JP6374044B1 - 基地局、干渉抑圧装置及び干渉抑圧方法 - Google Patents

基地局、干渉抑圧装置及び干渉抑圧方法 Download PDF

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Abstract

【課題】発生時間が不定期で垂直面内の特定の方向から到来する干渉波に起因した干渉信号の受信電力が変化する場合でも、その干渉信号を適応的に且つ精度よく抑圧することができる基地局、干渉抑圧装置及び干渉抑圧方法を提供する。【解決手段】通信端末と無線通信するための第1アンテナで受信した第1受信信号から干渉信号を分離して検出し、第1アンテナの位相中心点を通過する仮想鉛直線上の上方向又は下方向に所定距離だけ離れた位置に位相中心点を有する第2アンテナで受信した第2受信信号から干渉信号を分離して検出し、第1受信信号又は第2受信信号から分離した干渉信号の受信電力を測定する。干渉信号の受信電力が第1閾値以上か否か又は第1閾値よりも大きいか否かを判断し、判断が肯定の場合にウェイトを計算し、判断が否定の場合にウェイトとしてゼロに設定し、第2受信信号にウェイトを乗算した信号を第1受信信号から減算する。【選択図】図1

Description

従来、通信端末から送信された無線信号を受信するときの受信信号に含まれる干渉信号を抑圧することにより、通信端末との間で良好な通信品質を得る基地局が知られている。例えば、既知信号(例えばCDMA方式におけるパイロットシンボル)から干渉レプリカ信号を生成し、生成した干渉レプリカ信号を受信信号から減算する基地局が知られている(例えば、特許文献1参照)。この基地局では、隣接する基地局からの干渉信号や、同じ基地局セル内に存在している受信希望対象以外の通信端末からの干渉信号を抑圧することができる。
しかしながら、基地局で受信する受信信号には、上記無線通信ネットワークで送受信される無線信号以外の予測が難しい他の干渉信号が含まれる場合がある。例えば、以下に示すような気象条件(天候)により電波が遠くに届く「ダクト」と呼ばれる現象が発生し、そのダクトに起因した干渉信号が受信信号に含まれる場合がある。図11(a)に示す通常時においては、海上の上方の大気の屈折率(図中の修正屈折指数M)は高度が高くなるに従って単調に変化し、図11(b)に示すように第1の陸地800のアンテナ801から送信されたおおよそ1200MHz以下の周波数帯の電波805は海806を挟んで遠方に位置する第2の陸地810のアンテナ811に届くことはない。ところが、海上の気象条件(天候)が特定の条件になると、図12(a)に示すように海上の上方の大気の屈折率(図中の修正屈折指数M)が特定の高度の上空で反転するダクト状の層(反転層)900が発生し、その層900内を電波が伝搬することにより、図12(b)に示すように第1の陸地800のアンテナ801から送信された上記所定の周波数帯の電波802が海を挟んで遠方に位置する第2の陸地810のアンテナ811に届くダクト現象が発生する。この現象により、例えば日本の九州地方では海を挟んで隣国である中華人民共和国(中国)や大韓民国(韓国)から干渉波(以下「ダクト干渉波」という。)が飛来し、それと同じ周波数を用いている我が国の無線システムに甚大なる通信障害を引き起こすことがある。上述したダクト現象は、春先から秋(4月頃〜10月頃)の夜間に気象条件によって不定期に発生する。このダクト現象は前述のようにおおよそ1200MHz以下の周波数帯で観測される。例えば、九州地方のタクシー無線等に使用される業務用無線システムであるMCA(マルチチャネルアクセスシステム)の周波数帯(930MHz〜940MHz)では、中国や韓国からと思われるダクト干渉が観測される。このダクト現象による電波は、特に山間部などの標高の高い場所に設置されているMCAの基地局において強いダクト干渉となり、通信端末の上り回線(端末→基地局)の通信品質を大幅に低下させてしまう。尚、ダクト干渉波830は、おおよそ図13に示すように垂直方向面における水平方向Hからの角度(垂直角度)θが0°である水平方向から基地局のアンテナ840に到来する。
しかも、上記ダクト干渉波が発生しているとき、そのダクト干渉波に起因した干渉信号の受信電力は時々刻々と変化する。
本発明は以上の背景の下で鑑みなされたものであり、その目的は、発生時間が不定期で垂直面内の特定の方向から到来する干渉波に起因した干渉信号の受信電力が変化する場合でも、その干渉信号を適応的に且つ精度よく抑圧することができる基地局、干渉抑圧装置及び干渉抑圧方法を提供することである。
本発明の一態様に係る干渉抑圧装置は、通信端末と無線通信する基地局で受信される受信信号に含まれる干渉信号を抑圧する干渉抑圧装置であって、通信端末と無線通信するための第1アンテナで受信した第1受信信号から干渉信号を分離して検出する第1干渉信号検出手段と、前記第1アンテナの位相中心点を通過する仮想鉛直線上の上方向又は下方向に所定距離だけ離れた位置に位相中心点を有する第2アンテナで受信した第2受信信号から前記干渉信号を分離して検出する第2干渉信号検出手段と、前記第1受信信号又は前記第2受信信号から分離した干渉信号の受信電力を測定する測定手段と、前記測定した干渉信号の受信電力と、所定の第1閾値とを比較し、前記干渉信号の受信電力が前記第1閾値以上か否か又は前記第1閾値よりも大きいか否かを判断し、前記第1閾値との比較による判断が肯定の場合に、前記第1受信信号から検出した干渉信号と前記第2受信信号から検出した干渉信号とが互いに同じ振幅及び位相になるようにウェイトを計算し、前記第1閾値との比較による判断が否定の場合に、前記ウェイトとしてゼロに設定するウェイト計算・設定手段と、前記第2受信信号に前記ウェイトを乗算した信号を前記第1受信信号から減算する信号演算手段と、を備える。
前記干渉抑圧装置において、前記ウェイト計算・設定手段は、過去の所定期間に前記ウェイトを計算したときの前記干渉信号の受信電力のうち最も大きい過去最大電力と、その過去最大電力について計算した最適ウェイトとを記憶し、前記測定した干渉信号の受信電力と、前記第1閾値と等しい又は前記第1閾値よりも大きい第2閾値とを比較し、前記干渉信号の受信電力が前記第2閾値以上か否か又は前記第2閾値よりも大きいか否かを判断し、前記第2閾値との比較による判断が否定の場合に、前記信号演算手段で用いるウェイトとして、前記記憶されている最適ウェイトを設定してもよい。
