次に、本発明の実施の形態の一例であるセンサ素子101を備えたガスセンサ100の概略構成について説明する。図1は、ガスセンサ100の構成の一例を概略的に示した断面模式図である。なお、ガスセンサ100は、例えば自動車の排気ガスなどの被測定ガスにおけるNOxなどの所定のガスの濃度を、センサ素子101により検出するものである。また、センサ素子101の長手方向(図1の左右方向)を前後方向とし、センサ素子101の厚み方向(図1の上下方向)を上下方向とする。また、前後方向及び上下方向に垂直な方向(後述する図2の左右方向)を左右方向とする。
センサ素子101は、それぞれがジルコニア(ZrO2)等の酸素イオン伝導性固体電解質層からなる第1基板層1と、第2基板層2と、第3基板層3と、第1固体電解質層4と、スペーサ層5と、第2固体電解質層6との6つの層が、図面視で下側からこの順に積層された構造を有する素子である。また、これら6つの層を形成する固体電解質は緻密な気密のものである。係るセンサ素子101は、例えば、各層に対応するセラミックスグリーンシートに所定の加工および回路パターンの印刷などを行った後にそれらを積層し、さらに、焼成して一体化させることによって製造される。
センサ素子101の一先端部(前方向の端部)であって、第2固体電解質層6の下面と第1固体電解質層4の上面との間には、ガス導入口10と、第1拡散律速部11と、緩衝空間12と、第2拡散律速部13と、第1内部空所20と、第3拡散律速部30と、第2内部空所40とが、この順に連通する態様にて隣接形成されてなる。
ガス導入口10と、緩衝空間12と、第1内部空所20と、第2内部空所40とは、スペーサ層5をくり抜いた態様にて設けられた上部を第2固体電解質層6の下面で、下部を第1固体電解質層4の上面で、側部をスペーサ層5の側面で区画されたセンサ素子101内部の空間である。
第1拡散律速部11と、第2拡散律速部13と、第3拡散律速部30とはいずれも、2本の横長の(図面に垂直な方向に開口が長手方向を有する)スリットとして設けられる。なお、ガス導入口10から第2内部空所40に至る部位をガス流通部とも称する。
また、ガス流通部よりも先端側から遠い位置には、第3基板層3の上面と、スペーサ層5の下面との間であって、側部を第1固体電解質層4の側面で区画される位置に基準ガス導入空間43が設けられている。基準ガス導入空間43には、NOx濃度の測定を行う際の基準ガスとして、例えば大気が導入される。
大気導入層48は、多孔質セラミックスからなる層であって、大気導入層48には基準ガス導入空間43を通じて基準ガスが導入されるようになっている。また、大気導入層48は、基準電極42を被覆するように形成されている。
基準電極42は、第3基板層3の上面と第1固体電解質層4とに挟まれる態様にて形成される電極であり、上述のように、その周囲には、基準ガス導入空間43につながる大気導入層48が設けられている。また、後述するように、基準電極42を用いて第1内部空所20内や第2内部空所40内の酸素濃度(酸素分圧)を測定することが可能となっている。
ガス流通部において、ガス導入口10は、外部空間に対して開口してなる部位であり、該ガス導入口10を通じて外部空間からセンサ素子101内に被測定ガスが取り込まれるようになっている。第1拡散律速部11は、ガス導入口10から取り込まれた被測定ガスに対して、所定の拡散抵抗を付与する部位である。緩衝空間12は、第1拡散律速部11より導入された被測定ガスを第2拡散律速部13へと導くために設けられた空間である。
第2拡散律速部13は、緩衝空間12から第1内部空所20に導入される被測定ガスに対して、所定の拡散抵抗を付与する部位である。被測定ガスが、センサ素子101外部から第1内部空所20内まで導入されるにあたって、外部空間における被測定ガスの圧力変動(被測定ガスが自動車の排気ガスの場合であれば排気圧の脈動)によってガス導入口10からセンサ素子101内部に急激に取り込まれた被測定ガスは、直接第1内部空所20へ導入されるのではなく、第1拡散律速部11、緩衝空間12、第2拡散律速部13を通じて被測定ガスの濃度変動が打ち消された後、第1内部空所20へ導入されるようになっている。これによって、第1内部空間へ導入される被測定ガスの濃度変動はほとんど無視できる程度のものとなる。第1内部空所20は、第2拡散律速部13を通じて導入された被測定ガス中の酸素分圧を調整するための空間として設けられている。係る酸素分圧は、主ポンプセル21が作動することによって調整される。
主ポンプセル21は、第1内部空所20に面する第2固体電解質層6の下面のほぼ全面に設けられた天井電極部22aを有する内側ポンプ電極22と、第2固体電解質層6の上面の天井電極部22aと対応する領域に外部空間に露出する態様にて設けられた外側ポンプ電極23と、これらの電極に挟まれた第2固体電解質層6とによって構成されてなる電気化学的ポンプセルである。
内側ポンプ電極22は、第1内部空所20を区画する上下の固体電解質層(第2固体電解質層6および第1固体電解質層4)、および、側壁を与えるスペーサ層5にまたがって形成されている。具体的には、第1内部空所20の天井面を与える第2固体電解質層6の下面には天井電極部22aが形成され、また、底面を与える第1固体電解質層4の上面には底部電極部22bが形成され、そして、それら天井電極部22aと底部電極部22bとを接続するように、側部電極部(図示省略)が第1内部空所20の両側壁部を構成するスペーサ層5の側壁面(内面)に形成されて、該側部電極部の配設部位においてトンネル形態とされた構造において配設されている。
内側ポンプ電極22と外側ポンプ電極23とは、多孔質サーメット電極(例えば、Auを1%含むPtとZrO2とのサーメット電極)として形成される。なお、被測定ガスに接触する内側ポンプ電極22は、被測定ガス中のNOx成分に対する還元能力を弱めた材料を用いて形成される。なお、外側ポンプ電極23は、保護層24により被覆されている。保護層24は、例えばアルミナ多孔質体、ジルコニア多孔質体、スピネル多孔質体、コージェライト多孔質体などの多孔質体からなる。保護層24は、例えば被測定ガスに含まれるオイル成分等が付着しないように、外側ポンプ電極23の上面や側面を保護する。
主ポンプセル21においては、内側ポンプ電極22と外側ポンプ電極23との間に所望のポンプ電圧Vp0を印加して、内側ポンプ電極22と外側ポンプ電極23との間に正方向あるいは負方向にポンプ電流Ip0を流すことにより、第1内部空所20内の酸素を外部空間に汲み出し、あるいは、外部空間の酸素を第1内部空所20に汲み入れることが可能となっている。
また、第1内部空所20における雰囲気中の酸素濃度(酸素分圧)を検出するために、内側ポンプ電極22と、第2固体電解質層6と、スペーサ層5と、第1固体電解質層4と、第3基板層3と、基準電極42によって、電気化学的なセンサセル、すなわち、主ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル80が構成されている。
主ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル80における起電力V0を測定することで第1内部空所20内の酸素濃度(酸素分圧)がわかるようになっている。さらに、起電力V0が一定となるように可変電源25のポンプ電圧Vp0をフィードバック制御することでポンプ電流Ip0が制御されている。これによって、第1内部空所内20内の酸素濃度は所定の一定値に保つことができる。
第3拡散律速部30は、第1内部空所20で主ポンプセル21の動作により酸素濃度(酸素分圧)が制御された被測定ガスに所定の拡散抵抗を付与して、該被測定ガスを第2内部空所40に導く部位である。
第2内部空所40は、第3拡散律速部30を通じて導入された被測定ガス中の窒素酸化物(NOx)濃度の測定に係る処理を行うための空間として設けられている。NOx濃度の測定は、主として、補助ポンプセル50により酸素濃度が調整された第2内部空所40において、さらに、測定用ポンプセル41の動作によりNOx濃度が測定される。
第2内部空所40では、あらかじめ第1内部空所20において酸素濃度(酸素分圧)が調整された後、第3拡散律速部を通じて導入された被測定ガスに対して、さらに補助ポンプセル50による酸素分圧の調整が行われるようになっている。これにより、第2内部空所40内の酸素濃度を高精度に一定に保つことができるため、係るガスセンサ100においては精度の高いNOx濃度測定が可能となる。
補助ポンプセル50は、第2内部空所40に面する第2固体電解質層6の下面の略全体に設けられた天井電極部51aを有する補助ポンプ電極51と、外側ポンプ電極23(外側ポンプ電極23に限られるものではなく、センサ素子101と外側の適当な電極であれば足りる)と、第2固体電解質層6とによって構成される、補助的な電気化学的ポンプセルである。
