JP6371591B2 - スパッタ装置、および、ito膜付長尺フィルムの製造方法 - Google Patents

スパッタ装置、および、ito膜付長尺フィルムの製造方法 Download PDF

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本発明は、長尺フィルムに薄膜を形成するスパッタ装置に関し、特に円筒型回転ターゲットを備えたスパッタ装置に関する。さらに本発明はITO(Indium Tin Oxideインジウム錫酸化物)膜付長尺フィルムの製造方法に関する。
長尺フィルムに薄膜を形成する方法として、スパッタ法が広く用いられている。長尺フィルムのスパッタ装置において、成膜ロールとターゲットは所定の間隔を隔てて対向する。低圧アルゴンガスなどのスパッタガス中で、長尺フィルムを巻き付けた成膜ロールをアノード電位とし、ターゲットをカソード電位とする。成膜ロールとターゲットの間に電圧を印加すると、成膜ロールとターゲットの間にスパッタガスのプラズマが発生する。プラズマ中のスパッタガスイオン(陽イオン)が電圧により加速されてターゲットに衝突し、ターゲットの構成物質を叩き出す。叩き出されたターゲットの構成物質が長尺フィルムに堆積し薄膜となる。
長尺フィルム全体に一度にスパッタ膜を成膜することはできない。そこで、供給ロールから繰り出した長尺フィルムを成膜ロール(キャンロール)に一周弱巻き付ける。成膜ロールが一定速度で回転すると、長尺フィルムも同期して一定速度で走行する。長尺フィルムの、ターゲットと対向する部分に成膜が行なわれる。成膜の終わった長尺フィルムは収納ロールに巻き取られる。
スパッタ法により長尺フィルムに透明導電膜を成膜することが広く行なわれている。透明導電膜としてITO(Indium Tin Oxideインジウム錫酸化物)膜が広く用いられている。タッチパネルやフィルム液晶などに用いられる透明電極(ITO膜)には、電気抵抗の低いことが求められる。ITO膜の電気抵抗を低くするためには、スパッタの際の放電電圧を低下させ、低いダメージでスパッタ成膜することが必要である。放電電圧を低下させる方法の一つとして、DC/RF重畳スパッタ法がある。DCは直流(Direct Current)である。RFは無線周波数(Radio Frequency)、つまり、1MHz〜100MHzの周波数の交流であり、一般的には、13.56MHzの交流が用いられる。ただし、RFの周波数が13.56MHzに限定されることはない。DC/RF重畳スパッタ法では、ターゲットにDCとRFを重畳して印加する。
しかし、DC/RF重畳スパッタ法では、通常のDCスパッタ法に比べて低電圧スパッタとなるため、スパッタレート(スパッタ速度:単位時間当たりのスパッタ膜厚の増加量)が低下する。また、一般にスパッタ法では、ターゲットの表面に、叩き出されたターゲットの構成物質が部分的に堆積する。堆積物の組成はターゲットの組成と異なるため、堆積物から異常放電が発生しやすい。DC/RF重畳スパッタでは、低電圧スパッタとなり、電流値が増加するため、堆積物による異常放電がさらに発生しやすい。異常放電が発生すると、長尺フィルムの、放電された箇所は不良となる。
スパッタレートを向上させ、異常放電を防止するうえで、円筒型回転ターゲットが有効である。円筒型回転ターゲットは、その中心軸回りに自転する円筒型のターゲットである。円筒型回転ターゲットの中心軸は成膜ロールの中心軸と平行に設置される。円筒型回転ターゲットは成膜ロールと対向するように設置される。
円筒型回転ターゲットでは、エロージョン(ターゲット表面に形成される凹み)がターゲット表面全体に均等に形成されるため、スパッタ電力を多く投入しても、ターゲットの負荷が小さい。そのため、スパッタ電力を多く投入して、スパッタレートを上げることができる。また、円筒型回転ターゲットでは、ターゲットの表面に、叩き出されたターゲットの構成物質が堆積しにくいため、異常放電が発生しにくい。
従来、円筒型回転ターゲットの使用は、DCスパッタ法あるいはMFスパッタ法に限られていた(例えば、特許文献1:特開2010−265527、特許文献2:特開2005−133110)。MFはミドル周波数(Middle Frequency)つまり40kHzの交流である。MFスパッタ法では、ターゲットと成膜ロールの間に40kHzの交流を印加する。
