以下、添付図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
本発明の第一実施形態に係る水洗大便器装置について、図1及び図2を参照しながら説明する。図1は水洗大便器装置FTの断面図であって、水洗大便器装置FTをその左右方向に垂直な面で切断した場合の断面を示している。図2は水洗大便器装置FTの上面図である。図2では、後に説明するタンク20の内部構造を示すため、タンク20の上蓋201を取り外した状態を描いている。
図1及び図2に示したように、水洗大便器装置FTは、大便器本体10と、大便器本体10の後方側(図1では右側、図2では上側)において大便器本体10の上面101に設置されたタンク20とを備えている。水洗大便器装置FTは、大便器本体10によって汚物を受け止めて、当該汚物を、タンク20から供給される水(洗浄水)によって排水管SWに排出する装置である。
尚、以下の説明においては、特に断らない限り、大便器本体10に着座した状態の使用者から見て右側(図2では左側)のことを「右側」と称し、大便器本体10に着座した状態の使用者から見て左側のことを「左側」(図2では右側)と称することとする。また、大便器本体10に着座した状態の使用者から見て前方側(図1では左側、図2では下側)のことを「前側」又は「前方側」と称し、大便器本体10に着座した状態の使用者から見て後方側(図1では右側、図2では上側)のことを「後側」又は「後方側」と称することとする。
大便器本体10は、ボウル部110と、リム部120と、導水路130と、排水トラップ管路140とを有している。ボウル部110は、上方から落下する汚物を一時的に受け止める部分である。リム部120は、ボウル部110の上縁部に形成されており、図1に示したように、ボウル部110の内側面の一部を外周側に向けて後退させたような形状となっている。後に説明するように、リム部120は、ボウル部110に向けて供給された水が旋回して流れる流路となっている。リム部120は、ボウル部110の上縁に沿って一周するような略円形(上面視)の流路として形成されている。
導水路130は、タンク20から供給された水をボウル部110に導くために、大便器本体10の内部に形成された流路である。導水路130は、その一端が大便器本体10の上面101に開口しており、タンク20から供給される水の入口131となっている。入口131が形成されている位置は、大便器本体10の上面101のうち後方側の部分であり、且つ左右方向における中央の部分である。
導水路130は、その下流側において二つの流路(第一導水路132、第二導水路134)に分岐している。一方の流路である第一導水路132は、その下流側の端部がリム部120のうち右側の部分において開口しており、当該開口が水の出口133となっている。タンク20から入口131に水が供給されると、その一部は第一導水路132の内部を通り、出口133から噴出してリム部120に供給される。
他方の流路である第二導水路134は、その下流側の端部がリム部120のうち左側且つ後方寄りの部分において開口しており、当該開口が水の出口135となっている。タンク20から入口131に水が供給されると、その一部は第二導水路134の内部を通り、出口135から噴出してリム部120に供給される。
出口133から水が噴出する方向は、略円形の流路として形成されたリム部120の円周に沿う方向であり、且つ上面視において反時計回りの方向となっている。出口135から水が噴出する方向も、略円形の流路として形成されたリム部120の円周に沿う方向であり、且つ上面視において反時計回りの方向となっている。このため、出口133及び出口135からリム部120に噴出した水は、いずれもリム部120に沿って反時計回りに旋回して流れながら、リム部120の全体からボウル部110に向けて流下する。
排水トラップ管路140は、ボウル部110の下端と排水管SWとを接続する流路である。排水トラップ管路140は、ボウル部110の下端から下流に向かう方向に沿って上り勾配となるように形成されている上昇流路141と、上昇流路141の上端から下流に向かう方向に沿って下り勾配となるように形成されている下降流路142とを有している。このような構成により、ボウル部110の下部から上昇流路141の下部に渡る部分には水を貯留することが可能となっており、貯留した水によって封水WTが形成されている。下降流路142の下端には排水管SWが接続されている。排水管SWは建物の内部に配置された配管であって、その下流側の端部が下水管に接続されている。
タンク20からボウル部110に向けて水が供給されると、上記のように、当該水はリム部120を旋回して流れながら、リム部120の全体からボウル部110に向けて流下する。水はボウル部110に対して上方から追加され、下端部から上昇流路141及び下降流路142を通って排出される。その結果、ボウル部110に貯留されている水(封水WT)には下向きの流れが生じることとなる。
ボウル部110において一時的に受け止められていた汚物は、上方のリム部120から供給される水によって下方に向けて押し込まれ、ボウル部110の下端に向かって移動する。その後、汚物は水流によって上昇流路141を通り下降流路142に到達して、水と共に排水管SWに向けて落下する。
タンク20は内部に水が貯留された容器であって、当該水を導水路130の入口131に供給するためのものである。タンク20は、第一タンク部210と、第一タンク部210の底壁211の一部を下方に伸ばすように形成された第二タンク部220とを有している。第一タンク部210と第二タンク部220はいずれも略直方体の容器であって、両者の内部空間が互いに連通している。第二タンク部220は、第一タンク部210の底壁211のうち後方側の部分に接続されている。
第一タンク部210の底壁211(第二タンク部220よりも前方側の部分)は、大便器本体10の上面101のうち後方側の部分に対して上方から近接した状態となっている。具体的には、大便器本体10の上面101のうち後方側の部分には入口131が形成されているが、第一タンク部210の底壁211は、入口131の周囲を上方から覆うように、大便器本体10の上面101に対して上方から近接した状態となっている。また、底壁211には入口131と略同一形状の開口212が形成されており、開口212と入口131とが上面視で重なっている。このため、タンク20の内部に貯留されている水は、開口212及び入口131を通って導水路130の内部に流入し、ボウル部110に向かって流れることが可能となっている。
第一タンク部210を上記のように配置した結果、第二タンク部220は大便器本体10よりも後方に位置している。すなわち、大便器本体10の後方側端部よりも更に後方側に位置した状態となっている。また、第二タンク部220の底壁221は、大便器本体10の上面101よりも低い位置に配置されている。
上記のようにタンク20が配置されることにより、タンク20の前端部が、大便器本体10の後端部よりも前方側に位置している。また、タンク20の下端部が、大便器本体10の上面よりも下方側に位置している。その結果、水洗大便器装置FT全体の前後方向における寸法と、上下方向における寸法とが、いずれも小さくなっており、水洗大便器装置FTのデザイン性が向上している。
また、タンク20のうち第二タンク部220のみを大便器本体10の上面よりも下方側に設置しているため、タンク20に貯留されている水の水頭は維持されている。その結果、上記のように水洗大便器装置FT全体の小型化を実現しながらも、後に説明するジェットポンプユニット300の性能(リム部120に向けて所定量及び所定流量の水を供給する性能)は維持されている。
