以下図面を参照して、本開示における典型的な実施形態の一つについて説明する。なお、以降の説明では、眼内レンズ挿入器具収容用のケース30をケース30と称する。また、ケース30と、ケース30に収容された眼内レンズ挿入器具10とを眼内レンズ挿入システム40と称する。また、眼内レンズ挿入器具10が使用された際に、眼内レンズ挿入器具10内に充填された眼内レンズ1が押し出される方向を押出軸Aと称する。
また、ケース30に眼内レンズ挿入器具10が収容された状態において、眼内レンズ挿入器具10のベベル部113(図3参照)の開口端面が向く方向を「方向X」又は「左方」ということとする。また、ケース30にシート80が貼り付けられる方向を「方向Y」又は「下方」ということとする。また、ケース30に眼内レンズ挿入器具10が収容された状態において、眼内レンズ挿入器具10のノズル部112(図3参照)が向く方向を「方向Z」又は「前方(先端側)」ということとする。
<1−1.全体構成>
図1は本実施形態の眼内レンズ挿入システム40を斜め上方からみた斜視図である。なお、図1は説明図であり、ケース本体70への支持部材50の装着状態、及び支持部材50による眼内レンズ挿入器具10の支持状態を説明するために、ケース本体70の一部を削り取った説明用の斜視図としている。
本実施形態の眼内レンズ挿入システム40は、ケース30と眼内レンズ挿入器具10を備える。また、ケース30は、ケース本体70と支持部材50を備える。なお、本実施形態のケース30のケース本体70は、シートを変形させる加工方法によって形成されている。ケース本体70には、眼内レンズ挿入器具10全体を収容できる凹凸部60が形成されている。なお、本実施形態のケース30には、凹凸部60によって形成される空間部の少なくとも一部を塞ぐシート80が、ケース30の底面の鍔部300に貼り付けられる(シート80に関しては図10も参考されたし)。凹凸部60によって形成される空間部には、眼内レンズ挿入器具10が収容される。また、眼内レンズ挿入システム40は紙箱81に収容される(紙箱81に関しては図11参照)。また、ケース本体70の上方外側面にはシール82が貼り付けられる。シール82は、製造された眼内レンズ挿入システム40の識別用として用いられる。シール82には、ケース30に収容される眼内レンズ挿入器具10の種類を示す文字のほか、眼内レンズ挿入器具10に充填される眼内レンズ1の屈折度数等が表記される。
<1−2.眼内レンズ挿入器具>
図1〜3を用いて本実施形態の眼内レンズ挿入器具10を説明する。本実施形態の眼内レンズ挿入器具10は、製造時に眼内レンズ1を充填(セット)しておくプリセット型の眼内レンズ挿入器具10とされている。製造時に眼内レンズ1を充填しておくことで、使用現場で眼内レンズ1を充填する作業が不要となり、使用現場で眼内レンズ1を速やかに患者眼の眼内へ挿入することができる。なお、本実施形態の眼内レンズ挿入器具10は樹脂材料で形成されている。眼内レンズ挿入器具10が樹脂材料で形成されているため、金属で成形する場合に対して、使用者に眼内レンズ挿入器具10を安価に提供することができる。また、使用者は、眼内レンズ1を眼内に挿入した後に、眼内レンズ挿入器具10を容易に廃棄することができる。眼内レンズ挿入器具10を容易に廃棄できるため、使用毎の眼内レンズ挿入器具10の滅菌処理が不要となり、眼内レンズ挿入器具10を容易に取り扱うことができる。なお、眼内レンズ挿入器具10は樹脂材料を用いた射出成形(モールド成型)、樹脂の削り出しによる切削加工などで成形されればよい。なお、眼内レンズ挿入器具10に金属材料を使用してもよいことは言うまでもない。また、本実施形態の眼内レンズ挿入器具10を再利用してもよい。
本実施形態の眼内レンズ挿入器具10は、筒状の挿入器具本体100と棒状のプランジャー200を備える。挿入器具本体100は本体筒部130、張り出し部190、設置部120、保持部121、可動部材122、及び挿入部110を備える。なお、本実施形態の眼内レンズ挿入器具10に使用する眼内レンズ1は、折り畳むことが可能な軟性眼内レンズとされている。
筒状の挿入器具本体100は、本体筒部130の基端から挿入部110の先端まで連通する中空部を有している。本体筒部130は外側面に張り出し部190を備えている。張り出し部190は本体筒部130の基端よりやや先端側に設けられ、本体筒部130の左右外側面から眼内レンズ挿入器具10の押出軸Aの垂直方向に伸びる羽状形状で形成されている。張り出し部190は、プランジャー200で眼内レンズ1を押し出す際に、使用者(術者又は介助者等)の指を引っ掛ける箇所として用いられる。設置部120は本体筒部130の先端に接続される。設置部120はプランジャー200で眼内レンズ1を押し出す直前に眼内レンズ1が配置される位置となる。保持部121は設置部120の下方(図2,図3だと上方)に接続される。保持部121は、眼内レンズ1が充填された眼内レンズ挿入器具10を保管する際に、眼内レンズ1を押出軸Aの軸外で保持する。保持部121には、可動部材122が有する突出部を通過させる貫通孔が形成されている。
保持部121の下方(図2,図3だと上方)には可動部材122が接続される。本実施形態の可動部材122は、挿入器具本体100に対して変位可能とされている。より詳しくは、可動部材122の先端には保持部121と連結するヒンジ軸が形成されており、押出軸Aと直交する左右方向に伸びるヒンジ軸を回動する際の支点として、可動部材122の基端側が回転する。なお、可動部材122は、使用者が指で押すことで回動する。なお、眼内レンズ挿入システム40の完成時、眼内レンズ1は保持部121によって押出軸Aの軸外で保持されている(図9(a)参照)。使用現場等で使用者が可動部材122を押出軸Aに近づく方向に押すと、可動部材122が回動し、保持部121が保持している眼内レンズ1の保持が解除され、眼内レンズ1は押出軸Aに近づく方向へと移動し、眼内レンズ1は押出軸A上に位置される(図9(b)参照)。眼内レンズ1が押出軸A上に位置されると、眼内レンズ挿入器具10に充填されている眼内レンズ1をプランジャー200で眼内へと押し出すことが可能となる。
