以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
本実施形態の調湿装置(10)は、室内空間の湿度調節と共に室内空間の換気を行うものであり、吸い込んだ室外空気(OA)を湿度調節して室内空間へ供給すると同時に、吸い込んだ室内空気(RA)を室外空間へ排出する。
〈調湿装置の全体構成〉
調湿装置(10)について、図1を参照しながら説明する。なお、ここでの説明で用いる「上」「下」「左」「右」「前」「後」「手前」「奥」は、特にことわらない限り、調湿装置(10)を前面側から見た場合の方向を意味している。
調湿装置(10)は、ケーシング(11)を備えている。ケーシング(11)内には、冷媒回路(50)が収容されている。この冷媒回路(50)には、第1吸着熱交換器(51)、第2吸着熱交換器(52)、圧縮機(53)、四方切換弁(54)、及び電動膨張弁(55)が接続されている。冷媒回路(50)の詳細は後述する。
ケーシング(11)は、やや扁平で高さが比較的低い直方体状に形成されている。ケーシング(11)には、外気吸込口(24)と、内気吸込口(23)と、給気口(22)と、排気口(21)とが形成されている。外気吸込口(24)及び排気口(21)は、それぞれダクトを介して室外空間と連通する。内気吸込口(23)および給気口(22)は、それぞれダクトを介して室内空間と連通する。
外気吸込口(24)及び内気吸込口(23)は、ケーシング(11)の背面パネル部(13)に設けられている。外気吸込口(24)は、背面パネル部(13)の下側部分に設けられている。内気吸込口(23)は、背面パネル部(13)の上側部分に設けられている。給気口(22)は、ケーシング(11)の第1側面パネル部(14)に設けられている。第1側面パネル部(14)において、給気口(22)は、ケーシング(11)の前面パネル部(12)側の端部付近に配置されている。排気口(21)は、ケーシング(11)の第2側面パネル部(15)に設けられている。第2側面パネル部(15)において、排気口(21)は、前面パネル部(12)側の端部付近に配置されている。
ケーシング(11)の内部空間には、上流側仕切板(71)と、下流側仕切板(72)と、中央仕切板(73)とが設けられている。これらの仕切板(71〜73)は、何れもケーシング(11)の底板に起立した状態で設置されており、ケーシング(11)の内部空間をケーシング(11)の底板から天板に亘って区画している。
上流側仕切板(71)及び下流側仕切板(72)は、前面パネル部(12)及び背面パネル部(13)と平行な姿勢で、ケーシング(11)の前後方向に所定の間隔をおいて配置されている。上流側仕切板(71)は、背面パネル部(13)寄りに配置されている。下流側仕切板(72)は、前面パネル部(12)寄りに配置されている。中央仕切板(73)の配置については、後述する。
ケーシング(11)内において、上流側仕切板(71)と背面パネル部(13)の間の空間は、上下二つの空間に仕切られており、上側の空間が内気側通路(32)を構成し、下側の空間が外気側通路(34)を構成している。内気側通路(32)は内気吸込口(23)と連通し、外気側通路(34)は外気吸込口(24)と連通する。
内気側通路(32)には、内気側フィルタ(27)と、内気温度センサ(91)と、内気湿度センサ(92)とが設置されている。内気温度センサ(91)は、内気側通路(32)を流れる室内空気の温度を計測する。内気湿度センサ(92)は、内気側通路(32)を流れる室内空気の相対湿度を計測する。一方、外気側通路(34)には、外気側フィルタ(28)と、外気温度センサ(93)と、外気湿度センサ(94)とが設置されている。外気温度センサ(93)は、外気側通路(34)を流れる室外空気の温度を計測する。外気湿度センサ(94)は、外気側通路(34)を流れる室外空気の相対湿度を計測する。なお、図5〜図8では、内気温度センサ(91)、内気湿度センサ(92)、外気温度センサ(93)、及び外気湿度センサ(94)の図示を省略している。内気温度センサ(91)は、室内空気の温度(内気温度Tr)を検出する内気検出部を構成する。外気温度センサ(93)は、室外空気の温度(外気温度To)を検出する外気温度検出部を構成する。
ケーシング(11)内における上流側仕切板(71)と下流側仕切板(72)の間の空間は、中央仕切板(73)によって左右に区画されており、中央仕切板(73)の右側の空間が第1熱交換器室(37)を構成し、中央仕切板(73)の左側の空間が第2熱交換器室(38)を構成している。第1熱交換器室(37)には、第1吸着熱交換器(51)が収容されている。第2熱交換器室(38)には、第2吸着熱交換器(52)が収容されている。また、図示しないが、第1熱交換器室(37)には、冷媒回路(50)の電動膨張弁(55)が収容されている。
各吸着熱交換器(51,52)は、いわゆるクロスフィン型のフィン・アンド・チューブ熱交換器の表面に吸着剤を担持させたものである。この吸着剤としては、ゼオライト、シリカゲル、活性炭、親水性の官能基を有する有機高分子材料など、空気中の水分を吸着できる材料が用いられている。なお、本明細書の「吸着剤」には、水蒸気の吸着と吸収の両方を行う材料(いわゆる収着剤)も含まれる。
各吸着熱交換器(51,52)は、全体として長方形の厚板状あるいは扁平な直方体状に形成されている。そして、各吸着熱交換器(51,52)は、その前面及び背面が上流側仕切板(71)及び下流側仕切板(72)と平行になる姿勢で、熱交換器室(37,38)内に起立した状態で設置されている。
