性樹脂等の樹脂成形法の場合には、金型温度は、15℃〜100℃程度である。塗布方法として、これら熱可塑性樹脂及び熱可塑性ゴムの離型剤が溶剤希釈タイプ、エマルションタイプ、エアゾールタイプの離型剤であれば、金型にスプレー塗布して皮膜を形成するのが一般的である。これ以外にも、刷毛塗り、浸漬法、焼き付け法、またはプライマーを用いて前処理をし、乾燥する方法などの皮膜形成方法がある。
これらの塗布方法を用いることにより、金型に乾燥皮膜(検体)を形成することが可能となる。
(II)励起光照射ステップ
発光体は、X線、紫外線、或いは可視光線等の励起光を放射する。発光体から放射された励起光は、反射部材で反射され、検体に照射される。
(III)蛍光強度検出ステップ
検体に励起光が照射されることにより、検体は蛍光を放射する。蛍光は、蛍光強度検出部材に照射される。蛍光強度検出部材は、受光した蛍光の強度により蛍光強度を検出する。
(IV)膜厚算出ステップ
膜厚算出ステップは、例えば、以下の第1の膜厚算出ステップ又は第2の膜厚算出ステップであることが好ましい。以下、第1の膜厚算出ステップ及び第2の膜厚算出ステップについて説明する。
(IV−1)第1の膜厚算出ステップ
励起光の波長と強度を一定にした場合、励起光を照射すると、蛍光剤の蛍光強度は、蛍光剤の総量と正比例する。またこの蛍光強度と、蛍光剤総量とは、所定温度以下であれば、高い精度で相関関係を有する。そのため、乾燥皮膜(検体)から放出される蛍光の蛍光強度と、レーザー顕微鏡で測定した実際の乾燥皮膜の膜厚とを用いて、膜厚算出用検量線(相関式)を作成することで、簡易的かつ精度の高い金型用離型剤の膜厚計測方法を実現することが可能となる。
所定量の蛍光剤と離型剤とを含む塗布液を調製し、金型にこの塗布液を塗布することで、乾燥皮膜を形成する。金型に形成された乾燥皮膜の蛍光強度を、蛍光強度測定機を用いて測定する。また同様に、金型に形成された乾燥皮膜の膜厚を、レーザー顕微鏡(図示なし)を用いて測定する。これら蛍光強度と膜厚の数値をもとに、膜厚算出用検量線(相関式)を作成する。この膜厚算出用検量線(相関式)を用いることにより、実際の金型で測定した蛍光強度から、膜厚を算出することが可能となる。
第1の膜厚算出ステップは、上記によって算出された膜厚を、例えば、自動的に蛍光強度測定機の表示板に表示する膜厚表示ステップを備えていてもよい。
(IV−2)第2の膜厚算出ステップ
蛍光剤の蛍光強度は温度により熱減衰するため、高温の金型での蛍光強度は、実際の数値よりも低くなる傾向がある。そのため、上記第1の膜厚算出ステップの膜厚算出方法で用いる膜厚算出用検量線(1次関数)の温度による傾きの変化を補正することで、温度による計測誤差をなくし、簡易的かつ精度の高い金型用離型剤の膜厚計測方法が可能となる。そこで、膜厚算出ステップは、上記の膜厚算出方法で用いる膜厚算出用検量線(相関式)を温度補正することが好ましい。したがって、膜厚算出ステップは、(iv−1)温度補正用検量線作成ステップを備えることが好ましい。また、膜厚算出ステップは、さらに、(iv−2)温度測定ステップ、(iv−3)温度入力ステップ、(iv−4)蛍光膜厚定数算出ステップ、及び(iv−5)膜厚表示ステップを備えていてもよい。
以下、上記ステップ(iv−1)〜(iv−5)について、各々説明する。
(iv−1)温度補正用検量線作成ステップ
温度補正用検量線を作成する際には、より多く測定するのが好ましい、検体を多くすることで、より精度を高めることが可能となる。蛍光強度の温度補正用検量線(相関式)は、上記膜厚算出ステップ(IV−1)の検量線作成方法に従い、複数の温度で膜厚算出用検量線(相関式)を作成することにより得られる。蛍光強度の温度補正用検量線(相関式)は、具体的には、以下の方法により作成する。
蛍光剤と離型剤とを含む塗布液をテストピースに塗布し、各温度における検体数を複数枚、例えば、3〜10枚用意する。それぞれが異なる膜厚となるように、段階的に塗布液を塗布する。通常使用されている時の金型温度を中心に、例えば、プラスマイナス40〜100℃の範囲で測定し、例えば、5〜10℃間隔で、蛍光剤の熱減衰による消光傾向を把握する。
異なる温度での蛍光膜厚定数を基に、温度補正用検量線或いは相関式を作成する。このような温度補正用検量線(相関式)を用いることにより、幅広い温度域での膜厚算出が可能となり、温度による誤差を低減し、高精度に膜厚を計測することが可能となる。
温度補正用検量線(相関式)は、簡単な算術で蛍光膜厚定数を算出することが可能である。
(iv−2)温度測定ステップ
金型の温度を測定する。
(iv−3)温度入力ステップ
上記温度測定ステップで測定された金型の温度を、例えば、蛍光強度測定機に入力する。
(iv−4)蛍光膜厚定数算出ステップ
蛍光膜厚定数は、上記温度入力ステップで入力された金型の測定温度と、上記温度補正用検量線作成ステップで得られた温度補正用検量線(相関式)とから算出される。算出された蛍光膜厚定数により、実際に測定した金型の温度と検体の蛍光強度から、高精度に膜厚を算出することが可能となる。
(iv−5)膜厚表示ステップ
上記第1の膜厚算出ステップ(IV−1)で作成された膜厚算出用検量線(相関式)と、上記蛍光膜厚定数算出ステップ(iv−3)で算出された蛍光膜厚定数によって算出された膜厚を、例えば、自動的に蛍光強度測定機の表示板に表示する。
以下、本発明の金型用離型剤の膜厚計測方法に用いられる蛍光強度測定機、塗布液、蛍光剤及び離型剤について、詳細に説明する。
3)蛍光強度測定機
図1は、蛍光強度測定機の概略図である。蛍光強度測定機1は、LEDライト2、励起フィルター3、ダイクロイックミラー4、蛍光(受光)センサー5及び蛍光フィルター6を備えている。
本発明の金型用離型剤の蛍光強度測定方法に用いられる蛍光強度測定機が備える発光体には、例えば、LEDライト2が用いられている。また、反射部材には、例えば、ダイロックミラー4が用いられている。蛍光強度検出部材には、蛍光センサー5が用いられている。