挿入部110は先細り部111とノズル部112を備える。先細り部111は設置部120の先端側に接続される。先細り部111は先細りのテーパー形状で形成されている。先細り部111は薄肉で形成されているため、先細り部111の内側に形成される中空部も先端に向かって先細りとなる。先細りとなる中空部によって、設置部120に設置された軟性の眼内レンズ1は、プランジャー200に押されてノズル部112の先端から排出されるまで小さく折り畳まれる。先細り部111の先端側にはノズル部112が接続される。ノズル部112は先端方向に伸びる円柱形状で形成されている。ノズル部112は患者眼の切開創に挿入される。先細り部111の中空部とノズル部112の中空部は連通しているため、先細り部111で小さく折り畳まれた眼内レンズ1は、ノズル部112の先端の開口部から眼内へと排出される。なお、ノズル部112は、先端にベベル部113を備えている。ベベル部113はノズル部112の先端に形成された開口端面であり、押出軸Aに対して開口端面が左方(図2,図3だと右方)に傾斜して形成されている。ベベル部113によってノズル部112の先端が尖ることで、ノズル部112を患者眼の切開創へ容易に挿入することができる。また、傾斜したベベル部113の開口端面を所定の方向に向けることで、折り畳まれた眼内レンズ1が眼内レンズ挿入器具10から排出される際に、眼内レンズ1は開口端面が向く方向に復元されてゆく。眼内レンズ1が所定の方向に復元されることで、患者眼への眼内レンズ1の設置が容易となるわけである。
続けて、本実施形態のプランジャー200を説明する。プランジャー200は棒状の部材である。プランジャー200は、眼内レンズ挿入器具10に充填された眼内レンズ1を患者眼の眼内へと押し出す押出手段とされている。プランジャー200は、押圧部220、軸基部210、押出棒、及び眼内レンズ当接部を備える。押圧部220はプランジャー200の基端に配置される。押圧部220は押出軸Aから遠ざかる方向に伸びる平板状の部材として形成されている。押圧部220の基端には、押出軸Aと直交する押圧面が形成されている。押圧面は、眼内レンズ1をプランジャー200で押し出すために、使用者の指が当接される部位となる。軸基部210は押圧部220の先端側に接続される。軸基部210は横断面の形状が略矩形形状であり、押出軸Aの先端方向に伸びる柱状部材とされている。また、軸基部210は挿入器具本体100の中空部の中空断面積に対応した太さで形成されている。軸基部210の先端側には、押出軸Aから遠ざかる方向に伸びる羽根状の係合羽根部が形成されている。なお、本実施形態の挿入器具本体100には、係合羽根部に対応した大きさの係合穴部が押出軸Aの先端方向の異なる位置に複数個設けられている。本実施形態の眼内レンズ挿入システム40は、挿入器具本体100の基端側の係合孔部とプランジャー200の係合羽根部とが係合された状態で、ケース30に眼内レンズ挿入器具10が収容される。つまり、プランジャー200の進行が係止された状態で、眼内レンズ挿入器具10はケース30に収容される。
押出棒は、軸基部210の先端側に接続される。押出棒の横断面形状は略円形であり、押出棒は、押出軸Aの方向に伸びる棒状部材とされている。ノズル部112の先端開口部を挿通し得る太さで押出棒は形成されている。押出棒の先端側に眼内レンズ当接部が接続される。眼内レンズ当接部は、眼内レンズ1と当接して眼内レンズ1を押し出す部位である。使用者が押出軸Aの先端方向にプランジャー200を進行させると、設置部120の押出軸A上に位置された眼内レンズ1に眼内レンズ当接部が当接する。プランジャー200を更に押出軸Aの先端方向に進行させると、眼内レンズ1は先端方向に移動して行き、先細り部111で小さく折り畳まれた後、ノズル部112の先端開口部から眼内レンズ1が排出される。
なお、本実施形態の眼内レンズ挿入器具10は、眼内レンズ1を押出軸Aの軸外で保管するが、眼内レンズ1の保管位置は押出軸Aの軸外に限るものではない。例えば、着脱可能な規制部材を眼内レンズ挿入器具10に装着することとして、眼内レンズ挿入器具10に充填されている眼内レンズ1の移動を規制してもよい。この場合、着脱可能な規制部材が可動部材122となる。また、眼内レンズ1を押出軸A上の設置部120とは異なる位置で保管し、挿入器具本体100に対して変位可能な可動部材122を押出軸Aの軸方向(例えば先端方向)へ変位させることで、眼内レンズ1を設置部120に移動させる形態としてもよい。
<1−2.ケース>
続けて、図1〜3を用いて本実施形態のケース30を説明する。ケース30は、ケース本体70と支持部材50を備える。ケース本体70には支持部材50が装着される。ケース本体70は眼内レンズ挿入器具10全体を収容する。ケース本体70は凹凸部60を備える。凹凸部60は凹凸形状で形成されており、凹凸形状によって形成される陥没空間部に眼内レンズ挿入器具10が収容される。なお、凹凸部60はケース本体70の中央部に形成されており、凹凸部60の周囲には平坦な鍔形状の鍔部300が形成されている。なお、本実施形態の説明では、鍔部300の平面をケース30の基準平面Pと定義し、以降の説明で基準平面Pを使用する。
なお、本実施形態のケース本体70は、熱を加えて柔らかくした樹脂シートを金型に押し当て、シートと金型の間の空気を抜いてシートを金型の形状に成形する真空成形法で成形される。なお、真空形成法で加工された部品はブリスターパック,ブリスターケース等と呼ばれている。真空成形法は金型が片面だけでもケース等を成形できるため、射出成形法でケースを成形する場合と比べて金型にかかる費用を低減でき、ケース本体70を安価に製造することができる。また、本実施形態のケース本体70は、材料として、透明色の樹脂を用いている。ケース本体70を透明色の樹脂で形成することで、眼内レンズ挿入システム40の完成時,搬送時,または保管時に、透明なケース本体70を介して、ケース本体70内に収容された眼内レンズ挿入器具10の収容状態を視認することができる。また、眼内レンズ挿入システム40の完成時,搬送時,または保管時に、眼内レンズ挿入器具10を外部からの衝撃等から保護することができる。なお、本実施形態のケース本体70は、断面の厚さが1mm以下の薄肉で形成されている。したがって、ケース本体70を容易に成形することができる。なお、ケース本体70は薄肉であるため、真空成形法によって片面(表面)の所定位置に所定形状の凸部(隆起部)が形成されると、片面の所定位置に対応した他面(裏面)の所定位置には、片面の凸形状に対応した凹形状(陥没部)が形成される。