ケーシング(11)の内部空間において、下流側仕切板(72)の前面に沿った空間は、上下に仕切られており、この上下に仕切られた空間のうち、上側の部分が給気側通路(31)を構成し、下側の部分が排気側通路(33)を構成している。
上流側仕切板(71)には、開閉式のダンパ(41〜44)が四つ設けられている。各ダンパ(41〜44)は、概ね横長の長方形状に形成されている。具体的に、上流側仕切板(71)のうち内気側通路(32)に面する部分(上側部分)では、中央仕切板(73)よりも右側に第1内気側ダンパ(41)が取り付けられ、中央仕切板(73)よりも左側に第2内気側ダンパ(42)が取り付けられる。上流側仕切板(71)のうち外気側通路(34)に面する部分(下側部分)では、中央仕切板(73)よりも右側に第1外気側ダンパ(43)が取り付けられ、中央仕切板(73)よりも左側に第2外気側ダンパ(44)が取り付けられる。
下流側仕切板(72)には、開閉式のダンパ(45〜48)が四つ設けられている。各ダンパ(45〜48)は、概ね横長の長方形状に形成されている。具体的に、下流側仕切板(72)のうち給気側通路(31)に面する部分(上側部分)では、中央仕切板(73)よりも右側に第1給気側ダンパ(45)が取り付けられ、中央仕切板(73)よりも左側に第2給気側ダンパ(46)が取り付けられる。下流側仕切板(72)のうち排気側通路(33)に面する部分(下側部分)では、中央仕切板(73)よりも右側に第1排気側ダンパ(47)が取り付けられ、中央仕切板(73)よりも左側に第2排気側ダンパ(48)が取り付けられる。
上述した八つのダンパ(41〜48)は、空気の流通経路を切り換える流路切換機構(40)を構成している。流路切換機構(40)は、八つのダンパ(41〜48)をそれぞれ開閉させることで、空気の流通経路を第1経路と第2経路との間で切り換える。
第1経路を形成するときには、第2内気側ダンパ(42)、第1外気側ダンパ(43)、第1給気側ダンパ(45)、及び第2排気側ダンパ(48)が開状態となり、第1内気側ダンパ(41)、第2外気側ダンパ(44)、第2給気側ダンパ(46)、及び第1排気側ダンパ(47)が閉状態となる。この状態では、室外空気が第1吸着熱交換器(51)を通過した後、室内へ供給されると同時に、室内空気が第2吸着熱交換器(52)を通過した後、室外へ排出される。
第2経路を形成するときには、第1内気側ダンパ(41)、第2外気側ダンパ(44)、第2給気側ダンパ(46)、及び第1排気側ダンパ(47)が開状態となり、第2内気側ダンパ(42)、第1外気側ダンパ(43)、第1給気側ダンパ(45)、及び第2排気側ダンパ(48)が閉状態となる。この状態では、室外空気が第2吸着熱交換器(52)を通過した後、室内へ供給されると同時に、室内空気が第1吸着熱交換器(51)を通過した後、室外へ排出される。
ケーシング(11)内において、給気側通路(31)及び排気側通路(33)と前面パネル部(12)との間の空間は、仕切板(77)によって左右に仕切られており、仕切板(77)の右側の空間が給気ファン室(36)を構成し、仕切板(77)の左側の空間が排気ファン室(35)を構成している。
給気ファン室(36)には、給気ファン(26)が収容されている。また、排気ファン室(35)には排気ファン(25)が収容されている。給気ファン(26)及び排気ファン(25)は、何れも遠心型の多翼ファン(いわゆるシロッコファン)である。給気ファン(26)は、下流側仕切板(72)側から吸い込んだ空気を給気口(22)へ吹き出す。排気ファン(25)は、下流側仕切板(72)側から吸い込んだ空気を排気口(21)へ吹き出す。
給気ファン室(36)には、冷媒回路(50)の圧縮機(53)と四方切換弁(54)とが収容されている。圧縮機(53)及び四方切換弁(54)は、給気ファン室(36)における給気ファン(26)と仕切板(77)との間に配置されている。
〈冷媒回路の構成〉
図2に示すように、冷媒回路(50)は、第1吸着熱交換器(51)、第2吸着熱交換器(52)、圧縮機(53)、四方切換弁(54)、及び電動膨張弁(55)が設けられた閉回路である。この冷媒回路(50)は、充填された冷媒を循環させることによって、蒸気圧縮冷凍サイクルを行う。また、図示しないが、冷媒回路(50)には、複数の温度センサ及び圧力センサが取り付けられている。
冷媒回路(50)において、圧縮機(53)は、その吐出管が四方切換弁(54)の第1のポートに、その吸入管が四方切換弁(54)の第2のポートにそれぞれ接続されている。また、冷媒回路(50)では、四方切換弁(54)の第3のポートから第4のポートへ向かって順に、第1吸着熱交換器(51)と、電動膨張弁(55)(膨張弁)と、第2吸着熱交換器(52)とが配置されている。
四方切換弁(54)は、第1のポートと第3のポートが連通して第2のポートと第4のポートが連通する第1状態(図2の実線で示す状態)と、第1のポートと第4のポートが連通して第2のポートと第3のポートが連通する第2状態(図2の破線で示す状態)とに切り換え可能となっている。
圧縮機(53)は、圧縮機構とそれを駆動する電動機とが一つのケーシングに収容された全密閉型の圧縮機である。この圧縮機(53)の電動機には、インバータを介して交流が供給される。インバータの出力周波数(即ち、圧縮機(53)の運転周波数)を変更すると、電動機とそれによって駆動される圧縮機構の回転速度が変化し、圧縮機(53)の運転容量が変化する。圧縮機構の回転速度を上昇させると圧縮機(53)の運転容量が増加し、圧縮機構の回転速度を低下させると圧縮機(53)の運転容量が減少する。
