以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態に係る衛星電波腕時計1の外観の一例を示す平面図である。同図には、衛星電波腕時計1の外装(時計ケース)である胴内に配置された文字板53と、時刻を示す指針である時針52a、分針52b、秒針52cが示されている。また、胴の3時側の側面には衛星電波腕時計1の使用者が種々の操作を行うための操作部60である竜頭60a、及びプッシュボタン60bが配置されている。
衛星電波腕時計1には、文字板53を覆うようにガラス等の透明材料により形成された風防が胴に取り付けられている。また、風防の反対側においては裏蓋が胴に取り付けられている。本明細書では、以降、衛星電波腕時計1の風防が配置される方向(図1における紙面手前方向)を表側、裏蓋が配置される方向(図1における紙面奥方向)を裏側と呼ぶ。
文字板53の裏側には、太陽電池43が配置され、表側から入光した光により発電がなされる。そのため、文字板53はある程度光線を透過する材質で形成される。太陽電池43と重畳しない領域には、衛星電波を受信するためのパッチアンテナが配置される。パッチアンテナは、表側の面が衛星からの電波を受信する受信面となっている。パッチアンテナの受信面、太陽電池43の受光面、文字板53は、互いに平行に設けられており、いずれも表側を向いている。なお、パッチアンテナに代えて、チップアンテナや逆Fアンテナを採用してもよい。
なお、本明細書では、衛星電波腕時計という用語を、腕時計であって、かつ、GPS(Global Positioning System)衛星などの日付や時刻に関する情報(時刻情報)を送信する衛星から当該衛星信号を受信し、それに含まれる時刻情報に基づき、腕時計内部に保持している時刻の情報である内部時刻を修正する機能を有している腕時計を指すものとして用いる。但し、本発明は衛星電波腕時計に限らず、一般的な標準電波を受信して内部時刻を修正する電波腕時計にも適用してよいし、腕時計ではない小型の時計、例えば懐中時計に適用することもできる。また、衛星電波腕時計は、衛星信号に含まれる測位情報も併せて受信してもよい。なお、衛星電波腕時計が受信する衛星信号を発信する衛星は、GSP衛星以外に運用され、又は将来的に運用が計画されている衛星、例えば、グロナス、ガリレオ、コンパス(北斗)等であってもよい。また、衛星電波腕時計は、衛星信号に含まれる時刻情報以外の情報、例えば測位情報を受信して、測位を行うようにしてもよい。
GPS衛星から送信される衛星電波は、周波数約1.6GHzの搬送波(L1帯の電波)を位相偏位変調により変調した電波である。衛星電波に符号化される信号は、各GPS衛星に固有の擬似乱数(Pseudo Random Number、PRN)と、時刻情報を含む衛星信号とを重畳した信号である。衛星電波腕時計1は、複数の衛星から送信される複数の衛星電波を受信して、いずれの衛星のPRNとの相関が大きいかを判定することにより、受信された複数の衛星電波それぞれが、いずれの衛星から送信されたものであるかを判別する。本明細書では、このような衛星の判別処理を衛星電波の追尾と呼ぶ。衛星信号には時刻情報が含まれ、時刻情報は、週の始まり(日曜日の午前0:00)を起点とした現在時刻を示すTOW(Time Of Week)と、所定の基準時点から数えて現在が第何週かを示す週番号WNと、から構成されている。そのため、電波腕時計1は、場合によって、TOWだけを受信することもあれば、TOWと週番号WNとを併せて受信することもある。また、GPS時刻は、協定世界時に対して閏秒に起因するずれがあるため、GPS衛星は、このずれを補正するための閏秒情報ΔLSも送信している。そのため、電波腕時計1は、GPS衛星から時刻情報だけでなく、この閏秒情報ΔLSも受信する。
図1に示す衛星電波腕時計1の例では、文字板53の周囲に、「OK」の文字である受信成功文字54と、「NG」の文字である受信失敗文字55と、「RX」の文字である受信中文字56とが表されている。受信成功文字54と受信失敗文字55は、例えば秒針52cを用いて、衛星電波腕時計1による受信処理の結果の成否を指し示すインデックスであるが、これらのインデックスを用いて、受信処理の実行に先立って、先の受信処理の結果を指し示す動作を行う場合が考えられる。