係る補助ポンプ電極51は、先の第1内部空所20内に設けられた内側ポンプ電極22と同様なトンネル形態とされた構造において、第2内部空所40内に配設されている。つまり、第2内部空所40の天井面を与える第2固体電解質層6に対して天井電極部51aが形成され、また、第2内部空所40の底面を与える第1固体電解質層4には、底部電極部51bが形成され、そして、それらの天井電極部51aと底部電極部51bとを連結する側部電極部(図示省略)が、第2内部空所40の側壁を与えるスペーサ層5の両壁面にそれぞれ形成されたトンネル形態の構造となっている。なお、補助ポンプ電極51についても、内側ポンプ電極22と同様に、被測定ガス中のNOx成分に対する還元能力を弱めた材料を用いて形成される。
補助ポンプセル50においては、補助ポンプ電極51と外側ポンプ電極23との間に所望の電圧Vp1を印加することにより、第2内部空所40内の雰囲気中の酸素を外部空間に汲み出し、あるいは、外部空間から第2内部空所40内に汲み入れることが可能となっている。
また、第2内部空所40内における雰囲気中の酸素分圧を制御するために、補助ポンプ電極51と、基準電極42と、第2固体電解質層6と、スペーサ層5と、第1固体電解質層4と、第3基板層3とによって電気化学的なセンサセル、すなわち、補助ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル81が構成されている。
なお、この補助ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル81にて検出される起電力V1に基づいて電圧制御される可変電源52にて、補助ポンプセル50がポンピングを行う。これにより第2内部空所40内の雰囲気中の酸素分圧は、NOxの測定に実質的に影響がない低い分圧にまで制御されるようになっている。
また、これとともに、そのポンプ電流Ip1が、主ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル80の起電力の制御に用いられるようになっている。具体的には、ポンプ電流Ip1は、制御信号として主ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル80に入力され、その起電力V0が制御されることにより、第3拡散律速部30から第2内部空所40内に導入される被測定ガス中の酸素分圧の勾配が常に一定となるように制御されている。NOxセンサとして使用する際は、主ポンプセル21と補助ポンプセル50との働きによって、第2内部空所40内での酸素濃度は約0.001ppm程度の一定の値に保たれる。
測定用ポンプセル41は、第2内部空所40内において、被測定ガス中のNOx濃度の測定を行う。測定用ポンプセル41は、第2内部空所40に面する第1固体電解質層4の上面であって第3拡散律速部30から離間した位置に設けられた測定電極44と、外側ポンプ電極23と、第2固体電解質層6と、スペーサ層5と、第1固体電解質層4とによって構成された電気化学的ポンプセルである。
測定電極44は、多孔質サーメット電極である。測定電極44は、第2内部空所40内の雰囲気中に存在するNOxを還元するNOx還元触媒としても機能する。さらに、測定電極44は、第4拡散律速部45によって被覆されてなる。
第4拡散律速部45は、セラミックス多孔体にて構成される膜である。第4拡散律速部45は、測定電極44に流入するNOxの量を制限する役割を担うとともに、測定電極44の保護膜としても機能する。測定用ポンプセル41においては、測定電極44の周囲の雰囲気中における窒素酸化物の分解によって生じた酸素を汲み出して、その発生量をポンプ電流Ip2として検出することができる。
また、測定電極44の周囲の酸素分圧を検出するために、第1固体電解質層4と、第3基板層3と、測定電極44と、基準電極42とによって電気化学的なセンサセル、すなわち、測定用ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル82が構成されている。測定用ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル82にて検出された起電力V2に基づいて可変電源46が制御される。
第2内部空所40内に導かれた被測定ガスは、酸素分圧が制御された状況下で第4拡散律速部45を通じて測定電極44に到達することとなる。測定電極44の周囲の被測定ガス中の窒素酸化物は還元されて(2NO→N2+O2)酸素を発生する。そして、この発生した酸素は測定用ポンプセル41によってポンピングされることとなるが、その際、測定用ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル82にて検出された制御電圧V2が一定となるように可変電源46の電圧Vp2が制御される。測定電極44の周囲において発生する酸素の量は、被測定ガス中の窒素酸化物の濃度に比例するものであるから、測定用ポンプセル41におけるポンプ電流Ip2を用いて被測定ガス中の窒素酸化物濃度が算出されることとなる。
また、測定電極44と、第1固体電解質層4と、第3基板層3と基準電極42を組み合わせて、電気化学的センサセルとして酸素分圧検出手段を構成するようにすれば、測定電極44の周りの雰囲気中のNOx成分の還元によって発生した酸素の量と基準大気に含まれる酸素の量との差に応じた起電力を検出することができ、これによって被測定ガス中のNOx成分の濃度を求めることも可能である。
また、第2固体電解質層6と、スペーサ層5と、第1固体電解質層4と、第3基板層3と、外側ポンプ電極23と、基準電極42とから電気化学的なセンサセル83が構成されており、このセンサセル83によって得られる起電力Vrefによりセンサ外部の被測定ガス中の酸素分圧を検出可能となっている。
このような構成を有するガスセンサ100においては、主ポンプセル21と補助ポンプセル50とを作動させることによって酸素分圧が常に一定の低い値(NOxの測定に実質的に影響がない値)に保たれた被測定ガスが測定用ポンプセル41に与えられる。したがって、被測定ガス中のNOxの濃度に略比例して、NOxの還元によって発生する酸素が測定用ポンプセル41より汲み出されることによって流れるポンプ電流Ip2に基づいて、被測定ガス中のNOx濃度を知ることができるようになっている。
さらに、センサ素子101は、固体電解質の酸素イオン伝導性を高めるために、センサ素子101を加熱して保温する温度調整の役割を担うヒーター部70を備えている。ヒーター部70は、ヒーターコネクタ電極71と、ヒーター72と、スルーホール73と、ヒーター絶縁層74と、圧力放散孔75と、ヒーター用リード線76とを備えている。
ヒーターコネクタ電極71は、第1基板層1の後端側の下面に接する態様にて形成されてなる電極である。ヒーターコネクタ電極71を外部電源と接続することによって、外部からヒーター部70へ給電することができるようになっている。
ヒーター72は、第2基板層2と第3基板層3とに上下から挟まれた態様にて形成される電気抵抗体である。ヒーター72は、ヒーター用リード線76及びスルーホール73を介してヒーターコネクタ電極71と接続されており、該ヒーターコネクタ電極71を通して外部より給電されることにより発熱し、センサ素子101を形成する固体電解質の加熱と保温を行う。
また、ヒーター72は、第1内部空所20から第2内部空所40の全域に渡って埋設されており、センサ素子101全体を上記固体電解質が活性化する温度に調整することが可能となっている。
ヒーター絶縁層74は、ヒーター72の上下面に、アルミナ等の絶縁体によって形成されてなる絶縁層である。ヒーター絶縁層74は、第2基板層2とヒーター72との間の電気的絶縁性、および、第3基板層3とヒーター72との間の電気的絶縁性を得る目的で形成されている。なお、図1に示すように、ヒーター絶縁層74はヒーター用リード線76の上下面も覆っている。
圧力放散孔75は、第3基板層3を貫通し、基準ガス導入空間43に連通するように設けられてなる部位であり、ヒーター絶縁層74内の温度上昇に伴う内圧上昇を緩和する目的で形成されてなる。
なお、図1では図示を省略したが、外側ポンプ電極23,内側ポンプ電極22,補助ポンプ電極51,測定電極44,基準電極42,の各電極は、センサ素子101の後端(図1における右端)に向かって形成された複数の電極用リード線91〜95と一対一に導通している。この電極用リード線91〜95を介して各電極に電圧又は電流を印加したり各電極の電圧や電流を測定したりすることができるようになっている。この電極用リード線91〜95のセンサ素子101における配置を図2に示す。図2は、図1のA−A断面図である。