また、前記干渉抑圧装置において、前記ウェイト計算・設定手段は、前記第2閾値との比較による判断が肯定の場合、前記測定した干渉信号の受信電力と、前記記憶されている過去最大電力とを比較し、前記干渉信号の受信電力が前記過去最大電力以上か否か又は前記過去最大電力よりも大きいか否かを判断し、前記過去最大電力との比較による判断が否定の場合に、前記信号演算手段で用いるウェイトとして、前記記憶されている最適ウェイトを設定し、前記過去最大電力との比較による判断が肯定の場合に、前記第1受信信号から検出した干渉信号と前記第2受信信号から検出した干渉信号とが互いに同じ振幅及び位相になるようにウェイトを計算し、その計算したウェイトを、前記信号演算手段で用いるウェイトとして設定し、前記計算したウェイトで前記最適ウェイトを更新し、前記測定した干渉信号の受信電力で前記過去最大電力を更新してもよい。
また、前記干渉抑圧装置において、前記ウェイト計算・設定手段は、前記第2閾値との比較による判断が肯定の場合、直近のウェイト計算から所定時間経過しているときは、前記測定した干渉信号の受信電力と前記過去最大電力との比較を行わないで、前記第1受信信号から検出した干渉信号と前記第2受信信号から検出した干渉信号とが互いに同じ振幅及び位相になるようにウェイトを計算し、その計算したウェイトを、前記信号演算手段で用いるウェイトとして設定し、前記計算したウェイトで前記最適ウェイトを更新し、前記測定した干渉信号の受信電力で前記過去最大電力を更新してもよい。
また、前記干渉抑圧装置において、前記ウェイト計算・設定手段は、前記第2閾値との比較による判断が肯定の場合、前記第1受信信号から検出した干渉信号と前記第2受信信号から検出した干渉信号とが互いに同じ振幅及び位相になるようにウェイトを計算し、前記測定した干渉信号の受信電力と、前記記憶されている過去最大電力とを比較し、前記干渉信号の受信電力が前記過去最大電力以上か否か又は前記過去最大電力よりも大きいか否かを判断し、前記過去最大電力との比較による判断が否定の場合に、前記計算したウェイトと前記最適ウェイトとの差分の絶対値と、所定のウェイト差分閾値とを比較し、前記ウェイトの差分の絶対値が前記ウェイト差分閾値以下か否か又は前記ウェイト差分閾値よりも小さいか否かを判断し、前記ウェイト差分閾値との比較による判断が肯定の場合に、前記信号演算手段で用いるウェイトとして、前記記憶されている最適ウェイトを設定し、前記ウェイト差分閾値との比較による判断が否定の場合に、前記計算したウェイトを、前記信号演算手段で用いるウェイトとして設定し、前記計算したウェイトで前記最適ウェイトを更新し、前記測定した干渉信号の受信電力で前記過去最大電力を更新してもよい。
また、前記干渉抑圧装置において、前記ウェイト計算・設定手段は、前記第2閾値との比較による判断が肯定の場合、前記第1受信信号から検出した干渉信号と前記第2受信信号から検出した干渉信号とが互いに同じ振幅及び位相になるようにウェイトを計算し、その計算したウェイトを、前記信号演算手段で用いるウェイトとして設定し、前記計算したウェイトで前記最適ウェイトを更新してもよい。
また、前記干渉抑圧装置において、前記干渉信号は、ダクト現象によって飛来する無線信号であってもよい。
本発明の他の態様に係る基地局は、通信端末と無線通信するための第1アンテナと、前記第1アンテナの位相中心点を通過する仮想鉛直線上の上方向又は下方向に所定距離だけ離れた位置に位相中心点を有する第2アンテナと、前記いずれかの干渉抑圧装置と、を備える。
また、本発明の更に他の態様に係る干渉抑圧方法は、通信端末と無線通信するための第1アンテナで受信した第1受信信号から干渉信号を分離して検出することと、前記第1アンテナの位相中心点を通過する仮想鉛直線上の上方向又は下方向に所定距離だけ離れた位置に位相中心点を有する第2アンテナで受信した第2受信信号から前記干渉信号を分離して検出することと、前記第1受信信号又は前記第2受信信号から分離した干渉信号の受信電力を測定することと、前記測定した干渉信号の受信電力と、所定の第1閾値とを比較し、前記干渉信号の受信電力が前記第1閾値以上か否か又は前記第1閾値よりも大きいか否かを判断し、前記第1閾値との比較による判断が肯定の場合に、前記第1受信信号から検出した干渉信号と前記第2受信信号から検出した干渉信号とが互いに同じ振幅及び位相になるようにウェイトを計算し、前記第1閾値との比較による判断が否定の場合に、前記ウェイトとしてゼロに設定することと、前記第2受信信号に前記ウェイトを乗算した信号を前記第1受信信号から減算することを含む。
本発明によれば、発生時間が不定期で垂直面内の特定の方向から到来する干渉波に起因した干渉信号の受信電力が変化する場合でも、その干渉信号を適応的に且つ精度よく抑圧することができる。
本発明の一実施形態に係る基地局の全体構成の一例を示す概略構成図。 本実施形態の基地局における基地局アンテナ及びキャンセルアンテナの他の配置例を示す説明図。 (a)〜(c)は本実施形態の基地局におけるキャンセルアンテナ及び干渉抑圧装置によるダクト干渉信号のキャンセル効果の一例を示す説明図。 本実施形態の基地局における干渉抑圧装置の一構成例を示すブロック図。 (a)及び(b)はそれぞれデジタル帯域フィルタで選択的に通過させる周波数帯域fBPの例を示す説明図。 比較例に係るウェイト計算・設定アルゴリズムを示すフローチャート。 本実施形態の干渉抑圧装置におけるウェイト計算・設定アルゴリズムの一例を示すフローチャート。 本実施形態の干渉抑圧装置におけるウェイト計算・設定アルゴリズムの他の例を示すフローチャート。 本実施形態の干渉抑圧装置におけるウェイト計算・設定アルゴリズムの更に他の例を示すフローチャート。 本実施形態の基地局における干渉抑圧装置の他の構成例を示すブロック図。 (a)及び(b)はそれぞれダクトが発生していない通常時の海上の上層における屈折率の変化及び電波の伝わり方を示す図。 (a)及び(b)はそれぞれダクトが発生している時の海上の上層における屈折率の変化及び電波の伝わり方を示す図。 基地局のアンテナに飛来するダクト干渉波の方向の一例を示す図。
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、本実施形態では、タクシー等の車両に搭載された通信端末と無線通信を行うMCAシステムの業務用無線に用いられる基地局について説明するが、本実施形態の基地局は、携帯電話機やスマートフォン等の通信端末と無線通信を行うセルラー移動通信システムの基地局等の他の基地局であってもよい。