なお、本実施形態のケース30の鍔部300の底面側にはシート80が接着(例えば溶着)される。シート80は不透明であるため、図1のように、透明なケース30の表面を上方に向けて載置することで、ケース30に収容された眼内レンズ挿入器具10の状態を好適に視認することができる。なお、本実施形態のシート80は可撓性を有している。また、シート80はEOガス(酸化エチレンガス)等の滅菌ガス(殺菌ガス)を通過させることができる。したがって、ケース30にシート80を貼り付けた後でも眼内レンズ挿入器具10の滅菌処理を行うことが可能とされている。前述したように、シート80は可撓性を有しているため、使用時に容易に剥ぎ取ることが可能とされている。ただし、ケース30にシート80を貼り付けてガス滅菌する際に、眼内レンズ挿入システム40を加熱するため、薄肉の樹脂シートで形成されたケース本体70は熱で若干変形される場合もある。つまり、熱が加えられると、真空成形法によって変形される前の形状(シート状)に戻り易くなるわけである。本実施形態のケース30は支持部材50を備えることで、ケース本体70に変形があっても好適に眼内レンズ挿入器具10を支持できる。
ケース本体70の凹凸部60は、眼内レンズ挿入器具収容陥没部302を備える。眼内レンズ挿入器具収容陥没部302は、ケース本体70の裏面(図1の底面)が基準平面Pから上方(図2,図3だと下方)に陥没した陥没部であり、眼内レンズ挿入器具10の体積を収容できる陥没形状が形成されている。また、眼内レンズ挿入器具収容陥没部302は、挿入器具本体収容陥没部303とプランジャー収容陥没部304を備える。挿入器具本体収容陥没部303は、挿入器具本体100の体積を収容できる陥没形状で形成されている。プランジャー収容陥没部304は、プランジャー200の体積を収容できる陥没形状で形成されている。挿入器具本体収容陥没部303とプランジャー収容陥没部304は接続されており、連続した陥没形状が形成されている。挿入器具本体収容陥没部303及びプランジャー収容陥没部304は、挿入器具本体100及びプランジャー200の各々を投影した投影形状を収容できる陥没形状で形成されている。
挿入器具本体収容陥没部303には、挿入器具本体100の各部位を収容できる連続した陥没形状が形成されている。より詳しくは、挿入器具本体収容陥没部303の先端には挿入部110を収容する挿入部収容陥没部が形成されている。挿入部収容陥没部の基端側には、設置部120を収容する設置部収容陥没部が接続されている。設置部収容陥没部の基端側には、本体筒部130を収容する本体筒部収容陥没部が接続されている。本体筒部収容陥没部の基端よりやや先端側には、張り出し部190を収容する張り出し部収容陥没部が左右端部に接続されている。
設置部収容陥没部及び本体筒部収容部には、後述する支持部材50の可動規制部504(図2及び図4参照)を収容するための支持部材収容陥没部が接続されている。本体筒部収容陥没部の先端と張り出し部収容陥没部の中間位置に把持空間形成部301が接続されている。把持空間形成部301は、本体筒部収容陥没部の左右各々の端部から左方向及び左方向に伸びる連続した陥没形状で形成されている。把持空間形成部301は、ケース30に収容される眼内レンズ挿入器具10を把持する指が挿入されるための空間を形成している。把持空間形成部301によって、使用者はケース30に収容された眼内レンズ挿入器具10の本体筒部130の左右側部を左右方向から把持することが可能とされている。把持空間形成部301は、本体筒部収容陥没部の左右端部から鍔部300まで伸びている。
挿入器具本体収容陥没部303の上方(図2,図3だと下方)には、支持部材50の連結部502を収容できる連結部収容陥没部が接続されている。したがって、ケース30に眼内レンズ挿入器具10が収容された状態では、眼内レンズ挿入器具10とケース本体70との間に支持部材50の連結部502が挟み込まれる(図7、図8参照)。
プランジャー収容陥没部304には、プランジャー200の押圧部220及び軸基部210を収容できる連続した陥没形状が形成されている。より詳しくは、プランジャー収容陥没部304の基端には、押圧部220を収容する押圧部収容陥没部が形成されている。押圧部収容陥没部の先端側には、軸基部210を収容する軸基部収容陥没部が接続されている。なお、プランジャー収容陥没部304の先端は、挿入器具本体収容陥没部303の基端に接続されており、挿入器具本体収容陥没部303の先端からプランジャー収容陥没部304まで連続した陥没形状が形成されている。
なお、挿入器具本体収容陥没部303及びプランジャー収容陥没部304を形成する陥没形状は、ケース30に収容される眼内レンズ挿入器具10の移動を規制するための移動規制部900となる。移動規制部900はケース本体70の陥没量を変化させることで形成されている。本実施形態のケース30は、移動規制部900を複数備えており、眼内レンズ挿入器具10の異なる部位に各々の移動規制部900(900A〜900G)を当接させている。より詳しくは、本実施形態のケース30は、ケース30に収容された眼内レンズ挿入器具10の押圧部220、軸基部210、及び張り出し部190に移動規制部900(900A〜900G)を当接させている。ケース本体70が備える移動規制部900によって、ケース30に収容された眼内レンズ挿入器具10の上方、左方,右方,前方,後方への移動を規制することが可能とされている。
なお、本実施形態のケース30は、ケース30に収容された眼内レンズ挿入器具10の下方への移動の抑制を、後述する支持部材50の支持部(第一支持部501,第二支持部503)によって行うこととしている。本実施形態のケース本体70は薄肉の樹脂で形成されているため変形が容易とされている。したがって、例えば、移動規制部900が眼内レンズ挿入器具10を挟持する形態とすれば、移動規制部900でもケース30に収容された眼内レンズ挿入器具10の下方への移動を抑制できる。ただし、この場合、ケース30から眼内レンズ挿入器具10を取り出す際に力を要する可能性が高い。ケース本体70はシートを変形させる加工方法で形成するため、成形精度を出し難い。また、ケース本体70は薄肉の樹脂で形成されているため変形しやすい。したがって、ケース30から眼内レンズ挿入器具10を取り出す際の取り出し力を好適にすることは困難と考えられる。一方、本実施形態のケース30は、ケース本体70とは異なる加工方法によって形成した支持部(後述する第一支持部501,第二支持部503)を備えることで、ケース30に収容される眼内レンズ挿入器具10を支持部(第一支持部501,第二支持部503)で好適に支持するとともに、ケース30から好適な力で眼内レンズ挿入器具10を取り出すことを可能としている。
