JP6377788B1 - 刃物の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】積層する金属板材の枚数よりも、刃部の先端に現れる金属板材の数を多くすることができる、刃物を提供する。
【解決手段】刃物1は、磨耗性の異なる複数種類の金属板材3a、3bが積層され一体化されている。この刃物1の刃部2は、刃部2の板厚方向Yと長手方向Xとを有する断面において、金属板材3a、3bの積層した層のラインが長手方向Xに対し一方側に傾いた、第1積層部4と、一方側とは反対の他方側に傾いた、第2積層部5とが、長手方向Xに沿って交互に並び、それら交互に並ぶ第1積層部4および第2積層部5により、刃部2の先端に、複数種類の金属板材3a、3bが長手方向に並ぶように現れる。
【選択図】 図7

Description

この発明は、複数種類の金属板材が積層され一体化された刃物の製造方法に関するものである。
従来、硬い板と軟らかい板とを多数重ねた刃物があった(例えば、特許文献1参照)。この刃物は、図11に示すように、硬い板11と軟らかい板12とを斜めにずらして交互に重ね、その後に、ハンマーで叩いて延ばすことで、刃物鋼とし、その刃物鋼を研ぐことで、鋭利な刃物を製造するものであった。
特開2011−142985号公報
しかし、前記従来の刃物にあっては、硬い板11と軟らかい板12とを斜めにずらして交互に重ねることから、重ねた板(金属板材)がその数だけ刃先(刃部の先端)に現れることとなり、刃物の長さに応じて多数の板を重ねる必要があった。
この発明は、上記した従来の欠点を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、積層する金属板材の枚数よりも、刃部の先端に現れる金属板材の数を多くすることができる、刃物の製造方法を提供することにある。
この発明に係る刃物の製造方法は、前記目的を達成するために、次の構成からなる。すなわち、
求項に記載の発明に係る刃物の製造方法は、湾曲加工工程と、削り加工工程とを備える。湾曲加工工程は、少なくとも刃部が形成される側において、磨耗性の異なる複数種類の金属板材が積層され一体化された素材に対し、少なくとも刃部が形成される側を、形成される刃部の長手方向に沿って波打つように湾曲させる。そして、削り加工工程は、前記湾曲加工工程よりも後の工程であって、刃部が形成される側を、切削、研削、研磨、あるいは研ぎによって削り取って刃部を形成する。
この刃物の製造方法によると、複数種類の金属板材が積層され一体化された素材を刃部の長手方向に波打つように湾曲させることから、刃部は、その刃部の板厚方向と長手方向とを有する断面において、金属板材の積層した層のラインが長手方向に対し一方側に傾いた、第1積層部と、一方側とは反対の他方側に傾いた、第2積層部とが、長手方向に沿って交互に並ぶこととなる。そして、それら交互に並ぶ第1積層部および第2積層部により、刃部の先端に、複数種類の金属板材が長手方向に並ぶように現れる。
また、請求項に記載の発明に係る刃物の製造方法は、請求項に記載の刃物の製造方法において、前記湾曲加工工程は、波の稜線が、形成される刃部の板厚方向から見て前記長手方向に対して直交するように、前記素材を湾曲させる。
また、請求項に記載の発明に係る刃物の製造方法は、請求項に記載の刃物の製造方法において、前記湾曲加工工程は、波の稜線が、形成される刃部の板厚方向から見て前記長手方向に対して傾斜するように、前記素材を湾曲させる。
また、請求項4に記載の発明に係る刃物の製造方法は、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の刃物の製造方法において、前記複数種類の金属板材は、炭素または/およびクロムの含有率が異なる複数種類の鋼材からなる。
この発明に係る刃物の製造方法によれば、磨耗性の異なる複数種類の金属板材が積層され一体化された素材を波打つように湾曲させることで、一方側に傾いた第1積層部と他方側に傾いた第2積層部とを形成することができ、これら第1積層部と第2積層部とが交互に並ぶことで、素材において積層する金属板材の枚数よりも、刃部の先端に現れる金属板材の数をはるかに多くすることができる。