図1は、本発明の一実施形態に係る基地局の全体構成の一例を示す概略構成図である。図1において、本実施形態に係る基地局10は、本体の基地局装置20と、干渉抑圧システム30と、通信端末(移動機、移動局)80からの電波(以下「希望波」又は「希望信号」ともいう。)s1RFを受信するための第1アンテナとしての基地局アンテナ40と、を備える。基地局アンテナ40は、MCAシステムの業務用無線の基地局で用いられている一般的なアンテナである。基地局アンテナ40にダクト干渉波s2RF(例えば、930MHz〜940MHzの干渉波)が到来しているときは、基地局アンテナ40により希望波s1RFとダクト干渉波s2RFとが受信される。
干渉抑圧システム30は、第2アンテナとしてのキャンセルアンテナ300と、干渉抑圧装置310とを備える。キャンセルアンテナ300は、基地局アンテナ40の位相中心点40aから上方向又は下方向に所定距離dだけ離れた位相中心点300aを有し、基地局アンテナ40とは垂直面内又は水平面内指向性が同じ、または異なる指向性のアンテナである。また、キャンセルアンテナ300の位相中心点300aは、基地局アンテナ40の位相中心点40aを通過する仮想鉛直線Lv上に位置している。すなわち、仮想鉛直線Lvに沿って上方又は下方から見た場合、水平面内の基地局アンテナ40の位相中心点40aとキャンセルアンテナ300の位相中心点300aは互いに一致している。キャンセルアンテナ300にダクト干渉波s2RF(例えば、930MHz〜940MHzの干渉波)が到来しているときは、キャンセルアンテナ300により希望波s1RFとダクト干渉波s2RFとが受信される。
なお、図示の例では、キャンセルアンテナ300として八木アンテナを用いているが、他のタイプのアンテナであってもよい。また、図示の例では、基地局アンテナ40の上方にキャンセルアンテナ300を配置しているが、キャンセルアンテナ300の装着が容易になるように図2に示すように基地局アンテナ40の下方にキャンセルアンテナ300を配置してもよい。
干渉抑圧装置310は、基地局アンテナ40で受信した第1受信信号Xからダクト干渉信号s2を分離して検出する第1干渉信号検出手段としての第1ダクト干渉検出部320と、キャンセルアンテナ300で受信した第2受信信号Yからダクト干渉信号s2’を分離して検出する第2干渉信号検出手段としての第2ダクト干渉検出部330とを備える。
更に、干渉抑圧装置310は、第1受信信号Xから検出したダクト干渉信号s2と第2受信信号Yから検出したダクト干渉信号s2’とが互いに同じ振幅及び位相になるようにウェイトwを計算したり所定値のウェイトwを設定したりするウェイト計算・設定手段としてウェイト計算・設定部311を備える。ウェイト計算・設定部311で計算されるウェイトwは、実振幅と位相とで定義される複素振幅であり、第2受信信号Yから検出したダクト干渉信号s2’の振幅及び位相が第1受信信号Xから検出したダクト干渉信号s2と同じ振幅及び位相になるように、すなわちs2=w・s2’を満たすように算出される。このウェイトwは、後述の相関検出を用いた方法や電力差を用いた摂動方法など、各種方法で算出することができる。
また、干渉抑圧装置310は、第2受信信号Yにウェイトwを乗算した信号w・Yを第1受信信号Xから減算する信号演算手段としての信号演算部350とを備える。この信号演算部350によりダクト干渉信号s2がキャンセルされた第1受信信号Xである信号Z(=X−w・Y)が基地局装置20に出力される。
図3は、本実施形態の基地局10におけるキャンセルアンテナ300及び干渉抑圧装置310によるダクト干渉信号s2のキャンセル効果の一例を示す説明図である。図3(a)は、本実施形態の基地局10におけるダクト干渉波s2RFが水平方向(水平面からの角度θ=0°)から到来しているときの垂直面内の合成指向特性101の一例を示している。図3(b)は、本実施形態の基地局10におけるダクト干渉波s2RFが若干上方向(水平面からの角度θ=2°)から到来しているときの垂直面内の合成指向特性102の一例を示している。図3(c)は、本実施形態の基地局10におけるダクト干渉波s2RFが到来していないとき(ウェイトw=0)の垂直面内の指向特性103の一例を示している。
図3(a)に示すように、ダクト干渉波s2RFが水平方向(水平面からの角度θ=0°)から到来しているときは、基地局10の垂直面内の合成指向特性101のヌル方向が水平方向になり、基地局アンテナ40で受信した受信信号Xに含まれる、水平方向からのダクト干渉波s2RFに起因したダクト干渉信号s2をキャンセルすることができる。
また、図3(b)に示すように、ダクト干渉波s2RFが水平方向よりも上方向(図示の例では水平面からの角度θ=2°)から到来しているときは、基地局10の垂直面内の合成指向特性102のヌル方向がダクト干渉波s2RFの到来方向に変化する。このようにダクト干渉波s2RFの垂直面内の到来方向が変わっても適応的に垂直面内指向特性のヌル方向を変化させることができる。しかも、そのヌル方向を変化させるためにキャンセルアンテナ及びその給電回路を調整したり交換したりする必要がなく、オペレーションの煩雑さを回避することができる。
また、図3(c)に示すように、ダクト干渉波s2RFが到来していないときは、ウェイトw=0であるため、元々の基地局10の垂直面内の指向特性103となることから基地局アンテナ40を介した通信端末80との通信に対する影響を小さくすることができる。
次に、本実施形態の基地局10における干渉抑圧装置310の構成例について説明する。
〔干渉抑圧装置の構成例1〕
図4は、本実施形態の基地局10における干渉抑圧装置310の一構成例を示すブロック図である。なお、前述の図1と同様な部分については同じ符号を付し、それらの説明は省略する。
本構成例の干渉抑圧装置310において、第1ダクト干渉検出部320は、基地局アンテナ40で受信された第1受信信号X(=s1+s2)に対して、通信端末80が使用しない周波数帯域fBPを選択的に通過させるデジタル帯域フィルタで帯域制限することにより、ダクト干渉信号s2を分離して検出する。また、第2ダクト干渉検出部330は、キャンセルアンテナで受信された第2受信信号Y(=s1’+s2’)に対して、通信端末80が使用しない周波数帯域fBPを選択的に通過させるデジタル帯域フィルタで帯域制限することにより、干渉信号s2’を分離して検出する。
また、本構成例の干渉抑圧装置310におけるウェイト計算・設定部311は、第1受信信号Xから検出したダクト干渉信号s2と第2受信信号Yから検出したダクト干渉信号s2’とが互いに同じ振幅及び位相になるようにウェイトwを計算するウェイト計算手段としてウェイト計算部340と、そのウェイト計算部340での計算処理を制御するウェイト計算制御部360とを備える。
