以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。図面では同様な構成および機能を有する部分に同じ符号が付され、下記説明では重複説明が省略される。なお、以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であり、本発明の技術的範囲を限定する事例ではない。また、図面においては、理解容易のため、各部の寸法や数が誇張または簡略化して図示されている場合がある。また、各図面には、方向を説明するためにXYZ直交座標軸が附されている。該座標軸における+Z方向は鉛直上方向を示し、XY平面は水平面である。
<1 第1実施形態>
<1.1 スパッタリング装置1の全体構成>
図1は、第1実施形態に係るスパッタリング装置1の概略構成を模式的に示す断面模式図である。スパッタリング装置1は、反応性スパッタリングによって膜付けの対象物(ここでは、例えば基材91)に薄膜を形成する装置である。基材91は、例えば、シリコンウェハなどにより構成される。
スパッタリング装置1は、チャンバー100(真空チャンバー)と、その内部に配置されたプラズマ処理部50と、基材91を搬送する搬送機構30と、スパッタリング装置1の各部を統括制御する制御部190とを備える。チャンバー100は、直方体形状の外形である中空部材である。チャンバー100は、その底板の上面が水平姿勢となるように配置されている。また、X軸およびY軸の各々は、チャンバー100の側壁と平行な軸である。
スパッタリング装置1は、さらに、プラズマ処理部50の周囲を取り囲むように配置され上方に開口部を有する仕切り部材(以下、「チムニー60」と呼ぶ)を備える。チムニー60は、開口部を除いてプラズマ処理部50と後述する搬送経路面Lとの間を仕切ることで、被成膜箇所Pを規定する。また、チムニー60は、その内部の雰囲気とその外部の雰囲気とを遮断する。処理空間Vは、チムニー60に仕切られてプラズマ処理部50を囲む空間である。このため、チャンバー100の内部には処理空間Vが形成されることとなる。
チャンバー100内には、水平な搬送経路面Lがチムニー60の上方に規定されている。搬送経路面Lの延在方向はX軸方向であり、基材91はX軸方向に沿って搬送される。
また、スパッタリング装置1は、チャンバー100内を搬送される基材91を加熱または冷却する板状の温調部40を備える。一例として、温調部40は、セラミックヒータなどのヒータを内蔵している。また別の例として、温調部40は、水冷ジャケットで構成される。温調部40は、例えば、搬送経路面Lの上側に配置される。
チャンバー100のうち搬送経路面Lの−X側の端部には、基材91をチャンバー100内に搬入するためのゲート160が設けられる。他方、チャンバー100のうち搬送経路面Lの+X側の端部には、基材91をチャンバー100外に搬出するためのゲート161が設けられている。また、チャンバー100のX方向両端部には、ロードロックチャンバーや、アンロードロックチャンバーなどの他のチャンバーの開口部が気密を保った形態で接続可能に構成されている。各ゲート160、161は、開閉の切替可能に構成される。
また、チャンバー100には、高真空排気系170が接続されており、チャンバー100の内部空間を真空状態に減圧できるようになっている。高真空排気系170は、例えば、それぞれ図示省略の真空ポンプと、排気配管と、排気バルブと備える。排気配管は、一端が真空ポンプに接続され、他端がチャンバー100の内部空間に連通接続される。また、排気バルブは、排気配管の経路途中に設けられる。排気バルブは、具体的には、排気配管を流れるガスの流量を自動調整できるバルブである。この構成において、真空ポンプが作動された状態で、排気バルブが開放されると、チャンバー100の内部空間が排気される。高真空排気系170は、処理空間V内の圧力を所定のプロセス圧に保つように制御部190により制御される。
搬送機構30は、チャンバー100の内部において、Y方向において搬送経路面Lを挟んで対向配置された搬送ローラ31の対と、これらを同期させて回転駆動する駆動部(図示省略)とを含んで構成される。搬送ローラ31は、搬送経路面Lの延在方向であるX方向に沿って複数対設けられる。なお、図1では、2対の搬送ローラ31の図示手前側(−Y側)に位置する2つのローラが描かれている。
基材91は、キャリア90の下面に設けられた図示省略の爪状部材などによってキャリア90の下に着脱可能に保持されている。キャリア90は、板状のトレーなどによって構成されている。なお、キャリア90における基材91の保持態様は、本実施形態の態様の他にも種々の態様を採用しうる。例えば、上下方向に貫通する中空部を有する板状トレーの該中空部に基材91を嵌めこむことによって、基材91の下面を成膜可能な状態で該基材91を保持する態様であっても構わない。