冷媒回路(50)には、吐出圧力センサ(61)、吸入圧力センサ(62)、吐出温度センサ(63)、及び吸入温度センサ(64)が設けられている。吐出圧力センサ(61)は、圧縮機(53)から吐出された吐出冷媒(高圧冷媒)の圧力を検出する。吸入圧力センサ(62)は、圧縮機(53)に吸入される吸入冷媒(低圧冷媒)の圧力を検出する。吐出温度センサ(63)は、圧縮機(53)から吐出される吐出冷媒の温度を検出する。吸入温度センサ(64)は、圧縮機(53)に吸入される吸入冷媒の温度を検出する。
〈コントローラの構成〉
調湿装置(10)には、制御部であるコントローラ(80)が設けられている。コントローラ(80)には、内気湿度センサ(92)、内気温度センサ(91)、外気湿度センサ(94)、及び外気温度センサ(93)の計測値が入力される。コントローラ(80)には、冷媒回路(50)に設けられた各圧力センサ(61,62)や各温度センサ(63,64)の計測値が入力される。コントローラ(80)は、入力されたこれらの計測値や信号に基づいて、調湿装置(10)の流路切換機構(40)や冷媒回路(50)を制御する。具体的には、コントローラ(80)は、各ダンパ(41〜48)、各ファン(25,26)、圧縮機(53)、電動膨張弁(55)、及び四方切換弁(54)を制御する。
図4に示すように、コントローラ(80)は、圧縮機制御部(81)、四方切換弁制御部(82)、膨張弁制御部(83)、ダンパ制御部(84)、及びタイマ部(85)を有している。圧縮機制御部(81)は、圧縮機(53)の起動及び停止の切換や、圧縮機(53)の回転速度を調節する制御を行う。四方切換弁制御部(82)は、四方切換弁(54)を第1状態と第2状態の間で切り換える制御を行う。膨張弁制御部(83)は、電動膨張弁(55)の開度を調節する制御を行う。ダンパ制御部(84)は、流路切換機構(40)(各ダンパ(41〜48))の開閉を切り換える制御を行う。タイマ部(85)は、詳細は後述する凍結防止制御を実行するための時間をカウントする。
−運転動作−
まず、調湿装置(10)の基本的な運転動作について説明する。調湿装置(10)は、除湿運転と、加湿運転と、単純換気運転とを選択的に行う。除湿運転および加湿運転は、室内空間へ供給される室外空気の絶対湿度の調節を目的とした調湿運転である。つまり、除湿運転および加湿運転は、主に室内空間の潜熱負荷(除湿負荷または加湿負荷)を処理するための運転である。単純換気運転は、室内空間の換気だけを行うための運転である。
除湿運転、加湿運転、および単純換気運転のそれぞれでは、給気ファン(26)及び排気ファン(25)が作動する。そして、調湿装置(10)は、吸い込んだ室外空気(OA)を供給空気(SA)として室内空間へ供給し、吸い込んだ室内空気(RA)を排出空気(EA)として室外空間へ排出する。
〈除湿運転〉
除湿運転中の調湿装置(10)では、室外空気が外気吸込口(24)からケーシング(11)内へ第1空気として吸い込まれ、室内空気が内気吸込口(23)からケーシング(11)内へ第2空気として吸い込まれる。冷媒回路(50)では、圧縮機(53)が作動し、電動膨張弁(55)の開度が調節される。そして、除湿運転中の調湿装置(10)は、第1動作と第2動作を3分間ずつ交互に繰り返し行う。
図3(B)及び図5に示すように、除湿運転の第1動作では、切換機構(40)が空気の流通経路を第2経路に設定する。また、この第1動作中には、四方切換弁(54)が第1状態に設定される。そして、冷媒回路(50)では冷凍サイクルが行われ、第1吸着熱交換器(51)が凝縮器(即ち、放熱器)として機能し、第2吸着熱交換器(52)が蒸発器として機能する。
外気側通路(34)へ流入した第1空気は、第2外気側ダンパ(44)を通って第2熱交換器室(38)へ流入し、その後に第2吸着熱交換器(52)を通過する。第2吸着熱交換器(52)では、第1空気中の水分が吸着剤に吸着され、その際に生じた吸着熱が冷媒に吸熱される。また、第2吸着熱交換器(52)では、第1空気の温度が幾分低下する。第2吸着熱交換器(52)において除湿された第1空気は、第2給気側ダンパ(46)を通って給気側通路(31)へ流入し、給気ファン室(36)を通過後に給気口(22)を通って室内空間へ供給される。
一方、内気側通路(32)へ流入した第2空気は、第1内気側ダンパ(41)を通って第1熱交換器室(37)へ流入し、その後に第1吸着熱交換器(51)を通過する。第1吸着熱交換器(51)では、冷媒によって加熱された吸着剤から水分が脱離し、この脱離した水分が第2空気に付与される。第1吸着熱交換器(51)において水分を付与された第2空気は、第1排気側ダンパ(47)を通って排気側通路(33)へ流入し、排気ファン室(35)を通過後に排気口(21)を通って室外空間へ排出される。
図3(C)及び図6に示すように、除湿運転の第2動作では、切換機構(40)が空気の流通経路を第1経路に設定する。また、この第2動作中には、四方切換弁(54)が第2状態に設定される。そして、冷媒回路(50)では冷凍サイクルが行われ、第2吸着熱交換器(52)が凝縮器(即ち、放熱器)として機能し、第1吸着熱交換器(51)が蒸発器として機能する。
