JP6372596B1 - 断熱構造、断熱工法、断熱材および筋かい断熱カバー - Google Patents
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Abstract
【課題】 軸組構造躯体を有する建物の壁構面に組み付けられる引張型の筋かいと、該構面内に充填される硬質の断熱材との干渉によって筋かいの撓み変形が妨げられるのを回避し得る断熱構造・工法を提供する。【解決手段】 筋かい2の形状に対応する凹溝31を片側表面に形成したボード状断熱材を壁構面1内に建て込み、凹溝31内に筋かい2を収容する断熱構造・工法においては、凹溝31の側縁の少なくとも一部を、地震時等における筋かい2の撓み変形を妨げないように非直線的に湾曲または屈曲した形状となす。壁構面1内に硬化性の吹付断熱材4を吹き付ける断熱構造・工法においては、筋かい2に、その撓み変形を妨げないように側縁の少なくとも一部を非直線的に湾曲または屈曲させた形状の筋かい断熱カバー5を被せて、その外側に吹付断熱材4を充填する。【選択図】 図2
Description
本発明は、主として鉄骨系の軸組構造による建物の外壁部分に適用される断熱構造と、該断熱構造の施工手順に係る断熱工法と、該断熱構造・工法に用いられる断熱材および筋かい断熱カバーに関する。
人の居住や業務活動等の用に供される建物では、居住性や省エネルギー性を向上させるため、壁、屋根、床下等の外皮部分が断熱材によって包囲される。その種の断熱材としては、(1)グラスウール、ロックウール等の繊維系断熱材を柔軟なマット状に加工したもの、(2)ポリスチレンフォーム、フェノールフォーム、硬質ウレタンフォーム等の発泡性樹脂をボード状に成形したもの、(3)施工現場で泡状のウレタンフォーム等を吹き付けて硬化させるもの、(4)ロックウール、セルローズファイバー等の繊維系断熱材の小片を吹付け又は充填するもの等があり、これらが施工部位や施工条件等に応じて適宜選択される。一般的には、繊維系断熱材に比べて、発泡樹脂系断熱材のほうが、厚さ当たりの断熱性に優れるとされており、建物に高レベルの断熱性能が求められるようになった近年では、後者がよく利用されるようになってきている。
木造系または鉄骨系の軸組構造による建物においては、外壁部分の断熱性を高めるため、柱や間柱等の直立材と梁や桁等の横架材とを枠組みして構成される矩形の壁構面内に前述のような断熱材が充填される。ところが、かかる壁構面には通常、耐震または制振部材としての筋かい(筋違・筋交)が対角線状に組み付けられるので、それらの筋かいと断熱材との干渉が生じる。
マット状の繊維系断熱材は、それを押しつぶすか、筋かいをかわすように変形させることで、筋かいの周囲に無理なく配置することができる。吹付断熱材も、それを壁構面内に吹き付けることで、筋かいの周囲に隙間なく充填することができる。ボード状の断熱材に関しては、例えば特許文献1、2等に開示されているように、筋かいや制振部材の形状に対応した凹溝を断熱材の片面にあらかじめ切り欠いておき、その凹溝に筋かい等を嵌め込むようにして断熱材を壁構面に建て込む、という断熱構造・工法が採用される。
しかしながら、硬質のボード状断熱材や硬化性の吹付断熱材によって筋かいを包囲する断熱構造・工法を採用した場合には、地震等によって壁構面が変形しようとする際に、筋かいの変形挙動が断熱材によって拘束されてしまうことで、構造設計上、想定された通りの耐震性能または制振性能が発揮されなくなるおそれがある。
特に、鉄骨系の軸組構造で多用される引張型の筋かいは、圧縮時には略S字状に撓み変形することを前提として組み付けられるので、その撓み変形が拘束されると、断熱材が割れたり、筋かい自体が破断したりしかねない。
