以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されない。
(1)一方向免震装置
一般家庭や店舗、事務所等の建物の内部に設置されている、地震等の震動による損傷から保護されるべき対象物の中には、箪笥、書架、食器棚等の、平面視で長方形の形状を有するものが多く存在する。これらの対象物は建物の壁に沿って配置されることが多く、したがって全方向に対する免震性能が要求されることが少ない。また、このような対象物は長辺の伸張方向の震動により転倒する可能性が低い一方で、短辺の伸張方向の震動はこれらの対象物の転倒或いはこれらに収容された書籍や食器等の落下に直結する危険な震動である。図1〜図5を用いて説明する本発明の第1実施形態の免震装置は、このような平面視で長方形の形状を有し且つ長辺が建物の壁に面するように配置されている対象物が壁と離れる方向に転倒するのを防止するために好適に使用される免震装置である。第1実施形態の免震装置は比較的簡単な構成からなり、小型で安価に製造することができる。
図1は、第1実施形態の免震装置1の中立位置における概略図であり、(a)は正面図を、(b)は側面図を示している。免震装置1は、矩形の平板からなる基台2を有しており、基台2は建物の床面F上にその長辺2aの一方が建物の壁面Wに面するように配置されている。基台2の上面2cの短辺2bに沿った位置には、一対の横揺れ免震機構4が、基台2に対して垂直で且つ長辺2aの中点を通過する平面に対して対称に設けられており、これらの横揺れ免震機構4の上に、基台2と略同形状の載置台3が配置されている。載置台3の上面3cが、対象物を載置するための載置面である。
各々の横揺れ免震機構4は、載置台3の短辺3bの一方の端部側に配置されており且つ下方に延びている上側保持体41と、上側保持体41の先端に取り付けられており短辺3bの伸張方向に回転可能な上側ローラ42と、載置台3の短辺3bの他方の端部から短辺3bの中央付近にかけて延在しており且つ載置台3の下方に延びている上側支持体47と、上側支持体47の先端縁部に設けられている上側ガイド48と、基台2の短辺2bの一方の端部側に配置されており且つ上方に延びている下側保持体45と、下側保持体45の先端に取り付けられており短辺2bの伸張方向に回転可能な下側ローラ46と、基台2の短辺2bの他方の端部から短辺2bの中央付近にかけて延在しており且つ基台2の上方に延びている下側支持体43と、下側支持体43の先端縁部に設けられている下側ガイド44と、を備えている。上側保持体41と下側支持体43とが対向する位置に配置されており、下側保持体45と上側支持体47とが対向する位置に配置されており、上側ガイド48は震動発生時に下側ローラ46を走行させるためのものであり、下側ガイド44は震動発生時に上側ローラ42を走行させるものである。下側支持体43の先端縁部にはさらに、上側ローラ42の下側ガイド44からの脱落を防止するための下側障壁43eが設けられており、上側支持体47の先端縁部にはさらに、下側ローラ46の上側ガイド48からの脱落を防止するための上側障壁47eが設けられている。
図2は、免震装置1の横揺れ免震機構4による載置台3の基台2に対する移送を説明するための概略図である。ただし、図2では、理解の容易のため、下側障壁43e及び上側障壁47eが省略されている。図2(a)は、図1(b)に対応する免震装置1の中立位置を示す図である。中立位置において、下側ガイド44は、水平に延びている水平部44aと、水平部44aの一端から下側保持体45の方向に向かって湾曲しながら下方に伸びている湾曲部44bとから構成されており、上側ガイド48は、水平に延びている水平部48aと、水平部48aの一端から上側保持体41の方向に向かって湾曲しながら下方に伸びている湾曲部48bとから構成されている。下側ガイド44の水平部44aと上側ガイド48の水平部48aの長さ及び下側ガイド44の湾曲部44bと上側ガイド48の湾曲部48bの長さは、上側ローラ42が下側ガイド44の水平部44aに接している時に下側ローラ46が上側ガイド48の水平部48aに接しているように、上側ローラ42が下側ガイド44の湾曲部44bに接している時に下側ローラ46が上側ガイド48の湾曲部48bに接しているように、それぞれ設定されている。本実施の形態の免震装置1では、横揺れ免震機構4の水平移送部が、下側ガイド44の水平部44aとこの水平部44aを走行する上側ローラ42と、上側ガイド48の水平部48aとこの水平部48aを走行する下側ローラ46とで構成されている。また、横揺れ免震機構4の回転移送部は、下側ガイド44の湾曲部44bとこの湾曲部44bを走行する上側ローラ42と、上側ガイド48の湾曲部48bとこの湾曲部48bを走行する下側ローラ46とで構成されている。