逆に、従来、DC/RF重畳スパッタ法に用いられるターゲットは、平板型ターゲットに限られていた(例えば、特許文献3:特開2004−27270、特許文献4:特開2007−186772、特許文献5:特開2009−187682)。すなわち、従来、DC/RF重畳スパッタ法において、円筒型回転ターゲットは用いられていなかった。その理由は次のとおりである。
従来、長尺フィルムのITO膜においては、膜の電気抵抗が低いこと(スパッタ電圧が低いこと)、品質が良いこと(異常放電が少ないこと)、および生産性が高いこと(スパッタレートが高いこと)の要求が、ガラス板に形成されるITO膜に比べて、強くなかった。
そのため従来は、長尺フィルムのITO膜の成膜の際、円筒型回転ターゲットは、DCスパッタ法あるいはMFスパッタ法で用いられることはあっても、DC/RF重畳スパッタ法で用いられることはなかった。逆に、DC/RF重畳スパッタ法では、平板型ターゲットが用いられることはあっても、円筒型回転ターゲットが用いられることはなかった。
その結果、長尺フィルムのITO膜のスパッタ成膜において、円筒型回転ターゲットをDC/RF重畳スパッタ法で用いた場合の問題点や適切な成膜条件はほとんど研究されていなかった。
しかし、最近、静電容量タッチパネル用途を中心として、ITO膜付長尺フィルムの市場が拡大するに従い、長尺フィルムのITO膜にも、ITO膜付ガラス板と同等の低い抵抗が求められるようになった。抵抗を低くするためには、スパッタ電圧を低くしなければならない。DCスパッタ法あるいはMFスパッタ法では、スパッタ電圧を低くすることが困難である。そのため、DCスパッタ法あるいはMFスパッタ法では、抵抗の低いITO膜を形成することができない。
また、長尺フィルムのITO膜もITO膜付ガラス板と同等の高い品質が求められるようになった。高い品質を実現するためには、異常放電を少なくしなければならない。平板型ターゲットを用いるDC/RF重畳スパッタでは、異常放電を少なくすることが困難である。そのため、平板型ターゲットを用いるDC/RF重畳スパッタでは、高い品質を実現することができない。
更にITO膜付長尺フィルムに対して低コストの要求が強くなってきたため、ロール・ツー・ロールで生産されるITO膜付長尺フィルムの生産性(スパッタレート)を高くすることが必要となった。そのため、スパッタレートの低いDCスパッタ法あるいはMFスパッタ法では、長尺フィルムのITO膜を成膜することが困難になっている。
平面的なガラス板に薄膜を形成するスパッタ装置では、構造上、円筒型回転ターゲットを用いることは困難である。そのため、ガラス板用のスパッタ装置で、円筒型回転ターゲットを用いることは研究されていない。従って、円筒型回転ターゲットを用いることに関して、ガラス板用のスパッタ装置は、長尺フィルムのスパッタ装置の参考にはならない。
ITO膜の電気抵抗を下げるうえで、DC/RF重畳スパッタ法が有効である。しかし、DC/RF重畳スパッタ法で平板型ターゲットを用いると、スパッタレートが低い上、異常放電が発生しやすい。そのため、現在の静電タッチパネル用途に適した、抵抗が低く品質の高いITO膜を、高いスパッタレートで成膜することは、平板型ターゲットを用いたDC/RF重畳スパッタ法では実現できない。
異常放電を防止するうえで円筒型回転ターゲットが有効である。しかし従来、円筒型回転ターゲットの使用は、DCスパッタ法あるいはMFスパッタ法に限られていた。DCスパッタ法あるいはMFスパッタ法において円筒型回転ターゲットを用いると、電気抵抗の低いITO膜を得ることができない。
従来は、DC/RF重畳スパッタ法で円筒型回転ターゲットを使用するための研究がされていない。そのため、ITO膜付ガラス板と同等の、抵抗が低く、品質の高いITO膜を有する長尺フィルムを、高いスパッタレートで生産する際の問題点と、それを解決した製造仕様は知られていない。
特開2010−265527号公報 特開2005−133110号公報 特開2004−27270号公報 特開2007−186772号公報 特開2009−187682号公報
