以下、添付図面を参照して、本願の開示する洗浄水タンク装置および水洗大便器の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
(第1の実施形態)
まず、第1の実施形態に係る水洗大便器の全体構成について図1を参照して説明する。図1は、第1の実施形態に係る水洗大便器を示す模式側断面図である。
図1に示すように、水洗大便器1は、便器本体2と、便器本体2に使用される洗浄水を貯える洗浄水タンク装置3とを備える。便器本体2は、トイレ室の床面に設置され、洗浄水タンク装置3は、便器本体2の上部に設置される。なお、便器本体2は、床置き式に限らず、壁掛け式であってもよい。また、洗浄水タンク装置3は、便器本体2から離れた場所に設置されてもよい。
便器本体2は、汚物を受けるボウル部21と、洗浄水タンク装置3から供給される洗浄水をボウル部21へ導く導水路22と、ボウル部21の下部に入口が接続され、ボウル部21内の汚物を排水管(図示せず)へ排出する排水トラップ管路23とを備える。
ボウル部21には、排水トラップ管路23の入口に向けて洗浄水を吐出するジェット吐水口24と、リム部25から洗浄水を吐出してボウル部21内に洗浄水の旋回流を形成するリム吐水口26とが形成される。導水路22は、洗浄水タンク装置3から供給される洗浄水をジェット吐水口24およびリム吐水口26へ導く。
排水トラップ管路23は、その入口から上方へ延びる上昇路部分と、上昇路部分の末端から下方に延びて排水管に接続される下降路部分とを備える。ボウル部21から排水トラップ管路23の上昇路部分にかけては、水封状態を形成するための洗浄水が貯留される。なお、以下においては、ボウル部21および排水トラップ管路23の上昇路部分に貯留される洗浄水を「溜水」と記載する。
上記のように構成された便器本体2は、ジェット吐水口24から吐出される洗浄水によってサイホン作用を効率的に発生させつつ、ボウル部21内の汚物を上記サイホン作用を利用して排水トラップ管路23へ引き込んで排出する。このとき、汚物とともに洗浄水も引き込まれるため、溜水の水位は低下することとなる。
図1に示す便器本体2では、排水トラップ管路23の入口上端部27の高さ位置によって最低水位Wminが規定され、排水トラップ管路23の堰部28の高さ位置によって最高水位Wmaxが規定される。そして、溜水の水位が、最低水位Wminを下回った場合、水封状態が失われて、排水トラップ管路23からトイレ室内に臭気が侵入するおそれがある。
このため、洗浄水タンク装置3は、汚物の排出を行った後、溜水の水位を初期水位に戻すために、ボウル部21に対して洗浄水の補給を行う。なお、初期水位は、最低水位Wmin以上かつ最高水位Wmax以下の所定の水位であり、通常は最高水位Wmaxが初期水位となる。
次に、洗浄水タンク装置3の構成について図2および図3を参照して説明する。図2は、第1の実施形態に係る洗浄水タンク装置3の平面図である。また、図3は、図2におけるA−A線矢視断面図である。なお、図2および図3では、外装タンクや外蓋といった洗浄水タンク装置3の外装部品を省略して示している。
図2および図3に示すように、洗浄水タンク装置3は、タンク31と、内蓋32と、排水路33と、オーバーフロー管34と、排水弁35と、排水弁駆動装置36と、ガイド体37とを備える。また、洗浄水タンク装置3は、給水管38と、第1給水部39と、第2給水部40と、給水弁駆動装置41と、フロートスイッチ42とを備える。
タンク31は、洗浄水を貯える容器であり、外装タンク(図示せず)内に配置される。内蓋32は、開口部を有する蓋体であり、タンク31の上部に取り付けられる。この内蓋32には、後述する排水弁駆動装置36、給水管38、給水弁駆動装置41およびフロートスイッチ42が取り付けられる。
排水路33は、タンク31の底部に連通し、タンク31内の洗浄水を便器本体2の導水路22(図1参照)へ導く。オーバーフロー管34は、上下方向に延在する筒状部材であり、下端側開口部341が排水路33と対向する位置に配置される。排水弁35は、排水路33を開閉する弁体であり、オーバーフロー管34の下端側開口部341近傍の外周部に取り付けられる。