励起フィルター3は、LEDライト2から発せられた励起光Eの経路と交差する位置に配置されている。ダイロックミラー4は、LEDライト2から発せられた励起光Eの経路と検体Sから発せられた蛍光Fの経路の双方と交差する位置に配置されている。蛍光センサー5及び蛍光フィルター6は、ダイロックミラー4を透過した蛍光Fの経路と交差する位置に配置され、ダイロックミラー4と近い側から蛍光フィルター6、蛍光センサー5の順に並べられている。
以下、各部材について、説明する。
LEDライト2から発せられる励起光Eは、可視光線、近紫外線または紫外線に分類される範囲のスペクトルが好ましい。つまり、励起光Eの波長としては、200nm〜850nmの範囲が好ましい。この範囲であれば、後述する蛍光剤が、この励起光Eを吸収して励起状態になり、基底状態に戻る際、蛍光を放射するからである。この範囲に属するライトであれば、水銀ランプ、ネオンランプ、発光ダイオード(以後、「LED」(Light Emitting Diode)と言う)等の使用が可能である。感度が非常に高く、外部から入射する光がある場合でも安定した測定が可能となるので、LEDライト2は、波長が310nm〜365nmである紫外線LEDであることが、最も好ましい。
ダイクロイックミラー4は、光学素材を用いた鏡であり、特定の波長の光を反射し、それ以外の光を透過する。本発明では、特定波長の励起光Eを反射し、蛍光Fは透過する。
励起フィルター3は、LEDライト2から発せられた励起光Eから、蛍光剤の励起に必要な波長の光を抽出するために用いられる。
蛍光フィルター6は、検体Sに照射されることで発光した蛍光Fを、外部からの不要な光や、検体Sからの散乱光などから分離するために用いられる。
これらダイクロイックミラー4、励起フィルター3及び蛍光フィルター6を用いることにより、より高精度な蛍光強度の測定が可能となる。
蛍光センサー5は、検体Sに照射されることで発光し、ダイクロイックミラー4と蛍光フィルター6を通じて処理された蛍光Fを受光し、その蛍光強度を表示板(図示なし)に示す。蛍光センサー5は、可視光線を受光し、測定するものが好ましく、特に400〜650nmの範囲のスペクトルを測定するものが好ましい。
蛍光Fは、400〜650nmの範囲の波長を有することが好ましい。
検体Sは、蛍光剤と離型剤とを含む塗布液を乾燥させることにより形成された乾燥皮膜であることが好ましい。蛍光剤と離型剤とを含む塗布液についての詳細は、後述する。
本発明の蛍光強度測定機は、温度入力ステップ(iv−3)ための温度入力手段を備えていてもよい。また、本発明の蛍光強度測定機は、蛍光膜厚定数算出ステップ(iv−4)のための蛍光膜厚定数算出手段を備えていてもよい。
また、本発明の蛍光強度測定機は、温度測定ステップ(iv−2)のために、蛍光強度測定機が金型と接触して金型の温度を測定する金型温度測定手段を備えていてもよい。また、本発明の蛍光強度測定機は、蛍光膜厚定数算出ステップ(iv−4)のために、この測定された金型の温度に基づき蛍光膜厚定数を算出する蛍光膜厚定数算出手段を備えていてもよい。そして、金型温度測定手段による金型温度の測定と同時に、測定された金型温度と蛍光膜厚定数算出手段により算出された蛍光膜厚定数とを用いて、金型に形成された検体(乾燥皮膜)の膜厚を算出する膜厚算出手段を備えていてもよい。
以上に説明した蛍光強度測定機を用いて行なう励起光照射ステップ(II)、蛍光強度測定ステップ(III)を、以下に説明する。
LEDライト2から発せられる励起光Eは、励起光フィルター3を通じ、ダイクロイックミラー4で反射され、検体Sに照射されることにより、励起光照射ステップ(II)が行われる。
検体Sに励起光Eが照射されることで発光した蛍光Fは、ダイクロイックミラー4と蛍光フィルター6を通じて蛍光センサー5に受光される。この蛍光センサー5が受けた蛍光の強度により、蛍光強度を検出することにより、蛍光強度検出ステップ(III)が行われる。
4)塗布液
本発明の金型用離型剤の膜厚測定方法に使用される塗布液は、蛍光剤と離型剤とを含んでいる。また、本発明の金型用離型剤の膜厚測定方法に使用される塗布液は、さらに、希釈剤を含んでいてもよい。以下、蛍光剤、離型剤及び希釈剤について、説明する。
5)蛍光剤
上記蛍光強度測定機1を用いて、蛍光の強度を測定するには、乾燥皮膜(検体S)を形成する塗布液に蛍光剤を配合する必要がある。蛍光剤は、蛍光強度測定機の仕様によって調製する必要がある。
本発明で使用する蛍光剤の代表的なものとしては、ベンゾオキサゾール系蛍光剤、フルオレセイン系蛍光剤、ローダミン系蛍光剤、アクリジン系蛍光剤、クマリン系蛍光剤、及び無機系蛍光剤などが挙げられる。相溶性や耐熱性等考慮し、これらの蛍光剤を適宜配合することが可能である。また、蛍光剤は、種類によって耐熱性に違いがある。金型に使用する場合には、石油系炭化水素溶剤、基油、有機溶剤、又は水などを熱により揮発させ、強固な乾燥皮膜を形成させるため、蛍光剤は、高温耐熱性の高い蛍光剤が好ましい。また、塗布液が、高温となる金属加工金型用の離型剤を含む場合には、蛍光剤の融点が150℃以上のものがさらに好ましい。
本発明で使用する蛍光剤としては、紫外線を励起光として照射することにより可視光線に近い波長の光を放出するものであることが好ましい。また、離型剤等を含む塗布液が金型に付着した際の耐熱性、離型剤等との溶解性、蛍光剤の発色性の観点から、ベンゾオキサゾール系蛍光剤がより好ましく、2,2’−(2,5−チオフェンジイル)-ビス[5−(1,1−ジメチルエチル)]ベンゾオキサゾールが最も好ましい。
本発明で使用する蛍光剤は、1種又は2種以上の蛍光剤を混合して使用してもよい。
蛍光剤の配合量としては、塗布液に対して、0.01〜5質量%の範囲が好ましい。蛍光剤の配合量が多すぎる場合には、溶解性が不十分になる可能性があり、また、濃度消光となる可能性が高く、また蛍光強度が強すぎて、誤差が生じやすくなる可能性がある。また、蛍光剤の配合量が少なすぎる場合には、蛍光強度が弱すぎて、適切な膜厚が測定できなくなる可能性があることが、理由として挙げられる。
0.5μm〜20μmの薄膜を測定するのであれば、塗布液に対して、0.01〜2質量%の蛍光剤を配合することが、好ましい。
蛍光剤は、一般に用いられている鋳造用油性離型剤、鋳造用水溶性離型剤、ダイカスト用金型油性離型剤、ダイカスト用金型水溶性離型剤、鍛造用油性潤滑油、鍛造用水溶性潤滑剤、プレス加工油、プラスチック用離型剤等に配合することが可能である。