本発明の目的は、ITO膜付ガラス板と同等の、抵抗が低く、品質の高いITO膜を有する長尺フィルムを、高いスパッタレートで生産することのできるスパッタ装置を実現することである。また、本発明の目的は、ITO膜付ガラス板と同等の、抵抗が低く、品質の高いITO膜付長尺フィルムを、高いスパッタレートで成膜できる製造方法を実現することである。
(1)本発明のスパッタ装置は、真空槽と、真空槽にスパッタガスを供給するスパッタガス供給装置と、真空槽内に備えられ、その中心軸回りに自転する成膜ロールと、成膜ロールと対向し、その中心軸回りに自転する円筒型回転ターゲットと、円筒型回転ターゲットの内部に設置された磁石と、円筒型回転ターゲットにDC電圧とRF電圧を重畳して印加するDC電源およびRF電源を備え、成膜ロールに巻かれた長尺フィルムに透明導電膜を形成する。
(2)本発明のスパッタ装置においては、円筒型回転ターゲットの内部に設置された磁石により形成される磁場の磁束密度が、円筒型回転ターゲットの表面において、50mT(ミリテスラ)以上である。スパッタ条件としては磁束密度の上限は特に無いが、磁石の大きさや種類により、磁束密度の上限は自ずと決まる。
(3)本発明のスパッタ装置は、更に、真空槽に反応性ガスを供給する反応性ガス供給装置を備える。
(4)本発明のスパッタ装置は、更に、長尺フィルムを供給するフィルム供給機構と、長尺フィルムを収納するフィルム収納機構を備える。
(5)本発明のスパッタ装置は、スパッタガス供給装置および反応性ガス供給装置をそれぞれ複数備える。
(6)本発明のスパッタ装置は、円筒型回転ターゲットを複数備える。
(7)本発明のスパッタ装置においては、複数の円筒型回転ターゲットが複数のグループに分類され、グループ毎にスパッタガスおよび反応性ガスの、種類および圧力が異なる。
(8)本発明のスパッタ装置は、成膜ロールを複数備える。
(9)本発明のスパッタ装置においては、スパッタガスがアルゴンガスであり、反応性ガスが酸素ガスである。
(10)本発明のITO膜付長尺フィルムの製造方法においては、上記のスパッタ装置を用いて、長尺フィルムにITO膜を形成する。
本発明のスパッタ装置により次の効果が得られる。(1)スパッタレートが高くなるため、生産性が向上する。(2)異常放電が発生しにくいため、薄膜の品質が高くなる。(3)抵抗(比抵抗または抵抗率)の低いITO膜を得ることができる。本発明のITO膜付長尺フィルムは、ITO膜付ガラス板と同等の、低い抵抗、高い品質を有する。本発明のITO膜付長尺フィルムの製造方法により、ITO膜付ガラス板と同等の、低い抵抗、高い品質を有するITO膜付長尺フィルムを、高いスパッタレート(高い生産性)で成膜できる。
本発明のスパッタ装置の一例の正面図と側面図 本発明のスパッタ装置の他例の正面図
図1は本発明のスパッタ装置10の一例の正面図と側面図である。図1は長尺フィルム11にスパッタにより薄膜を形成中の図である。本発明のスパッタ装置10は、真空槽12内に、長尺フィルム11の供給ロール13、長尺フィルム11の走行をガイドするガイドロール14、長尺フィルム11を一周弱巻き付ける円筒形の成膜ロール15、長尺フィルム11を収納する収納ロール16を備える。供給ロール13は代表的なフィルム供給機構であり、収納ロール16は代表的なフィルム収納機構である。成膜ロール15はキャンロールとも呼ばれる。成膜ロール15はその中心軸回りに自転する。スパッタ中は成膜ロール15が自転し、長尺フィルム11は成膜ロール15の自転に同期して走行する。
成膜ロール15の周囲に、成膜ロール15に対向するように、成膜ロール15と所定の距離を隔てて、円筒型回転ターゲット17が設置される。成膜ロール15の中心軸と円筒型回転ターゲット17の中心軸は平行である。図1は円筒型回転ターゲット17が3本の例であるが、円筒型回転ターゲット17の本数に制限はない。スパッタ中は円筒型回転ターゲット17もその中心軸の回りに自転する。円筒型回転ターゲット17の自転速度は各々の円筒型回転ターゲット17で異なっていてもよい。
円筒型回転ターゲット17の内側に、円筒型回転ターゲット17に密着して円筒型のカソード18が設置され、更にその内側に磁石19が設置される。円筒型回転ターゲット17と円筒型のカソード18は、機械的、電気的に結合する。カソード18は円筒型回転ターゲット17と同じ回転速度で自転する。しかし磁石19は回転せず常に成膜ロール15の方向を向いている。
