以下、添付図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
本発明の実施形態に係る水洗大便器装置について、図1〜図4を参照しながら説明する。図1は水洗大便器装置FTの斜視図である。また、図2は水洗大便器装置FTの断面図であって、水洗大便器装置FTをその左右方向に垂直な面で切断した場合の断面を示している。図3は水洗大便器装置FTの上面図である。図3では、後に説明するタンク20の内部構造を示すため、タンク20の上蓋201を取り外した状態を描いている。図4は、水洗大便器装置FTを後方側から見た場合における、タンク20の内部を示す背面図である。
図1〜図4に示したように、水洗大便器装置FTは、大便器本体10と、大便器本体10の後方側(図2では右側、図3では上側)において大便器本体10の上面101に設置されたタンク20とを備えている。また、大便器本体10のタンク20よりも前方の上面には、使用者の局部を洗浄するための局部洗浄装置2や、図示しない便座や便蓋1が設置されている。水洗大便器装置FTは、大便器本体10によって汚物を受け止めて、当該汚物を、タンク20から供給される水(洗浄水)によって図示しない排水管に排出する装置である。
尚、以下の説明においては、特に断らない限り、大便器本体10に着座した状態の使用者から見て右側(図3では左側)のことを「右側」と称し、大便器本体10に着座した状態の使用者から見て左側のことを「左側」(図3では右側)と称することとする。また、大便器本体10に着座した状態の使用者から見て前方側(図2では左側、図3では下側)のことを「前側」又は「前方側」と称し、大便器本体10に着座した状態の使用者から見て後方側(図2では右側、図3では上側)のことを「後側」又は「後方側」と称することとする。
大便器本体10は、ボウル部110と、リム部120と、導水路130と、排水トラップ管路140とを有している。ボウル部110は、上方から落下する汚物を一時的に受け止める部分である。リム部120は、ボウル部110の上縁部に形成されており、図2に示したように、ボウル部110の内側面の一部を外周側に向けて後退させたような形状となっている。後に説明するように、リム部120は、ボウル部110に向けて供給された水が旋回して流れる流路となっている。リム部120は、ボウル部110の上縁に沿って一周するような略円形(上面視)の流路として形成されている。
導水路130は、タンク20から供給された水をボウル部110に導くために、大便器本体10の内部に形成された流路である。導水路130は、その一端が大便器本体10の上面101に開口しており、タンク20から供給される水の入口131となっている。入口131が形成されている位置は、大便器本体10の上面101のうち後方側の部分であり、且つ左右方向(横方向)における中央の部分である。
導水路130は、その下流側において二つの流路(第一導水路132、第二導水路134)に分岐している。一方の流路である第一導水路132は、その下流側の端部がリム部120のうち右側の部分において開口しており、当該開口が水の出口133となっている。タンク20から入口131に水が供給されると、その一部は第一導水路132の内部を通り、出口133から噴出してリム部120に供給される。
他方の流路である第二導水路134は、その下流側の端部がリム部120のうち左側且つ後方寄りの部分において開口しており、当該開口が水の出口135となっている。タンク20から入口131に水が供給されると、その一部は第二導水路134の内部を通り、出口135から噴出してリム部120に供給される。
出口133から水が噴出する方向は、略円形の流路として形成されたリム部120の円周に沿う方向であり、且つ上面視において反時計回りの方向となっている。出口135から水が噴出する方向も、略円形の流路として形成されたリム部120の円周に沿う方向であり、且つ上面視において反時計回りの方向となっている。このため、出口133及び出口135からリム部120に噴出した水は、いずれもリム部120に沿って反時計回りに旋回して流れながら、リム部120の全体からボウル部110に向けて流下する。
排水トラップ管路140は、ボウル部110の下端と図示しない排水管とを接続する流路である。排水トラップ管路140は、ボウル部110の下端から下流に向かう方向に沿って上り勾配となるように形成されている上昇流路141と、上昇流路141の上端から下流に向かう方向に沿って下り勾配となるように形成されている下降流路142とを有している。このような構成により、ボウル部110の下部から上昇流路141の下部に渡る部分には水を貯留することが可能となっており、貯留した水によって封水WTが形成されている。下降流路142の下端には図示しない排水管が接続されている。排水管は建物の内部に配置された配管であって、その下流側の端部が下水管に接続されている。