本発明は、かかる問題に着目してなされたもので、特に鉄骨系の軸組構造躯体を有する建物の壁構面において、該壁構面に組み付けられる引張型の筋かいと該構面内に充填される硬質の断熱材(発泡性樹脂からなるボード状断熱材または硬化性の吹付断熱材)との干渉によって筋かいの撓み変形が妨げられるのを回避し得る断熱構造および断熱工法を提供するものである。
あわせて本発明は、該断熱構造・工法に好適に用いられる断熱材および筋かい断熱カバーを提供するものである。
本発明は、主として鉄骨系の軸組構造躯体の壁構面に組み付けられる引張型の筋かいが、地震等に際して構造設計上、想定された通りに変形し得るように、該壁構面における断熱材の充填形態を改良したものである。図1は、引張型の筋かい2が組み付けられた壁構面1の構造モデルを示している。壁構面1に大きな水平力が作用すると、壁構面1が平行四辺形に変形する。このとき、壁構面1内の対角2点間に取り付けられて引張方向の変位に抵抗する直線状の斜材が、本発明における「引張型の筋かい」である。一般的には、棒鋼、平鋼、山形鋼、鋼管等を利用して形成される。
引張型の筋かい2は、圧縮力を受けると弧状に撓み変形するが、図示のように、矩形の壁構面1内に2本の筋かい2、2がX字状に組み付けられて、中央の交差部分が拘束されている場合には、圧縮側の筋かい2(B)が正面視S字状または逆S字状のどちらかに撓み変形する。
そこで、本発明は、まず、壁構面内にボード状の断熱材を建て込む断熱構造・工法に関して、以下の技術的手段を採用する。
すなわち、本発明の断熱構造は、引張型の筋かいが組み付けられた軸組構造躯体の壁構面内に、前記筋かいの形状に対応する凹溝を片側表面に形成したボード状の断熱材が建て込まれて、前記凹溝内に前記筋かいが収容される断熱構造において、前記凹溝の側縁の少なくとも一部が、地震時等における前記筋かいの撓み変形を妨げないように、非直線的に湾曲または屈曲した形状をなしていることを特徴とする。
また、本発明の断熱工法は、引張型の筋かいが組み付けられた軸組構造躯体の壁構面内に、あらかじめ前記筋かいの形状に対応する凹溝を片側表面に形成したボード状の断熱材を建て込んで、前記凹溝内に前記筋かいを収容する断熱工法において、前記凹溝の側縁の少なくとも一部を、地震時等における前記筋かいの撓み変形を妨げないように、非直線的に湾曲または屈曲した形状となしておくことを特徴とする。
このように、引張型の筋かいが収容される断熱材の凹溝を、筋かいの撓み変形を妨げない形状にすることで、筋かいを断熱材によって拘束することなく、想定通りに撓み変形させることができる。
さらに、前記断熱構造・工法においては、圧縮力を受けた筋かいが、正面視S字状または逆S字状のどちらに変形するかをあらかじめ規制し得るように、前記凹溝の側縁を、前記筋かいの撓み変形を正面視S字状または逆S字状のいずれか一方に限定する形状となすことができる。具体的には、筋かいが収容される凹溝の両側縁のうち筋かいを変形させない側の側縁を直線状に形成して筋かいに近接させておき、筋かいを変形させる側の側縁だけを湾曲または屈曲させておく。こうして、断熱材に形成する凹溝の幅を最小限にすることで、凹溝による断熱欠損を小さくすることができる。
さらに、本発明は、前記筋かいと前記凹溝との隙間に形状可変性を有する他の断熱材を充填することによって、凹溝による断熱欠損を、より小さくすることができる。「形状可変性を有する断熱材」とは、具体的には、グラスウール、ロックウール、セルロースファイバー等の繊維系断熱材、あるいはそれらの小片をブローイングして非硬化状態に定着させるもの、等を好適に利用することができる。
