JP6377945B2 - コンベアベルト用ゴム組成物、及びコンベアベルト - Google Patents

Description

本発明は、コンベアベルト用ゴム組成物、及びコンベアベルトに関する。

鉄鋼、石炭、セメント等の様々な産業分野において、物品の輸送手段としてコンベアベルトを備える輸送装置が多く用いられている。こうした輸送装置には、近年、輸送量の増大や、輸送経路の長距離化等の要求があり、消費電力の削減（省エネルギー化）が強く望まれている。ここで、コンベアベルトは通常、下面カバーゴムと、スチールコード等からなる補強材と、上面カバーゴムとによって構成されるが、これらの中でも下面カバーゴムは、駆動プーリー、従動プーリー、保形ローラー等と接触することから、省エネルギー特性（以下、単に「省エネ性」という。）に特に大きく影響する部材である。

一方で、コンベアベルトは、安定運転や長寿命化の観点から、耐破壊性をはじめとする輸送装置部材としての基本的な機械的特性を具備していることも重要である。

このような背景のもと、特に耐破壊性等の輸送装置部材としての基本的な機械的特性は損なわれることなく、かかる輸送装置の消費電力の削減に寄与することを可能にするコンベアベルトをもたらすべく、下面カバーゴム等のゴム部材に用いられるゴム組成物の改良が求められている（特許文献１）。

特開２０１１−７４３４４号公報

そこで、本発明の目的は、耐破壊性を維持しつつ、高い省エネ性を有するコンベアベルトを得ることが可能なゴム組成物、並びに、耐破壊性を維持しつつ、高い省エネ性を有するコンベアベルトを提供することにある。

本発明のコンベアベルト用ゴム組成物は、ジエン系重合体と、ビスマレイミド化合物とを含有することを特徴とする。このゴム組成物によれば、耐破壊性を損なうことなく、高い省エネ性を有するコンベアベルトを得ることができる。

本発明のコンベアベルト用ゴム組成物は、前記ビスマレイミド化合物の配合量が、ゴム成分１００質量部に対して０．３〜１．５質量部であることが好ましい。この構成によれば、コンベアベルトとしての耐破壊性を十分良好に維持しつつ、かかるコンベアベルトの省エネ性を十分に向上させることができる。

本発明のコンベアベルト用ゴム組成物は、ＩＳＡＦ級カーボンブラック及びＨＡＦ級カーボンブラックをさらに含有し、前記ＩＳＡＦ級カーボンブラックの、前記ＨＡＦ級カーボンブラックに対する配合量の比（ＩＳＡＦ級カーボンブラック配合量／ＨＡＦ級カーボンブラック配合量）が、質量比で２５／７５〜７５／２５であることが好ましい。この構成によれば、得られるコンベアベルトに十分な耐破壊性がもたらされる上、得られるコンベアベルトの省エネ性をより一層向上させることができる。

本発明のコンベアベルト用ゴム組成物は、前記ジエン系重合体として天然ゴム及びブタジエンゴムを含有し、前記天然ゴムの、前記ブタジエンゴムに対する配合量の比（天然ゴム配合量／ブタジエンゴム配合量）が、質量比で３０／７０〜７０／３０であることが好ましい。この構成によれば、コンベアベルトの耐破壊性に加えて、耐摩耗性や耐屈曲亀裂性等の機械特性をも良好に維持することができる。

本発明のコンベアベルト用ゴム組成物においては、前記ビスマレイミド化合物が、下記式（１）又は（２）：

［式中、Ｘは１〜２０の整数であり、Ａは炭素数６〜２４の芳香族基である］で表される化合物であるのが好ましい。この構成によれば、得られるコンベアベルトの省エネ性をより一層向上させることができる。

本発明のコンベアベルトは、前記コンベアベルト用ゴム組成物を用いたことを特徴とする。かかるコンベアベルトは、耐破壊性を維持しつつ、高い省エネ性を有する。

本発明によれば、耐破壊性を維持しつつ、高い省エネ性を有するコンベアベルトを得ることが可能なゴム組成物、並びに、耐破壊性を維持しつつ、高い省エネ性を有するコンベアベルトを提供することができる。

以下に、本発明を、その一実施形態に基づき詳細に例示説明する。
本発明のコンベアベルト用ゴム組成物は、ジエン系重合体と、ビスマレイミド化合物とを含有することを特徴とする。

