JP6379955B2 - 連続鋳造方法 - Google Patents
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Description
スラブの連続鋳造は、タンディッシュに貯められた溶鋼を、タンディッシュ底部に接続された浸漬ノズルを介して、鋳型に溶鋼を供給される。例えば、浸漬ノズルは、2孔の吐出孔を有するものが広く用いられており、鋳型長辺方向と平行に高速高温な溶鋼が吐出孔を通じて噴出するものがある。
鋳造速度とは、連続鋳造機における鋳片の引き抜き速度であり、[m/min]を単位として表記される物理量である。一方、スループットとは、1分間あたりに生産される鋳片の重さであり、[ton/min]を単位として表記される物理量である。
したがって、スループットと鋳造速度との間には、スループット[ton/min]=鋳片断面積[m2]×鋳造速度[m/min]×比重(7.8)[ton/m3]という関係が成り立つ。
吐出孔から噴出する溶鋼の流速が高くなると、鋳型短辺上の凝固シェルを再溶解することになるが、この凝固シェルが溶解してしまうと、ブレイクアウトが発生し、鋳造することが不可能となるからである。
しかしながら、特許文献1に開示された方法は、超電導磁石を用いるために、超電導体を液体ヘリウムで冷却するための大掛かりな設備が必要となり、簡単には導入することができず、維持管理に多大な労力が必要となるという問題がある。
P=Ef/Es …(式1)
により計算されるPの鋳型内における最大値Pmaxの逆数(1/Pmax)が、凝固シェルが再び溶解する迄に要する時間に相当する物理量(以下、「凝固シェル再溶解時間」という。)であることを発明者らは見出した。
本発明は以上の知見に基づいてなされたものであって、その要旨は以下の通りである。
鋳型短辺面の各位置において、溶鋼吐出流の単位体積・単位時間当たりの熱エネルギーをEf 、凝固シェルを溶解するのに必要な単位体積当たりのエネルギーをEs、とするときに
P=Ef/Es …(式1)により計算されるPの鋳型内における最大値Pmaxの逆数(1/Pmax)が、0.38[s]以上となることを特徴とする連続鋳造方法。
h=y1+(x0−x1)tanα−y0 …(式2)
と計算される鋳型深さ方向の距離hが0[mm]以上であり、
鋳型厚み中心における磁束密度は0.4[T]から0.5[T]である、
ことを特徴とする連続鋳造方法。
第1の実施形態は、次に述べる凝固シェル溶解時間を0.38[s]以上とする方法である。
凝固シェル溶解時間とは、鋳型長辺側に2本の鉄芯を有する電磁ブレーキを有する連続鋳造設備を用いて連続鋳造を行うにあたり、溶鋼吐出流の単位体積・単位時間当たりの熱エネルギーをEf、吐出流が衝突する位置において凝固シェルを溶解するのに必要な単位体積当たりのエネルギーをEs、とするときに
P=Ef/Es …(式1)
により計算される再溶解性指数Pの鋳型内における最大値Pmaxの逆数(1/Pmax)である。
図1は、連続鋳造装置の鋳型内部を説明する模式図である。
図1は、左右対称の装置の右側について記載するが、左側も同様の装備等がある。
図1において、1は原点(0,0)[mm]、21は鋳型短辺、4は浸漬ノズル、5は湯面、6は吐出孔、61は吐出孔角度、62は吐出孔上端、63は吐出孔下端(x1,y1)[mm]、64は吐出流、7は凝固シェルであり、鋳造方向をy[mm]、鋳型幅方向をx[mm]、鋳型厚み方向をz[mm]とする。
浸漬ノズル4の吐出孔下端63から吐出した溶鋼は、吐出流64となって、吐出孔角度61の方向にながれていき、凝固シェル7に衝突し、凝固シェルを再溶解する。
Ef=ρLCPu(T−Ts)ΔyΔz=ρLCPuΔTΔyΔz …(式11)
Es=ρsΔHΓΔyΔz …(式12)