タンク20からボウル部110に向けて水が供給されると、上記のように、当該水はリム部120を旋回して流れながら、リム部120の全体からボウル部110に向けて流下する。水はボウル部110に対して上方から追加され、下端部から上昇流路141及び下降流路142を通って排出される。その結果、ボウル部110底部に貯留されている水(封水WT)には下向きの流れが生じることとなる。
ボウル部110において一時的に受け止められていた汚物は、上方のリム部120から供給される水によって下方に向けて押し込まれ、ボウル部110の下端に向かって移動する。その後、汚物は水流によって上昇流路141を通り下降流路142に到達して、水と共に図示しない排水管に向けて落下する。
タンク20は内部に水が貯留された容器であって、当該水を導水路130の入口131に供給するためのものである。タンク20は、図4に示すように、第一タンク部210と、第一タンク部210の底壁211の一部を下方に伸ばすように形成された第二タンク部220(凹部)とを有している。第一タンク部210と第二タンク部220はいずれも略直方体の容器であって、両者の内部空間が互いに連通している。第二タンク部220は、第一タンク部210の底壁211のうち左側の部分に接続されている。言い換えると、第二タンク部220は、第一タンク部210の底壁211のうち左側の部分を下方に突出させた凹部を形成している。
第一タンク部210の底壁211(第二タンク部220よりも右側の部分)は、大便器本体10の上面101のうち後方側の部分に対して上方から近接した状態となっている。具体的には、大便器本体10の後端部150かつ中央部151の上面101には入口131が形成されているが、第一タンク部210の底壁211は、入口131の周囲を上方から覆うように、大便器本体10の上面101に対して上方から近接した状態となっている。また、底壁211の中央部213には入口131と略同一形状の開口212が形成されており、開口212と入口131とが上面視で重なっている(図2参照)。このため、タンク20の内部に貯留されている水は、開口212及び入口131を通って導水路130の内部に流入し、ボウル部110に向かって流れることが可能となっている。
大便器本体10の左右方向の幅は、第一タンク部210を上記のように配置した際に、第二タンク部220が大便器本体10の上面に干渉しないよう、大便器本体10の後方側において小さく形成されている。言い換えると、大便器本体10の入口131の左右に開放空間部を設けるよう形成されている。したがって、第二タンク部220の底壁221は、大便器本体10の上面101よりも低い位置に配置されている。
上記のようにタンク20が配置されることにより、タンク20が、大便器本体10の後端部よりも前方側に位置すると共に、タンク20の下端部が、大便器本体10の上面よりも下方側に位置している。その結果、水洗大便器装置FT全体の前後方向における寸法と、上下方向における寸法とが、いずれも小さくなっており、水洗大便器装置FTのデザイン性が向上している。
また、タンク20のうち第二タンク部220のみを大便器本体10の上面よりも下方側に設置しているため、タンク20に貯留されている水の水頭は維持されている。その結果、上記のように水洗大便器装置FT全体の小型化を実現しながらも、後に説明するジェットポンプユニット300の性能(リム部120に向けて所定量及び所定流量の水を供給する性能)は維持されている。
次に、タンク20の内部の構成について図4及び図5を参照しながら説明する。なお、図5は、水洗大便器装置FTのタンク20の内部を模式的に示す上面図である。タンク20の内部には、給水管231と、バルブユニットVUと、ジェットポンプユニット300とが配置されている。なお、本実施形態においては、バルブユニットVUは、主弁233と、パイロット弁234から構成されている。
給水管231は、主弁233に向けて水を供給するための管であって、第一タンク部210の底壁211から鉛直上方に向かって伸びるように配置されている。給水管231は、大便器本体10の右側の開放空間部を経由して、タンク20の下方から配管されている。この給水管231の一端はタンク20の外部において図示しない水道管に接続されている。また、給水管231の他端(上端)は、タンク20の内部において主弁233に下方から接続されている。給水管231は、タンク20の内部のうち左右方向における中央よりも右側となる位置に配置されている。なお、タンク20の底壁211の右側からは、鉛直上方に向かって伸びるように筒状のカバー280が設けられており、給水管231は、この筒状のカバー280内を挿通している。