＜ゴム成分＞
本発明のコンベアベルト用ゴム組成物は、ゴム成分としてジエン系重合体を含有し、これにより、基本的な耐破壊性を維持することができる。なお、本発明において「ジエン系重合体」とは、天然ゴム、及び、合成ゴムのうち構成するモノマー単位中のジエン系モノマー由来の単位の割合が５ｍｏｌ％を超えるもの、を指す。前記ジエン系モノマーとしては、１，３−ブタジエン、イソプレン、１，３−ペンタジエン、２，３−ジメチルブタジエン等が挙げられ、前記ジエン系以外のモノマー（非ジエン系モノマー）としては、エチレン、プロピレン、イソブテン等が挙げられる。また、前記ジエン系重合体としては、具体的には、天然ゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエンゴム等が挙げられ、これらを１種単独で用いてもよいし、２種以上を組み合わせて用いてもよい。本発明のコンベアベルト用ゴム組成物は、コンベアベルトの耐破壊性を良好に保持する観点から、前記ジエン系重合体として少なくとも天然ゴム及びブタジエンゴムを含有するのが好ましく、天然ゴム及びブタジエンゴムのみを含有するのがより好ましい。

また、前記ジエン系重合体として天然ゴム及びブタジエンゴムを含有する場合には、前記天然ゴムの、前記ブタジエンゴムに対する配合量の比（天然ゴム配合量／ブタジエンゴム配合量）が、質量比で３０／７０〜７０／３０であることが好ましく、３５／６５〜６５／３５であることがより好ましく、４０／６０〜６０／４０であることが特に好ましい。前記質量比が３０／７０以上であることにより、耐屈曲亀裂性等の機械特性を良好に維持することができ、また、前記質量比が７０／３０以下であることにより、耐摩耗性等の機械特性を良好に維持することができる。

本発明のコンベアベルト用ゴム組成物は、前記ジエン系重合体の他、ゴム成分として非ジエン系重合体（前記ジエン系重合体以外の重合体）を含有してもよい。なお、本発明のゴム組成物における前記ジエン系重合体の配合量は、前記ジエン系重合体及び非ジエン系重合体の総配合量の５０質量％超であるのが好ましく、８０質量％超であるのがより好ましく、１００質量％であるのが最も好ましい。

＜ビスマレイミド化合物＞
本発明のコンベアベルト用ゴム組成物は、ビスマレイミド化合物を含有する。ここで、前記ビスマレイミド化合物は、下記式（３）：

［式中、Ｒは２価の基である］で表される化合物又はその誘導体である。前記ビスマレイミド化合物は、ゴム組成物中で架橋剤としての機能を発揮することができ、ジエン系重合体を含有するゴム組成物に配合することで、架橋後のゴムにおける架橋密度に影響を及ぼす。そして、かかる影響により、ゴム組成物のロス特性、ひいてはコンベアベルトの省エネ性の向上に寄与することができるものと考えられる。

前記ビスマレイミド化合物としては、特に制限されることなく、目的に応じて適宜選択することができるが、得られるコンベアベルトの省エネ性をより一層向上させる観点から、下記式（１）又は（２）：

［式中、Ｘは１〜２０の整数であり、Ａは炭素数６〜２４の芳香族基である］で表される化合物を好適に用いることができる。

上記式（１）で表されるビスマレイミド化合物としては、具体的には、１，２−ビスマレイミドエタン、１，４−ビスマレイミドブタン、１，６−ビスマレイミドヘキサン、等が挙げられる。また、上記式（２）で表されるビスマレイミド化合物としては、具体的には、Ｎ，Ｎ’−１，２−フェニレンビスマレイミド、Ｎ，Ｎ’−１，３−フェニレンビスマレイミド、Ｎ，Ｎ’−１，４−フェニレンビスマレイミド、Ｎ，Ｎ’−（４，４’−ジフェニルメタン）ビスマレイミド、ビス（３−エチル−５−メチル−４−マレイミドフェニル）メタン等が挙げられる。これらの中でも、Ｎ，Ｎ’−１，３−フェニレンビスマレイミドが特に好ましい。
なお、前記ビスマレイミド化合物としては、これらを１種単独で用いてもよいし、２種以上を組み合わせて用いてもよい。

本発明のコンベアベルト用ゴム組成物におけるビスマレイミド化合物の配合量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ゴム成分１００質量部に対して０．３〜１．５質量部であるのが好ましく、０．５〜１．０質量部であるのがより好ましく、０．６〜０．８質量部であるのが特に好ましい。前記ビスマレイミド化合物の配合量がゴム成分１００質量部に対して０．３質量部以上であることにより、コンベアベルトの省エネ性を十分に向上させることができ、また、１．５質量部以下であることにより、コンベアベルトとしての耐破壊性を十分良好に維持することができる。