さらに(式1)を用い、液相と固相の密度(ρL,ρS)は小さいため等しいとすると、(式13)のように再溶解性指数Pを得ることができる。
P=Ef/Es=(ρLCPuΔTΔyΔz)/(ρsΔHΓΔyΔz)
=(CPuΔT)/(ΔHΓ) …(式13)
(式13)の再溶解性指数Pは、凝固シェルが静止している場合に、シェルが溶解するまでの時間の逆数を意味し、単位は[1/s]である。
再溶解性指数Pの値が大きいほど、再溶解する危険性が高い。
この再溶解性指数Pを、鋳型深さ方向に算出し、その最大値をPmaxとし、さらにその逆数(1/Pmax)を凝固シェル再溶解時間[s]として凝固シェル再溶解の危険性、すなわち、ブレイクアウト発生の危険性を評価する指針として取り扱う。
凝固シェル再溶解時間(1/Pmax)[s]を求めるにあたり、過去において凝固シェルの再溶解によりブレイクアウトが発生したときの鋳型条件を用いて後述する数値解析シミュレーションにより計算を行った。
図2において、グループ1はブレイクアウトが発生しているグループであり、グループ2はブレイクアウトが発生していないグループである。
磁束密度が0.21[T]以下のグループ1の場合にブレイクアウトが発生しており、磁束密度が0.24[T]以上のグループ2の場合にはブレイクアウトが発生していなかったことから、グループ2の磁束密度が0.24[T]の場合の条件の凝固シェル再溶解時間(1/Pmax)[s]である0.38[s]を限界値とする。
すなわち、凝固シェル再溶解時間(1/Pmax)[s]は0.38[s]以上とすることを指針とする。
鋳型内の溶鋼は1500[℃]程度の高温であるため,流速や温度を測定して知ることは困難であり、現在のところ高精度な数値解析シミュレーションによる予測が最も有効な手段である。
鋳型内溶鋼の流動,伝熱と凝固を考慮した数値解析シミュレーションを実施することにより、鋳型内の凝固シェル厚みΓ[m]と、凝固シェルに衝突する流速u[m/s]、溶鋼温度T[K]を得ることができる。
図8と図9を用いて、湯面からの距離y2における鋳型内の凝固シェル厚みΓ[m]と,凝固シェルに衝突する流速u[m/s]、溶鋼温度T[K]を読み取る方法について説明する。
図8において、5は湯面、7は凝固シェル、8は溶鋼の流れ(矢印の方向が流れの方向であり、矢印の長さが流速を示す。)、31は鉄心、33は鉄心の中心であり、9は計測点y2である。
溶鋼の流れ8は矢印で記載されており、矢印の方向が流速の方向であり、矢印の長さが流速を表し、流速基準81(1[m/s]の大きさが)図8の左上に記載されている。
図8において、湯面からの距離yがy2となる位置を計測点y2(9)とし、計測点y2(9)の近傍を拡大図として図9に記載されている。
図9に示すように、計測点y2(9)は、湯面からの距離yがy2となる位置、かつ、凝固シェル7の左端から20[mm]の位置を用いる。
凝固シェルに衝突する流速u[m/s]は、図9の計測点y2(9)における溶鋼の流れ(8)を示す矢印の長さと流速基準82から求める。
溶鋼温度T[K]は、図9の計測点y2(9)における温度であり、T=26[K]である。
鋳型内の凝固シェル厚みΓ[m]は、図9の計測点y2(9)の右側の凝固シェル厚み71として求められる。
計測点y2(9)における再溶解性指数P[1/s]は、上述の手順で求められた鋳型内の凝固シェル厚みΓ[m]と、凝固シェルに衝突する流速u[m/s]、溶鋼温度T[K]を用いて、
P=Ef/Es=(ρLCPuΔTΔyΔz)/(ρsΔHΓΔyΔz)
=(CPuΔT)/(ΔHΓ)
=(CPu(T−Ts))/(ΔHΓ) …(式13)
より計算する。
さて、発明者らは、Pmaxを得られるyについて検討した。