図2において、電極用リード線91は、第2固体電解質層6の上面に形成されており、外側ポンプ電極23と導通している。電極用リード線92は、第2固体電解質層6の下面に形成されており、内側ポンプ電極22の天井電極部22aと導通している。電極用リード線93は、第2固体電解質層6の下面に形成されており、補助ポンプ電極51の天井電極部51aと導通している。電極用リード線94は、第1固体電解質層4の上面に形成されており、測定電極44と導通している。電極用リード線95は、第3基板層3の上面に形成されており、基準電極42と導通している。また、上述したヒーター用リード線76は、図2に示すように左から右に向かって並んだ3本のヒーター用リード線76a〜76cの3本を備えている。ヒーター用リード線76は、第2基板層2の上面に形成されている。
なお、電極用リード線91及び電極用リード線95は、自身の左右方向の中心がセンサ素子101の左右方向の中心線102と一致するように配置されている。電極用リード線92と電極用リード線93とは、中心線102を対称軸として、略左右対称に配置されている。また、電極用リード線94は、中心線102から左方にずれた位置に配置されている。ヒーター用リード線76aとヒーター用リード線76cとは、中心線102を対称軸として、略左右対称に配置されている。ヒーター用リード線76bは、自身の左右方向の中心が中心線102と一致するように配置されている。
また、図1では省略したが、図2に示すように、第1基板層1と第2基板層2とは接着層7aにより接着されている。同様に、第2基板層2と第3基板層3とは接着層7bにより接着されている。第3基板層3と第1固体電解質層4とは接着層7cにより接着されている。第1固体電解質層4とスペーサ層5とは接着層7dにより接着されている。スペーサ層5と第2固体電解質層6とは接着層7eにより接着されている。
次に、こうしたガスセンサ100のセンサ素子101の製造方法について説明する。図3は、センサ素子101を作製する際の処理の流れを示すフローチャートである。なお、本実施形態のセンサ素子101の製造方法は、図3のステップS20においてダミーパターン224(後述)を形成する点以外は、例えば上述した特許文献1,2などに記載されている公知の製造方法を用いることができる。
センサ素子101を作製する場合、まず、パターンが形成されていない複数のグリーンシート(ブランクシート)200を用意する(ステップS10)。図4は、1枚のグリーンシート200の上面図である。図4に示すように、グリーンシート200は、四隅が円弧状に切り落とされた略長方形に形成されている。また、グリーンシート200には、パターンの印刷時や積層時の位置決めに用いる複数のシート穴211〜213が予め設けられている。なお、センサ素子101は第1〜第3基板層1〜3,第1固体電解質層4,スペーサ層5,第2固体電解質層6の6つの層から構成されている。そのため、グリーンシート200として、各層に対応させた6枚のグリーンシート201〜206を用意する。対応する層が内部空間を有している場合には、そのグリーンシート200にもその内部空間に相当する空間(孔)が予め設けられる。
なお、本実施形態では、ステップS10において、用意したグリーンシート201〜206のうち2枚のグリーンシート201,202を先行して重ね合わせて接着し、加圧して積層(先行積層)しておくものとした。なお、先行積層は後述するステップS30における積層体の形成と同様にして行うため、ここでの説明は省略する。この先行積層により、グリーンシート201,202は1枚のグリーンシート(先行積層シートとも称する)として扱われる。
続いて、複数のグリーンシート200に対して左右方向に並んだ複数の素子用パターン222を形成するパターン形成処理と、それに続く乾燥処理とを複数回行う(ステップS20)。図5は、グリーンシート200に素子用パターン222を形成した様子を示す説明図である。図示するように、パターン形成処理では、1個のセンサ素子101に対応する素子用パターン222が左右方向に複数(本実施形態ではセンサ素子101で22個分)並ぶように、ペーストを用いて素子用パターン222を形成する。素子用パターン222は、具体的には、図1,2に示した、外側ポンプ電極23などの電極パターンや、電極用リード線91〜95、ヒーター部70、保護層24、大気導入層48などを形成するためのパターンである。なお、図5では、素子用パターン222は直線状の形状に図示しているが、実際にはどのグリーンシート200に何のパターンを形成するかによって、異なる形状をしている。各々の素子用パターン222のパターン形成処理は、それぞれの形成対象に要求される特性に応じて用意したパターン形成用ペーストを、公知のスクリーン印刷技術を利用してグリーンシート200に塗布することにより行う。印刷後の乾燥処理については、公知の乾燥技術を利用可能であり、例えば75〜90℃の温度で大気雰囲気にて行うのが一般的である。
なお、例えば保護層24となる素子用パターン222は外側ポンプ電極23を形成した後にその上に形成するなど、形成対象に応じて素子用パターン222の形成順序は予め定められている。また、例えばヒーター用リード線76となる素子用パターン222を2回のパターン形成処理を行うことで形成するなど、1種類の素子用パターン222を複数回のパターン形成処理を行って形成してもよい。あるいは、同じ材質のパターン形成用ペーストを用いて、異なる種類の素子用パターン222をグリーンシート200の同じ面に1回のパターン形成処理で形成してもよい。本実施形態では、電極用リード線92,93となる素子用パターン392、393(後述する図8参照)を共に1回のパターン形成処理で形成するものとした。また、パターン形成処理はグリーンシート200の上面及び下面のいずれに対しても行うことができる。
なお、グリーンシート200は、1個のセンサ素子101に対応する部分である個別領域218の位置が予め定められており、この個別領域218と1対1に対応して各個別領域218内に各素子用パターン222が形成されるように、素子用パターン222の形成位置が定められている。また、左右方向に隣接する個別領域218同士は、間隔W1だけ離れている。間隔W1は、特にこれに限定するものではないが、例えば0mm〜5.0mmである。なお、左端に位置する個別領域218から右端に位置する個別領域218まで、且つ個別領域218の前端から後端まで、の矩形状の領域全体を、素子用領域216と称する。
また、本実施形態では、1回のパターン形成処理において、素子用領域216に22個分のセンサ素子101に対応する素子用パターン222を形成するだけでなく、素子用領域216の右方向外側にダミーパターン224を形成する。ダミーパターン224の形成位置は、素子用領域216の右方向外側に位置が定められたダミー用領域220内として定められている。ダミー用領域220の大きさは、個別領域218と同じである。素子用領域216とダミー用領域220との左右方向の間隔W2(=右端の個別領域218とダミー用領域220との間隔)は、間隔W1と等しいことが好ましい。ただし、間隔W2は間隔W1とは異なる値としてもよい。特にこれに限定するものではないが、例えば間隔W2と間隔W1との比(=W2/W1)は1.0〜1.5である。また、ダミーパターン224の形状は、1回のパターン形成処理でダミーパターンと共に形成する素子用パターン222と同じ形状又は右半分の一部を省略した形状である。なお、ダミーパターン224は、ステップS20で複数回行うパターン形成処理の全てにおいて形成する必要はなく、ステップS20で行われるパターン形成処理のうち1回以上で形成すればよい。複数回のパターン形成処理のうちいずれのパターン形成処理においてダミーパターン224を併せて形成するかは、予め定められている。これについては後述する。
次いで、複数のグリーンシート200を上下方向(厚み方向)に重ね合わせて加圧し積層体とする(ステップS30)。このステップS30では、まず、グリーンシート201〜206同士を接着するための接着用ペーストの印刷・乾燥処理を行う。接着用ペーストは、各グリーンシート200について、図5に示す接着剤塗布領域214全体に印刷する。なお、接着剤塗布領域214は、素子用領域216及びダミー用領域220を含むさらに広い範囲の領域として予め定められている。接着用ペーストの印刷には、公知のスクリーン印刷技術を利用可能であり、その後の乾燥処理についても、公知の乾燥技術を利用可能である。ここで、ダミー用領域220は、従来のセンサ素子101の製造方法において接着用ペーストを塗布していた領域(センサ素子101とならない余白部分)内に位置するように定められているものとした。従って、本実施形態のセンサ素子101の製造方法を実行するにあたって、接着剤塗布領域214やグリーンシート200の大きさを従来と比べて大きくする必要はない。