排水弁駆動装置36は、排水弁35を開閉させる装置である。排水弁駆動装置36は、たとえば、DC(Direct Current)モータ等の回転駆動部361と、回転駆動部361により回転する回転部362とを備える。回転部362の先端には、玉鎖(図示せず)の一端が取り付けられており、この玉鎖の他端は、オーバーフロー管34の上部に繋がれる。
かかる排水弁駆動装置36は、回転部362を回転させて玉鎖を引き上げることにより、玉鎖に繋がれたオーバーフロー管34を引き上げて排水弁35を上昇させる。これにより、排水路33が開放され、タンク31内の洗浄水が便器本体2へ供給される。また、排水弁駆動装置36は、回転部362を反対方向に回転させることによって玉鎖を引き下げてオーバーフロー管34を引き上げた状態を解除する。これにより、排水弁35が下降して排水路33が閉止され、便器本体2への洗浄水の供給が停止される。
ガイド体37は、オーバーフロー管34が内部に挿通される筒状の部材であり、タンク31の底部に固定される。ガイド体37は、排水弁駆動装置36によるオーバーフロー管34の上下方向への移動をガイドする。
給水管38は、水道管などの給水源(図示せず)から後述する給水弁駆動装置41を介して供給される洗浄水をタンク31へ導く。給水管38は、オーバーフロー管34の上方まで水平に延在しており、かつ、先端部がオーバーフロー管34の上端側開口部342へ向けて屈曲した形状を有する。
第1給水部39は、給水管38の中途部に設けられており、給水管38を流れる洗浄水をタンク31内への貯留用としてタンク31内へ供給する。第2給水部40は、給水管38の先端部に設けられており、給水管38を流れる洗浄水をオーバーフロー管34の上端側開口部342へ供給する。
給水弁駆動装置41は、給水弁としての電磁弁を備えており、この電磁弁を開閉させることによって給水管38と給水源との連通状態を切り替える装置である。電磁弁の開閉は、後述する制御装置4(図4参照)によって制御される。フロートスイッチ42は、タンク31内の水位を検知する水位検知部である。具体的には、フロートスイッチ42は、タンク31内の水位が満水水位に達したことを検知した場合に、後述する制御装置4に信号を出力する。
次に、制御装置4の構成について図4を参照して説明する。図4は、制御装置4の構成を示すブロック図である。なお、図4では、洗浄水タンク装置3の特徴を説明するために必要な構成要素のみを示しており、一般的な構成要素についての記載を省略している。
図4に示すように、制御装置4は、洗浄水タンク装置3の動作を制御するコントローラであり、記憶部5と、制御部6とを備える。記憶部5は、たとえばRAM(Random Access Memory)やフラッシュメモリなどの記憶デバイスであり、給水時間情報51を記憶する。
給水時間情報51は、タンク31内の水位が満水水位に達したことをフロートスイッチ42が検知してから給水弁駆動装置41の電磁弁を閉じるまでの時間を示す情報である。言い換えれば、給水時間情報51は、タンク31内の水位が満水水位となった後、タンク31内への給水を継続する時間を示す情報である。後述する制御部6は、設置業者や使用者等による設定操作に基づき、この給水時間情報51を更新することができる。
制御部6は、たとえばCPU(Central Processing Unit)であり、記憶部5に予め記憶されたプログラム(図示せず)および給水時間情報51に従って洗浄水タンク装置3の動作を制御する。なお、制御部6は、プログラムを用いずにハードウェアのみで構成されてもよい。
制御部6は、洗浄スイッチ71からの出力信号を受け取った場合に、排水弁駆動装置36を制御して排水弁35を開く。これにより、タンク31内からボウル部21への洗浄水の供給が開始される。また、制御部6は、排水弁35を開いてから所定時間が経過した場合に、排水弁駆動装置36を制御して排水弁35を閉じる。これにより、タンク31内からボウル部21への洗浄水の供給が停止される。
なお、制御部6は、洗浄スイッチ71からの出力信号に限らず、便器本体2に設けられた人体検知センサ(図示せず)からの出力信号に基づいて排水弁駆動装置36の制御を行ってもよい。