カソード18に、RF電源20(RF)がマッチングボックス21(MB)を介して接続される。さらに、カソード18に、DC電源22(DC)がローパスフィルター23(LPF)を介して接続される。カソード18と円筒型回転ターゲット17は同じ電位であるため、実質的に、RF電源20とDC電源22が円筒型回転ターゲット17に接続される。それにより、円筒型回転ターゲット17にDC電圧とRF電圧が重畳して印加される。RF電圧は代表的には13.56MHzの交流である。マッチングボックス21(MB)は、RF電源20側から見た円筒型回転ターゲット17のインピーダンスを調整し、円筒型回転ターゲット17からの反射電力(無効電力)を最小にするために用いられる。ローパスフィルター23(LPF)は、RF電源20からの電力がDC電源22に逆流することを防止するために設置される。
各々の円筒型回転ターゲット17が必要とする、スパッタガスあるいは反応性ガスの種類、圧力、供給量が異なることがあるため、各々の円筒型回転ターゲット17を分離するように真空槽12を隔壁24で仕切り、分割槽25とする。各々の分割槽25に、ガス供給装置26(GAS)から配管27が接続され、所定のガス(スパッタガスあるいは反応性ガス)が、所定の圧力と流量で供給される。ガスの流量はマスフローコントローラー28(MFC)で制御される。
図2の本発明のスパッタ装置30の右側の成膜室のように、一つの分割槽25に複数の(図2では2本ずつの)円筒型回転ターゲット17を設置してもよい。この場合、一つの分割槽25に在る複数の円筒型回転ターゲット17を、一グループの円筒型回転ターゲット17と称する。この場合、同一のガス雰囲気で異なる材料のスパッタを行なうことができる。また、当該分割槽25の材料のスパッタ速度が、他の分割槽25の材料のスパッタ速度より遅いとき、長尺フィルム11の走行速度を遅くしないため、当該分割槽25で同一材料の複数の円筒型回転ターゲット17を用いてスパッタすることができる。
成膜ロール15の自転に同期して走行する長尺フィルム11に、円筒型回転ターゲット17と対向する位置で、スパッタ薄膜が付着する。図1では成膜ロール15が1本であるが、図2の本発明のスパッタ装置30のように、成膜ロール15が2本あってもよく、成膜ロール15の本数に制限はない。
長尺フィルム11として、一般的に、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリシクロオレフィンなどの単独重合体や共重合体からなる透明フィルムを用いる。長尺フィルム11は、単層フィルムでもよく、積層フィルムでもよい。長尺フィルム11の厚さは限定されないが、通常、6μm〜250μm程度である。長尺フィルム11には光学調整層が形成されていてもよい。また、長尺フィルム11と薄膜の付着力を強くするために、長尺フィルム11にプラズマ処理などが実施されていてもよい。
本発明のスパッタ装置10では、低圧アルゴンガスなどのスパッタガス中で、成膜ロール15をアノード電位とし、円筒型回転ターゲット17をカソード電位として、成膜ロール15と円筒型回転ターゲット17の間にDC電圧とRF電圧を重畳して印加する。DC電圧により長尺フィルム11と円筒型回転ターゲット17間にスパッタガスのプラズマを発生させる。プラズマ中のスパッタガスイオンが電気的に加速されて円筒型回転ターゲット17に衝突し、円筒型回転ターゲット17の構成物質を叩き出す。叩き出された円筒型回転ターゲット17の構成物質は長尺フィルム11に堆積し薄膜となる。
本発明のスパッタ装置10では、円筒型回転ターゲット17を用いるため、円筒型回転ターゲット17の表面にエロージョンが均一に形成される。そのため、円筒型回転ターゲット17の単位面積当たりの入力電力を高くすることができ、スパッタレートを高くすることができる。また、円筒型回転ターゲット17の表面に、叩き出されたターゲット材料が堆積しにくいため、異常放電が発生しにくい。本発明のスパッタ装置10では、異常放電が発生しにくいため、高品質の薄膜を得ることができる。
