JP6373045B2 - 積層シートおよびこれを用いた容器 - Google Patents
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Description
これらのシートはポリブタジエン含有量が多くなるほど、靭性が増し耐衝撃性が向上するものの、剛性や成形後のノッチ折れ性が低下する問題があった。
この問題を解決すべく、例えば強靱なポリオレフィン系樹脂層を有する積層シートでは、シートのノッチ成形面側の最外層近傍にポリオレフィン系樹脂層を偏らせて配置させ、ノッチを入れると同時に層を完全に断ち切ることで、ノッチ折れ性能を確保する方法が提案されている(特許文献3)。しかしながら、ノッチの入れ方は様々であり、直線状にノッチを入れる方法と、破線状にノッチを入れる方法とがあり、破線状にノッチを入れる方法では切れ込みが入らない部分が共存するため、当該箇所のオレフィン系樹脂層が完全に断ち切られない領域が存在する為、良好なノッチ折れ性の発現が困難になる。このように従来の技術では剛性、ノッチ折れ性と耐衝撃性の両立が困難であった。
(1)ハイインパクトポリスチレン及びポリスチレンの混合物を主成分とする中芯層と、中芯層の両面に配置された、ハイインパクトポリスチレンを主成分とする外層とかならなる積層シートであって、全厚に対する前記中芯層の厚みの比率が70〜95%であり、前記中芯層中のポリブタジエン量が1〜5質量%であり、前記外層中のポリブタジエン量が6〜10質量%であることを特徴とする積層シート。
(2)前記ポリブタジエンの体積平均粒子径が、2〜4μmであることを特徴とする、(1)に記載の積層シート。
(3)前記外層及び前期中芯層の200℃5kgf荷重における、メルトマスフローレートが、2〜20g/10分であることを特徴とする、(1)または(2)に記載の積層シート。
(4)全厚が0.5〜1.0mmであることを特徴とする、(1)〜(3)のいずれか一つに記載の積層シート。
(5)(1)〜(4)のいずれか一つに記載の積層シートを用いた成形容器。
(6)インライン方式で生産されるヨーグルト用容器である、(5)に記載の成形容器。
また、本発明におけるインライン方式で生産される容器とは、ヨーグルト容器等の成形工程で使用される、容器成形、内容物充填、滅菌に至る一連の工程を一貫して行なう生産方式である。
本発明の中芯層は、HIPS及びポリスチレンの混合物を主成分とする。中芯層中に含まれるポリブタジエン量は1〜5質量%であり、3〜4質量%であることがより好ましい。ポリブタジエン量が1%未満であると耐衝撃性が低下する場合があり、5質量%を超えると、中芯層の破断伸びが大きくなるため、ノッチ折れ性が低下する場合がある。
尚、本発明におけるMFRは、断りの無い限り、200℃5kgf荷重にて測定された数値を示す。
本発明の外層は、HIPSを主成分とする。外層中に含まれるポリブタジエン量は6〜10質量%であり、7〜9質量%であることがより好ましい。ポリブタジエン量が6質量%未満であると耐衝撃性が低下する場合があり、10質量%を超えると、中芯層の破断伸びが大きくなるため、ノッチ折れ性が低下する場合がある。
他の方法としては、中芯層および外層を形成する樹脂を、それぞれ別個の押出機に供給して溶融混練してフィードブロックに供給した後、Tダイを通す溶融共押出法によって、積層シートを製造する方法でも得ることができる。また、溶融混練された樹脂を、3層構成のマルチマニホールドダイに供給して多層シートを製造する方法でも製造することができる。この製造方法は、各層の厚さ分布が小さいシートが得られる点で好ましい。各樹脂を溶融し、押出成形によって各層を得る場合、成形する際の各樹脂の温度は、130℃〜260℃とすることが好ましい。
さらに、積層シートは、必要に応じロール速度差、テンター延伸機等を用いた縦延伸(生産方向への延伸)、横延伸(縦延伸と直交する方向の延伸)を実施することも可能である。
[実施例1]
<中芯層を形成する樹脂>
東洋スチレン(株)製HIPS「トーヨースチロールH850N」(ポリブタジエン体積平均粒子径=2.8μm、ポリブタジエン量=9.0質量%、MFR=3.6g/10分)40質量部と、東洋スチレン(株)製ポリスチレン「トーヨースチロールG200C」(MFR=8.5g/10分)60質量部の混合物を、東芝機械(株)製単軸押出機(スクリュー径φ65mm、L/D=28.8)を使用し、樹脂温度220℃でTダイのフィードブロックへ供給した。
東洋スチレン(株)製HIPS「トーヨースチロールH850N」(ポリブタジエン量=9.0質量%、MFR=3.6g/10分)を(株)フロンティア製単軸押出機(スクリュー径φ40mm、L/D=25.9)を使用し、樹脂温度220℃でTダイのフィードブロックへ供給した。
フィードブロックに供給された中心層および外層を形成する樹脂をストレート方式の幅550mmのTダイを用い、220℃で外層/中芯層/外層の2種3層の積層シートに成形した。押出したシートは、80℃のキャストロールに圧着、冷却させた後、さらに常温まで冷却し積層シートを得た。結果を表1に示す。
