JP6379170B2 - 半導体装置 - Google Patents

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Description

本発明は、半導体素子と、前記半導体素子と接続される接続部材と、を有する半導体装置に関するものである。
近年、SiC(炭化珪素)を用いたSiC半導体素子の開発が進められている。
SiC半導体素子はSi半導体素子に比較して絶縁破壊電界強度が高く、バンドギャップが広いため、大電力を制御するパワーデバイスとして注目されている。SiC半導体素子は、Si半導体素子の限界を超える150℃以上の高温においても動作が可能であり、理論的には500℃以上でも動作が可能とされている(特許文献1参照)。
このようなパワーデバイスは、長時間にわたって高温動作状態が継続し、しかも、高温動作状態から低温停止状態へと大きな温度変動を伴うなど、過酷な環境下で使用される。したがって、半導体素子およびこれと接続される接続部材を有する半導体装置では、両者の接合を形成する接合部に対し、長期にわたり高い接合強度を維持するとともに、優れた耐熱性も要求される。
しかし、従来より知られた接合材は、必ずしも、上述した要求を満たし得るものではなかった。
例えば、特許文献2に開示されている半導体装置では、到底上述した要求を満たすことができない。
すなわち、特許文献2には、高温時に接続強度の維持を目的として、半導体装置の電極と実装基板の電極とを、Cuボールを有する接続部により接続し、かつCuボール同士を金属間化合物CuSnによって連結する電子機器が開示されている。
しかし特許文献2に開示された技術では、接続部においてCuが一方向に結晶成長し、長軸結晶を生成し、これがウィスカとなってクラック現象が生じ、電気的特性を阻害したり、耐久性が悪化する等の問題点があった。
特開2011−80796号公報 特開2002−261105号公報
したがって本発明の目的は、半導体素子と、前記半導体素子と接続される接続部材と、を有する半導体装置において、前記半導体素子と前記接続部材との接合を形成する接合部が、長期にわたって高い耐熱性、接合強度および機械的強度を維持し、かつ良好な電気的特性も維持可能な半導体装置を提供することにある。
上述した課題を解決するため、本発明に係る半導体装置は、半導体素子と、前記半導体素子と接続される接続部材と、を有し、前記半導体素子と前記接続部材との接合を形成する接合部は、SnおよびCuからなる金属間化合物とSn合金を含む金属マトリクスとを有し、前記金属間化合物は、前記金属マトリクス中に分散し、前記金属マトリクスは、Cuボールを実質上含まない、ことを特徴としている。
また、前記金属マトリクスは、Sn単体を実質上含まないことが好適である。
本発明に係る半導体装置における接合部は、SnおよびCuからなる金属間化合物がSn合金を含む金属マトリクス中に分散するとともにCuボールが金属マトリクス中に実質上存在しないものである。これにより、高温の曝露によってCuが一方向に長軸結晶として生成する(ウイスカ)ことがなく、イオンマイグレーションの抑制がはかれることで、接合部でのクラック現象を防止でき また、Sn単体が金属マトリクス中に実質上存在しないことにより、高温の曝露によってSnも結晶成長することがなく、このSnの結晶成長に基づくクラック現象も防止することができる。
さらに、接合部は金属間化合物による高温耐熱性と、金属マトリクスによる柔軟性とを兼ね備えることになる。
以上から、長時間にわたって高温動作状態が継続する等の過酷な環境下で使用された場合でも、長期にわたって高い耐熱性、接合強度および機械的強度を維持し、かつ良好な電気的特性も維持可能な半導体装置を提供することができる。
本発明における接合部の構造を説明するための模式断面図である。 8Cu・92Snの金属粒子の電子顕微鏡写真である。 金属粒子の製造に好適な製造装置の一例を説明するための図である。 本発明における接合部の断面の電子顕微鏡写真である。 SACはんだを用いて形成した従来技術の接合部の断面の電子顕微鏡写真である。
以下、本発明をさらに詳しく説明する。
図1は、本発明における接合部の構造を説明するための模式断面図である。
図1において、接合部300は、対向配置された基板100、500に形成された金属/合金体101、501(図1ではCu電極)を接合する。接合部300は、金属間化合物としてCuSnを含み(その他CuSn)、金属マトリクスとしてSn合金(例えば4質量%Cu及び96質量%Snからなる合金を含む)を含み、金属間化合物CuSnが金属マトリクス中に分散し、金属マトリクスは、Cuボールを実質上含まない。