図2(b)は、横揺れ免震機構4の水平移送部により、載置台3が基台2に対して水平限界位置まで移動させられた状態を示している。水平限界位置とは載置台3が基台2に対して水平移動可能な限界の位置を意味し、具体的には、上側ローラ42が下側ガイド44の水平部44aと湾曲部44bの接続位置に接触しており、下側ローラ46が上側ガイド48の水平部48aと湾曲部48bの接続位置に接触している位置である。下側ガイド44の水平部44aと湾曲部44bの接続位置、及び、上側ガイド48の水平部48aと湾曲部48bの接続位置は、上側ローラ42及び下側ローラ46の通過時の衝撃を減ずるように、面取りされているのが好ましい。図3は図2(b)に対応する図であるが、本実施の形態の免震装置1では、載置台3が基台2に対して水平限界位置に到達した時に、上側ガイド48の湾曲部48bが、載置台3の下面3d上の上側支持体47基端を通る直線の中点を通る鉛直線L上に存在する点Pを中心とした円C1の一部を成し、下側ガイド44の湾曲部44bが点Pを中心とした円C2の一部を成すように構成されている。円C1と円C2とは同心円である。したがって、点Pを中心とした同心円C3の接線は、載置台3の載置面3cを通ることになる。なお、点Pの高さは、載置台3の重心と載置台3上の対象物の重心との合成位置より高い位置にあるが、本実施の形態の免震装置1においては、想定される種々の対象物を考慮して予め点Pの位置が設定されている。対象物の重心の位置が極めて高い時は、円C1及び円C2の半径が極めて大きくなるため、下側ガイド44の湾曲部44b及び上側ガイド48の湾曲部48bの円弧が実質的に直線で近似されることになる。
図2(c)は、横揺れ免震機構4の回転移送部により載置台3が回転運動させられている状態を示している。図4は図2(c)に対応する図である。本実施の形態の免震装置1では、載置台3が基台2に対して水平限界位置に到達した時に、上側ガイド48の湾曲部48bが点Pを中心とした円C1の一部を成し、下側ガイド44の湾曲部44bが点Pを中心とした円C2の一部を成すように構成されているため、載置台3が回転運動させられている時は、点Pを中心とした同心円C3の接線が載置台3の載置面3cを通るように回転運動させられる。したがって、横揺れ免震機構4の回転移送部による載置台3の回転運動の往復は正確な振子運動となる。
次に、本実施の形態の免震装置1の動作を説明する。震動が全く発生していない時、或いは、震動が発生していても対象物を載置した載置台3が移動しないような微弱な震動しか発生していない時には、図2(a)に示すように、載置台3は基台2と重なった位置に存在し、載置面3cは水平に維持されている。したがって、対象物を載置台3上に載せる際に載置台3が傾くことがなく、載置作業に特別な注意が不要である。地震が発生して基台2が図2の左側に移動すると、対象物を載せた載置台3のうける慣性力により、横揺れ免震機構4の下側ガイド44の水平部44aを上側ローラ42が走行し、上側ガイド48の水平部48aを下側ローラ46が走行し、載置台3は基台2に対して載置面3cの水平を保ったままで水平移動させられる。載置台3の基台2に対する水平移動距離は地震の強さに依存するが、図2(b)に示す水平限界位置に到るまで水平移動が可能である。水平限界位置にある基台2がさらに図2の左側に距離xだけ移動すると、横揺れ免震機構4の下側ガイド44の湾曲部44bを上側ローラ42が走行し、上側ガイド48の湾曲部48bを下側ローラ46が走行し、載置台3は点P(図4参照)を中心として回転運動させられ、距離xに相当する地震加速度エネルギーが回転運動により吸収される。振子運動の原理により、距離xが同じでも加速度が小さい時は、載置台3の載置面3cの傾斜角度は小さくなる。したがって、地震の発生状態に応じて、免震装置1の載置台3は基台2に対して図2(c)に示す状態と図2(a)に示す状態の間で往復運動する。また、地震が停止した時には、対象物等に作用する重力により、下側ガイド44の水平部44aに上側ローラ42が接触し、上側ガイド48の水平部48aに下側ローラ46が接触する位置、すなわち載置台3の載置面3cが水平を保つ位置で載置台3が停止する。
