JP6383701B2 - 切削加工用ブロック - Google Patents

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Description

本発明は、歯科治療における義歯床等に用いられる歯科用補綴物で、CAD/CAMシステムによる切削加工して使用されるブロックに関する。
歯科医療用の義歯床のような補綴物を作製するために用いられる材料として、(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体、重合開始剤、無機充填材等を含有する組成物を硬化して成る材料が広く使用されている。
従来、これらの義歯床用の製作は、患者の口腔内の型をとり、型に合わせて樹脂や重合性の組成物を充填したり、流し込んだ後、硬化させる方法が一般的であった。しかしながら、この方法は多数の製作ステップがかかるだけでなく、義歯床用には数μm単位の極めて高い寸法精度が要求されるため、多大な時間だけでなく、技工士の熟練を必要としていた。
近年、一定品質の義歯床を短時間で安定して供給できる方法として、コンピューターを利用して画面上で義歯床の設計を行い、レジン材料やセラミックス製のブロックから切削加工によって義歯床を製作するCAD/CAMシステムが注目され、セレックシステムに代表されるような義歯床の設計・製作システムが普及している。
このようなCAD/CAMシステム向けの歯科切削加工用の材料としては、例えば、特許文献1には、平均粒径0.01〜0.04μmの無機充填剤を20〜70重量%含有したアクリル系レジン重合体からなる、機械的性能に優れた切削加工用のレジン材料が記載されている。また、特許文献2には、分子量300以上780以下のポリエチレングリコールジメタクリレートを特定の割合で含有した、硬化時にクラックの発生が抑制された切削加工用のレジン材料が記載されている。さらに、特許文献3には、メチルメタクリレートおよびエチレングリコールジメタクリレートの混合物からなるモノマーに対し、重量比が2〜3倍程度のメチルメタクリレート重合体の粉体を混合し、該粉体をモノマーに溶解させることなく、単にモノマーに膨潤させただけの餅状物をプレス成形して作製した義歯床作製用ブロック体の例が記載されている。
特開平10−323353号公報 特開2012−214398号公報 国際公開2011/136163号
CAD/CAMシステムの利点の1つは短時間で安価で製作可能であるため、切削加工用の材料には良好な切削性が要求されるところ、特許文献1の切削加工用の歯科用レジン材料は、切削性に優れると記載しているものの、それを実証する実施例は記載されていない。特許文献2及び3には、切削性について言及されていない。
そこで本発明は、クラックがなく、切削時の切削性に優れつつも、口腔内で使用した時の耐衝撃性、耐摩耗性、さらに審美性に優れる切削加工用のブロックを提供することを目的とする。
本発明は、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)と、単官能性(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体(b−1)及び多官能性(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体(b−2)を含む重合性単量体(b)と、重合開始剤(c)を含有し、該(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)の含有量が該重合性単量体(b)100重量部に対して1〜50重量部であり、かつ、該(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)が該重合性単量体(b)に溶解している組成物を硬化して得られる、切削加工用ブロックを提供する。
前記切削加工用ブロックにおいて、単官能性(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体(b−1)のホモポリマーのガラス転移温度が、60℃以上であることが好ましい。
前記切削加工用ブロックにおいて、多官能性(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体(b−2)が、ウレタン結合を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体を含むことが好ましい。
前記切削加工用ブロックにおいて、平均粒子径0.001〜0.10μmの無機フィラー(d)を含有することが好ましい。
前記切削加工用ブロックにおいて、体積は15cm3以上500cm3以下であることが好ましい。
前記切削加工用ブロックは、義歯床用であることが好ましい。
また、本発明は、上記切削加工用ブロックから作製される、歯科用補綴物を提供する。
さらに、本発明は、上記切削加工用ブロックを切削加工して得られる、義歯床を提供する。
本発明の切削加工用ブロックは、クラックがなく、切削時の切削性に優れつつも、口腔内で使用した時の耐衝撃性、耐摩耗性、さらに審美性にも優れる。また、本発明の切削加工用ブロックは、前記特性に加えて機械的強度にも優れる。特に義歯床は、成形体が大きく、切削性や耐衝撃性が強く要求されているため、本発明の切削加工用ブロックは有用である。
本発明の切削加工用ブロックは、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)と、単官能性(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体(b−1)及び多官能性(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体(b−2)を含む重合性単量体(b)と、重合開始剤(c)を含有し、該(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)の含有量が該重合性単量体(b)100重量部に対して1〜50重量部であり、かつ、該(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)が該重合性単量体(b)に溶解している組成物を硬化することで得られる。なお、この明細書において、(メタ)アクリルとは、メタクリルとアクリルの総称であり、これと類似の表現についても同様である。
(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)
(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)は、本発明の切削加工用ブロックにおいて、切削加工性を付与するため、及びクラックの発生を抑制するために用いられる。(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)は、(メタ)アクリル基が残っていないポリマーであり、通常、プラスチックに分類される(メタ)アクリル重合体または共重合体である。
(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)のガラス転移温度(Tg)が高いほど、本発明の切削加工用ブロックの切削性を損なうことがない。このため、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)のTgは、60℃以上が好ましく、80℃以上がより好ましい。
(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)を構成する単量体の(メタ)アクリル酸エステルは、ホモポリマーのTgが60℃以上となる(メタ)アクリル酸エステルであることが好ましい。
(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)を構成する単量体の(メタ)アクリル酸エステルが、ホモポリマーのTgが60℃以上となる(メタ)アクリル酸エステルの重合形態は、直鎖状、分岐状、放射状、又はそれらの2つ以上が組合わさった結合形式のいずれでもよい。それらの中でも、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)の製造の容易性から、直鎖状又は分岐状のホモポリマーが好ましく用いられる。
ホモポリマーのTgが60℃以上となる(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸アダマンチル、(メタ)アクリル酸2−メチル−2−アダマンチル、(メタ)アクリル酸2−エチル−2−アダマンチル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸フェニル等が挙げられる。これらの中で、得られる切削加工用ブロックの耐衝撃性が良好であること及び入手の容易性から、メタクリル酸メチル(MMA)、メタクリル酸tert−ブチル(TBM)、メタクリル酸アダマンチル、メタクリル酸イソボルニル(IBM)が好ましく、メタクリル酸メチル、メタクリル酸イソボルニルがさらに好ましく、メタクリル酸メチルが最も好ましい。