例えば、衛星電波腕時計1の受信処理に関する操作として、例えば、プッシュボタン60bを押下することにより前回の受信処理の結果を表示し、さらにプッシュボタン60bを数秒間長押しする操作によって衛星信号の受信処理の実行を指示する場合が例示される。この場合、プッシュボタン60bを押下することにより、例えば秒を刻んでいた秒針52cが一時的に通常の計時動作を離れ、前回受信処理の結果を指し示す。前回受信処理の結果が受信成功である場合、秒針52cは「OK」の文字である受信成功文字54を指し示し、前回受信処理の結果が受信失敗である場合、秒針52cは「NG」の文字である受信失敗文字55を指し示す。これにより、衛星電波腕時計1の使用者は、衛星信号の受信を指示する必要があるか否かを判断することができる。改めて衛星信号の受信を行う必要が無いと判断する場合には、プッシュボタン60bの押下を取り止める。プッシュボタン60bの押下状態が一定期間、例えば2秒間、経過前に解消されると、秒針52cは、その後通常の計時動作に復帰する。一方、プッシュボタン60bの押下状態が一定期間保たれると、衛星電波腕時計1は衛星信号の受信処理を実行する。受信処理の実行中、例えば秒針52cは、「RX」の文字である受信中文字56を指し示す。これにより、衛星電波腕時計1の使用者は、衛星電波腕時計1において受信処理が実行中であることを確認することができる。さらに、衛星信号の受信処理が終了した後、例えば秒針52cは、受信成功文字54又は受信失敗文字55を指し示す。これにより、衛星電波腕時計1の使用者は、受信処理の成否を確認することができる。
以上の前回受信処理の結果の表示は、衛星信号の受信処理の実行に先立ってなされる動作の一例であるが、衛星信号の受信処理を実行する前に行われる動作は、これに限られない。かかる動作の例として、発電量モニタ、都市表示、サマータイム表示、電池残量表示、受信状態モニタ等が挙げられる。
発電量モニタは、太陽電池43により生成された電流量を示すものであり、例えば、秒針52cや副針等により電流量(発電レベル)を示すことにより表示される。衛星信号の受信には、後述する高周波回路21やデコード回路22を作動させる必要があり、一時的に大電流が必要となる。そのため、特に電源電圧が低下している場合等、電池が消耗している場合には、発電量の多い状態の方が受信には有利となる。さらに、一般に、衛星電波の受信感度は、屋内よりも遮蔽物の少ない屋外の方が高くなるが、ユーザが発電量モニタを見て、発電量の大きい、明るい環境を選択した場合、その環境は日中の屋外である可能性が高くなるから、発電量モニタには、ユーザに対し、衛星電波腕時計1をより明るい環境に移動させるよう促すことで、衛星信号の受信処理を成功させやすくするという副次的効果が期待できる。
都市表示は、現在設定されているタイムゾーンを示すものである。この表示は、文字板14の外周表面又はベゼル表面に都市名を並べて記載し、秒針52c等により都市名を指し示すことで行うことができる。サマータイム表示は、現在のサマータイム設定の有無を示すものであり、例えば設定されているタイムゾーン、或いは、衛星信号の測位情報等から得られる衛星電波腕時計1の現在位置において、サマータイムが実施されているか否かを秒針52c等により指し示すことにより行うことができる。電池残量は、現在の電池の残量を、例えば、電源電圧を検出することにより示すものであり、後述する二次電池40の電池残量を、秒針52c等により指し示すことにより行うことができる。さらに、受信状態モニタは、衛星電波の受信状態の良否を示すものであり、例えば3段階の受信レベル(良好、普通、不良)を秒針52c等により指し示して表示することにより行うことができる。
なお、衛星電波腕時計1に対して衛星信号の受信処理の実行を指示する方法は上記に限られない。例えば、プッシュボタン60bを一度押下することによって前回受信処理の結果を表示し、プッシュボタン60bを連続して二度押下することによって受信処理を実行することとしてもよい。或いは、プッシュボタン60b以外を用いた操作、例えば、竜頭60aの操作によって行ってもよいし、衛星電波腕時計にタッチセンサーを設けて当該タッチセンサーの操作によって行ってもよい。その他、光又は磁気を用いた方法により衛星信号の受信処理を指示することとしてもよい。また、受信処理の成功、失敗、及び受信中であることを示す方法は、上記に限られない。例えば、受信処理に関する情報を示す副針を設けて、受信処理の成功、失敗、及び受信中であることを指し示すこととしてもよい。また、アラームを鳴らしたり、振動部材を振動させたり、発光部材を発光させたりすることにより、受信処理の成功、失敗、及び受信中であることを示すこととしてもよい。当然ながら、上記の方法を組み合わせてもよい。いずれの場合であっても、衛星信号の受信処理を開始する前に電力消費が発生し、衛星信号の受信処理を終了した後にも電力消費が発生する場合がある。