<1−3.支持部材>
図4を用いて本実施形態の支持部材50を説明する。なお、真空成形法で成形したケース本体70と異なり、支持部材50は樹脂材料を用いた射出成形(モールド成型)、樹脂の削り出しによる切削加工などで成形されていればよい。なお、支持部材50に金属材料を使用してもよい。支持部材50は第一支持部501と第二支持部503と連結部502とを備える。第一支持部501は支持部材50の先端に位置される。第一支持部501は、挿入器具本体100の可動部材122の可動を規制すると共に、ケース30内で眼内レンズ挿入器具10を支持するための部材とされている。第一支持部501の基端に連結部502が接続される。連結部502は、第一支持部501と第二支持部503を連結する部材であり、連結部502によって支持部材50が一体成形されている。連結部502の基端に第二支持部503が位置される。第一支持部501は第一挟持部510(510A,510B)と可動規制部504とノズル部保護部505とを備える。ノズル部保護部505は第一支持部501の先端に位置される。ノズル部保護部505の基端に可動規制部504が接続される。可動規制部504の基端に第一挟持部510(510A,510B)が接続される。なお、可動規制部504は挿入器具本体100の可動部材122の可動を規制する。したがって、第一支持部501が挿入器具本体100と係合すると、挿入器具本体100の可動部材122の可動が規制される。ノズル部保護部505は先細り部111(図3参照)の側方(本実施形態の図2では先細り部111の下方,右方,及び左方)に位置され、挿入器具本体100の挿入部110の破損を抑制する。なお、第一支持部501を第一挟持部510(510A,510B)と可動規制部504で形成してもよい。なお、第一支持部501はケース本体70と係合するための第一ケース係合部610を複数箇所に備えている。第一挟持部510と可動規制部504とノズル部保護部505の詳細は後述する。
連結部502は第一支持部501の基端に接続されている。連結部502は板状の支基とされており、連結部502は、挿入器具本体100の設置部120の基端から張り出し部190の先端までの長さより若干短く形成されている。連結部502の長手方向全長の略半分の位置の左右端には、連結部502を左方向及び左方向から括れさせる幅狭部700が形成されている。幅狭部700によって連結部502には先端から基端までの間に幅狭となる箇所が形成されている。つまり、押出軸Aに交差する左右方向における連結部502の幅は均一ではなく、一部(本実施形態では前後方向の中央部)の幅が他の部分の幅に比べて短い。幅狭部700は、使用者の指と支持部材50との当接を低減させるために設けられている。
第二支持部503は連結部502の基端に接続されている。第二支持部503は、第二挟持部520(520A,520B)と張出当接部800と第二ケース係合部620(620A,620B)を備える。第二挟持部520は第二支持部503の先端に位置される。第二支持部503の基端に張出当接部800が接続される。張出当接部800の左右両端には第二ケース係合部620が接続される。第二挟持部520は第一挟持部510と略同じ形状で形成されている。張出当接部800は挿入器具本体100の張り出し部190と当接し、張出当接部800は、支持した挿入器具本体100の前方への移動を抑制する(図6参照)。
図1,図4,図8を用いて本実施形態の挟持部(第一挟持部510及び第二挟持部520)を説明する。なお、第一挟持部510と第二挟持部520は略同じ形状で形成されているため、以降の説明では第二挟持部520を用いて説明する。第二挟持部520は右側挟持部520Aと左側挟持部520Bを備える。なお、右側挟持部520Aと左側挟持部520Bは軸対象の形状で形成されており、長手方向に伸びる支持部材50の中心線から同じ距離離間した位置に右側挟持部520Aと左側挟持部520Bが形成されている。右側挟持部520Aは、挟持部平板部521Aと挟持部突出部522Aを備える。挟持部平板部521Aは平板状の部材であり、連結部502と接続される第二支持部503の板状支基507の左右端部から下方(図4だと上方)に伸長した突出形状で形成されている。板状支基507から下方へ遠ざかる方向に伸びる挟持部平板部521Aの長さは、ケース本体70に支持部材50を装着した際に、挟持部平板部521Aの先端が基準平面Pを超えない長さで形成されている。本実施形態の挟持部平板部521Aの長さは、挿入器具本体100の本体筒部130の厚さLHB(上下方向)の半分を超えるが、本体筒部130の厚さLHB(上下方向)よりも若干短い長さで形成されている。また、左右一対の挟持部平板部521Aの内面(互いに面する面)の間隔LWCは、本体筒部130の幅(左右方向)の最大値LWBよりも若干長くなるように離間して形成されている。
挟持部平板部521Aの先端部の内面には、対向する挟持部平板部521Bの方向に突出する挟持部突出部522Aが設けられている。挟持部突出部522Aの押出軸Aと直交する断面の外郭線は、内側(図4だと右方)に向かって突出する円弧形状を描いている。挟持部突出部522Aの上下端部は、挟持部平板部521Aの外郭線と滑らかに接続されている。なお、一対の挟持部突出部522(522A,522B)同士が最も近づく挟持部突出部522の突出頂点を結んだ線長LWAは、本体筒部130の幅(左右方向)の最大値LWBよりも若干短く形成されている。また、挟持部突出部522の突出頂点が形成される板状支基507からの距離LHAは、本体筒部130の厚さLHB(上下方向)の半分を若干超える距離とされている。したがって、眼内レンズ挿入器具10の外側面と第二支持部503の板状支基507とが当接する地点まで眼内レンズ挿入器具10と支持部材50が近接されると、一対の第二挟持部520(520A,520B)によって眼内レンズ挿入器具10の本体筒部130が挟持される。また、挟持部平板部521Aが下方へ向くように支持部材50がケース本体70に装着されていても、ケース30から眼内レンズ挿入器具10が落下し難い形状で第二挟持部520が形成されている。なお、本実施形態の眼内レンズ挿入器具10は、本体筒部130の壁部の外側面に挟持部(第一挟持部510,第二挟持部520)の形状に対応した挟持部陥没部523を設けており、より好適に眼内レンズ挿入器具10を支持できる。挟持部陥没部523はベース支基506又は板状支基507に平行な平行面と、平行面に直交する直交面で形成されている。挟持部陥没部523を設けることで、眼内レンズ挿入器具10の重さが挟持部(510,520)に掛かっても、挟持部(510,520)の挟持部平板部521が外側に開き難い機構になっている。したがって、眼内レンズ挿入器具10の自重によって支持部(501,503)の支持が外れてしまう事象を、より生じ難くしている。