一部の離型剤には、例えば、水で希釈して使用するものがある。希釈することにより単位塗布量当たりの蛍光剤量が少なくなり、適切な膜厚を測定することができなくなる可能性がある。また、例えば、基油や溶剤で希釈して使用する離型剤もある。よって、基油、溶剤及び水の群から選ばれる1種以上の希釈剤を用いて希釈する場合には、離型剤と蛍光剤と希釈剤とを含む塗布液に対して0.01〜5質量%の蛍光剤を含むことが好ましい。塗布液は、希釈する必要がない油性の離型剤と蛍光剤とを配合することがより好ましい。
6)離型剤
金型に蛍光剤と離型剤とを含む塗布液を塗布し、この塗布液が乾燥することによって、金型に強固な乾燥皮膜(図1の検体S)が形成される。金属加工用離型剤としての油性離型剤と、水溶性離型剤とに分け、併せて熱可塑性樹脂用及び熱可塑性ゴム用の離型剤について説明する。
6−1)油性の離型剤
油性及び溶剤系離型剤としては、石油系炭化水素の溶剤又は基油を主成分とし、シリコーン、鉱物油、植物油等を配合するものであり、必要に応じて、その他の潤滑成分を添加している。
ダイカストや鋳造に用いる油性離型剤や鍛造に用いる油性潤滑剤として、以下に、より詳細に記載する。
引火性と乾燥性の観点から、油性離型剤の引火点は70℃〜170℃の範囲であることが好ましい。また、スプレー性の観点から、油性離型剤の40℃における動粘度は、2〜1000mm/sの範囲にするのが好ましい。さらに、スプレーの安定性の観点から、2〜200mm/sの範囲にするのがより好ましく、2〜50mm/sの範囲にするのが最も好ましい。
主成分である石油系炭化水素溶剤は、スプレー性、塗布性の向上、及び乾燥性に寄与する。また、この石油系炭化水素溶剤は、金型に塗布された後、金型の熱により揮発することで、強固な乾燥皮膜を形成する。
石油系炭化水素溶剤としては、飽和鎖状化合物であるパラフィン系炭化水素溶剤、二重結合を有する鎖状炭化水素であるオレフィン系炭化水素溶剤、1分子中に少なくとも1個の飽和環を含むナフテン系炭化水素溶剤、及び、1分子中に少なくとも1個の芳香族環を含む芳香族系炭化水素溶剤が挙げられる。この中でも、パラフィン系炭化水素溶剤が、より好ましい。
石油系炭化水素溶剤の濃度は、50〜98質量%の範囲が好ましい。これは次のような理由によるものである。50質量%より少なくなると、金型面上での乾燥性が低下する恐れがある。一方、98質量%より多くなると、金型面上での塗布膜が薄くなるため、油性離型剤の潤滑性が低下する恐れがある。よって、50〜98質量%が好ましい。さらに、60〜95質量%であることがより好ましい。
添加剤としては、潤滑添加剤(a)、濡れ性向上剤(b)、酸化防止剤(c)、及び、防錆剤、防腐剤、消泡剤、極圧添加剤、粘度指数向上剤、洗浄分散剤等を配合することが可能である。これらの添加剤は、必要に応じて適宜配合して使用することができる。また、添加剤の中から、1種又は2種類以上から選択することが好ましい。
潤滑添加剤(a)は、金型上で乾燥皮膜を形成し、溶湯等に対する離型性、潤滑性、及び成形性の向上に寄与する。また、潤滑添加剤(a)を添加することで、油性離型剤自体の沸点が高くなるため、ライデンフロスト温度を更に高くすることが可能となる。その結果、さらに付着性を向上することが可能となる。
また、潤滑添加剤(a)を、金型の温度領域に適した配合に組み合わせることができるので、大きな金型等で温度領域に差がある場合にも対応可能となる。
潤滑添加剤(a)としては、高粘度鉱油類(a−1)、動植物油脂類及び高級脂肪酸エステル類(a−2)、有機モリブデン類(a−3)、油溶性石鹸類(a−4)シリコーン油類(a−5)等が挙げられる。
高粘度鉱油類(a−1)は、150〜300℃の温度領域での潤滑膜を厚くし、潤滑性に優れている。この高粘度鉱油類(a−1)は、40℃における動粘度が100mm/s以上である高粘度の鉱油及び/又は合成油であり、その引火点は250℃以上のものが好ましい。
高粘度の鉱油としては、基油、スピンドル油、マシン油、モーター油、シリンダー油、原料用潤滑油が挙げられる。また、高粘度の合成油としては、ポリアルファ−オレフィン(エチレン−プロピレン共重合体、ポリブテン、1−オクテンオリゴマー、1−デセンオリゴマー、およびこれらの水素化物等)、モノエステル(ブチルステアレート、オクチルラウレート)、ジエステル(ジトリデシルグルタレート、ジ−2−エチルヘキシルアジペート、ジイソデシルアジペート、ジトリデシルアジペート、ジ−2−エチルヘキシルセパケート等)、ポリエステル(トリメリット酸エステル等)、ポリオールエステル(トリメチロールプロパンカプリレート、トリメチロールプロパンペラルゴネート、ペンタエリスリトール−2−エチルヘキサノエート、ペンタエリスリトールペラルゴネート等)、ポリオキシアルキレングリコール、ポリフェニルエーテル、ジアルキルジフェニルエーテル、リン酸エステル(トリクレジルホスフェート等)が挙げられる。
また、動植物油脂類及び高級脂肪酸エステル類(a−2)は、250℃以下の温度領域での潤滑性能に優れている。動植物油脂類としては、ナタネ油、大豆油、ヤシ油、パーム油、牛油、豚脂等の動植物油脂が挙げられ、高級脂肪酸エステル類としては、脂肪酸エステル、ヤシ油脂肪酸、オレイン酸、ステアリン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、牛脂脂肪酸等の高級脂肪酸の一価アルコールエステル又は多価アルコールエステルが挙げられる。
また、有機モリブデン類や油溶性石鹸類(a−3、a−4)は、幅広い温度領域の潤滑性が優れている。
具体的には、有機モリブデン類(a−3)として、MoDTC(モリブデンジチオカーバメイト)、MoDTP(モリブデンジチオホスフェート)が挙げられる。有機モリブデン類(a−3)としては、アルミニウム合金等と反応する可能性があるリンを含まないMoDTCがさらに好ましい。
また、油溶性の石鹸類(a−4)としては、カルシウム或いはマグネシウムのスルホネート塩、フィネート塩、サリシレート塩及び有機酸金属塩が挙げられる。
