以下、図面を参照しながら、実施形態について説明する。
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る充電制御装置を備えた蓄電システムの概略構成の一例を示すブロック図である。本蓄電システムは、蓄電池1(第1電池)と、充電制御装置2とを備える。充電制御装置2は、充放電制御部21と、計測部22と、SOC(充電状態:State of Charge)推定部23と、記憶部24と、電池特性推定部25と、内部抵抗補正部26と、充電パターン作成部27とを備える。電池特性推定部25は、充放電履歴記録部251、内部状態パラメータ算出部252、電池特性算出部253を備える。充電パターン作成部27は、劣化情報記憶部271と、劣化情報取得部272と、上限値データ算出部273と、充電パターン算出部274と、を備える。
なお、充電制御装置2をCPU回路等にて実現し、蓄電池1に備え付けることにより、充電制御装置2を1つの蓄電池1として実現してもよい。
蓄電池1は、充電制御装置2により充電が行われる対象の電池である。蓄電池1は単位電池(セル)でもよいし、1つ以上の電池パックを備えてもよい。各電池パックは、1つ以上の電池モジュールを備えてもよい。各電池モジュールは、複数の単位電池を備えてもよい。各電池パックが備える電池モジュールの数は、同じでも異なっていてもよい。また、各電池モジュールが備える単位電池の数は、同じでも異なっていてもよい。
単位電池は、充放電が可能な二次電池であればよい。ここでは、リチウムイオン二次電池を想定して説明する。
なお、以降の説明において、特に断りがなければ、蓄電池という用語には、電池パック、電池モジュール、単位電池が含まれるものとする。
蓄電池1は、例えば、携帯電話、ノートパソコン、電気自転車、電気自動車、ドローンといった蓄電池を搭載した機器などの蓄電池でもよい。また、例えば、個人住宅、ビルディング、工場などの建物ごとに設置される定置用蓄電池でもよい。発電システムと連携した蓄電池、又は系統連系した蓄電池でもよい。
充電制御装置2は、蓄電池1に対して行われる充放電の制御を行う。また、接続された蓄電池1の状態の推定も行う。具体的には、蓄電池1に対し充放電を行わせ、当該充放電にて計測された電圧及び電流のデータに基づき、蓄電池1の状態に関する情報である内部状態パラメータ及び電池特性を推定する。内部状態パラメータ及び電池特性については後述する。
なお、使用頻度又は使用回数に基づき蓄電池1の状態を予測する方法もあるが、使用頻度又は使用回数が同じであっても、使用環境又は負荷などにより蓄電池の状態は異なる。ゆえに、高精度に蓄電池1の状態を予測するために、充電制御装置2は、充放電等の検査による計測値から蓄電池1の状態又は性能を予測する。
また、充電制御装置2は、蓄電池1の状態に応じた充電パターンを作成する。充電パターンとは、蓄電池1を充電するために、蓄電池1に流す電流の値を示すものを想定する。つまり、充電パターンは、蓄電池1の充電する際の制約条件を示す。なお、充電するために流す電流を充電電流と記載する。そして、充電制御装置2は、算出された充電パターンに基づき、蓄電池1を充電する。
蓄電池1は、使用された結果、状態が変化する。この状態の変化により、蓄電池1の性能が劣化する。蓄電池1が劣化する前の充電パターンにて、劣化した後の蓄電池1を充電すると、充電の効率が低下するだけでなく、蓄電池1の劣化も加速される可能性がある。ゆえに、充電の対象の蓄電池1の状態を把握した上で、充電の対象の蓄電池1に適した充電パターンを算出する必要がある。適した充電方法にて充電を行うことにより、蓄電池1の劣化を促進させずに、かつ充電速度を速めることができる。また、蓄電池1の寿命の低下を防ぐことができる。さらに、蓄電池1の劣化の速度を大きくするような充電条件、例えば大電流による充電や高温下での充電では発火などの安全性のリスクが高まる。本実施形態により算出される充電パターンは、蓄電池1の劣化の速度を抑制する条件を満たしており、必然的に充電時の安全性を確保することができる。
なお、充電制御装置2は、充電パターンの算出処理を行うために、劣化情報(参照データ)を用いるとする。劣化情報については、後述する。また、充電制御装置2の動作の詳細については、後述する。
なお、上記で説明したシステム構成は一例であり、上記の構成に限られるものではない。例えば、図1では、充電制御装置2は記憶部24と、劣化情報記憶部271とを備えているが、記憶部24と劣化情報記憶部271とをまとめた1つの記憶部としてもよい。また、充電制御装置2が他の装置などと接続され、充電制御装置2から他の装置に充電パターンが出力されてもよい。出力方法は、特に限られるものではない。ファイルでも、メールでも、画像でもよい。内部抵抗補正部26は、電池特性推定部25に含めてもよい。
また、通信又は電気信号により、充電制御装置2から処理に必要な情報を受取り、処理結果を充電制御装置2に渡すことができれば、充電制御装置2の各構成要素は、充電制御装置2の外部に存在してもよい。例えば、通信又は電気信号により、充電制御装置2から電池特性等を受取り、充電パターンを充電制御装置2に渡すことができれば、充電パターン作成部27は、充電制御装置2の外部に存在する装置であってもよい。
図2は、充電制御装置の概略処理のフローチャートの一例を示す図である。図2(A)は蓄電池1の状態を把握するための処理である。当該処理は、劣化などにより変化した蓄電池1の状態を把握するために行われるものであり、一定期間経過ごとに行われることを想定する。図2(B)は、充電パターンを算出するための処理である。当該処理は、蓄電池1の充電パターンを初めて作成する場合、又は蓄電池1の状態に変化があったと判断されて充電パターンを再作成する場合に、図2(A)の処理の後に行われることを想定する。なお、上記のタイミング以外にも行われてよい。
蓄電池1の状態を把握するための処理について説明する。充電制御装置2は、蓄電池1に対して、所定条件における充電(又は放電)の指示を行う(S101)。充電制御装置2は、蓄電池1からの充電(放電)結果を取得し(S102)、充電結果の解析を行う(S103)。充電結果の解析とは、充電結果に基づき、各単位電池の内部状態パラメータ及び電池特性(セル特性)を算出することである。具体的には、充電時又は放電時に計測された電流及び電圧のデータに基づき、内部状態パラメータを推定する。また、内部状態パラメータに基づき、電池特性の推定を行う。
内部状態パラメータは、単位電池の状態を示すものである。内部状態パラメータには、正極容量(正極の質量)、負極容量(負極の質量)、SOCずれ、及び内部抵抗が含まれることを想定する。SOCずれは、正極の初期充電量と、負極の初期充電量との差を意味する。
電池特性は、内部状態パラメータから算出することができるものであり、蓄電池1の電圧等の特性を示す。電池特性には、電池容量、開回路電圧(OCV:Open Circuit Voltage)、OCV曲線などが含まれることを想定する。また、内部抵抗は電池特性にも含めてよい。OCV曲線は、蓄電池に関する何らかの指標と開回路電圧との関係を示すグラフ(関数)を意味する。電池容量は、正極容量の範囲と負極容量の範囲とが重なる範囲である。SOCが100%のときは正極と負極の電位差が電池の充電終止電圧となり、SOCが0%のときは正極と負極の電位差が電池の放電終止電圧となる。このように、電池容量は充電量に基づき算出することができる。
充電パターンを算出するための処理について説明する。充電制御装置2は、劣化情報記憶部271から、劣化情報を取得する(S201)。そして、算出された内部状態パラメータ又は電池特性(セル特性)に関する劣化情報と、劣化速度の指定値と、に基づき、充電パターンを算出する(S202)。詳細は後述する。充電制御装置2は、算出された充電パターンに従って、蓄電池1を充電する(S203)。これにより、蓄電池1に適した充電方法にて充電が行われる。
次に、充電制御装置2が備える構成要素について説明する。