図1に示した衛星電波腕時計1のデザインは一例である。ここで示したもの以外にも、例えば、胴を丸型でなく角型にしてもよいし、竜頭60aやプッシュボタン60bの有無、数、配置は任意である。また、本実施形態では、指針を時針52a、分針52b、秒針52cの3本としているが、これに限定されず、秒針52cを省略しても、あるいは、曜日、タイムゾーンやサマータイムの有無、電波の受信状態や電池の残量、各種の表示を行う指針や、日付表示等を追加したりしてもよい。
詳細は後程説明するが、衛星電波腕時計1の胴の内部には、指針を駆動するための駆動機構50、太陽電池43で発電された電力を蓄積する二次電池40、衛星電波腕時計1の動作制御のための制御回路30、受信した衛星信号を処理する受信回路20などが収容されている。二次電池40は、衛星電波腕時計1に内蔵される電源である。
図2は、電波腕時計1の内部構成を示す構成ブロック図である。同図に示されるように、電波腕時計1は、アンテナ10と、受信回路20と、制御回路30と、二次電池40と、電源電圧測定部41と、スイッチ42と、太陽電池43と、駆動機構50と、時刻表示部51と、操作部60と、を含んで構成される。
アンテナ10は、時刻情報を含んだ電波として、衛星から送信される衛星電波を受信する。特に本実施形態では、アンテナ10は、GPS衛星から送信される衛星電波を受信するパッチアンテナである。
受信回路20は、アンテナ10によって受信された衛星電波を復号して、復号の結果得られる衛星信号の内容を示すビット列(受信データ)を出力する。具体的に、受信回路20は、高周波回路(RF回路)21及びデコード回路22を含んで構成されている。
高周波回路21は、高周波数で動作する集積回路であって、アンテナ10が受信したアナログ信号に対して増幅、検波を行って、ベースバンド信号に変換する。デコード回路22は、ベースバンド処理を行う集積回路であって、高周波回路21が出力するベースバンド信号を復号してGPS衛星から受信したデータの内容を示すビット列を生成し、制御回路30に対して出力する。
制御回路30は、マイクロコンピュータ等の情報処理装置であって、演算部31と、ROM(Read Only Memory)32と、RAM(Random Access Memory)33と、RTC(Real Time Clock)34と、モータ駆動回路35と、を含んで構成される。
演算部31は、ROM32に格納されたプログラムに従って各種の情報処理を行う。本実施形態において演算部31が実行する処理の詳細については、後述する。RAM33は、演算部31のワークメモリとして機能し、演算部31の処理対象となるデータが書き込まれる。特に本実施形態では、受信回路20によって受信された衛星信号の内容を表すビット列(受信データ)が、RAM33内のバッファ領域に順次書き込まれる。RTC34は、電波腕時計1内部での計時に使用されるクロック信号を供給する。本実施形態に係る電波腕時計1では、演算部31が、RTC34から供給される信号によって計時された内部時刻を、受信回路20によって受信された衛星信号に基づいて修正して、時刻表示部51に表示すべき時刻(表示時刻)を決定する。さらに、モータ駆動回路35が、この決定された表示時刻に応じて、後述する駆動機構50に含まれるモータを駆動する駆動信号を出力する。これにより、制御回路30によって生成された表示時刻が時刻表示部51に表示される。
二次電池40は、リチウムイオン電池等であって、太陽電池43によって発電された電力を蓄積する。そして、蓄積された電力を、受信回路20や制御回路30に対して供給する。電源電圧検出部41は、例えば抵抗器等を含んで構成される。制御回路30は、二次電池40から電源電圧測定部41に流れる電流を計測するなどの方法で、二次電池40の電圧(以下、電源電圧という)を測定する。測定された電源電圧の値は、制御回路30に送られ、後述する電源電圧の低下を警告する表示の制御に用いられる。
二次電池40から受信回路20への電力供給路の途中にはスイッチ42が設けられており、このスイッチ42のオン/オフは制御回路30が出力する制御信号によって切り替えられる。制御回路30がスイッチ42のオン/オフを切り替えることで、受信回路20の動作タイミングが制御される。受信回路20は、スイッチ42を介して二次電池40から電力が供給されている間だけ動作し、その間にアンテナ10が受信した衛星電波の復号を行う。
太陽電池43は、文字板53の裏側に配置されており、電波腕時計1に対して照射される太陽光などの外光によって発電し、発電した電力を二次電池40に供給する。