(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)としては、重合性単量体(b)に対する溶解性に優れる点から、非架橋の(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)が好ましい。「非架橋」であるとは、重合体同士が架橋されていないことを意味し、(メタ)アクリル酸エステル又はクロロホルム、塩化メチレン、エタノール、イソプロパノール、アセトン、酢酸エチルなどの有機溶媒に溶解すること、若しくは200℃〜300℃に加熱した際に溶融することにより架橋されていないことを確認することができる。
(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)は、本発明の効果を損なわない範囲で、上記以外の(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体を含んでいてもよく、さらに、他のモノマー単位を含んでいてもよい。他のモノマーとしては、例えば、ホモポリマーのTgが60℃より低い(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸等のカルボキシル基を有するビニル系モノマー;(メタ)アクリルアミド;スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン等の芳香族ビニルモノマー;ブタジエン、イソプレン等の共役ジエン系モノマー;エチレン、プロピレン等のオレフィン系モノマーが挙げられる。
(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)の重量平均分子量(Mw)は、重合性単量体(b)に対する溶解性及び得られる切削加工用ブロックの耐衝撃性の観点から、10000〜2000000の範囲内であることが好ましく、20000〜1000000の範囲内であることがより好ましく、30000〜500000の範囲内であることがさらに好ましい。なお、ここでいう重量平均分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で求めたポリスチレン換算の重量平均分子量を意味する。
(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)の製造方法は、化学構造に関する本発明の条件を満足する重合体が得られる限りにおいて、特に限定されることはなく、公知の手法に準じた方法を採用できる。また、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)は市販品を使用できる。市販品としては、例えば、根上工業株式会社製のハイパール(登録商標)シリーズがあり、M−4003(Tg:105℃)、M−4006(Tg:105℃)、M−4501(Tg:84℃)、M−5000(Tg:65℃)、M−5001(Tg:65℃)等が好適に挙げられる。
(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)の含有量は、後述の重合性単量体(b)の総量100重量部に対し、1〜50重量部であり、クラックの発生をより抑制でき、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)が重合性単量体(b)に良好に溶解できる観点から、2.5〜40重量部が好ましく、5〜30重量部がより好ましい。
重合性単量体(b)
重合性単量体(b)としては、(メタ)アクリロイル基を1個有する単官能性(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体(b−1)(以下、「単官能性(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体(b−1)」と称する)及び(メタ)アクリロイル基を複数有する多官能性(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体(b−2)(以下、「多官能性(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体(b−2)」と称する)が含まれる。
単官能性(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体(b−1)は、単官能性(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体(b−1)のホモポリマーのガラス転移温度(Tg)が高いものほど、本発明の切削加工用ブロック及の切削性と耐衝撃性が優れる。このため、単官能性(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体(b−1)のホモポリマーのTgは、60℃以上が好ましく、80℃がより好ましい。
単官能性(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体(b−1)は、例えば、前記(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)において、ホモポリマーのTgが60℃以上となる(メタ)アクリル酸エステルとして挙げたものと同様である。
単官能性(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体(b−1)の含有量は、耐衝撃性と透明性の観点から、重合性単量体(b)の総量を100重量%とした場合に45〜99重量%が好ましく、55〜98重量%がより好ましく、60〜95重量%がさらに好ましい。
また、本発明の切削加工用ブロックは、色素等に対する耐着色性の調整を目的として、重合性単量体(b−1)として、フッ素含有メタクリル酸エステル系重合性単量体を含んでもよい。このようなフッ素含有メタクリル酸エステル系重合性単量体としては、例えば、2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピルメタクリレート、2−(パーフルオロブチル)エチルメタクリレート、3−(パーフルオロブチル)−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−(パーフルオロヘキシル)エチルメタクリレート、3−パーフルオロヘキシル−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3−(パーフルオロー3−メチルブチル)−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、1H,1H,3H−テトラフルオロプロピルメタクリレート、1H,1H,5H−オクタフルオロペンチルメタクリレート、1H,1H,7H−ドデカフルオロヘプチルメタクリレート、1H−1−(トリフルオロメチル)トリフルオロエチルメタクリレート、及び1H,1H,3H−ヘキサフルオロブチルメタクリレート等が挙げられる。これらの中でも、耐着色性に優れる点で、2−(パーフルオロブチル)エチルメタクリレート、2−(パーフルオロヘキシル)エチルメタクリレート、1H,1H,5H−オクタフルオロペンチルメタクリレート、1H,1H,7H−ドデカフルオロヘプチルメタクリレート、1H−1−(トリフルオロメチル)トリフルオロエチルメタクリレート、1H,1H,3H−ヘキサフルオロブチルメタクリレートが好ましく、1H,1H,5H−オクタフルオロペンチルメタクリレート、1H,1H,7H−ドデカフルオロヘプチルメタクリレートがより好ましい。
フッ素含有メタクリル酸エステル系重合性単量体の含有量は特に限定されないが、耐着色性と切削性の観点から、重合性単量体(b−1)中、10〜90重量%が好ましく、20〜70重量%がより好ましく、30〜50重量%がさらに好ましい。
多官能性(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体(b−2)としては、芳香族化合物系の二官能性(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体、脂肪族化合物系の二官能性(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体、三官能性以上の(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体が挙げられる。