この発明の一実施の形態の、刃物の素材の斜視図である。 同じく、湾曲加工工程後の刃物の素材の斜視図である。 同じく、湾曲加工工程後の刃物の素材の正面図である。 同じく、湾曲加工工程後の刃物の素材の左側面図である。 同じく、第1削り加工工程後の刃物の素材の斜視図である。 同じく、第2削り加工工程を経た刃物の斜視図である。 同じく、図6におけるA−A線による端面図である。 同じく、プレス金型を模式的に示す斜視図である。 この発明の他の実施の形態の、図3相当図である。 この発明のさらに他の実施の形態の、図4相当図である。 従来の刃物の製造工程における、板を多数重ねた状態の底面図を示す。
以下、この発明に係る刃物の製造方法を実施するための形態を図面に基づいて説明する。
図1〜図8は、本発明の一実施の形態を示す。図中符号1は、包丁とかナイフ等の刃物(詳しくは、刃物の刃体本体部の一部であり、その他は図示省略)を示す(図6参照)。この刃物1は、少なくとも刃部2側において、磨耗性の異なる複数種類の金属板材3、3が積層され一体化されてなる。そして、刃部2は、その刃部2の板厚方向Yと長手方向Xとを有する断面において、金属板材3、3の積層した層のラインが前記長手方向Xに対して一方側に傾いた、第1積層部4と、一方側とは反対の他方側に傾いた、第2積層部5とが、前記長手方向Xに沿って交互に並び(図7参照)、それら交互に並ぶ第1積層部4および第2積層部5により、刃部2の先端(刃先)に、複数種類の金属板材3、3が前記長手方向Xに並ぶように現れる。
そこで、この刃物1の製造方法は、湾曲加工工程と、削り加工工程とを備える。湾曲加工工程は、少なくとも刃部2が形成される側において、磨耗性の異なる複数種類の金属板材3、3が積層され一体化された素材6(図1参照)に対し、少なくとも刃部2が形成される側を、形成される刃部2の長手方向Xに沿って波打つように湾曲させるものである(図2〜図4参照)。そして、削り加工工程は、前記湾曲加工工程よりも後の工程であって、刃部2が形成される側を、切削、研削、研磨、あるいは研ぎによって削り取って刃部2を形成するものである(図5、図6参照)。こうして、この刃物1の製造方法では、湾曲加工工程で、複数種類の金属板材3、3が積層され一体化された素材6を刃部2の長手方向Xに波打つように湾曲させることから、刃部2は、その刃部2の板厚方向Yと長手方向Xとを有する断面において、金属板材3の積層した層のラインが長手方向Xに対し一方側に傾いた、第1積層部4と、一方側とは反対の他方側に傾いた、第2積層部5とが、長手方向Xに沿って交互に並ぶこととなる(図7参照)。そして、それら交互に並ぶ第1積層部4および第2積層部5により、削り加工工程後の刃部2の先端(刃先)に、複数種類の金属板材3、3が長手方向Xに並ぶように現れる。
具体的には、複数種類の金属板材3、3は、炭素または/およびクロムの含有率が異なる複数種類の鋼材(例えば、炭素鋼とかステンレス鋼)からなる。図示実施の形態においては、二種類の金属板材3として、第1金属板材3aと第2金属板材3bとが用いられ、それら第1金属板材3aと第2金属板材3bとが交互に積層されて、層が7層ある素材6が形成されている(図1参照)。ここで、第1金属板材3aと第2金属板材3bには、例えば、ステンレス鋼であるSUS403とSUS440が用いられ、SUS440を用いた第2金属板材3bが、SUS403を用いた第1金属板材3aよりも耐磨耗性を有する。そして、図示実施の形態においては、この積層された素材6で、刃物1(詳しくは、刃物1の刃体本体部)の全体が形成される。