外気側通路(34)へ流入した第1空気は、第1外気側ダンパ(43)を通って第1熱交換器室(37)へ流入し、その後に第1吸着熱交換器(51)を通過する。第1吸着熱交換器(51)では、第1空気中の水分が吸着剤に吸着され、その際に生じた吸着熱が冷媒に吸熱される。また、第1吸着熱交換器(51)では、第1空気の温度が幾分低下する。第1吸着熱交換器(51)において除湿された第1空気は、第1給気側ダンパ(45)を通って給気側通路(31)へ流入し、給気ファン室(36)を通過後に給気口(22)を通って室内空間へ供給される。
一方、内気側通路(32)へ流入した第2空気は、第2内気側ダンパ(42)を通って第2熱交換器室(38)へ流入し、その後に第2吸着熱交換器(52)を通過する。第2吸着熱交換器(52)では、冷媒によって加熱された吸着剤から水分が脱離し、この脱離した水分が第2空気に付与される。第2吸着熱交換器(52)において水分を付与された第2空気は、第2排気側ダンパ(48)を通って排気側通路(33)へ流入し、排気ファン室(35)を通過後に排気口(21)を通って室外空間へ排出される。
〈加湿運転〉
加湿運転中の調湿装置(10)では、室外空気が外気吸込口(24)からケーシング(11)内へ第2空気として吸い込まれ、室内空気が内気吸込口(23)からケーシング(11)内へ第1空気として吸い込まれる。また、冷媒回路(50)では、圧縮機(53)が作動し、電動膨張弁(55)の開度が調節される。そして、加湿運転中の調湿装置(10)は、後述する第1動作と第2動作を3分30秒ずつで交互に繰り返し行う。
図3(A)及び図7に示すように、加湿運転の第1動作では、切換機構(40)が空気の流通経路を第1経路に設定する。また、この第1動作では、四方切換弁(54)が第1状態に設定される。そして、冷媒回路(50)では冷凍サイクルが行われ、第1吸着熱交換器(51)が凝縮器(即ち、放熱器)として機能し、第2吸着熱交換器(52)が蒸発器として機能する。
内気側通路(32)へ流入した第1空気は、第2内気側ダンパ(42)を通って第2熱交換器室(38)へ流入し、その後に第2吸着熱交換器(52)を通過する。第2吸着熱交換器(52)では、第1空気中の水分が吸着剤に吸着され、その際に生じた吸着熱が冷媒に吸熱される。第2吸着熱交換器(52)において水分を奪われた第1空気は、第2排気側ダンパ(48)を通って排気側通路(33)へ流入し、排気ファン室(35)を通過後に排気口(21)を通って室外空間へ排出される。
一方、外気側通路(34)へ流入した第2空気は、第1外気側ダンパ(43)を通って第1熱交換器室(37)へ流入し、その後に第1吸着熱交換器(51)を通過する。第1吸着熱交換器(51)では、冷媒によって加熱された吸着剤から水分が脱離し、この脱離した水分が第2空気に付与される。また、第1吸着熱交換器(51)では、第2空気の温度が幾分上昇する。第1吸着熱交換器(51)において加湿された第2空気は、第1給気側ダンパ(45)を通って給気側通路(31)へ流入し、給気ファン室(36)を通過後に給気口(22)を通って室内空間へ供給される。
図3(D)及び図8に示すように、加湿運転の第2動作では、切換機構(40)が空気の流通経路を第2経路に設定する。また、この第2動作では、四方切換弁(54)が第2状態に設定される。そして、冷媒回路(50)では冷凍サイクルが行われ、第2吸着熱交換器(52)が凝縮器(即ち、放熱器)として機能し、第1吸着熱交換器(51)が蒸発器として機能する。
内気側通路(32)へ流入した第1空気は、第1内気側ダンパ(41)を通って第1熱交換器室(37)へ流入し、その後に第1吸着熱交換器(51)を通過する。第1吸着熱交換器(51)では、第1空気中の水分が吸着剤に吸着され、その際に生じた吸着熱が冷媒に吸熱される。第1吸着熱交換器(51)において水分を奪われた第1空気は、第1排気側ダンパ(47)を通って排気側通路(33)へ流入し、排気ファン室(35)を通過後に排気口(21)を通って室外空間へ排出される。
一方、外気側通路(34)へ流入した第2空気は、第2外気側ダンパ(44)を通って第2熱交換器室(38)へ流入し、その後に第2吸着熱交換器(52)を通過する。第2吸着熱交換器(52)では、冷媒によって加熱された吸着剤から水分が脱離し、この脱離した水分が第2空気に付与される。また、第2吸着熱交換器(52)では、第2空気の温度が幾分上昇する。第2吸着熱交換器(52)において加湿された第2空気は、第2給気側ダンパ(46)を通って給気側通路(31)へ流入し、給気ファン室(36)を通過後に給気口(22)を通って室内空間へ供給される。
〈単純換気運転〉
単純換気運転は、室内空間を換気する運転である。単純換気運転中の調湿装置(10)では、冷媒回路(50)の圧縮機(53)が停止する。また、空気の流通経路が第1経路に設定されている場合、調湿装置(10)では、図9に示すように室外空気と室内空気が流れる。つまり、室外空気が第1吸着熱交換器(51)を通過後に室内空間へ供給され、室内空気が第2吸着熱交換器(52)を通過後に室外空間へ排出される。
一方、空気の流通経路が第2経路に設定されている場合、調湿装置(10)では、図10に示すように室外空気と室内空気が流れる。つまり、室外空気が第2吸着熱交換器(52)を通過後に室内空間へ供給され、室内空気が第1吸着熱交換器(51)を通過後に室外空間へ排出される。
単純換気運転中において、吸着熱交換器(51,52)は、そこを通過する空気との間で水分や熱の授受は行わない。従って、室外空気は、温度と絶対湿度を調節されることなく、そのままの状態で室内空間へ供給される。また、室内空気は、温度と絶対湿度を調節されることなく、そのままの状態で室外空間へ排出される。
−単純換気運転の制御動作−
