JP3199679U - 硬質膜からなる小刃を付けた片刃研ぎ刃物 - Google Patents
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Abstract
【課題】基板刃物上に硬質膜を形成して硬度を高めると共に、単純な片刃研ぎのメンテナンスにより切れ味を蘇生可能な、硬質膜からなる小刃を付けた片刃研ぎ刃物を提供する。【解決手段】硬質膜からなる小刃を付けた片刃研ぎ刃物1は、表面と裏面および刃先と峰を備え、表面および裏面の少なくとも一方側に、刃先110を先端とする斜面112を刃先側に有する基板刃物100において、表面および裏面の少なくとも刃先側に硬質膜2(DLC膜)を形成し、斜面の一方側を研削して小刃13を付けた片刃研ぎ刃物であって、基板刃物の刃先側の斜面に沿って一方側を研削し、一方側に形成された硬質膜を除去して刃先側斜面を露出させると共に、斜面が先端方向に延長するように、刃先の硬質膜を研削して、他方側の硬質膜からなる斜面を小刃として形成した。【選択図】図1
Description
本考案は、打ち刃物を処理・加工して形成する、硬質膜からなる小刃を付けた片刃研ぎ刃物に関する。
一般に、包丁やナイフ、鋏のような刃物は、図9のように、刃先110と峰20および表面130と裏面140および切刃50と中子60を有する刀身素型を成型し、峰20から刃先110に向けて鋭利に仕上げてしのぎ114を形成し、刃先110側を研削して小刃113を刃付けして形成する。
刃物の材料としては、鋼、ステンレス鋼、チタン合金やジルコニアなど、様々な種類の金属やセラミックスが用いられているが、鋼は硬度は高いものの耐食性が悪く、他方、ステンレス鋼、チタン合金、ジルコニア等のセラミックスなどは耐食性は良いが硬度が低く摩耗しやすいなど、どの材料にも一長一短がある。
また、硬度が高い鋼製の刃物においても、切れ味は半永久的に持続するものではなく、研ぎのメンテナンスをしてその切れ味を蘇生させる必要がある。例えば包丁の場合、使用後の汚れや水気の拭き取りは毎回事であるが、少なくとも月に一度はしっかりした手入れ(研ぎ)を行う必要がある。包丁においては、峰20から刃先110にかけての断面は、峰20側の平坦な線から曲線を描いて先端(刃先110)が鋭利な刃先110側の直線に接続するが、このように刃先110の近傍において、小刃113を砥石で均一な平面にして刃先110側の断面が直線状となるように砥ぐことにより鋭利な先端(刃先110)を得ることができ、理想的な切れ味を完成させることができる。片刃包丁・両刃包丁での研ぎ方の違いはあるが、いずれも表面130と裏面140を小刃113の斜面112を保ちながら、一定の研ぎ幅に揃える技術が必要で、熟練した職人が作業することで切れ味が保たれる。すなわち、刃物のメンテナンス作業において、砥石に対する刃の角度の安定や、刃の表・裏の両面からの研削における刃の曲線維持等は難しく、刃物の切れ味を維持するためには熟練した技術が必要である。
刃物自体の硬度を高めて、当該刃物の切れ味及びその持続性を高めようとする試みは、種々なされている。例えば、刃物表面に硬質膜を形成して硬度を高める工夫が多数なされているが、中でも、ダイヤモンド状炭素(以下、「DLC」ともいう。)を刃物表面にコーティングして、切れ味を向上させようとする考案も多々公開されている。