また、シリコーン油類(a−5)は、約250〜400℃の高温域での潤滑性が期待され、これにより高温での焼付き防止に効果がある。シリコーン油類(a−5)としては、ジメチルシリコーン油、アルキル・アラルキル変性シリコーン油、長鎖アルキル変性シリコーン油、メチルフェニル変性シリコーン油、メチルスチリル変性シリコーン油が挙げられる。ジメチルシリコーン油は、熱による酸化安定性が優れているため、熱劣化が少ない。よって、高温の金型に使用する場合には、ジメチルシリコーン油がより好ましい。また、このジメチルシリコーンは、成形後の塗装に影響がある場合がある。そのため、成形後塗装する場合には、アルキル・アラルキル変性シリコーン油、長鎖アルキル変性シリコーン油、メチルフェニル変性シリコーン油、メチルスチリル変性シリコーン油が、より好ましい。これらシリコーン油は、塗布する金型温度、及び成形後のワークの塗装状況に応じて、変更するのが好ましい。
これら高粘度鉱油類(a−1)、動植物油脂類及び高級脂肪酸エステル類(a−2)、有機モリブデン類(a−3)、油溶性石鹸類(a−4)シリコーン油類(a−5)を、1種類或いは2種類以上混合して使用するのが好ましい。
油性離型剤中に、この潤滑添加剤(a)を20質量%以上配合すると、離型剤の動粘度が高くなり、スプレー状態が不安定となる。それに加え、ワークに潤滑添加剤がこびりつく原因となる。またこの潤滑添加剤の配合量を1質量%以下とすると、油膜が充分ではなく焼付き等の原因となる。よって、潤滑添加剤(a)の配合量は、20質量%以下が好ましい。また、潤滑添加剤(a)の配合量は、2〜18質量%がさらに好ましく、2〜15質量%がもっとも好ましい。
濡れ性向上剤(b)を更に配合することで、油性離型剤の金型に対する濡れ性を向上することが期待でき、高温の金型に対しても、付着性をさらに高めることが期待できる。
濡れ性向上剤(b)としては、アクリル・コポリマーや、アクリル変性ポリシロキサンが挙げられる。濡れ性向上剤(b)は、1種類或いは2種類以上混合して使用するのが好ましい。濡れ性向上剤(b)の配合量は、0.1〜5質量%が好ましく、0.1〜3質量%がさらに好ましい。濡れ性向上剤(b)は、配合量を増やしても、ある程度以上の効果は認められないからである。
酸化防止剤(c)を更に含むことで油膜の劣化を遅らせることができ、さらに高温潤滑性を維持することが可能となる。酸化防止剤(c)としては、アミン系酸化防止剤(c−1)、フェノール系酸化防止剤(c−2)、クレゾール系酸化防止剤(c−3)が挙げられる。
アミン系酸化防止剤(c−1)としては、例えば、モノノニルジフェニルアミン等のモノアルキルジフェニルアミン系、4,4’−ジブチルフェニルアミン、4,4’−ジペンチルジフェニルアミン、4,4’−ジヘキシルジフェニルアミン、4,4’−ジヘプチルジフェニルアミン、4,4’−ジオクチルジフェニルアミン、4,4’−ジノニルジフェニルアミン等のジアルキルジフェニルアミン系、テトラブチルジフェニルアミン、テトラヘキシルジフェニルアミン、テトラオクチルジフェニルアミン、テトラノニルジフェニルアミン等のポリアルキルジフェニルアミン系、a−ナフチルアミン、フェニル−a−ナフチルアミン、ブチルフェニル−a−ナフチルアミン、ペンチルフェニル−a−ナフチルアミン、ヘキシルフェニル−a−ナフチルアミン、ヘプチルフェニル−a−ナフチルアミン、オクチルフェニル−a−ナフチルアミン等が、挙げられる。
また、フェノール系酸化防止剤(c−2)としては、例えば、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノール、4,4−メチレンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2−メチレンビス(4−エチル−6−ブチルフェノール)、高分子量単環フェノリック、多環ターシャリーブチル・フェノール、BHT(Butylated Hydroxy Toluene)、BHA(Butylated Hydroxy Anisole)が、挙げられる。
また、クレゾール系酸化防止剤(c−3)としては、例えば、ジターシャリーブチルパラクレゾール、2−6−ジターシャリーブチル・ジメチルアミノ−p−クレゾールが、挙げられる。上述した酸化防止剤のうち、BHTとアルキルジフェニルアミン系の混合物がより好ましい。
これら酸化防止剤(c)は、1種類或いは2種類以上混合して使用するのが好ましい。また、これら酸化防止剤(c)の配合量は、0.1〜5質量%が好ましく、0.1〜3質量%がさらに好ましい。酸化防止剤(c)は、濡れ性向上剤(b)と同様に、配合量を増やしても、ある程度以上の効果は認められないからである。
防錆剤、防腐剤、消泡剤、極圧添加剤、洗浄分散剤等は、必要に応じて適宜配合して使用することができ、これらの中から、1種又は2種類以上から選択することが好ましい。
このような配合組成に調整し、金型に乾燥皮膜を形成することが可能となる。
6−2)水溶性の離型剤
水溶性離型剤は、水を主成分とし、ワックス、シリコーン、油脂、鉱物油、植物油、高級脂肪酸エステル、及び界面活性剤含有するものであり、必要に応じて、その他の潤滑成分を添加している。
一般的な水溶性離型剤の配合組成は、上記6−1)油性の離型剤の主成分である石油系炭化水素溶剤或いは基油を、水に置き換えたものである。また、水溶性離型剤は、潤滑成分となるワックス、シリコーン、油脂、鉱物油、植物油、高級脂肪酸エステルと、界面活性剤とを併せて配合することにより、水中油滴のエマルションにしている。
また、金型に塗布する際には、水で希釈して用いるため、蛍光剤を多く配合する必要がある。
油性の離型剤と同様に、水溶性の離型剤も、適宜配合組成を調整することにより、金型に乾燥皮膜を形成することが可能となる。
6−3)熱可塑性樹脂用及び熱可塑性ゴム用の離型剤(「剥離剤」とも言う)
ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル樹脂等の熱可塑性樹脂、及びスチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー等の熱可塑性ゴム等を射出成形する際に用いる離型剤は、一般的に、フッ素化合物、シリコーン、鉱物油、植物油等を離型成分としている。これらの離型成分を、原液のまま、或いは有機溶剤、石油系炭化水素系溶剤及び水で希釈して用いる。上述の離型剤と同様に、適宜配合組成を調整することにより、金型に乾燥皮膜を形成することが可能となる。
