JP6379685B2 - 4輪駆動車のクラッチ制御装置 - Google Patents

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Description

本発明は、副駆動輪への駆動力伝達系に、噛み合いクラッチと摩擦クラッチを備えた4輪駆動車のクラッチ制御装置に関する。
従来、後輪への駆動力伝達系に、噛み合いクラッチと摩擦クラッチを備えた前輪駆動ベースの4輪駆動車が知られている(例えば、特許文献1参照)。この4輪駆動車では、2輪駆動モードから4輪駆動モードへの切り替え時には、摩擦クラッチを締結した後、噛み合いクラッチを締結する。又、4輪駆動モードから2輪駆動モードへの切り替え時には、摩擦クラッチを解放した後、噛み合いクラッチを解放する。
特開2010−254058号公報
しかしながら、従来装置にあっては、2輪駆動モードから4輪駆動モードへの切り替え時、摩擦クラッチを締結し、噛み合いクラッチに差回転がある噛み合い待ち状態から差回転が無くなる同期状態になると、噛み合いクラッチを押し込み締結していた。このため、主駆動輪がスリップ状態であるとき、差回転を小さくできる量が車両状態によって限定されてしまい、噛み合いクラッチを締結できないことがある、という問題があった。
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、噛み合いクラッチの締結要求時、主駆動輪がスリップ状態である場合、確実に4輪駆動状態へ遷移することができる4輪駆動車のクラッチ制御装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明の4輪駆動車のクラッチ制御装置は、左右前輪と左右後輪のうち、一方を駆動源に接続される主駆動輪とし、他方を前記駆動源にクラッチを介して接続される副駆動輪とし、駆動力配分摩擦クラッチと、噛み合いクラッチと、クラッチ制御手段と、を備える。
前記駆動力配分摩擦クラッチは、前記主駆動輪から前記副駆動輪への駆動分岐位置に設けられ、締結トルクに応じて前記駆動源からの駆動力の一部を前記副駆動輪へ配分する。
前記噛み合いクラッチは、前記駆動分岐位置よりも下流位置に設けられ、クラッチ解放により前記副駆動輪への駆動力伝達系を、前記主駆動輪への駆動力伝達系から切り離す。
前記クラッチ制御手段は、前記駆動力配分摩擦クラッチの締結/解放制御と前記噛み合いクラッチの締結/解放制御を行う。
この4輪駆動車のクラッチ制御装置において、前記クラッチ制御手段は、解放状態の前記噛み合いクラッチに対し締結要求があると、先に前記駆動力配分摩擦クラッチの締結制御を行い、前記駆動力配分摩擦クラッチの締結制御中に前記噛み合いクラッチのクラッチ差回転が減少し、前記クラッチ差回転が回転同期判定の差回転範囲を下回ったと判定されると、前記駆動力配分摩擦クラッチの締結トルクを低下させる。また、前記クラッチ制御手段は、前記駆動力配分摩擦クラッチの締結制御中に前記噛み合いクラッチのクラッチ差回転の増減勾配を監視し、前記駆動力配分摩擦クラッチの締結トルクを低下させる制御中に、前記クラッチ差回転の増減勾配が減少から増加へ移行したと判定されると、その判定されたときの締結トルクを一定に維持する。
ここで、駆動分岐位置よりも下流位置とは、駆動分岐位置から副駆動輪に向かう駆動力伝達経路上で駆動分岐位置よりも副駆動輪側の位置をいう。
よって、解放状態の噛み合いクラッチに対し締結要求があると、先に駆動力配分摩擦クラッチの締結制御が行われる。この駆動力配分摩擦クラッチの締結制御中に噛み合いクラッチのクラッチ差回転を減少させ、クラッチ差回転が回転同期判定の差回転範囲を下回ったと判定されると、駆動力配分摩擦クラッチの締結トルクを低下させる。
すなわち、駆動力配分摩擦クラッチが締結制御されると、噛み合いクラッチの出力回転数が上昇するため、噛み合いクラッチのクラッチ差回転は時間の経過と共に減少する。そして、噛み合いクラッチの出力回転数が上昇を続けるため、この出力回転数が噛み合いクラッチの入力回転数よりも大きくなる。その後、クラッチ差回転が減少を続けると、クラッチ差回転が回転同期判定の差回転範囲を超えてさらに減少する。つまり、クラッチ差回転は、回転同期判定の差回転範囲を下回る。一方、噛み合いクラッチの締結は、回転同期判定の差回転範囲内で行う。
これに対し、クラッチ差回転に着目し、クラッチ差回転が回転同期判定の差回転範囲を下回ったと判定、すなわち、主駆動輪がスリップ状態と判定されると、締結トルクを低下させる。つまり、締結トルクの低下によって、スリップにより上昇する噛み合いクラッチの出力回転数を低下させる。言い換えれば、締結トルクを低下させ、クラッチ差回転を回転同期判定の差回転範囲内とする差回転調整が行われる。このため、主駆動輪がスリップ状態であっても、クラッチ差回転が回転同期判定の差回転範囲内に調整されるので、噛み合いクラッチが締結される。
この結果、噛み合いクラッチの締結要求時、主駆動輪がスリップ状態である場合、確実に4輪駆動状態へ遷移することができる。
実施例1のクラッチ制御装置が適用された後輪駆動ベースの4輪駆動車の駆動系構成を示す駆動系構成図である。 実施例1のクラッチ制御装置が適用された後輪駆動ベースの4輪駆動車の制御系構成を示す制御系構成図である。 実施例1の「オートモード」が選択されたときのクラッチ制御で用いられる車速とアクセル開度に応じた駆動モード切り替えマップを示す基本マップ図である。 実施例1の「オートモード」が選択されたときのクラッチ制御による駆動モード(ディスコネクト2輪駆動モード・スタンバイ2輪駆動モード・コネクト4輪駆動モード)の切り替え遷移を示す駆動モード遷移図である。 実施例1の4WDコントロールユニットにて実行されるクラッチ制御処理の流れを示すフローチャートである。 ドグクラッチに対し締結要求があったときのアクセル開度(ACC)・エンジントルク・車速VSP(V)・前後輪回転速度差ΔV・ΔV増減勾配・クラッチ差回転ΔN・ΔN増減勾配・電制カップリング(トランスファクラッチ)の締結トルク(TF)・ドグクラッチ解放/締結状態の各特性を示すタイムチャートである。
以下、本発明の4輪駆動車のクラッチ制御装置を実現する最良の形態を、図面に示す実
施例1に基づいて説明する。
まず、構成を説明する。
実施例1における後輪駆動ベースの4輪駆動車(4輪駆動車の一例)のクラッチ制御装置の構成を、「4輪駆動車の駆動系構成」、「4輪駆動車の制御系構成」、「駆動モード切り替え構成」、「クラッチ制御構成」に分けて説明する。
[4輪駆動車の駆動系構成]
図1は、クラッチ制御装置が適用された後輪駆動ベースの4輪駆動車の駆動系構成を示す。以下、図1に基づき、4輪駆動車の駆動系構成を説明する。
前記4輪駆動車の後輪駆動系は、図1に示すように、エンジン1(駆動源、ENG)と、変速機2と、リアプロペラシャフト3と、リアドライブピニオン4と、リアリングギア5と、リアデファレンシャル6と、左後輪ドライブシャフト7と、右後輪ドライブシャフト8と、左後輪9(主駆動輪)と、右後輪10(主駆動輪)と、を備えている。すなわち、エンジン1及び変速機2を経過した駆動力は、リアプロペラシャフト3とリアドライブピニオン4とリアリングギア5とリアデファレンシャル6を介して左右後輪ドライブシャフト7,8に伝達され、差動を許容しながら左右後輪9,10を常時駆動する。なお、リアプロペラシャフト3の一部とリアドライブピニオン4とリアリングギア5とリアデファレンシャル6と左右後輪ドライブシャフト7,8の一部は、リアデフハウジング11に内蔵されている。
前記4輪駆動車の前輪駆動系は、図1に示すように、電制カップリング12(駆動力配分摩擦クラッチ、トランスファクラッチ)と、フロントプロペラシャフト13と、フロントドライブピニオン14と、フロントリングギア15と、フロントデファレンシャル16と、ドグクラッチ17(噛み合いクラッチ、D/C)と、左前輪ドライブシャフト18と、右前輪ドライブシャフト19と、左前輪20(副駆動輪)と、右前輪21(副駆動輪)と、を備えている。なお、リアプロペラシャフト3の一部と電制カップリング12とフロントプロペラシャフト13の一部と各プロペラシャフト3,13に駆動力を配分するチェーン式の伝達要素などは、変速機2の隣接位置に固定されたトランスファケース22に内蔵されている。また、フロントプロペラシャフト13の一部とフロントドライブピニオン14とフロントリングギア15とフロントデファレンシャル16と右前輪ドライブシャフト19の一部は、フロントデフハウジング23に内蔵されている。さらに、図1中、24は自在継手である。