接着用ペーストの印刷・乾燥処理を行うと、積層用治具230を用いてグリーンシート201〜206を重ね合わせて上下方向から加圧し、積層体とする。図6は、積層用治具230のうち上型233を除いた部分の上面図である。図7は、積層用治具230を用いて積層体を形成する様子を示す説明図であり、図6のB視図に相当する向きで記載している。図7に示すように、積層用治具230は、基台231と、基台231の上に載置される下型232と、下型232と共に上下からグリーンシート201〜206を挟み込む上型233とを備えている。図6に示すように、基台231上面には4本のコーナーピン234と、6本のサイドピン235と、基準ピン236,237とが取り付けられている。図6の破線で示すように、下型232の上にグリーンシート200を載置すると、基準ピン236がシート孔212内に挿入され、基準ピン237がシート孔213内に挿入されると共に、各ピン234〜235がグリーンシート200の側面に当接する。これにより、グリーンシート200は下型232上に固定され、グリーンシート201〜206を重ね合わせたときに互いの位置ずれが生じないようになっている。
この積層用治具230を用いて積層体を形成する際には、図7に示すように下型232の上にグリーンシート201〜グリーンシート206をこの順に重ね合わせていき、さらにその上に上型233を載置する。なお、上述したようにグリーンシート201,202は一体化して先行積層シートとなっているため、5層のシート(先行積層シート、グリーンシート203〜206)を重ね合わせることになる。また、図7に示すように、下型232とグリーンシート201との間、及び上型233とグリーンシート206との間には、それぞれ保護部材238を介在させる。そして、公知の油圧プレス機などの積層機によって積層治具230ごと加熱及び上下からの加圧を行う。これにより、グリーンシート201〜206は圧着されて積層体となる。なお、本実施形態では、下型232及び上型233は、それぞれグリーンシート201及びグリーンシート206の全面に接する大きさをしており、上下からの加圧はグリーンシート201の下面全体及びグリーンシート206の上面全体に作用するものとした。加熱及び加圧を行う圧力、温度、時間については、用いる積層機にも依存するものであるが、良好な積層が実現できるよう適宜の条件を設定すればよい。なお、上述したステップS10で行う先行積層も、重ね合わせるグリーンシート200の枚数が異なる以外はステップS30と同様に行う。
上述のようにして積層体が得られると、例えばシート孔211や図示しないカットマークなどを参考にして積層体を切断し、複数(本実施形態では22個)の素子体を切り出す(ステップS40)。なお、切断は、図5に示した個別領域218の部分が切り出されて素子体となるように行う。本実施形態では、最初に右端の個別領域218の部分(ダミー用領域220に最も近い部分)を切断し、次に左端の個別領域218の部分を切断し、以降は同様に左右両端から交互に個別領域218の部分を切断して素子体を切り出すものとした。なお、素子体を切り出す順序はこれに限られない。例えば、左右方向の一方から他方に向けて順番に個別領域218の部分を切断して素子体を切り出してもよい。そして、切り出した複数の素子体を所定の条件で焼成することにより、複数のセンサ素子101を得る(ステップS50)。
ここで、ステップS20で形成される素子用パターン222及びダミーパターン224について詳細に説明する。図8は、図7のC−C断面図であり、ステップS30でグリーンシート201〜206を重ね合わせたときの様子を示している。なお、図8はステップS30の加圧前の状態を示しており、積層用治具230については図示を省略している。図9は、図8のD−D断面図であり、右端に位置する個別領域218における左右方向の中心線219aに沿った断面を示している。図10は、図8のE−E断面図であり、ダミー用領域220における左右方向の中心線221aに沿った断面を示している。また、図9,図10では図示を省略しているが、図8に示すようにグリーンシート201〜グリーンシート206は接着層207a〜207e(ステップS30で印刷された接着用ペースト)を介して接着されている。
図8,9に示すように、複数の個別領域218の各々には、図1,2に示したセンサ素子101に対応する複数の素子用パターン222や空間などが形成されている。個別領域218に形成された素子用パターン222や空間などの1つ1つについては、図1,2に示した構成要素に値300を加えた符号を付して、詳細な説明を省略する。
また、図8,10に示すように、ダミー用領域220には、図8,9に示した各素子用パターン222と同じ形状のダミーパターン224が、対応する素子用パターン222と同じグリーンシート200上に形成されている。具体的には、素子用パターン322(322a,322b),323,342,344,348,351(351a,351b),372,372,391〜395と同じ形状のダミーパターン422(422a,422b),423,442,444,448,451(451a,451b),471,472,491〜495がダミー用領域220に形成されている。また、センサ素子101のヒーター用リード線76に対応する素子用パターン376については、素子用パターン376の右半分の一部である素子用パターン376cを省略した形状のダミーパターン476が形成されている(図8参照)。すなわち、素子用パターン376と同じ形状のダミーパターン224をダミー用領域220に形成した場合に、中心線221aの右側の領域220aに含まれることになる部分を一部省略している。なお、領域220aは、素子用領域216からみて左右方向の外側半分にあたる領域である。一方、ダミーパターン476は、素子用パターン376a,376bと同じ形状のダミーパターン476a,476bを備えている。すなわち、素子用パターン376と同じ形状のダミーパターンをダミー用領域220に形成した場合に、中心線221aの左側の領域220bに含まれることになる部分は、形成を省略していない。また、図9の素子用パターン324,345,374に対応する形状のダミーパターン224は形成されていない。さらに、個別領域218とは異なり、ダミー用領域220には、センサ素子101の内部空間に相当する空間(例えば個別領域218における空間343など)は形成されていない。
このように、ダミーパターン224としては、複数の素子用パターン222のうち一部のパターンに対応するものが形成されている。これは、上述したようにステップS20で複数回行うパターン形成処理の全てにおいてダミーパターン224を形成してはおらず、複数回のパターン形成処理の特定の回においてのみダミーパターン224を形成しているからである。そして、複数回のパターン形成処理のうちいずれのパターン形成処理においてダミーパターン224を形成するかは、厚み割合Rが0%超過75%未満となるように定められている。ただし、厚み割合R=(ダミーパターン224の合計厚みTB/素子用領域216内の素子用パターン222の合計厚みTA)×100(%)である。まず、合計厚みについて説明する。合計厚みは、以下の式(1)から算出される値である。なお、合計厚みTAと合計厚みTBとは、算出の対象となるパターンが素子用パターン222であるかダミーパターン224であるかが異なるのみであり、同じ下記式(1)で算出する。
合計厚み=下面最大厚みTd+(層間最大厚みT1+・・・+層間最大厚みTn)+上面最大厚みTu ・・・(1)
ただし、
下面最大厚みTd:ステップS30の積層体の形成において最下層のグリーンシート201の下面に位置するパターンのうち加圧に抵抗可能な部分の中で最も厚い部分の厚み、
上面最大厚みTu:ステップS30の積層体の形成において最上層のグリーンシート206の上面に位置するパターンのうち加圧に抵抗可能な部分の中で最も厚い部分の厚み、
層間最大厚みTx:ステップS30の積層体の形成において下からx番目のグリーンシート200と下からx+1番目のグリーンシート200との間に位置するパターンのうち加圧に抵抗可能な部分の中で最も厚い部分の厚み(ただし、変数xは値1から値nまでの自然数、n=(ステップS30で重ね合わせるグリーンシートの枚数)−1)
ここで、「パターンのうち加圧に抵抗可能な部分」(抗圧可能部分とも称する)は、換言すると、パターンのうちステップS30の加圧時に積層体の厚みを維持しようとする支柱の役割を果たす部分である。
まず、合計厚みTAについて説明する。なお、説明の便宜上、素子用パターン222について算出した下面最大厚みTd,上面最大厚みTu,層間最大厚みTxをそれぞれ下面最大厚みTAd,上面最大厚みTAu,層間最大厚みTAxと表記する。すなわち、合計厚みTA=下面最大厚みTAd+(層間最大厚みTA1+・・・+層間最大厚みTAn)+上面最大厚みTAuとなる。
まず、下面最大厚みTAdについて説明する。ステップS30の加圧時に最下層に位置するグリーンシート201の下面には、素子用パターン371が形成されている(図9参照)。そして、ステップS30では上述したようにグリーンシート201の下面全体が下型232を介して加圧による圧力を受ける。そのため、グリーンシート201の下面に形成された全ての素子用パターン222が抗圧可能部分に該当し、この中で最も厚い部分の厚み(本実施形態では、素子用パターン371の厚み)が、下面最大厚みTAdの値となる。
