JP2004084935A - ボールねじ - Google Patents

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JP2004084935A JP2003134446A JP2003134446A JP2004084935A JP 2004084935 A JP2004084935 A JP 2004084935A JP 2003134446 A JP2003134446 A JP 2003134446A JP 2003134446 A JP2003134446 A JP 2003134446A JP 2004084935 A JP2004084935 A JP 2004084935A
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Yasumi Watanabe
渡辺 靖巳
Shigeru Okita
沖田 滋
Junji Mizuguchi
水口 淳二
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Abstract

【課題】高速・高負荷の用途に使用されるボールねじの耐久性を向上する。
【解決手段】ボールねじにおいて、ボールとねじ軸側のボール転動溝との接触角であるねじ軸側接触角と、ボールとナット側のボール転動溝との接触角であるナット側接触角との間に、ねじ軸側接触角よりもナット側接触角の方が小さくなるように、2°以上10°以下の差を与えて形成した。また、ボール同士の間に、凹面のボール保持面を有するリテーニングピースを配置した。
【選択図】   図3

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、接触角に特徴を有するボールねじに関する。
【0002】
【従来の技術】
ボールねじは、ねじ軸とナットとボールとで構成された直動装置である。ねじ軸の外周面とナットの内周面には螺旋状の溝が形成されており、これらの螺旋溝でボールの軌道が形成されている。そして、ボールがこの軌道を転動することによって、ナットは、ねじ軸に対して相対的に直線移動する。すなわち、ねじ軸およびナットの螺旋溝がボール転動溝となっている。また、ナットの外側部には、循環通路が設けてある。
【0003】
特に、高速、高負荷用途に使用されるボールねじには、ボール転動溝の形状にゴシックアーチ溝形状が多く用いられている。ゴシックアーチ溝形状とは、同じ半径の2個の円弧が、半径同士が交差するように中心位置をずらして、連結された形状である。ゴシックアーチ溝形状は、ボール転動溝とボールとの接触角が大きくとれることが特徴であり、通常、ボールとねじ軸側のボール転動溝との接触角(以下、ねじ軸側接触角と称す)と、ボールとナット側のボール転動溝との接触角(以下、ナット側接触角と称す)は、それぞれ45°になっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
近時、市場でのボールねじの使用条件がさらに高速、高負荷化される中で、ボール表面の損傷が軽度であるにもかかわらず、ねじ軸あるいは、ナットのボール転動溝の表面に剥離が生じる場合があり、耐久性に関して改良の余地がある。
本発明は、このような点に着目してなされたものであって、高速、高負荷の使用に対しても耐久性を向上することができるボールねじを提供することを目的としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明は、外周面に螺旋状のボール転動溝を有するねじ軸と、内周面に螺旋状のボール転動溝を有するナットと、これらのボール転動溝で形成される軌道内に配置された複数のボールとを備えたボールねじにおいて、前記ボールと前記ねじ軸側の前記ボール転動溝との接触角であるねじ軸側接触角と、前記ボールと前記ナット側の前記ボール転動溝との接触角であるナット側接触角との間に、前記ねじ軸側接触角よりも前記ナット側接触角の方が小さくなるように、2°以上10°以下の差を与えたことを特徴としている。
【0006】
このボールねじによれば、ナットのボール転動溝にボールが接触した際に生じるPV値を小さくすることができる。これにより、すべりによるボール転動溝表面の剥離の発生を抑えることができる。したがって、高負荷、高速で回転させた場合の寿命が長くなる。
また、請求項2に係る発明は、上記請求項1に係る発明であるボールねじにおいて、ボール同士の間に、両面に凹面部を有するリテーニングピースを介在させたことを特徴としている。