芳香族化合物系の二官能性(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体としては、例えば、2,2−ビス((メタ)アクリロイルオキシフェニル)プロパン、2,2−ビス〔4−(3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕プロパン(通称「Bis−GMA」)、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシポリエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシテトラエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシペンタエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシジプロポキシフェニル)プロパン、2−(4−(メタ)アクリロイルオキシジエトキシフェニル)−2−(4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル)プロパン、2−(4−(メタ)アクリロイルオキシジエトキシフェニル)−2−(4−(メタ)アクリロイルオキシジトリエトキシフェニル)プロパン、2−(4−(メタ)アクリロイルオキシジプロポキシフェニル)−2−(4−(メタ)アクリロイルオキシトリエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシプロポキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシイソプロポキシフェニル)プロパン、及び1,4−ビス(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)ピロメリテート等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してよい。これらの中でも、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)との混和性が良く、切削加工用ブロックの切削加工性が優れる点で、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシポリエトキシフェニル)プロパンが好ましい。
脂肪族化合物系の二官能性(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体としては、例えば、グリセロールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、2−エチル−1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,2−ビス(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)エタン、及び2,2,4−トリメチルヘキサメチレンビス(2−カルバモイルオキシエチル)ジメタクリレート(通称「UDMA」)等が挙げられる。これらの中でも、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)との混和性が良く、得られる切削加工用ブロックの切削加工性、耐衝撃性及び耐摩耗性が優れる点で、グリセロールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート及び2,2,4−トリメチルヘキサメチレンビス(2−カルバモイルオキシエチル)ジメタクリレートが好ましい。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してよい。
三官能性以上の(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体又は(メタ)アクリルアミド系重合性単量体としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、N,N’−(2,2,4−トリメチルヘキサメチレン)ビス[2−(アミノカルボキシ)プロパン−1,3−ジオール]テトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、1,7−ジアクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラアクリロイルオキシメチル−4−オキシヘプタン、及びこれらの(メタ)アクリルアミドが挙げられる。これらの中でも、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)との混和性に優れる点で、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートが好ましい。
多官能性(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体(b−2)の含有量は、重合性単量体(b)の総量を100重量%とした場合に、多官能性(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体(b−2)の配合量が1〜55重量%が好ましく、2〜45重量%がより好ましく、5〜40重量%がさらに好ましい。多官能性(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体(b−2)の配合量が55重量%以下であると、切削加工用ブロックの切削加工性と耐摩耗性が良好となる。なお、本明細書において、「重合性単量体(b)の総量」とは、切削加工用ブロック全体に含有される(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体の総量のことを意味する。また、本発明の切削加工用ブロックの重合性単量体(b)において、本発明の効果を損なわない限り、他の(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体が重合性単量体(b)の総量に対して、3重量%未満程度(好ましくは1重量%未満程度)配合されていてもよいが、義歯床用途、人工歯一体型の義歯床用途等に使用される場合、酸性基含有(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体は、切削加工用ブロック用の重合性組成物中、1重量%未満であってもよく、0.5重量%未満であってもよく、0.1重量%未満であってもよい。
また、本発明に用いられる多官能性の(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体(b−2)が、切削性と耐摩耗性の観点から、ウレタン結合を有する少なくとも1種類の(メタ)アクリル酸エステル(単に、ウレタン結合を有する(メタ)アクリル酸エステルと記載することもある)を含むことが好ましい。
ウレタン結合を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体は、例えば、後述するイソシアネート基(−NCO)を有する化合物と、水酸基(−OH)を有する(メタ)アクリレート化合物を付加反応させることにより容易に合成することができる。
イソシアネート基を有する化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMHMDI)、トリシクロデカンジイソシアネート(TCDDI)、及びアダマンタンジイソシアネート(ADI)等が挙げられる。
水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、10−ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−(ジヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシ−3アクリロイルオキシプロピル(メタ)アクリレート、2,2−ビス[4−〔3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ〕フェニル]プロパン、1,2−ビス〔3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ〕エタン、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールのトリ又はテトラ(メタ)アクリレート等のヒドロキシ(メタ)アクリレート化合物等が挙げられる。
イソシアネート基を有する化合物と水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物との付加反応は、公知の方法に従って行うことができ、特に限定はない。
得られるウレタン結合を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、ウレタン結合を有する多官能性(メタ)アクリル酸エステルとしては、前記のイソシアネート基を有する化合物の中から選択される1種類以上の化合物と水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステルの中から選択される1種類以上の化合物の任意の組み合わせの反応物が例示される。