7)希釈剤
本発明の金型用離型剤の膜厚計測方法及び塗布液に使用される希釈剤としては、例えば、水、基油又は溶剤等が挙げられる。
以上、説明した本発明にかかる蛍光発光法を用いた膜厚計測方法では、高精度でなおかつ簡易的に金型に形成された膜厚を測定することが可能となる。そのため、製造時のサイクルタイムを不必要に延長することなく、最適な離型剤の塗布量を把握することが可能となる。
最適な離型剤塗布量に調整することで、皮膜不足による焼付きやカジリを防止することができ、また、離型剤の過剰塗布による製品への離型成分の堆積を防止することが可能となる。その結果、短時間でなおかつ外観不良の少ない鋳造、鍛造、プレス加工及び射出成形等を行うことが可能となる。
以下に、実施例及び比較例を用いて、本発明の蛍光発光法を用いた膜厚計測方法について詳細に説明する。なお、この発明は、以下の実施例そのままに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、実施例に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより種々の発明を形成できる。実施例に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更には、異なる実施形態となるよう構成要素を適宜組み合わせてもよい。
(A)塗布液の製造方法
家庭用ミキサーに、石油系炭化水素溶剤、添加剤及び蛍光剤を所定量投入後、60〜70℃まで昇温し、中速回転で3分間混合する。その後、必要に応じて、その他の添加剤等を所定量投入し、中速回転で5分ほど撹拌することにより、蛍光剤と油性離型剤とを含む塗布液を調製した。
(B)試験方法
(B−1)皮膜強度試験
RHESCA製FPR−2100型摩擦摩耗試験機(Friction player)を用いて、皮膜強度試験を行い、膜厚の範囲を測定した。以下手順について記載する。
所定量の蛍光剤が配合された塗布液を、所定温度のテストピースに塗布する。塗布量、塗布時間及び塗布回数などを調整することで、約0.5〜3μmの膜厚となるようにテストピースに塗布する。数時間常温放置した後、キーエンス製レーザー顕微鏡で膜厚を確認する。乾燥皮膜が付着したテストピースを複数枚作成する。
摩擦摩耗試験機を用いて、所定条件下にて、皮膜強度試験を行う。具体的には、所定温度までテストピースを加温し、所定膜厚が形成されたテストピース上に、所定材質の試験球を往復運動させ、摩擦係数を測定する。摩擦係数が1を超えた時間を測定し、膜厚破断時間とした。
膜厚破断時間が、200秒以上1000秒以下の範囲内であれば『優』、100秒以上200秒未満、及び、1000秒を越えて2000秒以下の範囲であれば『良』、50秒以上100秒未満、及び、2000秒を越えて3000秒以下の範囲であれば『可』、50秒未満及び3000秒より多い場合には『不可』とした。50秒未満の場合には、焼付きの原因となり、また、3000秒よりも多い場合には、製品への堆積等の原因となるため、不可とした。
(B−2)引火点の測定方法(ASTM D93準拠)
塗布液の引火点は、ASTM D93 ペンスキーマルテンス法で測定した。
(B−3)動粘度の測定方法(ASTM D445準拠)
塗布液の40℃における動粘度は、ASTM D445(ウベローデ粘度計)に沿って測定した。
(B−4)温度測定方法
安立計器(株)製のハンディタイプ温度計HD−1100E及び温度センサーN−233E−01−1−TC1−ASPを用いて、金型の表面温度及び金型に形成された乾燥皮膜の温度を測定した。
(B−5)溶解性の試験
蛍光剤の塗布液における溶解性を試験した。蛍光剤を配合した塗布液の試料20mlを試験管に採取し、析出状況や分離状況を目視にて評価した。分離析出がなく透明のものを「A」、少し析出しているものを「B」、多く析出しているものを「C」とした。
(B−6)検量線作成試験(蛍光強度と膜厚)
(株)センテック製UV硬化センサー(蛍光強度測定機、励起波長 365nm)を用いて蛍光強度の測定を行う。また、(株)キーエンス製レーザー顕微鏡を用いて、同じ測定点の膜厚を正確に測定する。これにより、検量線を作成した。以下、手順について述べる。
(1)テストピースの作成
所定量の蛍光剤が配合された塗布液を、所定温度のテストピースに塗布する。測定箇所を明確にするため、事前に、蛍光強度や膜厚に影響がないように測定点に目印を付ける。また、塗布量、塗布時間及び塗布回数などを調整することで、約1〜5μmの段階的な膜厚となるようにテストピースを作成する。
(2)UV硬化センサーの設定方法及び測定方法
UV硬化センサーは、事前にリセットする必要がある。蛍光剤が含まれていないテストピースを用いて、蛍光強度を0とする。蛍光剤がわずかでもテストピースに残っている場合には、クリーナーを用いてこの残った蛍光剤を完全に除去する。
次に、膜厚が4μmの標準テストピースを用いて、所定温度での蛍光強度が80となるように調整する。標準テストピースは、想定される膜厚範囲の上限値付近で設定する。これにより、本実施例における約0.3〜5μmの膜厚測定の精度を高めることが可能となる。
これらのリセットが完了した後、UV硬化センサー(蛍光強度測定機)を用いて、この複数の測定点の所定温度での蛍光強度を測定する。
なお、標準テストピースの膜厚は、必要に応じて適宜変更することが可能である。これにより想定される膜厚に則して、測定の範囲を調整することが可能となる。また、UV硬化センサーを実際の金型に使用する際に、検量線を作成したUV硬化センサーと異なる場合には、標準テストピースなどを用いて、所定温度における所定膜厚に対する蛍光強度が、検量線を作成したUV硬化センサーと同じ値となるように調整する必要がある。
(3)レーザー顕微鏡の測定方法
UV硬化センサーを用いて蛍光強度を測定した測定点の膜厚を、レーザー顕微鏡を用いて、正確に測定する。設定及びリセット等は、通常使用した方法を用いた。
蛍光強度測定及び膜厚測定をそれぞれ3回繰り返し、その平均値を記載する。