湾曲加工工程では、刃物1の棟7となる側を除き、刃部2が形成される側を、形成される刃部2の長手方向Xに沿って波打つように湾曲させる(図2〜図4参照)。そして、この湾曲加工工程は、波の稜線8が、形成される刃部2の板厚方向Yから見て長手方向Xに対して直交(厳密な意味での直交でなくともよく、略直交であってもよい。)するように、素材6を湾曲させている(図3参照)。この素材6の湾曲は、プレス金型を用いたプレス成形により行うことができる。図8は、そのプレス金型9を模式的に示す斜視図である。プレス金型9は、下型9aと、上型9bとで構成され、それぞれの型9a、9bに、素材6を波打つように湾曲させるための波面9cが形成されている。ここで、素材6の湾曲は、一度に湾曲させるものでもよいが、他に、湾曲の度合いを徐々に高めるように段階的に湾曲させるものでもよく、また、例えば長手方向Xの一端側から他端側に向かって順に湾曲させるものでも構わない。なお、図2および図4において、二点鎖線で示すラインLは、このラインまで、その後の第1削り加工工程により削られることを示す。
削り加工工程は、刃部2が形成される側を、先端ほど薄くなるように傾斜させる第1削り加工工程と(図5参照)、刃部2の先端を鋭利にする第2削り加工工程と(図6参照)を有する。図示実施の形態においては、刃物1は、両刃の刃物であって、第1削り加工工程で、刃部2が形成される側がテーパー状となるよう、その両面が、例えば砥石を用いて削られ(図5参照)、第2削り加工工程で、刃部2の先端を鋭利にするよう、その両面が、例えば砥石を用いて削られる(図6参照)。なお、湾曲加工工程とこの削り加工工程との間には、一般には、焼き入れとか焼き戻し等の熱処理が行われる。また、必要に応じて、湾曲加工工程の前に、焼きなましを行ってもよい。
次に、以上の構成からなる刃物1、および刃物1の製造方法の作用効果について説明する。この刃物1によると、少なくとも刃部2側は、磨耗性の異なる複数種類の金属板材3、3が積層(図示実施の形態においては、二種類の金属板材3a、3bが7層に積層)され一体化されている。そして、刃部2は、金属板材3、3の積層した層のラインが長手方向Xに対し一方側に傾いた、第1積層部4と、他方側に傾いた、第2積層部5とが、刃部2の長手方向Xに沿って交互に並ぶ(図7参照)。このため、磨耗性の異なる複数種類の金属板材3、3が積層され一体化された素材6を、波打つように湾曲させることで、一方側に傾いた第1積層部4と他方側に傾いた第2積層部5とを形成することができる。すなわち、複数種類の金属板材3、3が積層され一体化された素材6を刃部2の長手方向Xに波打つように湾曲させることから、刃部2は、その刃部2の板厚方向Yと長手方向Xとを有する断面において、金属板材3、3の積層した層のラインが長手方向Xに対し一方側に傾いた、第1積層部4と、一方側とは反対の他方側に傾いた、第2積層部5とが、長手方向Xに沿って交互に並ぶこととなる。そして、それら交互に並ぶ第1積層部4および第2積層部5により、刃部2の先端(刃先)に、複数種類の金属板材3、3が長手方向Xに並ぶように現れる。
このように、磨耗性の異なる複数種類の金属板材3、3が積層(図示実施の形態においては、二種類の金属板材3a、3bが7層に積層)され一体化された素材6を波打つように湾曲させることで、一方側に傾いた第1積層部4と他方側に傾いた第2積層部5とを形成することができ、これら第1積層部4と第2積層部5とが交互に並ぶことで、素材6において積層する金属板材3の枚数よりも、刃部2の先端(刃先)に現れる金属板材3の数をはるかに多くすることができる。そして、これら金属板材3、3が、磨耗性の異なる複数種類の金属板材からなることから、削り加工工程(詳しくは、第2削り加工工程)や、その後の刃物1の使用とか研ぎによって、刃部2の先端が、金属板材3の種類に応じて異なる度合いで磨耗し、刃部2の先端には微小の凹凸が形成される。そして、その微小の凹凸が、刃物1の切れを高めることとなる。
また、金属板材3の積層数と湾曲加工工程での湾曲により形成される波のピッチ(隣り合う山と山、または谷と谷との間の距離)を適宜設定することで、刃部2の先端に現れる金属板材3の数、ひいては刃部2の先端に形成される微小の凹凸の数を調整することができる。