透明導電膜として、インジウム−錫酸化物(Indium-Tin-Oxide : ITO)の薄膜が広く使用されている。インジウム−錫酸化物(ITO)のような酸化物薄膜を形成する場合、酸化物ターゲット法と反応性スパッタ法がある。反応性スパッタ法では、アルゴンなどのスパッタガスに加えて、酸素ガス(反応性ガス)も供給される。酸素ガスを反応性ガスとする反応性スパッタ法では、叩き出された円筒型回転ターゲット17の構成物質(例えばインジウム原子、錫原子)が酸素ガスと反応し、酸化物(インジウム−錫酸化物)となって、長尺フィルム11に堆積する。
本発明のスパッタ装置10では、円筒型回転ターゲット17の内部に設置された磁石19が、円筒型回転ターゲット17の外部に磁場を形成する。この磁場により、円筒型回転ターゲット17と成膜ロール15間のDC電圧を低くすることができる。磁場は強い方が望ましいが、磁石19の大きさや磁気強度により自ずと限界がある。生成したスパッタガスイオンは円筒型回転ターゲット17と衝突して、円筒型回転ターゲット17の構成物質を叩き出す。磁場が強いと、ターゲット近傍での電子密度が高くなり、スパッタガスのイオン化率が上昇する。スパッタガスイオンの数が多いため、DC電圧を低くすることができる。
磁場の強さとDC電圧の関係について、本願発明者の研究結果を説明する。実験ではITO膜を成膜するとき、円筒型回転ターゲット17(インジウムと錫の焼結体)への入力電力が一定の電源を用いた。円筒型回転ターゲット17の表面において、磁束密度(磁場の強さ)が30mT(ミリテスラ)で、RF電圧を重畳しない場合、DC電圧は420V程度となった。(なお、円筒型回転ターゲット17への入力電力を少なくすることによっても、DC電圧を低くすることができるが、入力電力が少なすぎると、円筒型回転ターゲット17の構成物質(インジウムと錫)を十分に叩き出すことができない。そのため、円筒型回転ターゲット17への入力電力を少なくすることによってDC電圧を低くすることは望ましくない。)このとき、成膜されたITO膜の比抵抗(抵抗率)は3.5×10−4Ωcm程度であった。このITO膜の比抵抗は、従来(平板型ターゲット+DCスパッタ法)のITO膜の比抵抗とほぼ同等である。
次に、円筒型回転ターゲット17の表面において磁束密度が70mTで、RF電圧を重畳しない場合、DC電圧は250V程度に低下した。このとき、成膜されたITO膜の比抵抗(抵抗率)は2.5×10−4Ωcm程度になった。この比抵抗は、従来(平板型ターゲット+DCスパッタ法)のITO膜の比抵抗の約71%である。ITO膜の比抵抗が低くなった理由は次のとおりである。スパッタ時のDC電圧が低くなると、円筒型回転ターゲット17に衝突するアルゴンイオンの運動エネルギーが低下し、2次電子や反跳アルゴン原子の、個数や運動エネルギーが低下する。2次電子や反跳アルゴン原子はITO膜に欠陥を発生させ、ITO膜の比抵抗を高くする。そのため、2次電子や反跳アルゴン原子に起因する欠陥が低減すると、ITO膜の比抵抗が低くなる。ITO膜の比抵抗は低い方がよいため、DC電圧は低い方がよい。磁束密度が30mTの場合と70mTの実験結果を比較すると、磁束密度は50mT以上が望ましいことが推定される。このような磁束密度の下限値は、本願発明者の研究により、初めて明らかになった。
さらに、円筒型回転ターゲット17の表面において磁束密度が70mTで、RF電圧を重畳した場合、DC電圧は150V程度に下がった。これが本発明のスパッタ装置10の望ましい製造仕様である。このときRF電圧のピーク間電圧は800Vであった。このとき、成膜されたITO膜の比抵抗(抵抗率)は1.5×10−4Ωcm程度になった。このITO膜の比抵抗は、RF電圧を重畳しないときの、約60%である。これらの結果から考えて、磁束密度は、円筒型回転ターゲット17の表面において、70mT以上であることがより望ましい。さらに円筒型回転ターゲット17を用いることにより、スパッタレートは平板型ターゲットの場合の1.3倍となり、異常放電の発生率は5分の1に低下した。