充放電制御部21は、蓄電池1に対し、所定条件での充放電の指示を行う。充放電は、蓄電池1の内部状態パラメータを計測するために行われる。充放電は、単位電池の劣化の進行により、蓄電池1の状態の変化が無視できなくなる前に、行われる必要がある。ゆえに、充放電は、電池特性の変化を考慮して適切に定められた一定期間又は時刻ごとに行われる。なお、充放電制御部21は、図示しない入力部を介して、使用者、他のシステムなどからの指示を受け付けた場合も、充放電の指示を行ってもよい。
また、充放電制御部21は、充電パターン作成部27が作成した充電パターンに基づき、蓄電池1を充電する。なお、充電制御装置2は充電パターンの作成までを行い、充電パターンに基づく充電は、充電制御装置2以外の装置が行ってもよい。
計測部22は、蓄電池1に関する情報を計測する。計測される情報は、単位電池の正極端子と負極端子との間の電圧と、単位電池に流れる電流と、単位電池の温度などがある。計測部22の計測データには、蓄電池1の充電又は放電時に計測された蓄電池1の、電圧、電流、温度などのデータが含まれる。
SOC推定部23は、計測部22の計測データに基づき、蓄電池1の現時点でのSOC(充電状態)を推定する。なお、電池特性推定部25が蓄電池1の現在の状態に基づき算出したSOC−OCV曲線を用いて、SOCが推定されてもよい。
記憶部24は、電池特性推定部25に係る処理を行うために用いるデータが記憶される。例えば、単位電池の正極又は負極の充電量と、電位との関係を示す関数などが格納される。その他のデータが記憶されてもよい。
電池特性推定部25は、計測部22の計測データに基づき、蓄電池1の現時点における内部状態パラメータと電池特性を算出する。電池特性が不要な場合は、電池特性は算出されなくともよい。電池特性には、前述のとおり、電池容量、内部抵抗、開回路電圧(OCV)、OCV曲線が含まれる。OCV曲線(関数)は、例えば、二次電池の開回路電圧(OCV)と、二次電池の充電状態又は充電された電荷量との関係を示す関数でもよい。SOCとOCVとの関係を示すSOC−OCVグラフでもよい。充電量とOCVとの関係を示す充電量−OCVグラフでもよい。算出するOCV曲線の種類は、予め定めておけばよい。
電池特性の算出には、様々な電池特性測定方法を用いることができる。具体的には、実際に電流を流して電池容量の測定を行う充放電試験、主に内部抵抗値の測定を行う電流休止法、交流インピーダンス測定などの電気化学的測定などがある。また、これらを組み合わせて測定してもよい。また、充放電曲線を解析して、簡易的に電池特性を推定する方法を用いてもよい。
電池特性推定部25の内部構成について説明する。
充放電履歴記録部251は、蓄電池1の充電時又は放電時に、計測部22で計測された、電圧、電流、及び温度などのデータ(履歴)を記録する。当該記録は、蓄電池1の充電の開始から、蓄電池1の充電の終了まで、一定時間間隔ごとに繰り返し行われる。この時間間隔は、当該記録を用いる処理に応じて、任意に設定すればよい。例えば、0.1秒から1秒間隔程度に設定することが考えられる。記録される時刻は、絶対時刻でも、充電が開始されてからの相対時刻でもよい。また、充放電履歴記録部251の処理が一定時間間隔で繰り返されている場合は、時刻の記録は省略してもよい。
図3は、充電時の電流及び電圧に関するデータの一例を示す図である。図3に示すデータは、二次電池の充電方法として一般的に用いられる定電流定電圧充電の一例である。図3の破線は、電流履歴を表し、実線は電圧履歴を表す。
後述する内部状態パラメータ算出部252の処理においては、例えば、定電流定電圧充電全体の充電履歴、又は定電流充電区間(図3のt0からt1の間)の充電履歴のみを用いてもよい。なお、充電は必ずしもSOCが0%のときから開始されるわけではなく、SOCが20%などのときから開始されてもよい。
内部状態パラメータ算出部252は、充放電履歴記録部251が記録した履歴に基づき、内部状態パラメータである、単位電池の正極又は負極を構成する活物質の量、初期充電量、単位電池の内部抵抗をそれぞれ算出する。
内部状態パラメータ算出部252は、活物質量及び内部抵抗に基づき蓄電池電圧を算出する関数を利用する。蓄電池充電時又は放電時の電流データ及び電圧データ、並びに当該関数に基づき算出された蓄電池電圧と、測定された電圧との差が少なくなるような活物質量と内部抵抗を回帰計算により求める。なお、正極が複数の活物質から構成されてもよいが、本実施形態では正極、負極がそれぞれ1種類の活物質からなる二次電池を例にとって説明する。
正極、負極がそれぞれ1種類の活物質からなる二次電池を充電する場合、時刻tにおける電圧(端子電圧)Vtは、次式で表すことができる。
Itは時刻tにおける電流値、qtは時刻tにおける蓄電池の充電量を表す。fcは正極の充電量と電位との関係を示す関数、faは負極の充電量と電位との関係を示す関数を表す。qo cは正極の初期充電量、Mcは正極の質量を表す。qo aは負極の初期充電量、Maは負極の質量を表す。Rは内部抵抗である。
電流値Itには、充放電履歴記録部251により記録された電流データが用いられる。充電量qtは、電流値Itを時間積分することにより算出される。関数fc及び関数faは、関数情報として、記憶部24に記録されているものとする。
その他の正極の初期充電量qo c、正極の質量Mc、負極の初期充電量qo a、負極の質量Ma、及び内部抵抗Rの5つの値(パラメータセット)は、回帰計算によって推定される。なお、各極の活物質量は、各極の質量の所定の割合とみなして、算出されてもよい。
図4は、内部状態パラメータ算出部252の処理のフローチャートの一例を示す図である。内部状態パラメータ算出部252の処理は、蓄電池1の充電が終了したのち開始される。
内部状態パラメータ算出部252は、初期化を行い、前述のパラメータセットに初期値を設定し、回帰計算の繰り返し回数を0に設定する(S301)。初期値は、例えば、前回の活物質量算出処理が行われた際に算出された値でもよいし、想定され得る値などを用いてもよい。
内部状態パラメータ算出部252は、次式で表される残差Eを計算する(S302)。
内部状態パラメータ算出部252は、パラメータセットの更新ステップ幅を計算する(S303)。パラメータセットの更新ステップ幅は、例えば、Gauss−Newton法、Levenberg−marquardt法などを用いて算出することができる。
内部状態パラメータ算出部252は、更新ステップ幅の大きさが、予め定められた大きさ未満であるかどうかを判定する(S304)。更新ステップ幅の大きさが予め定められた大きさ未満であった場合(S304のNO)は、内部状態パラメータ算出部252は、計算が収束したと判定し、現在のパラメータセットを出力する(S307)。更新ステップ幅の大きさが予め定められた閾値以上であった場合(S304のYES)は、回帰計算の繰り返し回数が、予め定められた値を超えているかを確認する(S305)。
回帰計算の繰り返し回数が予め定められた値を超えている場合(S305のYES)は、現在のパラメータセットを出力する(S307)。回帰計算の繰り返し回数が予め定められた回数以下であった場合(S305のNO)は、パラメータセットにS303で算出した更新ステップ幅を加算し、回帰計算の繰り返し回数を1つ加算する(S306)。そして、再度、残差の計算に戻る(S302)。以上が、内部状態パラメータ算出部252の処理の流れを示すフローチャートである。
本実施形態においては、内部状態パラメータ算出部252の入力として充電履歴を用いたが、放電履歴を用いても、同様に活物質量を算出することは可能である。なお、放電履歴を用いる場合にも、内部状態パラメータ算出部252の処理の流れ及び用いられるパラメータは、充電履歴を用いて活物質量を算出する場合と同一のものを用いることが可能である。
電池特性算出部253は、蓄電池1の電池特性である開回路電圧算を算出する。また、電池特性算出部253は、内部状態パラメータ算出部252により算出された、正極の初期充電量qo c、正極の質量Mc、負極の初期充電量qo a、負極の質量Maを利用し、蓄電池の充電量と開回路電圧との関係を算出する。
