JP6375215B2 - メモリ効果有無の判定方法及びメモリ効果有無の判定装置 - Google Patents
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Description
特許文献1に記載の二次電池の内部状態推定装置は、リチウムイオン二次電池のSOCを推定する装置であって、パラメータ値に基づいて二次電池の内部反応を推定可能な電池モデルを用いることにより同二次電池のSOCを推定する。電池モデルは、二次電池の材料物性値を含むパラメータ値により内部状態が規定される。パラメータ値には、二次電池の使用状態を示すバッテリーの出力電圧に基づいて生成されるものが含まれている。そして、この内部状態推定装置は、生成されたパラメータ値などにより内部状態が規定された電池モデルに電圧センサからの検出値を入力させることに応じてSOCを推定する。
このような方法によれば、電極反応を示すバトラーボルマーの式を用いることにより、主反応の反応分極電圧を好適にモデル化することができる。
前記推定したパラメータが予め定めた範囲を超えるとき、前記正極にメモリ効果が生じていると判定するメモリ効果有無判定部とを備えることを要旨とする。
このような方法によれば、メモリ効果の生じる前のパラメータに基づいて、予め定めた範囲が各パラメータについて容易に設定できるようになる。なお、メモリ効果の生じる前のパラメータを、メモリ効果が生じる前のニッケル水素二次電池に対して電極反応モデルのパラメータを推定することで得ることもできる。
図1〜図5を参照して、正極電位の推定方法、正極電位の推定装置及び起電圧の推定方法を具体化した第1の実施形態について説明する。この実施形態では、例えば、車両に搭載される電池10の充電状態が残存容量[Ah]、もしくは、残存容量率(SOC:State Of Charge)[%]として算出される。SOCは、電池10に充電可能な電気量に占める実際に充電されている電気量の割合を示すものであって、残存容量とSOCとは相互に変換可能な関係(SOC=残存容量/最大容量)にある。よって以下では、説明の都合に応じて、SOCと残存容量とを併用する。また、本実施形態でのSOCを算出する処理には、正極電位の推定処理や単電池等の起電圧の推定処理などが含まれる。
電圧測定器21は、測定した電池10の端子間電圧に対応する電圧信号を監視装置30に出力する。
監視装置30は、取得された各種情報に基づいて、電池10のSOCを算出する。監視装置30は、算出した電池10のSOCを表示させたり、外部に出力させたりすることができてもよい。監視装置30は、電池温度測定部11から入力される温度信号から電池10の温度を取得し、電圧測定器21から入力される電圧信号から電池10の端子間電圧を取得し、電流測定器22から入力される電流信号から電池10の充放電電流を取得する。
電池モデル部43は、電池モデルに含まれる各モデルの演算処理に基づいて電池10の端子間電圧を算出する。電池モデル部43では、記憶部50の電池モデル51に含まれる、電池モジュールに対応するモデル、電池セルに対応するモデル、正極電位に対応するモデル、及び、正極の主反応の反応分極電圧に対応する電極反応モデルがそれぞれ適宜演算処理される。例えば、各モデルの演算処理により、順に、主反応の反応分極電圧、正極電位、電池セルの電圧、そして電池モジュールの電圧を算出することで、電池10の端子間電圧が得られる。
SOC算出部46は、電池10から測定された端子間電圧を算出用データに照合させて残存容量を得るとともに、得られた残存容量に基づいて電池10のSOCを算出する。
図2のグラフ100に示すように、適切に充放電可能なSOCの範囲である管理下限値L1以上、管理上限値H1以下の範囲[%]を超える充放電は電池性能を劣化させるおそれがある。そこで、通常、電池10は、そのSOCが管理下限値L1から管理上限値H1までの範囲[%]を超えない範囲で使用されるように管理する範囲が定められている。例えば、管理下限値L1は20[%]に設定され、管理上限値H1は80[%]に設定されるが、電池10の電池特性や使用環境、使用態様に応じて適切な値を設定することができる。