単純換気運転では、その後の調湿運転において、吸着熱交換器(51,52)に溜まり込んだ冷媒が圧縮機(53)に吸入されることを防止するために、四方切換弁(54)、ダンパ(41〜48)、及び電動膨張弁(55)の制御動作が行われる。この制御動作について、図11〜図13を参照しながら説明する。
図11に示すように、単純換気運転が開始されると、まず、コントローラ(80)は、条件A、条件B、条件Cのいずれが成立するかを判定する。これらの判定は、内気温度センサ(91)で検出した内気温度Trと、外気温度センサ(93)で検出した外気温度Toとに基づいて行われる。
図12に示すように、単純換気運転が開始されると、まず、条件Bが成立するか否かの判定が行われる。内気温度Trが、外気温度Toに所定温度T1(例えばT1=3℃)を加えた値以上であり、且つ現在の四方切換弁(54)が第1状態(図2の実線で示す状態)である場合には、条件Bが成立する。
四方切換弁(54)が第1状態であるということは、次の調湿運転の開始時において、第2吸着熱交換器(52)が凝縮器となり、第1吸着熱交換器(51)が蒸発器となる。四方切換弁(54)は、冷媒回路(50)の高低差圧を利用して駆動されるため、単純換気運転における四方切換弁(54)の状態が、調湿運転の開始時にも維持されるからである。
一方、調湿運転の開始時において、圧縮機(53)に液冷媒が吸入されることを防止するためには、次の調湿運転で凝縮器となる方の第2吸着熱交換器(52)に液冷媒を溜める必要がある。蒸発器となる方の第1吸着熱交換器(51)に液冷媒が溜まり込むと、圧縮機(53)の起動時において、この液冷媒がほとんど蒸発せずに圧縮機(53)に吸い込まれてしまうからである。
そこで、四方切換弁(54)が第1状態であり、且つ内気温度Tr≧外気温度To+3℃以上である場合には、条件Bが成立し状態2へ遷移する。状態2では、電動膨張弁(55)が所定開度で開放されるとともに、空気の流通経路が第2経路に設定される。第2経路に設定されると、室外空気が第2吸着熱交換器(52)を通過すると同時に室内空気が該第1吸着熱交換器(51)を通過する。つまり、この状態では、次の調湿運転で凝縮器となる第2吸着熱交換器(52)を、室外空気と室内空気のうち温度が3℃以上低い室外空気が通過する。同時に、次の調湿運転で蒸発器となる第1吸着熱交換器(51)を、室外空気と室内空気のうち温度が3℃以上高い室内空気が通過する。この際、冷媒回路(50)では、電動膨張弁(55)が開状態である。従って、第1吸着熱交換器(51)や配管の内部の冷媒は、凝縮器になる第2吸着熱交換器(52)へ移動し、液冷媒の状態で第2吸着熱交換器(52)の内部に溜まり込んでいく。これにより、次の調湿運転で蒸発器となる第1吸着熱交換器(51)に液冷媒が溜まることを回避できる。
図12に示すように、内気温度Trに所定温度T1(例えばT1=3℃)を加えた値が、外気温度To以下であり、且つ現在の四方切換弁(54)が第2状態(図2の破線で示す状態)である場合にも、条件Bが成立し状態2へ遷移する。これにより、次の調湿運転で凝縮器となる第1吸着熱交換器(51)を、室外空気と室内空気のうち温度が3℃以上低い室内空気が通過する。同時に、次の調湿運転で蒸発器となる第2吸着熱交換器(52)を、室外空気と室内空気のうち温度が3℃以上高い室外空気が通過する。これにより、次の調湿運転で凝縮器となる第1吸着熱交換器(51)に液冷媒を溜めることができる。
条件Bが成立しない場合、条件Cが成立するか否かの判定が行われる。具体的に、室外空気と室内空気の差(絶対値)が所定温度T1(例えばT1=3℃)より小さく、内気温度Trが45℃以下であり、外気温度が45℃以下である場合、条件Cが成立し、状態3へ遷移する。
条件Cは、内気温度Trと外気温度Toとの差が比較的小さく、且つ内気温度Tr及び外気温度Toが極めて高くないときに成立する。所定温度T1は、内気温度センサ(91)及び外気温度センサ(93)の検出誤差を考慮した値である。つまり、内気温度Trと外気温度Toとの差がさほど大きくない場合、内気温度センサ(91)及び外気温度センサ(93)の検出誤差に起因して、室内空気及び室外空気の実際の温度の大小関係と、検出した内気温度Trと外気温度Toとの大小関係とが逆転する可能性がある。従って、このような状況化で状態2へ遷移すると、蒸発器となる吸着熱交換器(51,52)に逆に液冷媒が溜まってしまい、かえって圧縮機(53)の液圧縮を助長させる可能性がある。
これに対し、条件Cのように、内気温度Trと外気温度Toとの差が比較的小さい場合、状態2へ遷移せず状態3へ遷移する。状態3へ遷移すると、電動膨張弁(55)が全閉となる。従って、内気温度センサ(91)や外気温度センサ(93)の検出誤差に起因して、蒸発器となる方の吸着熱交換器(51,52)に温度が低い方の空気が流れたとしても、凝縮器側の吸着熱交換器(51,52)が電動膨張弁(55)を通過して蒸発器側の吸着熱交換器(51,52)に移動してしまうことがない。従って、内気温度センサ(91)及び外気温度センサ(93)の検出誤差に起因して、蒸発器側の吸着熱交換器(51,52)に液冷媒が偏ってしまうことを確実に回避できる。
調湿運転の開始時において、条件B及び条件Cが成立しない場合、条件Aが成立し、状態1へ遷移する。状態1では、電動膨張弁(55)が所定開度で開放されるとともに、空気の流通経路が第1経路に設定される。