また、本発明は、前記断熱構造・工法を好適に実施するための断熱材として、引張型の筋かいが組み付けられた軸組構造躯体の壁構面内に建て込まれるボード状の断熱材であって、片側表面に前記筋かいの形状に対応する凹溝が形成されており、前記凹溝の側縁の少なくとも一部が、地震時等における前記筋かいの撓み変形を妨げないように、非直線的に湾曲または屈曲した形状をなしている、との構成を採用する。
続いて本発明は、壁構面内に硬化性の吹付断熱材を吹き付けて充填する断熱構造・工法に関して、以下の技術的手段を採用する。
すなわち、本発明の断熱構造は、引張型の筋かいが組み付けられた軸組構造躯体の壁構面内に硬化性の吹付断熱材が充填される断熱構造において、前記筋かいには、地震時等における前記筋かいの撓み変形を妨げないように、側縁の少なくとも一部が非直線的に湾曲または屈曲した形状をなす筋かい断熱カバーが被せられ、前記筋かい断熱カバーの外側と前記壁構面との間に前記吹付断熱材が充填されたことを特徴とする。
また、本発明の断熱工法は、引張型の筋かいが組み付けられた軸組構造躯体の壁構面内に硬化性の吹付断熱材を吹き付けて充填する断熱工法において、前記筋かいには、前記吹付断熱材の吹き付け前に、地震時等における前記筋かいの撓み変形を妨げないように、側縁の少なくとも一部が非直線的に湾曲または屈曲した形状をなす筋かい断熱カバーを被せておき、前記筋かい断熱カバーの外側と前記壁構面との間に前記吹付断熱材を吹き付けて充填することを特徴とする。
このように、筋かいに、その撓み変形を妨げない形状の筋かい断熱カバーを被せて、その外側に吹付断熱材を吹き付けることで、筋かいを断熱材によって拘束することなく、想定通りに撓み変形させることができる。
そして、この断熱構造・工法においても、圧縮力を受けた筋かいが、正面視S字状または逆S字状のどちらに変形するかをあらかじめ規制し得るように、前記筋かい断熱カバーの側縁を、前記筋かいの撓み変形を正面視S字状または逆S字状のいずれか一方に限定する形状となすことができる。具体的には、筋かい断熱カバーの両側縁のうち筋かいを変形させない側の側縁を直線的に形成して筋かいに近接させておき、筋かいを変形させる側の側縁だけを湾曲または屈曲させておく。こうして、筋かい断熱カバーの幅を最小限にすることで、吹付断熱材が充填されない空間による断熱欠損を小さくすることができる。
さらに、この発明においても、前記筋かいと前記筋かい断熱カバーとの隙間に形状可変性を有する他の断熱材を充填することによって、筋かい断熱カバーの内側空間による断熱欠損を、より小さくすることができる。
また、本発明は、前記断熱構造・工法を好適に実施するための筋かい断熱カバーとして、引張型の筋かいが組み付けられた軸組構造躯体の壁構面内に、硬化性の吹付断熱材が充填される断熱構造において、前記筋かいに被せられる筋かい断熱カバーであって、前記筋かいの周囲を包囲しうる細長い箱状をなし、前記筋かいを包囲する側縁の少なくとも一部が、地震時等における前記筋かいの撓み変形を妨げないように、非直線的に湾曲または屈曲した形状をなしている、との構成を採用する。
前述のように構成される本発明の断熱構造・工法によれば、硬質の断熱材(発泡性樹脂等からなるボード状断熱材または硬化性の吹付断熱材)を軸組構造躯体の構面内に充填することで、高い断熱性能を得ることができるとともに、その断熱材が該構面内に組み付けられる引張型の筋かいの撓み変形を妨げなくなることで、構造設計上、想定された通りの耐震性能や制振性能を得ることができる。
また、本発明の断熱材または筋かい断熱カバーを利用することにより、前記断熱構造・工法を好適に実施することができる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