次に、タンク20の内部の構成について説明する。図3は、水洗大便器装置FTを後方側から見た場合における、タンク20の内部を示す背面図である。また、図4は、水洗大便器装置FTを後方側から見た場合における、タンク20の内部を示す斜視図である。図3及び図4に示したように、タンク20の内部には、給水管231と、主弁233と、パイロット弁234と、ジェットポンプユニット300とが配置されている。
給水管231は、主弁233に向けて水を供給するための管であって、第二タンク部220の底壁221から鉛直上方に向かって伸びるように配置されている。給水管231の一端はタンク20の外部において図示しない水道管に接続されている。また、給水管231の他端(上端)は、タンク20の内部において主弁233に下方から接続されている。給水管231は、タンク20の内部のうち左右方向における中央よりも左側となる位置に配置されている。
給水管231の途中(水道管と主弁233との間)には、図3及び図4では図示しない定流量弁232が配置されている。主弁233が開いた状態において主弁233に流入する水の流量は定流量弁232によって一定となり、水道管の水圧によって変動することがない。
主弁233は開閉弁であって、給水管231からジェットポンプユニット300に向かう水の流路の開閉を行うものである。主弁233とジェットポンプユニット300との間にはバキュームブレーカー235が備えられており、バキュームブレーカー235の上流側が負圧となって水が逆流してしまうことが防止されている。尚、上記のように給水管231が上方に向かって伸びており、主弁233とバキュームブレーカー235とはタンク20内の高い位置に配置されている。このため、タンク20が満水となって状態においても、バキュームブレーカー235が水没してしまうことはない。
主弁233にはパイロット弁234が備えられており、パイロット弁234の動作によって主弁233の開閉が切り替えられる構成となっている。パイロット弁234には、タンク20の外側に配置された手動レバー236が、タンク20の内部に配置された伝達機構237を介して接続されている。また、パイロット弁234には、タンク20の内部に配置されたフロート238が更に接続されている。
水洗大便器装置FTの使用者によって手動レバー236が操作されると、当該操作が伝達機構237を介してパイロット弁234に伝達され、パイロット弁234が開かれる。これにより主弁233が開かれた状態となり、給水管231からジェットポンプユニット300に向かって水が流れる。後に説明するように、ジェットポンプユニット300に向かって流れた水は、タンク20の内部に貯留されていた水と共に洗浄水として導水路130に供給される。このため、タンク20の内部における水位は次第に低下していく。
ボウル部110の洗浄が終了した後も、主弁233は閉じられず、給水管231からジェットポンプユニット300に向かって引き続き水が流れる。ジェットポンプユニット300に向かって流れた水はタンク20の内部に供給されて、次回の洗浄のために貯留される。タンク20の内部に向けた水の供給(タンク20への注水)が行われると、タンク20の内部における水位は次第に上昇して行く。タンク20の内部においてパイロット弁234に接続されているフロート238は、水位の上昇に伴って上昇し、これによりパイロット弁234が閉じられる。すなわち、タンク20の内部における水位が上昇すると、フロート238が受ける浮力の変化によってパイロット弁234が閉じられる。パイロット弁234が閉じられると、主弁233が閉じられた状態となり、給水管231からジェットポンプユニット300への水の供給が停止される。この時点においてタンク20の内部に貯留されている水の量が、次回の洗浄のために必要な量となるように(所定の満水位となるように)、フロート238の配置が調整されている。
ジェットポンプユニット300は、給水管231から供給された水によりジェットポンプ作用を誘発させ、これにより導水路130に向けた水の供給を行うためのものである。ジェットポンプユニット300は、ノズル310と、スロート管320とを有している。
ノズル310は、一端が接続管239を介してバキュームブレーカー235に接続されており、他端には噴射口311が形成されている管である。ノズル310は、第二タンク部220の底壁221の近傍に配置されている。主弁233が開かれると、給水管231から供給された水は接続管239を流れてノズル310に到達し、噴射口311から高速の水流として噴射される。ノズル310は、第二タンク部220のうち後方側且つ右側の隅(上面視における隅)に配置されている。図3及び図4に示したように、ノズル310はU字形状となっており、その下流側が上記隅から折り返されている。図3及び図4に示した状態においては、噴射口311はその噴射方向がスロート管320の内部に向けられている。
スロート管320は断面が円形の管であって、底壁211に形成された開口212を貫通した状態でタンク20の内部に配置されている。スロート管320の一端は導水路130の入口131に接続されており、他端には開口である吸引口331が形成されている。スロート管320は、導水路130の入口131側の部分が鉛直方向に沿っており、吸引口331側の部分が水平面に対して傾斜している。このため、その全体が逆U字形状となっている。図2に示したように、スロート管320は、上面視において前後方向に対して傾斜した状態で、タンク20の内部に配置されている。
図5を参照しながら、スロート管320の具体的な構成を説明する。図5はスロート管の分解斜視図である。図5に示したように、スロート管320は二つの管(第一スロート管330、第二スロート管350)を直列に接続して一本の管とした構成となっている。
第一スロート管330は、スロート管320のうち吸引口331側の部分であって、上記のように水平面に対して傾斜した状態で配置される部分である。第一スロート管330は、その管径が全体において略均一な円筒形状の管である。第一スロート管330の下端には、開口である吸引口331が形成されている。第一スロート管330は、吸引口331から斜め上方に向かって直線状に伸びるように形成された部分(第一直線部)ともいうことができる。
吸引口331は、その縁の全体が、第一スロート管330の中心軸に対して傾斜した面に沿うように形成されており、図3及び図4に示した状態においては、吸引口331の縁は水平面に沿っている。すなわち、吸引口331の縁はタンク内の水面と平行になっている。一方、第一スロート管330の上端に形成された開口332は、その縁が第一スロート管330の中心軸に対して垂直な面に沿っている。第一スロート管330の下端部には、吸引口331の周囲(側面)を囲むようにフロート380がボルトBで固定されている。
第二スロート管350は、スロート管320のうち導水路130側の部分である。第二スロート管350は、導水路130の入口131から鉛直上方に向かって直線状に伸びる鉛直部351と、鉛直部351の上端から第一スロート管330に向かうように屈曲する屈曲部352とを有している。屈曲部352のうち第一スロート管330側の端部には開口353が形成されている。開口353の縁は、当該部分における屈曲部352の流路方向に対して垂直な面に沿っている。