ここで、条件Aは、内気温度Trが、外気温度Toに所定温度T1(例えばT1=3℃)を加えた値以上であり、且つ現在の四方切換弁(54)が第2状態である場合に成立する。従って、この条件が成立するときに状態1に遷移することで、凝縮器となる第2吸着熱交換器(52)を比較的低温の室外空気が通過し、蒸発器となる第1吸着熱交換器(51)を比較的高温の室内空気が通過する。この結果、凝縮器となる第2吸着熱交換器(52)に液冷媒を溜めることができる。
条件Aは、内気温度Trに所定温度T1(例えばT1=3℃)を加えた値が、外気温度To以下であり、且つ現在の四方切換弁(54)が第1状態である場合にも成立する。従って、この条件が成立するときに状態1に遷移することで、凝縮器となる第1吸着熱交換器(51)を比較的低温の室外空気が通過し、蒸発器となる第2吸着熱交換器(52)を比較的高温の室内空気が通過する。この結果、凝縮器となる第1吸着熱交換器(51)に液冷媒を溜めることができる。
次いで、状態1、状態2、及び状態3のそれぞれの遷移について、図11及び図13を参照しながら詳細に説明する。上述したように、状態1では、電動膨張弁(55)が開状態となり、空気の流通経路が第1経路となる。状態2では、電動膨張弁(55)が開状態となり、空気の流通経路が第2経路となる。状態3では、電動膨張弁(55)が全閉状態となり、空気の流通経路が第1経路又は第2経路となる。
状態2において、条件Dが成立すると状態1に遷移する。条件Dは、内気温度Trが、外気温度Toに所定温度T1(例えばT1=3℃)を加えた値以上であり、且つ現在の四方切換弁(54)が第2状態である場合に成立する。従って、この条件が成立するときに状態1に遷移することで、凝縮器となる第2吸着熱交換器(52)を比較的低温の室外空気が通過する。
また、条件Dは、内気温度Trに所定温度T1(例えばT1=3℃)を加えた値が、外気温度To以下であり、且つ現在の四方切換弁(54)が第1状態である場合にも成立する。従って、この条件が成立するときに状態1に遷移することで、凝縮器となる第1吸着熱交換器(51)を比較的低温の室外空気が通過する。
状態1において、条件Eが成立すると状態2に遷移する。条件Eは、内気温度Trが、外気温度Toに所定温度T1(例えばT1=3℃)を加えた値以上であり、且つ現在の四方切換弁(54)が第1状態である場合に成立する。従って、この条件が成立するときに状態2に遷移することで、凝縮器となる第1吸着熱交換器(51)を比較的低温の室外空気が通過する。
また、条件Eは、内気温度Trに所定温度T1(例えばT1=3℃)を加えた値が、外気温度To以下であり、且つ現在の四方切換弁(54)が第2状態である場合にも成立する。従って、この条件が成立するときに状態2に遷移することで、凝縮器となる第2吸着熱交換器(52)を比較的低温の室外空気が通過する。
状態1において、条件Fが成立すると状態3に遷移する。条件Fは、内気温度Trと外気温度Toとの差(絶対値)が所定温度T1(例えばT1=3℃)より小さく、且つ内気温度Trが45℃以下であり、且つ外気温度が45℃以下である場合に成立する。即ち、このように外気温度Toと内気温度Toの差が比較的小さい条件下では、検出誤差に起因して蒸発器側の吸着熱交換器(51,52)に液冷媒が溜まり込む可能性がある。このため、このような条件下では、電動膨張弁(55)を全閉とし、液冷媒が蒸発器側の吸着熱交換器(51,52)へ移動するのを防止する。
状態3において、条件Gが成立すると状態1に遷移する。条件Gは、以下の4つのいずれかにより成立する。G−1)内気温度Trが、外気温度Toに所定温度T2(例えばT2=3.5℃)を加えた値以上であり、且つ現在の四方切換弁(54)が第2状態である。G−2)内気温度Trに所定温度T2(例えばT2=3.5℃)を加えた値が、外気温度To以下であり、且つ現在の四方切換弁(54)が第1状態である。G−3)内気温度Trが所定温度T3(例えばT3=45℃)より大きい。G−4)外気温度Toが所定温度T3(例えばT3=45℃)より大きい。
上記G−1)及び上記G−2)は、内気温度Tr及び外気温度Toの温度差が、検出誤差に影響を受けない程度に大きくなったことを意味する。即ち、これらの条件が成立すると、誤って蒸発器側の吸着熱交換器(51,52)に液冷媒が溜まることがないと判断できるので、状態1へ遷移し、電動膨張弁(55)が開状態となる。ここで、条件Fにおいては、TrとToの温度差が3℃より小さい場合に状態3へ遷移するのに対し、条件G−1及び条件G−2では、この温度差が3.5℃以上になるまで、状態1へは遷移しない。つまり、本実施形態では、状態3から状態1へ遷移させるための温度差(即ち、T2)を、状態1から状態3へ遷移させるための温度差(即ち、T1)よりも大きくしている。このような、いわゆるディファレンシャルを設定することで、検出誤差に起因して蒸発器側の吸着熱交換器(51,52)に液冷媒が移動することを確実に防止している。
上記G−3)及び上記G−4)は、吸着熱交換器(51,52)を通過する空気温度が極めて高い場合に、所定のラインに溜まった冷媒の容積が増大することに起因して内圧が耐圧を越えてしまうことを回避するための条件である。具体的に、電動膨張弁(55)が閉状態であるときに、例えば外気温度Toが45℃より大きくなると、第1吸着熱交換器(51)側のラインの冷媒の温度が高くなり、この冷媒の容積が増大する。この結果、このラインの内圧が急上昇してしまう。そこで、この場合には、第1状態に遷移し、電動膨張弁(55)を開状態とする。これにより、冷媒回路(50)が均圧されるため、上記ラインの内圧の急上昇を速やかに解消できる。内気温度Trが45℃より大きくなる場合も同様である。