このボールねじによれば、リテーニングピースによってボールの競り合いが抑制されるので、さらに高負荷、高速で回転させた場合の寿命が長くなる。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態におけるボールねじの構成を示す平面図であり、同図では、ナット2のみをナット2の軸線を含む面で切断した状態で示している。
このボールねじは、ねじ軸1とナット2とボール3とで主に構成されている。ねじ軸1の外周面には、螺旋状のボール転動溝4が形成され、ナット2の内周面に螺旋状のボール転動溝5が形成されている。
【0008】
ナット2内にあるねじ軸1のボール転動溝4と、ナット2のボール転動溝5とで、ナット2内にボール3の軌道6が形成されている。ナット2の外周面には切欠部21が形成され、この切欠部21にチューブ状の循環通路8が配置されている。この循環通路8は、循環通路押え81で切欠部21に固定してある。ナット2の軸方向一端には、ナット2をテーブル等に固定するためのフランジ22が設けてある。このフランジ22とねじ軸1との間、および、ナット2の軸方向他端部とねじ軸1との間は、防塵用シール9で塞がれている。
【0009】
また、本実施形態のボールねじは、全てのボール3同士の間に、リテーニングピース7が配置されている。このリテーニングピース7には、例えば特開2001−193814号公報に開示されているものを用いる。これは、図2に示すように、円柱の両底面が凹面(ボール保持面)71になっている形状である。この円柱の直径7dはボール3の直径よりも少し小さい。また、この凹面71は、同じ曲率半径の2つの球面を合わせた面形状となっており、その断面がゴシックアーチ形状となっている。そして、この凹面71は、ボール3の半径が凹面71の半径より小さく、凹面71の半径同士の交差位置がボール3の中心位置となるように形成されている。そのため、このリテーニングピース7の凹面71とボール3は、線接触することができる。これにより、ボール3はリテーニングピース7の凹面71に極めて低摩擦で接触することができるため、ボール3とリテーニングピース7のすべり抵抗を小さくすることができる。そのため、リテーニングピース7の循環性も良好となるとともに、ボール3同士のせりあいによる作動性の悪化やボール3の摩擦や損傷を著しく低減することができる。その結果、ボールねじの寿命が長くなる。
【0010】
図3に図1のボールねじの正作動時のボールとボール転動溝との関係を示す要部断面図を示す。なお、図4は、図1のボールねじの逆作動時のボールとボール転動溝との関係を示す要部断面図である。
図3に示すように、この実施形態(後述する試験体組B1−K1)では、接触角の関係を、ねじ軸側接触角θ1を45.6°に、ナット側接触角θ2を40.7°に形成し、その差は、ねじ軸側接触角θ1よりもナット側接触角θ2を小さく(4.9°)してある。接触角の関係をこのように形成することによって、後述する実験結果が示すように、ナット2のボール転動溝4にボール3が接触した際に生じるPV値(PVmax)を小さくすることができる。これにより、すべりによるボール転動溝表面の剥離の発生を抑えることができる。したがって、高負荷、高速で回転させた場合の寿命が長くなる。
【0011】
ボールねじは、図3にも示すように、ボール3とねじ軸1のボール転動溝4との接触点4bと、ボール3とナット2のボール転動溝5との接触点5a、5bは、その負荷状態によって接触する位置が変化する。これらの接触点は、グリース、あるいは潤滑油による油膜を介して、接触楕円と呼ばれる微少な面積の楕円状になり、ここには非常に高い面圧が生じる。また、ボールねじは、ボール転動溝4、5が螺旋状に連続しているために、理想的な転がり状態ではなく、ボール3には、すべりが生じている。この差動すべりが接触楕円に作用すると、理想的な転がり接触に比べて、転がり疲労によってボール転動溝4、5に異常組織が発生し易く、ボール転動溝4、5表面の剥離が生じる原因となる。なお、この異常組織は、金属組織中のセメンタイトに含まれる炭素の拡散を伴う組織で、白色組織と呼ばれているものと同様なものである。
【0012】
また、ボールねじは、正作動ではナット2が荷重の作用方向に逆らって移動し、ボール3がねじ軸1のボール転動溝4に対して、荷重に逆らう方向に転動する。そのため、差動すべりは正作動方向において大きくなる。そこで、この試験をおこなうにあたって、正作動におけるねじ軸側接触角θ1とナット側接触角θ2の関係をシミュレーションした。結果を図5に示す。図5から、正作動における接触楕円に生じる面圧Pとすべり速度Vとの積であるPV値(PVmax)は、三点接触する各接触楕円4b、5a、5bのうちナット2側の接触楕円5bで非常に大きくなっている。また、その値は、ナット側接触角θ2の変化に大きく依存し、特に43°以上のときに急速に増大していることが判った。
【0013】