これらのなかでも、硬化物の切削性および耐衝撃性に優れる観点から、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンビス(2−カルバモイルオキシエチル)ジメタクリレート(通称「UDMA」)、N,N’−(2,2,4−トリメチルヘキサメチレン)ビス[2−(アミノカルボキシ)プロパン−1,3−ジオール]テトラメタクリレート(通称「U4TH」)、及び脂環式ジイソシアネートと2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートの反応物(例えば、IPDと2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートの反応物、TCDDIと2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートの反応物、及びADIと2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートの反応物)が好ましい。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
その他、ジオールとジイソシアネートが反応して得られたポリウレタンの両末端に、(メタ)アクリル基を有するマクロモノマー等も用いることができる。
ウレタン結合を有する(メタ)アクリル酸エステルの含有量は、切削性および耐衝撃性の観点から、成分(b−2)中、20〜100重量%であることが好ましく、40〜100重量%であることがより好ましく、60〜100重量%であることがさらに好ましい。
重合性単量体(b)には、本発明の趣旨を損なわない範囲で(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体以外の重合性単量体を含むことができる。このような重合性単量体としては、例えば、α−シアノアクリル酸、(メタ)アクリル酸、α−ハロゲン化アクリル酸、クロトン酸、桂皮酸、ソルビン酸、マレイン酸、イタコン酸等のエステル類、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミド誘導体、ビニルエステル類、ビニルエーテル類、モノ−N−ビニル誘導体、及びスチレン誘導体等が挙げられる。
本発明の好適な切削加工用ブロックの実施態様としては、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)と、単官能性(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体(b−1)及び多官能性(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体(b−2)を含む重合性単量体(b)と、重合開始剤(c)を含有し、前記(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)はTgが60℃以上の重合体であり、前記単官能性(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体(b−1)が、ホモポリマーとした場合のポリマーのTgが60℃以上となる(メタ)アクリル酸エステル単量体であり、前記多官能性(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体(b−2)が、ウレタン結合を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体であり、前記(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)の含有量が前記重合性単量体(b)100重量部に対して2.5〜40重量部であり、前記単官能性(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体(b−1)の含有量が重合性単量体(b)の総量を100重量%とした場合に55〜98重量%であり、前記多官能性(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体(b−2)の含有量が重合性単量体(b)の総量を100重量%とした場合に2〜45重量%であり、かつ、前記(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)が前記重合性単量体(b)に溶解している組成物を硬化して得られる、切削加工用ブロックが挙げられる。
本発明のより好適な切削加工用ブロックの実施態様としては、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)と、単官能性(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体(b−1)及び多官能性(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体(b−2)を含む重合性単量体(b)と、重合開始剤(c)を含有し、前記(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)はTgが60℃以上の非架橋重合体であり、前記単官能性(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体(b−1)が、ホモポリマーとした場合のポリマーのTgが60℃以上となる(メタ)アクリル酸エステル単量体であり、前記多官能性(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体(b−2)が、ウレタン結合を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体であり、前記(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)の含有量が前記重合性単量体(b)100重量部に対して5〜30重量部であり、前記単官能性(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体(b−1)の含有量が重合性単量体(b)の総量を100重量%とした場合に60〜95重量%であり、前記多官能性(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体(b−2)の含有量が重合性単量体(b)の総量を100重量%とした場合に5〜40重量%であり、かつ、前記(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)が前記重合性単量体(b)に溶解している組成物を硬化して得られる、切削加工用ブロックが挙げられる。
前記好適な実施態様の切削加工用ブロックにおける各成分の種類及び含有量は、本明細書で別途説明した範囲において適宜選択、変更できる。
重合開始剤(c)
本発明に用いられる重合開始剤(c)は、一般工業界で使用されている重合開始剤から選択して使用でき、中でも歯科用途に用いられている重合開始剤が好ましく用いられる。特に、化学重合開始剤(c−1)及び光重合開始剤(c−2)を、単独で又は2種以上を適宜組み合わせて使用できる。
重合開始剤(c)のうち、化学重合開始剤(c−1)としては、有機過酸化物及びアゾ系化合物が好ましく用いられる。化学重合開始剤(c−1)として使用される有機過酸化物及びアゾ系化合物は特に限定されず、公知のものを使用することができる。代表的な有機過酸化物としては、ケトンパーオキサイド、ハイドロパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、パーオキシケタール、パーオキシエステル、及びパーオキシジカーボネート等が挙げられる。
上記化学重合開始剤(c−1)として用いられるケトンパーオキサイドとしては、例えば、メチルエチルケトンパーオキサイド、メチルイソブチルケトンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド、及びシクロヘキサノンパーオキサイド等が挙げられる。
化学重合開始剤(c−1)として用いられるハイドロパーオキサイドとしては、例えば、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、及び1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド等が挙げられる。
化学重合開始剤(c−1)として用いられるジアシルパーオキサイドとしては、例えば、アセチルパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、及びラウロイルパーオキサイド等が挙げられる。
化学重合開始剤(c−1)として用いられるジアルキルパーオキサイドとしては、例えば、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、及び2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)−3−ヘキシン等が挙げられる。
化学重合開始剤(c−1)として用いられるパーオキシケタールとしては、例えば、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)オクタン、及び4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレリックアシッド−n−ブチルエステル等が挙げられる。