(B−7)蛍光剤の温度依存試験
UV硬化センサー(蛍光強度測定機)を用いて、金型温度の違いによる蛍光強度の違いを測定する。以下、手順について述べる。
所定温度の金型に対して、所定量の蛍光剤を配合した塗布液を塗布する。その後、放冷により冷却された金型の温度と蛍光強度を測定する。6つの温度での蛍光強度を測定し、蛍光剤の温度依存試験結果とした。
(B−8)検証試験
後述する温度補正用検量線を用いて、所定温度における蛍光膜厚定数を算出する。また、UV硬化センサー(蛍光強度測定機)で測定した蛍光強度と、温度補正用検量線で算出された蛍光膜厚定数から膜厚を算出する。算出された膜厚の精度を、レーザー顕微鏡を用いて検証する。以下、手順について述べる。
所定量の蛍光剤が配合された塗布液を、複数の所定温度の金型に塗布する。
UV硬化センサー(蛍光強度測定機)を用いて複数個所の測定点の蛍光強度を測定し、温度計を用いて、金型温度を測定する。
温度補正用検量線を用いて、金型温度から蛍光膜厚定数を算出する。算出された蛍光膜厚定数と、UV硬化センサー(蛍光強度測定機)で測定した蛍光強度から、乾燥皮膜の膜厚を算出する。
レーザー顕微鏡を用いて、所定測定点の膜厚を測定する。
蛍光強度から算出された膜厚と、レーザー顕微鏡を用いて測定された実際の乾燥皮膜の膜厚とを比較して、蛍光強度から算出された膜厚の精度を検証する。実際の膜厚と算出膜厚との差を算出し、誤差とした。この誤差が小さいほど、蛍光強度から算出された算出膜厚の精度が高いと言える。
(B−9)試験条件1−1
皮膜強度試験で用いた試験条件を表1に示す。
Figure 0006383792
(B−10)試験条件1−2
検量線作成試験(蛍光強度と膜厚との相関)で用いた試験条件を表2に示す。
Figure 0006383792
(B−11)試験条件1−3
蛍光剤の温度依存試験で用いた試験条件を表3に示す。
Figure 0006383792
(B−12)試験条件1−4
検証試験で用いた試験条件を表4に示す。
Figure 0006383792
(C)試験測定結果
(C−1)塗布液の配合組成及び蛍光剤の配合量
Figure 0006383792
但し、表5において、
*1:溶剤:商品名:アイソパーM (炭素数12〜15の石油系飽和炭化水素溶剤)
エクソンモービル社 引火点 96℃
*2: 高粘度鉱油類:商品名:スーパーオイルN460 新日本石油社
40℃における動粘度:523mm/s 引火点 312℃
*3:動植物油脂類:商品名:菜種白絞油 コスモ油化社
*4:有機モリブデン類 MoDTC:商品名:アデカサクラルーブ 165
ADEKA社
*5:シリコーン油類 アルキル・アラルキル変性シリコーン:商品名:WACKER TN
旭化成ワッカーシリコーン社
*6:蛍光剤 ベンゾオキサゾール系蛍光剤 2,2’−(2,5−チオフェンジイル)ビス[5−(1,1−ジメチル)ベンゾヘキサゾール:商品名:TINOPAL OB BASF社 融点 196〜203℃
表5に、塗布液の配合組成及び蛍光剤の配合量に関して、例を用いた評価を示す。
蛍光剤以外の添加物の配合量は一定にし、蛍光剤の溶解性の試験を行った。蛍光剤を5%配合すると、蛍光剤が析出し、溶解性が不十分となる。そのため、例3の溶解性の評価は、「C」である。
これに対して、例1及び例2の溶解性の評価は、いずれも「A」である。本実施例で用いた蛍光剤を用いる場合には、蛍光剤の配合量は、0.01〜5質量%が好ましい。
また、膜厚が20μm以下の場合には、高濃度に設定すると蛍光強度が強すぎて、誤差が生じやすくなる可能性がある。そのため、算出精度をより高めるには、0.01〜2質量%の蛍光剤を配合することが、さらに好ましい。
(C−2)(B−1)に記載の方法による皮膜強度試験結果
表6に、表5の例2に記載の塗布液を用いて、試験温度150℃と250℃での膜厚破断時間を評価した皮膜強度試験結果を示す。
Figure 0006383792
膜厚破断時間が短い場合には、焼付きの原因となり、また膜厚破断時間が過剰に長い場合には、寸法精度のばらつきや、製品へ離型剤の成分が堆積するため、製品の外観不良の原因となる。そのため、最適な膜厚を測定し、膜厚の測定範囲を特定することで、より高精度の蛍光発光式の膜厚測定が可能となる。
表6に記載の試験温度150℃及び250℃における膜厚0μmの膜厚破断時間は、それぞれ、7秒、2秒となり、良好な潤滑性、離型性が得られないため、これらの評価は『不可』とした。
また、試験温度150℃における膜厚3.0μmの膜厚破断時間は、14599秒となった。潤滑性、離型性は充分に有するが、乾燥皮膜が厚すぎ、寸法精度のばらつきや、製品へ離型成分が堆積する恐れがあるため、評価は『不可』とした。
これに対して、試験温度が150℃及び250℃における、膜厚0.5μm、及び膜厚1.0μmの膜厚破断時間は、いずれも200秒以上1000秒以下の範囲内であり、評価は『優』とした。
また、試験温度250℃における膜厚3.0μmの膜厚破断時間は、2907秒であり、製品へ離型成分が多少堆積する可能性があるので、評価は『可』とした。
したがって、乾燥皮膜の膜厚が不足している場合や、多く付着している場合を容易に確認するために、 本実施例の膜厚の測定範囲は、この最適膜厚範囲を含めた0.3〜5μmであることが好ましい。また、寸法精度のばらつきや外観不良の原因となるため、金型温度が150℃の場合には、膜厚の測定範囲は、3μm未満とすることが、さらに好ましい。膜厚の範囲を特定することにより、膜厚測定の精度を高めることが可能となる。なお、膜厚の測定範囲は、温度や加工法により適宜調整する必要がある。
(C−3)(B−6)に記載の方法による検量線作成試験結果(蛍光強度と膜厚の相関)
Figure 0006383792
表7に、金型温度160℃における測定点1〜4での蛍光強度と膜厚の相関関係を示し、その相関関係を示すグラフを図2に示す。蛍光強度を平均膜厚で除した数字が一定であれば、蛍光強度と平均膜厚とが正比例での相関関係を示し、精度の高い線形検量線を作成することが可能となる。塗布液は、表5の例2を用いた。
表7に記載の「蛍光強度/平均膜厚」が、30付近でほぼ一定であり、蛍光強度と平均膜厚とが高い精度で正比例するといえる。