すなわち、電制カップリング12とドグクラッチ17とを共に解放する2輪駆動モード(=ディスコネクト2輪駆動モード)を選択することが可能な駆動系構成としている。この電制カップリング12とドグクラッチ17を解放することにより、ドグクラッチ17より上流側の駆動系回転(フロントプロペラシャフト13等の回転)が停止することで、フリクション損失やオイル攪拌損失などが抑えられ、燃費向上が達成される。
前記電制カップリング12は、左右後輪9,10から左右前輪20,21への駆動分岐位置に設けられ、クラッチ締結容量に応じてエンジン1からの駆動力の一部を左右前輪20,21へ配分する駆動力配分摩擦クラッチである。電制カップリング12の入力側クラッチプレートは、リアプロペラシャフト3に連結され、出力側クラッチプレートは、フロントプロペラシャフト13に連結されている。この電制カップリング12としては、例えば、入力側と出力側のプレートを交互に複数配置した多板摩擦クラッチと、対向するカム面を有する固定カムピストン及び可動カムピストンと、対向するカム面間に介装されたカム部材と、を有するものを用いる。電制カップリング12の締結時は、可動カムピストンを電動モータにより回転させると、ピストン間隔を拡大するカム作用により可動カムピストンが回転角に応じてクラッチ締結方向にストロークし、多板摩擦クラッチの摩擦締結力を増すことで行う。電制カップリング12の解放時は、可動カムピストンを電動モータにより締結方向とは逆方向に回転させると、ピストン間隔を縮小するカム作用により可動カムピストンが回転角に応じてクラッチ解放方向にストロークし、多板摩擦クラッチの摩擦締結力を減じることで行う。
前記ドグクラッチ17は、電制カップリング12が設けられた駆動分岐位置よりも下流位置に設けられ、クラッチ解放により左右前輪20,21への駆動力伝達系を、左右後輪9,10への駆動力伝達系から切り離す噛み合いクラッチである。ドグクラッチ17の入力側噛み合い部材は、入力側左前輪ドライブシャフト18aに連結され、ドグクラッチ17の出力側噛み合い部材は、出力側左前輪ドライブシャフト18bに連結されている。このドグクラッチ17としては、例えば、一対の噛み合い部材のうち一方を固定部材とし他方を可動部材とし、固定部材と可動部材との間に締結方向に付勢するバネを設け、可動部材の外周にソレノイドピンと嵌合可能なネジ溝が形成されたものを用いる。ドグクラッチ17の解放時は、ネジ溝に対しソレノイドピンを突出させて嵌合すると、可動部材が回転しながら解放方向にストロークし、ストローク量が所定量を超えると噛み合い締結を解放する。一方、ドグクラッチ17の締結時は、ネジ溝に対するソレノイドピンの嵌合を解除すると、バネ付勢力により固定部材に向かって可動部材が締結方向にストロークし、両者の歯部が噛み合って締結する。
[4輪駆動車の制御系構成]
図2は、クラッチ制御装置が適用された後輪駆動ベースの4輪駆動車の制御系構成を示す。以下、図2に基づき、4輪駆動車の制御系構成を説明する。
前記4輪駆動車の制御系は、図2に示すように、エンジンコントロールモジュール31と、変速機コントロールモジュール32と、ABSアクチュエータコントロールユニット33と、4WDコントロールユニット34と、を備えている。
前記エンジンコントロールモジュール31は、エンジン1の制御ディバイスであり、エンジン回転数センサ35やアクセル開度センサ36等からの検出信号を入力する。このエンジンコントロールモジュール31からは、情報交換が互いに可能なCAN通信線37を介して4WDコントロールユニット34に対し、エンジン回転数情報やアクセル開度情報(ACC情報)が入力される。
前記変速機コントロールモジュール32は、変速機2の制御ディバイスであり、変速機入力回転数センサ38や変速機出力回転数センサ39等からの検出信号を入力する。この変速機コントロールモジュール32からは、CAN通信線37を介して4WDコントロールユニット34に対し、ギアレシオ情報(ギア比情報)が入力される。
前記ABSアクチュエータコントロールユニット33は、各輪のブレーキ液圧を制御するABSアクチュエータの制御ディバイスであり、ヨーレートセンサ40や横Gセンサ41や前後Gセンサ42や車輪速センサ43,44,45,46等からの検出信号を入力する。このABSアクチュエータコントロールユニット33からは、CAN通信線37を介して4WDコントロールユニット34に対し、ヨーレート情報や横G情報や前後G情報や各輪の車輪速情報が入力される。なお、上記情報以外に、ステアリング舵角センサ47から舵角情報が、CAN通信線37を介して4WDコントロールユニット34に対し入力される。また、左右前輪速情報の平均値を車速情報(VSP情報)とする。
前記4WDコントロールユニット34は、ドグクラッチ17と電制カップリング12の締結/解放制御ディバイスであり、各種入力情報に基づいて演算処理を行う。そして、ドグクラッチアクチュエータ48(ソレノイド)と電制カップリングアクチュエータ49(電動モータ)に駆動制御指令を出力する。ここで、CAN通信線37以外からの入力情報源として、駆動モード選択スイッチ50、ブレーキ操作の有無を検出するブレーキスイッチ51、リングギア回転数センサ52、ドグクラッチストロークセンサ53、モータ回転角度センサ54、出力側左前輪ドライブシャフト回転数センサ55等を有する。
前記駆動モード選択スイッチ50は、「2WDモード」と「ロックモード」と「オートモード」をドライバーが切り替え選択するスイッチである。「2WDモード」が選択されると、ドグクラッチ17と電制カップリング12を解放した前輪駆動の2WD状態が維持される。「ロックモード」が選択されると、ドグクラッチ17と電制カップリング12を締結した完全4WD状態が維持される。さらに、「オートモード」が選択されると、車両状態(車速VSP、アクセル開度ACC)に応じてドグクラッチ17と電制カップリング12の締結/解放が自動制御される。ここで、「オートモード」には、「エコオートモード」と「スポーツオートモード」の選択肢があり、ドグクラッチ17を締結し、電制カップリング12を解放する「スタンバイ2輪駆動モード」が選択肢により異なる。つまり、「エコオートモード」の選択時には、電制カップリング12を完全解放状態にして待機するが、「スポーツオートモード」の選択時には、電制カップリング12を締結直前の解放状態にして待機する。
前記出力側左前輪ドライブシャフト回転数センサ55は、ドグクラッチ17の出力回転数情報を取得するためのセンサである。なお、ドグクラッチ17の入力回転数情報は、左車輪速センサ45から取得される左前輪速度である。
ここで、出力回転数は、電制カップリング12を介してドグクラッチ17に回転が伝達される側の回転数であり、入力回転数は、電制カップリング12を介さずにドグクラッチ17に回転が伝達される側の回転数である。
[駆動モード切り替え構成]
図3は、「オートモード」が選択されたときのクラッチ制御で用いられる車速VSPとアクセル開度ACCに応じた駆動モード切り替えマップを示し、図4は、駆動モード(ディスコネクト2輪駆動モード・スタンバイ2輪駆動モード・コネクト4輪駆動モード)の切り替え遷移を示す。以下、図3及び図4に基づき、駆動モード切り替え構成を説明する。
前記駆動モード切り替えマップは、図3に示すように、車速VSPとアクセル開度ACCに応じて、ディスコネクト2輪駆動モード(Disconnect)と、スタンバイ2輪駆動モード(Stand-by)と、コネクト4輪駆動モード(Connect)と、を分けた設定としている。この3つの駆動モードは、アクセル開度ゼロで設定車速VSP0の基点aから車速VSPの上昇に比例してアクセル開度ACCが上昇する領域区分線Aと、領域区分線Aとの交点bから高車速側に引いた一定アクセル開度ACC0の領域区分線Bと、により分けている。
前記ディスコネクト2輪駆動モード(Disconnect)は、アクセル開度ACCが設定開度ACC0以下であって、アクセル開度ACCがゼロの車速軸線と領域区分線Aと領域区分線Bにより囲まれる高車速領域に設定している。すなわち、アクセル開度ACCが設定開度ACC0以下であるため、駆動スリップによる左右後輪9,10と左右前輪20,21の差回転発生頻度が極めて小さいと共に、駆動スリップが発生してもスリップが緩増する4WD要求の低い領域に設定している。