上面最大厚みTAuについて説明する。ステップS30の加圧時に最上層に位置するグリーンシート206の上面には、素子用パターン323,324(図9参照)及び素子用パターン391(図8参照)が形成されている。そして、S30では上述したようにグリーンシート206の上面全体が上型233を介して加圧による圧力を受ける。そのため、グリーンシート206の上面に形成された全ての素子用パターン222が抗圧可能部分に該当し、この中で最も厚い部分の厚み(本実施形態では、素子用パターン323,324の厚みの合計)が、最大厚みTAuの値となる。
層間最大厚みTAxについて説明する。層間最大厚みTAxは、ステップS30の積層体の形成において重ね合わせる複数のグリーンシート200の各層間について算出される、抗圧可能部分のうちの最大厚みである。ここで、本実施形態では、グリーンシート201,202はステップS30を行う前に既に1枚の先行積層シートとなっている。そのため、ステップS30で重ね合わせるグリーンシートの枚数は5枚(n=4)であり、層間最大厚みTA1(=先行積層シートとグリーンシート203との間で算出される値),層間最大厚みTA2(=グリーンシート203とグリーンシート204との間で算出される値),層間最大厚みTA3(=グリーンシート204とグリーンシート205との間で算出される値),層間最大厚みTA4(=グリーンシート205とグリーンシート206との間で算出される値)、をそれぞれ算出する。
層間最大厚みTA1について説明する。先行積層シート(のグリーンシート202)とグリーンシート203との間には、素子用パターン370(372,374,376)が形成されている(図9参照)。そして、素子用パターン370は、一部が空間373,375に面しており、この部分は加圧時に支柱の役割を果たさない。一方、素子用パターン370のうち空間373,375に面していない部分は、グリーンシート202,203に上下から挟まれており、加圧時に支柱の役割を果たす。そのため、この部分が抗圧可能部分に該当する。この抗圧可能部分のうち最も厚い部分の厚み(本実施形態では、素子用パターン376とその上下の素子パターン374の厚みの合計)が、層間最大厚みTA1の値となる。
層間最大厚みTA2について説明する。グリーンシート203,204間には、素子用パターン342,348(図9参照)及び素子用パターン395(図8参照)が形成されている。そして、これらの素子用パターンのうち空間343に面している部分については、グリーンシート203,204に上下から挟まれていないため抗圧可能部分に該当しない。具体的には、素子用パターン348の一部及び素子用パターン395は、空間343に面しているため、抗圧可能部分には該当しない。それ以外の部分はグリーンシート203,204間で加圧時に支柱の役割を果たすため、抗圧可能部分に該当する。この抗圧可能部分のうち最も厚い部分の厚み(本実施形態では、素子用パターン342及びその上面に形成された素子用パターン348の厚みの合計)が層間最大厚みTA2となる。
層間最大厚みTA3について説明する。グリーンシート204,205間には、素子用パターン322b,351b、344,345(図9参照)及び素子用パターン394(図8参照)が形成されている。そして、これらの素子用パターンのうち空間310,312,320,340,343に面している部分については、グリーンシート204,205に上下から挟まれていないため抗圧可能部分に該当しない。具体的には、素子用パターン322bは空間320に面しており、素子用パターン351b,344,345は空間340に面しているため、抗圧可能部分には該当しない。それ以外の部分はグリーンシート204,205間で加圧時に支柱の役割を果たすため、抗圧可能部分に該当する。この抗圧可能部分のうち最も厚い部分の厚み(本実施形態では、素子用パターン394の厚み)が層間最大厚みTA3となる。
層間最大厚みTA4について説明する。グリーンシート205,206間には、素子用パターン322a,351a(図9参照)及び素子用パターン392,393(図8参照)が形成されている。そして、これらの素子用パターンのうち空間310,312,320,340に面している部分については、グリーンシート205,206に上下から挟まれていないため抗圧可能部分に該当しない。具体的には、素子用パターン322aは空間320に面しており、素子用パターン351aは空間340に面しているため、抗圧可能部分には該当しない。それ以外の部分(素子用パターン392,393)は抗圧可能部分に該当する。この抗圧可能部分のうち最も厚い部分の厚みが層間最大厚みTA3となる。なお、本実施形態では、上述したように素子用パターン392と素子用パターン393とを共に1回のパターン形成処理で形成しており、素子用パターン392の厚みと素子用パターン393の厚みとは等しい。そのため、本実施形態ではこの素子用パターン392の厚み(=素子用パターン393の厚み)が層間最大厚みTA4となる。
以上のように算出された下面最大厚みTAd,層間最大厚みTA1〜TA4,上面最大厚みTAuの合計が、合計厚みTAとなる。次に、合計厚みTBについて説明する。なお、説明の便宜上、ダミーパターン224について算出した下面最大厚みTd,上面最大厚みTu,層間最大厚みTxをそれぞれ下面最大厚みTBd,上面最大厚みTBu,層間最大厚みTBxと表記する。
合計厚みTBは、ダミーパターン224についての値を算出する点以外は、上述した合計厚みTAと同様にして算出できる。また、上述したように、ダミー用領域220にはセンサ素子101の内部空間に相当する空間は形成されていない。そのため、ダミー用領域220では、グリーンシート201〜206のどこに形成されたダミーパターン224であっても、加圧時に支柱の役割を果たすことになり抗圧可能部分に該当する。したがって、下面最大厚みTBd,上面最大厚みTBu,層間最大厚みTBxは、それぞれグリーンシート201の下面、先行積層シート(のグリーンシート202)〜グリーンシート206の各層間、グリーンシート206の上面において、ダミーパターン224のうち最も厚い部分の厚みとなる。本実施形態では、ダミーパターン471の厚みが下面最大厚みTBdの値となり、ダミーパターン423の厚みが上面最大厚みTBuの値となるものとした。また、ダミーパターン476の厚みが層間最大厚みTB1の値となり、ダミーパターン442及びその上面に形成されたダミーパターン448の厚みの合計が層間最大厚みTB2となり、ダミーパターン422bの厚みが層間最大厚みTB3となり、ダミーパターン422aの厚みが層間最大厚みTB4となるものとした。これらの合計が、合計厚みTBとなる。
このようにして導出された合計厚みTA,TBの値に基づいて、厚み割合R(TB/TA×100)(%)は算出される。また、合計厚みTAは製造するセンサ素子101の仕様によって定まるが、合計厚みTBはグリーンシート201〜206のどこにどのようなダミーパターン224を形成するかによって変化する。そのため、複数回のパターン形成処理のうちいずれのパターン形成処理においてダミーパターン224を形成するかを予め定めておくことで、厚み割合Rが0%超過75%未満となるように調整することができる。なお、合計厚みTA,TBの算出において、抗圧可能部分のうち最も厚い部分がどこになるかは、上記の図8〜図10のようにグリーンシート201〜206を重ね合わせた状態に基づいて定まる。一方、合計厚みTA,TBの算出に用いる素子用パターン222やダミーパターン224の厚さの値自体は、ステップS20でパターンの形成・乾燥を行った後、且つステップS30で重ね合わせを行う前の値を用いる。
次に、ステップS30でグリーンシート201〜206を加圧する際に素子用パターン222やダミーパターン224が果たす支柱としての役割について具体的に説明する。グリーンシート201〜206を重ね合わせて上下から加圧する際には、素子用パターン222やダミーパターン224が積層体の厚みを維持しようとする支柱の役割を果たす。その結果、素子用パターン222やダミーパターン224により支えられている部分ほど、グリーンシート200や素子用パターン222が加圧により圧縮されて生密度(加圧後かつ焼成前の密度であり、加圧による圧縮の度合いを表す)が大きくなりやすい。一方、素子用パターン222やダミーパターン224が存在しない部分では、加圧時にグリーンシート200間の上下の距離が小さくなることなどにより加圧による圧力が吸収され、生密度が小さくなりやすい。これにより、加圧後の積層体では、場所によって生密度に偏りが生じる場合がある。なお、グリーンシート201〜206間には接着層207a〜207eが存在するが、これは素子用パターン222やダミーパターン224と比べると粘度が小さいため、支柱としての役割はあまり果たさない。