駆動機構50は、前述したモータ駆動回路35から出力される駆動信号に応じて動作するステップモータと、輪列と、を含んで構成され、ステップモータの回転を輪列が伝達することによって、指針52を回転させる。時刻表示部51は、指針52及び文字板53によって構成される。指針52は、時針52a、分針52b、及び秒針52cからなり、これらの指針52が文字板53上を回転することによって、現在時刻が表示される。
操作部60は、竜頭60aやプッシュボタン60b等であって、電波腕時計1の使用者による操作を受け付けて、その操作内容を制御回路30に対して出力する。制御回路30は、操作部60が受け付けた操作入力の内容に応じて各種の処理を実行する。特に本実施形態では、制御回路30は、使用者による操作部60に対する操作入力に応じて、衛星信号の受信処理を行う。
以下、本実施形態において制御回路30の演算部31が実行する処理の具体例について説明する。図3に示すように、演算部31は、ROM32に格納されたプログラムを実行することにより、機能的に、衛星信号取得部31aと、時刻修正部31bと、警告表示部31cと、制限部31dと、を実現する。
衛星信号受信部31aは、使用者の操作部60に対する指示操作に応じて衛星信号の受信処理を行う。具体的に、衛星信号受信部31aは、プッシュボタン60bが一定期間長押しされた場合に、衛星信号に含まれる時刻情報のデータを取得する受信処理を行う。なお、衛星信号受信部31aは、定期的に時刻情報の取得処理を実行してもよい。また、電波腕時計1は、自身の電波受信環境(信号強度等)に応じて、衛星信号の受信タイミングを決定してもよい。
時刻修正部31bは、衛星信号受信部31aがGPS衛星から受信した情報を用いて、電波腕時計1の内部で計時されている内部時刻の修正を行う。
警告表示部31cは、電源電圧が低下した場合に、そのことを使用者に警告する警告表示を行う。具体的に、警告表示部31cは、定期的に電源電圧測定部41により電源電圧を測定し、その測定結果が第1の閾値Vth1を下回るときに警告表示を行う。また、警告表示部31cによる警告表示がなされている場合には、重負荷となる動作(すなわち、電力消費量の大きい動作)は禁止される。衛星信号受信部31aによる衛星信号の受信処理は、警告表示がなされている場合に禁止される重負荷となる動作の一例である。警告表示部31cは、例えば時刻表示用の指針52を変則運針させたり、状態表示用の副針を用いて表示したりするなど、各種の方法で警告表示を行うことができる。以下では一例として、警告表示部31cは、秒針52cを2秒運針(秒針52cを2秒毎に2秒分回転させる運針)させることにより電源電圧低下の警告表示を行うこととする。このような警告表示を行うことにより、二次電池40の充電が必要な場合に、電波腕時計1はそのことを使用者に知らせることができる。
制限部31dは、衛星信号受信部31aにより受信処理が開始される前に、警告表示部31cによる警告表示を制限する。制限部31dは、少なくとも、電源電圧の低下を伴う動作(第1の動作)の開始時より前に警告表示を制限する。具体的に、制限部31dは、操作部60が操作され受信処理の指示が行われた時から、警告表示部31cによる警告表示を制限する。すなわち、制限部31dは、プッシュボタン60bが押下された時から警告表示を制限する。これにより、電波の受信処理の前処理により電圧低下が起こる場合であっても、不要な警告表示を抑制することができる。また、同時に、この警告表示の抑制により、電池残量は実際には衛星信号の受信処理を行うに足るものであるにもかかわらず、受信処理に付随して実行される前処理等により生じる一時的な電圧の低下に起因して警告表示を行い、受信処理が禁止されてしまう事態が回避される。この結果、十分な電池残量があるにも関わらずに、衛星信号の受信処理が禁止されて使用者の利便性が損なわれる可能性が低減される。
なお、制限部31dが警告表示の制限を開始するタイミングは上記の場合に限られない。制限部31dは、衛星電波を受信するための受信回路20を起動する動作、及び衛星電波を追尾する動作のうち少なくともいずれかを行う前に警告表示を制限してもよい。衛星電波の追尾等を目的として受信回路20を起動すると電源電圧の低下が起こるため、その前に制限部31dにより警告表示の制限を開始することで、不要な警告表示を抑制することができる。
また、操作部60を操作して受信処理の指示を行った後に、前回受信処理の結果を表示する場合、制限部31dは、前回受信処理の結果を表示する前に、警告表示部31cによる警告表示を制限してもよい。具体的に、制限部31dは、前回受信処理の結果を表示するため指針52を運針する前に、警告表示を制限してもよい。秒針52c等の指針52の運針によって電源電圧の低下が起こるため、運針を行う前に制限部31dにより警告表示の制限を開始することで、不要な警告表示を抑制することができる。