特許文献1には、鋼製あるいはプラズマイオン窒化法で表面に金属間化合物を形成する金属素地で作られた刃物にプラズマ−イオン窒化表面処理を行い、素地の硬化から刃物の切れ味持続性を高める方法、更にダイヤモンド状炭素膜(以下、「DLC膜」ともいう。)を施し刃物の切れ味持続性を高める方法、加えて高周波マグネトロンによりテフロン(登録商標)膜を施し刃物の切断特性を変える方法が開示されている。特許文献1によれば、上記窒化処理とDLC膜処理を行った刃物は、刃物の両面に当該表面処理した場合、処理していない刃物と比較して、切れ味及び永続性において共に優れた結果を示した。
また、特許文献2には、アンバランスド・マグネトロン・スパッタ法により、刃物表面に3μm以下程度のDLC膜を形成し、切れ味を改良し、耐摩耗性や耐食性を向上させた刃物が開示されている。特許文献2によれば、例えば、医療用ハサミは医療行為により切刃が摩耗し、切れ味が低下するが、少なくとも切刃の表面にDLC膜を形成することで切刃の摩耗が低減し、医療用ハサミの切れ味の低下が抑制される効果がある。
これらの発明によれば、基本的に、基板刃物(以下、DLC膜などの硬質膜を表面に形成する前の刃物をいう。)に硬質膜を形成することにより刃物の切れ味を向上させており、硬質膜自体の質の向上や硬質膜の形成方法に創意工夫がなされている。しかし、硬質膜を形成して硬度や永切れ性を高めた刃物であっても、上述のように切れ味は半永久的に持続するものではなく、研ぎのメンテナンスをしてその切れ味を蘇生させる必要がある。
そこで本考案は、基板刃物上に硬質膜を形成して硬度を高めると共に、それほど熟練を要さない者であっても比較的単純な片刃研ぎのメンテナンスにより切れ味を蘇生可能な、硬質膜からなる小刃を付けた片刃研ぎ刃物とその製法及びメンテナンス方法を提供する。
本考案に係る硬質膜からなる小刃を付けた片刃研ぎ刃物は、表面と裏面および刃先と峰を備え、該表面および該裏面の少なくとも一方側に、該刃先を先端とする斜面を該刃先側に有する基板刃物において、該表面および該裏面の少なくとも該刃先側に該刃先を覆って硬質膜を形成し、前記基板刃物の斜面上に硬質膜を形成した一方側を研削して、硬質膜からなる小刃を付けた片刃研ぎ刃物であって、前記基板刃物の刃先側の斜面に沿って前記一方側を研削し、該一方側に形成された硬質膜を除去して該基板刃物の刃先側斜面を露出させると共に、該斜面が前記先端方向に延長するように、該基板刃物の刃先を覆った硬質膜を研削して、他方側に形成された硬質膜からなる延長された部分の斜面を小刃として形成したことを特徴とする。
本考案に係る硬質膜からなる小刃を付けた片刃研ぎ刃物は、硬質膜の構造は非晶質であるのが好適である。硬質膜の構造を非晶質で形成すれば、表面が滑らかな基板刃物に、より均質な硬質膜を刃先側に形成することができる。
本考案に係る硬質膜からなる小刃を付けた片刃研ぎ刃物において、硬質膜はダイヤモンド状炭素膜(以下、「DLC膜」ともいう。)とするのが好適である。
本明細書において「DLC膜」は、非晶質炭素からなる、所謂DLC層の他に、このDLC層と基板刃物との密着性を高めるための中間層を含んでもよい。例えば、中間層は、基板刃物側にその構成材料である鋼等とよくなじむCrを多く配し、この中間層上に積層するDLC側にこれとよくなじむ炭素を多く配して、Crと炭素の構成配分を傾斜させた傾斜層とするのが好ましい。基板刃物とDLC膜間に中間層を形成することにより、DLC膜を基板刃物に強固に固着することができ、DLC膜の剥がれ等を防止することができる。
本考案に係る硬質膜からなる小刃を付けた片刃研ぎ刃物は、基板刃物の表面刃先側に硬質膜を形成した刃物の刃先が丸みを帯びていても、当該刃物の表面又は裏面の一方側のみを片刃研ぎし、他方側に形成された硬質膜を当該一方側から研削して、他方側の硬質膜のみからなる小刃を形成し得るので、硬度が高い小刃を鋭利に仕上げることができる。