基材91が配設されたキャリア90がゲート160を介してチャンバー100内に導入されると、各搬送ローラ31が該キャリア90の端縁(±Y側の端縁)付近に下方から当接する。そして、駆動部(図示省略)によって各搬送ローラ31が同期回転されることによって、キャリア90およびキャリア90に保持される基材91が搬送経路面Lに沿って搬送される。本実施形態では、各搬送ローラ31が時計回りおよび反時計回りの双方に回転可能であり、キャリア90およびキャリア90に保持される基材91が双方向(±X方向)に搬送される態様について説明する。搬送経路面Lは、プラズマ処理部50に対向した被成膜箇所Pを含む。このため、搬送機構30によって搬送される基材91が被成膜箇所Pに配される期間中は基材91の主面への成膜処理が行われ、基材91が被成膜箇所Pに配されない期間中は基材91の主面への成膜処理が行われない。
また、スパッタリング装置1は、処理空間V内の上方空間および下方空間(後述する被遮蔽空間G)に不活性ガスであるアルゴンガスあるいはキセノンガスなどのスパッターガスを供給するスパッターガス供給部510と、処理空間V内の上方空間および下方空間(後述する被遮蔽空間G)に酸素ガスあるいは窒素ガスなどの反応性ガスを供給する反応性ガス供給部520とを備える。これにより、処理空間V内には、スパッターガスと酸素の反応性ガスとの混合雰囲気が形成される。
スパッタリング装置1は、反応性スパッタリングにより基材91上にターゲット材料と反応性ガスとが反応した反応生成物(化合物)の膜を形成する。例えば、後述するターゲット16としてITOを用いて基材91上にITO膜を成膜する場合には、反応性ガスとして酸素ガスが採用される。
スパッターガス供給部510は、具体的には、例えば、スパッターガスの供給源であるスパッターガス供給源511と、配管512,612とを備える。配管512は、一端がスパッターガス供給源511と接続され、他端が処理空間V内の被遮蔽空間Gと連通する各ノズル514に接続される。配管612は、一端がスパッターガス供給源511と接続され、他端が処理空間Vと連通する各ノズル614に接続される。また、配管512,612の経路途中には、それぞれバルブ513,613が設けられる。バルブ513,613は、制御部190の制御下で処理空間Vに供給されるスパッターガスの量を調整する。バルブ513,613は、配管を流れるガスの流量を自動調整できるバルブであることが好ましく、具体的には、例えば、マスフローコントローラ等を含んで構成することが好ましい。
反応性ガス供給部520は、具体的には、例えば、反応性ガスの供給源である反応性ガス供給源521と、配管522,622とを備える。配管522は、一端が反応性ガス供給源521と接続され、他端が複数(図4の例では、6個)に分岐して、各分岐端が、処理空間Vに設けられた複数のノズル12(図4の例では、搬送上流側と搬送下流側とにそれぞれ3個ずつ計6個のノズル12)に接続される。配管522の経路途中には、バルブ523が設けられる。配管622は、一端が反応性ガス供給源521と接続され、他端が処理空間V内の被遮蔽空間Gと連通する各ノズル624に接続される。また、配管622の経路途中には、バルブ623が設けられる。バルブ523,623は、制御部190の制御下で処理空間Vに供給される反応性ガスの量を調整する。
各ノズル12は、平面形状が長方形の板状の外形を有している。各ノズル12は、処理空間Vのうちプラズマ処理部50に対して基材91側の水平面内において搬送経路面Lと垂直な方向(Y方向)に延在するように設けられている。配管522の他端は、各ノズル12の幅方向の両端面のうちチムニー60の側壁側の一端面と接続されている。ノズル12には、当該一端面に開口して配管522の他端と接続されるとともに、ノズル12内部で複数の枝流路に分岐する流路が形成されている。各枝流路の先端は、ノズル12の幅方向の他端面に達して開口し、複数の吐出口11を形成している。
搬送経路面Lの上流側の各ノズル12の下方には、光ファイバーのプローブ13が設けられる。また、プローブ13に入射するプラズマ発光の分光強度を測定可能な各分光器14が設けられている。各分光器14は制御部190と電気的に接続されており、分光器14の測定値は制御部190に供給される。制御部190は、分光器14の出力に基づいて、プラズマエミッションモニター(PEM)法によりバルブ523を制御することで、反応性ガス供給部520からチャンバー100内に供給される反応性ガスの導入量を制御する。バルブ523は、配管を流れるガスの流量を自動調整できるバルブであることが好ましく、例えば、マスフローコントローラ等を含んで構成することが好ましい。
スパッタリング装置1が備える各構成要素は、スパッタリング装置1が備える制御部190と電気的に接続されており、当該各構成要素は制御部190により制御される。制御部190は、具体的には、例えば、各種演算処理を行うCPU、プログラム等を記憶するROM、演算処理の作業領域となるRAM、プログラムや各種のデータファイルなどを記憶するハードディスク、LAN等を介したデータ通信機能を有するデータ通信部等がバスラインなどにより互いに接続された、一般的なFAコンピュータにより構成される。また、制御部190は、各種表示を行うディスプレイ、キーボードおよびマウスなどで構成される入力部等と接続されている。スパッタリング装置1においては、制御部190の制御下で、基材91に対して定められた処理が実行される。
<1.2 プラズマ処理部50>