震動による損傷から保護されるべき対象物を載置台3上に配置するときは、載置台3の重心上に対象物の重心が位置するように配置されるのが好ましいものの、本実施の形態の免震装置1では、載置台3の重心上の位置から対象物の重心がずれて配置されても、十分な免震性能が得られる。図5は、載置台3上に対象物Oが載置された時の、載置台3の水平限界位置からの回転(振子)運動を示した図である。この図には、対象物Oの重心と載置台3の重心との合成位置が点Pを通過する鉛直線M上の位置g1に位置するように対象物Oを配置した場合(一点鎖線で表す。)と、図5において左側にずれた位置g2に位置するように対象物Oを配置した場合(二点鎖線で表す。)とが示されている。図5において右方向の震動が発生すると、回転(振子)運動の過程で、合成重心g1は点Pを中心とした同心円C4上を移動し、合成重心g2は点Pを中心とした同心円C5上を移動する。この回転(振子)運動の過程で、合成重心g1は、水平方向の地震加速度hと重力加速度vとが合成された合成加速度cを受け、合成重心g2も、水平方向の地震加速度hと重力加速度vとが合成された合成加速度cを受ける。そして、合成重心g1及び合成重心g2の受ける合成加速度cの方向は、いずれも載置台3の載置面3cと垂直な方向である。したがって、本実施の形態の免震装置1によると、載置作業の際に対象物Oの載置台3上の位置を厳密に制限する必要がなく、また、地震による大きな振幅の横揺れを経験しても載置台3上の対象物Oのずれが生じにくく、優れた免震効果が発揮される。
以上、平面視で長方形の形状を有し且つ長辺が建物の壁に面するように配置されている対象物が壁と離れる方向に転倒するのを防止するために好適に使用される免震装置1について説明したが、対象物の壁と離れる方向への転倒と壁に接近する方向への転倒の両方を防止する免震装置への変形は容易である。図6はこの変形形態を示しており、(a)は載置台3の下面3d側を、(b)は基台2の上面2c側を、それぞれ示している。上述した免震装置1では、載置台3の下面3dに配置された、上側保持体41と上側ローラ42と上側支持体47と上側ガイド48とにより横揺れ免震機構4の載置台側構成部分4−Uが構成されており、基台2の上面2cに配置された、下側保持体45と下側ローラ46と下側支持体43と下側ガイド44とにより横揺れ免震機構4の基台側構成部分4−Lが構成されており、載置台側構成部分4−Uと基台側構成部分4−Lとを上下に配置して組み合わせることにより横揺れ免震機構4が構成されているが、変形例では、載置台側構成部分4−Uを載置台3の下面3dに垂直な線に関して180°回転させた構造を有する構造部分4−URが載置台3の下面3dの載置台側構成部分4−Uに隣接する位置に配置されており、基台側構成部分4−Lを基台2の上面2cに垂直な線に関して180°回転させた構造を有する構造部分4−LRが基台2の上面2cの基台側構成部分4−Lに隣接する位置に配置されている。載置台側構成部分4−Uと基台側構成部分4−L、及び、載置台側構成部分4−URと基台側構成部分4−LR、を上下に重ねて組み合わせることにより、対象物の壁と離れる方向への転倒と壁に接近する方向への転倒の両方を防止することが可能な免震装置を極めてコンパクトに形成することができる。
(2)両方向免震装置
次に、対象物が載置された載置台を基台に対して水平面内の一方向(X方向)及びこれと垂直な方向(Y方向)に移動させることが可能な横揺れ免震機構を有する、本発明の第2実施形態の免震装置について、図7〜図14を用いて説明する。第2実施形態の免震装置も比較的簡単な構成からなり、小型で安価に製造することができる。
図7は、第2実施形態の免震装置100の中立位置における概略図であり、(a)は正面図を、(b)は側面図を示している。免震装置100は、建物の床面F上に配置されている略正方形の平板からなる基台110と、略正方形の枠体からなる中間台120と、基台110とほぼ同形状を有する載置台130との三層構造を有している。
略正方形の平板からなる基台110の上面110c側には、正方形の一方の対辺110aと平行に配置されて上方に延びている一対の第1支持体141が、基台110に対して垂直で且つ他方の対辺110bの中点を通過する平面に対して対称に設けられており、各々の第1支持体141の先端縁部には、後述する中間台120に設けられた第1ローラ144a,144bを走行させるための第1ガイド142と、第1ローラ144a,144bの第1ガイド142からの脱落を防止するための第1障壁141eとが設けられている。略正方形の平板からなる載置台130の下面130d側には、上述した基台110の対辺110aと直交している側の対辺130bと平行に配置されて下方に延びている一対の第2支持体151が、載置台130に対して垂直で且つ他方の対辺130aの中点を通過する平面に対して対称に設けられており、各々の第2支持体151の先端縁部には、後述する中間台120に設けられた第2ローラ154a,154bを走行させるための第2ガイド152と、第2ローラ154a,154bの第2ガイド152からの脱落を防止するための第2障壁151eとが設けられている。