このような本考案に係る硬質膜からなる小刃を付けた片刃研ぎ刃物では、他方側に形成した硬質膜からなる小刃のみが異なる色彩となって識別可能となり、熟練の職人でなくても作業する小刃の面が視覚で確認しやすく、他方側に形成した小刃だけを手入れすることにより、比較的簡単にメンテナンスを行うことが可能になる。したがって、従来の刃物のように、表面と裏面を小刃の斜面を保ちながら、一定の研ぎ幅に揃える熟練した技術が不要となり、使用により切れ味が低下しても、簡単な片刃研ぎを行うことにより、容易に切れ味を回復させることができる。
さらに、本考案に係る硬質膜からなる小刃を付けた片刃研ぎ刃物において、硬質膜の構造を非晶質で形成すれば、表面が滑らかな基板刃物に、より均質な硬質膜を刃先側に形成することができる。このため、より均質な硬質膜からなる小刃に片刃研ぎを行うことにより、より簡単に早く鋭利な刃先を付けることができ、鋭い切れ味の本考案に係る硬質膜からなる小刃を付けた片刃研ぎ刃物を得ることができる。
特に硬質膜の構造を非晶質であるDLCで形成する場合は、膜形成温度が他の硬質膜に比べて圧倒的に低いので、鋼等を鈍らせることなく基本刃物の特性を変えずに、基本刃物上に硬質膜を形成することができる。
そこで、例として硬質膜の構造を非晶質であるDLCで構成し、下記のような切断回数に対する切断枚数を比較する実験を行ったところ、切断回数が増えたとき、DLC膜のない基板刃物の切断枚数は著しく減少するが、本考案に係るDLC膜からなる小刃を付けた片刃研ぎ刃物は、切断回数が増えても切れ味がほとんど落ちず、略一定の切断枚数を維持することができた。すなわち、硬質膜としてDLC膜を基板刃物に形成すると、高い持続性を得ることができる。
以下、図面を参照しながら本考案に係る硬質膜からなる小刃を付けた片刃研ぎ刃物の実施形態について説明する。なお、以下各図面を通して同一の構成要素には同一の符号を使用するものとする。
図1(a)または図1(b)の右図に示す、本考案に係る硬質膜からなる小刃を付けた片刃研ぎ刃物1は、図9のように表面130と裏面140および刃先110と峰20を備え、図1(a)または図2(a)の左図のように表面130および裏面140の少なくとも一方側30に、刃先110を先端とする斜面112を当該刃先110側に有する基板刃物100において、表面130および裏面140の少なくとも刃先110側に当該刃先110を覆って硬質膜2を形成し、基板刃物100の斜面112上に硬質膜2を形成した一方側30を研削して、硬質膜2からなる小刃13を付けた片刃研ぎ刃物1である。
図1(a)に示す、例えば両刃包丁のような基板刃物100においては、表面130および裏面140の両面に斜面112が形成されており、図1(a)においては、一方側30を表面130側に選んでいるが、裏面140側を一方側とし研削してもよい。一方、図1(b)に示す、例えば片刃包丁のような基板刃物102においては、斜面112は表面130または裏面140の一方にしか存在せず(図では表面130側)、他方側40は峰20から刃先110まで略平坦である。図1(b)では表面130のみに斜面112が存在するので、表面130側を一方側30としている。
そして、本考案に係る硬質膜からなる小刃を付けた片刃研ぎ刃物1は、基板刃物100の刃先110側の斜面112に沿って一方側30を研削し、当該一方側(30側)に形成された硬質膜2を除去して基板刃物100の刃先110側の斜面112を露出させると共に、斜面112が先端110方向に延長するように、基板刃物100の刃先110を覆った硬質膜2を研削して、他方側(40側)に形成された硬質膜2からなる延長された部分の斜面12を小刃13として形成したことを特徴とする。
