JP6366333B2 - 抵抗溶接性、耐食性、成形性に優れる自動車用塗装金属板 - Google Patents

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Description

本発明は、耐チッピング性を有し、抵抗溶接性、耐食性、成形性に優れる自動車用塗装金属板に関する。
以下、本発明の背景技術について説明する。
自動車車体用部材の多くは、鋼板等の金属板を素材とし、[1]金属板を所定のサイズに切断するブランク工程、[2]金属板を油で洗浄する油洗工程、[3]ブランクをプレス成形する工程、[4]成形材をスポット溶接や接着等で所望形状の部材に組み立てる接合工程、[5]部材表面のプレス油を脱脂及び洗浄する工程、[6]化成処理工程、[7]電着塗装工程という多くの工程を経て製造される。外板として使われる車体用部材は、更に、[8]中塗り工程、[9]上塗り工程等の塗装工程を経るのが一般的である。従って、自動車業界では、製造工程、特に化成処理工程や塗装工程の省略や簡略化によるコスト削減のニーズが高い。
これらのニーズに応え、自動車製造時の化成処理工程の省略、電着塗装工程の省略や簡略化、副資材の省略や削減のために、自動車車体用部材に塗装金属板(プレコート金属板)を用いることが従来から検討されている。
自動車車体用部材に要求される重要な性能の一つは、耐チッピング性である。チッピングは、自動車の走行時に跳ね上げられた石等が、車体に衝突し、その際塗膜およびめっき皮膜が破壊され、剥離する現象をいう。この現象は、寒冷地域で重要な問題となっており、低温チッピング現象といわれる。寒冷地域では、塗膜は低温にさらされ、縮もうとする内部応力が働いている。塗膜に、石跳ね等の衝撃が加わると、塗膜が損傷するだけでなく、その下にあるめっき皮膜が損傷し、さらにはめっき皮膜と鋼板の界面にまで亀裂が生じることがある。これは、めっき皮膜に塗膜の内部応力が作用するためであると考えられている。このようなめっき皮膜の剥離部は、直ちに耐食性の低下につながり、自動車車体塗膜系の大きな問題点である。
自動車車体用部材のチッピング対策として、従来行われているのは、電着塗膜と中塗り塗膜との間にチッピングプライマーを挿入することである。チッピングプライマーの目的は、クッション層として機能することにより、石の衝突時の塗膜への衝撃を緩和することである。したがって、チッピングプライマーの性質としては、塗膜の弾性が高いこと、塗膜の伸び率が大きく塗膜強度が高いことが求められている。
一方、上述したように、自動車業界では、製造工程、特に塗装工程の省略や簡略化によるコスト削減のニーズが高く、チッピングプライマー塗布のような付属の工程を省略できる、自動車車体塗膜系が求められている。
例えば、特許文献1(特開2003−245605公報)、特許文献2(特開2005−15516号公報)には、中塗り塗膜中にチッピングの衝撃を吸収するゴム粒子を含有させて、耐チッピング性を付与して、チッピングプライマーを塗布しない積層塗膜の形成方法が記載されている。
特許文献3(特開2005−23303号公報)には、中塗り塗膜中に、オレフィン系重合体とアクリル系重合体を同一粒子内に含有する特定の樹脂粒子を含有させて、耐チッピング性を付与して、チッピングプライマーを塗布しない積層塗膜の形成方法が記載されている。
特許文献4(特開2003−253211号公報)には、塗膜形成性樹脂、硬化剤、着色顔料、タルク及びシランカップリング剤からなる、耐チッピング性を有する水性中塗り塗料組成物が開示されている。
特許文献1〜4はいずれも、自動車用鋼板に、電着塗料などの下塗り塗料を塗布した後に、積層される中塗り層に耐チッピング性を付与して、チッピングプライマーを省略することを目的としている。これに対して、自動車車体用部材に、塗装金属板を用い、この塗装金属板の塗膜自体に耐チッピング性を付与して、チッピングプライマーを省略する自動車車体塗膜系は未だない。
特開2003−245605号公報 特開2005−15516号公報 特開2005−23303号公報 特開2003−253211号公報