給水管231の途中(水道管と主弁233との間)には、図示しない定流量弁が配置されている。主弁233が開いた状態において主弁233に流入する水の流量は定流量弁によって一定となり、水道管の水圧によって変動することがない。
主弁233は開閉弁であって、給水管231からジェットポンプユニット300に向かう水の流路の開閉を行うものである。主弁233とジェットポンプユニット300との間にはバキュームブレーカー235が備えられており、バキュームブレーカー235の上流側が負圧となって水が逆流してしまうことが防止されている。尚、上記のように給水管231が上方に向かって伸びており、主弁233とバキュームブレーカー235とはタンク20内の高い位置に配置されている。このため、タンク20が満水となった状態においても、バキュームブレーカー235が水没してしまうことはない。
主弁233にはパイロット弁234が備えられており、パイロット弁234の動作によって主弁233の開閉が切り替えられる構成となっている。パイロット弁234には、タンク20の外側に配置されたフラッシュレバー236が、タンク20の内部に配置された操作力伝達機構237を介して接続されている。また、パイロット弁234には、タンク20の内部に配置されたフロート238が更に接続されている。パイロット弁234は、フロート238が所定の高さに至ると閉じられるようになっており、フロート238がその所定の高さよりも低い位置にあるときは開いた状態となるよう構成されている。
水洗大便器装置FTの使用者によってフラッシュレバー236が操作されると、当該操作が操作力伝達機構237を介してパイロット弁234に伝達され、パイロット弁234が開かれる。これにより主弁233が開かれた状態となり、給水管231からジェットポンプユニット300に向かって水が流れる。ジェットポンプユニット300に向かって流れた水は、タンク20の内部に貯留されていた水と共に洗浄水として導水路130に供給される。このため、タンク20の内部における水位は次第に低下していく。
ボウル部110の洗浄が終了した後も、フロート238が下降した状態であるため、主弁233は閉じられず、給水管231からジェットポンプユニット300に向かって引き続き水が流れる。ジェットポンプユニット300に向かって流れた水はタンク20の内部に供給されて、次回の洗浄のために貯留される。タンク20の内部に向けた水の供給(タンク20への注水)が行われると、タンク20の内部における水位は次第に上昇して行く。タンク20の内部においてパイロット弁234に接続されているフロート238は、水位の上昇に伴って上昇し、これによりパイロット弁234が閉じられる。パイロット弁234が閉じられると、主弁233が閉じられた状態となり、給水管231からジェットポンプユニット300への水の供給が停止される。この時点においてタンク20の内部に貯留されている水の量が、次回の洗浄のために必要な量となるように(所定の満水位となるように)、フロート238の配置が調整されている。
なお、タンク20の側壁を挟んでフラッシュレバー236に隣接する位置には、操作されたフラッシュレバー236の角度を元の角度に戻すためのばねを内蔵したフラッシュレバー復帰機構232が設けられている。また、本実施形態においては、このフラッシュレバー236とフラッシュレバー復帰機構232を合わせてフラッシュレバーユニットFUと称することとする。
ジェットポンプユニット300は、給水管231から供給された水によりジェットポンプ作用を誘発させ、これにより導水路130に向けた水の供給を行うためのものである。ジェットポンプユニット300は、ノズル310と、スロート管320とを有している。
ノズル310は、一端がノズル給水配管239を介してバキュームブレーカー235に接続されており、他端には噴射口311が形成されている管である。ノズル310は、第二タンク部220の底壁221の近傍に配置されている。主弁233が開かれると、給水管231から供給された水はノズル給水配管239を流れてノズル310に到達し、噴射口311から高速の水流として噴射される。ノズル310は、図4および図5に示すように、第二タンク部220に配置されている。図4及び図5に示した状態においては、噴射口311はその噴射方向がスロート管320の内部に向けられている。より具体的には、後述するスロート管320の傾斜スロート部330の内部に向けられている。なお、ノズル給水配管239は、ゴム製の弾性部材からなるものであり、高い柔軟性を有している。一方、ノズル310は、剛性の高い樹脂製の部材からなるものである。