そこで、ボールねじのナット側接触角θ2だけが異なる種々のボールねじを作製し、各ボールねじの寿命試験を行った。
まず、図1のボールねじとして、ボールねじ呼び番号「36×10−C5」(ねじ軸1の直径:36mm、リード:10mm、ボール3の直径:6.35mm、回路数:2.5巻2列)を用意した。なお、ねじ軸1及びナット3には、SCM420を浸炭焼き入れしたものを用いた。ボール3には、SUJ2製鋼球をもちいた。また、リテーニングピース7は、ナイロン製のものを使用した。
【0014】
各ボールねじの寿命を調べるための試験体は、シミュレーションの結果から判断して、次のように用意した。
まず、ナット2の試験体は、ナット側接触角θ2を、ねじ軸側接触角θ1との角度差のねらい目を0°〜12°の範囲に設定した。このナット2の試験体として14種類(H1、J1、K1、L1、M1、N1、Q1、R1、S1、T1、U1、W1、X1、Y1)を用意した。また、ナット2に対応させるねじ軸1の試験体は、7種類(A1、B1、C1、D1、E1、F1、G1)をそれぞれ2本ずつ、14本を用意した。そして、これらを組み合わせたものを試験体組とした。この組み合わせは、例えば、ねじ軸1の試験体A1とナット2の試験体H1とを組み合わせたものを試験体組A1−H1と表記する(以下、他の試験体についても同様)。各試験体の測定データとその組み合わせを下記の表1に示す。
【0015】
【表1】
Figure 2004084935
【0016】
なお、表1では、A1−H1〜E1−T1が本発明に基づく実施例、F1−U1〜G1−Y1が比較例である。
また、リテーニングピース7による有意差の有無を判断するために、リテーニングピース7を介装しない場合について、上記のリテーニングピース7を介装した場合同様の比較試験を行った。すなわち、ナット2の試験体として14種類(H2、J2、K2、L2、M2、N2、Q2、R2、S2、T2、U2、W2、X2、Y2)を用意した。また、ナット2に対応させるねじ軸1の試験体は、7種類(A2、B2、C2、D2、E2、F2、G2)をそれぞれ2本ずつ、14本を用意した。そして、これらを組み合わせたものを試験体組とした。各試験体の測定データとその組み合わせを下記の表2に示す。
【0017】
【表2】
Figure 2004084935
【0018】
なお、表2では、A2−H2〜E2−T2が本発明に基づく実施例、F2−U2〜G2−Y2が比較例である。
試験機は、NSK(日本精工株式会社)製のボールねじ耐久寿命試験機を用いた。試験条件は、試験荷重:9000N(アキシアル荷重)、回転速度:450rpm、ストローク:60mm、潤滑グリース:鉱油系グリースとした。
【0019】
また、試験は、次の手順により行った。
まず、各ボールねじ試験体組を試験機にかけ、ねじ軸1のボール転動溝4に剥離が生じるまでの走行距離を測定する。寿命判定は、一定時間ごとに試験を停止して、ねじ軸1の剥離の有無を確認して、剥離が生じるまでの時間とした。
次に、この測定値の基準寿命に対する比(寿命比)を算出した。この寿命比は、ボール転動溝4、5の曲率半径が標準形状である試験体組F1−W1の寿命時間を基準(試験体組F1−W1を1.0)として表したものである。
【0020】
表1および表2に示す試験体組による上記の試験結果から、ねじ軸側接触角とナット側接触角の接触角の差と寿命比の関係をプロットし、それらの関係をもとに5次曲線で近似して示したグラフ(図6のグラフZ1、図7のグラフZ2)を図6および図7にそれぞれ示す。
図6から判るように、標準形状である試験体組F1−W1に対して、ねじ軸側接触角θ1よりナット側接触角θ2を2°以上小さく設定して制作した試験体組A1−H1、A1−J1はそれぞれ約2倍、約2.7倍の寿命であった。同様に徐々に接触角の差を大きくしたところ約1.5倍から約2.8倍の寿命が得られたが、接触角の差が10°を超えると寿命比は逆に悪化し、標準形状よりも低下した。
【0021】
また、図7から判るように、リテーニングピース7を介装していない場合であっても、ねじ軸側接触角θ1よりナット側接触角θ2を2°以上10°以下に設定して制作した試験体組A2−H2〜E2−T2は、ねじ軸側接触角θ1よりナット側接触角θ2を2°未満である試験体組F2−U2、およびF2−W2、並びに接触角の差が10°を超える試験体組G2−X2、およびG2−Y2に対して、いずれも寿命が向上している。
【0022】
この結果から、シミュレーションと試験から実際に得られた結果とは、よく一致しており、特に、ねじ軸側接触角θ1と、ナット側接触角θ2との間に、ねじ軸側接触角θ1よりもナット側接触角θ2の方が小さくなるように、2°以上10°以下の差を与えた場合に顕著に寿命が延びていることが判る(2°以上10°以下のラインを図6および図7にそれぞれ破線で示した。)。