図3のグラフ101に示すように、電池10の残存容量と端子間電圧とは、端子間電圧の高さに対応して残存容量が多くなる関係を有する。この関係によれば、電池10の端子間電圧に基づいて残存容量が求められる。ところで、グラフ101の線L0は、電池10にメモリ効果が生じていない初期状態のときの残存容量と端子間電圧との関係を示し、同線L11は、電池10が使用された結果メモリ効果を生じているときの残存容量と端子間電圧との関係を示す。グラフ101に示すように、メモリ効果があるとき(線L11)は、無いとき(線L0)に比べて残存容量に対する電圧降下が大きく、線L11の傾きは線L0の傾きよりも大きい。このように、残存容量と端子間電圧との関係は、メモリ効果の有無により相違を生じるため、メモリ効果の有無の相違に起因して電池10の端子間電圧から算出される残存容量に誤差が生じるおそれがある。
まず、電池モデル51について説明する。
電池セルの出力電圧は、電池セルに対応するモデルである「正極電位−負極電位+部品抵抗による電圧降下」に基づき、単電池の起電圧として算出される。部品抵抗による電圧降下は、電池温度で変化するマップから算出する部品抵抗値に、測定される電流値をかけて算出することができる。また、正極電位は、正極電位に対応するモデルである「主反応の反応分極電圧+液体相電位+主反応の平衡電位」に基づき算出される。そして、主反応の反応分極電圧は、電極反応モデルである「バトラーボルマーの式」に基づき算出される。
主反応の平衡電位U1は、ネルンストの式など公知の方法に基づき算出されてもよいし、予め所定の値が設定されてもよい。
式(2)に含まれるパラメータの推定では、所定の期間、又は、所定のデータ数だけ取得された残存容量と端子間電圧とのペアデータに近似するように同式(2)のパラメータが推定される。このとき、同式(2)に含まれているパラメータのうち、推定対象となるパラメータが推定される。電池10の放電特性は、残存容量と端子間電圧との関係においてカーブを描く非線形であるため、同放電特性に式(2)を近似させるパラメータの推定は、非線形最小二乗法や適応フィルタを用いることにより行われる。また、推定されたパラメータの反映された式(2)によれば、残存容量に対応する主反応の反応分極電圧η1が推定されるようになり、この推定された主反応の反応分極電圧η1に基づいて端子間電圧を求めることで、残存容量と端子間電圧との関係を示すデータが算出できるようになる。なお、残存容量を表すにしても、電池モジュールの単位、電池セルの単位、電池スタックの単位、又は電池ブロックの単位のいずれであれ、必要とされる単位に変換可能である。
・固定パラメータ…ファラデー定数F、気体定数R、水酸化物イオン濃度参照値Cor
・推定パラメータ…正極主反応の電流密度参照値Ir、活物質水素/プロトン濃度参照値Chr、正極主反応の非対称パラメータ(アノード反応)αa、正極主反応の非対称パラメータ(カソード反応)αc
・算出パラメータ…正極主反応の電流密度I1、水酸化物イオン濃度Co1、活物質表面水素/プロトン濃度Ch1、及び、正極主反応の反応分極電圧η1
そして、上記パラメータのうち、少なくとも、正極主反応の電流密度参照値Ir、活物質水素/プロトン濃度参照値Chr、正極主反応の非対称パラメータ(アノード反応)αa、及び、正極主反応の非対称パラメータ(カソード反応)αcには、パラメータの推定を行ったときメモリ効果の影響が反映される。
図5に示すように、ステップS11〜S14までの処理により、算出用データに基づいて電池10のSOCを算出する処理が行われる。また、算出用データを更新できる条件が成立することで、算出用データを更新する処理が行われる。以下に、こうした処理について詳述する。なお、電池10のSOCを算出する処理は、該電池10を使用する装置の電源が入ることなどにより周期的に実行される。
(1)測定された端子間電圧に対応する正極電位に近似するように推定されたパラメータの反映された電極反応モデルに基づいて、電極反応モデルにより正極電位φsがより高い精度で推定される。これにより正極電位φsを、電極反応モデルに基づいて算出される主反応の反応分極電圧η1を反映させたかたちで算出することができる。
(3)上記式(2)に示すバトラーボルマーの式によれば、電極反応がより高い精度でモデル化される。また、発明者はこれらパラメータにメモリ効果の影響が反映されることを見出したことから、これらパラメータの推定によりメモリ効果の影響が反映されるかたちで主反応の反応分極電圧η1を推定できるようになる。