前記スタンバイ2輪駆動モード(Stand-by)は、アクセル開度ACCが設定開度ACC0を超えていて、領域区分線Aと領域区分線Bにより規定される高車速領域に設定している。つまり、車速VSPが高車速域であるため、4WD要求が低いものの、アクセル開度ACCが設定開度ACC0を超えているため、駆動スリップにより左右後輪9,10と左右前輪20,21の差回転が発生すると、スリップが急増する可能性が高い領域に設定している。
前記コネクト4輪駆動モード(Connect)は、車速VSPがゼロのアクセル開度軸線と、アクセル開度ACCがゼロの車速軸線と、領域区分線Aと、により囲まれる低車速領域に設定している。つまり、発進時や車速VSPが低いもののアクセル開度ACCが高い高負荷走行等のように、4WD要求が高い領域に設定している。
前記ディスコネクト2輪駆動モード(Disconnect)が選択されると、図4の枠線C内に示すように、電制カップリング12とドグクラッチ17が共に解放された2WD走行(Disconnect)になる。このディスコネクト2輪駆動モードでは、基本的に左右後輪9,10にのみ駆動力を伝達しての前輪駆動の2WD走行(Disconnect)が維持される。しかし、前輪駆動の2WD走行中に左右後輪9,10に駆動スリップが発生し、駆動スリップ量(=前後輪の差回転量、前後輪回転速度差)が閾値を超えると、電制カップリング12を摩擦締結する。その後、回転同期状態が判定されるとドグクラッチ17を噛み合い締結し、左右前輪20,21に駆動力を配分することで、駆動スリップを抑える前後輪の差回転制御が行われる。
前記スタンバイ2輪駆動モード(Stand-by)が選択されると、図4の枠線D内に示すように、ドグクラッチ17を締結し電制カップリング12を解放する2WD走行(Stand-by)になる。このスタンバイ2輪駆動モードでは、基本的に左右後輪9,10にのみ駆動力を伝達する前輪駆動の2WD走行(Stand-by)が維持される。しかし、前輪駆動の2WD走行中に左右後輪9,10に駆動スリップが発生し、駆動スリップ量(=前後輪の差回転量、前後輪回転速度差)が閾値を超えると、予めドグクラッチ17が噛み合い締結されているため、電制カップリング12の摩擦締結のみを行う。この電制カップリング12の摩擦締結により、応答良く左右前輪20,21に駆動力を配分することで、駆動スリップを抑える前後輪の差回転制御が行われる。
前記コネクト4輪駆動モード(Connect)が選択されると、図4の枠線E内に示すように、ドグクラッチ17と電制カップリング12が共に締結された4WD走行(Connect)になる。このコネクト4輪駆動モード(Connect)では、基本的に左右後輪9,10と左右前輪20,21に対して路面状況に合わせた最適の駆動力配分(例えば、発進時制御やアクセル開度対応制御や車速対応制御等)とする駆動力配分制御が行われる。但し、4WD走行中に、ステアリング舵角センサ47やヨーレートセンサ40や横Gセンサ41や前後Gセンサ42からの情報により、車両の旋回状態が判断されると、電制カップリング12の締結容量を低下させてタイトコーナーブレーキング現象を抑える制御が行われる。
前記2WD走行(Disconnect)と2WD走行(Stand-by)と4WD走行(Connect)の切り替え遷移は、車速VSPとアクセル開度ACCにより決まる動作点が、図3に示す領域区分線Aや領域区分線Bを横切るときに出力される駆動モードの切り替え要求により行われる。各駆動モードの切り替え遷移速度については、4WD要求に応える駆動モードへの遷移速度を、燃費要求に応えるディスコネクト2輪駆動モードへの遷移速度よりも優先するように決めている。
すなわち、2WD走行(Disconnect)→2WD走行(Stand-by)の切り替え遷移速度(図4の矢印F)を速くし、2WD走行(Stand-by)→2WD走行(Disconnect)の切り替え遷移速度(図4の矢印G)を遅くしている。同様に、2WD走行(Disconnect)→4WD走行(Connect)の切り替え遷移速度(図4の矢印H)を速くし、4WD走行(Connect)→2WD走行(Disconnect)の切り替え遷移速度(図4の矢印I)を遅くしている。これに対し、2WD走行(Stand-by)→4WD走行(Connect)の切り替え遷移速度(図4の矢印J)と、4WD走行(Connect)→2WD走行(Stand-by)の切り替え遷移速度(図4の矢印K)は、同じ速い速度にしている。
[クラッチ制御構成]
図5は、4WDコントロールユニット34にて実行されるクラッチ制御処理流れを示す(クラッチ制御手段)。以下、クラッチ制御処理構成をあらわす図5の各ステップについて説明する。このフローチャートは、「オートモード」の選択時であり、かつ、駆動モードとして、電制カップリング12とドグクラッチ17が共に解放されている「ディスコネクト2輪駆動モード」が選択されているときに開始される。
ステップS1では、ドグクラッチ17に対し締結要求があるか否かを判断する。YES(締結要求有り)の場合はステップS2へ進み、NO(締結要求無し)の場合はエンドへ進む。
ここで、ドグクラッチ17に対し締結要求が出されるのは、「ディスコネクト2輪駆動モード」の選択時、「コネクト4輪駆動モード」又は「スタンバイ2輪駆動モード」へのモード遷移と判定されたときである。
ステップS2では、ステップS1での締結要求有りとの判断、或いは、ステップS8でのΔN/dt≠0であるとの判断、或いは、ステップS9でのΔN>αであるとの判断、或いは、ステップS15での前後輪回転速度差ΔVの増減勾配ΔV/dtが減少へ移行する収束状況に応じて電制カップリング12の締結トルク(以下、単に「締結トルク」という。)を立ち上げる制御に続き、電制カップリング12のカップリングアクチュエータ49に対し締結指令を出力し、ステップS3へ進む。
ここで、カップリングアクチュエータ49に対する締結指令は、短時間にて電制カップリング12が完全締結状態となる急勾配指令とする。
ステップS3では、ステップS2での電制カップリング12の締結指令出力、或いは、ステップS11でのクラッチ差回転ΔNの増減勾配ΔN/dtが減少→増加ではないとの判断、或いは、ステップS12での締結トルクを一定にする制御、或いは、ステップS14での前後輪回転速度差ΔVの増減勾配ΔV/dtが減少へ移行していないとの判断に続き、ドグクラッチ17の差回転であるクラッチ差回転ΔNを演算し、ステップS4へ進む。
ここで、クラッチ差回転ΔNは、ドグクラッチ17の入力回転数(左前輪速度)から出力回転数(出力側左前輪ドライブシャフト回転数)を差し引くことで演算される。
ステップS4では、ステップS3でのクラッチ差回転ΔNの演算に続き、主駆動輪9,10と副駆動輪20,21との回転速度差である前後輪回転速度差ΔVを演算し、ステップS5へ進む。
ここで、前後輪回転速度差ΔVは、後輪回転速度(左右後輪速平均値)から前輪回転速度(左右前輪速平均値)を差し引くことで演算される。後輪回転速度は、左車輪速センサ43からの左後輪速と、右車輪速センサ44からの右後輪速と、の平均値演算により取得する。前輪回転速度は、左車輪速センサ45からの左前輪速と、右車輪速センサ46からの右前輪速と、の平均値演算により取得する。
ステップS5では、ステップS4での前後輪回転速度差ΔVの演算に続き、クラッチ差回転ΔNの時間微分処理をすることで、クラッチ差回転ΔNの増減勾配ΔN/dtを演算し、ステップS6へ進む。
ステップS6では、ステップS5での増減勾配ΔN/dtの演算に続き、前後輪回転速度差ΔVの時間微分処理をすることで、前後輪回転速度差ΔVの増減勾配ΔV/dtを演算し、ステップS7へ進む。
ステップS7では、ステップS6での増減勾配ΔV/dtの演算に続き、クラッチ差回転ΔNが、回転同期判定の差回転範囲(α≧ΔN≧−α)内か否かを判断する。YES(α≧ΔN≧−α)の場合はステップS8へ進み、NO(ΔN>α、または、ΔN<−α)の場合はステップS9へ進む。なお、このステップS7は、クラッチ差回転ΔNが回転同期判定の差回転範囲内になる差回転条件が成立するか否かを判断する差回転条件判断部である。