鉛直部351は、その管径が全体において略均一な円筒形状の管である。鉛直部351は、屈曲部352よりも下流側の部分であって、下方側にある導水路130の入口131に向かって直線状に伸びるように形成された部分(第二直線部)ともいうことができる。鉛直部351の管径は、第一スロート管330の管径よりも大きい。屈曲部352のうち鉛直部351側の管径は、鉛直部351の管径に等しい。また、屈曲部352のうち第一スロート管330側の管径は、第一スロート管330の管径に等しい。このため、管径が互いに異なる鉛直部351と第一スロート管330とが、屈曲部352によって滑らかに繋がれているということができる。
尚、上記のように、第一スロート管330の管径は全体において略均一であり、鉛直部351の管径も全体において略均一なのであるが、いずれも厳密には均一になっておらず、流路に沿って管径(流路断面積といってもよい)が徐々に且つ僅かに変化するように形成されている。これらの管径(流路断面積)については、後に詳しく説明する。
第一スロート管330と第二スロート管350とは、開口332と開口353とを互いに合わせた状態で、棒状のシャフト341を介して接続されている。シャフト341は、開口332及び開口353の下方側に配置されている。また、シャフト341は、その中心軸が水平であり且つ第一スロート管330の中心軸に対して垂直となるように配置されている。第一スロート管330は、シャフト341を回転軸として、第二スロート管350に対して回転するように動くことが可能となっている。スロート管320は、第一スロート管330が上記のように動くことにより、開口332と開口353とが互いに隙間なく当接した状態と、開口332と開口353との間に隙間が形成された状態とを取り得る。
第一スロート管330の下面側であって、開口332の近傍には、下方に向けて突出する突起333が形成されている。また、第二スロート管350の下面側であって、開口353の近傍には、突起333の下方側に向けて伸びる板状のストッパ354が形成されている。開口332と開口353とが互いに隙間なく当接した状態においては、突起333の先端とストッパ354とは離間している。一方、第一スロート管330がシャフト341を回転軸として回転し、開口332と開口353との間に形成された隙間が大きくなって行くと、突起333の先端がストッパ354の上面に当たり、第一スロート管330はそれ以上回転することができなくなる。
図6を参照しながら、第一スロート管330の動作について更に説明する。図6(A)は、開口332と開口353とが互いに隙間なく当接した状態を示している。尚、この状態における第一スロート管330の位置を、以下では「第一位置」とも称する。
タンク20内の水位が満水位であるときには、第一スロート管330の下端に固定されたフロート380はその全体が水没しており、浮力を受けている。この浮力により、第一スロート管330には第二位置から第一位置に向かう方向の回転力が働いている。その結果、第一スロート管330は第一位置において保持された状態となっている。
図6(A)に示したように、第一スロート管330が第一位置にある状態においてノズル310の噴射口311から水が噴射されると、噴射された高速の水が第一スロート管330の内部に向かって流れる。第一スロート管330のうち下側の部分及びノズル310は、タンク20内に貯留されている水の内部に水没している。このため、タンク20内に貯留されている水の一部は、噴射口311から噴射された高速の水流によって第一スロート管330の内部に引き込まれて、導水路130に向かって流れる。このようなジェットポンプ作用が誘発される結果、第一スロート管330の内部では、ノズル310の噴射口311から噴射された水だけでなく、吸引口331の周囲から引き込まれた水も流れる。これらが洗浄水として導水路130を流れて、リム部120に供給される。
このように、水洗大便器装置FTにおいては、ノズル310の噴射口311から噴射される水の流量よりも、リム部120に供給される水の流量の方が大きくなっている。換言すれば、ノズル310の噴射口311から噴射される水の流量が小さくても、洗浄水として十分な流量の水がリム部120に供給される。このため、水道管の水圧が小さい低い環境に水洗大便器装置FTが設置された場合であっても、十分な洗浄性能を発揮することができる。
また、洗浄水としてリム部120(及びボウル部110)に供給される水の総量は、タンク20の内部に予め貯留されていた水の量に、ノズル310の噴射口311から噴射された水の量を加えたものとなる。全ての洗浄水をタンク20の内部に貯留しておく必要がないため、タンク20は小型化されており、そのデザイン性が向上している。
ところで、タンク20に貯留されている水のうち、吸引口331よりも下の部分に存在する水は、吸引口331から第一スロート管330の内部に供給されない。その結果、タンク20の内部に残水(無駄水ともいえる)として残ってしまう。しかし、図3等に示したように、ノズル310及び吸引口331はいずれも(狭い)第二タンク部220の内部に配置されている。このため、吸引口331よりも下の部分で残ってしまう残水の量は、比較的少なくなっている。
このような構成により、水洗大便器装置FTでは、リム部120対する水の供給が終了した時点における残水の量を少なくしている。その結果、タンク20の内部空間のうち殆どの部分を、リム部120対して供給される水(残水とならない水)を貯留するための空間として利用することが可能となっており、タンク20の大型化が更に抑制されている。
尚、本実施形態では、吸引口331を第二タンク部220の内部に配置しているが、第二タンク部220の上端よりも僅かに高い位置(且つ、上面視において第二タンク部220と重なる位置)に吸引口331を配置してもよい。このような場合であっても、吸引口331の下方側に残ってしまう無駄水の大部分は、容積が小さい第二タンク部220内に貯えられることとなり、無駄水の量を少なくすることができる。
リム部120に洗浄水が供給されると、タンク20内の水位は次第に低下していく。水位がフロート380の近傍まで低下すると、フロート380が受ける浮力が小さくなるため、第一スロート管330はその自重によってシャフト341を回転軸として回転し、下方へと移動する。
図6(B)は、図6(A)の状態から第一スロート管330がシャフト341を回転軸として回転し、突起333の先端がストッパ354の上面に当たった状態を示している。換言すれば、開口332と開口353との間に形成された隙間が最も大きくなった状態を示している。尚、この状態における第一スロート管330の位置を、以下では「第二位置」とも称する。
図6(B)に示したように、第一スロート管330が第二位置にある状態においてノズル310の噴射口311から水が噴射されると、噴射された高速の水は吸引口331を外れるために第一スロート管330の内部には供給されない。噴射口311から噴射された水は、タンク20の内部(第一スロート管330の周囲)に供給され、タンク20に貯留される。
ノズル310の噴射口311から水が噴射されている状態で、第一スロート管330の位置が第一位置から第二位置へと切り替えられると、リム部120への水の供給は停止され、タンク20への注水が開始される。このように、水洗大便器装置FTにおいては、スロート管320の一部をタンク20の内部で移動させることにより、リム部120(ボウル部110)に対する水の供給が行われる状態と、タンク20への注水が行われる状態との切り換え(以下では「流路切り換え」とも称する)を行うことが可能となっている。換言すれば、スロート管320は、ノズル310の噴射口311から噴射される水の供給先を切り換える流路切り換えバルブとして機能するものである。流路を切り換えるバルブのような機構部品を別途タンク20の内部に配置する必要がないため、タンク20の大型化が抑制されている。