[第1実施形態]
図2〜図3は本発明の第1実施形態を示す。この実施形態は、壁構面1内にボード状の断熱材3を建て込む方式の断熱構造・工法に係るものである。
図2〜図3は本発明の第1実施形態を示す。この実施形態は、壁構面1内にボード状の断熱材3を建て込む方式の断熱構造・工法に係るものである。
例示した壁構面1は、鉄骨系の軸組構造躯体の外壁部分に多用される類の構造体である。柱や間柱等を構成する一対の直立材11、11と、梁や桁等を構成する一対の横架材12、12とを接合して矩形の枠体が形成され、その枠体の高さ方向における中間部に1本の横桟材13が取り付けられている。直立材11および横架材12は、例えばH形鋼、リップ付き溝形鋼、角形鋼管等を用いて形成され、横桟材13は、例えばリップ付き溝形鋼、山形鋼等を用いて形成される。ただし、本発明においては、それらの部材の詳細な形状や接合形態等は特に限定しない。
枠体の内側には、引張型の筋かい2、2が2本、X字状に交差するようにして取り付けられている。筋かい2は、例えば棒鋼、平鋼、山形鋼、小径の鋼管等を用いて形成され、それぞれの両端部が枠体の隅部近傍に、適宜の接合手段を介して接合されている。2本の筋かい2、2は、例えば横桟材13の中央部分に形成された長孔状の通孔部14に遊挿された状態で組み付けられるなどにより、壁構面1の面外方向には変形しないように拘束されている。
断熱材3は、例えばポリスチレンフォーム、フェノールフォーム、硬質ウレタンフォーム等の発泡性樹脂からなり、壁構面1の枠内に納まる大きさおよび厚さのボード状に成形されている。断熱材3の片側表面には、2本の筋かい2、2の位置に合致する凹溝31、31および横桟材13の位置に合致する凹溝32が、各部材の略全長にわたるように形成されている。これらの凹溝31、32は、断熱材3の厚みの過半程度を欠き取るか、あるいは薄板状の断熱材3の片側表面に所定形状に切断した複数枚の断熱材3片を張り重ねるなどして形成されている。断熱材3は、その両縦辺における2〜3個所が、壁構面1を構成する両側の直立材11、11に対し、例えば上下方向に若干変位し得るような取付手段(図示せず)を介して取り付けられている。
本発明の要部は、筋かいを収容する凹溝31の形状にある。すなわち、各凹溝31は、その長さ方向に沿う側縁の一部が、地震時等における筋かい2の撓み変形を妨げないように、非直線的に湾曲または屈曲した形状をなしている。具体的には、図3の向きで断熱材3を正面から見たとき、左上から右下にかけて形成された凹溝31は、該凹溝31内に収容される筋かい2が逆S字状に撓み変形し得るように、上半部の右側縁が右側へ膨出するように湾曲するとともに、下半部の左側縁が左側へ膨出するように湾曲している。他方、この凹溝31の上半部の左側縁および下半部の右側縁は直線状に形成されて、該凹溝31内の筋かい2がS字状に撓み変形するのを妨げている。これにより、この凹溝31内の筋かい2は、圧縮時には逆S字状にしか撓み変形できなくなる。
また、前記とは逆に、断熱材3の右上から左下にかけて形成された凹溝31は、該凹溝31内に収容される筋かい2がS字状にのみ変形し得るように、上半部の左側縁が左側に膨出するように湾曲するとともに、下半部の右側縁が右側に膨出するように湾曲する一方、上半部の右側縁および下半部の左側縁は直線状に形成されている。
このように、筋かい2の撓み変形に対応する凹溝31をあらかじめ断熱材3の片側表面に形成しておき、その断熱材3を壁構面1に建て込んで、凹溝31内に筋かい2を収容する、という断熱構造・工法により、壁構面1の断熱性能と構造的性能(耐震性能または制振性能)との両方を向上させることができる。もちろん、筋かい2の撓み変形を許容する膨出部分と、撓み変形を拘束する直線状部分とを、図示した形態とは反対の位置関係になるように形成しても差し支えない。