図5は、電池特性算出部253の処理の流れを示すフローチャートの一例を示す図である。このフローチャートは、内部状態パラメータ算出部252の処理が終了した後に開始される。このフローチャートでは、充電量qnを一定の値△qnにて増減し、開回路電圧が下限値未満から下限値以上になる充電量qn0を発見した上で、qn0を初期値として、開回路電圧が上限値を超えるまで、△qnごとにqnを増加させていき、増加の度に、そのときの充電量と開回路電圧を記録する。これにより、開回路電圧が下限値から上限値までの範囲における充電量と開回路電圧との関係を算出することができる。充電量qn0と開回路電圧が上限値のときの充電量qnとの差が電池容量となる。
電池特性算出部253は、充電量qnの初期値を設定する(S401)。qnの初期値は、0又は0よりも蓄電池1の公称容量の数%程度小さい値にすればよい。具体的には、蓄電池1の公称容量が1000mAhであれば−50mAhから0mAh程度の範囲に設定すればよい。
電池特性算出部253は、開回路電圧を算出する(S402)。開回路電圧の算出には、次式を用いることができる。
次に、電池特性算出部253は、算出された開回路電圧を、予め定められた蓄電池下限電圧と比較する(S403)。蓄電池下限電圧は、蓄電池1に用いられる正極活物質と負極活物質との組み合わせにより定まる値である。具体的には、正極活物質、負極活物質それぞれについて、安全性、寿命、抵抗などの観点から各観点それぞれの適切な使用範囲の電圧を定め、それらの組み合わせにより、蓄電池としての使用範囲の下限及び上限電圧を決定する。
開回路電圧が予め定められた下限電圧未満でない場合(S403のNO)は、充電量qnからΔqnを減算し(S404)、再度、開回路電圧を算出する(S402)。開回路電圧が予め定められた下限電圧未満である場合(S403のYES)は、電池特性算出部253は、充電量qnにΔqnを加算する(S405)。これらにより、充電量qnは下限値に近づく。Δqnは任意の値に設定可能である。例えば、蓄電池1の公称容量の1/1000から1/100程度にすることが考えられる。具体的には蓄電池1の公称容量が1000mAhであれば1mAhから10mAh程度の範囲に設定することが考えられる。
電池特性算出部253は、加算された充電量qn+Δqnを用いて、開回路電圧を算出する(S406)。そして、電池特性算出部253は、算出された開回路電圧を、前述の下限電圧と比較する(S407)。開回路電圧が下限電圧未満であった場合(S407のNO)は、S405に戻り、再度、充電量qnにΔqnを加算する(S405)。開回路電圧が下限電圧以上であった場合(S407のYES)は、開回路電圧が下限値未満から下限値以上になったため、このときの充電量qnをqn0とし、充電量qn0と開回路電圧Enを合わせて記録する(S408)。なお、この充電量qn0の値を基準値として0と表してもよい。その場合は、以降の記録の際に、充電量qnの値からqn0の値を引いた値を記録する。
電池特性算出部253は、充電量qnにΔqnを加算し(S409)、開回路電圧を算出し(S410)、充電量qnからqn0を引いた値と、算出された開回路電圧Enを記録する(S411)。
電池特性算出部253は、算出された開回路電圧と予め定められた蓄電池の上限電圧とを比較する(S412)。蓄電池の上限電圧は、蓄電池1に用いられる正極活物質と負極活物質の組み合わせによって定まる値である。開回路電圧が予め定められた上限電圧未満であった場合(S412のNO)は、再度、充電量qnにΔqnを加算する処理に戻る(S409)。開回路電圧が予め定められた上限電圧以上となった場合(S412のYES)は、処理を終了する。以上が、電池特性算出部253の処理の流れを示すフローチャートである。
図6は、充電量と開回路電圧との関係を表すグラフ(充電量―OCV曲線)の一例を示す図である。図6(A)は電池特性算出部253により求められた現在の状態における充電量―OCV曲線である。図6(B)は、図6(A)に示すグラフの縦軸を、下限電圧から上限電圧までにした図である。
図7は、SOCと開回路電圧との関係を表すグラフ(SOC‐OCV曲線)の一例を示す図である。横軸が、充電量ではなく、SOCである点が図6と異なる。図7は、図6(B)に示すグラフをSOC−OCV曲線に変換したグラフ(実線)と、初期状態の蓄電池のSOC−OCV曲線(破線)とを、重ねて表示したものである。図7の破線が初期状態の蓄電池の開回路電圧を、実線が蓄電池の劣化などによる変化後(現在)の蓄電池の開回路電圧を表す。SOCは、満充電容量に対して現在充電されている電荷量の割合を示し、0から1又は0から100%の間の値で表される。
充電量からSOCへの変換は、充電量―OCV曲線により算出される電池容量と充電量を用いて、行われればよい。なお、ここでの説明において、単に充電状態と称しているものには、SOCだけでなく、充電量なども含まれるものとする。
変化後の曲線は、容量の減少に伴い、曲線の長さが短くなるが、図7によれば、曲線の長さだけでなく形状自体が変化していることがわかる。例えば、開回路電圧に基づいて充電状態(SOC)を推定する場合に、計測された開回路電圧がAであるとき、正しい充電状態(現在の充電状態)はB1となる。しかし、開回路電圧の曲線が変形しないとみなした場合、つまり、初期状態のおけるSOC−OCV曲線で開回路電圧を求めようとすると、電圧Aにおける充電状態はB2と求められ、充電状態の推定精度が低くなる。ゆえに、この第1の実施形態にように、現在の状態におけるSOC−OCV曲線を利用することにより、充電状態を高精度に測定することが可能となる。
電池特性推定部25により算出されたSOC−OCV曲線は、SOC推定部23に取得され、SOC推定部23が、SOC−OCV曲線に基づき、蓄電池1のSOCを推定してもよい。
したがって、第1実施形態によれば、特別な充放電などを行うことなく、使用に伴い変化する充電量と開回路電圧との関係(充電量―OCV曲線又はSOC−OCV曲線)を正確に把握することができ、充電状態を高精度に推定することが可能となる。
なお、ここでは、二次電池の正極、負極がそれぞれ1種類の活物質からなる場合について説明したが、二次電池の正極、負極のいずれかが複数の活物質からなる二次電池に対しても同様に適用することが可能である。また、蓄電池1の活物質量を記憶する他の記憶部が予め用意されている場合には、電池特性算出部253は、この他の記憶部に記憶された活物質量を用いて、予め定められた蓄電池の電圧範囲における二次電池の充電量と開回路電圧との関係を示すグラフを算出することができる。
電池特性算出部253は、その他の電池特性も算出してよい。例えば、算出した開回路電圧等を用いて、蓄電池1の電圧、電力又は電力量を算出してもよい。算出方法は、下記に示す算出式などを用いればよい。下記の算出式のcは所定の定数を示す。
(電圧)
電圧=開回路電圧−c×内部抵抗×電流
(電力)
電力=電流×開回路電圧−c×内部抵抗×(電流)2
(電力量)
電力量=電池容量×平均電圧
なお、内部抵抗は、内部状態パラメータ算出部252が算出した推定値を用いてもよいし、後述する内部抵抗補正部26が補正した推定値を用いてもよい。また、電池特性算出部253は、一度算出した電池特性を、内部抵抗補正部26が補正した推定値を用いて、算出し直してもよい。内部抵抗補正部26が算出した推定値のほうが精度を向上させることができる。電流は計測部22の計測データから取得すればよい。なお、電池特性算出部253は、算出に必要な式、定数の値などを、記憶部24などを介して受け取ってもよい。
内部抵抗補正部26は、電池特性推定部25より算出された内部抵抗Rと、計測部22で計測された温度Tに基づき、現在の蓄電池1の温度Tにおける内部抵抗へ補正する。補正後の内部抵抗Rcrとする。なお、内部抵抗を補正しないときは、内部抵抗補正部26はなくともよい。
内部抵抗補正部26が行う内部抵抗の温度補正について説明する。内部抵抗の温度補正とは、例えば、電池特性推定部25の処理にて説明したように、充放電曲線から、各活物質の充電量−OCVデータを参照し、電池容量、内部抵抗、及び正負極の各活物質の劣化の程度を推算する蓄電池性能診断方法に対し、温度の影響を補正する手段を提供し、蓄電池性能診断を良好に適用することができる温度範囲を拡大するものである。