フロート380のうち第一スロート管330の上面側に位置する部分には、第一スロート管330上面から立ち上がるように形成された傾斜面381が形成されている(図5及び図6を参照)。傾斜面381は、第一スロート管330の中心軸に対して傾斜した面であって、その幅は噴射口311の内径よりも僅かに大きい。図6(B)に示したように、第一スロート管330が第二位置に移動した後においては、噴射口311から噴射された水は傾斜面381に当たり、上方に向かってその流れ方向を変化させる。
傾斜面381は、噴射口311から噴射された水が当たることによって下向きの力を受ける。換言すれば、噴射口311から噴射された水の流れ方向を上向きに変化させたことによる反作用として、傾斜面381は下向きの力を受ける。その結果、第一スロート管330には、第一位置から第二位置に向かう方向の回転力が加えられる。当該回転力により、第一スロート管330は第二位置において保持される。
その後も、噴射口311から噴射された水がタンク20内に供給され続ける。タンク20内の水位は上昇し、フロート380は再び水没した状態となるが、噴射口311から水が噴射されている間は、上記の回転力によって、第一スロート管330は第二位置において保持されたままとなる。タンク20内の水位が上昇して行き満水位になると、既に説明したようにパイロット弁234及び主弁233が閉じられた状態となり、給水管231からジェットポンプユニット300への水の供給が停止される。噴射口311からの水の噴射が停止され、フロート380が受ける浮力によって第一スロート管330は第一位置に戻り、水洗大便器装置FTは待機状態となる。
タンク20の内部におけるその他の構成について、再び図4を参照しながら説明する。図4に示したように、タンク20の内部にはスロート管320の鉛直部351を囲むような隔壁240が配置されている。隔壁240は、底壁211から上方に向かって伸びるように形成されている。隔壁240、タンク20の前側壁面213、左側壁面214、及び第一タンク部210の底壁211によって、タンク20の内部空間の一部が区画され、小タンク260が構成されている。小タンク260は、その上部がタンク20の内部に開放された容器であって、第一タンク部210のうち前方側且つ左側の隅に配置されている。スロート管320は、鉛直部351の下端部分が小タンク260の内側に配置されている。また、吸引口331が小タンク260の外側に配置されている。
隔壁240のうち下端部近傍には開閉窓241が設けられている。開閉窓241は通常は開かれた状態となっており、開閉窓241を通じて小タンク260の内部と外部(隔壁240よりも後方側の空間)とが連通している。このため、ボウル部110の洗浄が行われていない状態(待機状態)においては、タンク20内に貯留された水の水位と、小タンク260内に貯留された水の水位は等しくなっている。
手動レバー236は二つの方向(大方向、小方向)に操作することが可能となっている。手動レバー236が大方向に操作された場合には、開閉窓241が開かれた状態のまま、パイロット弁234及び主弁233が開かれる。小タンク260に貯留されていた水は、開閉窓241を通過して第二タンク部220に流出し、吸引口331に到達する。このため、タンク20の内部に貯留されていた水は、小タンク260に貯留されていた分を含む殆どが、スロート管320の内部に引き込まれてリム部120に供給される。
一方、手動レバー236が小方向に操作された場合には、開閉窓241が閉じられると同時にパイロット弁234及び主弁233が開かれる。このため、タンク20の内部に貯留されていた水のうち小タンク260に貯留されていた水は、開閉窓241を通過することができずに小タンク260の内部に残留したままとなる。その結果、洗浄水としてリム部120に供給される水の量は少量となる。
尚、以下の説明において「タンク20に貯留されている水の水位」又は「タンク20内の水位」等というときには、小タンク260の外部における水位を示すものとする。すなわち、隔壁240によって二つに分けられた空間のうち、吸引口331が配置されている方の空間に貯留されている水の水位を示すものとする。小タンク260に貯留されている水の水位については、以下の説明では考慮しない。
図7は、タンク20の内部における構成を模式的に示している。既に説明したように、タンク20の内部には、給水管231と、主弁233と、パイロット弁234と、小タンク260と、ジェットポンプユニット300とが配置されている。
ボウル部110の洗浄が行われていない状態(待機状態)においては、タンク20の水位は満水位となっており、第一スロート管330は第一位置となっている。水洗大便器装置FTの使用者によって手動レバー236が操作されると、既に説明したように主弁233が開かれた状態となり、ノズル310の噴射口311から水が噴射される(図7の矢印AR1)。タンク20の内部に貯留されていた水は、スロート管320の内部に引き込まれて(図7の矢印AR2)、洗浄水としてリム部120に供給される(図7の矢印AR3)。
リム部120への水の供給が終了すると、第一スロート管330の位置が第一位置から第二位置に切り替わり、タンク20への注水が開始される(図7の矢印AR4)。タンク20内の水位は次第に上昇して行き、満水位となった時点でフロート238によりパイロット弁234が閉じられる。これと同時に主弁233が閉じられることによりタンク20への注水が終了し、待機状態に戻る。
このように、本実施形態に係る水洗大便器装置FTでは、ジェットポンプ作用を利用して大便器本体10に水を供給する構成であるため、タンク20が小型化されている。その結果、タンク20への注水に要する時間が短時間となっており、連続的な洗浄が実質的に可能となっている。
スロート管320の具体的な形状、及びタンク20内における配置について更に説明する。図1、図2、図3、図4等に示したように、第一スロート管330は、その中心軸が上面視において前後方向に対して傾斜しており、背面視において水平面に対しても傾斜している。このため、タンク20の限られた空間内において、第一スロート管330の流路長が可能な限り長く確保されている。換言すれば、スロート管320のうち上流側の部分である直線状の流路(屈曲部352よりも上流側の流路)が、可能な限り長く確保されている。
このため、第一スロート管330の内部を第二スロート管350に向かって流れる水は、屈曲部352に到達するまでの間に、その流路断面における流速の分布が均一化される。その結果、水が屈曲部352に到達した際において、流路壁面から剥離するような流れが生じたり、屈曲部352の内部で淀み渦が発生したりすることが抑制される。スロート管320の形状に起因したジェットポンプ性能の低下が抑制され、スロート管320の内部におけるスムーズな水流が確保されている。尚、第一スロート管330の長さと水流の流速分布との関係については、後に詳しく説明する。
また、図1等を見れば明らかなように、スロート管320は、鉛直部351(第二直線部)の中心軸が鉛直方向に対してなす角度(本実施形態では0度である)が、第一スロート管330(第一直線部)の中心軸が鉛直方向に対してなす角度よりも小さくなるように、タンク20内に配置されている。