制限部31dは、電源電圧測定部41から取得される電源電圧の値に応じて、警告表示を制限するか否かを判定してもよい。制限部31dは、電源電圧の低下に関する警告の表示を制限するが、衛星信号の受信処理が続行出来なくなるほどに電源電圧が低下した場合(電源電圧が、後述する第2の閾値Vth2を下回った場合)、警告表示の制限を解除してもよい。そのような場合、衛星電波腕時計1は、衛星信号の受信処理を中断して、通常の計時動作に復帰してよい。
制限部31dは、衛星信号受信部31aにより衛星信号の受信処理を開始する前から一定期間にわたって、警告表示を制限する。ここで、警告表示を制限する一定期間は、受信処理が終了し、電源電圧が第1の閾値Vth1以上に回復するまでの期間であることが望ましい。制限部31dは、衛星信号受信部31aにより衛星信号の受信処理を開始する時に電源電圧が第1の閾値Vth1未満である場合、警告表示を制限する一定期間を延長してもよい。
図4は、プッシュボタン60b(図中で「PB」と表記)、受信回路20、及び指針52の動作を時間順に示す図である。また、図5は、受信処理に伴う電源電圧の変化を示す図である。図4及び5において、横軸は時間を表す。また、図5の縦軸は電源電圧を表す。
図4及び5に示す例では、時刻t0においてプッシュボタン60bが押下されると、指針52が動き、受信成功文字54又は受信失敗文字55を指し示すことにより、前回受信処理の成否を表示する。図4及び5に示す例では、指針52が動くタイミングは、プッシュボタン60bが押下された直後である。もっとも、指針52が動くタイミングは、プッシュボタン60bが押下された後、一定期間経過後であってもよい。
指針52が動くことにより、時刻t0から電源電圧の降下が始まる。図5に示す例では、時刻tcにおいて電源電圧が第1の閾値Vth1に達し、その後第1の閾値Vth1を下回る。ここで、仮に制限部31dの働きが無い場合、電源電圧が第1の閾値Vth1を下回ったことを検知した警告表示部31cは、電源電圧の低下に関する警告を表示することとなる。しかし、制限部31dは、指針52が動く前に警告表示を制限する。そのため、衛星電波腕時計1の使用者は、不要な警告表示に煩わされることはなく、指針52を動かすことによる一時的な電源電圧の低下により、受信処理自体が禁止されることもない。
制限部31dは、時刻t0からtcまでの間に、警告表示を制限することとしてもよい。すなわち、制限部31dは、電源電圧が第1の閾値Vth1未満となる前に、警告表示を制限することとしてもよい。例えば、制限部31dは、電源電圧測定部41により測定された電源電圧の値が、第1の閾値Vth1に所定の値を加えた値以下となった場合に、警告表示を制限することとしてもよい。
指針52による前回受信処理結果の表示は、指針52が受信成功文字54又は受信失敗文字55を指し続けることにより行われる。電源電圧は、運針中に降下するものの、指針52の位置が固定された後は回復に転じる。図5の例では、電源電圧は、時刻tc後に第1の閾値Vth1を下回るが、時刻t1の前に第1の閾値Vth1を上回る程度に回復している。このように、電源電圧が第1の閾値Vth1を上回った場合であっても、制限部31dは、警告表示の制限を継続してよい。
衛星電波腕時計1の使用者が、プッシュボタン60bの長押しを続けると、時刻t1に受信回路20が起動する。時刻t1は、時刻t2よりも前の時刻である。ここで、時刻t2は、プッシュボタン60bが一定期間長押しされることにより、受信処理の実行が確定する時刻である。受信回路20は、衛星電波の追尾等を目的として、衛星信号の受信処理の実行に先立って起動する。このように、受信処理の実行に先立って受信回路20を起動し、衛星電波の追尾等をすることで、速やかに受信処理を開始することができる。その結果、受信処理に要する全体の時間を短縮することができる。
電源電圧は、受信回路20が起動した時刻t1から降下し、第1の閾値Vth1を下回る。その後、プッシュボタン60bが一定期間長押しされたことにより、時刻t2から受信処理の実行が開始される。受信回路20が衛星信号の受信処理を行うことにより、時刻t2からt3までの間、電源電圧が降下し続ける。また、指針52は、受信処理を行うことが確定した時刻t2において、受信中文字55を指し示す位置に回転する。この際、運針による電源電圧の降下が起こる。なお、前述のTOW、週番号WN、及び閏秒情報ΔLS等、必要とする情報の送信されるタイミングが既知である場合には、時刻t2を係るタイミングに設定してもよい。