従来刃物を表す図9においては、表面130の刃先110を先端とする斜面112を小刃113としているが、本考案に係る硬質膜からなる小刃を付けた片刃研ぎ刃物1においては、一方側(30側)を研削することにより当該一方側(30側)に表出する、他方側(40側)に形成された硬質膜2からなる延長された部分の斜面12を小刃13として定義する。
また、本明細書において、「一方側(30側)に形成された硬質膜2」、「他方側(40側)に形成された硬質膜2」と「刃先110を覆った硬質膜2」を便宜上区別しているが、「刃先110を覆った硬質膜2」は、一方側(30側)又は他方側(40側)の双方の刃先110側に形成された硬質膜2を総称するものとする。
基板刃物100の表面130および裏面140の少なくとも刃先110側に硬質膜2を形成するには、各種CVD(Chemical Vapor Deposition)法や各種PVD(Physical Vapor Deposition)法などを用いるが、刃先110側に硬質膜2を形成できればその手段は特に限定されない。
硬質膜2は、その形成方法や形成条件等により硬度は様々であるが、基板刃物100の材料となる鋼、ステンレス鋼、チタン合金などの金属やジルコニアなどのセラミックス等よりはるかに高い硬度とすることができる。硬質膜2としては、基板刃物100より硬い膜であれば、その材料は特に限定されないが、基板刃物100に良く密着して剥がれや割れが生じにくいものが望ましく、より高い硬度の膜であることが好ましい。例えば、ダイヤモンド状炭素膜(DLC膜)などが安価で容易に形成でき、硬質膜2として好適である。本考案に係る硬質膜からなる小刃を付けた片刃研ぎ刃物1においては、硬質膜2の硬度は、基板刃物100の硬度より高いものとする。
基板刃物100の表面130および裏面140の刃先110側に硬質膜2を形成した刃物101、102の刃先10’は、特に形成条件を工夫しなければ、図1(a)、(b)左図のように丸みを帯びることが多く、鋭くは形成されないのが通常である(図3(a)、(b)参照。)。本考案に係る硬質膜からなる小刃を付けた片刃研ぎ刃物1は、刃先10’が丸みを帯びていても、基板刃物100の刃先110側の斜面112に沿って一方側30側から、斜面112が先端110方向に延長するように、基板刃物100の刃先110を覆った硬質膜2を研削して、他方側(40側)に形成された硬質膜2からなる延長された部分の斜面12を小刃13として形成することにより、硬度が高い他方側(40側)に形成された硬質膜2からなる鋭利な刃先10を付けることができる(図3(c)、(d)参照。)。
次に、上記本考案に係る硬質膜からなる小刃を付けた片刃研ぎ刃物1の製造方法について説明する。
本考案に係る硬質膜からなる小刃を付けた片刃研ぎ刃物1の製造方法は、図1(a)に示すように、
(1)表面130と裏面140および刃先110と峰20を備え、表面130および裏面140の少なくとも一方側30に、刃先110を先端とする斜面112を当該刃先110側に有する基板刃物100を準備するステップ
(2)表面130および裏面140の少なくとも刃先110側に、当該刃先110を覆って硬質膜2を形成するステップ
(3)基板刃物100の刃先110側の斜面112に沿って上記一方側30を研削し、当該一方側(30)に形成された硬質膜2を除去して、基板刃物100の刃先110側の斜面112を露出させるステップ
(4)斜面112が先端(110)方向に延長するように、基板刃物100の刃先110を覆った硬質膜2を研削し、他方側(40)に形成された硬質膜2からなる延長された部分の斜面12を小刃13として形成するステップ
を含む。