その原理と方法について、説明する。リチウムイオン二次電池は、対向する正極と負極と、正負極間のLi塩を含む電解質とを有する。また、正極及び負極には、活物質が集電箔上に塗布されている。集電箔は、蓄電池外装の正極及び負極端子にそれぞれ接続されている。蓄電池の充放電時には、電解質を通じてLiイオンが正極活物質と負極活物質間を移動し、電子が活物質から外部端子へ流れる。
活物質は、物質ごとに、可逆に挿入又は脱離可能なLi量と電位を有している。一定の充放電電圧の範囲にて、蓄電池が貯蔵できるエネルギー量は、蓄電池内の正極活物質と負極活物質の量及びその組み合わせにより決定される。
また、充放電時にはLiイオン伝導、電解質中のLiイオンが活物質内部へ侵入する際の電荷移動抵抗、電解質と活物質の界面に形成される被膜による抵抗、活物質や集電箔を電子が流れる電気抵抗が生じる。蓄電池の内部抵抗は、これらLiイオンの移動、電子の移動、電荷移動抵抗、被膜の抵抗、並びに正極及び負極内での拡散抵抗などの総和となる。
一般的に、リチウムイオン二次電池内部の蓄電池制御システムでは、安全性の観点から、各単位電池の電圧、電池パック内の温度などを計測している。これらの計測データに基づき、電池特性を算出することができれば、算出に係る費用及び時間を抑えることができる。
しかしながら、充電放電条件が細かくランダムに変動する実使用時の蓄電池挙動を解析することは非常に難しい。時間に依存する抵抗、拡散抵抗、及び緩和過程などが複雑に複合された現象となり、計算モデル化が容易ではないからである。一方で、例えば、一定条件下で行われた電気自動車の充電のような単純な挙動のみを対象とすれば、簡略化モデルにより、解析が可能となる。
そこで、本実施形態に係る蓄電池性能推定方法では、一定条件下での充電又は放電のデータ(充放電カーブ)により求められた、各活物質のLi挿入脱離反応に対する「電位−充電量」のカーブ(曲線)に基づき、各活物質の量、充電電流の印加に伴う内部抵抗による蓄電池電圧の上昇(過電圧)を変数として、フィッティング計算により変数の値を定める。これにより容量減少(各活物質の減少)及び内部抵抗の増加を推定することができる。
しかし、実際の蓄電池の使用状況下では、外部環境、充電時の蓄電池の状態などにより温度条件が変動する。蓄電池の温度が変化すると蓄電池性能も変化する。特に内部抵抗は、温度の低下に大きくより増加する。図8は、各温度におけるSOCと反応抵抗Rctとの関係の一例を示す図である。反応抵抗Rctは内部抵抗の成分の1つである。図8に示す通り、温度の違いにより、反応抵抗が大きく異なることが分かる。このため、温度が異なる測定データの解析結果を比較しても、温度による解析結果の変動が大きく影響し、劣化による内部抵抗の増加の評価は難しい。
したがって、実使用下の蓄電池の測定データに基づき、電池特性を推定する場合、内部抵抗の温度補正を行うことにより、電池特性の精度が向上する。
蓄電池の内部抵抗は、複数の種類の抵抗成分が複合されている。各抵抗成分は、温度依存性及び劣化による増加速度が異なる。そのため、劣化の進行により、抵抗の占める割合が変化し、それに伴い内部抵抗全体としての温度依存性も変化する。このことに着目して、本実施形態の蓄電池性能推定方法における内部抵抗の温度補正は、内部抵抗を、反応抵抗Rct、拡散抵抗Rd、及びオーミック抵抗Rohmの3つの成分に分け、それぞれ固有の温度依存性に従い、基準温度T0に応じた値へ補正した後で、合算する。
具体的には、以下の数式により、測定時の蓄電池温度から基準温度への補正を行う。なお、下記の式中のRgasは気体定数を表す。T0は基準温度、Tは測定時の蓄電池温度を表す。R1は定数を表す。Ea、Eb、Ecは、それぞれの抵抗成分の温度依存性を決定する定数である。
(反応抵抗)
Rct(T0)=Rct(T)×Exp(−Ea/(Rgas・T))/Exp(−Ea/(Rgas・T0))
(拡散抵抗)
Rd(T0)=Rd(T)×Exp(−Eb/(Rgas・T))/Exp(−Eb/(Rgas・T0))
(オーミック抵抗)
Rohm(T0)=(Rohm(T)−R1)×Exp(−Ec/(Rgas・T))/Exp(−Ec/(Rgas・T0))+R1
図9は、各抵抗成分について説明する図である。オーミック抵抗は、電解液のイオン伝導抵抗と蓄電池内の電子伝導抵抗とを含む。温度依存性が相対的に小さい電子伝導抵抗は、定数とする。反応抵抗は、電荷移動抵抗と表面被膜の抵抗とを含む。拡散抵抗は、活物質内部、電極内のリチウムイオン拡散に伴う抵抗を含む。
オーミック抵抗のEcは、Liイオンの電解液中での移動に伴う活性化エネルギーを表す。反応抵抗のEaは、電解液中で溶媒和されたLiイオンが活物質表面で脱溶媒和する際のエネルギーを表す。拡散抵抗のEbは、活物質内部におけるLiイオンサイト間移動に伴う活性化エネルギーと考察される。従って、劣化過程ではこれらの値は一定で変化しないと考えることが出来る。
これらEa、Eb、Ecの値は、単位電池の交流インピーダンス測定、電流パルス測定等により算出することができる。解析対象とする蓄電池に関するEa、Eb、Ecの値は、予め測定値から算出しておき、記憶部24に記憶する。そして、内部抵抗の温度補正演算時に参照すればよい。
次に、充放電カーブからの電池特性の推算において、内部抵抗を3つの成分に分けて算出する方法について説明する。
蓄電池の劣化過程において、内部抵抗の3つの成分はいずれも上昇するが、劣化による増加の速度は、各成分により異なる。そのため、評価する蓄電池寿命の範囲を限定することにより、劣化しないという仮定が成立する場合もあり得る。例えば、電気自動車用の蓄電池であって、評価の下限を残容量90〜70%程度までと想定した場合は、使用条件、蓄電池の構成などにも影響されるが、蓄電池寿命を通じて、一部の抵抗成分を一定値と近似できることもあり得る。
(第一の方法)
算出された蓄電池の内部抵抗値からの3成分の算出を行う第一の方法は、オーミック抵抗成分及び拡散抵抗成分を一定とみなして、残差を反応抵抗とみなす方法である。この方法では、オーミック抵抗成分及び拡散抵抗成分については、劣化による増加が生じないと想定し、セル温度に依存する温度変化のみを考慮する。充放電曲線の解析においては、ある温度Tに対して推定された内部抵抗値から、温度Tにおけるオーミック抵抗成分及び拡散抵抗成分を引き、その残りを反応抵抗成分とする。そして、それぞれの成分を基準温度T0へ温度補正した上で合計し、基準温度T0における内部抵抗値を算出する。第一の方法は、正負極の活物質が安定しているSOCの範囲内であって、温度は室温付近以下、蓄電池の電流は比較的小さいといった緩やかな使い方がされる場合に適する。
(第二の方法)
第二の方法は、オーミック抵抗成分及び拡散抵抗成分を、これら2つの抵抗成分それぞれと、累積時間又は累積電力量との関係に関する関数により推算し、残差を反応抵抗とする方法である。この方法では、オーミック抵抗成分及び拡散抵抗成分についての劣化が、時間又は充放電サイクル量に相関すると想定して、オーミック抵抗成分及び拡散抵抗成分を算出する。充放電曲線の解析においては、ある温度Tに対して推定された内部抵抗値から、算出されたオーミック抵抗成分及び拡散抵抗成分を引き、残りを反応抵抗成分とする。そして、それぞれの成分を基準温度T0へ温度補正した上で合計し、基準温度T0における内部抵抗値を算出する。第二の方法は、オーミック抵抗成分及び拡散抵抗成分の劣化が、比較的小さいけれども、確実に進行する場合に適している。
また、累積時間又は累積電力量のいずれかを用いるかは、使用環境などに応じて、決定すればよい。例えば、貯蔵時にガスが発生するなどして、蓄電池の劣化が進む場合には、累積時間による劣化量推定が適している。一方、活物質の体積変化など、充放電などの処理のサイクルの繰り返しによる蓄電池の劣化が顕著な場合には、累積電力量による劣化量推定が適している。
なお、累積時間又は累積電力量のデータは、予め保持しておくものとする。累積電力量は、機器の稼動量、例えば、車両であれば走行距離で代替してもよい。
(第三の方法)