図5(a)及び(b)はそれぞれデジタル帯域フィルタで選択的に通過させる周波数帯域fBPの例である。デジタル帯域フィルタで選択的に通過させる周波数帯域fBPとしては、例えば図5(a)に示すように通信端末80との通信で予め設定された通信帯域内で通信端末80が実際に使用しない周波数帯域を選択する。また、デジタル帯域フィルタで選択的に通過させる周波数帯域fBPとしては、図5(b)に示すように通信帯域外の周波数帯域を決定してもよい。
また、本構成例の干渉抑圧装置310において、ウェイト計算部340は、第1受信信号Xから検出された干渉信号s2と第2受信信号Yからから検出された干渉信号s2’とに対して相関検出を行うことにより、ウェイトwを計算する。より具体的には、ウェイトwは、第1受信信号Xから帯域制限して検出された干渉信号s2及び第2受信信号Yから帯域制限して検出された干渉信号s2’から、次の式(1)を用いて計算する。なお、式中の「< >」はアンサンブル平均を表し、「*」は複素共役を表している(以下同様)。
本構成例の干渉抑圧装置310では、通信端末80が使用しない周波数帯域fBPを選択的に通過させるデジタル帯域フィルタで帯域制限することにより、ダクト干渉信号s2,s2’を分離して検出しているため、ダクト干渉信号の検出処理が簡易になるとともに、通信端末80からの希望信号s1,s1’の影響を低減できる。
本構成例の干渉抑圧装置310におけるウェイト計算制御部360は、第1受信信号X及び第2受信信号Yにダクト干渉信号s2,s2’が含まれている場合は、前記ウェイトを計算するようにウェイト計算部340での計算処理をONにする。一方、第1受信信号X及び第2受信信号Yの少なくとも一方にダクト干渉信号s2,s2’が含まれていない場合は、ウェイト計算部340での計算処理をOFFにして消費電力を低減し、ウェイトwについてはゼロに設定する。
本構成例において、ウェイト計算制御部360は、受信電力検出部361とダクト干渉有無判定部362と計算ON/OFF制御部363とウェイト設定部364とウェイト切替部365とを備える。
受信電力検出部361は、第1受信信号Xから帯域制限して検出された干渉信号s2及び第2受信信号Yから帯域制限して検出された干渉信号s2’それぞれの受信電力(以下、「ダクト干渉波電力」ともいう。)p1,p2を、例えば次の式(2)及び(3)を用いて計算する。
ダクト干渉有無判定部362は、干渉信号s2及び干渉信号s2’それぞれのダクト干渉波電力p1,p2と、予め設定した受信電力閾値γthとを比較する。ここで、例えば、ダクト干渉波電力p1,p2がそれぞれ受信電力閾値γth以上であればダクト干渉ありと判定し、ダクト干渉波電力p1,p2の少なくとも一方が受信電力閾値γthよりも小さければダクト干渉なしと判定する。
計算ON/OFF制御部363は、ダクト干渉有無判定部362でダクト干渉ありと判定された場合、ウェイトwを計算するようにウェイト計算部340での計算処理をONにする。ウェイト計算部340で計算されたウェイトwはウェイト切替部365に出力される。ダクト干渉有無判定部362でダクト干渉なしと判定された場合、計算ON/OFF制御部363は、ウェイト計算部340での計算処理をOFFにし、ウェイトwをゼロにするようにウェイト設定部364を制御する。ウェイト設定部364で設定されたウェイトw(=0)はウェイト切替部365に出力される。
ウェイト切替部365は、ウェイト計算部340で計算されたウェイトwを受けた場合は、そのウェイトwの計算値を信号演算部350に出力し、ウェイト設定部364で設定されたウェイトw(=0)を受けた場合は、そのウェイトwの設定値(=0)を信号演算部350に出力する。
上記構成の干渉抑圧装置310における抑圧対象であるダクト干渉波が発生しているとき、そのダクト干渉波に起因した干渉信号の受信電力(ダクト干渉波電力)は時々刻々と変化する。このようなダクト干渉波電力の変化に対応するために、所定の測定間隔Δtでダクト干渉波電力を測定し、その測定結果に基づいてウェイトwを計算したり設定したりすることが考えられる。
図6は、所定の測定間隔Δtでダクト干渉波電力を測定してウェイトwを計算又は設定する比較例に係るウェイト計算・設定アルゴリズムを示すフローチャートである。図6において、所定の制御時刻t(=i×ΔT,i:自然数,ΔT:測定間隔)になったら、干渉信号s2及び干渉信号s2’それぞれのダクト干渉波電力p1,p2を測定し、そのダクト干渉波電力p1,p2のいずれか一方をダクト干渉波電力の測定値Pow(i)とする(S901)。そして、このダクト干渉波電力の測定値Pow(i)と、予め設定した受信電力閾値γthとを比較する(S902)。ここで、例えば、ダクト干渉波電力の測定値Pow(i)が受信電力閾値γthよりも大きい場合(又は、受信電力閾値γth以上の場合)のときはダクト干渉ありと判定し(S902でYes)、前述の式(1)等を用いてウェイトwを計算する(S903)。一方、ダクト干渉波電力の測定値Pow(i)が受信電力閾値γth以下の場合(又は、受信電力閾値γth未満の場合)のときはダクト干渉なしと判定し(S902でNo)、ウェイトwを計算しないでウェイトwをゼロに設定する(S905)。
上記図6のウェイト計算・設定アルゴリズムによれば、ダクト干渉波電力の変化にある程度対応することができる。しかしながら、ダクト干渉波電力と雑音電力との比であるSNR(Signal to Noise power Ratio)が小さい場合、雑音の影響でウェイトwの計算精度が劣化する。すなわち、理想的なウェイトwは雑音がないときの、又は、ダクト干渉波電力が雑音電力に比べて十分に大きいときの値である。
そこで、上記図6のウェイト計算・設定アルゴリズムにおいてウェイトwの計算精度を向上させるために、受信電力閾値γthを大きく設定すると、ダクト干渉波電力がPow(i)<γth(又は、Pow(i)≦γth)となる確率が増大し、w=0となる確率が多くなることから、受信電力の小さいダクト干渉をキャンセルできなくなる。
一方、受信電力閾値γthを小さく設定すると、ダクト干渉波電力がγth<Pow(i)(又はγth≦Pow(i))となる確率は小さくなるが、ダクト干渉波電力が小さい領域では雑音の影響でウェイトの計算精度が劣化することから、十分なダクト干渉キャンセルを行えなくなる。
また、最適なウェイトwは次の状況(1)及び(2)が発生しない限り一定の期間ほとんど変化しない。
(1)基地局アンテナ40及びキャンセルアンテナ300から干渉抑圧装置310までの2本のフィーダ長の変化に伴なう位相の変化。
(2)塔頂増幅器(アンプ)、干渉抑圧装置310内の増幅器(アンプ)、等の増幅器の振幅と位相の変化。