(1)表面130と裏面140および刃先110と峰20を備え、表面130および裏面140の少なくとも一方側30に、刃先110を先端とする斜面112を当該刃先110側に有する基板刃物100を準備するステップ
(2)表面130および裏面140の少なくとも刃先110側に、当該刃先110を覆って硬質膜2を形成するステップ
(3)基板刃物100の刃先110側の斜面112に沿って上記一方側30を研削し、当該一方側(30)に形成された硬質膜2を除去して、基板刃物100の刃先110側の斜面112を露出させるステップ
(4)斜面112が先端(110)方向に延長するように、基板刃物100の刃先110を覆った硬質膜2を研削し、他方側(40)に形成された硬質膜2からなる延長された部分の斜面12を小刃13として形成するステップ
を含む。
このようにして製造した、本考案に係る硬質膜からなる小刃を付けた片刃研ぎ刃物1のメンテナンス方法は、
(1)硬質膜2からなる小刃13を付けた片刃研ぎ刃物1を準備するステップと、
(2)硬質膜2からなる小刃13を片刃研ぎするステップと、
を含む。
(1)硬質膜2からなる小刃13を付けた片刃研ぎ刃物1を準備するステップと、
(2)硬質膜2からなる小刃13を片刃研ぎするステップと、
を含む。
上記(2)の硬質膜2からなる小刃13を片刃研ぎするステップは、図2に示すように、硬質膜2からなる小刃13を、(a)〜(c)等に示す断面に沿って片刃研ぎするステップである。(a)〜(c)のいずれの断面に沿って片刃研ぎを行っても、使用等により摩耗あるいは破損等した刃先10を研削して、他方側(40)に形成された硬質膜2からなる鋭利なメンテナンス後の刃先11を得ることができる。
上述のように、刃物のメンテナンス作業において、従来の基板刃物100であれば、表面130と裏面140を小刃113の斜面112を保ちながら、一定の研ぎ幅に揃える熟練した技術が必要であるが、本考案に係る硬質膜からなる小刃を付けた片刃研ぎ刃物1であれば、一方側30側に形成した小刃13のみが異なる色彩となって識別可能である(図3(c)、(d)参照。)。一方側30のみを片刃研ぎし、他方側(40側)に形成された硬質膜2を一方側30側から研削して、他方側(40側)の硬質膜2のみからなる小刃13を形成しているからである。このような本考案に係る片刃研ぎ刃物1においては、熟練の職人でなくても作業する小刃の面13が視覚で確認しやすく、一方側30に形成した小刃13だけを手入れすることにより、比較的簡単にメンテナンスを行うことが可能になる。
このような本考案に係る硬質膜からなる小刃を付けた片刃研ぎ刃物において、硬質膜の構造は非晶質とするのが好適である。硬質膜の構造を非晶質で形成すれば、表面が滑らかな基板刃物に、より均質な硬質膜を刃先側に形成することができる。このため、より均質な硬質膜からなる小刃に片刃研ぎを行うことにより、より簡単に早く鋭利な刃先を付けることができる。なお、非晶質の硬質膜としては、DLC膜などが好適である。硬質膜の構造をDLCで形成する場合は、成膜形成温度が他の硬質膜に比べて圧倒的に低いので、鋼等を鈍らせることなく基本刃物の特性を変えずに、基本刃物上に硬質膜を形成することができる。
以下、従来の刃物100、表裏両面の少なくとも刃先側に硬質膜としてDLC膜を形成した刃物101、及び4種類の本考案に係るDLC膜からなる小刃を付けた片刃研ぎ刃物1を用いて、刃物の切れ味試験を行った試験結果を示し、比較検討する。試験方法は共通で、次の通りである。
[試供品]
(1)刃物X、Y:市販のステンレス鋼製の従来の刃物100(両刃包丁)を刃物X(基板刃物)とし、刃物Xに、スパッタ法によりDLC膜2を形成して刃物Yとした。