凹溝31の膨出部分の膨出幅は、構造設計上、想定される筋かい2の最大撓み寸法dに応じて決定される。その撓み寸法dは、壁構面1の高さHおよび幅Wによるが、例えば高さH=3m、幅W=2mのとき、撓み寸法d=10cm程度が目安となる。
なお、凹溝31の直線状部分と筋かい2とが、ぴったり密着するような寸法設計になっていると、断熱材3を壁構面1内に建て込む作業が困難になるおそれがある。そこで、凹溝31の直線状部分と筋かい2との間に数mm程度のクリアランスを設けておくとともに、例えば該直線状部分の中間適所(図3中の△印付近)に小突起を設けるなどして、その小突起を筋かい2に当接させておく。すると、筋かい2が圧縮力を受けたときに、小突起の押圧作用を契機として、筋かい2が小突起の反対側(凹溝31の側縁が膨出している側)に撓みやすくなる。このように、筋かい2が撓む向きを誘導する適宜の手段を設けるのも好ましい。
壁構面1に断熱材3を建て込んだ後は、筋かい2と凹溝31との隙間に形状可変性を有する他の断熱材(図示せず)を充填するのも好ましい。これにより、凹溝31による断熱欠損を小さくして、断熱性能を向上させることができる。「形状可変性を有する断熱材」としては、例えばグラスウール、ロックウール、セルロースファイバー等の繊維系断熱材、あるいはそれらの小片をブローイングして非硬化状態に定着させるもの、等を好適に利用することができる。
[第2実施形態]
図4〜図5は本発明の第2実施形態を示す。この実施形態は、壁構面1内に吹付断熱材4を吹き付けて硬化させる方式の断熱構造・工法に係るものである。壁構面1は、前述の第1実施形態に係る壁構面1と同じであり、その説明は省略する。
図4〜図5は本発明の第2実施形態を示す。この実施形態は、壁構面1内に吹付断熱材4を吹き付けて硬化させる方式の断熱構造・工法に係るものである。壁構面1は、前述の第1実施形態に係る壁構面1と同じであり、その説明は省略する。
吹付断熱材4としては、現場発泡式のウレタンフォーム系断熱材が最も一般的である。1液性の簡易なスプレー缶タイプと、2種類の原液を混合して発泡させ、スプレーガンを用いて吹き付ける2液性の現場発泡タイプとがあるが、本発明は、特にそれらを限定しない。
本発明の要部は、吹付断熱材4を吹き付ける前に、筋かい2の周囲に筋かい断熱カバー5を被せる点にある。筋かい断熱カバー5は、例えば軟質の塩化ビニル樹脂、薄手の硬質ポリスチレンボード、あるいは厚紙といった、吹付断熱材4が付着し易く、比較的安価で加工性にも優れる材料によって形成された部材である。筋かい断熱カバー5は、筋かい2の周囲を包囲し得る細長い箱状に形成されて、その細長い一面と、その両端に接続する小口部分の少なくとも一部が開口している。図4に示した形態では、壁構面1内でX字上に交差する2本の筋かい2、2の上半部および下半部に、全部で4個の筋かい断熱カバー5が図中の手前側から被せられて、各筋かい2がそれぞれの略全長にわたって包囲される。
個々の筋かい断熱カバー5は、筋かい2を包囲する長手の両側縁のうち一方の側縁が、筋かい2の撓み変形を妨げないように非直線的に湾曲または屈曲し、他方の側縁は筋かい2に近接して直線状に延びる、正面視略弓形の形状を有している。そして、前述の第1実施形態と同様に、各筋かい2を正面視S字状または逆S字状のいずれか一方に撓み変形させるように、各筋かい2の上半部と下半部とで側縁の膨出方向を反転させて配置される。