図2に、検量線作成結果のグラフを示す。検量線は、試験結果で得られた蛍光強度と平均膜厚を基に散布図を作成し、散布図上のデータの近似線を作成することで得ることができる。近似線は、最小二乗法で算出するのが好ましい。一般には、コンピューターの表計算ソフトで、散布図上のデータの線形近似線を算出することが可能である。
算出された検量線の定数(以下、蛍光膜厚定数と称す)を用いることで、実際の金型で測定した蛍光強度の値から、膜厚を高精度で算出することが可能となる。
具体的な算出方法としては、図2に記載の160℃における線形検量線では、Y=29.079Xとなっており、このYに、金型で測定した蛍光強度を50として代入すると、1.719と算出される。これにより、金型温度が160℃である場合、膜厚約1.7μmと算出することが可能となる。
金型温度が一定の場合には、実際に使用する金型の温度にて、蛍光膜厚定数を算出するのが好ましい。また、金型温度にムラがある場合には、後述する温度補正を行うのが好ましい。さらに、塗布液に配合する蛍光剤の配合量及び離型剤の金型への付着性の影響で、蛍光膜厚定数は、大きく変動する。よって、検量線作成時の配合組成は、実際に使用する蛍光剤や潤滑成分である潤滑添加剤の配合量と同じにするのが好ましい。これらの対応を行うことで、より高精度な膜厚計測が可能となる。
(C−4)(B−7)に記載の方法による蛍光剤の温度依存試験結果
Figure 0006383792
蛍光剤の蛍光強度は、温度によって熱減衰するため、温度依存性を有することが知られている。蛍光剤の温度依存性の要因としては、励起されたエネルギーが熱振動へ内部転換すること、蛍光物質自身及び他の分子間の衝突による蛍光分子の失活、蛍光剤の熱分解を起こすことなどが知られており、この蛍光剤の温度依存を的確に把握することにより、さらに高精度に膜厚を算出することが可能となる。
上記検量線作成試験(蛍光強度と膜厚の相関)では、金型温度が一定であれば、測定した蛍光強度から膜厚を算出することが可能である。しかし、実際に用いる金型では、使用する装置の大きさ及び金型の測定場所等により温度差があることが想定され、膜厚の測定精度が低くなる可能性がある。そのため、蛍光剤の温度依存性を試験した。
表8に、蛍光剤の温度依存試験結果を示す。塗布液は、表5の例2のものを用いた。表8から明らかなように、蛍光強度は、低温では強く、高温では弱くなる傾向にある。測定当初の160℃では、蛍光強度19.8だったが、その後温度が下がり、金型温度が100℃では蛍光強度44.3となっている。金型温度100℃の時の蛍光強度は、膜厚に変化がないにもかかわらず、金型温度160℃の時の蛍光強度の約2.2倍になる。よって、蛍光剤の蛍光量は、測定時の金型温度に大きく依存することが判明した。
また、250℃以上では蛍光を発光しない。そのため、本実施例に使用した蛍光剤を用いる場合には、100〜250℃の金型温度の範囲で用いるのが好ましい。
(C−5)蛍光強度の温度補正
Figure 0006383792
本発明における蛍光強度の温度補正方法について記載する。
上記(B−6)検量線作成試験(蛍光強度と膜厚の相関)の方法を用いて、想定される金型温度の範囲の温度補正用検量線を作成する。その際、金型温度の測定数が多いほど、膜厚計測の精度がより高くなる。
表9は、例2と同じ配合の蛍光剤を含む塗布液を用いて測定し、得られた検量線の蛍光膜厚定数である。金型温度は、130℃〜220℃で測定した。
図3は、表9の金型温度と蛍光膜厚定数とを基に、散布図を作成し、指数近似線を作成したものである。この得られた指数近似線が温度補正用検量線となる。
温度補正用検量線は、温度が高くなるにしたがって、蛍光膜厚定数が低くなることを示している。つまり、高温になるに従い、蛍光強度が弱くなることを示している。また、温度補正用検量線は、直線とはならず、なだらかな曲線を描く。本実施例で用いた蛍光剤の融点は、196〜203℃である。また、離型剤は、金型温度が高温になるほど、付着性が低下する傾向にある。そのため、蛍光剤が200℃付近から熱分解を開始すること、及び離型剤の高温付着性の影響により、この温度補正用検量線が湾曲すると推定される。この温度による影響等を把握することで、算出誤差を低減することが可能となり、さらに膜厚の算出を高精度にすることが可能となる。
測定した金型温度を温度補正用検量線に代入することにより、蛍光膜厚定数を算出することが可能となる。さらに、測定した蛍光強度を、この算出された蛍光膜厚定数で除することにより、金型に形成された膜厚を算出することが可能となる。
具体的な算出方法としては、図3に示す通り、本実施例における温度補正用検量線の式は、『a=112.48e-0.008T』となった。この『a』が、温度補正用検量線により算出される蛍光膜厚定数に該当する。この温度補正用検量線の式の『T』に、仮に金型温度を『120℃』として代入すると、a=43.1と算出される。これにより、120℃における蛍光膜厚定数は、『43.1』と算出される。
この120℃における蛍光膜厚定数を上記検量線に当てはめると、Y=43.1Xとなる。この検量線を用いることにより、蛍光強度から膜厚を算出することが可能となる。
仮に蛍光強度を50としてYに代入し、この算出された蛍光膜厚定数43.1で除すると、X=1.16と算出される。つまり、温度補正用検量線を用いることで、120℃での膜厚を約1.2μmと、簡易的に膜厚を算出することが可能となる。
このような温度補正用検量線を用いることにより、幅広い温度域での膜厚算出が可能となり、温度による誤差を低減し、高精度に膜厚を計測することが可能となる。本実施例で用いた蛍光剤を用いる場合には、温度域として、100〜250℃が好ましく、120〜220℃が最も好ましい。
このように、温度補正用検量線は、簡単な算術で蛍光膜厚定数を算出することが可能である。
(C−6)(B−8)に記載の方法による検証試験結果
Figure 0006383792
表10に、算出膜厚と実際の膜厚に関して、例4〜9を用いた総合評価を示す。誤差を評価し、誤差が0.2μm以下のものを「優」とし、誤差が0.2μmより多く0.5μm以下のものを「良」、誤差が0.5μmより多く1μm以下のものを「可」、誤差が1μmよりも多いものを「不可」とした。本試験では、表5の例2と同じ組成の塗布液を用いた。