受信処理を行う期間(図5において、時刻t2からt3までの期間)の長さは、時刻情報に含まれるTOW又は週番号WNを取得するために必要とされる時間に応じて変化する。ここで、TOWは6秒ごとに1増加する数値であり、TOWを取得するために必要とされる期間は、衛星電波の受信状態が良好であれば6秒間程度である。また、週番号WNは30秒間隔で送信される情報であるから、週番号WNを取得するために必要とされる期間は、衛星電波の受信状態が良好であれば30秒間程度である。
受信処理を行う期間が長引くと、受信回路20により継続して電力が消費され、電源電圧が第2の閾値Vth2を下回る場合がある。そのような場合、制限部31dは、警告表示の制限を解除する。電源電圧が第2の閾値Vth2を下回った場合、受信処理を継続することが困難となるから、衛星電波腕時計1は、受信処理を中断して通常の計時動作に復帰してよい。その場合、警告表示部31cにより電源電圧の低下に関する警告表示を行ってもよい。
時刻t3において、受信処理が終了すると、受信回路20は停止する。また、指針52は、受信成功文字54又は受信失敗文字55を指し示すことで受信処理の成否を表示する。ここで、電源電圧は、運針により降下する。指針52は、受信処理の成否の表示を一定期間行った後、時刻t4において通常の計時動作に復帰する。電源電圧は、指針52が通常の計時動作に復帰する際にも降下し得る。制限部31dは、少なくとも、衛星電波受信部31aによる受信処理の終了後であって、電源電圧の低下を伴う動作(第2の動作)の終了時より後まで、警告表示を制限する。ここで、受信処理の終了後における電源電圧の低下を伴う動作とは、指針52により受信処理の成否を表示する動作、計時動作への復帰動作等である。電源電圧は、受信処理終了後に行われる電源電圧の低下を伴う動作を行った後に最も低下すると考えられる。そのため、受信処理終了後に行われる電源電圧の低下を伴う動作の終了時より後まで警告表示を制限することで、電源電圧が回復に転じるまで警告表示を制限することができ、受信処理終了後においても不要な警告表示を抑制することができる。
制限部31dは、受信処理が開始される前から一定期間にわたって、警告表示を制限する。具体的に、制限部31dは、プッシュボタン60bが押下された時から、数分間にわたって、警告表示を制限する。警告表示を制限する期間は予め定められていてもよいし、実行される受信処理の内容に応じて変更することとしてもよい。また、制限部31dは、受信処理を開始する時、電源電圧が第1の閾値Vth1未満である場合に、警告表示を制限する一定期間を延長してもよい。図4及び5の例では、受信処理が開始される時刻t2の時に、電源電圧が第1の閾値Vth1未満となっている。そのため、制限部31dは、警告表示を制限する期間を延長することとしてもよい。このような場合に警告表示を制限する期間を延長することにより、電源電圧の回復に比較的時間を要する場合であっても、不要な警告表示が抑制される。
図6は、プッシュボタン60bの操作が行われてから、受信処理が実行されるまでの間に行われる警告表示の制限処理を示すフロー図である。また、図7は、受信処理の終了前後における警告表示の制限処理を示すフロー図である。
衛星電波腕時計1の使用者によりプッシュボタン60bが押下されると(S1)、制限部31dは、警告表示部31cによる警告表示を制限する(S2)。ここで、プッシュボタン60bが押下されなければ(S1)、受信処理による電源電圧の一時的な低下は起こらないため、フローは終了する。
次に、受信処理の実行に先立って、受信回路20が起動される(S3)。そして、プッシュボタン60bの押下が一定期間保たれると(S4)、電源電圧測定部41により測定された電源電圧が第1の閾値Vth1未満であるか否かが判定される(S5)。ここで、電源電圧が第1の閾値Vth1未満であると判定された場合、警告表示を制限する期間を延長する予約が行われ(S6)、衛星信号受信部31aによる衛星信号の受信処理が実行される(S7)。一方、電源電圧が第1の閾値Vth1未満でないと判定された場合、警告表示を制限する期間を延長する予約は行われずに、衛星信号の受信処理が実行される(S7)。
プッシュボタン60bの押下が一定期間保たれず、長押しが解除された場合(S4)、長押しが解除されてからさらに一定期間経過したか否かが判定される(S8)。一定期間経過前であれば、電源電圧が第1の閾値Vth1未満であるか否かが判定される(S9)。電源電圧が第1の閾値Vth1未満である場合、電源電圧の回復を待つ。電源電圧が第1の閾値Vth1未満でない場合、制限部31dは、警告表示の制限を解除する(S10)。また、長押しが解除されてから一定期間経過した場合(S8にてYESの場合)にも、制限部31dは、警告表示の制限を解除する(S10)。なお、プッシュボタン60bの長押しが一定期間経過前に解除された場合、衛星電波腕時計1は通常の計時動作に復帰してよい。