(2)刃物Z、W:市販のステンレス鋼製の従来の刃物100(片刃包丁)を刃物Z(基板刃物)とし、刃物Xに、スパッタ法によりDLC膜2を形成して刃物Wとした。
(3)刃物A〜D:刃物X(両刃包丁)に、スパッタ法により、条件を変えて4種類の異なる硬度のDLC膜を形成し、上記本考案に係るDLC膜からなる小刃を付けた片刃研ぎ刃物の製造方法によりそれぞれ片刃研ぎして、4種類の異なる硬度のA〜Dの刃物を製造した。試料A〜Dの刃物の硬度は以下の通りであった。
A:26.5GPa
B:23.8GPa
C:20.3GPa
D:8.8GPa
[試験方法]
図10のように、刃先を上向きにして刃物(試供品X、Y、Z、W、A〜D)を固定し、10mm幅の紙の束を重ねて約10Nの荷重をかけながら、
(1)図5、図6においてはスピード約25mm/sで、ストローク約20mmの往復運動を、
(2)図4、図7、図8においてはスピード約30mm/sで、ストローク約40mmの往復運動をさせた。
1ストローク後に完全に切断された紙の枚数を数えた。
[試供品]
(1)刃物X、Y:市販のステンレス鋼製の従来の刃物100(両刃包丁)を刃物X(基板刃物)とし、刃物Xに、スパッタ法によりDLC膜2を形成して刃物Yとした。
(2)刃物Z、W:市販のステンレス鋼製の従来の刃物100(片刃包丁)を刃物Z(基板刃物)とし、刃物Xに、スパッタ法によりDLC膜2を形成して刃物Wとした。
(3)刃物A〜D:刃物X(両刃包丁)に、スパッタ法により、条件を変えて4種類の異なる硬度のDLC膜を形成し、上記本考案に係るDLC膜からなる小刃を付けた片刃研ぎ刃物の製造方法によりそれぞれ片刃研ぎして、4種類の異なる硬度のA〜Dの刃物を製造した。試料A〜Dの刃物の硬度は以下の通りであった。
A:26.5GPa
B:23.8GPa
C:20.3GPa
D:8.8GPa
[試験方法]
図10のように、刃先を上向きにして刃物(試供品X、Y、Z、W、A〜D)を固定し、10mm幅の紙の束を重ねて約10Nの荷重をかけながら、
(1)図5、図6においてはスピード約25mm/sで、ストローク約20mmの往復運動を、
(2)図4、図7、図8においてはスピード約30mm/sで、ストローク約40mmの往復運動をさせた。
1ストローク後に完全に切断された紙の枚数を数えた。
市販のステンレス鋼製の基板刃物(片刃包丁)Zを3本(基板刃物Z1〜Z3)用意して、上記試験方法により刃物の切れ味試験を行った。結果は図7のグラフのようになり、3本の基板刃物Z1〜Z3は、略同じ切れ味を示した。
市販のステンレス鋼製の基板刃物(片刃包丁)Zと、これに特に工夫することなくDLC膜を形成した刃物Wの、切れ味試験を同条件で行った。結果は図8のグラフのようになり、市販の基板刃物(片刃包丁)Z上にDLC膜を形成すると、切れ味は低下することが分かった。
これは、基板刃物Z上にDLC膜を形成すると、基板刃物Zの刃先を覆って丸くDLCが堆積し、DLC膜を形成することにより切れ味が低下するものと考えられる。
市販のステンレス鋼製の基板刃物(両刃包丁)Xと、これに特に工夫することなくDLC膜を形成した刃物Y の、切れ味試験を同条件で行った。結果は図4のグラフのようになり、実施例2の片刃包丁の場合と同様、市販の両刃包丁X上にDLC膜を形成すると、切れ味は劣化した。両刃包丁の場合も片刃包丁の場合と同様、DLC膜を形成することにより刃先が丸みを帯び、切れ味が低下すると考えられる。
市販のステンレス鋼製の基板刃物(両刃包丁)X、および、基板刃物Xに特に工夫することなくDLC膜を形成した刃物Y、および、本考案に係るDLC膜からなる小刃を付けた片刃研ぎ刃物A(基板刃物は上記基板刃物(両刃包丁)X)の、切れ味試験を同条件で行った。