例えば、図8における右端の個別領域218のうち中心線219aよりも右側の領域218aでは、グリーンシート204,205間に素子用パターン222が存在しない。また、グリーンシート203,204間にも、中心線219a付近に素子用パターン395が存在するのみである。このとき、図8においてダミー用領域220にダミーパターン224が全く形成されていない場合を考える。この場合、領域218aよりも右側には支柱となるパターンが存在しないため、特にグリーンシート204,205間の上下の距離やグリーンシート203,204間の上下の距離が小さくなることで加圧による圧力が吸収されて、圧力が逃げやすい。これにより、領域218a内のグリーンシート201〜206や素子用パターン222(素子用パターン393,376cなど)は、生密度が小さくなりやすい。一方、中心線219aよりも左側の領域218bでは、グリーンシート204,205間に素子用パターン394が存在していたり、領域218bの右側に領域219a内の素子用パターン222が存在していたりする。そのため、領域218b内のグリーンシート201〜206や素子用パターン222は、領域218a内と比べて圧力が逃げにくく、生密度が大きくなりやすい。この結果、加圧後の積層体では、領域218aと領域218bとで生密度が異なりやすい。
そして、生密度が小さい(加圧による圧縮が他より不十分である)部分ほど、焼成時の収縮率は大きくなる傾向にある。そのため、右端の個別領域218を切り出した素子体を焼成すると、収縮率が素子体内部の左右で異なることにより焼成時に素子体(センサ素子101)の反りが生じやすい。なお、右側の領域218aの方が生密度が小さく収縮率が大きい場合、図11のように前後方向の中央が左にずれるような形で反ることになる。なお、センサ素子101の右前端と右後端とを結んだ基準面99からセンサ素子101までの距離の最大値を反り量Lと定義する。反りの向きが逆の場合には、センサ素子101の左前端と左後端とを結んだ基準面に基づいて、同様に反り量Lを定義する。
これに対して、図8のようにダミー用領域220にダミーパターン224が存在する場合を考える。この場合、領域218aよりも右側のダミーパターン224が積層体の厚みを維持しようとする支柱の役割を果たす。そのため、右端の個別領域218において例えばグリーンシート204,205間の距離やグリーンシート203,204間の距離が小さくなりにくくなる。これにより、ダミーパターン224が存在しない場合と比較して領域218aの生密度が大きくなり、領域218bとの生密度の差が小さくなる。そのため、焼成時のセンサ素子101の反りが抑制される(反り量Lが小さくなる)。なお、ダミーパターン224が少しでも存在すれば、すなわち上述した厚み割合Rが0%超過であれば、センサ素子101の反りをより抑制する効果が得られる。また、厚み割合Rが大きいほど、ダミーパターン224が果たす支柱の役割(積層体の厚みを維持しようとする力の強さ)が大きくなり、反り抑制の効果が高まる傾向にある。そのため、厚み割合Rは10%以上、30%以上、45%以上,65%以上とすることが好ましい。ただし、厚み割合Rを75%以上に大きくしても反りを抑制する効果はそれ以上あまり高くならない。そのため、厚み割合Rを75%未満とすることで、不要なダミーパターン224の形成を抑制して、ペーストの使用量を抑制することができる。本実施形態において、厚み割合Rが0%超過75%未満となるようにダミーパターン224の形成を調整しているのは、このような理由による。
なお、ダミーパターン224を形成することによるセンサ素子101の反り抑制の効果は、右端の個別領域218以外に対しても得られる。また、ダミーパターン224を形成したダミー用領域220に近い個別領域218ほど、反りを抑制する効果が高い傾向にある。
ここで、図8に示す素子用領域216の左端の個別領域218は、自身の左側に支柱となるパターンが存在しない。そのため、例えば中心線219bよりも左側の領域218cの生密度は、比較的小さくなりやすい。しかし、右端の個別領域218について上述したように、本実施形態の素子用パターン222は個別領域218のうち右半分の領域の素子用パターン222が比較的少ないため、左半分の領域よりも右半分の領域の生密度が小さくなりやすい傾向にある。その結果、右端の個別領域218と比べると、左端の個別領域218は、中心線219bよりも左側の領域218cと右側の領域218dとで、生密度の差が生じにくい。そのため、左端の個別領域218を切り出した素子体は、右端の個別領域218を切り出した素子体と比べて、ダミーパターン224が全く存在しない場合のセンサ素子101の反り量Lが小さい傾向にある。すなわち、右端の個別領域218の方が、センサ素子101の反りを抑制する必要性が高い。本実施形態において、ダミーパターン224を素子用領域216の右側に形成しているのは、このような理由による。なお、ダミーパターン224を全く形成しない場合に、素子用領域216の左右の両端に位置する個別領域218から切り出した素子体のいずれが焼成時の反り量Lが大きくなるかは、例えば予め実際にセンサ素子101の焼成を行って判定すればよい。あるいは、上述した合計厚みTAを個別領域218の右半分と左半分とで別々に算出して、合計厚みTAの小さい側にダミーパターン224を形成してもよい。
なお、上記の説明では、説明の便宜上、図8の断面に存在する素子用パターン222やダミーパターン224が加圧時に果たす役割を説明した。実際には、素子用領域216及びダミー用領域220全体にわたって、素子用パターン222やダミーパターン224のうちの抗圧可能部分が、同様の役割を果たしている。
以上詳述した本実施形態のセンサ素子101の製造方法では、1個のセンサ素子101に対応する素子用パターン222がセンサ素子101の長手方向と直交する左右方向に並ぶように素子用パターン222を複数形成するパターン形成処理を複数回行って、複数のグリーンシート201〜206に複数の素子用パターン222を形成する。このとき、複数回のパターン形成処理のうち1回以上において、グリーンシート200のうち素子用領域216の右端部の右方向外側にダミーパターン224を形成して、厚み割合Rが0%超過75%未満となるようにする。これにより、その後に積層体を形成し、その積層体から切り出した素子体を焼成したときの、センサ素子101の反りをより抑制することができる。
また、ステップS20では、ダミーパターン224を形成するパターン形成処理において、左右方向に並んだ複数の素子用パターン222とダミーパターン224とを1回のスクリーン印刷で形成する。これにより、ダミーパターン224を素子用パターン222とは別の処理で形成する場合と比べて、効率よくダミーパターン224を形成することができる。
また、ステップS20で形成されるダミーパターン224のうち1以上は、パターン形成処理においてダミーパターン224と共に形成される素子用パターン222の形状と同じ形状をしている。ダミーパターン224と素子用パターン222とを同じ形状とすれば、素子用領域216の左右方向のうちダミーパターン224を形成する側の端部に位置する個別領域218が、左右方向両側に他の個別領域218の素子用パターン222が形成されている部分(例えば素子用領域216のうち左右方向の中央付近に位置する個別領域218など)に近い状態になりやすい。そのため、加圧時の上述した生密度の偏りを抑制する効果が高くなりやすい。
さらに、ステップS20で形成されるダミーパターン224のうちダミーパターン476は、パターン形成処理においてダミーパターン476と共に形成される素子用パターン376の形状のうち右半分(素子用領域216からみて外側半分)の一部である素子用パターン376cを省略した形状をしている。ここで、ダミーパターン224のうち、左右方向で素子用パターン222から遠い領域220aに含まれる部分は、素子用パターン222に近い領域220bに含まれる部分と比べると上述した生密度の偏りを抑制する効果への寄与が小さい。そのため、ダミーパターン224の形状を、素子用パターン222の形状のうち左右方向外側半分(本実施形態では右半分)の少なくとも一部を省略した形状とすることで、反りを抑制する効果を得つつダミーパターン224用のペーストの使用量を抑制することができる。
さらにまた、ダミーパターン224を全く形成せずにステップS20を行ったときにステップS40で切り出される素子用領域216の左右方向の両端に位置する素子体のうち、ステップS50で焼成したときの反り量が大きい傾向にある素子体となる右端の個別領域218の右側に、ダミーパターン224を形成している。このように、左右方向のうちセンサ素子101の反りを抑制する必要性の高い側にダミーパターン224を形成することで、左右方向の片側のみにダミーパターン224を形成していても、センサ素子101の反りを抑制する効果が十分得られる。
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