図2は、プラズマ処理部50およびその周辺を示す断面模式図である。図3は、プラズマ処理部50の誘導結合アンテナ151(高密度プラズマ源)の例を示す側面図である。また、図4は、チムニー60内の各部(プラズマ処理部50およびその周辺部)を示す斜視図である。なお、図4では、シールド部180に係る構成が省略して描かれている。
プラズマ処理部50は、回転カソード5、6と、回転カソード5、6の内部にそれぞれ収容された磁石ユニット21、22(磁界形成部)と、回転カソード5、6を回転させる各回転駆動部19と、を備える。また、プラズマ処理部50が、回転カソード5、6の回転とは独立して磁石ユニット21、22を回転させる各回転駆動部(図示せず)を備えてもよい。
回転カソード5、6(カソード対)は、処理空間VにおいてX方向に一定距離を隔てて対向配置されている。このように、回転カソード5、6を並設すれば、被成膜箇所Pにラジカルをより集中させて成膜レートをより向上させることができる。
また、プラズマ処理部50は、回転カソード5、6にスパッタ電圧を印加するスパッター用電源163(スパッタ電圧供給手段)と、複数の誘導結合アンテナ151と、各誘導結合アンテナ151に高周波電力を供給する高周波電源153(高周波電力供給手段)とをさらに備える。後述の各ベース部材8および磁石ユニット21(22)は、併せてマグネトロンカソード(円筒状マグネトロンカソード)とも称される。
磁石ユニット21(22)は、回転カソード5(6)の外周面のうち自身の近傍で磁界(静磁場)を形成する。また、各誘導結合アンテナ151は、処理空間Vのうち被遮蔽空間Gに高密度プラズマ(誘導結合型プラズマ)を発生する。ここで、被遮蔽空間Gとは、各誘導結合アンテナ151の上方を覆うように、後述するシールド部180によって処理空間V内に規定される空間である。なお、この高密度プラズマは、電子の空間密度が3×1010個/cm3以上のプラズマである。
回転カソード5(6)は、水平面内において搬送方向に垂直なY方向に延設された筒状のベース部材8と、ベース部材8の外周を被覆する筒状のターゲット16とを備えて構成されている。ベース部材8は、導電体である。ターゲット16に用いられる材料としては、例えば、ITO、アルミニウム、あるいはSi等が採用される。なお、回転カソード5(6)がベース部材8を含まず、円筒状のターゲット16によって構成されてもよい。ターゲット16の形成は、例えば、ターゲット材料の粉末を圧縮成型して筒状に形成し、その後、ベース部材8を挿入、ロー付けする手法などによって行われる。
各ベース部材8の中心軸線2(3)方向の両端部は、中央部に円状の開口が設けられた蓋部によってそれぞれ塞がれている。回転カソード5(6)の中心軸線2(3)方向の長さは、例えば、1,400mmに設定され、直径は、例えば、150mmに設定される。
プラズマ処理部50は、2対のシール軸受9、10と、2つの円筒状の支持棒7とをさらに備えている。シール軸受9、10の各対は、回転カソード5(6)の長手方向(Y方向)において回転カソード5(6)を挟んで設けられている。シール軸受9、10は、それぞれ、チャンバー100の底板の上面から立設された台部と、台部の上部に設けられた略円筒状の円筒部とを備えている。
各支持棒7の一端はシール軸受9の円筒部に軸受けされ、他端はシール軸受10の円筒部に軸受けされている。各支持棒7は、ベース部材8の一端の蓋部の開口から回転カソード5(6)内に挿入されて、回転カソード5(6)を中心軸線2(3)に沿って貫通し、ベース部材8の他端の蓋部の開口から回転カソード5(6)外に出されている。
磁石ユニット21(22)は、透磁鋼などの磁性材料により形成されたヨーク25(支持板)と、ヨーク25上に設けられた複数の磁石(後述する中央磁石23a、周辺磁石23b)とを備えて構成されている。
ヨーク25は、平板状の部材であり、回転カソード5(6)の内周面に対向して回転カソード5の長手方向(Y方向)に延在している。回転カソード5、6の内周面に対向するヨーク25の主面(表面)上には、ヨーク25の長手方向に延在する中央磁石23aが、ヨーク25の長手方向に沿った中心線上に配置されている。ヨーク25の表面の外縁部には、中央磁石23aの周囲を囲む環状(無端状)の周辺磁石23bが、さらに設けられている。中央磁石23a、周辺磁石23bは、例えば、永久磁石によって構成される。
中央磁石23aと周辺磁石23bとのそれぞれのターゲット16側の極性は、互いに異なっている。また、2つの磁石ユニット21、22におけるそれぞれの極性は相補的に構成される。例えば、磁石ユニット21ではターゲット16側における中央磁石23aの極性がN極とされ周辺磁石23bの極性がS極とされる一方で、磁石ユニット22ではターゲット16側における中央磁石23aの極性がS極とされ周辺磁石23bの極性がN極とされる。
ヨーク25の他方の主面(裏面)には、固定部材27の一端が接合されている。固定部材27の他端は、支持棒7に接合されている。これにより、磁石ユニット21、22は支持棒7に連結されている。