Cuボールとは、特許文献2で開示されたような従来の接合部に含まれ、電極間のスペーサーとしての役割を果たし、球形である場合、その平均粒径は例えば10μm〜100μmである。Cuボールの形状は、球状以外にも、表面に凹凸を有するもの、棒状であるもの、樹枝状であるもの等が挙げられる。なお、Cuボールが球形以外の形状である場合、その平均粒径は、投影面積円相当径(投影像の面積が最大となるときの当該面積と等しい面積の円の直径)とする。Cuボールは接合部の電気的特性、耐熱性、強度に寄与するものであるが、一方では、本発明者の検討によれば上述のように高温の曝露によって一方向に長軸結晶として生成し(ウイスカ)、接合部でのクラック現象の一因となっている。
ここで、本明細書で言う「Cuボールを実質上含まない」とは、接合部300中Cuボールの割合が3質量%以下であることを意味する。該割合は、好ましくは1質量%以下、さらに好ましくは0.1質量%以下、とくに好ましくは0質量%である。Cuボールの割合は、接合部300の断面の電子顕微鏡写真を撮影し、任意に50か所サンプリングし、画像解析し、Cuボールが接合部300中にどの程度存在するのかを調べ、質量換算することにより求めることができる。
また本発明では、前記金属マトリクスは、Cu単体を実質上含まないことが好適である。本明細書で言う「Cu単体を実質上含まない」とは、CuボールおよびCuボールとしての形状を示さないCu単体の割合が、接合部300中で3質量%以下であることを意味する。該割合は、好ましくは1質量%以下、さらに好ましくは0.1質量%以下、とくに好ましくは0質量%である。すなわち、Cu単体はほとんどがSn−Cu合金または金属間化合物としてとして金属マトリクス中に拡散していることが望ましい。Cu単体の割合は、X線回折データー装置で定性分析することにより求めることができる。
接合部300がCuボールおよびCu単体を上記のように実質上含まないことにより、高温の曝露によってCuが一方向に長軸結晶として生成する(ウイスカ)ことがなく、接合部でのクラック現象を防止できる。
また、前記金属マトリクスは、Sn単体を実質上含まないことが好適である。本明細書で言う「Sn単体を実質上含まない」とは、Snの割合が接合部300中3質量%以下であることを意味する。該割合は、好ましくは1質量%以下、さらに好ましくは0.1質量%以下、とくに好ましくは0質量%である。すなわち、Sn単体はほとんどがSn−Cu合金として金属マトリクス中に拡散し消失している。Sn単体の割合は、X線回折データー装置で定性分析することによりデーターベースに依り求めることができる。このようにSn単体が金属マトリクス中に実質上存在しないことにより、高温の曝露によってSnも結晶成長することがなく、このSnの結晶成長に基づくクラック現象も防止することができる。
基板100,500は、半導体素子を備え、例えばパワーデバイスなどの電子・電気機器を構成する基板であり、金属/合金体101,501は、電極、バンプ、端子またはリード導体などとして、基板100,500に一体的に設けられている接続部材である。パワーデバイスなどの電子・電気機器では、金属/合金体101,501は、一般にはCuまたはその合金として構成される。もっとも、基板100,500に相当する部分が、金属/合金体で構成されたものを排除するものではない。
次に本発明における接合部の形成方法について説明する。
該接合部は、CuとSnとを組み合わせた金属粒子により形成することができる。該金属粒子としては、8質量%Cu及び92質量%Snの組成(以下8Cu・92Snと称する)の金属粒子が挙げられる。
この8Cu・92Snの金属粒子の電子顕微鏡写真を図2に示す。図2の金属粒子は、その表面の一部がレーザで薄く研磨されている。
図2の金属粒子は、その表面の一部がレーザによって表面からおよそ0.1μmまで研磨されている。
8Cu・92Snの金属粒子Mは、図2から理解されるように、黒色で示す金属マトリクス中に、金属間化合物CuxSnyが、網目状121、点状又は膜状122等の形態をとっている。金属間化合物CuxSnyは、実際には、3次元構造を形成している。金属間化合物CuxSnyのサイズは、図2に図示されたスケール表示に照らして、nmサイズ(1μm以下)のものが含まれている。