第三の方法は、反応抵抗成分及び拡散抵抗成分が、予め保持する各活物資の拡散抵抗と充電量とのデータ、又は反応抵抗と充電量とのデータにより推算され、残差をオーミック抵抗成分とする方法である。第三の方法においては、第一及び第二の方法とは異なり、充放電曲線の解析において、活物質の反応抵抗−充電量カーブ、拡散抵抗−充電量カーブ、又は蓄電池の内部抵抗−充電量カーブを参照して回帰計算することにより、反応抵抗及び拡散抵抗の値を推定する方法である。活物質の抵抗成分が充電量、すなわちSOCに対して依存性を有しており、劣化してもその依存性の傾向は変化しないことを利用して、蓄電池の内部抵抗−充電量の傾向から、内部抵抗の組成の推定を行う。
活物質の反応抵抗−充電量カーブ及び拡散抵抗−充電量カーブは、予め測定する必要がある。また、劣化による変化の様態も蓄電池の構成によるため、予め測定しておく必要がある。例えば、抵抗性の表面被膜が形成される場合では、内部抵抗が一様に一定値ずつ増加し、活物質が減少する場合には、一様にn倍となるような挙動をとると考えられる。
第三の方法は、反応抵抗−充電量に顕著な変化があり、その結果として蓄電池としての反応抵抗に充電量の依存性が明確に現れている場合に適している。
(第四の方法)
第四の方法は、予め保持する各活物資の拡散抵抗−充電量、反応抵抗−充電量、及びオーミック抵抗−充電量データを用いて回帰計算することにより、反応抵抗成分、オーミック抵抗成分、及び拡散抵抗成分を推定する方法である。第三の方法では、拡散抵抗−充電量、反応抵抗−充電量のみを用いたが、第四の方法では、オーミック抵抗−充電量データも用いることが特徴である。活物質のオーミック抵抗−充電量の依存性に特徴がある場合、例えば、充放電により活物質の電子導電性が大きく変化する場合に有効である。
電池特性算出部253は、補正された内部抵抗を用いて、実際に出力可能な電力量等を電池特性として算出してもよい。実際に出力可能な電力量は、充電量−OCV曲線と、放電可能な電気量と、補正された内部抵抗とに基づき算出することができる。
充電パターン作成部27は、電池特性推定部25が推定した内部状態パラメータ又は電池特性の推定値と、劣化速度の指定値とに基づき、充電パターンを算出する。充電パターンにおける充電電流の値は、充電による劣化速度が指定された値以下になるように算出される。
劣化速度は、二次電池の劣化が進行する速度を示す。劣化速度の指定値は、予め劣化情報記憶部271に記憶されていてもよいし、図示されていない入力部を介して、ユーザ等から受け付けてもよい。
劣化情報記憶部271は、充電制御装置2が蓄電池1の充電パターンを算出する際に必要となる、二次電池の劣化に関する情報(データ)を格納する。以降、当該情報を劣化情報と記載する。劣化情報は、充電パターンを算出する際に参照されるグラフ又は関数などの参照データと言える。なお、蓄電池1と区別し易くするために、劣化情報には、少なくとも劣化モデル又は劣化マップが含まれる。
劣化情報記憶部271は、劣化情報以外の情報を記憶してもよい。例えば、充電パターン作成部27の処理に用いられる制約条件などを記憶してもよい。作成された充電パターンが記憶されてもよい。なお、劣化情報記憶部271は記憶部24と同一でもよい。
まず、劣化モデルについて説明する。図10は、劣化モデルについて説明する図である。図10には、劣化速度を算出するためのグラフである劣化速度算出グラフの例が示されている。劣化速度算出グラフは、二次電池に関するパラメータと劣化速度との関係を示すグラフである。以降、この二次電池に関するパラメータを、参照パラメータと記載する。
劣化モデルとは、二次電池の劣化がどのように進行するかを表したものであり、例えばこれら劣化速度算出グラフ全体を指す。劣化速度算出グラフは、二次電池に対して行われた検査の結果に基づき算出されたグラフである。本実施形態では、劣化速度算出グラフは予め算出され、劣化情報記憶部271に記憶されていることを想定する。
劣化速度算出グラフは、ある前提条件を満たす複数の二次電池の検査結果から導出される。前提条件は特に限られるものではなく、様々な前提条件があるとする。例えば、単位電池の正極の活物質量が所定の範囲内であることを前提条件とする。そして、当該前提条件を満たす複数の二次電池に対し検査を行い、検査結果に基づき劣化速度算出グラフを算出する。この際、検査結果に対して内部状態パラメータの推定を行い、正極活物質量の変化および負極活物質量の変化より、正極劣化モデルと負極劣化モデルを得ることができる。蓄電池1の正極の活物質量が当該所定の範囲に含まれる場合、つまり蓄電池1が当該前提条件を満たす場合、当該前提条件により算出された劣化速度算出グラフにより、蓄電池1の劣化速度が予測できる。また、劣化速度算出グラフの作成方法は、特に限られるものではなく、任意に定めてよい。
その他にも、例えば、二次電池の保管又は使用時の環境に関する事項を前提条件としてもよい。環境に関する前提条件として、温度、湿度といった事項が考えられる。また、例えば、二次電池の使用履歴に関する事項を前提条件としてもよい。使用履歴に関する前提条件として、充電又は放電の回数、使用された総時間などが考えられる。
二次電池の劣化の原因としては、電解液との反応性、活物質の膨張収縮による破損などが想定されるが、二次電池の劣化の原因を特定することは容易ではない。また、二次電池の保管状況、使用履歴等により劣化の状況も異なる。ゆえに、予め様々な前提条件及び参照パラメータにおける劣化速度算出グラフを算出しておき、蓄電池1の状態に合致する劣化速度算出グラフを用いる。つまり、蓄電池1の状態と同程度の状態である二次電池の検査結果に基づき算出された劣化速度算出グラフが用いられる。これにより、蓄電池1の劣化速度を精度良く予測することができる。
様々な種類の検査が行われることにより、参照パラメータも多数の種類があるとする。例えば、正極又は負極の活物質のSOC、C−rate(充放電電流値)、電位といった二次電池の状態を示す参照パラメータが考えられる。また、温度、湿度など環境に関する事項又は二次電池の使用履歴に関する事項を参照パラメータとして用いてもよい。なお、前提条件は、定数である参照パラメータとも言える。
図10(A)は、ある前提条件を満たす二次電池におけるSOCと正極の劣化速度との関係を示す(SOC−劣化速度)グラフである。横軸がSOCを示し、縦軸が正極の相対的な劣化速度を示す。相対的な劣化速度は、劣化速度が最も低いときの値を1としたときの相対値を示す。以降、特に断りがないときは、劣化速度は相対値を表すものとする。図10(A)は、ある前提条件を満たす二次電池のSOCが20%から60%のときは正極の劣化速度が低く、SOCが20%未満までと、SOCが60%を超えたときは正極の劣化速度が高いことを示す。
図10(B)は、ある前提条件を満たす二次電池におけるSOCと負極の劣化速度との関係を示すグラフである。図10(A)のグラフと異なり、SOCが20%未満までの範囲においても、負極の劣化速度が低い。このように、同じ参照パラメータであっても、正極と負極とで劣化速度が同じとは限らない。
図10(C)は、二次電池の温度と劣化速度との関係を示すグラフである。使用時、保管時などにおける温度に対する劣化速度の依存性が示される。図10(D)は、二次電池のC−rateと劣化速度との関係を示すグラフである。劣化速度のC−rateに対する劣化速度の依存性が示されている。
なお、劣化速度算出グラフの代わりに、劣化速度を算出するための関数を用いてもよい。例えば、劣化速度算出グラフの近似関数を用いてもよい。
次に劣化マップについて説明する。図11は劣化マップについて説明する図である。劣化マップは、複数の要素から成る多次元のグラフであり、劣化モデルの劣化速度算出グラフの集合体である。例えば、劣化マップは温度とSOCと充電電流値に対して劣化速度を定量的にマップ化したものである。なお、劣化マップも、劣化モデル同様、正極及び負極ごとに存在してよい。正極劣化マップと負極劣化マップから二次電池の劣化マップが作成できる。
図11(A)は、SOCがある値のときの、温度と、C−rateと、劣化速度の3つの参照パラメータの関係を示す3次元グラフである。図11(A)の劣化マップは、SOCの値ごとに存在する。温度の軸に垂直な平面における図11(A)の断面グラフ(2次元グラフ)は、前提条件がSOCと温度であって、参照パラメータがC−rateである劣化速度算出グラフになる。C−Rateの軸に垂直な平面における図11(A)の断面グラフは、前提条件がSOCとC−rateであって、参照パラメータが温度である劣化速度算出グラフになる。このように、前提条件は参照パラメータの1種である。