また、制御部6は、排水弁駆動装置36を制御して排水弁35を開いた後、所定時間が経過した場合に、給水弁駆動装置41を制御して電磁弁を開く。これにより、給水源から給水管38への洗浄水の供給が開始され、第1給水部39および第2給水部40から洗浄水が供給され始める。
また、制御部6は、フロートスイッチ42からの出力信号を受け取った後、給水時間情報51が示す時間が経過した場合に、給水弁駆動装置41を制御して電磁弁を閉める。これにより、給水源から給水管38への洗浄水の供給が停止される。このように、制御部6は、タンク31内の水位が満水水位に達した後、給水時間情報51が示す時間が経過するまで、給水源から給水管38への洗浄水の供給を継続させる。
なお、タンク内の水位を検知する水位検知部としては、フロートスイッチ42に代えて、ボールタップを利用してもよい。
次に、洗浄水タンク装置3の動作例について図5〜図9を参照して説明する。図5〜図9は、洗浄水タンク装置3の動作説明図である。なお、図5〜図9では、理解を容易にするために、洗浄水タンク装置3の一部の構成を模式化して示している。洗浄水タンク装置3は、上述した制御装置4による制御に従って図5〜図9に示す動作を行う。
図5には、使用前の洗浄水タンク装置3の状態を示している。図5に示すように、使用前の洗浄水タンク装置3は、排水路33が排水弁35によって閉止されており、タンク31には、洗浄水が満水水位FLまで貯えられた状態となっている。
ここで、満水水位FLとは、タンク31内に供給された洗浄水がオーバーフロー管34の上端側開口部342へ溢水し始める位置のことである。このように、満水水位FLは、オーバーフロー管34の上端側開口部342の高さ位置に依存するため、オーバーフロー管34へ溢水させる洗浄水の量の多少にかかわらず、タンク31内には、上端側開口部342の高さ位置まで洗浄水を貯留することができる。
使用者により洗浄スイッチ71が操作された場合、あるいは、使用者が水洗大便器1から離れたことを人体検知センサが検知した場合、洗浄水タンク装置3は、排水弁35を開いて排水路33を開放する。これにより、図6に示すように、タンク31内の洗浄水がボウル部21(図1参照)へ供給されて、ボウル部21内の汚物が排出される。また、タンク31内の洗浄水は、満水水位FLから低下し始める。
排水弁35を開いてから所定時間が経過した場合、あるいは、タンク31内の水位が所定の水位まで低下したことをボールタップやフロートスイッチなどの水位検知部が検知した場合、洗浄水タンク装置3は、給水弁駆動装置41(図3参照)の電磁弁を開く。これにより、図7に示すように、給水源から供給される洗浄水の一部が第1給水部39からタンク31内へ供給されるとともに、残りの一部が第2給水部40からオーバーフロー管34の上端側開口部342へ供給される。
つづいて、洗浄水タンク装置3は、排水弁35を開いてからさらに所定時間が経過すると、排水弁35を閉じて排水路33を閉止する。これにより、図8に示すように、タンク31内からボウル部21への洗浄水の供給が停止され、第1給水部39から供給される洗浄水がタンク31に溜まり始める。この間、第2給水部40からオーバーフロー管34へ供給される洗浄水は、オーバーフロー管34を介してボウル部21へ直接供給される。
このように、第1の実施形態に係る洗浄水タンク装置3では、第2給水部40からオーバーフロー管34へ洗浄水を直接供給する。このため、排水弁35を閉じて排水路33を閉止した後、ボウル部21に対する洗浄水の補給を早期に開始することができる。
タンク31内の水位は、第1給水部39からの給水によって上昇して満水水位FLに達する。そして、タンク31内の水位が満水水位FLを超えると、図9に示すように、タンク31内の洗浄水は、上端側開口部342からオーバーフロー管34へ溢水し始める。オーバーフロー管34へ溢水した洗浄水は、ボウル部21へ供給される。
洗浄水タンク装置3は、タンク31内の水位が満水水位FLに達した後、給水時間情報51(図4参照)が示す時間が経過した場合に、電磁弁を閉じて第1給水部39および第2給水部40からの給水を停止し、一連の動作を終了する。これにより、ボウル部21内の溜水の水位が初期水位へ戻り、タンク31内に洗浄水が満水水位FLまで貯留された状態(すなわち、図5に示す状態)となる。