図6及び図7に従って、メモリ効果有無の判定方法、メモリ効果有無の判定装置及び起電圧の推定方法を具体化した第2の実施形態について説明する。本実施形態では、電極反応モデルで推定されたパラメータに基づいてメモリ効果の有無を判定し、この判定結果に応じて選択された算出用データに基づいて電池10のSOCを算出することが、第1の実施形態に相違するものの、それ以外の点については同様である。そこで、以下では、第1の実施形態と相違する構成について詳細に説明することとし、同様の構成については同じ符号を付し詳細な説明を割愛する。
まず、図7では、ステップS11〜S13、及び、ステップS14の処理で、SOC算出用データに基づいて電池10のSOCを算出する処理が行われる。また、SOC算出用データを選択・更新できる条件が成立することで、SOC算出用データを選択・更新する処理が行われる。以下に、こうした処理について詳述する。なお、電池10のSOCを算出する処理は、該電池10を使用する装置の電源が入ることなどにより周期的に実行される。
以上説明したように、本実施形態に係るメモリ効果有無の判定方法、メモリ効果有無の判定装置及び起電圧の推定方法は、上記第1の実施形態にて記載した(1)〜(4)の効果に加えて、以下に記す効果を有する。
なお上記各実施形態は、以下の態様で実施することもできる。
・上記各実施形態では、電極反応モデルがバトラーボルマーの式で表される場合について例示した。しかしこれに限らず、電極反応モデルはその他の式で表されるモデルであってもよい。
Claims (6)
- ニッケル水素二次電池の正極のメモリ効果の有無を判定する方法であって、
前記正極の電位を主反応の反応分極電圧と液体相電位と主反応の平衡電位との合成電位とするとともに、前記主反応の反応分極電圧を電極反応モデルから求めることで前記正極の電位を推定する電位推定工程と、
前記推定される正極の電位が、ニッケル水素二次電池の測定された電圧に対応する正極電位に近似するように、前記電極反応モデルのパラメータを推定するパラメータ推定工程と、
前記推定したパラメータが予め定めた範囲を超えるとき、前記正極にメモリ効果が生じていると判定するメモリ効果有無の判定工程とを備え、
前記推定したパラメータは、正極主反応の電流密度参照値、活物質水素/プロトン濃度参照値、正極主反応の非対称パラメータ(アノード反応)、及び、正極主反応の非対称パラメータ(カソード反応)のうちの少なくとも一つである
ことを特徴とするメモリ効果有無の判定方法。 - 前記予め定めた範囲を、ニッケル水素二次電池にメモリ効果が生じていないときに推定されるパラメータの値に基づいて定める
請求項1に記載のメモリ効果有無の判定方法。 - 前記電極反応モデルは、バトラーボルマーの式に基づくモデルである
請求項1又は2に記載のメモリ効果有無の判定方法。 - 前記バトラーボルマーの式は、パラメータとして、正極主反応の電流密度参照値、活物質水素/プロトン濃度参照値、正極主反応の非対称パラメータ(アノード反応)、及び、正極主反応の非対称パラメータ(カソード反応)を含む式であり、
前記推定したパラメータは、前記バトラーボルマーの式に含まれるパラメータである
請求項3に記載のメモリ効果有無の判定方法。 - 前記電極反応モデルはさらに、ターフェルの式に基づくモデルを含み、所定の条件に応じて前記バトラーボルマーの式に基づくモデルと前記ターフェルの式に基づくモデルとを
切り替えて使用する
請求項3又は4に記載のメモリ効果有無の判定方法。 - ニッケル水素二次電池の正極のメモリ効果の有無を判定するメモリ効果有無の判定装置であって、
正極の電位を主反応の反応分極電圧と液体相電位と主反応の平衡電位との合成電位とするとともに、前記主反応の反応分極電圧を電極反応モデルから求めることで前記正極の電位を推定する電位推定部と、
前記推定される正極の電位が、ニッケル水素二次電池の測定された電圧に対応する正極電位に近似するように、前記電極反応モデルのパラメータを推定するパラメータ推定部と、
前記推定したパラメータが予め定めた範囲を超えるとき、前記正極にメモリ効果が生じていると判定するメモリ効果有無判定部とを備え、
前記推定したパラメータは、正極主反応の電流密度参照値、活物質水素/プロトン濃度参照値、正極主反応の非対称パラメータ(アノード反応)、及び、正極主反応の非対称パラメータ(カソード反応)のうちの少なくとも一つである
ことを特徴とするメモリ効果有無の判定装置。
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