化学重合開始剤(c−1)として用いられるパーオキシエステルとしては、例えば、α−クミルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシピバレート、2,2,4−トリメチルペンチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレート、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタラート、t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、及びt−ブチルパーオキシバレリックアシッド等が挙げられる。
化学重合開始剤(c−1)として用いられるパーオキシジカーボネートとしては、例えば、ジ−3−メトキシパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルパーオキシジカーボネート、及びジアリルパーオキシジカーボネート等が挙げられる。
化学重合開始剤(c−1)として用いられるアゾ化合物としては、例えば、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2,2−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}等が挙げられる。
これらの有機過酸化物及びアゾ化合物の中でも、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)の存在下におけるラジカル生成能力から、ジアシルパーオキサイド、ハイドロパーオキサイド、アゾ化合物が化学重合開始剤(c−1)として好ましく用いられ、硬化物の変色や気泡の発生が抑制されることから、ハイドロパーオキサイドがより好ましい。その中でもベンゾイルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド及び2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)が化学重合開始剤(c−1)として好ましく用いられ、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイドがより好ましく用いられる。
光重合開始剤(c−2)としては、(ビス)アシルホスフィンオキサイド類、チオキサントン類又はチオキサントン類の第4級アンモニウム塩、ケタール類、α−ジケトン類、クマリン類、アントラキノン類、ベンゾフェノン、ベンゾイン、ベンゾインアルキルエーテル化合物類、ベンゾインフェニルエーテル化合物類、及びα−アミノケトン系化合物等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明における重合開始剤(c)の配合量は特に限定されないが、重合性の観点から、(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体(b)としての(メタ)アクリル酸エステル総量100重量部に対し、重合開始剤(c)が0.001〜30重量部含有されることが好ましい。重合開始剤(c)の配合量が0.001重量部未満の場合、重合が十分に進行せず、切削性が低下するおそれがある。重合開始剤(c)の配合量は、0.05重量部以上がより好ましく、0.1重量部以上がさらに好ましい。一方、重合開始剤(c)の配合量が30重量部を超える場合、重合開始剤自体の重合性能が低い場合には、切削加工用ブロックからの析出を招くおそれがある。重合開始剤(c)の配合量は、20重量部以下がより好ましく、15重量部以下がさらに好ましく、10重量部以下がとりわけ好ましい。
無機フィラー(d)
本発明の切削加工用ブロックには、切削性を向上させるために、無機フィラー(d)が配合されることが好ましい。
無機フィラー(d)の材料としては、例えば、石英、シリカ、アルミナ、シリカ−チタニア、シリカ−チタニア−酸化バリウム、シリカ−ジルコニア、シリカ−アルミナ、ランタンガラス、ホウケイ酸ガラス、ソーダガラス、バリウムガラス、ストロンチウムガラス、ガラスセラミック、アルミノシリケートガラス、バリウムボロアルミノシリケートガラス、ストロンチウムボロアルミノシリケートガラス、フルオロアルミノシリケートガラス、カルシウムフルオロアルミノシリケートガラス、ストロンチウムフルオロアルミノシリケートガラス、バリウムフルオロアルミノシリケートガラス、及びストロンチウムカルシウムフルオロアルミノシリケートガラス等が挙げられる。これらもまた、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。無機フィラー(d)の形状は特に限定されず、不定形フィラー又は球状フィラー等を適宜選択して使用できる。これらの中でも、切削性と透明性の観点から、石英、シリカが好ましく用いられる。
無機フィラー(d)は、(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体(b)との混和性を調整するため、必要に応じてシランカップリング剤等の公知の表面処理剤で予め表面処理してから用いてもよい。かかる表面処理剤としては、例えば、ジメチルジクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリ(β−メトキシエトキシ)シラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、11−メタクリロイルオキシウンデシルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、及び3−アミノプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
表面処理の方法としては、公知の方法を特に限定されずに用いることができ、例えば、無機フィラーを激しく攪拌しながら上記の表面処理剤をスプレー添加する方法、適当な溶媒へ無機フィラーと上記の表面処理剤とを分散又は溶解させた後、溶媒を除去する方法、又は水溶液中で上記の表面処理剤のアルコキシ基を酸触媒により加水分解してシラノール基へ変換し、該水溶液中で無機フィラー表面に付着させた後、水を除去する方法等がある。いずれの方法においても、通常50℃〜150℃の範囲で加熱することにより、無機フィラー表面と上記の表面処理剤との反応を完結させ、表面処理を行うことができる。
無機フィラー(d)の平均粒子径は、切削加工用ブロックの切削性及び透明性の観点から、0.001〜0.10μmが好ましく、0.002〜0.09μmがより好ましく、0.004〜0.05μmがさらに好ましく、0.005〜0.04μmが特に好ましい。
なお、本明細書において、フィラーの平均粒子径は、レーザー回折散乱法や粒子の電子顕微鏡観察により求めることができる。具体的には、0.10μm以上の粒子の粒子径測定にはレーザー回折散乱法が、0.10μm以下の超微粒子の粒子系測定には電子顕微鏡観察が簡便である。0.10μmはレーザー回折散乱法により測定した値である。
レーザー回折散乱法は、例えば、レーザー回折式粒度分布測定装置(SALD−2100:島津製作所製)により、0.2%ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液を分散媒に用いて測定することができる。
電子顕微鏡観察は、例えば、粒子の走査型電子顕微鏡(日立製作所製、S−4000型)写真を撮り、その写真の単位視野内に観察される粒子(200個以上)の粒子径を、画像解析式粒度分布測定ソフトウェア(Macview(株式会社マウンテック))を用いて測定することにより求めることができる。このとき、粒子の粒子径は、粒子の最長の長さと最短の長さの算術平均値として求められ、粒子の数とその粒子径より、平均一次粒子径が算出される。
無機フィラー(d)の配合量は特に限定されないが、硬化前の組成物の取り扱い性及び切削加工用ブロックの機械的強度の観点から、成分(a)と成分(b)の総量100重量部に対して、0.1〜30重量部以下であることが好ましく、0.5〜20重量部以下であることがより好ましく、1.0〜15重量部以下であることがさらに好ましい。フィラー(d)の含有量が30重量部以下であると硬化前の組成物の取り扱い性とブロックの耐衝撃性が良好に保たれる。また、無機フィラー(d)の配合量は、組成物全体に対して18重量%以下が好ましく、15重量%以下がより好ましく、10重量%以下がさらに好ましく、9.5重量%以下が特に好ましい。
本発明の切削加工用ブロックには、機械的性能等の調整を目的として、無機フィラー(d)以外のフィラーを配合してもよい。無機フィラー(d)以外のフィラーとしては、例えば、有機フィラー及び有機−無機複合フィラー等が挙げられる。一方で、本発明の切削加工用ブロックは、無機フィラーとして無機フィラー(d)のみを含む態様であってもよく、フィラーとして無機フィラー(d)のみを含む態様であってもよい。
有機フィラーの材料としては、例えば、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、メタクリル酸メチル−メタクリル酸エチル共重合体、架橋型ポリメタクリル酸メチル、架橋型ポリメタクリル酸エチル、ポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリオキシメチレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、エチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−スチレン共重合体、及びアクリロニトリル−スチレン−ブタジエン共重合体が挙げられ、これらは単独で又は2種以上の混合物として用いることができる。有機フィラーの形状は特に限定されず、フィラーの粒子径を適宜選択して使用できる。