すなわち、金属粒子Mは、金属マトリクス中に分布するナノコンポジット3次元構造を形成する多数のナノサイズの金属間化合物を有している。ここでナノコンポジット3次元構造とは、金属粒子Mの1/10以下のナノスケールサイズの結晶で3次元構造となっているものをいう。
8Cu・92Snの金属粒子Mは、図2から理解されるように、その表面付近に金属間化合物CuSnの網目状の構造を形成している。
このような金属粒子は、例えば窒素ガス雰囲気中で、高速回転する皿形ディスク上に、Cu8質量%とSn92質量%からなる組成の溶融金属を供給して強制的に作られた遠心場内に遠心力等により小滴として飛散させた溶融金属がその制御された環境状況下で急速冷却固化過程で強制的に自己組織化させることにより得ることができる。
金属粒子の製造に好適な製造装置の一例を図3を参照して説明する。粒状化室1は上部が円筒状、下部がコーン状になっており、上部に蓋2を有する。蓋2の中心部には垂直にノズル3が挿入され、ノズル3の直下には皿形回転ディスク4が設けられている。符号5は皿形回転ディスク4を上下に移動可能に支持する機構である。また粒状化室1のコーン部分の下端には生成した粒子の排出管6が接続されている。ノズル3の上部は粒状化する金属を溶融する電気炉(高周波炉)7に接続されている。混合ガスタンク8で所定の成分に調整された雰囲気ガスは配管9及び配管10により粒状化室1内部及び電気炉7上部にそれぞれ供給される。粒状化室1内の圧力は弁11及び排気装置12、電気炉7内の圧力は弁13及び排気装置14によりそれぞれ制御される。ノズル3から皿形回転ディスク4上に供給された金属は皿形回転ディスク4による遠心力と回転軸沿いからの吹き上げ気流が作り出す平行気流環境遠心場内での作用で微細な液滴状になって飛散し、冷却されて固体粒子になる。生成した固体粒子は排出管6から自動フィルター15に供給され分別される。符号16は微粒子回収装置である。
高速回転体が円盤状又は円錐状の場合尚遠心場が無い場合は、溶融金属が回転体のどの位置に供給されるのかによって溶融金属にかかる遠心力が大きく異なるので、粒の揃った球状粉体を得にくい。だが回転シャフト下部から不活性ガスを吹き上げデスク下部に充て遠心力にて均一な気流を造り回転中心から2m範囲内に遠心場を作り出す事にて高速回転する皿形ディスク上に供給した場合は、その皿形の周縁位置における均一な遠心力を受け粒の揃った小滴に分散して飛散する。飛散した小滴は遠心場雰囲気ガス中で急速に冷却し、固化した小粒となって落下し、回収される。
溶融金属は急速冷却固化中に自己組織化され、個々の微小粒子が前記ナノコンポジット構造を有する金属粒子となる。
皿形ディスクの回転数が高くなるほど、得られた金属粒子の径は小さくなる。内径35mm、深さ5mmの皿形ディスクを用いた場合、平均粒径100μm以下の粒子を得るためには毎分100,000回転以上とすることが望ましい。これにより、遠心力が大きくなり、Snよりも軽い金属間化合物が表層に集積し、前記ナノコンポジット構造を形成し易くなる。
また、粒状化室に供給する雰囲気ガスの温度は室温でよいが、粒状化室内の酸素濃度は0ppm以下のオーダーにし、かつ、粒状化室内は大気圧に対して10%あるいはそれ以上の内圧にする必要がある。長時間連続操業する場合には、溶融金属小滴の急冷効果を維持するため、粒状化室内温度が100℃以下、好ましくは40℃以下になるように通気量を制御することが望ましい。この急冷工程により、前記網目状のバスケット構造を形成し易くなる。
金属粒子Mは例えば直径20μm以下となる。
この8Cu・92Snの金属粒子Mをシート状あるいはペースト状に加工し、これを接合すべき2つの部材間で溶融・固化させると、金属粒子Mの3次元構造の金属間化合物が分離・再結合し、金属間化合物の新たな3次元構造が形成される。また、金属マトリクスはCuボールを実質上含まず、好ましくはCu単体およびSn単体も実質上含まないものとなる。
金属粒子Mからなるプリホームシートを得るには、金属粒子Mを含む粉末を、たとえば冷間圧接法を用いた金属間接合によって処理することによって得ることができる。冷間圧接法を用いた金属間接合それ自体は、種々知られている。本発明においては、それらの公知技術を適用することができる。例えば、対向する向きに回転する一対の圧接ローラの間に、本発明に係る金属粒子Mを含む粉末を供給し、圧接ローラから粉末に対して圧力を加えて、粉末を構成する金属粒子Mに金属間接合を生じさせる。実際の処理に当たっては、圧接ローラから粉末に100℃前後の熱を加えることが望ましい。これにより金属粒子Mからなるプリホームシートが得られる。