ここで、回転同期判定の差回転範囲は、ゼロを含むα≧ΔN≧−αである。α及び−αは回転同期判定閾値である。この閾値は、ドグクラッチ17の噛み合い締結が可能な回転同期状態を判定するクラッチ差回転値であり、固定値で与えても良いし、車速VSP等に応じた可変値で与えても良い。
ステップS8では、ステップS7でのクラッチ差回転ΔNがα≧ΔN≧−αであるとの判断に続き、増減勾配ΔN/dtが、ゼロ(ΔN/dt=0)であるか否かを判断する。YES(ΔN/dt=0)の場合はステップS13へ進み、NO(ΔN/dt≠0)の場合はステップS2へ戻る。なお、このステップS8は、増減勾配ΔN/dtが、ゼロ(ΔN/dt=0)であるか否かを判断する減少勾配判断部である。
ステップS9では、ステップS7でのクラッチ差回転ΔNがα≧ΔN≧−αではないとの判断に続き、クラッチ差回転ΔNが、回転同期判定の差回転範囲を下回った(ΔN<−α)か否かを判断する。YES(ΔN<−α)の場合はステップS10へ進み、NO(ΔN>α)の場合はステップS2へ戻る。
ステップS10では、ステップS9でのΔN<−αであるとの判断に続き、クラッチ差回転ΔNの増減勾配ΔN/dtが、減少→増加へ移行したか否かを判断する。YES(ΔN/dtが減少→増加である)の場合はステップS11へ進み、NO(ΔN/dtが減少→増加ではない)の場合はステップS12へ進む。
ステップS11では、ステップS10でのΔN/dtが減少→増加であるとの判断に続き、カップリングアクチュエータ49に対し、その判断がされたときの締結トルクを一定に維持する指令を出力し、ステップS3へ戻る。
ステップS12では、ステップS10でのΔN/dtが減少→増加ではないとの判断に続き、カップリングアクチュエータ49に対し、締結トルクを低下する指令を出力し、ステップS3へ戻る。
なお、締結トルクの低下には、ゼロまで低下させることも含んでいる。すなわち、電制カップリング12の解放まで締結トルクを低下させることを含んでいる。
ステップS13では、ステップS8でのΔN/dt=0であるとの判断に続き、前後輪回転速度差ΔVがΔV=0か否かを判断する。すなわち、前後輪回転速度差ΔVが収束しているか否かを判断する。YES(ΔV=0)の場合はステップS16へ進み、NO(ΔV≠0)の場合はステップS14へ進む。なお、このステップS13は、前後輪回転速度差ΔVが収束する回転速度差条件が成立するか否かを判断する回転速度差条件判断部である。
ステップS14では、ステップS13でのΔV≠0であるとの判断に続き、前後輪回転速度差ΔVの増減勾配ΔV/dtが、減少へ移行したか否かを判断する。YES(ΔV/dtが減少へ移行した)の場合はステップS15へ進み、NO(ΔV/dtが減少へ移行していない)の場合はステップS3へ戻る。
ステップS15では、ステップS14でのΔV/dtが減少へ移行したとの判断に続き、前後輪回転速度差ΔVの増減勾配ΔV/dtが減少へ移行する収束状況に応じて、締結トルクを完全締結によるトルクまで立ち上げる指令をカップリングアクチュエータ49に対し出力し、ステップS2へ戻る。
ステップS16では、ステップS13でのΔV=0であるとの判断に続き、ドグクラッチアクチュエータ48に対し締結指令を出力し、ステップS17へ進む。
ステップS17では、ステップS16でのドグクラッチ17の締結指令出力に続き、ドグクラッチ17が噛み合い締結を完了したか否かを判断する。YES(クラッチ締結完了)の場合はステップS18へ進み、NO(クラッチ締結未完了)の場合はステップS16へ戻る。
ここで、ドグクラッチ17が噛み合い締結を完了したか否かの判断は、ドグクラッチストロークセンサ53からのストローク情報に基づいて行う。
ステップS18では、ステップS17でのクラッチ締結完了であるとの判断に続き、コネクト4輪駆動モードへの遷移か否かを判断する。YES(コネクト4輪駆動モードへの遷移)の場合はエンドへ進み、NO(スタンバイ2輪駆動モードへの遷移)の場合はステップS19へ進む。
ステップS19では、ステップS18でのスタンバイ2輪駆動モードへの遷移であるとの判断に続き、電制カップリング12のカップリングアクチュエータ49に対し解放指令を出力し、エンドへ進む。
ここで、「オートモード」のうち、「エコオートモード」の選択時には、電制カップリング12を完全解放する指令とし、「スポーツオートモード」の選択時には、電制カップリング12を締結直前の解放状態を保つ指令とする。
次に、作用を説明する。
実施例1の4輪駆動車のクラッチ制御装置における作用を、「ドグクラッチの締結制御作用」、「締結トルク制御によるドグクラッチの同期作用」、「ドグクラッチ締結制御での他の特徴作用」に分けて説明する。
[ドグクラッチの締結制御作用]
まず、図5のフローチャートに基づき、ドグクラッチ17の締結制御処理動作の流れを説明する。例えば、「ディスコネクト2輪駆動モード」が選択されているコースト走行中、アクセル踏み込み操作を行ったことで、動作点が図3のL点からM点へ移動したとき、領域区分線Aを横切るタイミングでドグクラッチ17に対し締結要求が出される。又は、動作点が図3のP点からQ点へ移動したとき、領域区分線Bを横切るタイミングでドグクラッチ17に対し締結要求が出される。なお、ステップS7の差回転条件とステップS13の回転速度差条件が成立したときに、ドグクラッチ17の噛み合い締結を行う。
以下、クラッチ差回転ΔNが、回転同期判定の差回転範囲を下回らない場合と、下回る場合に分けて説明する。先に、クラッチ差回転ΔNが回転同期判定の差回転範囲を下回らない場合について説明する。
(クラッチ差回転ΔNが、回転同期判定の差回転範囲を下回らない場合)
ドグクラッチ17に対し締結要求が出されると、図5のフローチャートにおいて、ステップS1→ステップS2→ステップS3→ステップS4→ステップS5→ステップS6へと進む。ステップS2では、ドグクラッチ17の締結要求があると、直ちに電制カップリング12のカップリングアクチュエータ49に対し締結指令が出力される。ステップS3では、ドグクラッチ17の差回転であるクラッチ差回転ΔNが演算され、ステップS4では、主駆動輪9,10と副駆動輪20,21との回転速度差である前後輪回転速度差ΔVが演算され、ステップS5では、クラッチ差回転ΔNの時間微分処理によりクラッチ差回転ΔNの増減勾配ΔN/dtが演算され、ステップS6では、前後輪回転速度差ΔVの時間微分処理により前後輪回転速度差ΔVの増減勾配ΔV/dtが演算される。
しかし、電制カップリング12の締結開始前は、ドグクラッチ17の出力側回転が停止しているため、クラッチ差回転ΔNが最大であり、電制カップリング12の締結開始域ではドグクラッチ17の出力側回転の上昇に伴いクラッチ差回転ΔNが減少する。このため、電制カップリング12の締結開始から少しの間は、クラッチ差回転ΔN>αとなるので、ステップS7での差回転条件が成立せず、ステップS9のΔN<−α条件も成立しない。よって、ステップS7の条件が成立するまでは、ステップS2→ステップS3→ステップS4→ステップS5→ステップS6→ステップS7→ステップS9へと進む流れが繰り返される。
次に、ステップS7での差回転条件が成立すると、ステップS7→ステップS8へ進み、ステップS8では、クラッチ差回転ΔNの増減勾配ΔN/dt=0であるか否か判断され、ΔN/dt=0である場合にはステップS13へ進み、ΔN/dt≠0である場合すなわちΔN/dtが減少の場合にはステップS2へ戻り、再びステップS3→ステップS4→ステップS5→ステップS6→ステップS7へと進む。
ここで、ΔNが回転同期判定の差回転範囲を下回らない場合は、ステップS7での差回転条件が成立すれば、増減勾配ΔN/dtはΔN/dt=0であるから、ステップS8でのクラッチ差回転ΔNの増減勾配ゼロ条件が成立する。
次に、ステップS8での増減勾配ΔN/dtゼロ条件が成立すると、ステップS8からステップS13へ進み、ステップS13では、前後輪回転速度差ΔVがΔV=0か否かが判断される。
ここで、ΔNが回転同期判定の差回転範囲を下回らない場合は、前後輪回転速度差ΔVはゼロであるから、ステップS13での回転速度差条件が成立する。