有機−無機複合フィラーは、例えば、上記の無機フィラーにモノマーを予め添加し、ペースト状にした後に重合させ、粉砕することによって得ることができる。有機−無機複合フィラーとしては、例えば、TMPTフィラー(トリメチロールプロパンメタクリレートとシリカフィラーとを混和、重合させた後に粉砕して得られるフィラー)を用いることができる。有機−無機複合フィラーの形状は特に限定されず、フィラーの粒子径は適宜選択できる。
重合促進剤(e)
本発明の切削加工用ブロックに用いられる組成物は、重合性の調整を目的として、重合促進剤(e)を含むことができる。重合促進剤(e)としては、例えば、チオ尿素化合物、アミン類、遷移金属化合物、スズ化合物、アルデヒド類、有機リン化合物、ボレート化合物、バルビツール酸誘導体、及びトリアジン化合物等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
重合促進剤(e)として用いられるチオ尿素化合物としては、例えば、1−(2−ピリジル)−2−チオ尿素、チオ尿素、メチルチオ尿素、エチルチオ尿素、N,N’−ジメチルチオ尿素、N,N’−ジエチルチオ尿素、N,N’−ジ−n−プロピルチオ尿素、N,N’−ジシクロヘキシルチオ尿素、トリメチルチオ尿素、トリエチルチオ尿素、トリ−n−プロピルチオ尿素、トリシクロヘキシルチオ尿素、テトラメチルチオ尿素、テトラエチルチオ尿素、テトラ−n−プロピルチオ尿素、テトラシクロヘキシルチオ尿素、3,3−ジメチルエチレンチオ尿素、及び4,4−ジメチル−2−イミダゾリジンチオン等が挙げられる。これらの中でも、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)の存在下における切削加工用ブロックに用いられる組成物の適度な硬化性の観点から、1−(2−ピリジル)−2−チオ尿素又は4,4−ジメチル−2−イミダゾリジンチオンが重合促進剤(e)として好ましく用いられる。
重合促進剤(e)として用いられるアミン類は、例えば、n−ブチルアミン、n−ヘキシルアミン、n−オクチルアミン等の第1級脂肪族アミン;ジイソプロピルアミン、ジブチルアミン、N−メチルエタノールアミン等の第2級脂肪族アミン;N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、N−n−ブチルジエタノールアミン、N−ラウリルジエタノールアミン、2−(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート、N−メチルジエタノールアミンジメタクリレート、N−エチルジエタノールアミンジメタクリレート、トリエタノールアミンモノメタクリレート、トリエタノールアミンジメタクリレート、トリエタノールアミントリメタクリレート、トリエタノールアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン等の第3級脂肪族アミンが挙げられる。N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−3,5−ジメチルアニリン、N,N−ジ(2−ヒドロキシエチル)−p−トルイジン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−3,4−ジメチルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−4−エチルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−4−イソプロピルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−4−t−ブチルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−3,5−ジ−イソプロピルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−3,5−ジ−t−ブチルアニリン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ジメチル−m−トルイジン、N,N−ジエチル−p−トルイジン、N,N−ジメチル−3,5−ジメチルアニリン、N,N−ジメチル−3,4−ジメチルアニリン、N,N−ジメチル−4−エチルアニリン、N,N−ジメチル−4−イソプロピルアニリン、N,N−ジメチル−4−t−ブチルアニリン、N,N−ジメチル−3,5−ジ−t−ブチルアニリン、4−(N,N−ジメチルアミノ)安息香酸エチル、4−(N,N−ジメチルアミノ)安息香酸メチル、4−(N,N−ジメチルアミノ)安息香酸n−ブトキシエチル、4−(N,N−ジメチルアミノ)安息香酸2−〔(メタ)アクリロイルオキシ〕エチル、4−N,N−ジメチルアミノベンゾフェノン、及び4−ジメチルアミノ安息香酸ブチル等の芳香族アミンが挙げられる。これらの中でも、切削加工用ブロックに用いられる組成物に優れた硬化性を付与する観点から、4−(N,N−ジメチルアミノ)安息香酸エチル、4−(N,N−ジメチルアミノ)安息香酸n−ブトキシエチル、及び4−N,N−ジメチルアミノベンゾフェノンからなる群から選択される少なくとも1つが好ましく用いられる。
重合促進剤(e)として用いられる遷移金属化合物としては、例えば、バナジウム化合物、銅化合物、コバルト化合物等が挙げられる。バナジウム化合物としては、例えば、四酸化二バナジウム(IV)、バナジルアセチルアセトナート(IV)、シュウ酸バナジル(IV)、硫酸バナジル(IV)、オキソビス(1−フェニル−1,3−ブタンジオネート)バナジウム(IV)、ビス(マルトラート)オキソバナジウム(IV)、五酸化バナジウム(V)、及びメタバナジン酸ナトリウム(V)等が挙げられる。銅化合物としては、例えば、アセチルアセトン銅、酢酸第2銅、オレイン酸銅、塩化第2銅、及び臭化第2銅等が挙げられる。コバルト化合物としては、例えば、アセチルアセトンコバルト、酢酸コバルト、オレイン酸コバルト、塩化コバルト、及び臭化コバルト等が挙げられる。
スズ化合物としては、例えば、ジ−n−ブチル錫ジマレート、ジ−n−オクチル錫ジマレート、ジ−n−オクチル錫ジラウレート、及びジ−n−ブチル錫ジラウレート等が挙げられる。
重合促進剤(e)として用いられるアルデヒド類としては、例えば、テレフタルアルデヒド及びベンズアルデヒド誘導体等が挙げられる。ベンズアルデヒド誘導体としては、例えば、ジメチルアミノベンズアルデヒド、p−メチルオキシベンズアルデヒド、p−エチルオキシベンズアルデヒド、及びp−n−オクチルオキシベンズアルデヒド等が挙げられる。
これらの重合促進剤(e)の中でも、硬化性の調節が容易で切削加工用のブロックの成形性の観点から、チオ尿素化合物が特に好ましく用いられ、さらにこれらの中でも1−(2−ピリジル)−2−チオ尿素、4,4−ジメチル−2−イミダゾリジンチオンが重合促進剤(e)として最も好ましく用いられる。
重合促進剤(e)の切削加工用ブロックに用いられる組成物における配合量は特に限定されないが、得られる組成物の硬化性等の観点から、重合性単量体(b)の総量100重量部に対して、重合促進剤(e)が0.001〜10重量部含有されていることが好ましい。重合促進剤(e)の配合量が0.001重量部未満の場合、重合が十分に進行せず、成形体が得られないおそれがある。重合促進剤(e)の配合量は、0.01重量部以上が好ましい。一方、重合促進剤(e)の配合量が10重量部を超える場合、重合が早すぎるために気泡や引けのない成形体が得られないおそれがある。重合促進剤(e)の配合量は、1.0重量部以下がより好ましい。
また、本発明の歯科用の切削加工用ブロック用の重合性組成物には、性能を低下させない範囲内で、公知の添加剤を配合することができる。かかる添加剤としては、例えば、重合禁止剤、酸化防止剤、着色剤(顔料、染料、繊維等)、紫外線吸収剤、有機溶媒、及び増粘剤が挙げられる。本発明において、例えば、着色剤を含む重合性組成物を使用して、透明感のある義歯床を得ることができる。
重合禁止剤としては、例えば、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ジブチルハイドロキノン、ジブチルハイドロキノンモノメチルエーテル、t−ブチルカテコール、2−t−ブチル−4,6−ジメチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチルフェノール、及び3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシトルエン等が挙げられる。重合禁止剤の含有量は、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)と、重合性単量体(b)の総量100重量部に対して0.001〜1.0重量部が好ましい。