回転カソード5、6は、ベース部材8の両端の蓋部の開口部において、封止可能な軸受けにより支持棒7と共通の中心軸線2、3を中心に回転可能に支持されている。これにより、回転カソード5、6の内部空間と、処理空間Vとは互いに遮断されている。また、磁石ユニット21、22は、支持棒7と共通の中心軸線2、3を中心に回転カソード5、6の回転とは独立して回転可能に支持されている。
各シール軸受9の台部には、モータと、モータの回転を伝達するギア(それぞれ図示省略)を備えた回転駆動部19が設けられている。また、回転カソード5、6のベース部材8のシール軸受9側(+Y側)の蓋部の開口部の周囲には、各回転駆動部19のギアと噛み合うギア(図示省略)が設けられている。
各回転駆動部19(回転部)は、モータの回転によって中心軸線2(3)を中心に回転カソード5(6)を回転させる。より詳細には、回転駆動部19は、回転カソード5、6のそれぞれの外周面のうち互いに対向している部分が誘導結合アンテナ151側から基材91側に向けてそれぞれ移動するように、中心軸線2、3回りで互いに逆方向に回転カソード5、6を回転させる。回転速度は例えば10〜20回転/分に設定され、成膜処理の期間中は上記した回転速度および回転方向で定速回転される。また、回転カソード5、6は、シール軸受10および支持棒7を介して内部に冷却水を循環させるなどして、適宜、冷却されている。
スパッター用電源163に接続される電線は、2つに分岐して処理空間Vに導入されて、回転カソード5、6の各シール軸受10内に導かれている。各分岐電線の先端には、回転カソード5、6のベース部材8のシール軸受10側の蓋部に接触するブラシが設けられている。スパッター用電源163は、このブラシを介してベース部材8に、負電圧を含むスパッタ電圧を印加する。例えば、スパッター用電源163が回転カソード5、6に相互に逆位相の交流スパッタ電圧を印加する。また該態様の他にも、スパッタ電圧として負電圧が印加される態様であっても構わないし、スパッタ電圧として負電圧と正電圧とからなるパルス状の電圧が印加される態様であっても構わない。スパッタ電圧として、パルス電圧または交流電圧を印加する場合には、並設された回転カソード5、6に交互にスパッタ電圧を印加して反応性スパッタを行ってもよい。スパッタ電圧は、別の表現として、ターゲット電圧、カソード印加電圧、またはバイアス電圧とも称される。
各ベース部材8(ひいては、各ターゲット16)にスパッタ電圧が印加されることによって、磁石ユニット21、22が形成する静磁場によって処理空間Vの各ターゲット16の表面にスパッターガスのプラズマ(マグネトロンプラズマ)が生成され、回転カソード5、6間には高密度なスパッターガスのプラズマが閉じ込められる。スパッター用電源163は、マグネトロンカソードが形成する静磁場によって処理空間Vにマグネトロンプラズマが発生するように、ターゲット16に負電圧を含むスパッタ電圧を印加する。
複数の誘導結合アンテナ151は、チャンバー100の底板のうち回転カソード5、6の間の部分において、間隔をあけて回転カソード5、6の長手方向(Y方向)に沿って一列に配設されている。なお、図4の例では誘導結合アンテナ151の個数が5個の場合について説明しているが、該個数は回転カソード5(6)の長さに応じて適宜変更する(例えば、7個にする)ことができる。
各誘導結合アンテナ151は、石英(石英硝子)などからなる誘電体の保護部材152によって覆われて、チャンバー100の底板を貫通して設けられる。また、基材91の搬送方向における各誘導結合アンテナ151の前後には、スパッターガス供給源511から供給されるスパッターガスを被遮蔽空間Gに導入する一対のノズル514がそれぞれ設けられている。さらに、基材91の搬送方向における各誘導結合アンテナ151の前後には、反応性ガス供給源521から供給される反応性ガスを被遮蔽空間Gに導入する一対のノズル624がそれぞれ設けられている。
より詳細には、各誘導結合アンテナ151は、例えば、図3に示されるように、金属製のパイプ状導体をU字形に曲げたものであり、「U」の字を上下逆向きにした状態でチャンバー100の底板を貫通して処理空間Vの内部に突設されている。誘導結合アンテナ151は、内部に冷却水を循環させるなどして、適宜、冷却されている。誘導結合アンテナ151は、LIA(Low Inductance Antenna:株式会社イー・エム・ディーの登録商標)とも称される。
各誘導結合アンテナ151の一端は、整合回路154を介して、高周波電源153に電気的に接続されている。また、各誘導結合アンテナ151の他端は接地されている。高周波電源153は、被遮蔽空間Gに誘導結合プラズマが発生するように、各誘導結合アンテナ151に高周波電力を供給する。
この構成において、高周波電源153から誘導結合アンテナ151に高周波電力(例えば、13.56MHzの高周波電力)が供給されると、誘導結合アンテナ151の周囲に高周波誘導磁界が生じ、被遮蔽空間Gにスパッターガスと反応性ガスとのそれぞれの誘導結合プラズマ(Inductively Coupled Plasma:ICP)が発生する。上記誘導結合プラズマは、高周波誘導結合プラズマとも称される。