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されるわけではなく、その他種々の変更が可能である。例えば、磨耗性の異なる金属板材3、3は、二種類設けられるが、三種類設けられてもよい。金属板材3が三種類設けられた場合には、その三種類として、例えば、ステンレス鋼であるSUS403とSUS410とSUS440が用いられてもよい。これら三種類の金属板材3の積層順序は任意であり、これら三種類の金属板材3を順に積層してもよく、また、例えば、SUS403とSUS410のステンレス鋼板を交互に積層し、続いてSUS403とSUS440のステンレス鋼板を交互に積層してもよい。このように、磨耗性が異なる金属板材3を3種類、あるいはそれ以上用いる場合は、その積層順序を適宜設定することで、製造される刃物1の刃部2の先端(刃先)の磨耗の状態を調整することができ、その磨耗による刃部2の先端の微小の凹凸の形状を所望の形状にすることができる。また、これら金属板材3、3の材料は、各種のステンレス鋼以外に、各種の炭素鋼であってもよく、また、鋼以外の金属、例えばチタン等であってもよい。また、これら金属板材3、3の積層数は、7層に限るものでなく、それより少なくてもよく、多くてもよい。
また、図示実施の形態においては、積層される金属板材3、3は、その全てが同一の板厚となっているが、これら板厚が異なっていてもよい。例えば、外層の金属板材3の板厚を、中間層の金属板材3の板厚よりも厚くし、その厚くした外層の金属板材3として、さびにくい材料を用いたりしてもよい。
また、刃物1(詳しくは、刃物1の刃体本体部)の全体が、磨耗性の異なる金属板材3、3が積層されて形成されなくても、刃部2側のみが、磨耗性の異なる金属板材3、3が積層されて形成され、棟7側は、別に形成されて、これら刃部2側と棟7側が接合されてもよい。
また、湾曲加工工程は、波の稜線8が、形成される刃部2の板厚方向Yから見て、形成される刃部2の長手方向Xに対して直交するように、素材6を湾曲させるが、それ以外に、図9に示すように、波の稜線8が、形成される刃部2の板厚方向Yから見て、長手方向Xに対して傾斜するように、素材6を湾曲させるものであってもよい。これにより、この湾曲加工工程を経て製造される刃物1は、刃部2の先端の磨耗が、前記波の稜線8の傾斜の方向に進むこととなり、その磨耗によって刃部2の先端に形成される微小の凹凸が、左右非対称の形状となる。
また、刃物1は、両刃の刃物でなくても、片刃の刃物であってもよい。この片刃の刃物1の製造にあたっては、図10に示すように、湾曲加工工程の前とか後、あるいは同時に、素材6の刃部2が形成される側を、一方に曲げる。そして、第1削り加工工程では、二点鎖線で示すラインLまで、素材6の両面を削る。
また、刃物1は、包丁とかナイフに限られるものでなく、例えば、鎌などその他の切断刃物であってもよく、さらには、産業用、工業用の切断刃物であってもよい。
1 刃物
2 刃部
3 金属板材
4 第1積層部
5 第2積層部
6 素材
8 波の稜線
X 長手方向
Y 板厚方向

Claims (4)

  1. 少なくとも刃部が形成される側において、磨耗性の異なる複数種類の金属板材が積層され一体化された素材に対し、少なくとも刃部が形成される側を、形成される刃部の長手方向に沿って波打つように湾曲させる、湾曲加工工程と、
    その湾曲加工工程よりも後の工程であって、刃部が形成される側を、切削、研削、研磨、あるいは研ぎによって削り取って刃部を形成する、削り加工工程とを備える、刃物の製造方法。
  2. 前記湾曲加工工程は、波の稜線が、形成される刃部の板厚方向から見て前記長手方向に対して直交するように、前記素材を湾曲させる、請求項1に記載の刃物の製造方法。
  3. 前記湾曲加工工程は、波の稜線が、形成される刃部の板厚方向から見て前記長手方向に対して傾斜するように、前記素材を湾曲させる、請求項1に記載の刃物の製造方法。
  4. 前記複数種類の金属板材は、炭素または/およびクロムの含有率が異なる複数種類の鋼材からなる、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の刃物の製造方法。
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