図11(B)は、SOCと、温度と、二次電池に対する充電電流の上限値との3つの参照パラメータの関係を示す3次元グラフである。なお、充電電流の上限値を、電流上限値(第1上限値)と記載する。温度及び許容できる劣化速度が指定された場合、SOCの値ごとの図11(A)を用いて、SOCの値ごとのC−rateの値が算出されることにより、図11(B)が生成される。
例えば、図11(A)のグラフは、SOCが40%のときのグラフとする。そして、前提条件として温度が−10℃、許容できる劣化速度が20以下と指定されたとする。図11(A)により、C−rateの最大値は4Cと判明する。1C−rateは、電池容量限度まで充電(放電)された二次電池の電気を1時間で放電(充電)するための電流値に等しい。二次電池の電池容量が2500mAhとした場合、C−rateの最大値が4Cのため、電流上限値は10Aとなる。そして、SOCが40%、温度が−10℃、電流上限値が10Aの点がプロットされて、図11(B)のようになる。
なお、図11(A)と図11(B)では、参照パラメータがC−rateとSOCで異なっていたために、C−rateとSOCの変換を行ったが、参照パラメータが、図11(A)と図11(B)で同じの場合もあり得る。また、説明の便宜上、図11(A)と図11(B)の2つの劣化マップを用いて説明したが、図11(A)と図11(B)が合わさった劣化マップでもよい。
このように劣化モデル及び劣化マップは、二次電池の劣化速度と、SOC、C−rateなどの1つ以上の参照パラメータと、電流上限値との関係を示すデータを含む。
なお、充電パターン作成部27は、劣化モデルに基づき劣化マップを生成してもよいし、劣化マップに基づき劣化モデルを生成してもよい。
劣化情報取得部272は、電池特性推定部25から、内部状態パラメータ及び電池特性の少なくともいずれかに係る推定値を取得する。そして、取得した推定値に基づき、劣化情報記憶部271から、蓄電池1に対応する劣化情報(第1参照データ)を取得する。なお、正極に係る推定値に基づき正極に対応する劣化情報(第2参照データ)を取得し、負極に係る推定値に基づき負極に対応する劣化情報(第3参照データ)を取得してもよい。例えば、内部状態パラメータとして算出された正極又は負極の初期充電量に基づいて劣化情報が取得されてもよい。例えば、内部状態パラメータとして算出された正極又は負極の質量に基づいて劣化情報が取得されてもよい。例えば、電池特性として算出された開回路電圧に基づいて劣化情報が取得されてもよい。
予め劣化情報を作成しておくにあたっての二次電池の前提条件を、蓄電池1の推定値が満たす場合、当該劣化情報は蓄電池1に対応すると言える。例えば、正極の活物質量が所定の範囲内であるという前提条件を満たす複数の二次電池に基づき劣化情報が作成されていた場合に、蓄電池1の正極の活物質量の推定値が当該所定の範囲内であるときは、当該劣化情報は蓄電池1に対応すると言える。また、蓄電池1に対応する劣化情報とは、蓄電池1の充電パターンを作成するのに適した劣化情報と言える。
なお、劣化情報取得部272は、複数の推定値に基づいて、劣化情報を取得してもよい。複数の推定値に合致する劣化情報を用いた場合、1つの推定値に合致する劣化情報を用いた場合よりも、電流上限値の精度は向上すると考えられる。
上限値データ算出部273は、蓄電池1に対応するとされた劣化情報と、指定された劣化速度の値に基づき、劣化進行を考慮した、蓄電池1の電流上限値を算出する。ここでは、劣化速度が指定値以下となるための電流上限値を算出する。
図12は、充電電流の上限値の算出について説明する図である。図12(A)のグラフは、劣化進行を考慮した場合における、蓄電池1のSOCと、蓄電池1の正極における電流上限値との関係を示す。図12(B)のグラフは、劣化進行を考慮した場合における、蓄電池1のSOCと、蓄電池1の負極における電流上限値との関係を示す。このように、上限値データ算出部273は、参照パラメータと電流上限値との関係を示す、グラフ又は関数などのデータを算出する。当該関係データを上限値データと記載する。
なお、図12(A)及び(B)のように、上限値データ算出部273は、正極及び負極の両方に対し、参照パラメータと、充電電流の各極における電流上限値との関係を示す上限値データを算出してもよい。例えば、図11(B)が二次電池の正極に係る劣化マップであり、前提条件として温度が−10℃の場合を想定する。当該想定の場合、図11(B)の−10℃におけるグラフが、図12(A)になる。
図12(C)は、蓄電池1の電流上限値を示す図である。図12(A)と図12(B)とを比較して分かるように、劣化進行を考慮した場合において各極の電流上限値は、正極と負極とで異なる場合もある。このような場合、電流上限値(第1上限値)は、正極における電流上限値(第2上限値)と、負極における電流上限値(第3上限値)とに基づき定められる。一方の電極における電流上限値が高くとも、他方の電極における電流上限値が低い場合において、電流上限値を高い方にすると、他方の電極の劣化速度が上昇してしまう。したがって、電流上限値は、正極における電流上限値と、負極における電流上限値とのうち、小さい方に依存することが好ましい。これにより、正極及び負極それぞれの劣化を考慮した充電パターンを算出することができる。
例えば、図12では、SOCが0から20%の範囲において、正極の電流上限値は負極の電流上限値よりも小さい。したがって、SOCが0から20%の範囲において、蓄電池1の電流上限値は正極の電流上限値と一致する。また、SOCが70から100%の範囲において、正極の電流上限値は負極の電流上限値よりも大きい。したがって、SOCが70から100%の範囲において、蓄電池1の電流上限値は負極の電流上限値と一致する。なお、図12(C)では、電流上限値を、正極の電流上限値及び負極の電流上限値の小さい方に一致させたが、電流上限値は、正極の電流上限値及び負極の電流上限値の小さい方よりも小さくてもよい。
図12(D)は、参照パラメータとして電圧が用いられた上限値データである。充電が行われると、蓄電池1の電圧が上昇する。図12(D)では、電圧が3Vから3.3V付近までの範囲が、SOCが0から20%の範囲に該当する。電圧が3.3V付近から3.8V付近までの範囲が、SOCが20から60%の範囲に該当する。電圧が3.8V付近から4.2V付近までの範囲が、SOCが60から100%の範囲に該当する。SOCからの電圧への変換は、電池特性推定部25が算出したSOC−OCV曲線と、上述の電圧の算出式を用いればよい。このように、上限値データに係るパラメータは、様々な参照パラメータを用いてよい。
なお、図12の例では、SOCに係る上限値データに基づき、蓄電池1の電圧に係る上限値データを算出すると説明した。つまり、図12(C)から図12(D)を生成することを想定した。しかし、正極のSOCに係る上限値データを、正極の電圧に係る上限値データに変換し、負極のSOCに係る上限値データを、負極の電圧に係る上限値データに変換し、正極の電圧に係る上限値データと負極の電圧に係る上限値データを統合することにより、蓄電池1の電圧に係る上限値データが算出されてもよい。
なお、電流上限値は、所定の充電制約条件を考慮して、さらに小さくしてもよい。充電制約条件は、例えば、蓄電池1の入力規格、充電制御装置2の出力規格等がある。
このようにして、上限値データ算出部273は、劣化速度が指定された値以下となるための充電電流の上限値を算出し、算出された上限値と、ある参照パラメータとの関係を示す上限値データを算出する。
充電パターン算出部274は、上限値データ算出部273により算出された上限値データに基づき、充電パターンを算出する。充電パターンは、蓄電池1が充電される期間において、参照パラメータと充電電流の値(電流値)との関係を示すデータである。図13は、充電パターンの算出について説明する図である。図13の棒グラフは、参照パラメータと、充電電流の値との関係を示す。図13の棒グラフの集合が、充電パターンと言える。図13に示すように、電流値は、電流上限値を超えないように定められる。