次に、ステップS13での回転速度差条件が成立すると、ステップS13からステップS16→ステップS17へと進み、ステップS16では、ステップS7での差回転条件とステップS13での回転速度差条件が成立しているため、ドグクラッチアクチュエータ48に対し締結指令が出力される。次のステップS17では、ドグクラッチ17が噛み合い締結を完了したか否かが判断され、クラッチ締結未完了と判断されている間は、ステップS16→ステップS17へと進む流れが繰り返される。
そして、ステップS17にてドグクラッチ17が噛み合い締結を完了したと判断されると、ステップS17からステップS18へ進み、ステップS18では、「コネクト4輪駆動モード」への遷移か否かが判断される。「コネクト4輪駆動モード」への遷移と判断された場合は電制カップリング12の締結を維持したままでエンドへ進む。一方、「スタンバイ2輪駆動モード」への遷移と判断された場合はステップS19へ進み、ステップS19では、電制カップリング12のカップリングアクチュエータ49に対し解放指令が出力され、エンドへ進む。なお、「エコオートモード」の選択時には、電制カップリング12を完全解放する指令とされ、「スポーツオートモード」の選択時には、電制カップリング12を締結直前の解放状態を保つ指令とされる。
(クラッチ差回転ΔNが、回転同期判定の差回転範囲を下回る場合)
続いて、クラッチ差回転ΔNが、回転同期判定の差回転範囲を下回る場合について説明する。
図5のフローチャートにおいて、ドグクラッチ17に対し締結要求が出されてからステップS8までに進む流れは、クラッチ差回転ΔNが回転同期判定の差回転範囲を下回らない場合と同様であるから説明を省略する。
ステップS8では、上述した通り、クラッチ差回転ΔNの増減勾配ΔN/dt=0であるか否か判断され、ΔN/dt=0である場合にはステップS13へ進み、ΔN/dt≠0である場合すなわちΔN/dtが減少の場合にはステップS2へ戻り、再びステップS3→ステップS4→ステップS5→ステップS6→ステップS7へと進む。
ここで、クラッチ差回転ΔNが回転同期判定の差回転範囲を下回る場合とは、クラッチ差回転ΔNがΔN<−αとなる場合である。すなわち、ステップS7での差回転条件が成立しても、ドグクラッチ17の出力回転数が上昇を続け、この出力回転数がドグクラッチ17の入力回転数よりも大きくなる。そして、その後、クラッチ差回転ΔNが減少を続けると、クラッチ差回転ΔNが回転同期判定の差回転範囲を超えてさらに減少する。つまり、クラッチ差回転ΔNの増減勾配ΔN/dtは、クラッチ差回転ΔNが回転同期判定の差回転範囲内であってもその範囲を超えても、減少(減少勾配)である。
よって、ステップS8での条件が成立せず、ステップS2→ステップS3→ステップS4→ステップS5→ステップS6→ステップS7へと進む。このようにステップS7へ進んだとき、ΔNが回転同期判定の差回転範囲を下回っている場合、クラッチ差回転ΔNはΔN<−αとなるので、ステップS7での差回転条件が成立しない。
次に、ステップS8での条件が成立せず、ステップS7での差回転条件が成立しないと、ステップS7→ステップS9へ進み、ステップS9では、クラッチ差回転ΔNが回転同期判定の差回転範囲を下回った(ΔN<−α)か否かが判断され、ステップS9でのΔN<−α条件が成立する。
次に、ステップS9でのΔN<−α条件が成立すると、ステップS9からステップS10へ進み、ステップS10では、クラッチ差回転ΔNの増減勾配ΔN/dtが減少→増加へ移行したか否かが判断される。
このステップS10での増減勾配ΔN/dtの減少→増加移行条件が成立しないと、すなわち、ΔN/dtが減少の場合、ステップS10からステップS12へ進み、ステップS12では、締結トルクを低下させ、ステップS3へ戻る。また、ΔN/dtが減少となる間は、ステップS3→ステップS4→ステップS5→ステップS6→ステップS7→ステップS9→ステップS10→ステップS12へと進む流れが繰り返される。なお、締結トルクを低下させているので、ステップS2ではなくステップS3へ戻る。
ここで、締結トルクを低下することにより、上昇するドグクラッチ17の出力回転数を低下させる。
そして、ステップS10での増減勾配ΔN/dtの減少→増加移行条件が成立すると、ステップS10からステップS11へ進み、ステップS11では、その条件が成立したときの締結トルクが一定に維持され、ステップS3へ戻る。また、ステップS7での差回転条件が成立するまでは、ステップS3→ステップS4→ステップS5→ステップS6→ステップS7→ステップS9→ステップS10→ステップS11へと進む流れが繰り返される。なお、締結トルクが一定に維持されているので、ステップS2ではなくステップS3へ戻る。
ここで、増減勾配ΔN/dtの減少→増加移行条件したときの締結トルクを一定に維持することにより、上昇するドグクラッチ17の出力回転数を低下させ、減少を続けるクラッチ差回転ΔNを回転同期判定の差回転範囲内に上昇させる。
次に、ステップS7での差回転条件が成立すると、ステップS7からステップS8へ進む。このとき、ΔNが回転同期判定の差回転範囲を下回る場合でも、ステップS11とステップS12の処理により、差回転条件が成立するように調整されているので、増減勾配ΔN/dtはΔN/dt=0となり、ステップS8でのクラッチ差回転ΔNの増減勾配ゼロ条件が成立する。
次に、ステップS8での増減勾配ΔN/dtゼロ条件が成立すると、ステップS8からステップS13へ進み、ステップS13では、前後輪回転速度差ΔVがΔV=0か否かが判断される。
ここで、ΔNが回転同期判定の差回転範囲を下回る場合、前後輪回転速度差ΔVはゼロでないことがある。以下、ΔV≠0である場合について説明する。
このステップS13での回転速度差条件が成立しないと、ステップS13からステップS14へ進み、ステップS14では、前後輪回転速度差ΔVの増減勾配ΔV/dtが減少へ移行したか否かが判断される。このステップS14での増減勾配ΔV/dtの減少移行条件が成立しないと、ステップS3へ戻る。また、ステップS14でのΔV/dtの減少移行条件が成立するまでは、ステップS3→ステップS4→ステップS5→ステップS6→ステップS7→ステップS8→ステップS13→ステップS14へと進む流れが繰り返される。なお、締結トルクが一定に維持されているので、ステップS2ではなくステップS3へ戻る。
そして、ステップS14での増減勾配ΔV/dtの減少移行条件が成立すると、ステップS14からステップS15へ進み、ステップS15では、前後輪回転速度差ΔVの増減勾配ΔV/dtが減少へ移行する収束状況に応じて、締結トルクが完全締結によるトルクまで立ち上げられ、ステップS2へ戻る。また、ステップS13での回転速度差条件が成立するまでは、ステップS2→ステップS3→ステップS4→ステップS5→ステップS6→ステップS7→ステップS8→ステップS13→ステップS14→ステップS15へと進む流れが繰り返される。なお、締結トルクが完全締結によるトルクまで立ち上げられるので、ステップS2へ戻る。
次に、ステップS13での回転速度差条件が成立すると、ステップS13からステップS16→ステップS17へと進む。ステップS16以降の流れについては、クラッチ差回転ΔNが回転同期判定の差回転範囲を下回らない場合と同様であるから説明を省略する。
次に、図6のタイムチャートに基づき、ΔNが回転同期判定の差回転範囲を下回る場合のドグクラッチ17の締結制御作用を説明する。
時刻t1にて、走行中、アクセル開度ACCが立ち上がり、ドグクラッチ17に対し締結要求が出されると、電制カップリング12の締結制御を開始する。そして、時刻t1から僅かに遅れたタイミングにてエンジントルクと車速VSP(V)が上昇する。なお、エンジントルクは、アイドルトルクから上昇する。また、アクセル開度ACCの急な立ち上がりにより前後輪回転速度差ΔVが上昇を開始し、ΔV増減勾配が増加勾配へ移行する。この前後輪回転速度差ΔVの上昇は、「ディスコネクト2輪駆動モード」の選択中に左右後輪9,10がスリップ状態であることを示している。つまり、ΔV増減勾配により、左右前輪9,10がスリップ状態であると判定される。さらに、電制カップリング12の締結トルクが立ち上がりを開始する。そして、電制カップリング12の締結トルクの立ち上がりによりクラッチ差回転ΔNが低下を開始し、ΔN増減勾配が減少勾配へ移行する。
時刻t1から時刻t2の間にて、時間の経過とともに、エンジントルクと車速VSPと前後輪回転速度差ΔVは上昇し、クラッチ差回転ΔNは低下する。