このような構成により、前後方向に沿った長さに関しては、第一スロート管330(第一直線部)の長さの方が、鉛直部351(第二直線部)の長さよりも長くなっている。このため、タンク20内の限られた空間の大部分を、ジェットポンプ作用を効率よく発生させるために必要な第一スロート管330の長さを確保するための空間として有効に利用している。すなわち、スロート管320の全体を小型のタンク20内に配置する構成としながらも、第一スロート管330(第一直線部)の長さを十分に確保している。
このため、第一スロート管330の内部を流れる水の流路断面における流速の分布は、屈曲部352に到達するまでの間に十分に均一化されるので、スロート管320の内部で淀み渦が発生することや、スロート管320の内面が局所的な高速水流に干渉することが抑制される。その結果、スロート管320内において水流が受ける抵抗が抑制され、ジェットポンプ作用の効率の低下が抑制されるため、効率よく流量を増大させて導水路130に水を供給することが可能となっている。
また、既に述べたように、吸引口331は第二タンク部220の内部に配置されている。その結果、第一スロート管330の下端である吸引口331は、上面視において第二タンク部220と重なる位置に配置されている。換言すれば、吸引口331の下方側において、タンク20の底壁の一部が下方に伸ばされた形状となっている。
このような構成であるから、吸引口331をより下方に配置して、第一スロート管330(第一直線部)の長さを更に十分に確保することが可能となっている。また、タンク20内のうち吸引口331よりも下方側の空間にはノズル310が配置されるのであるが、第二タンク部220の内部をそのための空間として利用している。換言すれば、吸引口331の下方にノズルを配置することのために、第一スロート管330(第一直線部)を短くしなくてもよい構成となっている。
尚、本実施形態では、吸引口331を第二タンク部220の内部に配置しているが、第二タンク部220の上端よりも高い位置に吸引口331を配置してもよい。この場合であっても、吸引口331を、上面視において第二タンク部220と重なる位置に配置した方が望ましい。
図6(A)に示したように、第一スロート管330が第一位置にある状態において、吸引口331はその縁の全体が水平面に沿うように形成されている。このような形状の縁を有する吸引口331は、スロート管320の端部を水平面に沿って切断した場合において形成されるような開口、ということができる。
このように形成された吸引口331においては、その縁の上端の高さと縁の下端の高さとが同じということになるから、両者の間に挟まれた空間、すなわち、ノズル310を配置することができないにもかかわらず無駄水を蓄えてしまう空間が存在しない。従って、ノズル310の近傍にまで吸引口331の上端が近づくように、第一スロート管330を下方に伸ばすことができる。その結果、タンク20が小型化されているにも拘わらず、タンク20内に貯留された水の大部分を洗浄水として有効に利用して(無駄水の量を少なくして)、ジェットポンプ作用の発生時間を十分に確保し、高い洗浄性能を発揮することが可能となっている。
また、吸引口331を上記のように形成することにより、吸引口331からスロート管320の内部に空気が流入することを防止しながら、タンク20の内部に貯留されている水の水位を吸引口331の近傍まで低下させることが可能となっている。タンク20の内部に貯留されていた水が無駄なく利用されるため、タンク20を更に小型化することが可能となっている。
図8は、スロート管320の形状及びその内部における水流の流速の分布を模式的に示した図である。既に述べたように、第一スロート管330の管径は全体において略均一なのであるが、厳密には均一になっておらず、流路に沿って管径(流路断面積といってもよい)が僅かに変化するように形成されている。具体的には、上流端である吸引口331において管径が最も広くなっており、下流側に行く程、徐々に狭くなるように形成されている。また、このような管径の変化は滑らかであって、第一スロート管330の内壁面全体が滑らかとなっており、角部のようなものは形成されていない。
また、第二スロート管350の鉛直部351についても同様である。鉛直部351の管径は厳密には均一になっておらず、流路に沿って管径が僅かに変化するように形成されている。具体的には、屈曲部352との接続部(鉛直部351の上流端)において管径が最も狭くなっており、下流側に行く程、徐々に広くなるように形成されている。また、このような管径の変化は滑らかであって、第二スロート管350の内壁面全体が滑らかとなっており、角部のようなものは形成されていない。また、スロート管320の全体についてみても、その内壁面全体は滑らかとなっており、角部のようなものは形成されていない。
図8においては、第一スロート管330の管径が下流側に行く程狭くなる様子、及び、鉛直部351の管径が下流側に行く程広くなる様子を、いずれも実際よりも誇張して描いている。
図8においては、噴射口311から水が噴射されており、スロート管320の内部を導水路130に向かって水が流れている状態を示している。また、スロート管320のうち11か所(上流側から順に、位置P1、位置P2、・・・位置P11)の各流路断面における流速分布を、それぞれ矢印によって模式的に示している。
図8に示したように、第一スロート管330のうち吸引口331に近い位置P1における流路断面では、噴射口311からの噴流の影響により、当該流路断面のうち中心軸J(噴射された水流の中心軸である)の近傍の領域(噴流内部領域)で流速が大きくなっている。一方、当該流路断面のうち中心軸Jから遠い領域(第一スロート管330の内壁に近い領域:噴流外部領域)では、噴射口311からの噴流の影響が比較的小さいため、中心軸Jの近傍の領域に比べて流速が小さい。このように、流路断面のうち一部の領域(中心軸Jの近傍の領域)に高速の水流が偏在した状態となっている。
噴流外縁部(噴流内部領域と噴流外部領域との境界部分)では、噴流内外の速度差により生じる渦によって噴流内外の流体が混合される。これにより、下流に向かうにつれて、噴流が搬送する内部流体の流量は、外部流体を徐々に内部に取り込んで増大する(ジェットポンプ作用)。言い換えると、噴流外縁部では噴流内外の流体要素間で運動量の受け渡しが行われ、外部流体は内部流体から運動量を受け取って加速されて噴流内部に取り込まれ、内部流体は外部流体に運動量を渡して減速する。つまり、流路断面における水の流速分布は、水が第一スロート管330(直線状の流路)を流れている間に次第に均一化されていく。図8において位置P1乃至位置P5にそれぞれ矢印で示したように、中心軸Jの近傍の領域における水の流速(最高流速)と、第一スロート管330の内壁に近い領域における水の流速(最低流速)との差は、下流側に行く程小さくなっている。その結果、位置P6に矢印で示したように、屈曲部352に到達した水の流速分布は、流路断面の全体で略均一化された状態となっている。
以上の説明から理解されるように、仮に、第一スロート管330(直線状の流路)の長さが十分ではない場合には、第一スロート管330を流れる水は、その流速分布が均一化されないまま(一部の領域に高速の水流が偏在した状態のまま)屈曲部352に到達してしまうこととなる。この場合、屈曲部352に到達した局所的な高速の水流が屈曲部352の内周側の内壁から剥離することにより、水流が滞留する淀み渦が形成される。水流に淀み渦が生じると、淀み流域でエネルギーが無駄に消費されるため、大便器本体10に供給される水の流量が低下してしまう。その結果、ボウル部110から汚物が排出されなかったりボウル部110の表面が十分に洗浄されなかったりすることがある。