このように、洗浄水タンク装置3は、ボウル部21への洗浄水の補給動作として、洗浄水をオーバーフロー管34へ直接供給する動作と、タンク31内の洗浄水をオーバーフロー管34へ溢水させる動作とを行う。これにより、ボウル部21への洗浄水の補給動作を最適化することができる。
すなわち、タンク内からオーバーフロー管へ溢水する洗浄水のみを用いてボウル部への洗浄水の補給を行う従来の洗浄水タンク装置では、タンク内からボウル部への洗浄水の供給が停止した後、ボウル部への洗浄水の補給が開始されるまでに時間がかかる。このため、使用者に違和感を与えたり、洗浄水の補給が開始されるまでの間に破封が生じてトイレ室内に臭気が侵入したりするおそれがある。
これに対し、第1の実施形態に係る洗浄水タンク装置3では、第2給水部40からオーバーフロー管34へ洗浄水を直接供給することにより、ボウル部21への洗浄水の補給を早期に開始することができる。このため、使用者に違和感を与え難く、また、破封が生じ難くなるためトイレ室内への臭気の侵入も生じ難い。さらに、補給動作の途中期より、オーバーフロー管34の上端側開口部342へ溢水させて洗浄水を補給する動作も加わるため、補給動作を早期に完了させることができる。したがって、第1の実施形態に係る洗浄水タンク装置3によれば、ボウル部21に対する洗浄水の補給動作を最適化することができる。
また、他の従来の洗浄水タンク装置として、オーバーフロー管に直接供給される洗浄水のみを用いてボウル部への洗浄水の補給を行うものもある(たとえば、特開2009−156026号公報参照)。しかしながら、この洗浄水タンク装置は、タンク内への洗浄水の給止水とオーバーフロー管への洗浄水の給止水とをボールタップにより連動して行っている。このため、ボウル部へ補給する洗浄水の量(以下、「リフィール量」と記載する)を変えようとすると、タンク内への給水量も連動して変化してしまい、タンク内に適切な量の洗浄水を貯留することができなくなるおそれがある。このように、他の従来の洗浄水タンク装置は、タンク内に貯留される洗浄水の量を維持しながらリフィール量を変更することが難しかった。
これに対し、第1の実施形態に係る洗浄水タンク装置3では、第2給水部40からオーバーフロー管34へ直接供給される洗浄水だけでなく、タンク31内からオーバーフロー管34へ溢水する洗浄水も用いてボウル部21への洗浄水の補給を行う。したがって、タンク31内からオーバーフロー管34へ溢水する洗浄水の量を変更すれば、リフィール量を容易に変更することができる。また、溢水する洗浄水の量を変更しても、タンク31内の水位を満水水位FLのまま維持することができる。すなわち、タンク31内に貯留される洗浄水の量を維持しながらリフィール量を変更することが可能である。
このように、タンク内に貯留される洗浄水の量を維持しつつリフィール量を変更可能な構成は、洗浄水タンク装置をリフィール量の異なる多種の便器に対して共用化させるうえで好ましい。
すなわち、リフィール量の異なる多種の便器に対して共用可能な洗浄水タンク装置を提供しようとする場合、無駄水が発生しないように、リフィール量を便器ごとに変更可能な構成とすることが望まれる。しかしながら、上述した従来の洗浄水タンク装置には、リフィール量を変更すると、タンク内に貯留される洗浄水の量が変化してしまうという問題がある。これに対し、第1の実施形態に係る洗浄水タンク装置3は、タンク31内に貯留される洗浄水の量を維持しながらリフィール量を変更することができるため、リフィール量の異なる多種の便器に対して共用化させるうえで好ましいといえる。
ここで、タンク31内の洗浄水をオーバーフロー管34へ溢水させる時間は、給水時間情報51に基づいて決定される。設置業者や使用者等は、たとえばトイレ室内に設置されるリモコンを操作して給水時間情報51を更新することで、タンク31内の洗浄水をオーバーフロー管34へ溢水させる時間を変更することができる。したがって、第1の実施形態に係る洗浄水タンク装置3によれば、リフィール量を容易に変更することができる。