状態2において、条件Hが成立すると状態3に遷移する。条件Hは、内気温度Trと外気温度Toとの差(絶対値)が所定温度T1(例えばT1=3℃)より小さく、且つ内気温度Trが45℃以下であり、且つ外気温度が45℃以下である場合に成立する。即ち、TrとToとの温度差が比較的小さい場合、検出誤差に起因して蒸発器側の吸着熱交換器(51,52)に液冷媒が溜まる可能性があるため、状態3へ遷移し電動膨張弁(55)を全閉とする。
状態3において、条件Iが成立すると状態2に遷移する。条件Iは、以下の4つのいずれかにより成立する。I−1)内気温度Trが、外気温度Toに所定温度T2(例えばT2=3.5℃)を加えた値以上であり、且つ現在の四方切換弁(54)が第1状態である。I−2)内気温度Trに所定温度T2(例えばT2=3.5℃)を加えた値が、外気温度To以下であり、且つ現在の四方切換弁(54)が第2状態である。I−3)内気温度Trが所定温度T3(例えばT3=45℃)より大きい。I−4)外気温度Toが所定温度T3(例えばT3=45℃)より大きい。即ち、条件Iでは、条件Gと同様、TrとToとの温度差が比較的大きい場合や、内気温度Trや外気温度Toの温度が極めて高い場合、状態2へ遷移し電動膨張弁(55)を開状態とする。
状態1や状態2においては、内気温度Trや外気温度Toが極めて高く(45℃より大きく)、且つこれらの温度差が3℃より小さい状態が1時間続くと、条件Jが成立する。つまり、この条件が成立する場合にも、蒸発器側の吸着熱交換器(51,52)に冷媒が溜まっていく可能性がある。そこで、このような場合には、空気の流通経路を切り換えることで、一方の吸着熱交換器(51,52)に冷媒が溜まってしまうことを回避する。
状態3においては、内気温度Trと外気温度Toの温度差が3℃より小さい状態が1時間続くと、蒸発器側の吸着熱交換器(51,52)に冷媒が溜まっていく可能性がある。そこで、このような場合には、空気の流通経路を切り換えることで、一方の吸着熱交換器(51,52)に冷媒が溜まってしまうことを回避する。
−調湿運転の起動制御−
上記のような換気運転の後に調湿運転を実行する場合、冷媒回路(50)の蒸発圧力の急低下を防止するための起動制御が行われる。この起動制御について、図14〜図16を参照しながら詳細に説明する。
上述した換気運転が実行されると、原則としては、次の調湿運転において凝縮器となる方の吸着熱交換器(51,52)に液冷媒が溜まっていく。これにより、調湿運転の開始時に圧縮機(53)が起動した際、液冷媒が圧縮機(53)に直接吸入されてしまうことを回避できる。一方、このように凝縮器側の吸着熱交換器(51,52)に液冷媒が所定量以上溜まった状態で圧縮機(53)を起動すると、蒸発器側の吸着熱交換器(51,52)の蒸発圧力(冷媒回路(50)の低圧圧力)が急低下してしまう。この結果、この吸着熱交換器(51,52)の表面の吸着剤やバインダが凍結してしまい、吸着剤が剥がれ落ちてしまう可能性がある。そこで、本実施形態では、このように凝縮器側の吸着熱交換器(51,52)に液冷媒が溜まっている場合には、凍結防止制御を行い、蒸発圧力の急低下を防止するようにしている。
まず調湿運転の開始時には、凝縮器となる吸着熱交換器(51,52)に所定量以上の液冷媒が溜まっているか否かの判定が行われる。図14に示すように、この判定はタイマ部(85)でカウントされた時間に基づいて行われる。具体的には、換気運転の実行時に給気ファン(26)及び排気ファン(25)が運転中であり、且つ内気温度Trと外気温度Toとの差(絶対値)が所定温度(例えば10℃)以上であり、且つ外気温度Toが所定温度(例えば10℃)以下である場合に、タイマ部(85)は、カウンタを積算していく。
調湿運転の開始時において、タイマ部(85)でカウントされた積算時間が所定時間t1(例えば1時間)以上である場合、凍結防止制御(第2起動制御)のフラグが成立し、そうでない場合には通常制御(第1起動制御)のフラグが成立する。なお、凍結防止制御のフラグは、その後の調節運転等において、四方切換弁(54)の切換動作が行われることで、通常制御のフラグに変更される。
〈通常制御〉
調湿運転の開始時に通常制御が実行されると、圧縮機(53)が起動するとともに、電動膨張弁(55)が全閉状態となる。従って、通常制御では、冷媒回路(50)の高低差圧が比較的早く大きくなっていく。通常制御は、上述のようにタイマ部(85)でカウントされた積算時間が1時間未満であり、凝縮器側の吸着熱交換器(51,52)に多くの液冷媒が溜まっていない。このため、電動膨張弁(55)を全閉状態としながら圧縮機(53)を起動しても、冷媒回路(50)の蒸発圧力が急低下することがない。この結果、通常制御では、吸着熱交換器(51,52)の吸着剤やバインダの凍結を防止しつつ、調湿運転を速やかに定常状態まで立ち上げることができる。
通常制御が実行された後、次のいずれか1つの条件が成立すると、電動膨張弁(55)が所定開度に開放される。a−1:蒸発圧力Peが所定値(例えば5.0kg/cm2)より低く、且つ通常制御が実行されてから10秒経過した。a−2:蒸発圧力Peが所定値(例えば2.0kg/cm2)より低い。a−3:凝縮圧力Pcが所定値(例えば30kg/cm2)より大きい。a−4:通常制御を開始してから30秒経過した。