(ポリブタジエン量)
使用したHIPSをクロロホルムに溶解し、一塩化ヨウ素を加えてポリブタジエン中の二重結合と反応させた。残存する一塩化ヨウ素にヨウ化カリウムを加えヨウ素に変換し、これをチオ硫酸ナトリウムで逆適定することにより、ポリブタジエン量を求めた。なお、中芯層中及び外層中のポリブタジエン量は、各層の配合に使用したHIPS量を基に計算した。
使用したHIPSをジメチルホルムアミドに濃度2質量%で分散させ、超音波バスでさらに20分間分散させた。これをジメチルホルムアミドで満たしておいたベックマン・コールター(株)製 レーザー解説散乱法粒度分布測定装置「LS−230」に滴下し、スレーサー回折散乱法にて体積平均粒子径を求めた。
1mの積層シートを切り出し、生産方向に対し直行方向の左右両端および中央部より20mm角の切片を切り出した。端面を平滑にした後、それぞれ3切片の中芯層の厚みを、キーエンス(株)製顕微鏡「VK−X100」にて測定した。積層シートの切り出し及び中心層の厚さ測定を計3回実施し、9点の中芯層の厚みの算術平均値を、中芯層の厚みとした。
1mの積層シートを切り出し、生産方向に対し直行方向の左右両端および中央部より20mm角の切片を切り出し、積層シートの全厚を、マイクロメータを用いて測定した。積層シートの切り出し及び全厚測定を計3回実施し、9点の全厚の算術平均値を、全厚とした。
JIS K−7210に準拠し、200℃、5kgf荷重にて測定した。
1mの積層シートを切り出し、シート表面の外観を目視にて観察することで、シートの成形性を以下の判定により評価した。
良:成形シート表面に、メルトフラクチャーや層間剥離等の白化現象が全く生じなかった
もの。
可:成形シート表面に、メルトフラクチャーや層間剥離等の白化現象を1〜5箇所生じて
いるもの。
不良:成形シート全面に、メルトフラクチャーや層間剥離等の白化現象を6箇所以上生じ
ているもの。
デュポン衝撃試験機(東洋精機(株)製、B−351000601)を使用し、得られた積層シートのデュポン衝撃強度を測定した。測定は23℃相対湿度50%の環境にて、突端半径7.9mmの撃芯を使用し、ASTMD2794に従い測定した。測定値は、下記の基準に従い優劣を判定した。
良:デュポン衝撃強度が1.5J以上である。
可:デュポン衝撃強度が1.0J以上、1.5J未満である。
不良:デュポン衝撃が1.0J未満である。
単発真空成形機(浅野研究所(株)製)によって、開口部径50mm、底部径50mm、高さ50mmであり、側面部厚み:シート全厚の10%以上30%以下、底面部厚み:シート全厚の25%以上40%以下であるカップ状成形容器を成形した。熱盤温度は600℃、成形時間は20秒とした。容器と底面とコーナー(底面と外側との接する部分)の外観を目視観察して、下記の基準で評価した。
良:均一に伸びて、均一な厚みに成形されている。
可:底面又はコーナーの一部に厚みムラがある。
不良:底面又はコーナーの一部に破れがある。
積層シートを用い、単発真空成形機(浅野研究所(株)製)にて開口部径50mm、底面部径50mm、高さ50mm、側面部厚み:シート全厚の10%以上30%以下、底面部厚み:シート全厚の25%以上40%以下であるカップ状成形容器を成形した。熱盤温度は600℃、成形時間は20秒とした。
得られた成形容器の座屈強度を、23℃相対湿度50%の環境にて測定した。尚、座屈強度はJIS−K7181に従い圧縮測定を行った際の、最大点荷重とした。測定機器、圧縮条件および座屈強度の判定基準を以下に記す。
使用機器:ストログラフVEID(東洋精機(株)製)
圧縮速度:50mm/min
判定基準:
良:座屈強度が70N以上である。
可:座屈強度が60N以上70N未満である。
不良:座屈強度が60N未満である。
シートの中央部より50mm四方の正方形状試験片を採取し、一方の頂点から他方の頂点へ対角線上に、シート厚みに対し50%深さの切込みを入れノッチを形成した。23℃相対湿度50%の環境にて、ノッチを入れた面に対し150度折り曲げた際の破断の有無より、ノッチ折れ性を以下の基準に従い評価した。
良:1回目の折り曲げで、ノッチ部より破断を生じた。
不良:1回目の折り曲げでは、ノッチ部からの破断を生じなかった。
全層に対する中芯層の厚み比率を83%へ変更した以外は、実施例1と同様な方法で積層シートを成形した。結果を表1に示す。
全層に対する中芯層の厚み比率を93%へ変更した以外は、実施例1と同様な方法で積層シートを成形した。結果を表1に示す。
外層の樹脂を、東洋スチレン(株)製HIPS「トーヨースチロールH850」(ポリブタジエン体積平均粒子径=2.5μm、ポリブタジエン量=9.8質量%、MFR=3.6g/10分)63質量部と、ポリスチレン「トーヨースチロールG200C」37質量部へ変更した以外は、実施例1と同様な方法で積層シートを成形した。結果を表1に示す。