また、第1の実施形態に係る洗浄水タンク装置3において、第2給水部40からオーバーフロー管34へ直接供給する洗浄水の量は、タンク31の水封状態が維持される最低水量以上の量に設定される。たとえば、第2給水部40からは、ボウル部21が空の状態から図1に示す最低水位Wminまで洗浄水を溜めることのできる量(たとえば、300〜500ml)の洗浄水が供給される。
これにより、オーバーフロー管34へ溢水させる洗浄水の量にかかわらず、水封状態を維持することができる。すなわち、オーバーフロー管34へ溢水させる洗浄水の量を少なくしても、破封が生じるおそれがない。なお、上記の「水封状態が維持される最低水量」は、汚物の排出後に、排水トラップ管路23からボウル部21へ戻ってくる洗浄水の量を加味して決定されてもよい。
上述してきたように、第1の実施形態に係る洗浄水タンク装置3は、タンク31と、オーバーフロー管34と、第1給水部39と、第2給水部40とを備える。タンク31は、洗浄水を貯える。オーバーフロー管34は、タンク31内に配置され、タンク31内において満水水位FLを超えた洗浄水を上端側開口部342へ溢水させて下端側開口部341から便器本体2のボウル部21へ排出する。第1給水部39は、給水源からの洗浄水をタンク31内への貯留用としてタンク31内へ供給する。第2給水部40は、給水源から第1給水部39へ供給される洗浄水の一部をオーバーフロー管34の上端側開口部342へ供給する。
そして、第1の実施形態に係る洗浄水タンク装置3は、第1給水部39からタンク31内へ洗浄水を供給する間、第2給水部40からオーバーフロー管34の上端側開口部342へ洗浄水を供給することによってボウル部21への洗浄水の補給を行い、タンク31内の水位が満水水位FLを超えると、タンク31内の洗浄水をオーバーフロー管34の上端側開口部342へ溢水させることによってボウル部21への洗浄水の補給を行う。
かかる第1の実施形態に係る洗浄水タンク装置3によれば、使用者に違和感を与えることがなく、破封も生じさせ難い。したがって、ボウル部21への洗浄水の補給動作を最適化することができる。
(第2の実施形態)
洗浄水タンク装置3は、第2給水部40から吐出される洗浄水の単位時間当たりの流量を変更する流量変更部をさらに備えてもよい。第2の実施形態では、かかる流量変更部を備える洗浄水タンク装置の例について図10を参照して説明する。図10は、流量変更部の一例を示す模式図である。なお、以下の説明では、既に説明した部分と同様の部分については、既に説明した部分と同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
図10に示すように、第2の実施形態に係る洗浄水タンク装置3Aは、流量変更部45を備える。流量変更部45は、外筒部46と、ナット部47と、ねじ部48とを備えるニードル弁である。
外筒部46は、第2給水部40の上部に設けられる筒状の部材である。ここでは、外筒部46が給水管38と一体的に形成されるものとするが、外筒部46は、給水管38と別体に形成されてもよい。ナット部47は、外筒部46の上端部に固定される部材であり、内周にめねじ部471を有する。ねじ部48は、ナット部47を介して外筒部46に挿通される部材であり、上部におねじ部481を有し、第2給水部40の給水管38との連通口401へ向けて突出する先端部482を下部に有する。先端部482は、連通口401へ向けて縮径する形状を有する。
上記のように構成された流量変更部45では、ねじ部48を回転させることによって先端部482を連通口401へ向けて前進させると、連通口401の一部が先端部482で塞がれ、連通口401における洗浄水の通過面積が小さくなる。これにより、第2給水部40から吐出される洗浄水の流量を減らすことができる。また、これとは逆に、ねじ部48を反対方向に回して先端部482を後退させることで、第2給水部40から吐出される洗浄水の流量を増やすことができる。
このように、第2の実施形態に係る洗浄水タンク装置3Aは、流量変更部45を用いて第2給水部40から吐出される洗浄水の流量を変更することで、第2給水部40からオーバーフロー管34へ直接供給される洗浄水の量を調整することができる。したがって、第2の実施形態に係る洗浄水タンク装置3Aによれば、溜水の水位をより早期に回復させたり、逆に、ゆっくり回復させたりといった調整が可能となる。