受信処理が実行されている間、電源電圧が第2の閾値Vth2未満であるか否かが判定される(S11)。ここで、電源電圧が第2の閾値Vth2未満であると判定された場合、受信処理が中断される(S12)。受信処理が中断された場合、警告表示の制限が解除され(S16)、通常の計時動作に復帰する。一方、受信処理が実行されている間、電源電圧が第2の閾値Vth2未満とならない場合であって、受信処理が終了した場合(S13)、一定期間を経過するまで警告表示の制限状態が保たれる(S14)。警告表示を制限する一定期間が経過した場合(S14)、延長期間が経過するまで警告表示の制限状態が保たれる(S15)。延長期間は、延長予約(S6)が行われていれば、例えば警告表示を制限する一定期間と同じ長さの期間と設定される。一方、延長予約が行われていなければ、延長期間は0である。その後、警告表示の制限が解除され(S16)、通常の計時動作に復帰する。なお、受信処理の終了後に一定期間経過したか否か判定する際(S14)に、電源電圧が第1の閾値Vth1以上であるか否かを併せて判定することとしてもよい。一定期間の経過を待つ間に、太陽電池43により発電が行われ、電源電圧が第1の閾値Vth1以上に回復する場合があるからである。電源電圧が第1の閾値Vth1以上であれば、一定期間経過前であっても、警告表示の制限を解除し、通常の計時動作に復帰することとしてもよい。また、延長期間が経過した否かを判定する際(S15)にも、電源電圧が第1の閾値Vth1以上であるか否かを併せて判定し、電源電圧が第1の閾値Vth1以上であれば、延長期間経過前であっても警告表示の制限を解除し、通常の計時動作に復帰することとしてもよい。
[第2の実施形態]
図8及び9は、本発明の第2の実施形態に係る衛星電波腕時計1において行われる、警告表示の制限処理を示すフロー図である。第2の実施形態に係る衛星電波腕時計1の構成は第1の実施形態に係る衛星電波腕時計1と同じであるが、衛星信号の受信処理を指示する方法が異なり、衛星信号の受信処理を開始する前に行う動作が異なる。本実施形態に係る衛星電波腕時計1では、第1プッシュボタン(図1において2時方向に設けられるプッシュボタン60b)を押下することで、通常計時表示から発電量モニタ表示に移行する。その後、一定期間(例えば10秒間)操作が無いと、通常計時表示に復帰する。また、通常計時表示中、又は発電量モニタ表示中に、第2プッシュボタン(図1において4時方向に設けられるプッシュボタン60b)が押下されると、受信モニタ表示に移行する。受信モニタ表示中にさらに第2プッシュボタンが押下されると、衛星信号の受信処理が実行される。
以下、図8のフロー図を参照して、通常計時表示中に第2プッシュボタンが押下された場合に行われる処理を説明する。衛星電波腕時計1は、はじめ、通常計時表示を行っている(S20)。そこで、第1プッシュボタンが押下されず(S21)、第2プッシュボタンが押下されると(S22)、制限部31dにより、警告表示が制限される(S23)。このように、プッシュボタン60bの操作が行われた直後に警告表示を制限することで、電池残量が許す範囲で、可能な限り衛星信号の受信処理を実行することができる。なお、警告表示の制限中であっても、電源電圧がVth2を下回る場合には、強制的に通常計時表示に復帰し、警告表示を行い、衛星信号の受信処理を禁止することとしてもよい。
その後、受信モニタ表示が行われる(S24)。受信モニタ表示は、前述したように、パッチアンテナ等による衛星電波の受信状態の良好性を秒針52c等により指し示すことにより行うことができる。受信モニタ表示が行われている間、第2プッシュボタンが押下されたか否かが判断される(S25)。第2プッシュボタンが押下されると、受信処理が実行される(S26)。受信処理が実行されると、受信処理の開始から一定期間(例えば、120秒間)経過したか否かが判断される(S27)。一定期間経過したと判断された場合、警告表示の制限が解除され(S28)、衛星電波腕時計1は通常計時表示に復帰する(S29)。ここで、第1の実施形態に係る衛星電波腕時計1と同様に、受信処理の実行(S26)直前に電源電圧を測定し、Vth1を下回るようであれば警告表示の制限期間を延長することとしてもよい。なお、受信処理の実行後に一定期間経過したか否か判定する際(S27)に、電源電圧が第1の閾値Vth1以上であるか否かを併せて判定し、電源電圧が第1の閾値Vth1以上であれば、一定期間経過前であっても、警告表示の制限を解除し、通常の計時動作に復帰することとしてもよい。