時刻t2になり、クラッチ差回転ΔNがゼロまで低下し、ΔN増減勾配は減少勾配からゼロ勾配に移行せず、減少勾配を維持している。なお、エンジントルクと車速VSPと前後輪回転速度差ΔVは、引き続き、上昇している。
時刻t2から時刻t3の間にて、クラッチ差回転ΔNがマイナスまで低下し、ΔN増減勾配は時刻t1から減少勾配を維持している。すなわち、この間にて、ΔN<−α条件が成立し、増減勾配ΔN/dtの減少→増加移行条件が成立しない。このため、時刻t2から僅かに遅れたタイミング(ΔN<−α)にて、電制カップリング12の締結トルクの低下を開始する。この締結トルクを低下することにより、上昇するドグクラッチ17の出力回転数を低下させる。なお、エンジントルクと車速VSPと前後輪回転速度差ΔVは、引き続き、上昇している。
時刻t3になり、電制カップリング12の締結トルクの低下により、クラッチ差回転ΔNの低下が収まりクラッチ差回転ΔNは上昇を開始し、ΔN増減勾配は減少勾配から増加勾配へと移行する。すなわち、ΔN<−α条件と、増減勾配ΔN/dtの減少→増加移行条件と、が成立する。このため、増減勾配ΔN/dtが減少か増加へ移行したときの電制カップリング12の締結トルクを一定に維持する。なお、エンジントルクと車速VSPと前後輪回転速度差ΔVは、引き続き、上昇している。
時刻t3から時刻t4の間にて、一定に維持した電制カップリング12の締結トルクにより、クラッチ差回転ΔNが上昇する。なお、エンジントルクと車速VSPと前後輪回転速度差ΔVは、引き続き、上昇している。
時刻t4になり、クラッチ差回転ΔNがゼロまで上昇し、ΔN増減勾配はゼロ勾配へと移行する。すなわち、差回転条件と増減勾配ゼロ条件が成立する。
なお、時刻t1から時刻t4までのエンジントルクの上昇は、アクセル開度ACCの急な立ち上がりに対する応答遅れに相当する。また、時刻t1から時刻t4まで車速VSPの上昇が鈍いのは、左右後輪9,10のスリップによるものである。そして、時刻t2から時刻t4までのクラッチ差回転ΔNがゼロからマイナスになっているのは、左右後輪9,10のスリップ分に相当する。
時刻t4から時刻t5の間にて、時刻t4から少し遅れたタイミングにて前後輪回転速度差ΔVの上昇が収まり前後輪回転速度差ΔVが低下を開始し、ΔV増減勾配が減少勾配へ移行する。すなわち、増減勾配ΔV/dtの減少移行条件が成立する。そして、増減勾配ΔV/dtの減少移行条件の成立により、ΔV増減勾配が減少勾配へ移行する収束状況に応じて、一定に維持した電制カップリング12の締結トルクを完全締結によるトルクまで立ち上げる。
なお、前後輪回転速度差ΔVの低下は、この間にてエンジントルクがほぼ一定になっていることから、路面摩擦係数μ(路面μ)により自然に低下している。また、この間の途中からエンジントルクは一定になる。
時刻t5になり、クラッチ差回転ΔNはゼロであるので、差回転条件が成立する。また、前後輪回転速度差ΔVはゼロに収束しているので、回転速度差条件が成立する。これら2つの条件が成立したことにより、解放されていたドグクラッチ17が噛み合い締結を行う。
時刻t5から時刻t6の間にて、ドグクラッチ17の噛み合い締結が完了する。
時刻t6になり、「スタンバイ2輪駆動モード」への遷移と判断され、電制カップリング12の締結トルクの低下を開始する。
時刻t6から時刻t7の間にて、電制カップリング12の締結トルクが徐々に低下する。
時刻t7になり、電制カップリング12の締結トルクが無くなったことから、電制カップリング12は完全解放になる。
このように、「ディスコネクト2輪駆動モード」の選択中にアクセル踏み込み操作が行われ、左右後輪9,10がスリップ状態になっても、クラッチ差回転ΔNが回転同期判定の差回転範囲内に調整され、前後輪回転速度差を収束させてから、ドグクラッチ17が締結される。この結果、左右後輪9,10がスリップ状態になっても、「ディスコネクト2輪駆動モード」から「コネクト4輪駆動モード」への駆動モード遷移、或いは、「ディスコネクト2輪駆動モード」から「スタンバイ2輪駆動モード」への駆動モード遷移が、確実に実行される。
[締結トルク制御によるドグクラッチの同期作用]
ドグクラッチ17は、クラッチ差回転の有無に関係なく締結できる駆動力配分摩擦クラッチとは異なり、クラッチ入出力回転を同期状態にして噛み合わせる噛み合いクラッチである。このため、ドグクラッチ17が解放されている「ディスコネクト2輪駆動モード」が選択されているとき、ドグクラッチ17の締結要求があると、先にドグクラッチ17の入出力回転が同期回転状態になったか否かを判定し、クラッチ締結を開始する必要がある。
従来から行われていた噛み合いクラッチの入出力回転が同期回転状態になったか否かの判定は、特開2010−254058号公報に示唆されているように、クラッチ差回転が無くなること(クラッチ差回転=0)で判定していた。このため、下記の課題がある。
(a) 主駆動輪がスリップ状態であるとき、差回転を小さくできる量が車両状態によって限定されてしまい、噛み合いクラッチを締結できないことがある。すなわち、左右前輪のタイヤが滑る路面では、プロペラシャフトを同期回転して噛み合いクラッチのクラッチ差回転を減少させていっても、さらにタイヤが滑るため、クラッチ差回転の減少はある値から減少しなくなる。
これに対し、実施例1では、解放状態のドグクラッチ17に対し締結要求があると、先に電制カップリング12の締結制御を行う。この電制カップリング12の締結制御中にドグクラッチ17のクラッチ差回転ΔNを減少させ、クラッチ差回転ΔNが回転同期判定の差回転範囲(α≧ΔN≧−α)を下回ったと判定される(図5のステップS9→ステップS10、図6の時刻t2から時刻t3の間)と、電制カップリング12の締結トルクを低下させる(図5のステップS12、図6の時刻t2から時刻t3の間)構成とした。
すなわち、電制カップリング12が締結制御されると、停止していた出力側左前輪ドライブシャフト18bが回転し、ドグクラッチ17の出力回転数が上昇するため、ドグクラッチ17のクラッチ差回転ΔNは時間の経過と共に減少し、左右後輪9,10が非スリップ状態であり後輪タイヤが滑らない場合は、クラッチ差回転ΔN(=左前輪速度−出力側左前輪ドライブシャフト回転数)が回転同期判定の差回転範囲内まで減少する。
しかし、電制カップリング12の締結制御中に、左右後輪9,10がスリップ状態になり後輪タイヤが滑る場合は、ドグクラッチ17の出力回転数が上昇を続けるため、この出力回転数がドグクラッチ17の入力回転数よりも大きくなる。そして、その後、クラッチ差回転ΔNが減少を続けると、クラッチ差回転ΔNが回転同期判定の差回転範囲を超えてさらに減少する。つまり、クラッチ差回転ΔNは、図6に示すように、回転同期判定の差回転範囲を下回る(図5のステップS9、図6の時刻t2から時刻t3の間)。一方、ドグクラッチ17の締結は、回転同期判定の差回転範囲内で行う。
これに対し、クラッチ差回転ΔNに着目し、クラッチ差回転ΔNが回転同期判定の差回転範囲を下回ったと判定(図5のステップS9→ステップS10、図6の時刻t2から時刻t3の間)、すなわち、左右後輪9,10がスリップ状態と判定されると、締結トルクを低下させる(図5のステップS12、図6の時刻t2から時刻t3の間)。つまり、締結トルクの低下によって、スリップにより上昇するドグクラッチ17の出力回転数を低下させる。言い換えれば、締結トルクを低下させ、クラッチ差回転ΔNを回転同期判定の差回転範囲内とする差回転調整が行われる。このため、左右後輪9,10がスリップ状態であっても、クラッチ差回転ΔNが回転同期判定の差回転範囲内に調整されるので(図6の時刻t4)、ドグクラッチ17が締結される(図6の時刻t5)。
この結果、ドグクラッチ17の締結要求時、左右後輪9,10がスリップ状態である場合、確実に4輪駆動状態へ遷移することができる。同様にスタンバイ2輪駆動モード状態へ遷移することもできる(ステップS5のステップS19、図6の時刻t7)。
加えて、「ディスコネクト2輪駆動モード」の選択中に左右後輪9,10がスリップ状態になっても、締結トルクの制御を行うことにより、このような制御を行わずクラッチ差回転が無くなるまで噛み合いクラッチを締結しない場合よりも、2輪駆動状態から4輪駆動状態への遷移時間を短縮することができる。同様にスタンバイ2輪駆動モード状態への遷移時間を短縮することができる。