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、耐チッピング性を有し、且つ抵抗溶接性、耐食性、成形性に優れる自動車用塗装金属板に関する。
本発明者らは、前記のような目的を達成するため鋭意研究を行った結果、従来のチッピングプライマーが、高い弾性、大きな伸び率による高い塗膜強度を有してクッション層としての役割を果たすことにより、石跳ね等の衝撃を吸収していたことに対して、塗装金属板の塗膜の硬度を従来より高くし、伸び率を小さくして敢えて塗膜に脆性を与えて、石跳ね等の衝撃を受けた際に、この塗膜が砕けることにより塗膜の内部応力のめっき皮膜への伝播を防止しめっき皮膜の剥離を抑制する技法を見出した。
また、上記の抑制の結果、限定されためっき皮膜の露出や、めっき皮膜の剥離による下地金属の露出など、金属の露出が生じた箇所については、塗膜に含まれる防錆顔料の作用により金属表面の溶出や錆の発生を抑制する技術を見出した。このような耐チッピング性を付与した塗装金属板は、プレス成形され、スポット溶接等で所望の形状に組み立てられる。そのため、塗膜に耐チッピング性を付与すると同時に、プレス成形性を高め、抵抗溶接ができるように塗膜を導電化し、かつ、十分な耐食性を付与する必要がある。
本発明は、具体的には、以下の通りである。
(1) 金属板、および前記金属板の少なくとも一方の表面上にある塗膜(α)を含む自動車用塗装金属板であって、
前記塗膜(α)が、有機樹脂(A)と、導電性顔料(B)と、防錆顔料(C)とを含み、−20℃における微小マルテンス硬度HMが300N/mm 〜1000N/mm であり、25℃での引張り伸び率が0.1%〜10%である自動車用塗装金属板。
(2) 前記有機樹脂(A)が、−20℃での引っ張り伸び率が0.5%〜50%、およびガラス転移温度が0℃〜60℃の有機樹脂であり、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、またはそれらの変性体から選ばれる少なくとも1種である(1)に記載の自動車用塗装金属板。
(3) 前記有機樹脂(A)がポリウレタン樹脂である(2)に記載の自動車用塗装金属板。
(4) 前記ポリウレタン樹脂が、芳香族を有するポリエステルポリオールと、イソシアネートを含むウレタンプレポリマーを、水またはアミン化合物により鎖伸長したポリウレタンである(3)に記載の自動車用塗装金属板。
(5) 前記ポリウレタン樹脂の硬化剤が、メラミンである(3)又は(4)に記載の自動車用塗装金属板。
(6) 前記導電性顔料(B)が、ホウ化物、炭化物、窒化物、ケイ化物の少なくとも1種から選ばれる、25℃の電気抵抗率が0.1×10-6〜185×10-6Ωcmの非酸化物セラミックス粒子である(1)〜(5)のいずれかに記載の自動車用塗装金属板。
(7) 前記防錆顔料(C)が、珪酸イオン、燐酸イオン、バナジン酸イオン、タングステン酸イオン、モリブデン酸イオンを放出できる化合物、および金属酸化物微粒子(D)から選ばれる1種または2種以上を含む、(1)〜(6)のいずれかに記載の自動車用塗装金属板。
(8) 前記金属酸化物微粒子(D)が、Si、Ti、Al、Zrからなる群より選ばれる1種または2種以上の金属元素を含む、(7)に記載の自動車用塗装金属板。
(9) 前記金属酸化物微粒子(D)のうち、一次粒径が0.5〜60nmの粒子が前記塗膜(α)中に0.2〜50容量%含有される、(8)に記載の自動車用塗装金属板。
(10) 前記金属酸化物微粒子(D)のうち、一次粒径が200nm〜10μmの粒子が前記塗膜(α)中に15〜60容量%含有される、(9)に記載の自動車用塗装金属板。
(11) 前記塗膜(α)の平均膜厚が0.5〜15μmである、(1)〜(10)のいずれかに記載の自動車用塗装金属板。
(12) 前記塗膜(α)が水系塗装用組成物の塗布により形成されている、(1)〜(11)のいずれかに記載の自動車用塗装金属板。
(13) (1)〜(12)のいずれかに記載の自動車用塗装金属板を加工、成形して形成された自動車部品。