上述したとおり、誘導結合アンテナ151は、U字形状である。このようなU字形状の誘導結合アンテナ151は、巻数が一周未満の誘導結合アンテナに相当し、巻数が一周以上の誘導結合アンテナよりもインダクタンスが低い。このため、誘導結合アンテナ151の両端に発生する高周波電圧が低減され、生成するプラズマへの静電結合に伴うプラズマ電位の高周波揺動が抑制される。このため、対地電位へのプラズマ電位揺動に伴う過剰な電子損失が低減され、プラズマ電位が特に低く抑えられる。
Y方向に沿って配列される各誘導結合アンテナ151の上方近傍には、水平面に沿ってY方向に伸びる板状のシャッター(図示せず)が設けられる。このため、変位機構(図示せず)がシャッターを変位することによって、シャッターによって各誘導結合アンテナ151の上方が覆われる閉状態と、シャッターが各誘導結合アンテナ151の上方から退避して各誘導結合アンテナ151が被遮蔽空間Gと連通した開状態と、の切替が行われる。シャッターは、例えば、ステンレス鋼を主として構成される。
また、処理空間V内において、各誘導結合アンテナ151(高密度プラズマ源)の周囲がシールド部180によって覆われ、被遮蔽空間Gが形成される。シールド部180は、複数の空隙部184が2次元的に配列された貫通面を含み、電気的に接地された部材である。シールド部180は、各誘導結合アンテナ151の±X位置においてチャンバー100からYZ平面に沿って立設される2つの第1シールド181と、2つの第1シールド181の上端を架け渡すように水平面に沿って設けられる第2シールド182(貫通面)と、を備える。
2つの第1シールド181は、誘導結合アンテナ151で生成される高密度プラズマのX方向範囲を規定する。第2シールド182は、2つの磁石ユニット21、22と被成膜箇所Pとの間を避ける位置で、かつ、誘導結合アンテナ151と被成膜箇所Pとの間を遮る位置に配される(図2)。これにより、第2シールド182は、高密度プラズマのZ方向範囲を規定する。
誘導結合アンテナ151で生成された高密度プラズマ中のイオンと電子は、接地された第2シールド182によって上方への通過が阻止される。その一方で、誘導結合アンテナ151で生成された高密度プラズマ中の高密度ラジカル(特に、反応性ガスのラジカル)は、第2シールド182の空隙部184を上方へと通過して基材91へ到達する。このため、高密度ラジカルが基材91の主面に対する成膜処理により有効に寄与する。
本実施形態では、第2シールド182として導電性の板状体に複数の空隙部が穿設されたパンチングプレートが採用された場合について説明する。第1シールド181および第2シールド182は一体的に構成されており、両者の素材としては例えばステンレス鋼を採用しうる。
図5は、第2シールド182の一部を示す上面図である。
冷却部185は、その内部で冷却水を流動させる配管と、その配管に冷却水を供給する供給部(図示せず)と、を有する。そして、第2シールド182の上面には、冷却部185の配管が全面にわたって取り付けられる。このため、配管内を冷却水が流動することで、該配管と接する第2シールド182の全体が冷却される。図5に示されるように、水平面視において空隙部184を避けて冷却部185の配管が設けられれば、プラズマが空隙部184を通過することが妨げられず、望ましい。
以上説明したスパッタリング装置1は、チャンバー100の処理空間Vに、スパッターガスと、酸素や窒素などの反応性ガスとを導入して、回転カソード5、6の外周を被覆するターゲット16(アルミニウム、ITO、Si等)をスパッタし、当該ターゲット16に対向する基材91上にターゲット材料の膜やその酸化膜や窒化膜などを成膜する。
<1.3 成膜処理>
以下、スパッタリング装置1における成膜処理の一例を説明する。
まず、スパッターガス供給部510が、処理空間Vに不活性ガスであるアルゴンガスあるいはキセノンガスなどのスパッターガスを供給する。また、反応性ガス供給部520が、処理空間Vに酸素ガスあるいは窒素ガスなどの反応性ガスを供給する。これにより、被遮蔽空間Gを含む処理空間V内には、スパッターガスと反応性ガスとの混合雰囲気が形成される。
各回転駆動部19は、モータの回転によって中心軸線2(3)を中心に回転カソード5(6)を回転させる。より詳細には、回転駆動部19は、回転カソード5、6のそれぞれの外周面のうち互いに対向している部分が誘導結合アンテナ151側から基材91側に向けてそれぞれ移動するように、中心軸線2、3回りで互いに逆方向に回転カソード5、6を回転させる。この回転は、成膜処理が終了するまで継続される。
スパッター用電源163は、回転カソード5、6にスパッタ電圧を印加する。回転カソード5、6の各ベース部材8(ひいては、各ターゲット16)にスパッタ電圧が印加されることによって、各回転カソード5、6やその間にマグネトロンプラズマ用の電界が生成され、反応性ガスとスパッターガスとのプラズマが生成される。
また、高周波電源153が各誘導結合アンテナ151に高周波電力を供給する。これにより、被遮蔽空間Gには、反応性ガスとスパッターガスとの誘導結合プラズマが生成される。
そして、搬送機構30が搬送経路面Lに沿って基材91を搬送する。より具体的には、搬送機構30は、基材91が被成膜箇所P(搬送経路面Lのうちカソード対に対向する箇所)を複数回通過するように、基材91を搬送経路面Lに沿って±X方向に移動させる。その結果、基材91の表面(−Z側の主面)には、回転カソード5、6のターゲット16からスパッタされたスパッタ粒子が堆積する。