スロート管320は断面が円形の管であって、図2に示すように、底壁211に形成された開口212を貫通した状態でタンク20の内部に配置されている。スロート管320の一端側には、導水路入口接続部353が設けられており、この導水路入口接続部353は、導水路130の入口131に直接的に接続されているのではなく、導水路130の入口131の内周面に対して所定の隙間を設けた状態で挿入されるよう接続されており、他端には開口である吸引口331が形成されている。なお、導水路入口接続部353は、導水路130の入口131に直接的に接続されていてももちろんよい。スロート管320は、導水路130の入口131側の部分が鉛直方向に沿っており、吸引口331側の部分が水平面に対して傾斜している。このため、その全体が逆U字形状となっている。図3に示したように、スロート管320は、上面視において前後方向に対して傾斜した状態で、タンク20の内部に配置されている。
ここで、スロート管320の具体的な形状、及びタンク20内における配置について更に説明する。図4に示したように、スロート管320は、傾斜スロート部330、屈曲スロート部352、鉛直スロート部351から構成されている。
傾斜スロート部330は、スロート管320のうち吸引口331側の部分であって、上記のように水平面に対して傾斜した状態で配置される部分である。傾斜スロート部330は、その管径が全体において略均一な円筒形状の管である。傾斜スロート部330の下端には、開口である吸引口331が形成されている。傾斜スロート部330は、吸引口331から斜め上方に向かって直線状に伸びるように形成された部分(第一直線部)ともいうことができる。
吸引口331は、その縁の全体が、傾斜スロート部330の中心軸に対して傾斜した面に沿うように形成されており、図4に示した状態においては、吸引口331の縁は水平面に沿っている。すなわち、吸引口331の縁はタンク内の水面と平行になっている。
鉛直スロート部351は、スロート管320のうち導水路入口接続部353側の部分である。鉛直スロート部351は、導水路入口接続部353から鉛直上方に向かって直線状に伸びている。
屈曲スロート部352は、鉛直スロート部351の上端から傾斜スロート部330に向かうように屈曲するよう構成されている。
本実施形態においては、タンク20の前後方向の寸法が短くなっているため、スロート管320は、上面視において、その中心軸が左右方向に略沿うように配置されている。また、吸引口331は、タンク20の内部のうち左側の端部近傍に配置されている。スロート管320及びその吸引口331がこのように配置されているため、タンク20の前後方向に沿った寸法が小さくなっているにもかかわらず、ジェットポンプ作用を効率よく発生させるために必要なスロート管320の流路長が確保されている。
より具体的には、図4、図5に示すように、傾斜スロート部330は、その中心軸が上面視において前後方向に対して傾斜しており、背面視において水平面に対しても傾斜している。このため、タンク20の限られた空間内において、傾斜スロート部330の流路長が可能な限り長く確保されている。換言すれば、スロート管320のうち上流側の部分である直線状の流路(屈曲スロート部352よりも上流側の流路)が、可能な限り長く確保されている。
このため、傾斜スロート部330の内部を流れる水は、屈曲スロート部352に到達するまでの間に、その流路断面における流速の分布が均一化される。その結果、水が屈曲スロート部352に到達した際において、流路壁面から剥離するような流れが生じたり、屈曲スロート部352の内部で淀み渦が発生したりすることが抑制される。スロート管320の形状に起因したジェットポンプ性能の低下が抑制され、スロート管320の内部におけるスムーズな水流が確保されている。また、上述したようにスロート管320が構成されているため、図4に示すように、タンク20内には、傾斜スロート部330の上方にデルタ空間D(図4において一点鎖線で囲まれている空間)が形成される。このデルタ空間Dは、傾斜スロート部330の上面側とタンク20の内壁とにより形成される空間である。また、スロート管320の後方側の側面とタンク20の後方側の側壁との間には、タンクの左右方向に水が流動する流路255が形成されている。
また、図4を見れば明らかなように、スロート管320は、鉛直スロート部351(第二直線部)の中心軸が鉛直方向に対してなす角度(本実施形態では0度である)が、傾斜スロート部330(第一直線部)の中心軸が鉛直方向に対してなす角度よりも小さくなるように、タンク20内に配置されている。
このような構成により、前後方向に沿った長さに関しては、傾斜スロート部330(第一直線部)の長さの方が、鉛直スロート部351(第二直線部)の長さよりも長くなっている。このため、タンク20内の限られた空間の大部分を、ジェットポンプ作用を効率よく発生させるために必要な傾斜スロート部330の長さを確保するための空間として有効に利用している。すなわち、スロート管320の全体を小型のタンク20内に配置する構成としながらも、傾斜スロート部330(第一直線部)の長さを十分に確保している。