また、第一スロート管330の長さが十分ではない場合には、噴射口311から屈曲部352までの距離が短くなるため、噴射口311から噴射された水の流れ(局所的な高速の噴流)が屈曲部352の内面に当たる(水流に干渉する)ことで第一スロート管330の下流付近の圧力は高くなり、屈曲部352に近づくにつれて圧力が急激に上昇する(圧力勾配が急になる)ことになる。これにより、第一スロート管330の内部では一部において逆流が生じ、ひいては第一スロート管330で水流が滞留する淀み渦が形成される。第一スロート管330に淀み渦が生じると、淀み流域でエネルギーが無駄に消費されるとともに、噴流内部に外部流体を引き込むジェットポンプ作用が抑制されて、大便器本体10に供給される水の流量が更に低下してしまうこととなる。
そこで、本実施形態では、上記のように第一スロート管330の長さを十分に確保することによって、スロート管320内の水流における淀み渦の形成や、スロート管320の内面の干渉を抑制しており、大便器本体10に供給される水の流量が低下してしまうことを抑制している。
更に、本実施形態の第一スロート管330は、上記のように、上流側における流路断面積の方が下流側よりも大きく、吸引口331の開口面積も比較的大きいため、吸引口331から大流量の水を内部に吸引することができる。その結果、高い効率でジェットポンプ作用を発生させ、大流量の洗浄水を大便器本体10に供給することが可能となっている。
また、第一スロート管330の下流側における流路断面積は小さくなっているので、第一スロート管330を流れる水の流路断面における流速分布は、比較的短い距離を流れている間において均一となる。すなわち、水が屈曲部352に到達する前において、流路断面における流速分布が確実に均一化されることとなる。その結果、第一スロート管330の内部で渦が発生することや、第一スロート管330の内壁面が局所的な高速水流に干渉することは更に抑制される。
尚、第一スロート管330から屈曲部352に至るまでの流路断面積は、上記のように流速分布の均一化を考慮して設計されている。その結果、屈曲部352の下流側端部における流路断面積と、導水路130の上流側端部における流路断面積とは、通常は一致しない(本実施形態では、後者の方が大きい)。そこで、本実施形態においては、鉛直部351の形状を工夫することによって、両者を滑らかに繋いでいる。具体的には、上流側から下流側にいくに従って、鉛直部351の流路断面積が徐々に変化(拡大)するように形成されている。鉛直部351の内壁面の全体が滑らかであり、角部等が形成されていないため、鉛直部351の内部において水流の剥離や淀み渦が生じることがない。図8において位置P8乃至位置P11にそれぞれ矢印で示したように、水は、流路断面における流速分布が略均一となった状態のまま鉛直部351の内部を流れる。その結果、スロート管320におけるジェットポンプ作用の効率が低下することは、更に抑制される。
続いて、タンク20の小型化を実現するための様々な工夫について説明する。水洗大便器装置FTでは、スロート管320のうち吸引口331側の部分(第一スロート管330)が、上面視及び側面視のいずれにおいても傾斜した状態でタンク20の内部に配置されている。具体的には、側面視においては、当該部分は吸引口331に向かって下るように傾斜した状態となっている。また、上面視においては、当該部分は前後方向に対して傾斜した状態となっている。
スロート管320をこのような状態でタンク内に配置することにより、タンク20を大型化することなく、ジェットポンプ作用を効率的に発生させるために必要な(略直線状の)流路長を確保している。このように、水洗大便器装置FTでは、スロート管320の配置を工夫することにより、ジェットポンプユニット300の性能を犠牲にすることなくタンクを小型化している。
図9は、吸引口331と大便器本体10との位置関係を示す上面図であって、タンク20の内部におけるスロート管320の配置を、上面視で模式的に示している。尚、図9において符号VUを付して示したのは、給水管231、定流量弁232、主弁233、パイロット弁234、及びバキュームブレーカー235からなる一群の機器である。以下では、これらをバルブユニットVUとして説明する。
図9に示したように、吸引口331は、上面視において大便器本体10と重ならない位置に配置されている。吸引口331の下方にはノズル310(図9では不図示)及び第二タンク部220の底壁221が存在するが、その更に下方には大便器本体10は存在しない。このため、底壁221のうちノズルの下方部分の形状が大便器本体10のために制約されることは無く、ノズル310を配置するために適切な形状とすることが可能となっている。例えば、本実施形態では、底壁221が大便器本体10の上面101よりも低い位置となるように、タンク20の一部を下方に伸ばしている。このように、タンク20の上端位置を高くすることなく、吸引口331と底壁221との間に広い空間を確保してノズル310を配置している。その結果、タンク20の大型化が抑制されている。また、第一スロート管330の下端(吸引口331)を第二タンク部220の内部に配置することにより、第一スロート管330の流路長を確保している。このような構成によっても、ジェットポンプユニット300の性能を向上させている。
図9に示したように、バルブユニットVUは、タンク20内のうち、左右方向において吸引口331が配置されている側(右側)とは反対側(左側)の空間と、第二スロート管350の後方側の空間とに亘って配置されている。換言すれば、スロート管320を上面視で傾斜するように配置したことにより広く空いた空間(第二スロート管350の後方側の空間)を有効に利用しながら、吸引口331に干渉しない位置にバルブユニットVUを配置している。このため、タンク20内にバルブユニットVUを配置しながらも、タンク20の大型化は抑制されている。
図4を参照しながら説明したように、小タンク260は、第一タンク部210のうち前方側且つ左側の隅に配置されている。換言すれば、タンク20の内部のうち、左右方向において吸引口331が配置されている側(右側)とは反対側(左側)の部分に配置されている。また、小タンク260とバルブユニットVU(主弁233等)とは、前後方向に沿って並んでいる。タンク20内の空間のうち、スロート管320に占められている部分以外の空間を有効に利用しながら、小タンク260とバルブユニットVUとを配置している。このため、タンク内にこれらを配置しながらも、タンク20の大型化は抑制されている。
図4を参照しながら説明したように、タンク20の内部には伝達機構237が配置されている。伝達機構237は、タンク20の内部のうち第一スロート管330の上方に配置されている。換言すれば、第一スロート管330を水平面に対して傾斜した状態で配置することにより形成された空間を、伝達機構237を配置するための空間として有効に利用している。このため、タンク20内に伝達機構237を配置しながらも、これによるタンク20の大型化は抑制されている。