略正方形の枠体からなる中間台120の一方の対辺120aの各々には、下方に延びた第1保持体143a,143bが、他方の対辺120bに垂直で且つその中点を通過する平面に対して対称に設けられており、他方の対辺120bの各々には、上方に延びた第2保持体153a,153bが、他方の対辺120aに垂直で且つその中点を通過する平面に対して対称に設けられている。第1保持体143a,143bの先端には、辺120aの伸張方向に回転可能な第1ローラ144a,144bが設けられており、第2保持体153a,153bの先端には、辺120bの伸張方向に回転可能な第2ローラ154a,154bが設けられている。そして、中間台120は、第1ローラ144a,144bが第1ガイド142に接触するように、第2ローラ154a,154bが第2ガイド152に接触するように、基台110と載置台130との間に配置されている。震動発生時に中間台120を基台110に対して所定の方向(X方向)に往復運動させる一対の中間台横揺れ免震機構140の各々は、第1支持体141と第1ガイド142と第1ガイド142に接触している2個の第1ローラ144a,144bとこれらを支持する第1保持体143a,143bとから構成されており、震動発生時に載置台130を中間台120に対して中間台横揺れ免震機構140における中間台120の往復運動方向(X方向)と垂直な方向(Y方向)に往復運動させる一対の載置台横揺れ免震機構150の各々は、第2支持体151と第2ガイド152と第2ガイド152に接触している2個の第2ローラ154a,154bとこれらを支持する第2保持体153a,153bとから構成されている。
図8は、免震装置100の中間台横揺れ免震機構140による中間台120の基台110に対する移送を説明するための概略図である。ただし、図8では、理解の容易のため、第1障壁141eが省略されている。図8(a)は、図7(b)に対応する免震装置100における基台110及び中間台120の中立位置を示す図である。中立位置において、第1ガイド142は、水平に延びている水平部142a,142bと、水平部142aの一端から第1支持体141の端部に向かって湾曲しながら上方に延びている湾曲部142cと、水平部142aの他端から第1支持体141の中央に向かって湾曲しながら下方に延びている湾曲部142dと、水平部142bの一端から第1支持体141の端部に向かって湾曲しながら上方に延びている湾曲部142eと、水平部142bの他端から第1支持体141の中央に向かって湾曲しながら下方に延びている湾曲部142fと、から構成されている。第1ガイド142の水平部142a,142bの長さは、第1ローラ144aが水平部142aに接している時に第1ローラ144bが水平部142bに接しているように設定されており、湾曲部142c及び142fの長さは、第1ローラ144aが湾曲部142cに接している時に第1ローラ144bが湾曲部142fに接しているように設定されており、湾曲部142d及び142eの長さは、第1ローラ144aが湾曲部142dに接している時に第1ローラ144bが湾曲部142eに接しているように設定されている。本実施の形態の免震装置100では、中間台横揺れ免震機構140の水平移送部が、第1ガイド142の水平部142a,142bとこの水平部142a,142bを走行する第1ローラ144a,144bとで構成されている。また、中間台横揺れ免震機構140の回転移送部は、第1ガイド142の湾曲部142c,142fとこの湾曲部142c,142fを走行する第1ローラ144a,144bとの組み合わせ、及び、第1ガイド142の湾曲部142d,142eとこの湾曲部142d,142eを走行する第1ローラ144a,144bとの組み合わせ、により構成されている。
図8(b)は、中間台横揺れ免震機構140の水平移送部により、中間台120が基台110に対して中間台水平限界位置まで移動させられた状態を示している。中間台水平限界位置とは中間台120が基台110に対して水平移動可能な限界の位置を意味し、具体的には、図8(b)の左側の図に示したように、第1ローラ144aが第1ガイド142の水平部142aと湾曲部142dの接続位置に接触しており、且つ、第1ローラ144bが第1ガイド142の水平部142bと湾曲部142eの接続位置に接触している位置を意味し、また、図8(b)の右側の図に示したように、第1ローラ144aが第1ガイド142の水平部142aと湾曲部142cの接続位置に接触しており、且つ、第1ローラ144bが第1ガイド142の水平部142bと湾曲部142fの接続位置に接触している位置を意味する。第1ガイド142の水平部142aと湾曲部142c或いは142dとの接続位置、及び、第1ガイド142の水平部142bと湾曲部142e或いは142fとの接続位置は、第1ローラ144a,144bの通過時の衝撃を減ずるように、面取りされているのが好ましい。図9は図8(b)に対応する図であるが、本実施の形態の免震装置100では、中間台120が基台110に対して図8(b)の左側の図に対応する中間台水平限界位置(図9ではこの位置の中間台を実線で示す。)