なお、ここでは、流量変更部45が、第2給水部40の上部に設けられる場合の例を示したが、流量変更部45は、第1給水部39の上部に設けられてもよい。給水源から給水管38へ供給される洗浄水の流量は一定であるため、流量変更部45により第1給水部39の流量を変更することで、第2給水部40の流量を変化させることができる。すなわち、流量変更部45を用いて第1給水部39の流量を減らすことで、第2給水部40の流量を増やすことができ、逆に、第1給水部39の流量を増やすことで、第2給水部40の流量を減らすことができる。
また、ここでは、流量変更部45が、第2給水部40の連通口401における洗浄水の通過面積を変更することによって、第2給水部40から供給される洗浄水の流量を変更する場合の例について説明した。しかし、流量変更部45は、給水管38における洗浄水の通過面積を変更することによって、第2給水部40から供給される洗浄水の流量を変更してもよい。このような流量変更部45としては、たとえばボール弁、バタフライ弁、ダイヤフラム弁などを用いることができる。
また、ここでは、第2給水部40から吐出される洗浄水の流量を変更することで、第2給水部40からオーバーフロー管34の上端側開口部342(図3参照)へ供給される洗浄水の流量を変更する場合の例について説明した。しかし、これに限らず、たとえば、オーバーフロー管34の上端側開口部342の開口面積を変更することにより、第2給水部40からオーバーフロー管34の上端側開口部342へ供給される洗浄水の流量を変更してもよい。この場合、たとえば、所定の径の開口穴が形成された蓋体を上端側開口部342に取り付けることで、上端側開口部342の開口面積を変更することができる。
(第3の実施形態)
上述した洗浄水タンク装置3,3Aは、タンク31内からオーバーフロー管34の上端側開口部342へ溢水する洗浄水の量を変更する溢水量変更部をさらに備えてもよい。第3の実施形態では、かかる溢水量変更部を備える洗浄水タンク装置の例について図11を参照して説明する。図11は、溢水量変更部の一例を示す模式図である。
図11に示すように、第3の実施形態に係る洗浄水タンク装置3Bは、溢水量変更部49を備える。溢水量変更部49は、オーバーフロー管34の上部に取り付けられる部材であり、たとえば水平断面形状及び開口断面積が軸方向において同一な筒型の形状を有する。
溢水量変更部49の上端側開口部491は、オーバーフロー管34の上端側開口部342よりも高い位置に配置される。このため、溢水量変更部49をオーバーフロー管34に取り付けた場合のタンク31内の満水水位FL’は、溢水量変更部49を取り付けない場合の満水水位FLよりも高くなる。
上記のように構成された洗浄水タンク装置3Bでは、フロートスイッチ42が、タンク31内の満水水位FLを検知し、制御部6が、フロートスイッチ42からの出力信号を受け取った後、給水時間情報51が示す時間が経過した場合に、電磁弁を閉じる。これにより、満水水位の位置が高くなった分だけ、タンク31内に貯留される洗浄水の総量が増え、タンク31内からオーバーフロー管34へ溢水する洗浄水の総量は減ることとなる。したがって、洗浄水タンク装置3Bは、溢水量変更部49の高さ位置を調整することで、タンク31内からオーバーフロー管34へ溢水する洗浄水の量を調整することができる。
このように、第3の実施形態に係る洗浄水タンク装置3Bは、溢水量変更部49を用いてタンク31内の満水水位の位置を変更することにより、タンク31内からオーバーフロー管34へ溢水する洗浄水の量を変更することができる。
なお、溢水量変更部49のオーバーフロー管34への取り付け方法としては、たとえば溢水量変更部49の内周面およびオーバーフロー管34の外周面にそれぞれネジ溝を設けて、溢水量変更部49をオーバーフロー管34に回し込んで取り付けてもよい。この場合、溢水量変更部49をオーバーフロー管34に回し込む量を調整することで、タンク31内の満水水位の位置を調整することができる。なお、その他の取り付け方法として、各種の締結部材を用いて溢水量変更部49をオーバーフロー管34に取り付けてもよい。