電動膨張弁(55)が開放された後、次の全ての条件が成立すると、電動膨張弁(55)が再び全閉状態となる。b−1:吸入過熱度(SH)が5℃より小さい。b−2:吐出過熱度が5℃より小さい。b−3:凝縮圧力Pcが所定値(例えば28kg/cm2)より小さい。b−4:蒸発圧力Peが所定値(例えば5.0kg/cm2)以上である。b−5:通常制御を開始してから30秒が経過した。
また、通常制御では、図16に示すように、圧縮機(53)の初期の回転数がR2(第2回転数)に設定される。この回転数R2は、圧縮機(53)の最低起動回転数R1(第1回転数)よりも大きい値である。また、通常制御では、圧縮機(53)の回転数が2ステップ(ΔS2)ずつ増大していく。つまり、通常制御では、圧縮機(53)の回転数が第2変化率で増大していく。
このように、通常制御では、圧縮機(53)の回転数が比較的早く増大していく。通常制御は、凝縮器側の吸着熱交換器(51,52)に液冷媒が多く溜まっていないときに実行されるため、このように圧縮機(53)の回転数を早く増大させたとしても、冷媒回路(50)の蒸発圧力が急低下することがない。このため、通常制御では、吸着熱交換器(51,52)の吸着剤やバインダの凍結を防止しつつ、調湿運転を速やかに定常状態まで立ち上げることができる。
〈凍結防止制御〉
図15に示すように、凍結防止制御のフラグが成立している場合、調湿運転の開始とともに電動膨張弁(55)が所定開度(例えば72パルス)で開いた状態となる。つまり、調湿運転が開始されると圧縮機(53)が起動するが、このタイミングに併せて電動膨張弁(55)が所定の開度に調節される。
電動膨張弁(55)の開度が所定の固定開度になった状態において、次の条件が成立すると、電動膨張弁(55)の開度が吸入過熱度(SH)に基づいて制御される。この条件は、図15に示すように次の条件に基づいて判定される。条件c−1:吐出過熱度(DSHi)が10℃より大きい。条件c−2:吸入過熱度(SH)が10℃より大きい。条件c−3:凍結防止制御を開始してから10秒経過した。条件c−4:蒸発圧力Paが所定値(例えば5.0kg/cm2)以上に変化した。条件c−5:凍結防止制御を開始してから30秒経過した。条件c−6:凝縮圧力Pc−蒸発圧力Peが所定値(例えば5.0kg/cm2)である。条件c−7:吸入過熱度(SH)が5℃以上である。
即ち、吸入過熱度が比較的大きくなる、あるいは冷媒回路(50)の高低差圧が比較的大きくなる、あるいは凍結防止制御を開始してからある程度の時間が経過した等の条件が成立すると、電動膨張弁(55)の開度が過熱度制御される。
以上のように、凍結防止制御では、圧縮機(53)の起動の開始時に電動膨張弁(55)を所定の開度で開放している。このため、調湿運転の立ち上がり時において、蒸発圧力が急低下することを防止でき、ひいては吸着熱交換器(51,52)の吸着剤やバインダの凍結を確実に防止できる。
また、凍結防止制御では、図16に示すように、圧縮機(53)の初期の回転数がR1に設定される。この回転数R1は、通常制御時の所定の回転数R2よりも小さく、最低起動回転数である。また、凍結防止制御では、圧縮機(53)の回転数が1ステップ(ΔS1)ずつ増大していく。つまり、制御では、圧縮機(53)の回転数が第2変化率よりも小さい第1変化率で増大していく。
このように、凍結防止制御では、通常制御よりも圧縮機(53)の回転数が緩やかに増大していく。このため、調湿運転の立ち上がり時において、蒸発圧力が急低下することを防止でき、ひいては吸着熱交換器(51,52)吸着剤やバインダの凍結を確実に防止できる。
−実施形態の効果−
上記実施形態では、調湿運転の開始時において、タイマ部(85)でカウントした積算値が1時間を越えると、凝縮器側の吸着熱交換器(51,52)に所定量以上の液冷媒が溜まっていると判定し、凍結防止制御が実行される。凍結防止制御では、膨張弁(55)の初期開度が比較的大きい第2開度となるため、蒸発器側の吸着熱交換器(51,52)の蒸発圧力が急低下することを防止できる。この結果、吸着熱交換器(51,52)の表面の吸着剤やバインダの劣化を防止できる。また、凍結防止制御では、圧縮機(53)の初期回転数R2を、通常制御の初期回転数R1より小さくしている。加えて、凍結防止制御では、圧縮機(53)の回転数の増大変化率ΔS2を、通常制御の増大変化率ΔS1よりも小さくしている。これにより、蒸発圧力の急激な低下を一層確実に防止できる。
〈実施形態の変形例〉
上記実施形態では、凝縮器側の吸着熱交換器(51,52)に所定量以上の液冷媒が溜まったことを示す条件が成立すると、電子膨張弁(55)の初期開度(第2開度)を、通常制御(第1起動制御)の初期開度(第1開度)よりも大きくする凍結防止制御(第2起動制御)を行っている。しかし、凍結防止制御において、電子膨張弁(55)の初期開度を通常制御と同じ開度に維持してもよいし、他の開度制御を行ってもよい。つまり、凍結防止制御において、電子膨張弁(55)の初期開度を必ずしも第1開度より大きくしなくてもよい。
この変形例においても、上記実施形態と同様、凍結防止制御における圧縮機(53)の初期回転数(第2回転数)を、通常制御における圧縮機(53)の初期回転数(第1回転数)よりも小さくする。更に、凍結防止制御における圧縮機(53)の回転数の増大変化率(第2変化率)を、通常制御における圧縮機(53)の回転数の増大変化率(第1変化率)よりも小さくする。これにより、蒸発器側の吸着熱交換器(51,52)の蒸発圧力の急低下を防止でき、上記実施形態と同様の作用効果を奏することができる。この変形例において、通常制御における電子膨張弁(55)の初期開度(第1開度)は、全閉状態とするのが好ましい。