に到達した時に、第1ガイド142の湾曲部142d及び142eが、第1ローラ144a,144bの中心を結ぶ直線の中点を通る鉛直線L1上の点P1を中心とした円C1の一部を成すように構成されており、中間台120が基台110に対して図8(b)の右側の図に対応する中間台水平限界位置(図9ではこの位置の中間台120を一点鎖線で示す。)に到達した時に、第1ガイド142の湾曲部142c及び142fが、第1ローラ144a,144bの中心を結ぶ直線の中点を通る鉛直線L2上の点P2を中心とした円C2の一部を成すように構成されている。したがって、点P1を中心とした同心円C3の接線及び点P2を中心とした同心円C4の接線は、中間台120の各辺により形成される面を通ることになる。なお、点P1,P2の高さは、載置台130の重心と載置台130上の対象物の重心との合成位置より高い位置にあるが、本実施の形態の免震装置100においては、想定される種々の対象物を考慮して予め点P1,P2の位置が設定されている。対象物の重心の位置が極めて高い時は、円C1及び円C2の半径が極めて大きくなるため、第1ガイド142の湾曲部142c,142d,142e,142fの円弧が実質的に直線で近似されることになる。
図8(c)は、中間台横揺れ免震機構140の回転移送部により中間台120が回転運動させられている状態を示している。図8(c)の左側の図は、第1ローラ144aが第1ガイド142の湾曲部142dにより案内され、第1ローラ144bが第1ガイド142の湾曲部142eにより案内されて回転(振子)運動させられている状態を示しており、図8(c)の右側の図は、第1ローラ144aが第1ガイド142の湾曲部142cにより案内され、第1ローラ144bが第1ガイド142の湾曲部142fにより案内されて回転(振子)運動させられている状態を示している。図10は図8(c)に対応する図である。本実施の形態の免震装置100では、中間台120が基台110に対して図8(b)の左側の図に対応する中間台水平限界位置に到達した時に、第1ガイド142の湾曲部142d及び142eが点P1を中心とした円C1の一部を成すように構成されているため、中間台120が図8(c)の左側の図に対応するように回転運動させられている時(図10ではこの位置の中間台120を実線で示す。)は、点P1を中心とした同心円C3の接線が中間台120の各辺により形成される面を通過するように回転運動させられる。したがって、中間台横揺れ免震機構140の回転移送部による中間台120の回転運動の往復は正確な振子運動となる。また、本実施の形態の免震装置100では、中間台120が基台110に対して図8(b)の右側の図に対応する中間台水平限界位置に到達した時に、第1ガイド142の湾曲部142c及び142fが、点P2を中心とした円C2の一部を成すように構成されているため、中間台120が図8(c)の右側の図に対応するように回転運動させられている時(図10ではこの位置の中間台を一点鎖線で示す。)は、点P2を中心とした同心円C4の接線が中間台120の各辺により形成される面を通過するように回転運動させられる。したがって、中間台横揺れ免震機構140の回転移送部による中間台120の回転運動の往復はやはり正確な振子運動となる。
次に、本実施の形態の免震装置100における基台110に対する中間台120の動作を説明する。震動が全く発生していない時、或いは、震動が発生していても対象物を載置した載置台130が移動しないような微弱な震動しか発生していない時には、図8(a)に示すように、中間台120は基台110と重なった位置に存在している。地震が発生して基台110が図8の左側に移動すると、中間台120のうける慣性力により、中間台横揺れ免震機構140の第1ガイド142の水平部142aを第1ローラ144aが走行し、第1ガイド142の水平部142bを第1ローラ144bが走行し、中間台120は基台110に対して水平を保ったままで水平移動させられる。中間台120の基台110に対する水平移動距離は地震の強さに依存するが、図8(b)の左側に示す水平限界位置に到るまで水平移動が可能である。図8(b)の左側に示す水平限界位置にある基台110がさらに図8の左側に距離xだけ移動すると、中間台横揺れ免震機構140の第1ガイド142の湾曲部142dを第1ローラ144aが走行し、第1ガイド142の湾曲部142eを第1ローラ144bが走行し、中間台120は点P1(図10参照)を中心として回転運動させられ、距離xに相当する地震加速度エネルギーが回転運動により吸収される。
