JP6379718B2 - ボールねじの接触角比設定方法 - Google Patents
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Description
象限突起誤差は、制御技術によって補償することができる(例えば非特許文献2参照)。例えば、送り装置を構成するボールねじ、転がり直動案内あるいは転がり軸受の有する非線形摩擦特性に基づいて、送り系の摩擦トルクのヒステリシスループに近似できるような数学モデルを構築し、これをサーボ情報として送り装置の制御器に入力すればよい。
しかしながら、数学モデルの構築は、実機を用いて試行錯誤的に調整を繰り返しながら行う必要がある(例えば非特許文献2参照)。そのため、実機を用いた数学モデルの構築のためのコストや手間が掛かり過ぎてしまうという問題があり、ボールねじの駆動方向反転時におけるロストモーションによる、ワークの加工精度低下を防止する上で改善の余地が残される。
そこで、本発明は、このような問題点に着目してなされたものであって、ロストモーションを低減または防止し得るボールねじの接触角比設定方法を提供することを課題とする。
Δep=δxF−δxB (式1)
(式1)に示すように、ボールねじの駆動方向反転時に生じるロストモーションΔepは、正方向作動時の軸方向変位δxFと逆方向作動時の軸方向変位δxBとの差を抑制すれば、Δepを低減または極小化することができる。本願発明者は、このような考察のもと、鋭意検討の結果、本発明を完成するに至った。
0.91≦α0M/α0B<1 (式2)
但し、前記ボールと前記ナットとの接触角がα0M、前記ボールと前記ねじ軸との接触角がα0Bである。
図1に示すように、このボールねじ10は、ねじ軸1と、ねじ軸1に対してボール3を介して螺合するナット2とを有する。
ナット2は、軸方向に並べられた第1ナット2A及び第2ナット2Bと、両ナット2A、2Bの間に介在された間座9とが一体となって構成されている。一方のナット2Aには、端部に円環状のフランジ31が形成されている。フランジ31の内周部とねじ軸1との間、および、第2ナット2Bの軸方向他端部とねじ軸2との間は防塵用シール32で塞がれている。また、二つのナット2A、2Bは、回転方向の位相がずれないようにキー溝5に挿通された不図示のキーにより回転方向が位置決めされている。
このボールねじ10は、ねじ軸1のねじ溝11およびナット2のねじ溝21は、いずれもゴシックアーク溝である。すなわち、ねじ軸1のねじ溝11およびナット2のねじ溝21の横断面形状は、曲率中心の異なる2つの同一円弧を組合せた略V字状である。そして、ボール3に対し、同図に示す、ナット2のねじ溝21との接触角α0M、およびねじ軸1のねじ溝11との接触角α0Bの比が、0.91≦α0M/α0B<1となる範囲に設定されている。なお、ねじ軸1のねじ溝11の外側(両縁部)には、ねじ軸1の外径面12に滑らかに接続する面取り7が施されている。
本実施形態のボールねじでは、上記ボール3の直径、ボール3と各ねじ溝11,21との各接触角、および各ねじ溝11,21の溝半径を、図3に示すように定義する。つまり、図3(a)は、単体すきまが零の場合でのボール3と軌道(ねじ溝11,21)との関係を示し、このとき、ボール3とねじ軸1のねじ溝11との接触角(以下、「ねじ軸接触角」ともいう)をα0B(反対の側はα0B’)、ボール3とナット2のねじ溝21との接触角(以下、「ナット接触角」ともいう)をα0M(反対の側はα0M’)、ねじ軸1のねじ溝21の溝半径をRB、ナット2のねじ溝21の溝半径をRMとする。
つまり、本実施形態のボールねじ(特に、予圧荷重Faが動定格荷重Caの3〜5%となる領域において用いられるボールねじ)では、図3(a)において破線で描かれたボール3(ボール径φDa)のように、ボール3とねじ溝11,21との間に僅かなすきまを有するものと考える。よって、ボール3と各ねじ溝11,21とのすきま分だけねじ軸1およびナット2を軸方向に移動すれば、図3(b)に示すように、ボール3は軌道(ねじ溝11,21)と荷重ゼロで2点接触するものと考えることができる。このとき、ボール3と軌道間の接触角は、単体すきまが零の場合の接触角α0からα1へと変化することになり、このときのねじ軸1とナット2間の軸方向相対変位が軸方向すきまδcaとなる。
図4(a)は、ボールねじが静止状態において、図3(b)に示す状態から、ボールねじに作用する軸方向荷重によってボール3と軌道間に接触荷重P2M、P2Bがそれぞれ作用している場合を示している。図4(a)において、ボールねじは静止状態にあるので、ボール3に作用する接触荷重P2M、P2Bもつり合い状態にある。