ここでは、定電流充電区間における充電パターンを想定するため、充電期間内の複数の区間において、電流値が一定とされている。電流値は、上限値以下であれば任意に定めてよい。複数の区間における電流上限値の最低値を、当該区間における充電電流の値としてもよい。電流値の算出方法は、複数の区間ごとに異なってもよい。なお、定電流という条件がなければ、定電流にしなくともよい。例えば、充電パターンの電流値は、電流上限値の数%小さい値としてもよい。
図13では、上限値データの上限値が変化するごとに、充電期間内の複数の区間が定められている。つまり、算出される充電パターンは、劣化速度の上限値が異なる複数の区間に分けられ、当該区間において充電電流の値が定まる。ゆえに、充電電流の値を許容可能な範囲で大きくすれば、劣化を抑えつつも高速に蓄電池1を充電することができる。また、蓄電池1の内部の状態を把握するための複雑な検査を行わなくとも、蓄電池1の電圧及び電流の計測データに基づいて、蓄電池1の内部の状態を把握でき、充電パターンの電流値が劣化速度の許容範囲にある可能性が高まる。
なお、充電パターンの電流値は、各区間において一定と想定しているが、充電パターンの電流値を、上限値と下限値が定められた範囲と指定してもよい。例えば、一度算出された電流上限値の上下数%程度の範囲を、充電パターンの電流値として指定してもよい。これにより、充電中に計測部22により測定された蓄電池1の状態等を考慮して、充放電制御部21が当該範囲内において電流値を調整することができる。
図13(B)に示すように、電圧値に基づく上限データに基づき、電圧値に基づく充電パターンも作成することができる。図13(B)のように、充電時に容易に測定することが可能な電圧などを参照パラメータとして用いた充電パターンを算出すれば、計測部22による電圧の計測結果と連動して、充電を行わせることができる。
また、電圧値に基づく充電パターンが算出することができれば、内部状態パラメータは測定できなくとも、蓄電池の電圧を測定することができる電子機器でも充電パターンに沿った充電を行うことができる。これにより、内部状態パラメータは直接測定する機能が不要となり、電子機器の製造に係るコストの抑制を図ることができる。
なお、充電パターンを算出する際に、所定の充電制約条件を考慮して、条件を満たす充電パターンを作成してもよい。例えば、一度算出された充電パターンに従って、蓄電池1を充電した場合に、所定の時間内に充電が終わらないという場合もあり得る。そのような場合、劣化進行と充電時間のいずれを優先させるかにより、充電パターンを変化させてもよい。充電時間を優先させる場合は、例えば、いずれかの区間においては、電流上限値を越えた電流を流すとする充電パターンが算出されてもよい。なお、電流上限値を越えた電流を流す区間は、充電パターンの劣化速度の総和等を比較して決定してもよい。
図14は、充電パターン算出処理のフローチャートの一例を示す図である。充電パターン算出処理は、電池特性推定部25又は内部抵抗補正部26による蓄電池1の電池特性等が算出されてから、蓄電池1の充電前に行わればよい。
劣化情報取得部272は、電蓄特性推定部25又は内部抵抗補正部26から、取得した内部状態パラメータ又は電池特性の推定値に基づき、劣化情報記憶部271から、蓄電池1に対応する劣化情報を取得する(S501)。
なお、劣化情報記憶部271がデータベースなどで実現されている場合は、電池特性等が属性として劣化情報と対応して記録しておけば、RDBMSなどの管理機能を用いることにより、電池特性等の推定値に基づき劣化情報を抽出することができる。なお、推定値と、劣化情報に対応する電池特性等の値は、完全に一致しなくとも所定の許容範囲内であれば抽出してもよい。
上限値データ算出部273は、劣化情報取得部272により取得された劣化情報に基づき、正極及び負極において、参照パラメータと、電流上限値との関係を示す上限値データを算出する(S502)。上限値データ算出部273は、正極及び負極の上限値データを統合して、蓄電池1の上限値データを算出する(S503)。充電パターン算出部274は、上限値データ算出部273により算出された蓄電池1の上限値データに基づき、充電パターンを算出する(S504)。以上が、充電パターン算出処理のフローチャートである。なお、算出された充電パターンは、劣化情報記憶部271に送られてもよいし、記憶部24に送られてもよいし、充放電制御部21に送られてもよい。
なお、一度算出された充電パターンは、蓄電池1の状態に変化があったと判断された場合に再作成されてもよい。蓄電池1の状態に変化があったと判断するのは、電池特性推定部25でもよいし、充電パターン作成部27でもよい。又は、図示されていない出力部を介して蓄電池1の状態を出力し、当該出力を見た蓄電池1のユーザ、充電制御装置2の管理者等が、図示されていない入力部を介して、充電パターンの更新を指示してもよい。
蓄電池1の状態に変化があったか否かは、予め更新のための基準値を定めておき、基準値に基づき判断すればよい。例えば、電池容量が基準値よりも低下した場合、内部抵抗が基準値よりも増加した場合、又は内部状態パラメータの変化量が基準値よりも大きい場合に、蓄電池1の状態が変化したと判断してもよい。当該基準値は任意に定めてよい。
図15は、充電パターン更新処理のフローチャートの一例を示す図である。ここでは、充電パターン作成部27が更新を判断することを想定する。劣化情報取得部272が、電池特性推定部25又は内部抵抗補正部26から電池特性等の推定値を取得し、取得した電池特性等に対応する更新条件を劣化情報記憶部271から取得する(S601)。更新条件は、予め劣化情報記憶部271に記憶されていることを想定する。そして、劣化情報取得部272は、取得した電池特性等が更新条件を満たすかを確認する(S602)。
電池特性等が更新条件を満たさない場合(S603のNO)は、更新処理が終了する。電池特性等が更新条件を満たす場合(S603のYES)は、充電パターン作成処理を開始する(S604)。
なお、推定値が複数ある場合、劣化情報取得部272は、少なくとも1つの電池特性等が更新条件を満たす場合に更新を行うと判断してもよい。若しくは、所定数以上又は全ての電池特性等が更新条件を満たす場合に更新を行うと判断してもよい。また、推定値が更新条件を満たすか否かを確認するのは、劣化情報取得部272に限られるわけではない。
なお、上記では、充電パターンの更新は、電池特性推定部25等による電池特性等の推定値が更新条件を満たす場合に行われることを想定した。しかし、充電制御装置2の負荷等の問題により、電池特性等の推定処理を頻繁に行えない場合もあり得る。このような場合は、充電パターン算出部274は、電池特性等の予想値に基づいて、更新条件を満たすか否かを判断してもよい。これにより、蓄電池1の検査の間隔を長くしても、充電パターンの更新が行われない事態を防ぐことができる。電池特性等の予想値は、充電パターン算出部274が劣化情報に基づいて算出してもよい。又は、劣化情報ではなく、所定の予測式に基づいて算出されてもよい。
以上のように、第1の実施形態によれば、二次電池の電圧及び電流に基づき、蓄電池1の内部状態パラメータ及び電池特性を推定することができる。そして、内部状態パラメータ又は電池特性の推移値に基づき、充電による劣化速度が指定値以下となるような充電パターンを作成することができる。当該充電パターンに基づき充電が行われることにより、高速に蓄電池1を充電しても、蓄電池1の劣化を許容範囲に抑えることができる。
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、劣化情報取得部272は、劣化情報記憶部271に記憶された劣化情報から、蓄電池1に対応する劣化情報を取得した。しかし、蓄電池1の状態は多岐に渡るため、劣化情報を劣化情報記憶部271に全て蓄えるとなると、劣化情報記憶部271の容量が肥大化する。また、当該蓄電池1に対応する劣化情報が劣化情報記憶部271に無い場合もあり得る。ゆえに、第2の実施形態では、外部からの劣化情報の取得及び更新を行う。これにより、劣化情報記憶部271に記憶される劣化情報の量を減らすことができ、充電パターン作成部27の小型化、及び充電パターン作成部27の製造に係るコストの削減が実現できる。また、対応する蓄電池1の種類を増やすことができる。