【0023】
また、図6および図7を比較して判るように、リテーニングピース7を介装させることによって、より寿命を向上させることができることが判る。
以上説明したように、このボールねじによれば、ナット2のボール転動溝5に生じるPV値を小さくすることができる。したがって、すべりによるボール転動溝5の異常剥離の発生を抑えることができる。これにより、高負荷、高速で回転させた場合の寿命が長くなる。
また、リテーニングピース7によってボール3の競り合いが抑制されるので、さらに高負荷、高速で回転させた場合の寿命が長くなる。
【0024】
なお、この実施形態では、ねじ軸側接触角θ1を固定して、ナット側接触角θ2を変化させて所望の関係を得ているが、本発明は、ねじ軸側接触角θ1とナット側接触角θ2の相対関係によって生じるものである。従って、ナット側接触角θ2を固定し、ねじ軸側接触角θ1を変化させてもよい。また、全てのボール3同士の間にリテーニングピース7を配置しているが、本発明のボールねじは、リテーニングピース7が全てのボール間に配置されているものに限定されない。その他の保持器や、小球を挟むなどの方法も可能である。また、本実施形態では、循環通路を用いた形式としているが、これに限定されるものではなく、循環させない方式や、他の形式の循環通路を用いてもよい。
【0025】
【発明の効果】
本発明によれば、ナットのボール転動溝に生じるPV値を小さくすることができる。そのため、ころがり疲労が低減する。したがって、ボール転動溝の異常剥離の発生を抑えることができる。これにより、高負荷、高速で回転させた場合の寿命が長くなる。
また、本発明は、ボール同士の間に、両面に凹面部を有するリテーニングピースを介在させたので、ボールの競り合いが抑制されるため、さらに寿命が長くなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態におけるボールねじの一部破断平面図である。
【図2】図1のボールねじのリテーニングピースとボールとの関係を示す説明図である。
【図3】図1のボールねじの正作動時のボールとボール転動溝との関係を示す要部断面図である。
【図4】図1のボールねじの逆作動時のボールとボール転動溝との関係を示す要部断面図である。
【図5】接触角と接触点におけるPV値(PVmax)との関係をシミュレーションした結果を示すグラフである。
【図6】表1の試験体組による試験結果を、ねじ軸側接触角とナット側接触角の接触角の差と寿命比の関係にて示したグラフである。
【図7】表2の試験体組による試験結果を、ねじ軸側接触角とナット側接触角の接触角の差と寿命比の関係にて示したグラフである。
【符号の説明】
1・・・ねじ軸
2・・・ナット
3・・・ボール
4・・・ねじ軸のボール転動溝
5・・・ナットのボール転動溝
θ1・・・ねじ軸側接触角
θ2・・・ナット側接触角
6・・・軌道
7・・・リテーニングピース(セパレータ)
8・・・循環通路
9・・・防塵用シール
21・・・切欠部
22・・・フランジ
71・・・ボール保持面
81・・・循環通路押え

Claims (2)

  1. 外周面に螺旋状のボール転動溝を有するねじ軸と、内周面に螺旋状のボール転動溝を有するナットと、これらのボール転動溝で形成される軌道内に配置された複数のボールとを備えたボールねじにおいて、
    前記ボールと前記ねじ軸側の前記ボール転動溝との接触角であるねじ軸側接触角と、前記ボールと前記ナット側の前記ボール転動溝との接触角であるナット側接触角との間に、前記ねじ軸側接触角よりも前記ナット側接触角の方が小さくなるように、2°以上10°以下の差を与えたことを特徴とするボールねじ。
  2. 前記ボール同士の間に、両面に凹面部を有するリテーニングピースを介在させたことを特徴とする請求項1記載のボールねじ。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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CZ304159B6 (cs) * 2009-07-27 2013-11-27 Rmax S.R.O. Uchycení sberného systému hrabicového dopravníku k pohonné jednotce
JP2016008636A (ja) * 2014-06-23 2016-01-18 日本精工株式会社 ボールねじ
JP2016205619A (ja) * 2015-04-16 2016-12-08 日本精工株式会社 ボールねじ

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