(14) さらに電着塗膜層、中塗り塗膜層、上塗り塗膜層のうちいずれか一層以上を塗布して形成された(13)に記載の自動車部品。
本発明の自動車用塗装金属板は、塗膜それ自体が耐チッピング性を有しているので、この塗装金属板を自動車部品に加工、成形した後の塗装工程において、チッピングプライマーの塗布工程を設ける必要が無い。また、塗膜が、特定の導電性粒子と防錆顔料を含有しているので、十分な抵抗溶接性、耐食性に優れる自動車用塗装金属板を提供することができる。
図1は、チッピングプライマーを有する従来の自動車塗膜構成の断面の模式図を表す。 図2は、自動車車体用部材に飛来物が衝突し、金属板の表面が露出した際の塗膜断面の模式図を表す。 図3は、本発明の自動車用塗装金属板を用いた自動車車体用部材に飛来物が衝突して金属板が露出し、その後水に濡れて塗膜(α)から溶出した防錆成分が露出した金属板表面で反応することで保護性の皮膜を形成した際の塗膜断面の模式図を表す。 図4は、塗膜(α)の物性が本発明の範囲に適合していない自動車用塗装金属板を用いた自動車車体用部材に飛来物が衝突した際に、塗膜(α)が本発明例のごとく砕けて分断されないために大きい内部応力がめっき層に作用して大きく剥離し、金属板表面の露出が大きいので、その後水に濡れても塗膜(α)からの防錆成分による保護性の皮膜に金属板表面が十分には覆われない際の塗膜断面の模式図を表す。 図5は、下地処理がある場合の本発明の自動車用塗装金属板の断面の模式図を表す。 図6は、下地処理がない場合の本発明の自動車用塗装金属板の断面の模式図を表す。
以下、本発明について詳細に説明する。
<金属板>
本発明の塗装金属板は、特定の導電性塗膜で表面の少なくとも一部が被覆されためっき皮膜つき金属板である。当該金属板は、用途に応じ、金属板の両面が塗膜で被覆されていても、片面のみが被覆されていてもよく、また、表面の一部が被覆されていても、全面が被覆されていてもよい。金属板の塗膜で被覆された部位は抵抗溶接性、耐食性、成形性が優れるものである。
本発明の塗装金属板に用いることができるめっき皮膜つき金属板の構成金属としては、例えば、アルミニウム、チタン、亜鉛、銅、ニッケル、そして鋼等を含むことができる。これらの金属の成分は特に限定されず、例えば、鋼を使用する場合には、普通鋼であっても、クロム等の添加元素含有鋼であってもよい。ただし、本発明の金属板はプレス成形されるため、いずれの金属板の場合も、所望の成形加工追従性を備えるように、添加元素の種類と添加量、および金属組織を適正に制御したものが好ましい。
また、金属板として鋼板を使用する場合、その表面めっき皮膜のめっき皮膜の種類は特に限定されない。適用可能なめっき皮膜としては、例えば、亜鉛、アルミニウム、コバルト、錫、ニッケルのうちのいずれか1種を含むめっき、および、これらの金属元素やさらに他の金属元素、非金属元素を含む合金めっき等が挙げられる。特に、亜鉛系めっき皮膜としては、例えば、亜鉛からなるめっき、亜鉛と、アルミニウム、コバルト、錫、ニッケル、鉄、クロム、チタン、マグネシウム、マンガンの少なくとも1種との合金めっき、または、さらに他の金属元素、非金属元素を含む種々の亜鉛系合金めっき(例えば、亜鉛と、アルミニウム、マグネシウム、シリコンの4元合金めっき)が挙げられるが、亜鉛以外の合金成分は特に限定されない。さらには、これらのめっき皮膜に少量の異種金属元素または不純物としてコバルト、モリブデン、タングステン、ニッケル、チタン、クロム、アルミニウム、マンガン、鉄、マグネシウム、鉛、ビスマス、アンチモン、錫、銅、カドミウム、ヒ素等を含有したもの、シリカ、アルミナ、チタニア等の無機物を分散させたものが含んでもよい。
アルミニウム系めっき皮膜としては、アルミニウム、またはアルミニウムとシリコン、亜鉛、マグネシウムの少なくとも1種との合金めっき(例えば、アルミニウムとシリコンの合金めっき、アルミニウムと亜鉛の合金めっき、アルミニウム、シリコン、マグネシウムの3元合金めっき)等が挙げられる。
更に、前記めっきと他の種類のめっき、例えば鉄めっき、鉄と燐の合金めっき、ニッケルめっき、コバルトめっき等と組み合わせた複層めっきも適用可能である。