このため、傾斜スロート部330の内部を流れる水の流路断面における流速の分布は、屈曲スロート部352に到達するまでの間に十分に均一化されるので、スロート管320の内部で淀み渦が発生することや、スロート管320の内面が局所的な高速水流に干渉することが抑制される。その結果、スロート管320内において水流が受ける抵抗が抑制され、ジェットポンプ作用の効率の低下が抑制されるため、効率よく流量を増大させて導水路130に水を供給することが可能となっている。
また、吸引口331は第二タンク部220の内部に配置されている。その結果、傾斜スロート部330の下端である吸引口331は、上面視において第二タンク部220と重なる位置に配置されている。換言すれば、吸引口331の下方側において、タンク20の底壁の一部が下方に伸ばされた形状となっている。
このような構成であるから、吸引口331をより下方に配置して、傾斜スロート部330(第一直線部)の長さを更に十分に確保することが可能となっている。また、タンク20内のうち吸引口331よりも下方側の空間にはノズル310が配置されるのであるが、第二タンク部220の内部をそのための空間として利用している。換言すれば、吸引口331の下方にノズルを配置することのために、傾斜スロート部330(第一直線部)を短くしなくてもよい構成となっている。
尚、本実施形態では、吸引口331を第二タンク部220の内部に配置しているが、第二タンク部220の上端よりも高い位置に吸引口331を配置してもよい。この場合であっても、吸引口331を、上面視において第二タンク部220と重なる位置に配置した方が望ましい。
吸引口331はその縁の全体が水平面に沿うように形成されている。このような形状の縁を有する吸引口331は、スロート管320の端部を水平面に沿って切断した場合において形成されるような開口、ということができる。
このように形成された吸引口331においては、その縁の上端の高さと縁の下端の高さとが同じということになるから、両者の間に挟まれた空間、すなわち、ノズル310を配置することができないにもかかわらず無駄水を蓄えてしまう空間が存在しない。従って、ノズル310の近傍にまで吸引口331の上端が近づくように、傾斜スロート部330を下方に伸ばすことができる。その結果、タンク20が小型化されているにも拘わらず、タンク20内に貯留された水の大部分を洗浄水として有効に利用して(無駄水の量を少なくして)、ジェットポンプ作用の発生時間を十分に確保し、高い洗浄性能を発揮することが可能となっている。
また、吸引口331を上記のように形成することにより、吸引口331からスロート管320の内部に空気が流入することを防止しながら、タンク20の内部に貯留されている水の水位を吸引口331の近傍まで低下させることが可能となっている。タンク20の内部に貯留されていた水が無駄なく利用されるため、タンク20を更に小型化することが可能となっている。
また、図4に示すように、スロート管320は、傾斜スロート部330の上方に、スロート管320内部を水が流れているときに、スロート管320内部にスロート管320外部から空気を導入するための空気導入管340(供給流量低減バルブ)を有している。空気導入管340は、スロート管320を通してタンク20内の水をボウル部110に供給する際に、供給する洗浄水の流量を、洗浄水供給時に途中から一気に低減させるためのものである。
このように、空気導入管340を設けることで、ボウル部110へ洗浄水を供給する際に、タンク20内の水位が空気導入管340の上方に設けられた空気導入孔341を下回ると、洗浄水が流れているスロート管320内部に、スロート管320内の水の流れにより空気が空気導入孔341から吸い込まれ、洗浄水の供給途中から洗浄水の供給流量を一気に低下させることができる。
なお、空気導入管340は、空気を吸い込み始める水位を変更させることができるよう、空気吸込水位調整機構348を備えている。さらに、空気導入管340は、吸い込む空気の流量を調整させることができるよう、吸込空気流量調整機構349を備えている。具体的には、図8に示すように、空気導入管340は、円筒状の第一円筒管342と、第二円筒管343と、蓋体345から構成されており、第二円筒管343には、その側面に空気導入孔341が穿設されている。第二円筒管343の下方側の内周面、および、傾斜スロート部330の上面より上方に延設された第一円筒管342の上方側の外周面にはそれぞれネジが切ってあり、第二円筒管343は第一円筒管342に螺合して固定されている。したがって、第二円筒管343を第一円筒管342に対して回転させ、第二円筒管343を上下方向に移動させることができ、これにより第二円筒管343の空気導入孔341の高さを調整できるようにしている。このように空気導入孔341の高さを調整できるようにすることで、空気を吸い込み始める水位を変更可能に構成されている。