外層の樹脂を、東洋スチレン(株)製HIPS「トーヨースチロールH850」72質量部とポリスチレン「トーヨースチロールG200C」28質量部へ変更した以外は、実施例1と同様な方法で積層シートを成形した。結果を表1に示す。
外層の樹脂を、東洋スチレン(株)製HIPS「トーヨースチロールH850」90質量部とポリスチレン「トーヨースチロールG200C」10質量部へ変更した以外は、実施例1と同様な方法で積層シートを成形した。結果を表1に示す。
外層の樹脂を、東洋スチレン(株)製HIPS「トーヨースチロールH850」へ変更した以外は、実施例1と同様な方法で積層シートを成形した。結果を表1に示す。
中芯層の樹脂を、HIPS「トーヨースチロールH850N」15質量部と、ポリスチレン「トーヨースチロールG200C」85質量部の混合物へ変更した以外は、実施例1と同様な方法で積層シートを成形した。結果を表1に示す。
中芯層の樹脂を、HIPS「トーヨースチロールH850N」30質量部と、ポリスチレン「トーヨースチロールG200C」70質量部の混合物へ変更した以外は、実施例1と同様な方法で積層シートを成形した。結果を表1に示す。
中芯層の樹脂を、HIPS「トーヨースチロールH850N」40質量部と、ポリスチレン「トーヨースチロールG200C」60質量部の混合物へ変更した以外は、実施例1と同様な方法で積層シートを成形した。結果を表1に示す。
中芯層の樹脂を、HIPS「トーヨースチロールH850N」50質量部と、ポリスチレン「トーヨースチロールG200C」50質量部の混合物へ変更した以外は、実施例1と同様な方法で積層シートを成形した。結果を表1に示す。
全層に対する中芯層の厚み比率を96%へ変更した以外は、実施例1と同様な方法で積層シートを成形したが、得られた積層シートはデュポン衝撃強度が低い結果となった。結果を表2に示す。
全層に対する中芯層の厚み比率を68%へ変更した以外は、実施例2と同様な方法で積層シートを製膜しが、得られた積層シートはノッチ折れ性に劣る結果となった。結果を表2に示す。
外層の樹脂を、東洋スチレン(株)製HIPS「トーヨースチロールXL1」(ポリブタジエン体積平均粒子径=0.6μm、ポリブタジエン量=13.4質量%、MFR=2.6/10分)80質量部と、ポリスチレン「トーヨースチロールG200C」20質量部の混合物へ変更した以外は、実施例1と同様な方法で積層シートを成形したが、得られた積層シートはノッチ折れ性が悪い結果となった。結果を表2に示す。
外層の樹脂を、HIPS「トーヨースチロールH850N」65質量部と、ポリスチレン「トーヨースチロールG200C」35質量部の混合物へ変更した以外は、実施例1と同様な方法で積層シートを成形したが、得られた積層シートはデュポン衝撃強度が悪い結果となった。結果を表2に示す。
中芯層の樹脂を、HIPS「トーヨースチロールH850N」10質量部と、ポリスチレン「トーヨースチロールG200C」90質量部との混合物へ変更した以外は、実施例1と同様な方法で積層シートを成形したが、得られた積層シートはデュポン衝撃強度が低い結果となった。結果を表2に示す。
中芯層の樹脂を、HIPS「トーヨースチロールH850N」60質量部と、ポリスチレン「トーヨースチロールG200C」40質量部との混合物へ変更した以外は、実施例1と同様な方法で積層シートを成形したが、得られた積層シートはノッチ折れ性に劣る結果となった。結果を表2に示す。
Claims (6)
- ポリブタジエンを含有するハイインパクトポリスチレン及びスチレンのホモポリマーからなるポリスチレンの混合物を主成分とする中芯層と、
中芯層の両面に配置された、ポリブタジエンを含有するハイインパクトポリスチレンを主成分とする外層とかならなる積層シートであって、
全厚に対する前記中芯層の厚みの比率が75〜84%であり、
前記中芯層中のポリブタジエン量が2.7〜4.6質量%であり、
前記外層中のポリブタジエン量が7.1〜9.8質量%であることを特徴とする積層シート。 - 前記ポリブタジエンの体積平均粒子径が、2〜4μmであることを特徴とする、請求項1に記載の積層シート。
- 前記外層及び前記中芯層の200℃5kgf荷重における、メルトマスフローレートが、2〜20g/10分であることを特徴とする、請求項1または2に記載の積層シート。
- 全厚が0.5〜1.0mmであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の積層シート。
- 請求項1〜4のいずれか一項に記載の積層シートを用いた成形容器。
- 請求項1〜4のいずれか一項に記載の積層シートを熱板によって加熱する工程と、真空成形によって前記積層シートを所定の形状に成形する工程を含む、ヨーグルト用容器の製造方法。
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