上記の成分が混合されることで、切削加工用ブロック用の重合性組成物が調製される。通常は、前記(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)を重合性単量体(b)に溶解させた後に、この溶解液に他の成分を常温で混合して重合性組成物を調製する。使用する(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)と重合性単量体(b)の種類により、重合性単量体(b)に対する(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)の溶解性が変わるが、一般的に、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)を重合性単量体(b)に溶解するためには、室温にて混合物を長時間撹拌する必要がある。そこで、該混合物を、重合性単量体(b)が揮発しない程度(例えば約40℃)に加温することで、この溶解するための撹拌時間を短縮することができる。本発明においては、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)が重合性単量体(b)に溶解している重合性組成物を硬化することにより、得られる切削加工用ブロックにおいて良好な切削性が発現する。なお、本明細書において、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)が重合性単量体(b)に溶解しているとは、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)と重合性単量体(b)の混合物を常温でナイロンメッシュ(110個/2.54cm2、繊維径70μm)を通過させた場合に、該ナイロンメッシュ上に通過せずに残った不溶分(ゲル分)の重量が、該混合物の重量に対して1重量%未満であることを意味する。
このようにして調製された重合性組成物がブロック状に成形され、さらに光照射又は加熱されることで硬化することにより、切削加工用ブロックが得られる。該重合性組成物の成形にあたっては、例えば、金属やガラス、樹脂製の成形型と蓋が準備される。成形型はキャビティを備える。キャビティは、例えば、角柱状、円柱状、角板状、円盤状に形成される。成形型のキャビティに組成物が充填された後、このキャビティ内が減圧されて組成物から気泡が除去される。次に、この成形型に蓋がされてキャビティが閉塞された状態で組成物が加圧下又は常圧下で、光照射又は加熱されることで重合する。これにより、角柱状、円柱状、角板状、円盤状のキャビティからブロックが得られる。光照射の場合、成形時の光源は適宜選択することができるが、可視光線、紫外線等が挙げられる。加熱する場合、成形時の加熱温度は適宜調整することができるが、例えば、50〜150℃の範囲である。圧力は成形時に適宜調整することができるが、例えば、常圧〜200MPaの範囲である。成形時の光量、温度及び圧力は、必要に応じて経時的に変動させてもよい。また、成形型の代わりに、角柱状、円柱状、角板状、円盤状に刳り抜いた樹脂やゴム製のパッキン、又は樹脂やゴム製のチューブを角型、円状に変形させて、金属やガラス、樹脂製のプレートで挟み込んだ後、組成物をパッキン又はチューブ内に充填し、前記の成形型を用いた場合と同様に処置して、ブロックが得られる。
本発明では、切削加工用ブロックはその体積が15cm3以上500cm3以下の範囲と成るように形成される。このため、15cm3以上500cm3以下の容積を有するキャビティを備える成形型が使用される。また、パッキン、チューブは15cm3以上500cm3以下の容積を有するよう加工される。切削加工用ブロックの体積は、切削加工性とクラックの発生の観点から、15cm3以上500cm3以下の範囲であることが好ましく、20cm3以上450cm3以下の範囲であることがより好ましく、50cm3以上400cm3以下の範囲であることがさらに好ましい。
切削加工用ブロックはCAD/CAMシステム(CAD/CAM 装置)によって切削加工され、義歯床、人工歯一体型の義歯床が作製される。切削加工用ブロックがCAD/CAMシステムによって切削加工されると、手作業の場合と比較して、均一な義歯床および人工歯一体型の義歯床が得られる。
本発明の切削加工用ブロックは体積が15cm3以上500cm3以下の範囲であって、大きいサイズの切削加工用ブロックの作製が可能となるため、義歯床を形成することが可能となる。また、本発明では、上記のように大きいサイズでありながら、重合時にクラックの発生が抑制される。さらに、切削加工性に優れるため、大きいサイズでありながら、短時間での切削加工が可能となる。
本発明の切削加工用ブロックの曲げ強さとしては、80MPa以上が好ましく、100MPa以上がより好ましい。曲げ強さの測定方法は、後記する実施例に記載のとおりである。
本発明の切削加工用ブロックのシャルピー衝撃強度としては、20kJ/m2を超える値であり、25kJ/m2以上が好ましく、30kJ/m2以上がより好ましい。シャルピー衝撃強度の測定方法は、後記する実施例に記載のとおりである。
本発明は、本発明の効果を奏する限り、本発明の技術的範囲内において、上記の構成を種々組み合わせた態様を含む。
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
次に、実施例又は比較例に係る重合性組成物に用いた各成分を略号及び略称とともに以下に説明する。
[(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)]
PMMA:非架橋ポリメチルメタクリレート粉、根上工業社製「ハイパールM4003」、Mw1000000、ガラス転移温度105℃
PMMA−PEMA:非架橋ポリメチルメタクリレート−ポリエチルメタクリレート共重合体粉、根上工業社製「ハイパールM4501」、Mw1000000、ガラス転移温度84℃
PEMA:非架橋ポリエチルメタクリレート重合体粉、根上工業社製「ハイパールM5001」、Mw300000、ガラス転移温度65℃
[単官能(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体(b−1)]
MMA:メチルメタクリレート ホモポリマーのガラス転移温度105℃
TBM:t−ブチルメタクリレート ホモポリマーのガラス転移温度107℃
IBM:イソボルニルメタクリレート ホモポリマーのガラス転移温度180℃
[多官能(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体(b−2)]
UDMA:2,2,4−トリメチルヘキサメチレンビス(2−カルバモイルオキシエチル)ジメタクリレート
U4TH:N,N’−(2,2,4−トリメチルヘキサメチレン)ビス[2−(アミノカルボキシ)プロパン−1,3−ジオール]テトラメタクリレート
TCDDM:トリシクロデカンジイソシアネートと2−ヒドロキシエチルメタクリレートの反応物
HD:1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート
[化学重合開始剤(c−1)]
THP:1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド
CHP:クメンハイドロパーオキサイド
[無機フィラー(d)]
(d)−1:ジメチルジクロロシラン表面処理コロイドシリカ粉(日本アエロジル社製「R972」) 平均粒子径 0.016μm
(d)−2:コロイドシリカ粉(日本アエロジル社製「アエロジル380」)平均粒子径 0.008μm
[重合促進剤(e)]
DMETU:4,4−ジメチル−2−イミダゾリジンチオン
PTU:1−(2−ピリジル)−2−チオ尿素
[重合禁止剤]
BHT:3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシトルエン
[実施例1〜11及び比較例1〜4]
表1及び表2に示す各成分を常温(20℃±15℃、JIS(日本工業規格) Z 8703−1983)下で混合して、実施例1〜11及び比較例1〜4に係る各切削加工用ブロック用の組成物を調製した。実施例1〜11及び2〜3については、後述の(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)の溶解性の評価方法に記載された方法で、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)を重合性単量体(b)に溶解させたのち(比較例3は不溶)、得られた混合物を残りの成分と常温下で混合して、組成物を調製した。次に、実施例1〜7及び比較例1〜4の各組成物について、太さ3.3cmのシリコンチューブを直径8cmの円形に丸め、縦横25cm、厚さ0.5cmのガラス板で挟み、締め付け金具で固定、増し締めして、ガラス板のクリアランスを3.0cmに調節した後、予めシリコンチューブに切り欠きを設けておき、そこから組成物を流し込み、30℃の水中で12時間、120℃のオーブンで2時間加熱して、実施例1〜7、比較例1〜4に係る直径8cm、厚さ3.0cm、容積150cm3の円盤状ブロックを作製した。実施例8及び10では、シリコンチューブを直径10cmの円形にした以外、実施例1〜7と同様に処理した。実施例9及び11では、シリコンチューブを直径12cmの円形にした以外、実施例1〜7と同様に処理した。