めっき皮膜の形成方法は特に限定されない。例えば、電気めっき、無電解めっき、溶融めっき、蒸着めっき、分散めっき等を用いることができる。めっき処理方法は、連続式、バッチ式のいずれでもよい。また、鋼板を使用する場合、めっき後の処理として、溶融めっき後の外観均一処理であるゼロスパングル処理、めっき皮膜の改質処理である焼鈍処理、表面状態や材質調整のための調質圧延等があり得るが、本発明においては特にこれらを限定されず、いずれを適用することも可能である。
<塗膜(α)>
本発明の金属板を被覆する塗膜(α)は、有機樹脂(A)と、導電性顔料(B)と、防錆顔料(C)とを含み、−20℃における微小マルテンス硬度HMが300N/mm 〜1000N/mm であり、25℃での引張り伸び率が0.1%〜10%である。
微小マルテンス硬度HM(N/mm は塗膜(α)の硬さ、引張り伸び率は塗膜(α)の変形しやすさを示す指標である。すなわち微小マルテンス硬度が高く引張り伸び率が低い塗膜は、外部からの衝撃を受けた場合に脆く分断されやすい。微小マルテンス硬度HM(N/mm は、フィッシャーインストルメンツ製、ナノインデンターHM500を用い、厚み10μm以上の塗膜において、押し込み深さを5μm以下に設定することで測定できる。厚み10μm未満の塗膜では、押し込み深さを塗膜厚みの1/5とすることで測定できるが、その場合は測定のばらつきが大きくなるので測定回数を適宜増やし、その平均値をもって測定値とする。
−20℃での測定は、塗膜を有する塗装金属板を保持する測定台をペルチェ素子にて冷却する機構を設けることで行った。引張り伸び率は、塗膜を形成する塗料を、到達温度200℃で加熱硬化することで膜厚15μmのフィルムを形成し、JISK7162に示すダンベル型試験片のうち1B形にて、エーアンドディー社製自動引張試験機RTG−1250を用いて測定した。本発明の実施例に記載する引張伸び率はいずれも、厚さ15μmの試験片を作製し測定した伸び率を記載する。
発明者は、自動車向けの電着塗装、中塗り塗装、上塗り塗装を施した塗膜つき金属板が低温での石跳ねを受けた際、石跳ねの衝撃により塗膜(α)が脆く破壊されて分断されやすい場合に、めっき層の剥離にまでいたる著しい傷つきが抑制されることを見出した。また、塗膜(α)の微小マルテンス硬度が高く、引張り伸び率が低い場合に、塗膜(α)が脆く破壊されて分断されやすいことを見出した。
塗膜(α)が脆く破壊されやすいと、石跳ねの衝撃が塗膜(α)の破壊によって吸収されるために、上塗り塗膜、中塗り塗膜、電着塗膜およびめっき皮膜に加わる衝撃が緩和され、全体としての破壊が小規模に抑制されると推測される。また、上塗り塗膜、中塗り塗膜、電着塗膜が破壊されて割れを生じ、これら塗膜の内部応力がめっき皮膜に伝わることでめっき皮膜の剥離が生じうる状況であっても、本発明の塗装金属板の塗膜(α)は破壊されやすいために、下のめっき皮膜にまではこの内部応力は伝わらず、その結果としてめっき皮膜の剥離は抑制されると推測される。
発明者の検討によれば、塗膜(α)の微小マルテンス硬度HMが−20℃で300N/mm 以上であり、25℃での引張り伸び率が10%以下の場合に、前記の効果を十分発揮する程度に塗膜(α)は硬く脆かった。HMが300N/mm 未満では石跳ねの衝撃を吸収する作用が小さいために傷つきを抑制する効果が不十分であった。引張り伸び率が10%超の場合は、塗膜(α)が石跳ねの衝撃によって破壊・分断されにくく、上塗り塗膜、中塗り塗膜、電着塗膜による内部応力がめっき皮膜に伝わってしまい、めっき皮膜の剥離を抑制する効果が不十分であった。なお、−20℃でのHMが1000N/mm を超える、あるいは25℃での引張り伸び率が0.1%未満となる樹脂を用いた塗膜(α)は、自動車部材製造プロセスでのプレス成型や折り曲げ等の加工を受けた際に容易に破壊・脱落することで所期の効果を発揮し得ない。
前記塗膜は、HM300N/mm 〜1000N/mm の−20℃における微小マルテンス硬度、0.1%〜10%の25℃での引張り伸び率が得られるものであれば、塗布溶剤の種類、および、金属板表面への製膜方法、硬化方法は限定されない。