また、第二円筒管343の上部には、下方に円筒状に延びる挿入部345bを有する蓋体345が、その挿入部345を第二円筒管343に挿入した形で取り付けられている。蓋体345の挿入部345bには、切欠き345cが設けられており、この切欠き345cと第二円筒管343の空気導入孔341を連通させることで、空気導入管340には、空気導入孔341から空気を導入することができる。なお、蓋体345の上部に設けられた摘み部345aを摘まんで回転させることで、切欠き345cと空気導入孔341との重複面積を変化させ、空気の吸い込み流量を調整できるように構成している。
また、水洗大便器装置FTは、スロート管320の吸引口331の下方に、流路切換え機構390を備えている。図6は流路切換え機構390および流路切換え動作を模式的に表す模式図である。図4および図6に示すように、流路切換え機構390はフロート391および遮蔽部材392(流路切換バルブ)を有している。遮蔽部材392は、ノズル310に軸支されており、回転軸393回りに回動可能なように構成されている。また、フロート391は、図5に示すように、タンク20の前方側の側壁と左側の側壁によって形成されるコーナー部270に配置されると共に、遮蔽部材392に連結部材394を介して接続されている。流路切換え機構390は、タンク20の水位に応じたフロート391の動作に基づいて、ノズル310の噴射口311から噴射された水がスロート管320の内部に向かう状態と、当該水がタンク20内に供給される状態(タンク20に注水される状態)と、を切り換えるように構成されている。
流路切換え機構390は、ボウル部110への水の供給が行われている際(ジェットポンプ作用が生じている際)において、タンク20内の水位が所定の切り替え水位まで低下した時点で、噴射口311から噴射された水の供給先を、スロート管320の内部からタンク20内へと切り替えられるように構成されている。すなわち、タンク20内の水位が切り替え水位を上回っている間は、図6(A)に示すように、スロート管320への注水を行い、タンク20内の水位が切り替え水位まで低下した時点で、ジェットポンプ作用を停止させ、図6(B)に示すように、タンク20への注水を開始するように構成されている。具体的には、タンク20内の水位の低下に伴って、フロート391の高さも低下していくため、フロート391が低下することによって、連結部材394も下降し、これに伴って、連結部材394に連結されている遮蔽部材392が回転軸393を中心に回転する。この回転によって、遮蔽部材392が噴射口311とスロート管320の吸引口331との間に位置し、ノズル310の噴射口311から噴射された水が、遮蔽部材392に衝突して、タンク20内に水が供給される状態(タンク20に注水される状態)に切り換わるように構成されている。
なお、遮蔽部材392は、タンク20内への水の供給が完了するまで、すなわち、既に説明したように、タンク20内の水位が上昇して満水位となり、パイロット弁234及び主弁233が閉じられた状態となって、給水管231からジェットポンプユニット300への水の供給が停止されるまで、上記の位置をノズル310から噴射される高速の水の反力により保持するように構成されている。なお、噴射口311からの水の噴射が停止された後は、タンク20内の水から受ける浮力により、フロート391が上昇して元の高さに戻り、水洗大便器装置FTは待機状態となる。なお、噴射口311から噴射された水は、図6に示すように、遮蔽部材392に衝突した後に、第二タンク部220の内側側壁220a(タンクの中央側の側面)を指向するよう遮蔽部材392は構成されている。
また、フロート391は、高さ調整機構を有しており、連結部材394に対して、高さ調整が可能に固定されている。具体的には、連結部材394には、外周面にネジが切ってある回転棒395が鉛直方向に延びるように取り付けられており、この回転棒395と、内周面にネジが切ってあるフロート391を螺合させることで、連結部材394に対してフロート391を固定している。このように構成することにより、回転棒395の摘み部396を摘まんで回転棒395を回転させることで、フロート391の高さを調整できるようにしている。このように、フロート391の高さ調整を可能にしたことで、スロート管330への給水からタンク給水に切換えるタンク内の水位を変更することができる。したがって、1回の洗浄においてボウル部110へ供給する水の水量を変更することができる。