例えば、上述した実施形態では、グリーンシート200において左右方向に一列に並ぶように複数の個別領域218の位置が定められているものとしたが、これに限らず複数の個別領域218の並び(=素子用領域216)が複数列存在してもよい。図12は、グリーンシート200に複数の個別領域の並びを2列設けた様子を示す説明図である。図12のグリーンシート200では、上述した実施形態と同じ素子用領域216の後方に、別の素子用領域516が定められている。この素子用領域516では、左右方向に並んだ複数(図12では22個)の個別領域518の位置が定められている。なお、図12では、個別領域218に形成する素子用パターン222をグリーンシート200の表面に沿って180°回転させた形状のパターンを、個別領域518に形成するものとした。そのため、ダミー用領域520は素子用領域518の左側に位置するように定められている。また、図12の接着剤塗布領域214は、素子用領域216,516及びダミー用領域220,520を含むさらに広い範囲の領域として予め定められている。なお、このように1枚のグリーンシート200に素子用領域が複数存在する場合、上述した厚み割合Rは、素子用領域毎に算出する。すなわち、図12のグリーンシート200であれば、素子用領域216とダミー用領域220に基づく厚み割合Rと、素子用領域516とダミー用領域520に基づく厚み割合Rとは、別々に算出する。そして、厚み割合Rが0%超過75%未満となっていれば、その厚み割合Rの導出に用いた素子用領域を用いて形成されるセンサ素子101については、上述した反りを抑制する効果が得られる。
上述した実施形態では、複数回のパターン形成処理のうちいずれのパターン形成処理においてダミーパターン224を形成するかは、厚み割合Rが0%超過75%未満となるように定めるものとしたが、さらに素子用パターン222の形状も考慮して定めてもよい。例えば、素子用領域216からみてダミーパターン224を形成する方向とは反対側に面積の偏った形状の素子用パターン222を形成するパターン形成処理において、優先的にダミーパターン224を形成してもよい。ここで、左方向(ダミーパターン224を形成する方向とは反対側)に面積の偏った形状の素子用パターン222を形成する場合、個別領域218のうち右半分には素子用パターンが形成される面積が比較的少ないことになり、上述した生密度の偏りが生じやすい。一方、そのような素子用パターン222と同じ形状又は少なくとも左右方向外側(上述した実施形態では右側)の一部を省略した形状のダミーパターン224を形成すると、そのダミーパターン224は個別領域218に近い側の面積が比較的多いことになり、上述した生密度の偏りを抑制する効果が高くなりやすい。このような左方向に面積の偏った素子用パターン222を形成する際において、優先的にダミーパターン224を形成することで、センサ素子101の反りを抑制する効果が高くなりやすい。言い換えると、左方向に面積の偏っていない素子用パターン222の形成の際に、優先的にダミーパターン224の形成を省略することで、厚み割合Rが同じ値であっても反りを抑制する効果が高くなりやすい。なお、左方向に面積が偏っている素子用パターン222とは、個別領域218のうち左半分に形成される面積が右半分に形成される面積よりも大きい素子用パターン222のことを意味する。例えば、上述した実施形態の電極用リード線94となる素子用パターン394(図8参照)は、個別領域218のうち左半分にしか形成されず、左方向に面積が偏っている。
また、複数回のパターン形成処理のうちいずれのパターン形成処理においてダミーパターン224を形成するかは、パターン形成用ペーストの材料も考慮して定めてもよい。例えば、焼成時の収縮率の高いペーストを用いた素子用パターン222を形成するパターン形成処理において、優先的にダミーパターン224を形成するようにしてもよい。
上述した実施形態では、ダミーパターン224の形状は、1回のパターン形成処理でダミーパターン224と共に形成する素子用パターン222と同じ形状又は右半分の一部を省略した形状としたが、これに限られない。厚み割合Rが0%超過75%未満となるようにすればよい。例えば、右半分の一部の省略を行わず、いずれのダミーパターン224も共に形成する素子用パターン222と同じ形状としてもよい。素子用パターン222の右半分を全て省略した形状のダミーパターン224を形成してもよい。また、素子用パターン222のうち少なくとも左半分については省略しない形状のダミーパターン224を形成してもよい。あるいは、ダミーパターン224の形状を素子用パターン222とは全く異なる形状としてもよい。また、1回のパターン形成処理でダミーパターン224と共に形成する素子用パターン222のうち、例えば前側半分を省略するなど、長手方向の一部を省略してもよい。ただし、素子用領域216の長手方向の両端から割合N(%)の部分を除いた領域を中央領域216aとして、左右方向のうちダミーパターン224を形成する方向に中央領域216aを延長した延長領域216bの少なくとも一部には、ダミーパターン224を形成することが好ましい。図13は、中央領域216a及び延長領域216bの説明図である。なお、図13では、グリーンシート200の一部を拡大して示している。また、図13では、ダミー用領域220のうち延長領域216bに含まれる領域にダミーパターン224を形成した様子を示している。ここで、上述した生密度の左右方向の偏りがセンサ素子101の長手方向(前後方向)の中央に近い部分で生じているほど、センサ素子101の焼成時の反り量Lは大きくなる傾向にある。そのため、グリーンシート200の延長領域216bの少なくとも一部にダミーパターン224を形成すれば、同じ形状のダミーパターン224を延長領域216b以外の領域に形成する場合と比べて、センサ素子101の反りを抑制する効果が高くなりやすい。なお、グリーンシート201〜206のうち少なくとも1枚について、延長領域216bの少なくとも一部にダミーパターン224が形成されていればよいが、そのようなグリーンシート200の枚数は多いほど好ましい。グリーンシート201〜206のすべてについて、延長領域216bの少なくとも一部にダミーパターン224が形成されていることがより好ましい。また、1枚以上のグリーンシート200において、図13のダミーパターン224のように、延長領域216bの前端から後端までにわたってダミーパターン224が存在するようにしてもよい。こうすれば、センサ素子101の反りを抑制する効果がさらに高くなる。また、1枚以上のグリーンシート200において、図13のダミーパターン224のように延長領域216b以外にはダミーパターン224が存在しないようにしてもよい。こうすれば、反りを抑制する効果を得つつダミーパターン用のペーストの使用量を抑制することができる。なお、割合Nは12%〜24%のいずれかの値としてもよい。例えば割合Nが12%のときは、素子用領域216のうち長手方向の両端をそれぞれ12%分除いた残り76%分の領域が、中央領域となる。
上述した実施形態では、1回のパターン形成処理において素子用パターン222とダミーパターン224とを共に形成するものとしたが、これに限らず別々に形成してもよい。また、スクリーン印刷に限らず、他の方法で素子用パターン222やダミーパターン224を形成してもよい。
上述した実施形態では、グリーンシート201,202を先行積層するものとしたが、先行積層を行わなくてもよい。この場合、合計厚みTA,TBを求める際のnは値5として、層間最大厚みTA1〜TA5,TB1〜TB5を算出すればよい。
上述した実施形態では、ダミーパターン224は素子用領域216の右側のみに形成するものとしたが、素子用領域216の左側にもダミーパターン224を形成してもよい。この場合、素子用領域216の素子用パターン222と右側のダミーパターン224とで算出した厚み割合Rと、素子用領域216の素子用パターン222と左側のダミーパターン224とで算出した厚み割合Rと、を別々に算出して、いずれか一方が0%超過75%未満であればよい。なお、いずれの厚み割合Rも0%超過75%未満であることが好ましい。
上述した実施形態では、ダミー用領域220には、センサ素子101の内部空間に相当する空間を形成しないものとしたが、空間を形成してもよい。ただし、この場合、ステップS30でグリーンシート201〜206を重ね合わせたときにダミー用領域220の空間に面するようなダミーパターン224は、加圧時の支柱の役割を果たさないため、形成する必要はない。
上述した実施形態では、合計厚みTBは、ダミー用領域220に形成された全てのダミーパターン224に基づいて算出されるものとしたが、これに限られない。例えば、ダミー用領域220のうち左右方向で素子用領域216に近い側の半分の領域(上述した実施形態であれば左半分である領域220b)に含まれるダミーパターン224のみに基づいて、合計厚みTBを算出してもよい。