図16は、第2の実施形態に係る蓄電システムの概略構成の一例を示すブロック図である。第2の実施形態では、劣化情報取得部272が外部と接続されている点が第1の実施形態とは異なる。第1の実施形態と同様の点は、説明を省略する。
劣化情報取得部272は、劣化情報を提供する装置等と、有線若しくは無線通信、又は電気信号にて接続され、データの授受が可能とする。劣化情報を提供する装置等は、特に限られるものではなく、劣化情報が蓄えられている外部データベース3でもよいし、劣化情報を生成し提供する劣化情報提供サーバ4でもよい。以降、劣化情報を提供する装置等を、劣化情報提供装置と記載する。劣化情報取得部272は、通信ネットワーク5を介して、劣化情報提供装置と接続されてもよい。又は、デバイスインタフェースにより、外部データベース3と直接又は間接的に接続されていてもよい。
劣化情報取得部272による劣化情報の取得が行われるタイミングは、蓄電池1に対応する劣化情報がない場合に行われることを想定するが、特に限られるものではない。例えば、劣化情報提供装置が新たな劣化情報を生成した場合に行われてもよいし、定期的に行われてもよい。必要な劣化情報が劣化情報記憶部271にない場合は、蓄電池1の規格、電池特性、内部状態パラメータなどに基づき、これらに対応する劣化情報が取得される。なお、条件等を指定せずに、劣化情報提供装置から劣化情報を取得してもよい。また、取得した劣化情報のうち、不要とされる劣化情報は、劣化情報記憶部271に記憶されなくともよい。
なお、劣化情報記憶部271は、内部に記憶されている劣化情報を削除してもよい。例えば、容量節約のために、使用回数の少ない劣化情報、使用期限が切れた劣化情報など所定の削除条件を満たす劣化情報は、劣化情報記憶部271に記憶されていなくともよい。
なお、劣化情報取得部272は、劣化情報以外の情報を取得してもよい。また、劣化情報提供装置以外の装置等とも接続されていてもよい。例えば、蓄電池1を管理するサーバ等から、蓄電池1の今後の使用に関する情報を取得してもよい。例えば、蓄電池1の今後の使用環境、出力予定規格、制限条件等の情報を取得してもよい。そして、今後の使用環境下における蓄電池1の電池特性、内部状態パラメータ、寿命等を電池特性推定部25が予想した上で、当該予想値に基づき、充電パターンの算出処理が行われてもよい。
また、劣化情報取得部272は、外部の装置等に対し、情報を送信してもよい。例えば、充電パターン算出部274が算出した充電パターン、充電パターンの算出に使用された劣化情報又は推定値等を外部の装置等に送信し、外部の装置等により充電パターン等が出力されてもよい。
図17は、劣化情報取得処理のフローチャートの一例を示す図である。このフローチャートは、充電パターンを作成する前に劣化情報の取得が行われる場合のフローを示す。
劣化情報取得部272が、電池特性推定部25又は内部抵抗補正部26から蓄電池1の電池特性等の推定値を取得する(S701)。充電パターン算出部274は、取得された推定値に基づき、蓄電池1に対応する劣化情報が劣化情報記憶部271に記憶されているかを確認する(S702)。
蓄電池1に対応する劣化情報が劣化情報記憶部271に記憶されている場合は(S703のYES)は、フローは終了する。蓄電池1に対応する劣化情報が劣化情報記憶部271に記憶されていない場合(S703のNO)は、劣化情報取得部272が劣化情報提供装置へ問い合わせを行う(S704)。当該問い合わせには、取得された推定値が含まれているとする。
劣化情報提供装置は、受信した電池特性等の推定値に基づき、充電パターンの算出に必要とされる劣化情報を送信する(S705)。そして、劣化情報取得部272が、送られてきた劣化情報を取得し、充電パターン作成処理に移る(S706)。充電パターン作成処理は、上述の通りである。以上が、劣化情報取得処理のフローである。
以上のように、第2の実施形態によれば、充電パターンを算出するために必要な劣化情報が劣化情報記憶部271に記憶されていなくとも、蓄電池1の電池特性等に基づき、必要な劣化情報を取得することができる。これにより、劣化情報記憶部271に記憶しておく劣化情報の量を減らすことができ、充電パターン作成部27の小型化、又は充電パターン作成部27の製造に係るコストの削減が実現できる。また、対応する蓄電池1の種類を増やすことができる。
また、上記に説明した実施形態における各処理は、ソフトウェア(プログラム)によって実現することが可能である。よって、上記に説明した実施形態における充電制御装置2は、例えば、汎用のコンピュータ装置を基本ハードウェアとして用い、コンピュータ装置に搭載されたプロセッサにプログラムを実行させることにより実現することが可能である。
図18は、実施形態におけるハードウェア構成の一例を示すブロック図である。充電制御装置2は、プロセッサ61、主記憶装置62、補助記憶装置63、ネットワークインタフェース64、デバイスインタフェース65を備え、これらがバス66を介して接続されたコンピュータ装置6として実現できる。
プロセッサ61が、補助記憶装置63からプログラムを読み出して、主記憶装置62に展開して、実行することで、充放電制御部21、計測部22、SOC推定部23、電池特性推定部25、内部抵抗補正部26、充電パターン作成部27の機能を実現することができる。
プロセッサ61は、コンピュータの制御装置及び演算装置を含む電子回路である。プロセッサ61は、例えば、汎用目的プロセッサ、中央処理装置(CPU)、マイクロプロセッサ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、コントローラ、マイクロコントローラ、状態マシン、特定用途向け集積回路、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、プログラム可能論理回路(PLD)、及びこれらの組合せを用いることができる。
本実施形態における充電制御装置2は、各装置で実行されるプログラムをコンピュータ装置6に予めインストールすることで実現してもよいし、プログラムをCD−ROMなどの記憶媒体に記憶して、あるいはネットワークを介して配布して、コンピュータ装置6に適宜インストールすることで実現してもよい。
主記憶装置62は、プロセッサ61が実行する命令、及び各種データ等を一時的に記憶するメモリ装置であり、DRAM等の揮発性メモリでも、MRAM等の不揮発性メモリでもよい。補助記憶装置63は、プログラムやデータ等を永続的に記憶する記憶装置であり、例えば、フラッシュメモリ等がある。
ネットワークインタフェース64は、無線又は有線により、通信ネットワークに接続するためのインタフェースである。劣化情報取得部272が劣化情報提供装置と通信を行う場合は、劣化情報取得部272の通信処理の機能は、ネットワークインタフェース64により実現することができる。ここではネットワークインタフェース64を1つのみ示しているが、複数のネットワークインタフェース64が搭載されていてもよい。
デバイスインタフェース65は、出力結果などを記録する外部記憶媒体7と接続するUSBなどのインタフェースである。劣化情報提供装置が外部記憶媒体7の場合は、劣化情報取得部272と外部記憶媒体7とのデータ授受の機能は、デバイスインタフェース65により実現することができる。外部記憶媒体7は、HDD、CD−R、CD−RW、DVD−RAM、DVD−R、SAN(Storage area network)等の任意の記録媒体でよい。また、デバイスインタフェース65を介して、蓄電池1と接続されていてもよい。
コンピュータ装置6は、プロセッサ61などを実装している半導体集積回路などの専用のハードウェアにて構成されてもよい。専用のハードウェアは、RAM、ROMなどの記憶装置との組み合わせで構成されてもよい。コンピュータ装置6は蓄電池1の内部に組み込まれていてもよい。
上記に、本発明の一実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。