<1.4 効果>
以下、図6および図7に示す比較例を参照しつつ、本実施形態の効果について説明する。図6は、比較例に係るスパッタリング装置1Yにおいて、プラズマ処理部50Yおよびその周辺を示す断面模式図である。図7は、比較例に係るスパッタリング装置1Zにおいて、プラズマ処理部50Zおよびその周辺を示す断面模式図である。
図6に示すように、スパッタリング装置1Yは、本実施形態のシールド部180に相当する構成を有さない。このため、誘導結合アンテナ151で生成される高密度プラズマに含まれるイオンや電子が、基材91の主面に対して直接的に衝突する。その結果、スパッタリング装置1Yでは、イオンや電子の衝突に起因するプラズマダメージ(イオンダメージ、電子ダメージ、熱ダメージ等)が基材91に強く与えられるという第1の課題が生じる。
図7に示すように、スパッタリング装置1Zでは、本実施形態のシールド部180に相当する構成として、シールド部180Zを有する。シールド部180Zでは、第2シールド182Zが、誘導結合アンテナ151と被成膜箇所Pとの間を遮る位置(より具体的には、チムニー60の上方開口部)に配される。このため、誘導結合アンテナ151で生成される高密度プラズマに含まれるイオンや電子の一部が、第2シールド182Zの非空隙箇所に衝突する。イオンおよび電子が衝突することによって第2シールド182Zが帯電したとしても、アース線(図示せず)を通じて第2シールド182Z上の電荷が取り除かれる。その結果、基材91の主面に対してイオンや電子が直接的に衝突することが抑制され、プラズマダメージが基材91に与えられることが抑制される。なお、誘導結合アンテナ151で生成される高密度プラズマに含まれるラジカルは、第2シールド182Zの空隙部184Zを貫通して基材91の主面に到達し、成膜処理に寄与する。これにより、上記第1の課題が解決される。
しかしながら、スパッタリング装置1Zでは、第2シールド182Zが、2つの磁石ユニット21、22と被成膜箇所Pとの間を遮る位置に配される。このため、ターゲット16からスパッタされ被成膜箇所Pへと飛翔するスパッタ粒子の一部が、第2シールド182Zの非空隙箇所(ステンレス鋼が存在する箇所)に堆積する。その結果、基材91への成膜レートが低下するという第2の課題が生じる。
本実施形態のスパッタリング装置1では、第2シールド182が、誘導結合アンテナ151と被成膜箇所Pとの間を遮る位置に配される。このため、上記の原理でプラズマダメージが基材91に与えられることが抑制される。また、誘導結合アンテナ151で生成される高密度プラズマに含まれるラジカルは、第2シールド182の空隙部184を貫通して基材91の主面に到達し、成膜処理に寄与する。これにより、上記第1の課題が解決される。
さらに、本実施形態のスパッタリング装置1では、第2シールド182が、2つの磁石ユニット21、22と被成膜箇所Pとの間を避ける位置に配される。このため、ターゲット16からスパッタされ被成膜箇所Pへと飛翔するスパッタ粒子が、第2シールド182の非空隙箇所(ステンレス鋼が存在する箇所)に堆積することはない。その結果、成膜レートの低下を抑制でき、上記第2の課題も解決される。
また、本実施形態では、冷却部185(図5)により第2シールド182が冷却されるため、第2シールド182に対する熱ダメージが軽減される。さらに、第2シールド182が加熱されることに起因して生じる輻射熱が基材91の主面に与える熱ダメージも軽減される。
また、ラジカルが基材91に成膜されるITO膜の抵抗率を下げる働きをすることが知られている。さらに、ラジカルの高密度化により基材91上に成膜されるITO膜の酸化反応が高速化し、ITO膜の平坦度が高まることが知られている。このため、第2シールド182の空隙部184を通じてプラズマ中のラジカルを成膜処理に寄与させる本実施形態のスパッタリング装置1では、成膜されるITO膜の低抵抗率化および平坦化が実現される。
<2 第2実施形態>
図8は、第2実施形態のスパッタリング装置1Aにおけるプラズマ処理部50Aおよびその周辺を示す断面模式図である。以下では、図8を参照しつつ第2実施形態のスパッタリング装置1Aについて説明するが、第1実施形態と同一の要素については同一の符号を付し重複説明を省略する。
第2実施形態のスパッタリング装置1Aは、磁石ユニット21、22の配置、および、シールド部180Aの形状に関して、第1実施形態のスパッタリング装置1と相違する。スパッタリング装置1Aを構成する他の各部は、第1実施形態のスパッタリング装置1を構成する各部と同様である。このため、以下では、主として、上記相違について説明する。
スパッタリング装置1Aにおいては、磁石ユニット21、22が略対向配置から被成膜箇所Pに近づく+Z方向に所定角度(例えば、45度)だけ回転された配置とされている。その結果、磁石ユニット21、22は、第1実施形態の場合に比べて、より+Z側に配される。