受信モニタ表示後に第2プッシュボタンが押下されない場合、一定期間(例えば、10秒間)経過したか否かが判断される(S30)。一定期間経過した場合、警告表示の制限が解除され(S28)、衛星電波腕時計1は通常計時表示に復帰する(S29)。なお、一定期間経過したか否か判定する際(S30)に、電源電圧が第1の閾値Vth1以上であるか否かを併せて判定し、電源電圧が第1の閾値Vth1以上であれば、一定期間経過前であっても、警告表示の制限を解除し、通常の計時動作に復帰することとしてもよい。
図9は、図8示すフロー図において、通常計時表示中に第1プッシュボタンが押下された場合(S21)に行われる処理を示す。第1プッシュボタンが押下されると、制限部31dにより、警告表示が制限される(S31)。このように、プッシュボタン60bの操作が行われた直後に警告表示を制限することで、電池残量が許す範囲で、可能な限り衛星信号の受信処理を実行することができる。なお、警告表示の制限中であっても、電源電圧がVth2を下回る場合には、強制的に通常計時表示に復帰し、警告表示を行い、衛星信号の受信処理を禁止することとしてもよい。
その後、発電量モニタ表示が行われる(S32)。発電量モニタ表示は、前述したように、太陽電池43により生成された電流量を、秒針52c等により指し示すことにより行うことができる。発電量モニタ表示が行われている間、第1プッシュボタンが押下されず(S33)、第2プッシュボタンが押下されると(S34)、受信モニタ表示が行われる(S24)。以降の処理は図8に示したものであり、前述の通りである。
発電量モニタ表示が行われている間、第1プッシュボタン及び第2プッシュボタンの両方が押下されず、一定期間(例えば、10秒間)経過すると、警告表示の制限が解除される(S36)。衛星電波腕時計1は、その後、通常計時表示に復帰する(S37)。
発電量モニタ表示が行われている間、第1プッシュボタンが押下されると(S33)、一定期間の経過を待たずに警告表示の制限が解除される(S36)。その後、通常計時表示に復帰する(S37)。
なお、第1プッシュボタンが押下されず(S21)、第2プッシュボタンが押下された場合であって(S22)、警告表示が制限され(S23)、受信モニタ表示がされた後に(S24)、第1プッシュボタンが押下された場合、図9に示すフローチャートの発電量モニタ表示(S32)以降の処理を行うこととしてもよい。すなわち、第2プッシュボタンが押下されて受信モニタが表示された後に第1プッシュボタンが押下された場合、受信モニタ表示から発電量モニタ表示に移行することとしてもよい。そのような構成とする場合、第2プッシュボタンを押下した後に第1プッシュボタンを誤って押下してしまうことも考えられるため、第1プッシュボタンの長押し等を条件として、受信モニタ表示から発電量モニタ表示への移行を行うこととしてもよい。
なお、本発明の実施形態は、以上説明したものに限られない。例えば以上の説明では、使用者が、衛星電波腕時計1のプッシュボタン60b等を操作することにより衛星信号の受信処理を実行する、いわゆる強制受信の場合について説明したが、衛星電波腕時計1は、これに加え、或いはこれに替えて、衛星信号を自動受信することとしてもよい。自動受信は、使用者の明示的な操作によらずに受信処理を開始する場合を示しており、例えば、定期的に受信処理を行う定時受信や、衛星電波腕時計1の置かれた環境(アンテナ10の電波受信状態、太陽電池43による発電量等)に応じて受信処理を行う環境受信が自動受信の例としてあげられる。自動受信の場合であっても、衛星電波の受信処理を開始する前に、警告表示部31cによる警告の表示を制限することとしてもよい。例えば、衛星電波の自動受信のため受信回路20を起動する前に、警告表示を制限してもよい。
衛星電波腕時計1が自動受信を行う場合には、警告表示を制限すべき一時的な電圧の低下を生じる処理として、使用者に対する受信処理の予告をさらに挙げることができる。この予告は、指針の運針や、音、或いは振動等により行うことができるが、かかる予告の前に警告表示を制限することにより、上述の例と同様に、衛星信号の受信処理を行うに足る電池残量があるにもかかわらず、受信処理が禁止されて、時刻情報の修正がなされないという事態を低減できる。
また、以上の説明では衛星電波腕時計1は二次電池40を内蔵し、この二次電池40が供給する電力によって動作するものとしたが、衛星電波腕時計1は二次電池40の代わりに一次電池を内蔵することとしてもよい。この場合も、電波の受信処理により一時的に一次電池の電池電圧が低下するのであれば本発明を適用することができる。