第一スロート管330の上方には、伝達機構237に替えて、又は伝達機構237と共に、上記のバルブユニットVUを構成する機器の一部又は全部を配置してもよい。尚、バルブユニットVUには上記のようにバキュームブレーカー235が含まれている。また、伝達機構237には電動モーターが含まれることもある。すなわち、バルブユニットVUや伝達機構237は、タンク20内のうち水没しない位置に配置しなければならない場合が多い。この点、第一スロート管330の上方に形成された空間の少なくとも一部は、タンク20が満水位である場合にも水没しない空間であるから、バルブユニットVUや伝達機構237を当該空間に配置しても、水没による不具合が生じることはない。
図4に示したように、本実施形態においては、第一タンク部210の底壁211(第二タンク部220よりも前方側の部分)は水平となっている。このような態様に替えて、底壁211(の上面)を、第二タンク部に向かって下るように傾斜させてもよい。この場合、タンク20の内部に貯留されていた水の水位が低下して行く過程において、第一タンク部210の内部に存在していた水は、スムーズ且つ確実に第二タンク部220に流入することとなる。底壁211の上面に水が留まってしまい、水面WSが吸引口331よりも下方まで低下してしまうようなことが防止されるため、吸引口331からスロート管320の内部に空気が流入することによる騒音の発生を更に抑制することが可能となる。
続いて、本発明の第二実施形態に係る水洗大便器装置FTaについて説明する。図10は、水洗大便器装置FTaのタンク20aの内部における構成、及びタンク20aの周囲の構成を示す上面図である。また、図11は、タンク20aの内部における構成を示す正面図である。
水洗大便器装置FTaは、主にタンク20aの形状や、タンク20aの内部におけるバルブユニットVUa等の配置において水洗大便器装置FTと異なっており、他については、水洗大便器装置FTと概ね同一の構成となっている。以下では、水洗大便器装置FTと異なる点について説明する。
タンク20aは、第一実施形態におけるタンク20に比べてその前後方向の寸法が短くなっている。図10に示したように、大便器本体10aの後方側上部(上面101aのうち後方側の部分)に配置されたタンク20aは、その後方側端部が大便器本体10aの後方側端部よりも前方側に位置している。このため、水洗大便器装置FTaの前後方向における全体の寸法は、タンク20aを配置することによっては大きくなっていない。
タンク20aの左右方向における寸法(幅)は、大便器本体10aの上面101aのうち、タンク20aが配置されている部分の幅よりも大きい。タンク20aは、大便器本体10aから左右に突出しており、上面視において、大便器本体10aと重ならない部分をその左右にそれぞれ有している。
タンク20aは、第一タンク部210aと、第一タンク部210aの底壁211aの一部を下方に伸ばすように形成された第二タンク部220aとを有している。第一タンク部210aと第二タンク部220aはいずれも略直方体の容器であって、両者の内部空間が互いに連通している。
図10及び図11に示したように、本実施形態における第二タンク部220aは、タンク20aのうち下方側且つ左側の部分にのみ形成されている。具体的には、第一タンク部210aの底壁211aのうち、上面視において大便器本体10aと重ならない部分であって、且つ大便器本体10aから左側に突出している部分のみを下方に伸ばすように形成されている。
ノズル310aは、上記のように形成された第二タンク部220aの内部に配置されている。また、スロート管320aの上流側端部(下端)である吸引口331aは、当該ノズル310aの上方に配置されており、上面視において、その全体が第二タンク部220aと重なるような位置に配置されている。換言すれば、第二タンク部220aは、少なくともその一部が、上面視においてスロート管320aの吸引口331aと重なるような位置に形成されているということもできる。
吸引口331aの下方に第二タンク部220aを形成することの効果について説明するために、先ず図12を参照しながら、タンク内の水面全体が水平とはならない現象について説明する。図12は、タンク20aの内部を背面側から見て描いた模式図であって、タンク20aに第二タンク部220aが形成されていない場合において、ジェットポンプ作用が生じている状態を模式的に示している。
本実施形態においては、タンク20aの前後方向の寸法が短くなっているため、スロート管320aは、上面視において、その中心軸が左右方向に略沿うように配置されている。また、吸引口331aは、タンク20aの内部のうち左側の端部近傍に配置されている。スロート管320a及びその吸引口331aがこのように配置されているため、タンク20aの前後方向に沿った寸法が小さくなっているにもかかわらず、ジェットポンプ作用を効率よく発生させるために必要なスロート管320aの流路長が確保されている。
しかしながら、このようにタンク20aの前後方向の寸法が短く、且つ吸引口331aが左側(又は右側)の端部近傍に配置されているような構成においては、タンク20aのうち吸引口331aから遠い位置に存在していた水が、吸引口331aまでスムーズに到達することができない場合がある。例えば、図12のように、吸引口331aがタンク20aの左側端部に配置されていると、タンク20aの左側に存在している水は吸引口331aにスムーズに到達するが、タンク20aの右側に存在している水はスムーズに到達することができない。その結果、タンク20a内の水面WSはその全体が水平とはならず、吸引口331aが存在している方(左側)の水面WSが、他方(右側)の水面WSよりも僅かに低くなってしまう。このような現象が生じると、洗浄が未完了であるにもかかわらずタンク20a内の空気がスロート管320aに吸引されてしまい、ジェットポンプ作用の効率が低下してしまうこととなる。
これに対し、本実施形態においては、吸引口331aの下方に第二タンク部220aを形成することにより、上記のように水面WSの全体が水平とはならない現象(水面WSの一部が低くなってしまう現象)を防止している。図13は、本実施形態におけるタンク20a内部の水流を模式的に示した図である。
吸引口331aの下方に第二タンク部220aが形成されており、当該部分の空間が広く確保されているため、吸引口331aには様々な経路を通って水が向かうこととなる。つまり、タンク20aの右側端部近傍(吸引口331aから最も遠い位置)から吸引口331aへと向かう水は、単に水平方向に沿った経路のみを通るのではなく、例えば、第二タンク部220aの底壁221aの近傍まで一度降下してから吸引口331aに向かうような経路(図13で符合FLを付して示した経路)をも通ることができる。吸引口331aに向かう水の経路が広く確保される結果、当該水の流れはスムーズなものとなり、吸引口331aの近くにおける水位が先に低下するような現象の発生は抑制されて、タンク20a内の水面WSは、全体がほぼ水平な状態で低下していく。その結果、タンク20a内の空気がスロート管320aに吸引されることはなく、ジェットポンプ作用による高い洗浄性能を発揮することが可能となっている。
第二タンク部220aの底壁221aは、上面視において大便器本体10aとは重ならない位置であって、大便器本体10aの側方側且つ大便器本体10aの上面101aよりも下方側となる位置に配置されている。このような構成により、水洗大便器装置FTa全体の前後方向における寸法、及び高さ方向における寸法のいずれについても、第二タンク部220aを形成することによっては大きくなっていない。換言すれば、これらの寸法を変更することなく第二タンク部220aを形成し、ジェットポンプ作用の効率が低下することを防止している。