また、中立位置にある基台110が図8の右側に移動すると、中間台120のうける慣性力により、中間台横揺れ免震機構140の第1ガイド142の水平部142aを第1ローラ144aが走行し、第1ガイド142の水平部142bを第1ローラ144bが走行し、中間台120は基台110に対して水平を保ったままで水平移動させられる。中間台120の基台110に対する水平移動距離は地震の強さに依存するが、図8(b)の右側に示す水平限界位置に到るまで水平移動が可能である。図8(b)の右側に示す水平限界位置にある基台110がさらに図8の右側に距離xだけ移動すると、中間台横揺れ免震機構140の第1ガイド142の湾曲部142cを第1ローラ144aが走行し、第1ガイド142の湾曲部142fを第1ローラ144bが走行し、中間台120は点P2(図10参照)を中心として回転運動させられ、距離xに相当する地震加速度エネルギーが回転運動により吸収される。したがって、地震の発生状態に応じて、免震装置100の中間台120は基台110に対して図8(c)の右側の図に示す状態と図8(c)の左側の図に示す状態の間で往復運動する。また、地震が停止した時には、対象物等に作用する重力により、第1ガイド142の水平部142aに第1ローラ144aが接触し、第1ガイド142の水平部142bに第1ローラ144bが接触する位置、すなわち中間台120の各辺により形成される面が水平を保つ位置で中間台120が停止する。
図11は、免震装置100の載置台横揺れ免震機構150による載置台130の中間台120に対する移送を説明するための概略図である。ただし、図11では、理解の容易のため、第2障壁151eが省略されている。図11(a)は、図7(a)に対応する免震装置100における中間台120及び載置台130の中立位置を示す図である。中立位置において、第2ガイド152は、水平に延びている水平部152a,152bと、水平部152aの一端から第2支持体151の端部に向かって湾曲しながら上方に延びている湾曲部152cと、水平部152aの他端から第2支持体151の中央に向かって湾曲しながら下方に延びている湾曲部152dと、水平部152bの一端から第2支持体151の端部に向かって湾曲しながら上方に延びている湾曲部152eと、水平部152bの他端から第2支持体151の中央に向かって湾曲しながら下方に延びている湾曲部152fと、から構成されている。第2ガイド152の水平部152a,152bの長さは、第2ローラ154aが水平部152aに接している時に第2ローラ154bが水平部152bに接しているように設定されており、湾曲部152c及び152fの長さは、第2ローラ154aが湾曲部152cに接している時に第2ローラ154bが湾曲部152fに接しているように設定されており、湾曲部152d及び152eの長さは、第2ローラ154aが湾曲部152dに接している時に第2ローラ154bが湾曲部152eに接しているように設定されている。本実施の形態の免震装置100では、載置台横揺れ免震機構150の水平移送部が、第2ガイド152の水平部152a,152bとこの水平部152a,152bを走行する第2ローラ154a,154bとで構成されている。また、載置台横揺れ免震機構150の回転移送部は、第2ガイド152の湾曲部152c,152fとこの湾曲部152c,152fを走行する第2ローラ154a,154bとの組み合わせ、及び、第2ガイド152の湾曲部152d,152eとこの湾曲部152d,152eを走行する第2ローラ154a,154bとの組み合わせ、により構成されている。
図11(b)は、載置台横揺れ免震機構150の水平移送部により、載置台130が中間台120に対して載置台水平限界位置まで移動させられた状態を示している。載置台水平限界位置とは載置台130が中間台120に対して水平移動可能な限界の位置を意味し、具体的には、図11(b)の左側の図に示したように、第2ローラ154aが第2ガイド152の水平部152aと湾曲部152cの接続位置に接触しており、且つ、第2ローラ154bが第2ガイド152の水平部152bと湾曲部152fの接続位置に接触している位置を意味し、また、図11(b)の右側の図に示したように、第2ローラ154aが第2ガイド152の水平部152aと湾曲部152dの接続位置に接触しており、且つ、第2ローラ154bが第2ガイド152の水平部152bと湾曲部152eの接続位置に接触している位置を意味する。第2ガイド152の水平部152aと湾曲部152c或いは152dとの接続位置、及び、第2ガイド152の水平部152bと湾曲部152e或いは152fとの接続位置は、第2ローラ154a,154bの通過時の衝撃を減ずるように、面取りされているのが好ましい。図12は図11(b)に対応する図であるが、本実施の形態の免震装置100では、中間台120が基台110に対して図11(b)の左側の図に対応する載置台水平限界位置(図12ではこの位置の中間台120を実線で示す。)