上述した実施形態において、厚み割合Rが0%超過75%未満であれば焼成によるセンサ素子の反りをより抑制することができるが、合計厚みTAと合計厚みTBとの間で対応する最大厚みの内訳についても、素子用パターン222の最大厚みに対するダミーパターン220の最大厚みの割合が所定の範囲内にあることがより好ましい。具体的には、(下面最大厚みTBd/下面最大厚みTAd)×100(%)が、0%以上120%以下であることが好ましく、100%以下であることがより好ましい。同様に、(層間最大厚みTBx/層間最大厚みTAx)×100(%)や(上面最大厚みTBu/上面最大厚みTAう)×100(%)についても、0%以上120%以下であることが好ましく、100%以下であることがより好ましい。
以下には、センサ素子101を具体的に作製した例を実験例として説明する。なお、実験例3〜6,10〜13が本発明の実施例に相当し、実験例1,2,7〜9,14が比較例に相当する。なお、本発明は以下の実施例に限定されない。
[実験例1]
実験例1として、上述した実施形態のセンサ素子101の製造方法に従って、センサ素子101を複数作成した。なお、図12に示したように1枚のグリーンシート200について44個分のセンサ素子101に対応する素子用パターン222を形成するようにした。1個のセンサ素子101の形状は、長手方向が83.7mm、上下方向が1.8mm、左右方向が5.27mmとした。素子用領域216,516における素子用パターン222の合計厚みTAはいずれも318μmであった。ダミーパターン224は、全てのパターン形成処理において素子用パターン222と同じ形状として形成した。そのため、ダミー用領域220,520におけるダミーパターン224の合計厚みTBはいずれも318μmであった。すなわち、実験例1では、素子用領域216,516のいずれについても厚み割合Rは100%とした。
[実験例2〜7]
実験例2〜7では、パターン形成処理のうち1回以上についてダミーパターン224の形成を省略するようにして合計厚みTBを変化させた点以外は、実験例1と同様の製造方法でセンサ素子101を複数作成した。なお、実験例2〜7のいずれについても、素子用領域216と素子用領域516とで、ダミーパターン224の形成の仕方に区別は付けなかった。実験例2では、ダミー用領域220、520のいずれも合計厚みTBが268μm(厚み割合R=84.3%)となるようにした。実験例3では、ダミー用領域220、520のいずれも合計厚みTBが228μm(厚み割合R=71.7%)となるようにした。実験例4では、ダミー用領域220、520のいずれも合計厚みTBが156μm(厚み割合R=49.1%)となるようにした。実験例5では、ダミー用領域220、520のいずれも合計厚みTBが107μm(厚み割合R=33.6%)となるようにした。実験例6では、ダミー用領域220、520のいずれも合計厚みTBが46μm(厚み割合R=14.5%)となるようにした。実験例7では、ダミー用領域220、520のいずれも合計厚みTBが0μm(厚み割合R=0%)となるようにした。すなわち、実験例7では、ダミーパターン224を全く形成しなかった。
[センサ素子の形状不良率の評価]
実験例1〜7のそれぞれについて、製造した複数のセンサ素子101の反り量L(図11参照)を測定した。具体的には、レーザー変位計(形状測定機)を用いて、図11の基準面99からセンサ素子101までの距離を325点計測し、そのうちの最大値を反り量Lとした。そして、センサ素子101の形状不良率(=反り量Lが不良なセンサ素子の数/作製したセンサ素子の数)×100(%)を算出した。その結果、実験例1は、1ロット(=約4000個)のセンサ素子101を製造したところ、形状不良率が0.11%であった。実験例2は、1ロットのセンサ素子101を製造したところ、形状不良率が0.10%であった。実験例3は、405ロットのセンサ素子101を製造したところ、形状不良率が0.11%であった。実験例4は、1ロットのセンサ素子101を製造したところ、形状不良率が0.25%であった。実験例5は、1ロットのセンサ素子101を製造したところ、形状不良率が0.35%であった。実験例6は、1ロットのセンサ素子101を製造したところ、形状不良率が0.50%であった。実験例7は、369ロットのセンサ素子101を製造したところ、形状不良率が0.79%であった。
図14は、実験例1〜7における厚み割合Rと形状不良率との関係を示すグラフである。図15は、実験例3,7について、1ロット毎の形状不良率をプロットしたグラフである。図14から、厚み割合Rが大きいほど、形状不良率が小さくなり、センサ素子101の反りが抑制される傾向にあることがわかる。また、実験例1〜3の形状不良率は同程度であり、合計厚みTBが200μm(厚み割合Rが約63%)以上であれば、反り抑制の効果に差はないと考えられる。そのため、例えば厚み割合Rを63%以上75%未満とすれば、不要なダミーパターンの形成を抑制しつつセンサ素子101の反りを抑制する効果が十分得られる。
また、図15に示すように、ダミーパターン224を全く形成しない実験例7では形状不良率の最大値が3.60%であったのに対し、実験例3では形状不良率の最大値が1.02%であり、約1/3になっていた。
[実験例8]
実験例8では、ダミーパターン224として、全てのパターン形成処理において左右方向外側(素子用パターン222から遠い側)の半分を全て省略したパターンを形成した点以外は、実験例1と同様の製造方法でセンサ素子101を複数作成した。すなわち、ダミー用領域220には素子用パターン222のうち図12の右側半分を全て省略し左側半分のみのパターンを形成した。同様に、ダミー用領域520には素子用パターン222のうち図12の左側半分を全て省略し右側半分のみのパターンを形成した。ダミー用領域220,520におけるダミーパターン224の合計厚みTBはいずれも318μmであった。すなわち、実験例1では、素子用領域216,516のいずれについても厚み割合Rは100%とした。
[実験例9〜14]
パターン形成処理のうち1回以上についてダミーパターン224の形成を省略するようにして合計厚みTBを変化させた点以外は、実験例8と同様の製造方法でセンサ素子101を複数作成した。すなわち、ダミーパターン224として、実験例8と同様に左右方向外側(素子用パターン222から遠い側)の半分を全て省略したパターンとしつつ、左右方向内側(素子用パターン222に近い側)の半分のパターンについて一部の形成を省略するようにして合計厚みTBを変化させた。なお、実験例9〜14のいずれについても、素子用領域216と素子用領域516とで、ダミーパターン224の形成の仕方に区別は付けなかった。実験例9では、ダミー用領域220,520のいずれも合計厚みTBが272μm(厚み割合R=85.5%)となるようにした。実験例10では、ダミー用領域220,520のいずれも合計厚みTBが227μm(厚み割合R=71.5%)となるようにした。実験例11では、ダミー用領域220,520のいずれも合計厚みTBが156μm(厚み割合R=49%)となるようにした。実験例12では、ダミー用領域220,520のいずれも合計厚みTBが111μm(厚み割合R=35%)となるようにした。実験例13では、ダミー用領域220,520のいずれも合計厚みTBが48μm(厚み割合R=15%)となるようにした。実験例14では、ダミー用領域220,520のいずれも合計厚みTBが0μm(厚み割合R=0%)となるようにした。すなわち、実験例14では、実験例7と同様に、ダミーパターン224を全く形成しなかった。
[センサ素子の形状不良率の評価]
実験例1〜7と同様に、実験例8〜14のそれぞれについて、製造した複数のセンサ素子101の反り量Lを測定した。その結果、実験例8は、1ロットのセンサ素子101を製造したところ、形状不良率が0.14%であった。実験例9は、1ロットのセンサ素子101を製造したところ、形状不良率が0.13%であった。実験例10は、1ロットのセンサ素子101を製造したところ、形状不良率が0.13%であった。実験例11は、1ロットのセンサ素子101を製造したところ、形状不良率が0.30%であった。実験例12は、1ロットのセンサ素子101を製造したところ、形状不良率が0.40%であった。実験例13は、1ロットのセンサ素子101を製造したところ、形状不良率が0.53%であった。実験例14は、1ロットのセンサ素子101を製造したところ、形状不良率が0.81%であった。
図14には、実験例8〜14における厚み割合Rと形状不良率との関係も示した。図14に示すように、実験例8〜14についても、厚み割合Rが大きいほど形状不良率が小さくなる傾向にあることが確認できた。また、厚み割合Rの値が近い実験例同士の比較(例えば実験例3と実験例10との比較,実験例4と実験例11との比較など)から、ダミーパターン224を左右方向外側の半分を全て省略したパターンとした場合でも、省略しない場合と同程度の効果が得られることが確認できた。