図10において、Pmaxを得られるy≒0.35[m]の位置は浸漬ノズル下端近傍であるから、浸漬ノズル下端近傍において熱流束(流速×温度)が最大になり、Pmaxを与えることを見出した。すなわち、短時間にPmaxを得るためには、浸漬ノズル下端近傍において再溶解性指数P[1/s]を精密に計算すればよいことを見出した。
第2の実施形態は、次に述べる凝固シェル溶解時間を0.38[s]以上とするべく、鋳型深さ方向の距離h、鋳型厚み中心における磁束密度、浸漬ノズルの吐出孔上端位置を規定する方法である。
図3は、本発明の方法を実施する連続鋳造装置を詳細に説明する図である。
図3において、1は原点(0,0)[mm]、2は鋳型、21は鋳型短辺、22は鋳型長辺、3は電磁ブレーキ、31は鉄心、32はコイル、33は鉄心の中心(x0,y0)[mm]、4は浸漬ノズル、5は湯面、6は吐出孔、61は吐出孔角度α[°]、63は吐出孔上端、63は吐出孔下端(x1,y1)[mm]であり、鋳造方向をy[mm]、鋳型幅方向をx[mm]、鋳型厚み方向をz[mm]とする。
図3は、左右対称であるから、説明を簡略にするために主に右側について説明するが、左側も同様の装備がある。
このとき、鋳型深さ方向の距離hは、電磁ブレーキの鉄芯中心位置(x0,y0)[mm]、浸漬ノズルの吐出孔下端位置(x1,y1)[mm]および吐出孔角度α[°]から
h=y1+(x0−x1)tanα−y0 …(式2)
と計算される値である。
浸漬ノズルの吐出孔から噴出する溶鋼流速は、吐出孔下方が最大値となる。
すなわち、吐出流は位置(x1,y1)を起点として、吐出孔角度α[°]の方向へ噴出すると考えることができる。
h>0の場合は、吐出流は磁束密度最大位置よりも下側を通過し、h<0の場合は磁束密度最大位置よりも上側を通過する。
鋳型深さ方向の距離hを−20[mm]以上とする理由について説明する。
図5は、吐出流と磁束密度最大位置との距離hと再溶解性指数の関係を示す。
図5から、h≧−20[mm]の場合は、凝固シェル再溶解時間(1/Pmax)[s]は0.38[s]以上となり、凝固シェルの再溶解なしに鋳造することが可能であると判断できる。
図4は、数値解析シミュレーションにより、吐出孔角度α[°]を変化させた場合の鋳型内流動変化を説明する図である。
例えば、(x0,y0)=(545,650)[mm]、(x1,y1)=(87.5,440)[mm]とし、吐出孔角度α[°]を25[°]、30[°]、35[°]とした場合を、それぞれ、図4(a)、図4(b)、図4(c)とした。図4(a)、図4(b)、図4(c)において、8は鉄心であり、33は鉄心の中心である。
図4(a)、(b)、(c)から、吐出孔角度α[°]が小さい方が、吐出流が鋳型上方へ流されやすいことが確認される。すなわち、吐出孔角度α[°]が小さいほどhが小さくなり、凝固シェルの薄い鋳型上方へ吐出流が衝突する傾向を理解することができる。
鋳型厚み中心における磁束密度は0.4[T]〜0.5[T]である。
磁束密度は、鋳型厚み中心における最大磁束密度であり、磁束密度が最大となるのは、ほぼ鉄芯中心位置である。
例えば、電磁ブレーキ鉄芯の断面形状は、750×300[mm]であり、コイルに印可する直流電流は1000[A]、コイル巻き数は180[ターン]とし、鉄芯材質は、一般的な軟鉄とし、電磁場解析結果から求めた鋳型厚み中心の最大磁束密度は、電磁ブレーキ鉄芯の中心位置において0.5[T]程度とすることができる。
また、鋳型厚み中心のメニスカス部の最大磁束密度は0.01[T]程度とすることができる。
図7は、吐出孔角度α=35[°]で、電磁ブレーキの磁束密度の影響を検討した結果を説明する図である。
図7より、スループットが10.9[ton/min]の場合は最大磁束密度が0.3[T]であれば、凝固シェル再溶解時間(1/Pmax)[s]は0.38[s]以上となる。また、スループットが15.5[ton/min]の場合は0.4[T]以上であれば、凝固シェル再溶解時間(1/Pmax)[s]は0.38[s]以上となる。