に到達した時に、第2ガイド152の湾曲部152c及び152eが、第2支持体151の基端の中心を通る鉛直線L3上の点P3を中心とした円C5の一部を成すように構成されており、第2ガイド152の湾曲部152d及び152fが、点P3を中心とした円C6の一部を成すように構成されている。円C5と円C6とは同心円である。したがって、点P3を中心とした同心円C7の接線が、載置台130の載置面130cを通ることになる。載置台130が中間台120に対して図11(b)の右側の図に対応する載置台水平限界位置(図12ではこの位置の中間台120を一点鎖線で示す。)に到達した時も、載置台130に対する中間台120の相対的な位置が変化するだけで同様である。なお、点P3の高さは、載置台130の重心と載置台130上の対象物の重心との合成位置より高い位置にあるが、本実施の形態の免震装置100においては、想定される種々の対象物を考慮して予め点P3の位置が設定されている。対象物の重心の位置が極めて高い時は、円C5及び円C6の半径が極めて大きくなるため、第2ガイド152の湾曲部152c,152d,152e,152fの円弧が実質的に直線で近似されることになる。
図11(c)は、載置台横揺れ免震機構150の回転移送部により載置台130が回転運動させられている状態を示している。図11(c)の左側の図は、第2ローラ154aが第2ガイド152の湾曲部152cにより案内され、第2ローラ154bが第2ガイド154の湾曲部152fにより案内されて回転(振子)運動させられている状態を示しており、図11(c)の右側の図は、第2ローラ154aが第2ガイド152の湾曲部152dにより案内され、第2ローラ154bが第2ガイド154の湾曲部152eにより案内されて回転(振子)運動させられている状態を示している。図13は図11(c)に対応する図である。本実施の形態の免震装置100では、載置台130が中間台120に対して図11(b)の左側の図に対応する載置台水平限界位置に到達した時に、第2ガイド152の湾曲部152c及び152eが、点P3を中心とした円C5の一部を成すように構成されており、第2ガイド152の湾曲部152d及び152fが、点P3を中心とした円C6の一部を成すように構成されているため、載置台130が図11(c)の左側の図に対応するように回転運動させられている時(図13ではこの位置の中間台120及び載置台130を実線で示す)は、点P3を中心とした同心円C7の接線が載置台130の載置面130cを通るように回転運動させられる。したがって、載置台横揺れ免震機構150の回転移送部による載置台130の回転運動の往復は正確な振子運動となる。また、本実施の形態の免震装置100では、載置台130が中間台120に対して図11(b)の右側の図に対応する載置台水平限界位置に到達した時に、第2ガイド152の湾曲部152c及び152eが、点P3を中心とした円C5の一部を成すように構成されており、第2ガイド152の湾曲部152d及び152fが、点P3を中心とした円C6の一部を成すように構成されているため、載置台130が図11(c)の右側の図に対応するように回転運動させられている時(図13ではこの位置の中間台120及び載置台130を一点鎖線で示す)は、点P3を中心とした同心円C7の接線が載置台130の載置面130cを通るように回転運動させられる。したがって、載置台横揺れ免震機構150の回転移送部による載置台30の回転運動の往復はやはり正確な振子運動となる。
次に、本実施の形態の免震装置100における中間台120に対する載置台130の動作を説明する。震動が全く発生していない時、或いは、震動が発生していても対象物を載置した載置台130が移動しないような微弱な震動しか発生していない時には、図11(a)に示すように、載置台130は中間台120と重なった位置に存在し、載置面3cは水平に維持されている。したがって、対象物を載置台130上に載せる際に載置台130が傾くことがなく、載置作業に特別な注意が不要である。地震が発生して中間台120が図11の左側に移動すると、載置台130のうける慣性力により、載置台横揺れ免震機構150の第2ガイド152の水平部152aを第2ローラ154aが走行し、第2ガイド152の水平部152bを第2ローラ154bが走行し、載置台130は中間台120に対して水平を保ったままで水平移動させられる。載置台130の中間台120に対する水平移動距離は地震の強さに依存するが、図11(b)の左側に示す水平限界位置に到るまで水平移動が可能である。図11(b)の左側に示す水平限界位置にある中間台120がさらに図11の左側に距離xだけ移動すると、載置台横揺れ免震機構150の第2ガイド152の湾曲部152cを第2ローラ154aが走行し、第2ガイド152の湾曲部152fを第2ローラ154bが走行し、載置台130は点P3(図13参照)を中心として回転運動させられ、距離xに相当する地震加速度エネルギーが回転運動により吸収される。