金属粒子Mを含む粉末に対し、冷間圧接法を用いた金属間接合処理を施してプリホームシートを得た場合、プリホームシートの内部では、本発明の金属粒子M及び他の粒子は、外形形状は変化するものの、粒子の内部構造は、ほぼ、原形を保っている。即ち、プリホームシートは、複数の金属成分によるnmサイズの金属間化合物を含むナノコンポジット構造を有する。従って、成形体は、本発明に係る金属粒子の奏する作用効果をそのまま保存している。
次に、プリホームシートを接合すべき2つの部材間に介在させ、焼成(焼き付け処理)することで接合部が形成される。焼き付け処理温度は、例えば250℃であり、焼き付け処理時間は適宜調整される。
あるいは、金属粒子Mを用いて接合部を効率的に形成するため、例えば、金属粒子Mを有機ビヒクル中に混在させた導電性ペーストを形成する。
そして、接合すべき2つの部材の一方の面にこの導電性ペーストを塗布し、焼成(焼き付け処理)することで接合部が形成される。焼き付け処理温度は、例えば250℃であり、焼き付け処理時間は適宜調整される。
なお、金属粒子Mに存在する金属間化合物は、金属粒子M全体に対し、3体積%以上85体積%以下の割合が好ましく、10体積%以上75体積%以下の割合がさらに好ましい。このような金属粒子Mによれば、さらに耐熱性に優れた高信頼性及び高品質の接合部が得られる。
ちなみに、上記のように調製したプリホームシートを接合すべき2つの部材間に介在させ、250℃で焼成した厚さ40μmの焼成済シートの350℃の高温保持試験(HTS)では、試験開始時から約100時間までは、せん断強度が約60MPaから約80MPaまで上昇し、100時間超の時間領域では、ほぼ70MPaで安定するという試験結果が得られた。
また、上記焼成済シートの(-55〜200℃)の冷熱サイクル試験(TCT)では、約200サイクルを超えたあたりから、全サイクル(1000サイクル)に渡って、せん断強度が約50MPaで安定するという試験結果が得られた。
図4は、上記条件で作製した接合部の常温で1日間保管した後の状態(図4(a))と、該接合部を220℃で150時間保管した後の状態(図4(b))の断面の電子顕微鏡写真である。図4(a)から、金属マトリクスはCuボールを実質上含まないことが確認された。具体的には、接合部中にCuボールは0質量%であった。また、上記に示した方法で接合部中のCu単体およびSn単体をそれぞれ測定したところ、両者共に0質量%であった。
また図4(b)から、接合部を高温で曝露した後であってもCuが一方向に長軸結晶として生成する(ウイスカ)が確認されず、かつ、Snの結晶成長も確認されず、接合部でのクラック現象を防止できることが示唆された。
一方、図5はSAC(96.5Sn3Ag0.5Cu)はんだを用いて形成した従来技術の接合部の常温で1日間保管した後の状態(図5(a))と、該接合部を220℃で150時間保管した後の状態(図5(b))の断面の電子顕微鏡写真である。図5(a)から金属マトリクス中にCuボールの存在が確認できる。また、該接合部を220℃で150時間保管した後では(図5(b))、ウイスカおよびSnの結晶成長が確認され、接合部にクラック現象が発生したことが分かる。
以上、添付図面を参照して本発明を詳細に説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、当業者であれば、その基本的技術思想および教示に基づき、種々の変形例を想到できることは自明である。
M 金属粒子
1 粒状化室
2 蓋
3 ノズル
4 回転ディスク
5 回転ディスク支持機構
6 粒子排出管
7 電気炉
8 混合ガスタンク
9 配管
10 配管
11 弁
12 排気装置
13 弁
14 排気装置
15 自動フィルター
16 微粒子回収装置
100,500 基板
101,501 金属/合金体
121,122 金属間化合物
300 接合部

Claims (1)

  1. 半導体素子と、前記半導体素子と接続される接続部材と、を有する半導体装置であって、
    前記半導体素子と前記接続部材との接合を形成する接合部は、
    SnおよびCuからなる金属間化合物とSn合金を含む金属マトリクスとを有し、
    前記金属間化合物は、前記金属マトリクス中に分散し、
    前記金属マトリクスは、CuボールおよびSn単体を含まない
    半導体装置。
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