そこで、本実施形態では、上記図6のウェイト計算・設定アルゴリズムにおける課題と、上記最適なウェイトとフィーダでの位相並びに増幅器での振幅及び位相との関係とに着目し、ダクト干渉波電力が低い場合においても高い干渉抑圧効果が得られるように、以下に示すウェイト計算・設定アルゴリズムに基づいてウェイトwの計算及び設定を行っている。
図7は、本実施形態の干渉抑圧装置におけるウェイト計算・設定アルゴリズムの一例を示すフローチャートである。図7のウェイト計算・設定アルゴリズムの例では、制御時刻tにおけるウェイトwとして、その制御時刻t以前の最もSNRの高いときに計算したウェイトwを設定する。具体的には、例えば以下に示すようにウェイトwの計算・設定を行う。
図7のウェイト計算・設定アルゴリズムでは、ダクト干渉波電力Powと比較する閾値として、第1閾値(γth1)と第2閾値γth2(γth2≧γth1)とを予め設定しておく。
図7のウェイト計算・設定アルゴリズムを開始したら、ダクト干渉波電力の最大値である最大受信電力(以下「最大受信電力」という。)Pmax及び最適ウェイトwoptそれぞれを所定の初期値Pmax0及びwopt0に設定する初期値設定を行う(S101)。
次に、所定の制御時刻t(=i×ΔT,i:自然数,ΔT:測定間隔)になったら、干渉信号s2及び干渉信号s2’それぞれのダクト干渉波電力p1,p2を測定し、そのダクト干渉波電力p1,p2のいずれか一方をダクト干渉波電力の測定値Pow(i)とし、そのダクト干渉波電力の測定値Pow(i)を直近のダクト干渉波電力Powとする(S102)。
次に、直近のダクト干渉波電力Powと第1閾値γth1とを比較し、ダクト干渉波電力Powが第1閾値γth1よりも大きいか否かを判断する(S103)。この判断が肯定の場合すなわちダクト干渉波電力Powが第1閾値γth1よりも大きい場合は、更に、直近のダクト干渉波電力Powと第2閾値γth2(γth2≧γth1)とを比較し、ダクト干渉波電力Powが第2閾値γth2よりも大きいか否かを判断する(S104)。この判断が肯定の場合すなわちダクト干渉波電力Powが第2閾値γth2よりも大きい場合は、更に、ダクト干渉波電力Powとその制御時刻までの最大受信電力Pmaxとを比較し、ダクト干渉波電力Powが最大受信電力Pmaxよりも大きいか否かを判断する(S105)。以上の判断S103〜S105がすべて肯定の場合、すなわち、ダクト干渉波電力Powが第1閾値γth1及び第2閾値γth2よりも大きく、且つ、ダクト干渉波電力Powが最大受信電力Pmaxよりも大きい場合は、前述のフィーダでの位相や増幅器での振幅及び位相等のウェイトに影響を及ぼす要因が変化していると推定され、且つ、前述のSNRが高くなっているので、前述の式(1)等を用いてウェイトwを計算する(S106)。この計算したウェイトwの計算値をウェイトの最適値woptとし、そのときのダクト干渉波電力Powを新たな最大受信電力Pmaxとする(S107)。そして、更新されたウェイトの最適値woptを、前述の信号演算部350で用いるウェイトの設定値wset(i)として設定する。
一方、上記S104及びS105の判断が否定の場合、すなわち、ダクト干渉波電力Powが第2閾値γth2以下の場合又はダクト干渉波電力Powが最大受信電力Pmax以下の場合は、前述のフィーダでの位相や増幅器での振幅及び位相等のウェイトに影響を及ぼす要因の変化が十分に小さく、又は、前述のSNRが低いので、上記制御時刻tにおけるウェイトwの計算及びウェイトの最適値woptの更新を行わないで、そのときに設定されていたウェイトの最適値woptを、ダクト干渉抑圧に用いるウェイトの設定値wset(i)として設定する(S108)。
また、上記S103の判断が否定の場合、すなわち、ダクト干渉波電力Powが第1閾値γth1以下の場合は、ダクト干渉なしと判断し、上記S104及びS105の判断及びウェイトwの計算を行わないで、信号演算部350で用いるウェイトの設定値wset(i)としてゼロを設定する(S109)。
以上のダクト干渉波電力の測定、その測定値と閾値との比較判断及びウェイトの計算・設定(S102〜S109)を、所定の測定間隔ΔTで繰り返し行う(S110)。
以上、図7のウェイト計算・設定アルゴリズムを実行することにより、常時、高SNRのときの精度が高いウェイトwが設定されることから、ダクト干渉波電力が低い場合においても高い干渉抑圧効果が得られる。
なお、図7のウェイト計算・設定アルゴリズムのS103では、ダクト干渉波電力Powが第1閾値γth1よりも大きいか否かを判断しているが、その判断に代えて、ダクト干渉波電力Powが第1閾値γth1以上か否かを判断してもよい。また、上記S104では、ダクト干渉波電力Powが第2閾値γth2よりも大きいか否かを判断しているが、その判断に代えて、ダクト干渉波電力Powが第2閾値γth2以上か否かを判断してもよい。また、上記S105では、ダクト干渉波電力Powが最大受信電力Pmaxよりも大きいか否かを判断しているが、その判断に代えて、ダクト干渉波電力Powが最大受信電力Pmax以上か否かを判断してもよい。
また、図7のウェイト計算・設定アルゴリズムのS104におけるダクト干渉波電力Powと第2閾値γth2との比較による判断が肯定の場合、直近のウェイト計算から所定時間経過しているときは、測定したダクト干渉波電力Powと最大受信電力Pmaxとの比較を行わないで、ウェイトwを計算してもよい。そして、その計算したウェイトwを、信号演算部350で用いるウェイトの設定値wset(i)として設定し、前記計算したウェイトwで最適ウェイトwoptを更新し、測定した干渉信号の受信電力Powで最大受信電力Pmaxを更新してもよい。
図8は、本実施形態の干渉抑圧装置におけるウェイト計算・設定アルゴリズムの他の例を示すフローチャートである。なお、図8のウェイト計算・設定アルゴリズムのS201〜S204、S209〜S211については、図7のS101〜S104、S108〜S110と同様であるので、それらの詳細な説明は省略する。
上記図7のウェイト計算・設定アルゴリズムにおいて、ある制御時刻のウェイトwset(i)としては、それ以前の最大受信電力Pmaxのときに推定(計算)したウェイトwoptが設定される。しかし、塔頂増幅器(アンプ)等の増幅器の振幅や位相が経年劣化等の要因で変化した場合、最適なウェイトwoptは変化し(w≠wopt)、そのときの受信電力Pow(t)がそれ以前の最大受信電力Pmaxよりも低ければ(Pow(t)<Pmax)、それ以前のウェイトwoptがウェイトwset(i)に設定されることから、干渉低減効果が低下する。