なお、摘み部396は、タンク20の上方から操作できるように配置されているため、タンク20内にジェットポンプユニット300等を配置した状態でも、フロート391の高さ調整ができる。そのため、タンク20を小型にしたとしても、高さ調整のためにジェットポンプユニット300等を取り外すなどの煩雑な作業をせずに、ボウル部110へ供給する水の水量を変更することができる。
なお、図6における二点鎖線は、一部の図示が省略されているノズル給水配管239の中心軸を表すものである。第二タンク部220内部のノズル給水配管239は、第二タンク部220の後面、第二タンク部220のタンク20の中央側とは反対側の側面220b、および第二タンク部220の前面に沿って配置されている。
タンク20の内部におけるその他の構成について、再び図4および図5を参照しながら説明する。図4および図5に示したように、タンク20内部の前方側には隔壁240が配置されている。隔壁240は、底壁211から上方に向かって伸びるように形成されている。隔壁240及び第一タンク部210の底壁211によって、タンク20の内部空間の一部が区画され、小タンク260が構成されている。小タンク260は、その上部がタンク20の内部に開放された容器であって、第一タンク部210のうち前方側且つ右側の隅に配置されている。
隔壁240のうち、後方側の隔壁240aの下端部近傍には開閉窓241が設けられている。開閉窓241は通常は開かれた状態となっており、開閉窓241を通じて小タンク260の内部と外部(隔壁240aよりも後方側の空間)とが連通している。このため、ボウル部110の洗浄が行われていない状態(待機状態)においては、タンク20内に貯留された水の水位と、小タンク260内に貯留された水の水位は等しくなっている。
フラッシュレバー236は二つの方向(大方向、小方向)に操作することが可能となっている。フラッシュレバー236が大方向に操作された場合には、開閉窓241が開かれた状態のまま、パイロット弁234及び主弁233が開かれる。小タンク260に貯留されていた水は、開閉窓241を通過して第二タンク部220に流出し、吸引口331に到達する。このため、タンク20の内部に貯留されていた水は、小タンク260に貯留されていた分を含む殆どが、スロート管320の内部に引き込まれてリム部120に供給される。
一方、フラッシュレバー236が小方向に操作された場合には、開閉窓241が閉じられると同時にパイロット弁234及び主弁233が開かれる。このため、タンク20の内部に貯留されていた水のうち小タンク260に貯留されていた水は、開閉窓241を通過することができずに小タンク260の内部に残留したままとなる。その結果、洗浄水としてリム部120に供給される水の量は少量となる。なお、開閉窓241は、隔壁240a内面にその下端部の両端が軸支された板状部材242(水量切換バルブ)によって開閉されるものであり、この板状部材242は、小タンク260の前方側に回転するよう構成されている。そのため、開閉窓241が開状態にあるときに、隔壁240aよりも後方側に配置された他の部材と板状部材242が干渉することがないため、他部材の配置自由度が高まり、タンクを小型化することができる。
尚、以下の説明において「タンク20に貯留されている水の水位」又は「タンク20内の水位」等というときには、小タンク260の外部における水位を示すものとする。すなわち、隔壁240によって二つに分けられた空間のうち、吸引口331が配置されている方の空間に貯留されている水の水位を示すものとする。小タンク260に貯留されている水の水位については、以下の説明では考慮しない。
また、水洗大便器装置FTは、オーバーフロー管253を備えている。オーバーフロー管253は、スロート管320の鉛直スロート部351の一部の側面を覆うようにして、スロート管320と一体に形成されている。したがって、オーバーフロー管253の下端側の開口は、スロート管320の鉛直スロート部351の下端側の開口と隣接するように構成されている(図7参照)。スロート管320の鉛直スロート部351の下端部とオーバーフロー管253の下端部は、タンク20の開口212を貫通するように配置されているため、オーバーフロー管253の上端のオーバーフロー孔254から流入した水は、導水路130を経て、ボウル部110へ供給される。
水洗大便器装置FTは、このようにオーバーフロー管253を備えているため、タンク20内に水を注水しているときにパイロット弁234などが破損し、注水が止まらなくなった場合でも、タンク20内の水位がオーバーフロー管253の上端まで上昇すると、オーバーフロー管253の上端のオーバーフロー孔254にタンク20内の水が流入し、タンク20内の水位がそれ以上上昇しない。したがって、タンク20内の水位がタンク20の上端近傍まで上昇し、タンク20と上蓋201の間から水が漏れ出るようなことがない。