本実施形態においては、第二タンク部220aがタンク20aの左側にのみ形成されているため、タンク20aに貯えられた水全体の重心位置は左側寄りの位置(タンク20aの左右方向において吸引口331aが配置されている側寄りの位置)となっている。また、図14に示したように、タンク20aの底と大便器本体10aの上面101aとの間にOリング280a(弾性部材)が介在している。すなわち、タンク20aは、大便器本体10aの上面101aに対して弾性部材を介して設置されている。このため、タンク20aはOリング280aの位置を中心にして左右に傾くことが可能となっており、タンク20aに貯えられた水全体の重心位置が上記のように左側寄りとなっている結果、タンク20aは左側(吸引口331a側)に傾きやすい状態となっている。
タンク20aがその自重によって左側(吸引口331a側)に傾くと、タンク20a内に貯留されていた水は吸引口331aにスムーズに到達しやすくなる。このため、スロート管320aの吸引口331a近くにおける水位が先に低下するような現象の発生が更に抑制される。
本実施形態においては、第二タンク部220aをタンク20aの左側にのみ形成することにより、貯えられた水の重心を左側に偏らせて、タンク20aを上記のように傾きやすくしている。第二タンク部220aをタンク20aの左側にのみではなく、左右両側に形成するような態様においては、左側(吸引口331a側)の第二タンク部220aの容量が、右側(吸引口331aとは反対側)の第二タンク部220aの容量よりも大きくなるよう、タンク20aを形成すればよい。
図10及び図11を再び参照しながら、タンク20a内における給水管231a等の配置について説明する。
タンク20aの内部には、ノズル310aから噴射する水を外部(水道管)から供給するための配管である給水管231aが、タンク20aの底壁211aから上方に向かって伸びるように配置されている。換言すれば、タンク20aの内部に貯留されている水を上下方向に貫くように、給水管231aが配置されている。
給水管231aは、タンク20aの内部のうち、左右方向において吸引口331aが配置されている側(左側)とは反対側(右側)の部分に配置されている。仮に、吸引口331aの近傍に障害物が存在していた場合には、吸引口331aに集まってくる水の流れが障害物により著しく妨げられてしまうのであるが、本実施形態においては、吸引口331aから遠い位置に給水管231aが配置されているため、タンク20a内において吸引口331aに向かう水の流れを給水管231aが妨げてしまうことがない。その結果、吸引口331a近くにおける水位が先に低下するような現象の発生が更に抑制されている。
タンク20aの内部には、ノズル310に水を供給する流路の開閉を切り換える主弁233a(開閉バルブ)と、主弁233aに接続されたフロート238aと、が配置されている。本実施形態においては、フロート238aは、タンク20aの内部のうち、左右方向において吸引口331aが配置されている側(左側)とは反対側(右側)の部分に配置されている。吸引口331aから遠い位置にフロート238aが配置されているため、吸引口331aに向かう水の流れをフロート238aが妨げてしまうことがない。その結果、吸引口331a近くにおける水位が先に低下するような現象の発生が更に抑制されている。
タンク20aの内部には、貯留されている水のうち導水路130aの入口に供給される水の量を可変とするための小タンク260aが配置されている。本実施形態においては、小タンク260aは、タンク20aの内部のうち、左右方向において吸引口331aが配置されている側(左側)とは反対側(右側)寄りとなる位置に配置されている。このような位置に小タンク260aが配置されているため、吸引口331aに向かう水の流れを小タンク260aが妨げてしまうことがない。その結果、吸引口331a近くにおける水位が先に低下するような現象の発生が更に抑制されている。
水洗大便器装置FTaは、スロート管320aの下流側端部(吸引口331aとノズル310aとの間)に、流路切り換え機構390aを備えている。流路切り換え機構390aはフロート391aを有している。流路切り換え機構390aは、タンク20aの水位に応じたフロート391aの動作に基づいて、ノズル310aの噴射口311aから噴射された水がスロート管320aの内部に向かう状態と、当該水がタンク20a内に供給される状態(タンク20aに注水される状態)と、を切り換えるように構成されている。
流路切り換え機構390aは、ボウル部110aへの水の供給が行われている際(ジェットポンプ作用が生じている際)において、タンク20a内の水位が所定の切り替え水位まで低下した時点で、噴射口311aから噴射された水の供給先を、スロート管320aの内部からタンク20a内へと切り替えられるように構成されている。すなわち、タンク20a内の水位が切り替え水位まで低下した時点で、ジェットポンプ作用を停止させ、タンク20aへの注水を開始するように構成されている。また、上記の切り替え水位は、第二タンク部220aの上端位置よりも高い位置に設定されている。
仮に、切り替え水位を第二タンク部220aの上端位置よりも低い位置に設定した場合には、水面WSのうち吸引口331a近くの部分が他の部分よりも局所的に低くなり、これにより吸引口331aからスロート管320a内に空気が流入し、騒音が発生してしまうことがある。
比較的狭い第二タンク部220aの内部においては、吸引口331aの周囲を取り囲む壁面の近傍で水の流速が低くなる傾向があり、水面WSの全体が一様には低下しにくい。これに起因して、上記のような局所的な水面WSの低下が生じるものと考えられる。
そこで、本実施形態では、上記の切り替え水位を、第二タンク部220aの上端よりも高い位置に設定している。すなわち、狭い第二タンク部220a内にのみ水が存在する状態となるよりも前の時点で、ジェットポンプ作用を停止させて、タンク20aへの注水を開始するように構成されている。このため、上記のような局所的な水面WSの低下が生じることはなく、水面WS内における騒音の発生が防止されている。
尚、本実施形態では、上記のような流路切り換え機構390aによって流路切り換えを行うように構成されているが、これに替えて、第一実施形態における水洗大便器装置FTと同様の構成で流路切り換えを行うように構成されていてもよい。
また、本実施形態では、図11に示したように、第二タンク部220aの上端と略等しい位置に吸引口331aが配置されている。このような態様に替えて、第二タンク部220aの上端よりも低い位置(第二タンク部220aの内部)に吸引口331aを配置した上で、切り替え水位を第二タンク部220aの上端よりも低い位置に設定してもよい。このような構成においては、狭い第二タンク部220a内にのみ水が存在する状態となるまでジェットポンプ作用が生じるため、無駄水の量が更に少なくなる。
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。すなわち、これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、前述した各具体例が備える各要素およびその配置、材料、条件、形状、サイズなどは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。