＜カーボンブラック＞
本発明のコンベアベルト用ゴム組成物は、上記成分のほか、補強性充填剤としてカーボンブラックを含有することができる。前記カーボンブラックをコンベアベルト用ゴム組成物に含有させることにより、得られるコンベアベルトの耐破壊性を向上させることができる。なお、前記カーボンブラックとしては、例えば、ＳＡＦ−ＨＳ、ＳＡＦ、ＩＳＡＦ−ＨＳ、ＩＳＡＦ、ＩＳＡＦ−ＬＳ、Ｎ２８５、Ｎ３３９、ＨＡＦ−ＨＳ、ＨＡＦ、ＨＡＦ−ＬＳ等の等級のカーボンブラックが挙げられる。これらの中でも、得られるコンベアベルトの耐破壊性を一層向上させる観点から、ＩＳＡＦ級カーボンブラック及びＨＡＦ級カーボンブラックを組み合わせて用いることが好ましい。
なお、ＩＳＡＦ級カーボンブラックとは、窒素吸着比表面積（Ｎ_２ＳＡ）が１００ｍ^２／ｇ以上１２０ｍ^２／ｇ以下の範囲にあるカーボンブラックを指し、ＨＡＦ級カーボンブラックとは、窒素吸着比表面積（Ｎ_２ＳＡ）が７０ｍ^２／ｇ以上１００ｍ^２／ｇ未満の範囲にあるカーボンブラックを指す。

本発明のコンベアベルト用ゴム組成物におけるカーボンブラックの配合量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ジエン系重合体１００質量部に対して１０〜６０質量部であるのが好ましく、２０〜５０質量部であるのがより好ましく、３５〜４５量部であるのが特に好ましい。前記カーボンブラックの配合量がジエン系重合体１００質量部に対して上記範囲内であることにより、得られるコンベアベルトの省エネ性及びゴム組成物の調製時における操作性を悪化させることなく、耐破壊性を良好に維持することができる。

本発明のコンベアベルト用ゴム組成物がＩＳＡＦ級カーボンブラック及びＨＡＦ級カーボンブラックを含有する場合、両カーボンブラックの配合量の比としては、特に制限されることなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ＩＳＡＦ級カーボンブラックのＨＡＦ級カーボンブラックに対する配合量の比（ＩＳＡＦ級カーボンブラック配合量／ＨＡＦ級カーボンブラック配合量）が、質量比で２５／７５〜７５／２５であることが好ましく、２５／７５〜５０／５０であることがより好ましい。前記質量比が２５／７５以上であることにより、得られるコンベアベルトに十分な耐破壊性をもたらすことができ、また、７５／２５以下であることにより、得られるコンベアベルトの省エネ性をより一層向上させることができる。

＜その他の成分＞
本発明のゴム組成物には、さらに、必要に応じて前記成分以外の添加剤等を適宜配合してもよい。かかる添加剤等としては、例えば、硫黄等の加硫剤、加硫促進剤、酸化亜鉛等の加硫促進助剤、リターダー（スコーチ防止剤）、カーボンブラック以外の補強性充填剤、老化防止剤、可塑剤、石油樹脂、ワックス類、酸化防止剤、オイル、滑剤、紫外線吸収剤、分散剤、相溶化剤、均質化剤等が挙げられる。

＜コンベアベルト用ゴム組成物＞
本発明のコンベアベルト用ゴム組成物は、上記各成分を、たとえば、開放混合式の練りロール機、密閉混合式のバンバリーミキサー、ブラベンダー又はニーダー等の混練機を用いて混練りすることにより得ることができる。

＜コンベアベルト＞
本発明のコンベアベルトは、前記コンベアベルト用ゴム組成物を用いたことを特徴とする。一実施形態においては、前記コンベアベルト用ゴム組成物を、コンベアベルトのうち、少なくとも、スチールコード等からなる補強材の下側の、駆動プーリー、従動プーリー、保形ローター等と接触する内周側の表層ゴム（下面カバーゴム）に用いることが省エネ性向上の観点から好ましいが、補強材の上側の、輸送物品と接触する外周側の表層ゴム（上面カバーゴム）に用いることもできる。前記コンベアベルト用ゴム組成物を用いたコンベアベルトは、耐破壊性を維持しつつ、高い省エネ性を有するため、輸送装置の消費電力の削減に寄与することができる。

本発明のコンベアベルトの具体的な製造例としては、上記ゴム組成物からなるシートで補強材を挟み込み、このゴム組成物を加熱圧着して加硫接着することにより、補強材にゴム組成物を接着及び被覆することが挙げられる。これらの場合、加硫条件は適宜選択し得るが、通常１４０〜１８０℃で１０〜８０分の条件とすることが好ましい。

本発明のコンベアベルトを用い、輸送装置を製造することができる。かかる輸送装置は、本発明のコンベアベルトを用いているため、高い省エネ性を有する。なお、本発明のコンベアベルトは、任意の輸送装置に適用可能であるが、特に、例えば積載物の運搬部分の全長が１．０ｋｍ以上の長距離型の輸送装置に好適である。