そこで、図8のウェイト計算・設定アルゴリズムでは、γth1≦γth2<Pow(t)において(S203及びS204でYes)w(t)を計算し(S205)、その後、ダクト干渉波電力Powとその制御時刻までの最大受信電力Pmaxとを比較し、ダクト干渉波電力Powが最大受信電力Pmaxよりも大きいか否かを判断する(S206)。この判断206が肯定の場合、すなわちダクト干渉波電力Powが最大受信電力Pmaxよりも大きい場合は、前述のフィーダでの位相や増幅器での振幅及び位相等のウェイトに影響を及ぼす要因が変化していると推定され、且つ、前述のSNRが高くなっているので、計算したウェイトwの計算値をウェイトの最適値woptとし、そのときのダクト干渉波電力Powを新たな最大受信電力Pmaxとする(S207)。そして、更新されたウェイトの最適値woptを、前述の信号演算部350で用いるウェイトの設定値wset(i)として設定する(S208)。
一方、上記S206の判断が否定の場合、すなわちダクト干渉波電力Powが最大受信電力Pmax以下の場合は、更に、前記計算したウェイトwと最適ウェイトwoptとの差分の絶対値|w(t)−wopt|と所定のウェイト差分閾値Δwthとを比較し、ウェイトの差分の絶対値|w(t)−wopt|がウェイト差分閾値Δwthよりも小さいか否かを判断する(S209)。この判断が肯定の場合、すなわち、ウェイトの差分の絶対値|w(t)−wopt|がウェイト差分閾値Δwthよりも小さい場合(|w(t)−wopt|<Δwth)(S209でYes)、前述のフィーダでの位相や増幅器での振幅及び位相等のウェイトに影響を及ぼす要因の変化が十分に小さく、又は、前述のSNRが低いので、最大受信電力Pmax及びウェイトの最適値woptの更新を行わないで、そのときに設定されていたウェイトの最適値woptを、ダクト干渉抑圧に用いるウェイトの設定値wset(i)として設定する(S208)。
一方、上記S209の判断が否定の場合、すなわち、ウェイトの差分の絶対値|w(t)−wopt|がウェイト差分閾値Δwth以上の場合(|w(t)−wopt|≧Δwth)(S209でNo)、雑音(低SNR)による誤差ではなく、経年劣化等による電気的特性の変化による変化と予測されることから、その制御時刻よりも前のwoptをダクト干渉抑圧に用いるウェイトの設定値wset(i)に設定しないで、その制御時刻で計算したウェイトw(t)をウェイトの設定値wset(i)に設定し、また最適ウェイトwoptをw(t)に更新する。
以上、図8のウェイト計算・設定アルゴリズムを実行することにより、ダクト干渉波電力が低い場合においても最適なウェイトを設定できることから高い干渉抑圧効果が得られる。同時に、経年劣化等の要因でシステムの電気的特性が変化しても最適なウェイトが設定できる。従って、経年劣化等の要因でシステムの電気的特性が変化してもウェイトを柔軟に最適値に更新できることから高い干渉抑圧効果が得られる。
なお、図8のウェイト計算・設定アルゴリズムのS209では、ウェイトの差分の絶対値|w(t)−wopt|がウェイト差分閾値Δwthよりも小さいか否かを判断しているが、その判断に代えて、ェイトの差分の絶対値|w(t)−wopt|がウェイト差分閾値Δwth以下か否かを判断してもよい。
図9は、本実施形態の干渉抑圧装置におけるウェイト計算・設定アルゴリズムの更に他の例を示すフローチャートである。なお、図9のウェイト計算・設定アルゴリズムのS301〜S304、S305〜S309については、図7のS101〜S104、S106〜S110と同様であるので、それらの詳細な説明は省略する。
上記図7のウェイト計算・設定アルゴリズムにおいて、ある制御時刻のウェイトwset(i)としては、それ以前の最大受信電力Pmaxのときに推定(計算)したウェイトwoptが設定される。しかし、塔頂増幅器(アンプ)等の増幅器の振幅や位相が経年劣化等の要因で変化した場合、最適なウェイトwoptは変化し(w≠wopt)、そのときの受信電力Pow(t)がそれ以前の最大受信電力Pmaxよりも低ければ(Pow(t)<Pmax)、それ以前のウェイトwoptがウェイトwset(i)に設定されることから、干渉低減効果が低下する。
そこで、図9のウェイト計算・設定アルゴリズムでは、γth1≦γth2<Pow(t)において(S303及びS304でYes)、SNRは十分あることから、その時刻でのウェイトw(t)を計算し(S305)、最適ウェイトwoptをウェイトw(t)の計算値に更新し(S306)、そのウェイトw(t)の計算値をダクト干渉抑圧に用いるウェイトの設定値wset(i)に設定する(S307)。
以上、図9のウェイト計算・設定アルゴリズムを実行することにより、ダクト干渉波電力が低い場合においても準最適なウェイトを設定できることから高い干渉抑圧効果が得られる。同時に経年劣化等の要因でシステムの電気的特性が変化しても準最適なウェイトを設定できる。従って、経年劣化等の要因でシステムの電気的特性が変化してもウェイトを柔軟に準最適値に更新できることから高い干渉抑圧効果が得られる。特に、前述の図8のウェイト計算・設定アルゴリズムと比較して、ウェイトの比較制御がないことから、その分制御が容易である。
〔干渉抑圧装置の構成例2〕
図10は、本実施形態の基地局10における干渉抑圧装置310の他の構成例を示すブロック図である。なお、前述の図1、4と同様な部分については同じ符号を付し、それらの説明は省略する。
本構成例の干渉抑圧装置310において、ウェイト計算部340は、以下の(1)〜(3)に示すようにダクト干渉信号s2,s2’の電力差を用いた摂動方法を用いてウェイトwを計算することにより、ウェイトwの計算負荷を抑えている。
(1)まず、ウェイトをwとしたとき、第1受信信号Xから帯域制限して検出された干渉信号s2と第2受信信号Yから帯域制限して検出された干渉信号s2’とに対して、次の式(4)に示す電力差ΔPを計算する。
(2)次に、ウェイトw(実振幅:we、位相:φ)の次の式(5)及び式(6)の範囲に対して離散的な幅(Δwe,Δφ)で、電力差ΔPの最小値を検索する。
ここで、電力差ΔPの最小値を検索するときの実振幅weの範囲を規定するwemin及びwemaxはそれぞれ、例えば0dB及び100dBに設定し、その検索ステップ幅Δweは例えば0.1dBに設定する。また、電力差ΔPの最小値を検索するときの位相φの範囲を規定するφmin及びφmaxはそれぞれ、例えば0°及び360°に設定し、その検索ステップ幅Δφは例えば1°に設定する。
(3)次に、電力差ΔPの値が最小値になったときのwを算出し、ウェイトwとして決定する。