続けて図4,図9を用いて本実施形態の可動規制部504について説明する。可動規制部504は、板状のベース支基506と,ベース支基506の左右各々の端部から下方(図4だと上方)に伸びる左右側板530(530A,530B)を備える。ベース支基506の略中央には、下方に伸びる一対の突出部535が形成されている。突出部535は、眼内レンズ挿入器具10の設置部120の壁部に形成されている開口孔を貫通し、設置部120に充填される眼内レンズ1の移動を抑制する。また、左右側板530の内面(左右側板530同士が対向する面側)には、左右側板530の上端から下方に伸びる複数のリブ(531〜533)が形成されている。なお、本実施形態のリブ(531〜533)の基端はベース支基506に接続されている。リブ(531〜533)は先端方向に離間して配置されている。離間した各々のリブ(531〜533)の間隔は、挿入器具本体100の設置部120の左方及び右方の外側面に形成されている凹凸形状に対応した間隔で形成されている。複数のリブ(531〜533)は、基端側に配置されるリブ(531〜533)ほど、リブ(531〜533)の長さが長くなるように形成されている。
なお、リブ(531〜533)の長さとは、ベース支基506からリブの先端(図4だと上端)までを示す。例えば、本実施形態のリブ531の長さは、リブ533の長さよりも長く形成されている。リブ(531〜533)の先端が可動部材122に当接することによって、ケース30に収容された眼内レンズ挿入器具10の可動部材122の可動が規制される(図9(a)参照)。ケース30から眼内レンズ挿入器具10を取り出した際には、眼内レンズ挿入器具10の可動部材122の可動の規制が解除され、可動部材122を押出軸Aの方向に押し込むことが可能となる(図9(b)参照)。なお、図9(b)は図9(a)との比較のために眼内レンズ挿入器具10を下方に取り出す例示であり、ケース30を上下方向逆にして、眼内レンズ挿入器具10を上方に取り出してもよい。なお、ケース30を他の方向に向けて眼内レンズ挿入器具10をケース30の向きに対応した方向に取り出してもよいことは言うまでもない。
なお、前述のとおり、リブ(531〜533)は、設置部120の左方及び右方の外側面に形成されている凹凸形状に対応した間隔で形成されている。詳細には、リブ(531〜533)と設置部120とが僅かに当接される程度の間隔でリブ(531〜533)が形成されている。リブ(531〜533)と設置部120とを軽く係合させている理由は、眼内レンズ挿入システム40の組み立て易さ、及びケース30から眼内レンズ挿入器具10の取り出し易さを向上させるためである。したがって、本実施形態の第一支持部501は、可動規制部504で可動部材122の可動の規制を行い、可動規制部504に連結している第一挟持部510で眼内レンズ挿入器具10の支持を行うこととしている。したがって、本実施形態のケース30は、第一支持部501の装着されたケース30に眼内レンズ挿入器具10を容易に着脱することが可能であり、かつ、可動規制部504で眼内レンズ挿入器具10の可動部材122の可動の規制を好適に行うことが可能とされている。なお、可動規制部504に第一挟持部510を備えてもよい。つまり、支持部材50はケース本体70に着脱可能であるが、使用時に、支持部材50はケース本体70から取り外す必要がないため、支持部材50とケース本体70の係合は、支持部材50と眼内レンズ挿入器具10の係合よりも強い係合力で係合されている。また、本実施形態の眼内レンズ挿入システム40は、支持部材50をケース本体70とは異なる加工方法で形成しているため、例えば、上述したように、眼内レンズ挿入器具10と支持部材50とが係合する構造を形成し易く、支持部材50で眼内レンズ挿入器具10を好適に支持することができる。なお、支持部材50の眼内レンズ挿入器具10と当接する部位を細かい凹凸形状で形成し、摩擦を増加させてもよい。
続けて、本実施形態のノズル部保護部505について説明する。可動規制部504の先端にノズル部保護部505が接続されている。ノズル部保護部505は、眼内レンズ挿入器具10の挿入部110の損傷を防ぐためのものとされている。つまり、ノズル部保護部505は、眼内レンズ挿入器具10をケース30から取り出す際に、ノズル部112をはじめとする挿入部110の先端部とケース本体70とが当接し、挿入部110を破損してしまう不具合を抑制するものである。特に、ノズル部112の先端はベベル部113によって尖った形状とされているため、不用意に他の部材が当接すると損傷し易い。したがって、本実施形態のノズル部保護部505は、眼内レンズ挿入器具10が傾斜した際に、ノズル部112がケース本体70に当接する前に、ノズル部保護部505と先細り部111とが当接するように形成している。
なお、第一支持部501の左右側板530の外面側には第一ケース係合部610が形成されている。第一ケース係合部610は左右側板530の外側面から外側に突出し、斜面が上方(図4では下方)に向くテーパー形状で形成されている。また、第二支持部503の張出当接部800の左右両端には第二ケース係合部620が接続されている。第二ケース係合部620は張出当接部800の左右端部から外側に突出し、斜面が上方(図4では下方)に向くテーパー形状で形成されている。第一ケース係合部610及び第二ケース係合部620の各々は、ケース本体70に形成されている複数の支持部材係合部910の少なくともいずれかと係合する。第一ケース係合部610(第二ケース係合部620)と支持部材係合部910とが係合することで、ケース本体70に支持部材50が装着される。