また、水洗大便器装置FTは、リフィール水供給機構を備えている。リフィール水供給機構は、ノズル給水配管239から分岐したリフィール配管250から構成されている。リフィール配管250の端部250aには、リフィール水を吐水する吐水口251が設けられており、吐水口251は、オーバーフロー管253のオーバーフロー孔254に向けて水を吐出するよう構成されている。リフィール水は、ノズル給水配管239に水が供給されている間は、リフィール配管250を経て、常にボウル部110へ供給されるようになっている。すなわち、ボウル部110への水を供給してからタンク20内への水の注水が完了するまで、常にリフィール水はボウル部110へ供給されるよう構成されている。これにより洗浄完了後に確実に所望量の封水WTを形成することができる。
なお、リフィール配管250は、吐水口251から吐水された水をオーバーフロー孔254以外にも供給できるように構成されている。具体的には、吐水口251から吐水された水をタンク20内へ供給するよう、リフィール配管250の端部250aの位置を変化させることができるように構成されている。図7は、吐水口251から水を吐水する様子を模式的に表した模式図であり、図7(A)は、吐水口251から吐水される水をオーバーフロー管253に供給する際の様子を、図7(B)は、タンク2に供給する際の様子を表すものである。本実施形態では、スロート管320に固定された取付部250cにリフィール配管250に設けられた回転軸250bを回動可能に取付けており、これらの図に示すように、リフィール配管250の端部250aを回転軸250b回りに回転させて端部250aの位置を変化させることで、吐水口251から吐水される水の供給先を変更することができる。水洗大便器はその種類によって、リフィール水の供給が必要なものもあれば不要なものもあるが、このようにリフィール配管250の吐水口251から吐水される水の供給先を選択できるようにしたことで、水洗大便器の種類に応じて、異なる構造にする必要がない。
続いて、タンク20の小型化を実現するための工夫について説明する。水洗大便器装置FTでは、図4に示すように、スロート管320は、上面視において横方向(左右方向)となるように配置されている。このように、上面視においてスロート管320を横方向(左右方向)に延びるように配置することで、ジェットポンプユニット300の性能を犠牲にすることなくタンクを小型化している。さらに、水洗大便器装置FTでは、スロート管320のうち吸引口331側の部分(傾斜スロート部330)が、上面視及び側面視のいずれにおいても傾斜した状態でタンク20の内部に配置されている。具体的には、側面視においては、当該部分は吸引口331に向かって下るように傾斜した状態となっている。また、上面視においては、当該部分は前後方向に対して傾斜した状態となっている。
スロート管320をこのような状態でタンク内に配置することにより、タンク20を大型化することなく、ジェットポンプ作用を効率的に発生させるために必要な(略直線状の)流路長を確保している。このように、水洗大便器装置FTでは、スロート管320の配置を工夫することにより、ジェットポンプユニット300の性能を犠牲にすることなくタンクを小型化している。
吸引口331は、上面視において大便器本体10と重ならない位置に配置されている。吸引口331の下方にはノズル310及び第二タンク部220の底壁221が存在するが、その更に下方には大便器本体10は存在しない。このため、底壁221のうちノズルの下方部分の形状が大便器本体10のために制約されることは無く、ノズル310を配置するために適切な形状とすることが可能となっている。例えば、本実施形態では、底壁221が大便器本体10の上面101よりも低い位置となるように、タンク20の一部を下方に伸ばしている。このように、タンク20の上端位置を高くすることなく、吸引口331と底壁221との間に広い空間を確保してノズル310を配置している。その結果、タンク20の大型化が抑制されている。また、傾斜スロート部330の下端(吸引口331)を第二タンク部220の内部に配置することにより、傾斜スロート部330の流路長を確保している。このような構成によっても、ジェットポンプユニット300の性能を向上させている。
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。すなわち、これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、前述した各具体例が備える各要素およびその配置、材料、条件、形状、サイズなどは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。