つまり、本実施形態のボールねじは、ボール3とねじ軸1のねじ溝11との接触角α0Bと、ボール3とナット2のねじ溝21との接触角α0Mとの比が、上記(式2)を満たす範囲に設定されている。
[第一実施例]
工作機械用のボールねじ(日本精工株式会社製ボールねじ、型式:BS3610)を表1に示す。表1に示すボールねじは、上記で説明した、単体すきまが零の場合を数値範囲を規定する基礎とした諸元を有する。
第一実施例は、表1に示すボールねじ(比較例)を用いて、図4に示すような実際の接触状態になった場合において、ボールねじの駆動方向反転時におけるロストモーションを低減または極小化したシミュレーション解析である。
同図から判るように、接触角比α0M/α0B<1とすれば、ロストモーションΔepは低減されることがわかる。しかし、接触角比α0M/α0B≦0.90となると、ロストモーションΔepの絶対値が、接触角比α0M/α0B=1の場合での値を越えてしまう。そこで、上記実施形態では、この第一実施例のシミュレーション解析の結果に基づいて、ナット接触角α0Mの範囲を、0.91≦α0M/α0B<1の範囲に設定した。特に、この第一実施例では、同図から判るように、α0M/α0B=0.95の場合に、予圧荷重Faが動定格荷重Caの3〜5%となる領域において、ロストモーションΔepが除去あるいは極小化されていることがわかる。
なお、本発明に係るボールねじは、上記実施形態ないし第一実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しなければ種々の変形が可能である。以下、他の実施例について説明する。
第二実施例のシミュレーション解析の基礎となるボールねじの諸元は以下のとおりである。
BS2505:軸径DB=25mm,ボール中心円径dm=25.5mm,リードL=5mm,ボール径Da=3.175−1.40×10−3mm,ねじ軸およびナット溝R比fpB=fpM=54%,ねじ軸接触角α0B=44.42°,アキシアルすきまδca=4.00μm,ナット有効巻数ζ=2.5,列数ξ=1,動定格荷重Ca=8.22kN
第三実施例のシミュレーション解析の基礎となるボールねじの諸元は以下のとおりである。
BS5016:軸径DB=50mm,ボール中心円径dm=51.5mm,リードL=16mm,ボール径Da=7.9375−3.50×10−3mm,ねじ軸およびナット溝R比fpB=fpM=54%,ねじ軸接触角α0B=44.44°,アキシアルすきまδca=10.00μm,ナット有効巻数ζ=2.5,列数ξ=1,動定格荷重Ca=38.5kN
2 ナット
3 ボール
7 面取り
11 ねじ軸のねじ溝
12 ねじ軸の外径面
21 ナットのねじ溝
Claims (2)
- ねじ軸と、ナットと、複数のボールとを有し、前記ねじ軸は前記ナットを貫通し、前記ねじ軸の外周面に形成された螺旋状のねじ溝と前記ナットの内周面に形成された螺旋状のねじ溝とにより前記複数のボールが公転運動する転動路が形成されるボールねじの接触角比を設定する方法であって、
当該ボールねじとして、ダブルナット予圧方式によって予圧を付与し予圧荷重Faが動定格荷重Caの3〜5%となる領域において用いられるものを対象とし、
前記ねじ軸のねじ溝および前記ナットのねじ溝を、いずれもゴシックアーク溝とし、
前記ボールと前記ナットのねじ溝との接触角と、前記ボールと前記ねじ軸のねじ溝との接触角との比を、予圧荷重Faが動定格荷重Caの3〜5%となる領域におけるロストモーションΔepの絶対値が、接触角比α 0M /α 0B =1の場合での値よりも小さくなるように、シミュレーション解析の結果に基づいて、下記(式)を満たす範囲に設定することを特徴とするボールねじの接触角比設定方法。
0.91≦α0M/α0B<1 (式)
但し、前記ボールと前記ナットのねじ溝との接触角がα0M、前記ボールと前記ねじ軸のねじ溝との接触角がα0Bである。 - 駆動方向反転時における前記ナット内で公転運動している前記ボールの、前記ねじ軸のねじ溝または前記ナットのねじ溝への食込みを「ボール食込み挙動」と呼ぶとき、
当該ボールねじは、ボール食込み挙動により、前記ねじ軸のねじ溝および前記ナットのねじ溝とが、前記ボールに対して3点で接触するものを限って対象とする請求項1に記載のボールねじの接触角比設定方法。
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JP2014128383A JP6379718B2 (ja) | 2014-06-23 | 2014-06-23 | ボールねじの接触角比設定方法 |
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2014
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