以上、本実施形態によれば、ダクト現象が発生してダクト干渉波が基地局10に到来したとき、基地局10の垂直面内の合成指向特性におけるヌル方向をダクト干渉波の到来方向に向けることができるため、ダクト干渉信号を抑圧することができる。また、ダクト干渉波の到来方向が変化した場合でも、その変化したダクト干渉波の到来方向の方向に合成指向特性におけるヌル方向を向けることができるため、ダクト干渉信号を抑圧することができる。このように発生時間が不定期で、垂直面内の特定の方向から到来するダクト干渉波に起因したダクト干渉信号を適応的に抑圧することができる。しかも、垂直面内の到来方向が変化してもその到来方向にヌル方向を変化させるためにキャンセルアンテナ及びその給電回路を調整したり交換したりする必要がなく、オペレーションの煩雑さを回避することができる。
また、本実施形態によれば、既存の基地局の構成にキャンセルアンテナ300及び干渉抑圧装置310を追加することでダクト干渉信号を抑圧することができるようになるため、既存の基地局における基地局装置及び基地局アンテナを変更する必要がない。
また、本実施形態によれば、ダクト干渉波が基地局10に到来していないときには、基地局10の指向特性を元の基地局アンテナ40の指向特性にすることができる。
特に、本実施形態によれば、発生時間が不定期で垂直面内の特定の方向から到来するダクト干渉波に起因したダクト干渉信号の受信電力(ダクト干渉波電力)が変化する場合でも、ダクト干渉信号の抑圧に用いるウェイトwを柔軟に最適値又は準最適値に更新することができるため、干渉信号を適応的に且つ精度よく抑圧することができる。
なお、上記各実施形態では、ダクト干渉信号を抑圧する場合について説明したが、本発明は、これに限定されるものではない。また、本発明は、基地局10の基地局アンテナ40で受信する受信信号にダクト干渉信号以外の到来方法が変化する可能性がある干渉信号が含まれる場合にも同様に適用することができ、同様な効果が得られるものである。
また、本明細書で説明された処理工程並びに基地局における基地局装置及び干渉抑圧装置の構成要素は、様々な手段によって実装することができる。例えば、これらの工程及び構成要素は、ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、又は、それらの組み合わせで実装されてもよい。
ハードウェア実装については、実体(例えば、基地局装置、干渉抑圧装置、通信端末、ハードディスクドライブ装置、又は、光ディスクドライブ装置)において上記工程及び構成要素を実現するために用いられる処理ユニット等の手段は、1つ又は複数の、特定用途向けIC(ASIC)、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)、デジタル信号処理装置(DSPD)、プログラマブル・ロジック・デバイス(PLD)、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)、プロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ、マイクロプロセッサ、電子デバイス、本明細書で説明された機能を実行するようにデザインされた他の電子ユニット、コンピュータ、又は、それらの組み合わせの中に実装されてもよい。
また、ファームウェア及び/又はソフトウェア実装については、上記構成要素を実現するために用いられる処理ユニット等の手段は、本明細書で説明された機能を実行するプログラム(例えば、プロシージャ、関数、モジュール、インストラクション、などのコード)で実装されてもよい。一般に、ファームウェア及び/又はソフトウェアのコードを明確に具体化する任意のコンピュータ/プロセッサ読み取り可能な媒体が、本明細書で説明された上記工程及び構成要素を実現するために用いられる処理ユニット等の手段の実装に利用されてもよい。例えば、ファームウェア及び/又はソフトウェアコードは、例えば制御装置において、メモリに記憶され、コンピュータやプロセッサにより実行されてもよい。そのメモリは、コンピュータやプロセッサの内部に実装されてもよいし、又は、プロセッサの外部に実装されてもよい。また、ファームウェア及び/又はソフトウェアコードは、例えば、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリーメモリ(ROM)、不揮発性ランダムアクセスメモリ(NVRAM)、プログラマブルリードオンリーメモリ(PROM)、電気的消去可能PROM(EEPROM)、FLASHメモリ、フロッピー(登録商標)ディスク、コンパクトディスク(CD)、デジタルバーサタイルディスク(DVD)、磁気又は光データ記憶装置、などのような、コンピュータやプロセッサで読み取り可能な媒体に記憶されてもよい。そのコードは、1又は複数のコンピュータやプロセッサにより実行されてもよく、また、コンピュータやプロセッサに、本明細書で説明された機能性のある態様を実行させてもよい。
また、本明細書で開示された実施形態の説明は、当業者が本開示を製造又は使用するのを可能にするために提供される。本開示に対するさまざまな修正は当業者には容易に明白になり、本明細書で定義される一般的原理は、本開示の趣旨又は範囲から逸脱することなく、他のバリエーションに適用可能である。それゆえ、本開示は、本明細書で説明される例及びデザインに限定されるものではなく、本明細書で開示された原理及び新規な特徴に合致する最も広い範囲に認められるべきである。
10 基地局
20 基地局装置
30 干渉抑圧システム
40 基地局アンテナ
40a 位相中心点
80 通信端末
300 キャンセルアンテナ
300a 位相中心点
310 干渉抑圧装置
311 ウェイト計算・設定部
320 第1ダクト干渉検出部
330 第2ダクト干渉検出部
340 ウェイト計算部
350 信号演算部
360 ウェイト計算制御部
361 受信電力検出部
362 ダクト干渉有無判定部
363 計算ON/OFF制御部
364 ウェイト設定部
365 ウェイト切替部
特開2001−267942号公報

Claims (9)

  1. 通信端末と無線通信する基地局で受信される受信信号に含まれる干渉信号を抑圧する干渉抑圧装置であって、
    通信端末と無線通信するための第1アンテナで受信した第1受信信号から干渉信号を分離して検出する第1干渉信号検出手段と、
    前記第1アンテナの位相中心点を通過する仮想鉛直線上の上方向又は下方向に所定距離だけ離れた位置に位相中心点を有する第2アンテナで受信した第2受信信号から前記干渉信号を分離して検出する第2干渉信号検出手段と、
    前記第1受信信号又は前記第2受信信号から分離した干渉信号の受信電力を測定する測定手段と、