結果は図5のグラフのようになり、実施例3と同様、市販の基板刃物(両刃包丁)X上にDLC膜を形成すると切れ味は劣化するが(刃物Y)、刃物Yに上記本考案に係る片刃研ぎ刃物の製法を用いて片刃研ぎを行うと、切れ味は基板刃物Xより遥かに向上した。
また、切断回数が増えたとき、DLC膜のない基板刃物Xの切断枚数は著しく減少するが、DLC膜を形成した刃物Yおよび本考案に係るDLC膜からなる小刃を付けた片刃研ぎ刃物Aは、切断回数が増えても切れ味があまり低下せず、略一定の切断枚数を維持できることが分かる。
硬度の異なる、本考案に係るDLC膜からなる小刃を付けた片刃研ぎ刃物A〜Dの、切れ味試験を同条件で行った。結果は図6のグラフのようになり、硬度の高い刃物ほど切れ味が良いことが分かった。
以上、本考案に係るDLC膜からなる小刃を付けた片刃研ぎ刃物とその製造方法、および、そのメンテナンス方法について実施形態および実施例を用いて説明したが、本考案は上記実施形態等に限定されるものではない。基板刃物を形成する材料はステンレス鋼製に限定されず、他の材料であってもよく、基板刃物の構造はコア・クラッド構造でも多層構造でもよく、特に限定されない。また、硬質膜はスパッタ法に依らず他の方法により形成してもよく、硬質膜はDLC膜に限らず、基板刃物より硬度が高い材料であれば硬質膜として本考案に使用することができる。
その他、本考案は、その主旨を逸脱しない範囲で当業者の知識に基づき種々の改良、修正、変更を加えた態様で実施できるものである。
本考案に係る硬質膜からなる小刃を付けた片刃研ぎ刃物は、包丁やナイフ、鋏、工業用刃物のような刃を付けた器具一般に利用することが出来る。
1:硬質膜からなる小刃を付けた片刃研ぎ刃物
2:硬質膜(DLC膜)
10、110:刃先(先端)
10’:硬質膜形成後の刃先
11:メンテナンス後の刃先
12:延長された斜面
13:硬質膜からなる小刃
14,114:しのぎ
20:峰
30:一方側
40:他方側
50:切刃
60:中子
100:基板刃物
101、102:硬質膜を形成した刃物
112:斜面
113:小刃
130:表面
140:裏面
2:硬質膜(DLC膜)
10、110:刃先(先端)
10’:硬質膜形成後の刃先
11:メンテナンス後の刃先
12:延長された斜面
13:硬質膜からなる小刃
14,114:しのぎ
20:峰
30:一方側
40:他方側
50:切刃
60:中子
100:基板刃物
101、102:硬質膜を形成した刃物
112:斜面
113:小刃
130:表面
140:裏面
Claims (3)
- 表面と裏面および刃先と峰を備え、該表面および該裏面の少なくとも一方側に、該刃先を先端とする斜面を該刃先側に有する基板刃物において、
該表面および該裏面の少なくとも該刃先側に該刃先を覆って硬質膜を形成し、前記基板刃物の斜面上に硬質膜を形成した一方側を研削して、硬質膜からなる小刃を付けた片刃研ぎ刃物であって、
前記基板刃物の刃先側の斜面に沿って前記一方側を研削し、該一方側に形成された硬質膜を除去して該基板刃物の刃先側斜面を露出させると共に、該斜面が前記先端方向に延長するように、該基板刃物の刃先を覆った硬質膜を研削して、他方側に形成された硬質膜からなる延長された部分の斜面を小刃として形成したことを特徴とする、
硬質膜からなる小刃を付けた片刃研ぎ刃物。 - 硬質膜は非晶質膜である、請求項1に記載の硬質膜からなる小刃を付けた片刃研ぎ刃物。
- 硬質膜はダイヤモンド状炭素膜である、請求項2に記載の硬質膜からなる小刃を付けた片刃研ぎ刃物。
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