なお、支持部材係合部910は、ケース本体70の凹凸部60の側壁の一部を水平方向かつ陥没空間が少なくなる方向に突出させることで支持部材係合部910が形成されている。ケース本体70の裏面側(図3だと上方)から支持部材50をケース本体70に近接させると、テーパー形状の基端部(図4だと上端部)に形成されている水平面と支持部材係合部910の突出部とが係合し、ケース本体70に支持部材50が装着される。なお、ケース本体70と支持部材50とは押出軸A方向の異なる複数の位置で係合する。本実施形態のケース30は、支持部材50が眼内レンズ挿入器具10を支持した状態でケース30の裏面を下方に向けても、ケース30から支持部材50が外れない係合力でケース本体70と支持部材50とが係合されている。また、本実施形態の支持部材50は、眼内レンズ挿入器具10をケース30から取り出しても、眼内レンズ挿入器具10と一緒に支持部材50が外れてしまうことのない係合力で支持部材50とケース本体70とが係合されている。したがって、ケース本体70とは異なる加工方法で形成した支持部材50で眼内レンズ挿入器具10を好適に支持し、かつ、ケース30から眼内レンズ挿入器具10を容易に取り出すことができる。なお、支持部材50とケース本体70を異なる加工方法で形成するため、支持部材50で眼内レンズ挿入器具10の可動部材122の可動を好適に規制できる。なお、ケース本体70に支持部材50を接着剤で接着してもよいが、使用する接着剤の生体適合性を考慮する必要がある。なお、本実施形態のケース30は、ケース本体70と支持部材50の係合構造と、支持部材50と眼内レンズ挿入器具10の係合構造を異ならせ、支持部材50のケース本体70への好適な装着と、支持部材50による眼内レンズ挿入器具10の好適な支持及び眼内レンズ挿入器具10の好適な取り出しを両立させている。
なお、本実施形態のケース30は、ケース30に収容された眼内レンズ挿入器具10の長手方向全長LBの中間となる中間位置(図5だと断面I−Iの位置)に第二支持部503を配置している(図5参照)。したがって、眼内レンズ挿入器具10の長手方向の先端付近又は基端付近の位置だけで眼内レンズ挿入器具10を支持する場合に対して、眼内レンズ挿入器具10の端部と支持箇所との最大距離が短くなるため、ケース30に収容された眼内レンズ挿入器具10の移動を効率よく抑制することができる。また、本実施形態のケース30は、把持空間形成部301よりも先端側と基端側の各々の位置で眼内レンズ挿入器具10を支持する。したがって、眼内レンズ挿入器具10を指で把持した位置の先端側と基端側に各々支持力がかかった状態で眼内レンズ挿入器具10を取り出すため、ケース30の基準平面Pに対して平行な角度で眼内レンズ挿入器具10をケース30から取り出し易くなる(図7参照)。例えば、指で把持した位置の片方(先端側又は基端側の何れか)のみ支持力がかかった状態で眼内レンズ挿入器具10をケース30から取り出す場合、眼内レンズ挿入器具10の先端側又は基端側が基準平面Pに対して傾斜し易くなる。眼内レンズ挿入器具10がケース30の近くで傾斜すると、眼内レンズ挿入器具10の先端部又は基端部がケース本体70とが不用意に当接し、眼内レンズ挿入器具10を破損する可能性がある。なお、長手方向全長LBの中間となる中間位置に第二支持部503を設けず、眼内レンズ挿入器具10の重心位置に設けてもよい。また、長手方向全長LBの中間となる中間位置と重心位置の間に第二支持部503を設けてもよい。
なお、本実施形態のケース30は、支持部(501,503)と移動規制部900(900A〜900G)とで眼内レンズ挿入器具10の移動の規制を使い分け、支持部(501,503)と移動規制部900を併用している。より詳しくは、眼内レンズ挿入器具10の移動に対して精度の高い移動規制を要する箇所は支持部(501,503)で眼内レンズ挿入器具10を挟持及び当接させ、大まかな移動の規制を行う箇所は移動規制部900を眼内レンズ挿入器具10に当接させる。したがって、ケース30の全体を射出成形で形成しなくとも、ケース30内で眼内レンズ挿入器具10の移動を好適に規制することができる。したがって、眼内レンズ挿入器具10をケース30に収容した状態で眼内レンズ挿入システム40を移動させても、移動中の振動などによって眼内レンズ挿入器具10が破損または故障する事象を抑制することができる。本実施形態の眼内レンズ挿入システム40は、ケース30の成形にかかる金型費用を低減させることでケース30を安価に製造することができ、眼内レンズ挿入システム40を安価に使用者へ提供できる。
<1−5.組立方法>
作業者は、ケース本体70の表面(図1だと平面)が下方を向くように、ケース本体70を作業台に載せる。続けて作業者は、ケース本体70に支持部材50を装着する。続けて作業者は、支持部材50の装着されたケース30に眼内レンズ挿入器具10を収容する。また、眼内レンズ挿入器具10に眼内レンズ1を充填する。続けて、作業者は、ケース本体70の鍔部300にシート80を接着(溶着)し、眼内レンズ挿入器具10の収容された凹凸部60の収容空間をシート80で密閉する。続けて、シート80で密閉されたケース30をガスで滅菌する。なお、シート80は滅菌ガスを通過させるため、ケース30にシート80が貼り付けられた状態でケース30を滅菌できる。続けて、作業者は、ケース30の上方外側面にシール82を貼り付ける。続けて作業者は、紙箱81に滅菌処理のされた眼内レンズ挿入システム40を収容する。なお、紙箱81は厚紙で形成されている。紙箱81の主な目的は、ケース30に収容されている眼内レンズ挿入器具10の種類の識別性を向上させることと、複数の眼内レンズ挿入システム40を重ねて搬送及び保管し易くなる点がある。なお、紙箱81を使用せずに眼内レンズ挿入システム40を搬送してもよい。
<2.使用方法>