    前記測定した干渉信号の受信電力と、所定の第1閾値とを比較し、前記干渉信号の受信電力が前記第1閾値以上か否か又は前記第1閾値よりも大きいか否かを判断し、前記第1閾値との比較による判断が肯定の場合に、前記第1受信信号から検出した干渉信号と前記第2受信信号から検出した干渉信号とが互いに同じ振幅及び位相になるようにウェイトを計算し、前記第1閾値との比較による判断が否定の場合に、前記ウェイトとしてゼロに設定するウェイト計算・設定手段と、
    前記第2受信信号に前記ウェイトを乗算した信号を前記第1受信信号から減算する信号演算手段と、を備えることを特徴とする干渉抑圧装置。
  2. 請求項1の干渉抑圧装置において、
    前記ウェイト計算・設定手段は、
    過去の所定期間に前記ウェイトを計算したときの前記干渉信号の受信電力のうち最も大きい過去最大電力と、その過去最大電力について計算した最適ウェイトとを記憶し、
    前記測定した干渉信号の受信電力と、前記第1閾値と等しい又は前記第1閾値よりも大きい第2閾値とを比較し、前記干渉信号の受信電力が前記第2閾値以上か否か又は前記第2閾値よりも大きいか否かを判断し、
    前記第2閾値との比較による判断が否定の場合に、前記信号演算手段で用いるウェイトとして、前記記憶されている最適ウェイトを設定する、ことを特徴とする干渉抑圧装置。
  3. 請求項2の干渉抑圧装置において、
    前記ウェイト計算・設定手段は、
    前記第2閾値との比較による判断が肯定の場合、前記測定した干渉信号の受信電力と、前記記憶されている過去最大電力とを比較し、前記干渉信号の受信電力が前記過去最大電力以上か否か又は前記過去最大電力よりも大きいか否かを判断し、
    前記過去最大電力との比較による判断が否定の場合に、前記信号演算手段で用いるウェイトとして、前記記憶されている最適ウェイトを設定し、
    前記過去最大電力との比較による判断が肯定の場合に、前記第1受信信号から検出した干渉信号と前記第2受信信号から検出した干渉信号とが互いに同じ振幅及び位相になるようにウェイトを計算し、その計算したウェイトを、前記信号演算手段で用いるウェイトとして設定し、前記計算したウェイトで前記最適ウェイトを更新し、前記測定した干渉信号の受信電力で前記過去最大電力を更新する、ことを特徴とする干渉抑圧装置。
  4. 請求項3の干渉抑圧装置において、
    前記ウェイト計算・設定手段は、
    前記第2閾値との比較による判断が肯定の場合、直近のウェイト計算から所定時間経過しているときは、前記測定した干渉信号の受信電力と前記過去最大電力との比較を行わないで、前記第1受信信号から検出した干渉信号と前記第2受信信号から検出した干渉信号とが互いに同じ振幅及び位相になるようにウェイトを計算し、その計算したウェイトを、前記信号演算手段で用いるウェイトとして設定し、前記計算したウェイトで前記最適ウェイトを更新し、前記測定した干渉信号の受信電力で前記過去最大電力を更新する、ことを特徴とする干渉抑圧装置。
  5. 請求項2の干渉抑圧装置において、
    前記ウェイト計算・設定手段は、
    前記第2閾値との比較による判断が肯定の場合、前記第1受信信号から検出した干渉信号と前記第2受信信号から検出した干渉信号とが互いに同じ振幅及び位相になるようにウェイトを計算し、前記測定した干渉信号の受信電力と、前記記憶されている過去最大電力とを比較し、前記干渉信号の受信電力が前記過去最大電力以上か否か又は前記過去最大電力よりも大きいか否かを判断し、
    前記過去最大電力との比較による判断が否定の場合に、前記計算したウェイトと前記最適ウェイトとの差分の絶対値と、所定のウェイト差分閾値とを比較し、前記ウェイトの差分の絶対値が前記ウェイト差分閾値以下か否か又は前記ウェイト差分閾値よりも小さいか否かを判断し、
    前記ウェイト差分閾値との比較による判断が肯定の場合に、前記信号演算手段で用いるウェイトとして、前記記憶されている最適ウェイトを設定し、
    前記ウェイト差分閾値との比較による判断が否定の場合に、前記計算したウェイトを、前記信号演算手段で用いるウェイトとして設定し、前記計算したウェイトで前記最適ウェイトを更新し、前記測定した干渉信号の受信電力で前記過去最大電力を更新する、ことを特徴とする干渉抑圧装置。
  6. 請求項2の干渉抑圧装置において、
    前記ウェイト計算・設定手段は、
    前記第2閾値との比較による判断が肯定の場合、前記第1受信信号から検出した干渉信号と前記第2受信信号から検出した干渉信号とが互いに同じ振幅及び位相になるようにウェイトを計算し、その計算したウェイトを、前記信号演算手段で用いるウェイトとして設定し、前記計算したウェイトで前記最適ウェイトを更新する、ことを特徴とする干渉抑圧装置。
  7. 請求項1乃至6のいずれかの干渉抑圧装置において、
    前記干渉信号は、ダクト現象によって飛来する無線信号であることを特徴とする干渉抑圧装置。
  8. 通信端末と無線通信するための第1アンテナと、前記第1アンテナの位相中心点を通過する仮想鉛直線上の上方向又は下方向に所定距離だけ離れた位置に位相中心点を有する第2アンテナと、請求項1乃至7のいずれかの干渉抑圧装置と、を備える基地局。
  9. 通信端末と無線通信する基地局で受信される受信信号に含まれる干渉信号を抑圧する干渉抑圧方法であって、
    通信端末と無線通信するための第1アンテナで受信した第1受信信号から干渉信号を分離して検出することと、
    前記第1アンテナの位相中心点を通過する仮想鉛直線上の上方向又は下方向に所定距離だけ離れた位置に位相中心点を有する第2アンテナで受信した第2受信信号から前記干渉信号を分離して検出することと、
    前記第1受信信号又は前記第2受信信号から分離した干渉信号の受信電力を測定することと、
    前記測定した干渉信号の受信電力と、所定の第1閾値とを比較し、前記干渉信号の受信電力が前記第1閾値以上か否か又は前記第1閾値よりも大きいか否かを判断し、前記第1閾値との比較による判断が肯定の場合に、前記第1受信信号から検出した干渉信号と前記第2受信信号から検出した干渉信号とが互いに同じ振幅及び位相になるようにウェイトを計算し、前記第1閾値との比較による判断が否定の場合に、前記ウェイトとしてゼロに設定することと、
    前記第2受信信号に前記ウェイトを乗算した信号を前記第1受信信号から減算することを含むことを特徴とする干渉抑圧方法。
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