しかも、「ディスコネクト2輪駆動モード」の選択中に、左右後輪9,10のスリップを低下させてから、2輪駆動状態から4輪駆動状態へ遷移するので、運転者がアクセルを操作しなくても、その2輪駆動モードの選択中に、左右後輪9,10のスリップを低下させる。このため、2輪駆動状態から4輪駆動状態への遷移時間を安定させることができる。同様に2輪駆動状態からスタンバイ2輪駆動モード状態への遷移時間を安定させることができる。
さらに、ドグクラッチ17を締結するときは、クラッチ差回転ΔNは小さいほど(クラッチ差回転ΔNが無いほど)、音振性能は良くなる。実施例1では、左右後輪9,10がスリップ状態になっても、クラッチ差回転ΔNが非スリップ状態と同様に回転同期判定の差回転範囲内に調整されてから、ドグクラッチ17が締結される。このため、クラッチ差回転ΔNがその差回転範囲内よりも大きい差回転範囲外では、ドグクラッチ17が強制的に締結されない。したがって、ドグクラッチ17の締結要求時、左右後輪9,10がスリップ状態である場合に音振性能を向上させて、4輪駆動状態へ遷移することができる。同様に音振性能を向上させて、スタンバイ2輪駆動モード状態へ遷移することもできる(ステップS5のステップS19)。
そして、締結トルクを低下させ、クラッチ差回転ΔNを回転同期判定の差回転範囲内とする差回転調整が行われるので、左右後輪9,10がスリップ状態になっても、クラッチ差回転ΔNの回転差を吸収する部品が不要である。
[ドグクラッチ締結制御での他の特徴作用]
実施例1では、電制カップリング12の締結制御中にドグクラッチ17のクラッチ差回転ΔNの増減勾配ΔN/dtを監視し、電制カップリング12の締結トルクを低下させる制御中に(図5のステップS12、図6の時刻t2から時刻t3の間)、クラッチ差回転ΔNの増減勾配ΔN/dtが減少(減少勾配)から増加(増加勾配)へ移行したと判定されると(図5のステップS10、図6の時刻t3)、その判定されたときの締結トルク(図6の時刻t3)が一定に維持される(図5のステップS11、図6の時刻t3から時刻t4の間)構成とした。
すなわち、クラッチ差回転ΔNの増減勾配ΔN/dtが減少から増加へ移行したと判定されたときの締結トルクによって、スリップにより上昇するドグクラッチ17の出力回転数を低下させる。つまり、その締結トルクを一定に維持すれば、ドグクラッチ17の出力回転数を徐々に低下させることになり、その後、クラッチ差回転ΔNが回転同期判定の差回転範囲内に調整される。このため、その締結トルクを一定に維持する場合の方が、クラッチ差回転ΔNが回転同期判定の差回転範囲内に調整されるまで締結トルクの低下を継続する場合よりも、差回転調整が行われた後の締結トルクが大きい。
したがって、差回転調整が行われた後、締結トルクを立ち上げるとき、目標とする締結トルクまで立ち上げる時間を短縮することができる。
実施例1では、電制カップリング12の締結トルクを低下させて、クラッチ差回転ΔNが回転同期判定の差回転範囲内になる差回転条件(図5のステップS7、図6の時刻t4)が成立したとき、左右後輪9,10と左右前輪20,21の前後輪回転速度差ΔVの増減勾配ΔV/dtが減少へ移行する収束状況に応じて、低下させた締結トルクが完全締結によるトルクまで立ち上げられる(図5のステップS14→ステップS15、図6の時刻t4から時刻t5の間)構成とした。
例えば、差回転条件が成立したときに、前後輪回転速度差とは無関係に、締結トルクを上昇させると、主駆動輪のスリップにより噛み合いクラッチの出力回転数が上昇し、クラッチ差回転が回転同期判定の差回転範囲を下回ってしまうおそれがある。その差回転範囲を下回った場合、再度、差回転調整が行われることになり、完全4輪駆動状態への遷移が遅れてしまう。
これに対し、実施例1では、差回転条件が成立したとき、前後輪回転速度差ΔVの増減勾配ΔV/dtが減少へ移行する収束状況に応じて、低下させた締結トルクが完全締結によるトルクまで立ち上げられる。
すなわち、前後輪回転速度差ΔVの増減勾配ΔV/dtが減少へ移行する収束状況に応じて、締結トルクを立ち上げることにより、クラッチ差回転ΔNが回転同期判定の差回転範囲を下回ることを抑制することができる。このため、再度、差回転調整を行わなくて良い。
したがって、締結トルクを完全締結によるトルクまで立ち上げる際に、完全4輪駆動状態への遷移時間を短縮することができる。
実施例1では、電制カップリング12の締結トルクを低下させて、クラッチ差回転ΔNが回転同期判定の差回転範囲内になる差回転条件と、前後輪回転速度差ΔVが収束する回転速度差条件と、が成立したとき、ドグクラッチ17の噛み合い締結を行う構成とした。
例えば、差回転条件が成立し回転速度差条件が成立する前に噛み合いクラッチの噛み合い締結を行うと、駆動力配分摩擦クラッチがスリップ締結状態を継続することになり、駆動力配分摩擦クラッチの耐久性が低下するおそれがある。そして、噛み合い締結を行ってから、そのスリップ締結状態の継続を解消するために、締結トルクを完全締結によるトルクまで立ち上げると、主駆動輪のスリップにより噛み合いクラッチの出力回転数が上昇し、車両にショックが生じるおそれがある。
これに対し、実施例1では、差回転条件(図5のステップS7、図6の時刻t5)と、回転速度差条件(図5のステップS13、図6の時刻t5)と、が成立したとき(図6の時刻t5)、ドグクラッチ17の噛み合い締結が行われる(図5のステップS16→ステップS17、図6の時刻t5)。
したがって、ドグクラッチ17の締結要求時、電制カップリング12の耐久性を向上することができると共に、車両にショックが生じるのを抑制することができる。
次に、効果を説明する。
実施例1の4輪駆動車のクラッチ制御装置にあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
(1) 左右前輪20,21と左右後輪9,10のうち、一方を駆動源(エンジン1)に接続される主駆動輪とし、他方を駆動源(エンジン1)にクラッチを介して接続される副駆動輪とし、
主駆動輪(左右後輪9,10)から副駆動輪(左右前輪20,21)への駆動分岐位置に設けられ、締結トルクに応じて駆動源(エンジン1)からの駆動力の一部を副駆動輪(左右前輪20,21)へ配分する駆動力配分摩擦クラッチ(電制カップリング12)と、
駆動分岐位置よりも下流位置に設けられ、クラッチ解放により副駆動輪(左右前輪20,21)への駆動力伝達系を、主駆動輪(左右後輪9,10)への駆動力伝達系から切り離す噛み合いクラッチ(ドグクラッチ17)と、
駆動力配分摩擦クラッチ(電制カップリング12)の締結/解放制御と噛み合いクラッチ(ドグクラッチ17)の締結/解放制御を行うクラッチ制御手段(4WDコントロールユニット34、図5)と、
を備えた4輪駆動車のクラッチ制御装置において、
クラッチ制御手段(4WDコントロールユニット34、図5)は、解放状態の噛み合いクラッチ(ドグクラッチ17)に対し締結要求があると、先に駆動力配分摩擦クラッチ(電制カップリング12)の締結制御を行い、駆動力配分摩擦クラッチ(電制カップリング12)の締結制御中に噛み合いクラッチ(ドグクラッチ17)のクラッチ差回転ΔNが減少し、クラッチ差回転ΔNが回転同期判定の差回転範囲(α≧ΔN≧−α)を下回ったと判定されると、駆動力配分摩擦クラッチ(電制カップリング12)の締結トルクを低下させる(図5)。
このため、噛み合いクラッチ(ドグクラッチ17)の締結要求時、主駆動輪(左右後輪9,10)がスリップ状態である場合、確実に4輪駆動状態へ遷移することができる。
(2) クラッチ制御手段(4WDコントロールユニット34、図5)は、駆動力配分摩擦クラッチ(電制カップリング12)の締結制御中に噛み合いクラッチ(ドグクラッチ17)のクラッチ差回転ΔNの増減勾配ΔN/dtを監視し、駆動力配分摩擦クラッチ(電制カップリング12)の締結トルクを低下させる制御中に、クラッチ差回転ΔNの増減勾配ΔN/dtが減少(減少勾配)から増加(増加勾配)へ移行したと判定されると、その判定されたときの締結トルクを一定に維持する(図5)。
このため、(1)の効果に加え、差回転調整が行われた後、締結トルクを立ち上げるとき、目標とする締結トルクまで立ち上げる時間を短縮することができる。