使用者は、紙箱81から眼内レンズ挿入システム40を引き出す(図11参照)。続けて、ケース30に貼り付けられているシート80を剥がす(図10参照)。続けて使用者は、ケース30から眼内レンズ挿入器具10を取り出す(図7参照)。なお、ケース30の把持空間形成部301に指を入れて、眼内レンズ挿入器具10の本体筒部130を側方(左右方向)から把持して取り出す。このとき、ケース30から眼内レンズ挿入器具10を取り出す際は、使用者の反対の手又は介助者の手で、ケース本体70の表面(図1の平面側)の凹凸部60を側方から把持する。なお、ケース30から眼内レンズ挿入器具10を取り出す際に、ケース30を作業台などに載置して眼内レンズ挿入器具10を取り出してもよい。なお、ケース30から眼内レンズ挿入器具10を取り出すと、可動部材122の可動の規制が解除される。続けて使用者は、眼内レンズ挿入器具10の注入口に粘弾性物質を注入した後、可動部材122を押し込む(押出軸Aの方向に押す)。可動部材122が押し込まれることで眼内レンズ1は押出軸A上に移動する。続けて使用者は、眼内レンズ挿入器具10のノズル部112を患者眼の切開創に差し込み、プランジャー200を押出軸Aの先端方向に押し込むことで眼内レンズ1を患者眼の眼内に挿入する。
<3.作用及び効果>
本実施形態の眼内レンズ挿入器具10を収容するケース30は、眼内レンズ挿入器具10全体を収容する凹凸部60がシートを変形させる加工方法によって形成されているケース本体70と,凹凸部60に収容される眼内レンズ挿入器具10をケース本体70とは異なる加工方法によって形成されて、ケース30に装着される支持部(501,503)で眼内レンズ挿入器具10を支持する。ケース本体70とは異なる加工方法によって形成された支持部(501,503)で眼内レンズ挿入器具10を支持するため、ケース30内部における眼内レンズ挿入器具10の移動を好適に抑制できる。また、好適な支持力で眼内レンズ挿入器具10を支持するため、使用時に、ケース30から眼内レンズ挿入器具10を容易に取り出すことができる。眼内レンズ挿入器具10全体を収容するケース本体70の投影面積よりも支持部(501,503)の投影面積は小さいため、支持部(501,503)を安価に製造することができる。また、支持部(501,503)はプランジャー200を収容またはプランジャー200に当接させず支持するため、支持部(501,503)を安価に製造することができる。また、本実施形態の眼内レンズ挿入器具10用のケース30は、ケース30から眼内レンズ挿入器具10を取り出しても、ケース30に支持部(501,503)が残る。換言するなら、支持部(501,503)は、眼内レンズ挿入器具10との係合力よりも大きい係合力でケース本体70に係合されている。したがって、ケース本体70とは異なる加工手法で形成した支持部(501,503)で、ケース本体70に収容する眼内レンズ挿入器具10を好適に支持し、かつ、ケース本体70に支持部(501,503)を残したまま、ケース30から眼内レンズ挿入器具10を好適に取り出すことができる。支持部(501,503)との係合が外れた状態で眼内レンズ挿入器具10はケース30から取り出されるため、取り出した眼内レンズ挿入器具10を速やかに使用することができる。
また、本実施形態の眼内レンズ挿入器具10を収容するケース30は、支持部(501,503)を複数備え、眼内レンズ挿入器具10の異なる部位に複数の支持部(501,503)の各々を当接させて眼内レンズ挿入器具10を支持する。眼内レンズ挿入器具10の異なる部位を複数の支持部(501,503)で支持するため、より好適に眼内レンズ挿入器具10をケース30内で支持することができる。
また、本実施形態の眼内レンズ挿入器具10を収容するケース30は、複数の支持部(501,503)の少なくとも2つを連結する連結部502を備える。連結部502を備えることで、支持部(501,503)のケース本体70への装着作業が容易になる。また、例えば、複数の支持部(501,503)を好適な位置関係で設けることができる。また、本実施形態では、連結部502と、連結部502によって連結される複数の支持部(501,503)とが一体形成されている。例えば、複数の支持部(501,503)を一体成形することで、ケース30を安価に提供することができる。
また、本実施形態の眼内レンズ挿入器具10を収容するケース30は、眼内レンズ挿入器具10がケース30に収容された状態において、眼内レンズ挿入器具10とケース本体70との間に連結部502を挟み込む。眼内レンズ挿入器具10とケース本体70の間に連結部502を挟み込むことで、例えば、眼内レンズ挿入器具10をケース30から取り出す際に、使用者の指が連結部502に妨げられることなく眼内レンズ挿入器具10を容易に把持することができる。したがって、ケース30から眼内レンズ挿入器具10を容易に取り出すことができる。
また、本実施形態の連結部502は、挿入器具本体100の幅よりも狭い幅となる幅狭部700を備えている。眼内レンズ挿入器具10を支持部材50で支持した際に、眼内レンズ挿入器具10の長手方向に直交する方向の連結部502の幅を狭めている。幅狭部700で狭めた幅は、筒状の眼内レンズ挿入器具10の太さよりも狭めるように形成している。幅狭部700によって、使用者が眼内レンズ挿入器具10を指で把持する際に、眼内レンズ挿入器具10と共に連結部502を把持してしまう不具合を抑制することができる。したがって、ケース30から眼内レンズ挿入器具10を好適に取り出すことができる。
また、本実施形態のケース本体70は、凹凸部60の凹凸形状によって形成されて、ケース30に収容される挿入器具本体100を把持する指が挿入されるための空間を形成する把持空間形成部301を備える。支持部(501,503)は把持空間形成部301を跨いだ複数の位置で挿入器具本体100を支持する。把持空間形成部301を跨いだ複数の位置で挿入器具本体100を支持することで、眼内レンズ挿入器具10を好適に支持でき、また、眼内レンズ挿入器具10をケース30から好適に取り出すことができる。
例えば、把持空間形成部301の片側だけで眼内レンズ挿入器具10を支持する場合、眼内レンズ挿入器具10をケース30から取り出す際に、支持部(501,503)を支点として眼内レンズ挿入器具10が傾き、ノズル部112を損傷してしまう恐れがある。本実施形態のケース30は、取り出す際の眼内レンズ挿入器具10の傾斜を抑制することができる。なお、換言するなら、本実施形態の眼内レンズ挿入器具収容用のケース30は、ケース本体70は、凹凸部60の凹凸形状によって形成され、ケース30に収容される挿入器具本体100を把持する指が挿入されるための空間を形成する把持空間形成部301と、凹凸部60に収容される眼内レンズ挿入器具10の軸方向において、把持空間形成部301よりも先端側と後端側の各々に形成され、支持部(501,503)が装着される装着部として支持部材係合部910を備えている。