また、コイルに通電する電流や電源装置の限界から0.5[T]超の磁束密度を印可することは、通常の電磁ブレーキ装置では困難である。
以上から、鋳型厚み中心の磁束密度の範囲は、0.4〜0.5[T]が適切である。好ましくは0.4〜0.5[T]である。
浸漬ノズル4の吐出孔上端位置62を湯面から220〜400[mm]とする。
図6は、スループットと凝固シェル再溶解時間(1/Pmax)との関係を説明する図である(吐出孔角度α=35[°]、最大磁束密度0.45T)。
図6には、吐出孔上端位置が320[mm]の場合と、吐出孔上端位置が220[mm]の場合のグラフが記載されている。
浸漬深さを100[mm]浅くした場合は、電磁ブレーキの位置も100[mm]浅くして、hは同じ値となるようにした。
さて、浸漬ノズル深さが浅いほど、吐出流は凝固シェルの薄い鋳型上方で短辺に衝突するため、凝固シェル再溶解時間(1/Pmax)[s]は短くなり、ブレイクアウトを発生しやすくなる。
しかしながら、浸漬深さを深くしたくても、タンディッシュを上下させる装置の限界があるため、通常は吐出孔上端位置で400[mm]深さ程度が限界となる。
よって、浸漬ノズル深さは、吐出孔上端位置が湯面から220〜400[mm]の深さの範囲が適切であり、好ましくは吐出孔上端位置が湯面から320〜400[mm]である。
スループットが10[ton/min]以上の鋳造が可能な連続鋳造装置は、例えば、鋳型は、幅1600[mm]×厚み250[mm]、浸漬ノズルは2孔ノズルであり、吐出孔は高さ120[mm]×幅100[mm]であるような連続鋳造設備であるが、本発明はこれに限定されない。
「浸漬深さ」とは、浸漬ノズル4の吐出孔上端位置62のことである。
評価は、ブレイクアウトが発生するか、鋳型に設置された熱電対による温度計測からブレイクアウトの危険性ありと判断された場合を不合格(×)とし、問題なく鋳造できた場合を合格(○)とした。不合格(×)の要因には下線を付してある。
No.4、15、199、22、23、33、37は、hが負値であることが、凝固シェル再溶解時間(1/Pmax)を0.38[s]より小さな値にしたと考えられる。
一方で、本発明例では、凝固シェル再溶解時間が0.38[s]となり、合格(○)となっており、本発明の方法が有効であることが示されている。
Claims (3)
- 鋳型長辺側に2本の鉄芯を具備する電磁ブレーキを有する連続鋳造装置を用いて、10[ton/min]〜15[ton/min]のスループットで鋳造する連続鋳造方法であって、
鋳型短辺面の各位置において、溶鋼吐出流の単位体積・単位時間当たりの熱エネルギーをEf 、凝固シェルを溶解するのに必要な単位体積当たりのエネルギーをEs、とするときに
P=Ef/Es …(式1)により計算されるPの鋳型内における最大値Pmaxの逆数(1/Pmax)が、0.38[s]以上となることを特徴とする連続鋳造方法。 - 鋳型長辺側に2本の鉄芯を具備する電磁ブレーキを有する連続鋳造装置を用いて、10[ton/min]〜15[ton/min]のスループットで鋳造する連続鋳造方法であって、電磁ブレーキの鉄芯中心位置(x0,y0)[mm]、浸漬ノズルの吐出孔下端位置(x1,y1)[mm]および吐出孔角度αから
h=y1+(x0−x1)tanα−y0 …(式2)
と計算される鋳型深さ方向の距離hが0[mm]以上であり、
鋳型厚み中心における磁束密度は0.4[T]から0.5[T]である、
ことを特徴とする連続鋳造方法。 - 浸漬ノズルの吐出孔上端が湯面から220〜400[mm]の位置にあることを特徴とする請求項2に記載の連続鋳造方法。
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