例9では、蛍光強度が0となり、膜厚を算出することができず、総合評価では『不可』とした。これは、蛍光剤の耐熱性の問題である。本実施例に用いた蛍光剤は、約250℃で完全に熱分解してしまうため、蛍光成分が失活する。耐熱性の高い蛍光剤に変更することで、より高温域での測定をすることが可能である。
これに対し、例4の誤差が0.5μm以下である。また、例5〜7の誤差は0.2μm以下である。また、例8の誤差は1μm未満である。よって、例4の総合評価は『良』と、例5〜7の総合評価は『優』と、例8の総合評価は『可』とした。
本実施例では、100℃以上250℃未満の範囲であれば、問題なく膜厚を算出することが可能である。よって、100℃以上250℃未満の温度範囲で蛍光発光式膜厚測定することが好ましい。また、特に金型温度が、120〜220℃の範囲では、非常に高い精度で、膜厚を算出することが可能である。よって、120℃以上220℃以下の温度範囲で蛍光発光式膜厚測定することが、最も好ましい。
以下に、本願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1]
蛍光剤と離型剤とを含む塗布液を金型に塗布することにより皮膜を形成させる皮膜形成ステップと、
前記金型上に形成された前記皮膜に対して、励起光を照射して蛍光を発光させる励起光照射ステップと、
前記皮膜が発する蛍光の蛍光強度を検出する蛍光強度検出ステップと、
前記蛍光強度から、前記皮膜の膜厚を算出する膜厚算出ステップと、
を含む金型用離型剤の膜厚計測方法。
[2]
前記励起光照射ステップは、水銀ランプ、ネオンランプ、及び発光ダイオードからなる群から選ばれる少なくとも1つの発光体が用いられる[1]に記載の膜厚計測方法。
[3]
前記励起光照射ステップは、200nm〜850nmの範囲の波長の励起光を照射する[1]又は[2]に記載の膜厚計測方法。
[4]
前記蛍光強度検出ステップは、400〜650nmの範囲の波長の蛍光を検出する[1]から[3]のいずれか1に記載の膜厚計測方法。
[5]
前記膜厚算出ステップは、蛍光強度と膜厚との相関式に基づき、前記皮膜の膜厚を算出する[1]から[4]のいずれか1に記載の膜厚計測方法。
[6]
前記膜厚算出ステップは、測定温度を入力するための温度入力ステップと、前記測定温度に基づいて蛍光膜厚定数を算出する蛍光膜厚定数算出ステップとを備え、
前記蛍光強度検出ステップにより得られた蛍光強度と、前記蛍光膜厚定数とから、前記皮膜の膜厚を算出する[1]から[5]のいずれか1に記載の膜厚計測方法。
[7]
前記塗布液は、さらに希釈剤を含む[1]から[6]の何れか1に記載の膜厚計測方法。
[8]
[1]から[7]のいずれか1に記載の膜厚計測方法に用いる塗布液であって、
前記塗布液は、前記蛍光剤の配合量が前記塗布液に対して0.01〜5質量%である塗布液。
[9]
前記蛍光剤は、融点が150℃以上である[8]に記載の塗布液。
[10]
前記蛍光剤は、ベンゾオキサゾール系蛍光剤、フルオレセイン系蛍光剤、ローダミン系蛍光剤、アクリジン系蛍光剤、クマリン系蛍光剤、及び無機系蛍光剤からなる群から選ばれる少なくとも1種の蛍光剤である[8]又は[9]に記載の塗布液。
[11]
[1]から[7]のいずれか1に記載の膜厚計測方法に用いる蛍光強度測定機。
1…蛍光強度測定機、2…LEDライト、3…励起フィルター、4…ダイクロイックミラー、5…蛍光(受光)センサー、6…蛍光フィルター、E…励起光、F…蛍光、S…検体。

Claims (7)

  1. 蛍光剤と油性離型剤とからなる塗布液を金型に塗布することにより皮膜を形成させる皮膜形成ステップと、
    前記金型上に形成された前記皮膜に対して、励起光を照射して蛍光を発光させる励起光照射ステップと、
    前記皮膜が発する蛍光の蛍光強度を検出する蛍光強度検出ステップと、
    前記蛍光強度から、前記皮膜の膜厚を算出する膜厚算出ステップと
    を含み、
    前記膜厚算出ステップは検量線作成ステップを含み、
    前記検量線作成ステップは、
    互いに膜厚が異なっている複数の測定点を有した検量線作成用皮膜を用意するステップ、
    前記複数の測定点の膜厚をレーザー顕微鏡で測定するステップ、
    前記複数の測定点の蛍光強度を測定するステップ、及び
    前記複数の測定点の膜厚と前記複数の測定点の蛍光強度とから検量線を作成するステップを含み、
    前記皮膜の膜厚は、前記検量線に基づいて算出される金型用離型剤の膜厚計測方法。
  2. 前記励起光照射ステップは、水銀ランプ、ネオンランプ、及び発光ダイオードからなる群から選ばれる少なくとも1つの発光体が用いられる請求項1に記載の膜厚計測方法。
  3. 前記励起光照射ステップは、200nm〜850nmの範囲の波長の励起光を照射する請求項1又は2に記載の膜厚計測方法。
  4. 前記蛍光強度検出ステップは、400〜650nmの範囲の波長の蛍光を検出する請求項1から3のいずれか1項に記載の膜厚計測方法。
  5. 前記膜厚算出ステップは、温度補正用検量線を作成するステップと、前記金型の測定温度を入力するための温度入力ステップと、前記温度補正用検量線及び前記金型の測定温度に基づいて、前記検量線の傾きである蛍光膜厚定数を算出する蛍光膜厚定数算出ステップとを更に備え、
    前記温度補正用検量線を作成するステップは、
    測定温度を変えて前記検量線作成ステップを行い、複数の検量線を作成するステップ、
    前記複数の検量線の傾きと各測定温度とから前記温度補正用検量線を作成するステップを含む請求項1から4のいずれか1項に記載の膜厚計測方法。
  6. 前記膜厚算出ステップにおいて測定する前記皮膜の膜厚は、0.5μm〜20μmである請求項1から5のいずれか1項に記載の膜厚計測方法。
  7. 前記励起光照射ステップは、励起光を1度照射するステップである請求項1から5のいずれか1項に記載の膜厚計測方法。
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