このような筋かい断熱カバー5が、図5に示すように壁構面1内に仮止めされた後、筋かい断熱カバー5を被せた側から吹付断熱材4が壁構面1内に吹き付けられ、壁構面1内の隅々まで充填される。その吹付断熱材4が硬化すると、前述の第1実施形態と同様に、筋かい2を圧縮時にS字状または逆S字状のいずれか一方に撓み変形させ得る断熱構造が得られる。
筋かい断熱カバー5における、膨出側の側縁の膨出幅については、前述の第1実施形態における凹溝の膨出幅に準じる。また、筋かい2が圧縮時に撓む向きをS字状または逆S字状のいずれか一方に誘導する手段についても、前述の第1実施形態と同様の小突起を利用することができる。
そして、吹付断熱材4の吹き付け後、あるいは吹き付け前でも可能であるが、筋かい2と筋かい断熱カバー5との隙間に形状可変性を有する他の断熱材(図示せず)を充填して断熱性能をさらに向上させることができる点も、前述の第1実施形態と同様である。
このように、本発明の断熱構造・工法を採用した場合には、発泡性樹脂等からなるボード状断熱材3または硬化性の吹付断熱材4を軸組構造躯体の壁構面1内に充填することで、高い断熱性能を得ることができるとともに、その断熱材が壁構面1内に組み付けられる引張型の筋かい2の撓み変形を妨げなくなることで、構造設計上、想定された通りの耐震性能または制振性能を得ることができる。
なお、本発明の技術的範囲は、例示した実施の形態によって限定的に解釈されるべきものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて概念的に解釈されるべきものである。本発明の実施に際しては、例示形態と実質的に同様の作用効果が得られる範囲において、細部の形状等を多少、改変するなどしても差し支えない。本発明は、鉄骨系の軸組構造による建物だけでなく、例えば軸組構造が木造であって、その壁構面に鋼製の筋かいが取り付けられたような複合構造の建物にも適用可能である。また、筋かいは、壁構面内に、例示のようなX字状でなく、例えばK字状(「く」字状)に配置されていてもよい。また、本発明は、壁構面内に充填される断熱材とは別に、壁構面の屋外側または屋内側にさらに断熱面を重ねて設ける断熱構造・工法にも適用可能である。
1 壁構面
11 直立材
12 横架材
13 横桟材
2(2A、2B) 筋かい
3 断熱材(ボード状断熱材)
31 凹溝
4 断熱材(吹付断熱材)
5 筋かい断熱カバー
11 直立材
12 横架材
13 横桟材
2(2A、2B) 筋かい
3 断熱材(ボード状断熱材)
31 凹溝
4 断熱材(吹付断熱材)
5 筋かい断熱カバー
Claims (14)
- 引張型の筋かいが組み付けられた軸組構造躯体の壁構面内に、前記筋かいの形状に対応する凹溝を片側表面に形成したボード状の断熱材が建て込まれて、前記凹溝内に前記筋かいが収容される断熱構造において、
前記凹溝の側縁の少なくとも一部が、地震時等における前記筋かいの撓み変形を妨げないように、非直線的に湾曲または屈曲した形状をなしていることを特徴とする断熱構造。 - 請求項1に記載された断熱構造において、
前記凹溝の側縁が、前記筋かいの撓み変形を正面視S字状または逆S字状のいずれか一方に限定する形状をなしていることを特徴とする断熱構造。 - 請求項1または2に記載された断熱構造において、
前記筋かいと前記凹溝との隙間に形状可変性を有する他の断熱材が充填されていることを特徴とする断熱構造。 - 引張型の筋かいが組み付けられた軸組構造躯体の壁構面内に、あらかじめ前記筋かいの形状に対応する凹溝を片側表面に形成したボード状の断熱材を建て込んで、前記凹溝内に前記筋かいを収容する断熱工法において、
前記凹溝の側縁の少なくとも一部を、地震時等における前記筋かいの撓み変形を妨げないように、非直線的に湾曲または屈曲した形状となしておくことを特徴とする断熱工法。 - 請求項4に記載された断熱工法において、