<(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)の重合性単量体(b)に対する溶解性>
表1の実施例1〜11並びに表2の比較例2及び3に示す成分のうち、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)及び重合性単量体(b)を表に記載の分量で混合したものを40℃で12時間撹拌した後、該混合物を常温でナイロンメッシュ(110個/2.54cm2、繊維径70μm、メッシュテック製 N−NO.110S)を通過させ、該ナイロンメッシュ上に通過せずに残った不溶分(ゲル分)の重量を測定した。実施例1〜11及び比較例2の混合物の場合、ナイロンメッシュ上に残存した不溶分(ゲル分)の重量は、混合物の重量に対して1重量%未満であり、いずれも(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)が重合性単量体(b)に溶解していることが確認できた。一方、比較例3の混合物はナイロンメッシュを通過することができず、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)が重合性単量体(b)に膨潤しているだけで溶解していないことが確認できた。
<クラック評価>
各実施例及び比較例において、組成物の成形を5回繰り返すことで、5個の切削加工用ブロックを得た。これらのブロックの外観を目視で観察し、5個のブロックのうち1個でもクラックが生じている場合には「あり」、全てのブロックにクラックが観察されなかった場合を「なし」と評価した。
<切削性評価(研磨深さ、切削屑)>
ダイヤモンドポイントHP 形態番号25(松風製)を装着したULTIMATE500(ナカニシ製)を用いて、空中10000rpm、500gの荷重でダイヤモンドポイントHPをブロックの平面に対し垂直に押し当て、5秒後の研削深さを測定した。また、ダイヤモンドポイントHPへの、切削屑の形状と切削屑の巻きつきの有無を目視で観察し、切削屑が粉状で巻きつきがないものを「良」、切削屑が紐又は襞状で巻きつきが見られるものを「不良」とした。
<耐衝撃性評価(シャルピー衝撃強度)>
実施例及び比較例で得られた各ブロックから、厚さ4mm、縦80mm、横10mmの試験片を切り出した。得られた試験片について、JIS K 7111:2012 第1部(非計装化試験)に準拠してシャルピー衝撃試験(ノッチなし、フラットワイズ法)により評価した。試験片は5個でその平均をシャルピー衝撃強度とした。シャルピー衝撃強度が20kJ/m2を超える値であれば耐衝撃性に優れ、25kJ/m2以上が好ましく、30kJ/m2以上がより好ましい。
<耐摩耗試験(滑沢耐久性)>
実施例及び比較例で得られた各ブロックから、厚さ2mm、縦30mm、横20mmの試験片を切り出した。試験片表面を1500番耐水研磨紙で研磨し、この研磨面を技工用ポリッシングボックス(KAVO社製、EWL80)を用いて3000rpmで20秒間バフ研磨して試験片を作製した。研磨材にポーセニーハイドン(PオRセNY HYDON)(東京歯材社製)を用いた。摩耗試験前の試験片の光沢度(G1)を光沢計(日本電色工業社製VG−107)を用いて、鏡を100%としたときの割合で示した。測定の角度は60°とした。同試験片を歯ブラシ摩耗試験機(大栄科学精器(株)製)により、市販の歯磨材/蒸留水=60/40重量部の懸濁液、及び市販の義歯ブラシを用いて、荷重250g下、40000サイクルの摩耗試験を行った。摩耗試験後の試験片表面の光沢度(G2)を摩耗試験前と同様の方法で示した。摩耗試験前後の試験片表面の光沢度から、滑沢耐久性(%)を{(G2)×100}/(G1)として表した。滑沢耐久性70%以上が、好適とされる。
<曲げ強さ評価>
実施例及び比較例で得られた各ブロックから、高さ2.0mm×幅2.0mm×長さ25mmの試験片を切り出した。得られた試験片について、ISO4049:2000に準拠して曲げ試験により評価した。すなわち、万能試験機(島津製作所社製、オートグラフAG−100kNI)を用いて、クロスヘッドスピード1mm/minで曲げ試験を実施した。ブロックの曲げ強さとしては、80MPa以上が好ましく、100MPa以上がより好ましい。
<透明性試験>
実施例及び比較例で得られた各ブロックから、厚さ1.0mm×直径15mmの試験片を切り出した。得られた試験片について、分光色差計(日本電色工業社製、SE2000、D65光源)を用いて、透明性ΔLを測定した。透明性ΔLは以下の式で定義される。なお、高い審美性を確保するために、透明性(ΔL)が50以上である必要がある。結果を表1及び表2にそれぞれ示す。
ΔL=L*W−L*B
L*Wは、白背景で測定されるL*a*b*表色系における明度指数L*を表し、L*Bは、黒背景で測定されるL*a*b*表色系における明度指数L*を表す。
表1及び表2に示すとおり、実施例1〜11における切削加工用ブロックはクラックの発生がなく、そこから得られた試験片は、切削性、耐衝撃性、耐摩耗性、機械的強度及び透明性に優れていた。特に、実施例1〜11に係る歯切削加工用ブロックは、比較例1、4に係る切削加工用ブロックと比較して、クラックの発生を抑制できた。実施例1〜11に係る切削加工用ブロックの切削加工性は、比較例2〜3に係る切削加工用ブロックの切削加工性よりも優れていた。実施例1〜11に係る切削加工用ブロックの耐衝撃性は、比較例1〜4に係る切削加工用ブロックの耐衝撃性よりも優れていた。実施例1〜11に係る切削加工用ブロックの耐摩耗性は、比較例1〜4に係る切削加工用ブロックの耐摩耗性よりも優れていた。実施例1〜11に係る切削加工用ブロックの機械的強度は、比較例2に係る切削加工用ブロックの機械的強度よりも優れていた。実施例1〜11に係る切削加工用ブロックは、比較例4に係る切削加工用ブロックより高い透明性を示し、審美性にも優れていた。
Figure 0006383701
Figure 0006383701
本発明の切削加工用ブロックは、クラックがなく、切削時の切削性に優れるとともに、口腔内で使用した時の耐衝撃性、耐摩耗性、及び審美性にも優れる。また、本発明の切削加工用ブロックは、前記特性に加えて機械的強度にも優れる。このため、CAD/CAMシステムによる切削加工して使用される歯科治療における義歯床用ブロックに特に適している。

Claims (8)

  1. (メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)と、単官能性(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体(b−1)及び多官能性(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体(b−2)を含む重合性単量体(b)と、重合開始剤(c)を含有し、該(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)の含有量が該重合性単量体(b)100重量部に対して1〜50重量部であり、かつ、該(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)が該重合性単量体(b)に溶解している組成物を硬化して得られる、切削加工用ブロック。
  2. 前記単官能性(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体(b−1)のホモポリマーのガラス転移温度が、60℃以上である、請求項1に記載の切削加工用ブロック。
  3. 前記多官能性(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体(b−2)が、ウレタン結合を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体を含む、請求項1又は2に記載の切削加工用ブロック。
  4. 平均粒子径0.001〜0.10μmの無機フィラー(d)をさらに含む請求項1〜3のいずれか1項に記載の切削加工用ブロック。
  5. 体積が15cm3以上500cm3以下である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の切削加工用ブロック。
  6. 義歯床用である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の切削加工用ブロック。
  7. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の切削加工用ブロックから作製される、歯科用補綴物。
  8. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の切削加工用ブロックを切削加工して得られる、義歯床。
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