シールド部180Aは、複数の空隙部184Aが2次元的に配列された貫通面を含み、電気的に接地された部材である。シールド部180Aは、各誘導結合アンテナ151の±X位置においてチャンバー100から立設される2つの第1シールド181Aと、2つの第1シールド181Aの上端を架け渡すように水平面に沿って設けられる第2シールド182A(貫通面)と、を備える。
第2実施形態においても、第1実施形態と同様、第2シールド182Aが、2つの磁石ユニット21、22と被成膜箇所Pとの間を避ける位置で、かつ、誘導結合アンテナ151と被成膜箇所Pとの間を遮る位置に配される。
その結果、上述の通り、成膜レート低下の抑制および基材91へのプラズマダメージの抑制が実現される。
また、2つの第1シールド181Aは、2つの回転カソード5、6の内側に沿って屈曲しつつ、チャンバー100から上方に向けて立設される。2つの第1シールド181Aの上端の高さは、2つの磁石ユニット21、22の下端部の高さよりも若干低く、本実施形態では、2つの中心軸線2、3と略同一の高さである。そのため、2つの第1シールド181Aの上端に架け渡される第2シールド182Aの高さも、2つの中心軸線2、3と略同一の高さとなり、この高さは第1実施形態の第2シールド182の高さよりも高い。すなわち、第2シールド182Aは、第1実施形態の第2シールド182よりも被成膜箇所Pに近い。
このため、第2実施形態では、第1実施形態の場合に比べて、第2シールド182Aの空隙部184Aを通過したラジカルがその活性を維持した状態で基材91の主面に到達しやすい。その結果、ラジカル(特に、反応性ガスのラジカル)がより効率的に成膜処理に寄与し、生成される膜の膜質が向上しうる。
<3 第3実施形態>
図9は、第3実施形態のスパッタリング装置1Bにおけるプラズマ処理部50Bおよびその周辺を示す断面模式図である。以下では、図9を参照しつつ第3実施形態のスパッタリング装置1Bについて説明するが、第1実施形態と同一の要素については同一の符号を付し重複説明を省略する。
第3実施形態のスパッタリング装置1Bは、主に、回転カソードの構成、誘導結合アンテナ151の構成、シールド部180Bの構成に関して、第1実施形態のスパッタリング装置1と相違する。スパッタリング装置1Bを構成する他の各部は、第1実施形態のスパッタリング装置1を構成する各部と同様である。このため、以下では、上記相違について説明する。
スパッタリング装置1Bは、第1実施形態の回転カソード6に相当する構成を有さず、1つの回転カソード5を有する。回転カソード5は、チムニー60内のX方向中央位置から見て−X側に配される。誘導結合アンテナ151、保護部材152、および、2つのノズル514は、チムニー60内のX方向中央位置から見て+X側に配される。また、誘導結合アンテナ151を覆うようにシールド部180Bが配される。
磁石ユニット21は+Z方向に向いた配置とされている。その結果、磁石ユニット21は、第1実施形態の場合に比べて、より+Z側に配される。
シールド部180Bは、複数の空隙部184Bが2次元的に配列された貫通面を含み、電気的に接地された部材である。シールド部180Bは、各誘導結合アンテナ151の±X位置においてチャンバー100から立設される2つの第1シールド181Bと、2つの第1シールド181Bの上端を架け渡すように水平面に沿って設けられる第2シールド182B(貫通面)と、を備える。
第3実施形態においても、第1実施形態と同様、第2シールド182Bが、磁石ユニット21と被成膜箇所Pとの間を避ける位置で、かつ、誘導結合アンテナ151と被成膜箇所Pとの間を遮る位置に配される。
その結果、上述の通り、成膜レート低下の抑制および基材91へのプラズマダメージの抑制が実現される。
また、2つの第1シールド181Bのうち−X側の第1シールド181Bは、回転カソード5に沿って湾曲しつつ、チャンバー100から上方に向けて立設される。2つの第1シールド181Bの上端の高さは、磁石ユニット21の上端部の高さよりも若干低く、本実施形態では、中心軸線2よりも高い位置である。そのため、2つの第1シールド181Bの上端に架け渡される第2シールド182Bの高さも、中心軸線2より高い位置となり、この高さは第1実施形態の第2シールド182の高さや第2実施形態の第2シールド182Aよりも高い。すなわち、第2シールド182Bは、第1実施形態の第2シールド182や第2実施形態の第2シールド182Aよりも被成膜箇所Pに近い。
このため、第3実施形態では、第1実施形態や第2実施形態の場合に比べて、第2シールド182Bを通過したラジカルがその活性を維持した状態で基材91の主面に到達しやすい。その結果、ラジカル(特に、反応性ガスのラジカル)がより効率的に成膜処理に寄与し、生成される膜の膜質が向上しうる。
「第2シールドが磁石ユニットと被成膜箇所との間を避ける」場合の具体例として、第2実施形態では2つの第1シールドの上端の高さ(第2シールドの高さ)が磁石ユニットの下端部の高さよりも若干低い場合の一例を示し、第3実施形態では2つの第1シールドの上端の高さ(第2シールドの高さ)が磁石ユニットの上端部の高さよりも若干低い場合の一例を示した。このように、「第2シールドが磁石ユニットと被成膜箇所との間を避ける」配置には、種々の配置例が含まれる。
<4 第4実施形態>