前記凹溝の側縁を、前記筋かいの撓み変形を正面視S字状または逆S字状のいずれか一方に限定する形状となしておくことを特徴とする断熱工法。 - 請求項4または5に記載された断熱工法において、
前記断熱材を前記壁構面内に建て込んだ後、
前記筋かいと前記凹溝との隙間に形状可変性を有する他の断熱材を充填することを特徴とする断熱工法。 - 引張型の筋かいが組み付けられた軸組構造躯体の壁構面内に建て込まれるボード状の断熱材であって、
片側表面に前記筋かいの形状に対応する凹溝が形成されており、
前記凹溝の側縁の少なくとも一部が、地震時等における前記筋かいの撓み変形を妨げないように、非直線的に湾曲または屈曲した形状をなしていることを特徴とする断熱材。 - 引張型の筋かいが組み付けられた軸組構造躯体の壁構面内に硬化性の吹付断熱材が充填される断熱構造において、
前記筋かいには、地震時等における前記筋かいの撓み変形を妨げないように、側縁の少なくとも一部が非直線的に湾曲または屈曲した形状をなす筋かい断熱カバーが被せられ、
前記筋かい断熱カバーの外側と前記壁構面との間に前記吹付断熱材が充填されたことを特徴とする断熱構造。 - 請求項8に記載された断熱構造において、
前記筋かい断熱カバーの側縁が、前記筋かいの撓み変形を正面視S字状または逆S字状のいずれか一方に限定する形状をなしていることを特徴とする断熱構造。 - 請求項8または9に記載された断熱構造において、
前記筋かいと前記筋かい断熱カバーとの隙間に形状可変性を有する他の断熱材が充填されていることを特徴とする断熱構造。 - 引張型の筋かいが組み付けられた軸組構造躯体の壁構面内に硬化性の吹付断熱材を吹き付けて充填する断熱工法において、
前記筋かいには、前記吹付断熱材の吹き付け前に、地震時等における前記筋かいの撓み変形を妨げないように、側縁の少なくとも一部が非直線的に湾曲または屈曲した形状をなす筋かい断熱カバーを被せておき、
前記筋かい断熱カバーの外側と前記壁構面との間に前記吹付断熱材を吹き付けて充填することを特徴とする断熱工法。 - 請求項11に記載された断熱工法において、
前記筋かい断熱カバーの側縁を、前記筋かいの撓み変形を正面視S字状または逆S字状のいずれか一方に限定する形状となしておくことを特徴とする断熱工法。 - 請求項11または12に記載された断熱工法において、
前記吹付断熱材の吹き付け前または吹き付け後に、前記筋かいと前記筋かい断熱カバーとの隙間に形状可変性を有する他の断熱材を充填することを特徴とする断熱工法。 - 引張型の筋かいが組み付けられた軸組構造躯体の壁構面内に、硬化性の吹付断熱材が充填される断熱構造において、前記筋かいに被せられる筋かい断熱カバーであって、
前記筋かいの周囲を包囲しうる細長い箱状をなし、
前記筋かいを包囲する側縁の少なくとも一部が、地震時等における前記筋かいの撓み変形を妨げないように、非直線的に湾曲または屈曲した形状をなしていることを特徴とする筋かい断熱カバー。
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JP2000314193A (ja) * | 1999-04-30 | 2000-11-14 | Fuji House Kk | 断熱パネル及びその設置方法 |
JP2005299356A (ja) * | 2004-04-08 | 2005-10-27 | Fuji House Kk | 部屋ごとにシェルター化する耐震断熱パネル及びその設置方法 |
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