以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は下記の実施例になんら限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において適宜変更可能である。

１７００ｍｌのバンバリーミキサーを用い、表１に示す配合（単位：質量部）の未加硫ゴム組成物を調製し、更に、かかる未加硫ゴム組成物を１６０℃で１５分間加硫して、加硫ゴム組成物を調製した。かかる加硫ゴム組成物について、耐破壊性及び省エネ性を、以下に示す方法に従って評価した。結果を表１に示す。
なお、表１の「ＩＳＡＦ−ＣＢ」及び「ＨＡＦ−ＣＢ」の欄における括弧内の値は、ＩＳＡＦ級カーボンブラック及びＨＡＦ級カーボンブラックの総配合量を１００質量部としたときの、ＩＳＡＦ級カーボンブラック又はＨＡＦ級カーボンブラックの相対配合量を示す。

（耐破壊性）
ＪＩＳ Ｋ６２５１に準拠して、引張強さＴｂ（ＭＰａ）を測定した。かかる値が大きいほど、耐破壊性に優れることを示す。

（省エネ性）
粘弾性測定試験機として東洋精機株式会社製スペクトロメーターを用い、周波数１０Ｈｚ、測定温度２０℃、歪２．０％で、ｔａｎδ（損失正接）及びＥ’（動的貯蔵弾性率）を測定した。そして、かかる測定値からｔａｎδ／Ｅ’^{（１／３）}を算出し、比較例１のｔａｎδ／Ｅ’^{（１／３）}の算出値を１００として、ロス指数を求めた。かかる値が小さいほど、省エネ性に優れることを示す。

＊１ ブタジエンゴム：ＪＳＲ株式会社製「Ｔ０７００」
＊２ ＩＳＡＦ級カーボンブラック：キャボット社製「Ｎ２２０」
＊３ ＨＡＦ級カーボンブラック：キャボット社製「Ｎ３３０ＴＶ」
＊４ 加硫促進助剤Ａ：ステアリン酸、新日本理化株式会社製「ステアリン酸 ５０Ｓ」
＊５ 加硫促進助剤Ｂ：酸化亜鉛、東邦亜鉛株式会社製「銀嶺ＳＲ」
＊６ 老化防止剤：精工化学株式会社製「ノンフレックスＲＤ」
＊７ 加硫剤：硫黄、日本乾溜工業株式会社製「６０％不溶性硫黄」
＊８ ビスマレイミド化合物Ａ：Ｎ，Ｎ’−１，３−フェニレンビスマレイミド、常州新興華大明化工有限公司製「バルノック ＰＭ」
＊９ ビスマレイミド化合物Ｂ：Ｎ，Ｎ’−（４，４’−ジフェニルメタン）ビスマレイミド、大和化成工業株式会社製「ＢＭＩ−ＲＢ」
＊１０ 加硫促進剤：大内新興化学工業株式会社製「ノクセラーＮＳ−Ｆ」

表１の結果から、ジエン系重合体と、ビスマレイミド化合物とを含有するゴム組成物を用いることにより、耐破壊性を維持しつつ、高い省エネ性を有するコンベアベルトが得られることが分かる。

Claims (5)

1. ジエン系重合体と、ビスマレイミド化合物と、ＩＳＡＦ級カーボンブラック及びＨＡＦ級カーボンブラックとを含有し、
   前記ビスマレイミド化合物は、芳香族基を有し、
   前記ＩＳＡＦ級カーボンブラックの、前記ＨＡＦ級カーボンブラックに対する配合量の比（ＩＳＡＦ級カーボンブラック配合量／ＨＡＦ級カーボンブラック配合量）が、質量比で２５／７５〜５０／５０であることを特徴とするコンベアベルト用ゴム組成物。
2. 前記ビスマレイミド化合物の配合量が、ゴム成分１００質量部に対して０．３〜１．５質量部である、請求項１に記載のコンベアベルト用ゴム組成物。
3. 前記ジエン系重合体として天然ゴム及びブタジエンゴムを含有し、前記天然ゴムの、前記ブタジエンゴムに対する配合量の比（天然ゴム配合量／ブタジエンゴム配合量）が、質量比で３０／７０〜７０／３０である、請求項１又は２に記載のコンベアベルト用ゴム組成物。
4. 前記ビスマレイミド化合物が、下記式（２）：
   

   

   ［式中、Ａは炭素数６〜２４の芳香族基である］で表される化合物である、請求項１〜３のいずれか一項に記載のコンベアベルト用ゴム組成物。
5. 請求項１〜４のいずれか一項に記載のコンベアベルト用ゴム組成物を用いたことを特徴とするコンベアベルト。