また、中立位置にある中間台120が図11の右側に移動すると、載置台130のうける慣性力により、中間台横揺れ免震機構150の第2ガイド152の水平部152aを第2ローラ154aが走行し、第2ガイド152の水平部152bを第2ローラ154bが走行し、載置台130は中間台120に対して水平を保ったままで水平移動させられる。載置台130の中間台120に対する水平移動距離は地震の強さに依存するが、図11(b)の右側に示す水平限界位置に到るまで水平移動が可能である。図11(b)の右側に示す水平限界位置にある中間台120がさらに図11の右側に距離xだけ移動すると、載置台横揺れ免震機構150の第2ガイド152の湾曲部152dを第2ローラ154aが走行し、第2ガイド152の湾曲部152eを第2ローラ154bが走行し、載置台130は点P3(図13参照)を中心として回転運動させられ、距離xに相当する地震加速度エネルギーが回転運動により吸収される。したがって、地震の発生状態に応じて、免震装置100の載置台130は中間台120に対して図11(c)の右側の図に示す状態と左側の図に示す状態の間で往復運動する。また、地震が停止した時には、対象物等に作用する重力により、第2ガイド152の水平部152aに第2ローラ154aが接触し、第2ガイド152の水平部152bに第2ローラ154bが接触する位置、すなわち載置台130の載置面130cが水平を保つ位置で載置台130が停止する。
図14は、載置台130上に対象物Oが載置された時の、載置台130の回転(振子)運動を示した図である。(a)は中間台120の基台110に対する回転(振子)運動による載置台130の回転を示しており、(b)は載置台130の中間台120に対する回転(振子)運動を示している。図14では、対象物Oの重心と載置台3の重心との合成位置をgで示している。中間台120の基台110に対する回転(振子)運動に伴い、合成重心gは点P1を中心とした同心円C8上を移動し、載置台130の中間台120に対する回転(振子)運動に伴い、合成重心gは点P3を中心とした同心円C9上を移動する。この回転(振子)運動の過程で、合成重心gは、水平方向の地震加速度hと重力加速度vとが合成された合成加速度cを受ける。そして、合成加速度cの方向は載置台130の載置面130cと垂直な方向である。したがって、本実施の形態の免震装置100によると、載置作業の際に対象物Oの載置台130上の位置を厳密に制限する必要がなく、また、地震による大きな振幅の横揺れを経験しても載置台130上の対象物Oのずれが生じにくく、優れた免震効果が発揮される。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこの実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲での変更が可能である。例えば、第1実施形態における横揺れ免震機構の構成に代えて第2実施形態における中間台横揺れ免震機構の構成又は載置台横揺れ免震機構の構成を採用しても一方向免震装置を構成することができ、また、第2実施形態における中間台横揺れ免震機構の構成に代えて図6に示す変形形態の横揺れ免震機構の構成を採用し、又は、載置台横揺れ免震機構の構成に代えて図6に示す変形形態の横揺れ免震機構の構成を採用しても良い。また、第1実施形態の免震装置では横揺れ免震機構が2個、第2実施形態の免震装置では載置台横揺れ免震機構及び中間台横揺れ免震機構がそれぞれ2個設けられているが、必要とされる強度に依存して数を増減することができ、また、1個の横揺れ免震機構に2個のローラを使用しているが、必要とされる強度に応じて数を増やすことができる。さらに、ローラとローラを走行させるガイドの形状は、第1実施形態の免震装置及び第2実施形態の免震装置において説明された形状に限定されず、例えば、鉄道車輪の如き鍔部を有する鍔付きローラを使用すれば、ガイドに沿って設けられるローラの脱落防止用の障壁は不要である。また、免震装置は建物内の床面に配置されるだけでなく、例えば地面に配置して載置台上に建築物を構築しても良い。さらに、基台、中間台、載置台の形状は第1実施形態の免震装置及び第2実施形態の免震装置において説明された形状に限らず、保護すべき対象物に応じて適宜変更することができる。例えば、食器棚等の収納棚の側板の対向する内面に棚板ごとに一対の水平な柱状の支持材を配置し、この支持材を第1実施形態の免震装置における基台として活用することにより、棚板ごとに免震装置を構成することもできる。この構成によると、収納棚自体が建築構造物に固定されている場合でも、棚板上に積載された物品が震動により転倒落下することを防ぐことが可能である。