また、本実施形態の眼内レンズ挿入器具10を収容するケース30は、支持部(501,503)の少なくともいずれかを、ケース30に収容される眼内レンズ挿入器具10の長手方向全長の中間位置に配置する。支持部(501,503)を眼内レンズ挿入器具10の長手方向全長LBの中間位置に配置することで、例えば、眼内レンズ挿入器具10の下方からの支持が少なくても、ケース30内で眼内レンズ挿入器具10の上下方向の移動を好適に抑制することができる。
また、本実施形態では、支持部の少なくともいずれかは、ケース30に収容される設置部120に接触することで眼内レンズ挿入器具10を支持する。ケース30内での設置部120の移動を好適に抑制することができる。したがって、例えば、設置部120の部材の損傷を防ぐことができる。
また、本実施形態では、支持部(501,503)の少なくともいずれかは、挿入器具本体100の外面から挿入器具本体100の長手方向に対して直交する方向に張り出す張り出し部190に当接される張出当接部800を備える。張出当接部800は、張り出し部190の先端側及び基端側の少なくとも何れか(本実施形態では先端側)に当接する。張り出し部190に張出当接部800を当接させることで、眼内レンズ挿入器具10の前後方向の移動を好適に規制することができる。なお、本実施形態の張り出し部190は、把持空間形成部301に位置する部分より基端側に設けられている。
また、本実施形態の支持部(501,503)は更に、挿入器具本体100の可動部材122の可動を規制する可動規制部504を備える。支持部(501,503)が有する可動規制部504で挿入器具本体100の可動部材122の可動を規制するため、可動部材122の可動を好適に規制することができる。ケース30内での眼内レンズ挿入器具10の移動を好適に抑制でき、かつ、ケース30内での挿入器具本体100の可動部材122の可動を好適に規制できため、例えば、搬送中の眼内レンズ挿入器具10の故障を抑制することができる。
また、本実施形態の眼内レンズ挿入器具10を収容するケース30は、眼内レンズ挿入器具10を収容した眼内レンズ挿入システム40の一部として製造される。使用現場では支持部(501,503)で好適に支持され搬送された眼内レンズ挿入器具10を速やかに使用することができる。なお、本実施形態のケース30に収容する眼内レンズ挿入器具10は、製造時に眼内レンズ1を充填する形態としているが、眼内レンズ1を使用現場で充填してもよい。
<4.その他>
なお、本実施形態のケース30は、例えば、眼内レンズ挿入器具10の少なくとも一部に与えられる外部からの衝撃を低減することができる。また、眼内レンズ挿入器具10が収容されるケース30の凹凸部60の収容空間をシート80で塞ぐことにより、使用現場に、眼内レンズ挿入器具10を滅菌した形態で提供することができる。また、紙箱81からケース30を取り出し、シート80を剥がして眼内レンズ挿入器具10を取り出すだけで眼内レンズ挿入器具10を使用できる。
なお、本実施形態では眼内レンズ挿入器具10を支持する支持部(501,503)をケース30に装着しているが、これに限るものではない。例えば、ケース本体70を使用せず、眼内レンズ挿入器具10と可動規制部504を備える支持部(501と503の少なくともいずれか)だけの組み合わせとしてもよい。可動規制部504を支持部(501,503)で支持した眼内レンズ挿入器具10を収容袋に入れて使用現場に搬送する手法等が考えられ、この場合においても、挿入器具本体100の可動部材122の可動を可動規制部504で好適に規制した状態で使用現場に搬送することができる。また、ケース30を用いずに、本実施形態の支持部材50と眼内レンズ挿入器具10だけの組み合わせとしてもよい。離間した複数の支持部(501,503)で眼内レンズ挿入器具10を支持することで、前述した手法より更に挿入器具本体100の可動部材122の可動を可動規制部504で好適に規制した状態で使用現場に搬送することができる。また、第一支持部501と第二支持部503の少なくとも何れかだけを使用してもよい。ケース本体70と異なる加工方法で形成された支持部(501,503)を使用すればよい。また、本実施形態で例示した眼内レンズ挿入器具10は、眼内レンズ1が予め充填されたプリセット型である。しかし、本実施形態で例示した技術の少なくとも一部を、使用現場で眼内レンズが充填される非プリセット型の眼内レンズ挿入器具にも適用できることは言うまでもない。
なお、支持部(501,503)はケース本体70と異なる加工方法に限るものでなく、ケース本体70と異なる材料配分又は弾性特性で形成した支持部(501,503)を使用してもよい。例えば、支持部(501,503)の材料に、ケース本体70よりも弾性が高くなる材料を適用することが考えられる。また、シート80に支持部材50又は支持部(501,503)を設けてもよい。例えば、シート80の所定位置に支持部材50を接着し、予め支持部材50の接着されたシート80に眼内レンズ挿入器具10を装着しておいてからシート80をケース本体70に接着する手法が考えられる。
なお、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって、今回開示された実施形態の構成全てを適用しなくてもよいと考えられるべきである。言い換えるなら、今回開示された実施形態の構成の一部のみを適用してもよい(つまり、今回開示された実施形態が備える複数の技術的特徴の一部のみを実施してもよい)。例えば、ケース30は第二支持部503だけを備えてもよい。また、例えば、本実施形態の挿入部110と設置部120を提供するカードリッジ方式の形態としてもよい。この場合、可動規制部504にカードリッジを支持するための挟持部(510又は520)を備えればよい。
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲及びこれと均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。