ここでは、溢水量変更部49が、水平断面形状及び開口断面積が軸方向において同一な筒型の形状を有する場合の例を示したが、溢水量変更部49の形状は上記の例に限定されない。たとえば、溢水量変更部49は、開口断面積が軸方向において上方に向け徐々に拡大するテーパ形状を有していてもよい。このようなテーパ形状とすることで、溢水量変更部49内に流入した洗浄水がオーバーフロー管34の内壁に沿って流れるようになるため、落下する水の音を抑制することができる。
また、溢水量変更部49には、上縁部の一部を外側に張り出させて平面視凹形状の流路を形成してもよい。この場合においても、同様に、上記流路内に流入した洗浄水がオーバーフロー管34の内壁に沿って流れることになるため、落下する水の音を抑制することができる。
(その他の実施形態)
上述した実施形態では、給水時間情報51が、タンク31内の水位が満水水位FLに達したことをフロートスイッチ42が検知してから給水弁駆動装置41の電磁弁を閉じるまでの時間を示す情報である場合の例について説明した。しかし、給水時間情報51は、上記の例に限らず、タンク31内への給水を開始してから終了するまでの時間、すなわち、給水弁駆動装置41の電磁弁を開いてから閉じるまでの時間を示す情報であってもよい。
また、上述した実施形態では、制御部6が、設置業者や使用者等の設定操作に基づいて、記憶部5に記憶された給水時間情報51を更新する場合の例について説明した。しかし、これに限らず、たとえば、それぞれ異なる時間を示す複数の給水時間情報を記憶部5に記憶しておき、設置業者や使用者等の設定操作に基づいて、使用する給水時間情報を選択するようにしてもよい。
また、上述した実施形態では、排水弁35の開閉手段として、電動式の開閉手段である排水弁駆動装置36を例に挙げて説明したが、これに限らず、排水弁35の開閉手段は、使用者によるレバー操作により排水弁35を開閉させる手動式のものであってもよい。
また、上述した実施形態では、タンク31内への給止水を給水弁駆動装置41を用いて電動で行う場合の例について説明したが、タンク31内への給止水は、ボールタップを用いて機械的に行ってもよい。この場合、たとえば第1給水部39の下方に受け皿を設けるなどして、タンク31内の水位が満水水位FLとなってからタンク31内への給水が停止されるまでの時間を遅延させることで、タンク31内の洗浄水をオーバーフロー管34へ溢水させることができる。また、受け皿の大きさ等を変更することで、タンク31内からオーバーフロー管34へ溢水させる洗浄水の量を変更することができる。
また、給水管38の形状は、図2および図3に示す形状に限定されない。たとえば、図2および図3では、給水管38がオーバーフロー管34の上方まで水平に延在する例を示したが、給水管38はオーバーフロー管34に向かって傾斜してもよい。また、図2および図3では、給水管38の先端部がオーバーフロー管34の上端側開口部342へ向けて屈曲する場合の例を示したが、給水管38の先端部は、屈曲していなくてもよい。
また、オーバーフロー管34の形状も、図2および図3に示す形状に限定されない。たとえば、図2および図3では、オーバーフロー管34の上部の形状が、水平断面形状及び開口断面積が軸方向において同一な筒型の形状である場合の例を示したが、開口断面積が軸方向において上方に向け徐々に拡大するテーパ形状であってもよい。このようなテーパ形状とすることで、上端側開口部342からオーバーフロー管34内に流入した洗浄水がオーバーフロー管34の内壁に沿って流れるようになるため、落下する水の音を抑制することができる。
また、オーバーフロー管34は、上端側開口部342の一部を外側に張り出させて平面視凹形状の流路を形成してもよい。この場合においても、同様に、上記流路内に流入した洗浄水がオーバーフロー管34の内壁に沿って流れることになるため、落下する水の音を抑制することができる。
また、上述した実施形態では、水洗大便器1が、サイホン式の便器本体2を備える場合の例について説明したが、水洗大便器1は、サイホン作用を利用しない洗い落とし式の便器やジェット吐水口を持たないサイホン式の便器を備えていてもよい。
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。