(3) クラッチ制御手段(4WDコントロールユニット34、図5)は、駆動力配分摩擦クラッチ(電制カップリング12)の締結トルクを低下させて、クラッチ差回転ΔNが回転同期判定の差回転範囲(α≧ΔN≧−α)内になる差回転条件が成立したとき、主駆動輪(左右後輪9,10)と副駆動輪(左右前輪20,21)の前後輪回転速度差ΔVの増減勾配ΔV/dtが減少へ移行する収束状況に応じて、低下させた締結トルクを完全締結によるトルクまで立ち上げる(図5)。
このため、(1)又は(2)の効果に加え、締結トルクを完全締結によるトルクまで立ち上げる際に、完全4輪駆動状態への遷移時間を短縮することができる。
(4) クラッチ制御手段(4WDコントロールユニット34、図5)は、駆動力配分摩擦クラッチ(電制カップリング12)の締結トルクを低下させて、クラッチ差回転ΔNが回転同期判定の差回転範囲(α≧ΔN≧−α)内になる差回転条件と、前後輪回転速度差ΔVが収束する回転速度差条件と、が成立したとき、噛み合いクラッチ(ドグクラッチ17)の噛み合い締結を行う(図5)。
このため、(1)〜(3)の効果に加え、ドグクラッチ17の締結要求時、駆動力配分摩擦クラッチ(電制カップリング12)の耐久性を向上することができると共に、車両にショックが生じるのを抑制することができる。
以上、本発明の4輪駆動車のクラッチ制御装置を実施例1に基づき説明してきたが、具体的な構成については、この実施例1に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
実施例1では、トランスファケース22に各プロペラシャフト3,13に駆動力を配分するチェーン式の伝達要素を内蔵する例を示した。しかしながら、チェーン式に限らず、ギア式とする例でも良い。
実施例1では、4輪駆動車の駆動モードとして、「ディスコネクト2輪駆動モード」と「スタンバイ2輪駆動モード」と「コネクト4輪駆動モード」を有する例を示した。しかしながら、4輪駆動車の駆動モードとしては、「スタンバイ2輪駆動モード」が無く、「ディスコネクト2輪駆動モード」と「コネクト4輪駆動モード」を有する例であっても良い。
実施例1では、本発明のクラッチ制御装置を、駆動源としてエンジンが搭載された後輪駆動ベースの4輪駆動車(4WDエンジン車)に適用する例を示した。しかしながら、本発明のクラッチ制御装置は、主駆動輪を左右前輪とする前輪駆動ベースの4輪駆動車に対しても適用することができる。又、4WDエンジン車以外に駆動源としてエンジンとモータが搭載された4WDハイブリッド車、駆動源としてモータが搭載された4WD電気自動車に対しても勿論適用することができる。
1 エンジン(駆動源、ENG)
2 変速機
9 左後輪(主駆動輪)
10 右後輪(主駆動輪)
12 電制カップリング(駆動力配分摩擦クラッチ、トランスファクラッチ)
17 ドグクラッチ(噛み合いクラッチ)
20 左前輪(副駆動輪)
21 右前輪(副駆動輪)
34 4WDコントロールユニット(クラッチ制御手段、駆動モード切替制御手段)

Claims (5)

  1. 左右前輪と左右後輪のうち、一方を駆動源に接続される主駆動輪とし、他方を前記駆動源にクラッチを介して接続される副駆動輪とし、
    前記主駆動輪から前記副駆動輪への駆動分岐位置に設けられ、締結トルクに応じて前記駆動源からの駆動力の一部を前記副駆動輪へ配分する駆動力配分摩擦クラッチと、
    前記駆動分岐位置よりも下流位置に設けられ、クラッチ解放により前記副駆動輪への駆動力伝達系を、前記主駆動輪への駆動力伝達系から切り離す噛み合いクラッチと、
    前記駆動力配分摩擦クラッチの締結/解放制御と前記噛み合いクラッチの締結/解放制御を行うクラッチ制御手段と、を備えた4輪駆動車のクラッチ制御装置において、
    前記クラッチ制御手段は、
    解放状態の前記噛み合いクラッチに対し締結要求があると、先に前記駆動力配分摩擦クラッチの締結制御を行い、前記駆動力配分摩擦クラッチの締結制御中に前記噛み合いクラッチのクラッチ差回転が減少し、前記クラッチ差回転が回転同期判定の差回転範囲を下回ったと判定されると、前記駆動力配分摩擦クラッチの締結トルクを低下させ
    前記駆動力配分摩擦クラッチの締結制御中に前記噛み合いクラッチのクラッチ差回転の増減勾配を監視し、前記駆動力配分摩擦クラッチの締結トルクを低下させる制御中に、前記クラッチ差回転の増減勾配が減少から増加へ移行したと判定されると、その判定されたときの締結トルクを一定に維持する
    ことを特徴とする4輪駆動車のクラッチ制御装置。
  2. 左右前輪と左右後輪のうち、一方を駆動源に接続される主駆動輪とし、他方を前記駆動源にクラッチを介して接続される副駆動輪とし、
    前記主駆動輪から前記副駆動輪への駆動分岐位置に設けられ、締結トルクに応じて前記駆動源からの駆動力の一部を前記副駆動輪へ配分する駆動力配分摩擦クラッチと、
    前記駆動分岐位置よりも下流位置に設けられ、クラッチ解放により前記副駆動輪への駆動力伝達系を、前記主駆動輪への駆動力伝達系から切り離す噛み合いクラッチと、
    前記駆動力配分摩擦クラッチの締結/解放制御と前記噛み合いクラッチの締結/解放制御を行うクラッチ制御手段と、を備えた4輪駆動車のクラッチ制御装置において、
    前記クラッチ制御手段は、
    解放状態の前記噛み合いクラッチに対し締結要求があると、先に前記駆動力配分摩擦クラッチの締結制御を行い、前記駆動力配分摩擦クラッチの締結制御中に前記噛み合いクラッチのクラッチ差回転が減少し、前記クラッチ差回転が回転同期判定の差回転範囲を下回ったと判定されると、前記駆動力配分摩擦クラッチの締結トルクを低下させ
    前記クラッチ差回転が前記回転同期判定の差回転範囲内になる差回転条件が成立したとき、前記主駆動輪と前記副駆動輪の前後輪回転速度差の増減勾配が減少へ移行する収束状況に応じて、低下させた前記締結トルクを完全締結によるトルクまで立ち上げる
    ことを特徴とする4輪駆動車のクラッチ制御装置。
  3. 左右前輪と左右後輪のうち、一方を駆動源に接続される主駆動輪とし、他方を前記駆動源にクラッチを介して接続される副駆動輪とし、
    前記主駆動輪から前記副駆動輪への駆動分岐位置に設けられ、締結トルクに応じて前記駆動源からの駆動力の一部を前記副駆動輪へ配分する駆動力配分摩擦クラッチと、
    前記駆動分岐位置よりも下流位置に設けられ、クラッチ解放により前記副駆動輪への駆動力伝達系を、前記主駆動輪への駆動力伝達系から切り離す噛み合いクラッチと、
    前記駆動力配分摩擦クラッチの締結/解放制御と前記噛み合いクラッチの締結/解放制御を行うクラッチ制御手段と、を備えた4輪駆動車のクラッチ制御装置において、
    前記クラッチ制御手段は、
    解放状態の前記噛み合いクラッチに対し締結要求があると、先に前記駆動力配分摩擦クラッチの締結制御を行い、前記駆動力配分摩擦クラッチの締結制御中に前記噛み合いクラッチのクラッチ差回転が減少し、前記クラッチ差回転が回転同期判定の差回転範囲を下回ったと判定されると、前記駆動力配分摩擦クラッチの締結トルクを低下させ
    前記クラッチ差回転が前記回転同期判定の差回転範囲内になる差回転条件と、前記主駆動輪と前記副駆動輪の前後輪回転速度差が収束する回転速度差条件と、が成立したとき、前記噛み合いクラッチの噛み合い締結を行う
    ことを特徴とする4輪駆動車のクラッチ制御装置。
  4. 請求項1に記載された4輪駆動車のクラッチ制御装置において、
    前記クラッチ制御手段は、前記駆動力配分摩擦クラッチの締結トルクを低下させて、前記クラッチ差回転が前記回転同期判定の差回転範囲内になる差回転条件が成立したとき、前記主駆動輪と前記副駆動輪の前後輪回転速度差の増減勾配が減少へ移行する収束状況に応じて、低下させた前記締結トルクを完全締結によるトルクまで立ち上げる
    ことを特徴とする4輪駆動車のクラッチ制御装置。
  5. 請求項1、請求項2又は請求項4に記載された4輪駆動車のクラッチ制御装置において、
    前記クラッチ制御手段は、前記駆動力配分摩擦クラッチの締結トルクを低下させて、前記クラッチ差回転が前記回転同期判定の差回転範囲内になる差回転条件と、前記主駆動輪と前記副駆動輪の前後輪回転速度差が収束する回転速度差条件と、が成立したとき、前記噛み合いクラッチの噛み合い締結を行う
    ことを特徴とする4輪駆動車のクラッチ制御装置。
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