図10は、第4実施形態のスパッタリング装置1Cにおけるプラズマ処理部50Cおよびその周辺を示す断面模式図である。以下では、図10を参照しつつ第4実施形態のスパッタリング装置1Cについて説明するが、第1実施形態と同一の要素については同一の符号を付し重複説明を省略する。
第4実施形態のスパッタリング装置1Cは、主に、回転カソードの構成、誘導結合アンテナ151の構成、および、シールド部180Cの構成に関して、第1実施形態のスパッタリング装置1と相違する。スパッタリング装置1Cを構成する他の各部は、第1実施形態のスパッタリング装置1を構成する各部と同様である。このため、以下では、上記相違について説明する。
スパッタリング装置1Cは、第1実施形態の回転カソード6に相当する構成を有さず、1つの回転カソード5を有する。回転カソード5は、チムニー60内のX方向中央位置に配される。誘導結合アンテナ151、保護部材152、および、2つのノズル514は、チムニー60内のX方向中央位置から見て±X側にそれぞれ配される。また、X方向中央位置から見て±X側のそれぞれで、誘導結合アンテナ151を覆うようにシールド部180Cが配される。
磁石ユニット21は+Z方向に向いた配置とされている。その結果、磁石ユニット21は、第1実施形態の場合に比べて、より+Z側に配される。
各シールド部180Cは、複数の空隙部184Cが2次元的に配列された貫通面を含み、電気的に接地された部材である。2つのシールド部180Cは、それぞれ、各誘導結合アンテナ151の±X位置においてチャンバー100から立設される2つの第1シールド181Cと、2つの第1シールド181Cの上端を架け渡すように水平面に沿って設けられる第2シールド182C(貫通面)と、を備える。
第4実施形態においても、第1実施形態と同様、2つの第2シールド182Cが、それぞれ、磁石ユニット21と被成膜箇所Pとの間を避ける位置で、かつ、誘導結合アンテナ151と被成膜箇所Pとの間を遮る位置に配される。
その結果、上述の通り、成膜レート低下の抑制および基材91へのプラズマダメージの抑制が実現される。
また、2つのシールド部180Cにおいて、回転カソード5に近い方の第1シールド181Cは、回転カソード5に沿って湾曲しつつ、チャンバー100から上方に向けて立設される。各第1シールド181Cの上端の高さは、磁石ユニット21の上端部の高さよりも若干低く、本実施形態では、中心軸線2よりも高い位置である。そのため、各第1シールド181Cの上端に架け渡される2つの第2シールド182Cの高さも、中心軸線2より高い位置となり、この高さは第1実施形態の第2シールド182の高さや第2実施形態の第2シールド182Aよりも高い。すなわち、2つの第2シールド182Cは、第1実施形態の第2シールド182や第2実施形態の第2シールド182Aよりも被成膜箇所Pに近い。
このため、第4実施形態では、第1実施形態や第2実施形態の場合に比べて、2つの第2シールド182Cを通過したラジカルがその活性を維持した状態で基材91の主面に到達しやすい。その結果、ラジカル(特に、反応性ガスのラジカル)がより効率的に成膜処理に寄与し、生成される膜の膜質が向上しうる。
また、第4実施形態では、誘導結合アンテナ151が回転カソード5から見て±X側の双方に配される。その結果、ラジカル(特に、反応性ガスのラジカル)が第3実施形態の場合よりも成膜処理に寄与し、生成される膜の膜質がより向上しうる。
<5 変形例>
以上、本発明の実施の形態について説明したが、この発明はその趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。
上記各実施形態では、被遮蔽空間G内に反応性ガスとスパッターガスとが供給される態様について説明したが、これに限られるものではない。例えば、被遮蔽空間G内に反応性ガスのみが供給される態様でも構わない。また、反応性ガス供給部は、少なくとも被遮蔽空間Gに反応性ガスを供給すれば足り、処理空間Vの上方には反応性ガスを供給しなくてもよい。
上記各実施形態では、1つのチムニー60の上方を搬送される基材91に対して成膜処理を実行する態様について説明したが、これに限られるものではない。複数のチムニー60の上方を搬送される基材91に対して成膜処理が行われてもよい。
上記各実施形態では、パンチングプレートが第2シールドとして採用される態様について説明したが、これに限られるものではない。導電性の複数の線状体が編まれたメッシュ板が、第2シールドとして採用されてもよい。また、導電性の複数の線状体が並行に配列されて構成される面状体が、第2シールドとして採用されてもよい。また、導電性の板状体に複数のスリット状の空隙部が貫通されたスリット板が第2シールドとして採用されてもよい。
上記した各成膜処理は、有機EL上のカソード電極成膜や太陽電池半導体のパッシベーション成膜など種々の成膜処理に適用可能である。
以上、実施形態およびその変形例に係るスパッタリング装置について説明したが、これらは本発明に好ましい実施形態の例であって、本発明の実施の範囲を限定するものではない。本発明は、その発明の範囲内において、各実施形態の自由な組み合わせ、あるいは各実施形態の任意の構成要素の変形、もしくは各実施形態において任意の構成要素の省略が可能である。