本発明のスパッタ装置10では、円筒型回転ターゲット17に、DC電圧とRF(13.56MHzの交流)電圧を重畳して印加し、さらに、磁場を加えるため、電気抵抗の低いITO膜を成膜することができる。具体的には、従来の(平板型ターゲット+DCスパッタ法)で成膜したITO膜の比抵抗(抵抗率)が3.5×10−4Ωcm程度であるのに対し、本発明のスパッタ装置10(円筒型回転ターゲット17+DC/RF重畳スパッタ法+磁束密度70mT)で成膜したITO膜の比抵抗は1.5×10−4Ωcm程度であった。つまりITO膜の比抵抗は約43%に低くなる。
本発明のスパッタ装置10によれば、ITO膜の比抵抗が従来の約43%になる。本発明のスパッタ装置10で成膜されたITO膜は比抵抗が低いため、ITO膜を薄くすることができる。従って、ITO膜の成膜時間が短くなり、生産性が高くなる。またITOターゲットの所要量が少なくなり、コストダウンができる。しかも、従来の平板型ターゲットと比較して、スパッタレートが高くなるため、成膜時間が短縮され、さらに生産性が高くなる。また、ITO膜を薄くすることができるため、ITO膜の光透過率が高くなる。ITO膜の光透過率は高い方が望ましいため、ITO膜の性能が向上する。また、平板型ターゲットと比較して異常放電が大幅に低減するためITO膜の品質が高くなり、高品質のITO膜付長尺フィルムを供給することができる。
本発明のスパッタ装置は、長尺フィルムに、高品質の薄膜(例えばITO膜)を、高い生産性で成膜することに適する。本発明のITO膜付長尺フィルムは、ITO膜付ガラス板と同等の、低い抵抗、高い品質を有する。本発明のITO膜付長尺フィルムの製造方法により、ITO膜付ガラス板と同等の、低い抵抗、高い品質を有するITO膜付長尺フィルムを、高い生産性で成膜できる。
10 スパッタ装置
11 長尺フィルム
12 真空槽
13 供給ロール
14 ガイドロール
15 成膜ロール
16 収納ロール
17 円筒型回転ターゲット
18 カソード
19 磁石
20 RF電源
21 マッチングボックス
22 DC電源
23 ローパスフィルター
24 隔壁
25 分割槽
26 ガス供給装置
27 配管
28 マスフローコントローラー
30 スパッタ装置

Claims (10)

  1. 真空槽と、
    前記真空槽にスパッタガスを供給するスパッタガス供給装置と、
    前記真空槽内に備えられ、その中心軸回りに自転する成膜ロールと、
    前記成膜ロールと対向し、その中心軸回りに自転する円筒型回転ターゲットと、
    前記円筒型回転ターゲットの内部に設置された磁石と、
    前記円筒型回転ターゲットにDC電圧とRF電圧を重畳して印加するDC電源およびRF電源を備え、
    前記成膜ロールに巻かれた長尺フィルムに透明導電膜を形成するスパッタ装置。
  2. 前記円筒型回転ターゲットの内部に設置された磁石により形成される磁場の磁束密度が、前記円筒型回転ターゲットの表面において、50mT(ミリテスラ)以上である請求項1に記載のスパッタ装置。
  3. 更に、前記真空槽に反応性ガスを供給する反応性ガス供給装置を備えた請求項1または2に記載のスパッタ装置。
  4. 更に、前記長尺フィルムを供給するフィルム供給機構と、前記長尺フィルムを収納するフィルム収納機構を備えた請求項1〜3のいずれかに記載のスパッタ装置。
  5. 前記スパッタガス供給装置、および、前記反応性ガス供給装置を、それぞれ複数備えた請求項3または4に記載のスパッタ装置。
  6. 前記円筒型回転ターゲットを複数備えた請求項1〜5のいずれかに記載のスパッタ装置。
  7. 前記複数の円筒型回転ターゲットが複数のグループに分類され、前記グループ毎に前記スパッタガスおよび前記反応性ガスの、種類および圧力が異なる請求項3〜6のいずれかに記載のスパッタ装置。
  8. 前記成膜ロールを複数備えた請求項1〜7のいずれかに記載のスパッタ装置。
  9. 前記スパッタガスがアルゴンガスであり、前記反応性ガスが酸素ガスである請求項3〜8のいずれかに記載のスパッタ装置。
  10. 請求項1〜9に記載のいずれかのスパッタ装置を用いて、長尺フィルムにITO(Indium Tin Oxideインジウム錫酸化物)膜を形成する、ITO膜付長尺フィルムの製造方法。
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