塗膜(α)の微小マルテンス硬度は、一般的に、塗膜用組成物の、有機樹脂(A),硬化剤を適宜選択することによって、コントロールすることができる。
具体的には、樹脂骨格が例えば芳香環のような嵩高く樹脂鎖の変形を阻害する構造を含むこと、硬化剤の添加により樹脂鎖同士の架橋を促進すること、塗膜焼き付け温度の上昇や焼き付け時間の延長により硬化剤による架橋反応を強化すること、等の手法を用いることができる。
塗膜の伸び率も同様に、塗膜用組成物の、有機樹脂(A),溶剤及び硬化剤を適宜選択することによって、コントロールすることができる。
具体的には、微小マルテンス硬度のコントロールと同様に、樹脂骨格が例えば芳香環のような嵩高く樹脂鎖の変形を阻害する構造を含むこと、硬化剤の添加により樹脂鎖同士の架橋を促進すること、塗膜焼き付け温度の上昇や焼き付け時間の延長により硬化剤による架橋反応を強化すること、などの手法を用いることができる。
以下、本発明において塗膜(α)を得るための塗装用組成物を塗装用組成物(β)と記す。塗装用組成物(β)としては、水系塗装用組成物、有機溶剤系塗装用組成物が挙げられる。
本発明において、「水系塗装用組成物」とは、水が溶媒全体の50質量%以上である「水系溶媒」を用いて構成された組成物のことを言う。また、「有機溶剤系塗装用組成物」とは、有機溶剤が溶媒全体の50質量%以上である「有機溶剤系溶媒」を用いて構成された組成物のことを言う。
上記の「水系溶媒」の水以外の構成成分としては、例えば、水によく混和する硫酸、硝酸、塩酸、燐酸、硼酸、弗化水素酸等の無機酸、前記無機酸の金属塩やアンモニウム塩等の無機塩類のうち水に溶解するもの、水に溶解する珪酸塩、チオ硫酸塩、チオシアン酸塩等の無機化合物、及び、水に混和する有機化合物が挙げられる。また、必要に応じて、上記の「水系溶媒」に有機溶媒を加えることもできる。しかし、労働衛生上の観点から、本発明の「水系塗装用組成物」では、労働安全衛生法施行令(有機溶剤中毒予防規則第一章第一条)で定義される有機溶剤等(第1種有機溶剤、第2種有機溶剤、第3種有機溶剤、または、前記有機溶剤を、5質量%を超えて含有するもの)に該当しない塗装用組成物となるよう、有機溶媒の種類や添加量を調整することが好ましい。
金属板への製膜方法としては、例えば、水系や溶剤系塗装用組成物の場合は、ロールコート、グルーブロールコート、カーテンフローコート、ローラーカーテンコート、浸漬(ディップ)、エアナイフ絞り等の公知の塗装方法で金属板上に塗装用組成物(β)を塗布し、その後、ウェット塗膜の水分や溶剤を乾燥する方法が好ましい。これらの乾燥塗膜の硬化方法としては、塗膜中の有機樹脂の加熱焼付による重合、硬化が好ましいが、塗膜中の樹脂が紫外線で重合可能であれば、紫外線照射による重合又は硬化、塗膜中の樹脂が電子線で重合可能であれば、電子線照射による重合又は硬化によってもよい。
前記塗膜(α)の金属板への密着性や耐食性等を更に改善する目的で、該塗膜と金属板表面の間に下地処理皮膜を設けてもよい。下地処理皮膜を設ける場合は、その層の数、組成は限定されないが、金属板を成形加工する際の塗膜(α)の加工追従性や耐食性を損なわないよう、下地処理皮膜が、金属板と上層塗膜(α)への密着性に優れる必要がある。環境への適合性を考慮すれば、下地処理皮膜はクロメートフリーの構成が好ましい。また、皮膜厚方向の十分な導電性を確保するため、下地処理皮膜厚を0.5μm以下とするのが好ましい。
下地処理皮膜を設ける場合、工業的に適用できる製膜方法であれば、下地処理皮膜の製膜方法は限定されない。下地処理皮膜の製膜方法は、下地処理用組成物の塗装、蒸着、フィルム貼付等の方法を例示できるが、製膜コスト(生産性)や汎用性等の観点から、水系または溶剤系の下地処理用組成物の塗装、乾燥による方法が好ましい。水系または溶剤系の下地処理用組成物を用いる場合、下地処理皮膜を含めた複数の塗膜の最下層から最表面層まで1層毎に、塗り重ねと乾燥を繰返すこと(逐次塗装法)により複層塗膜を形成してもよい。また、簡便にかつ効率的に塗膜を金属板表面に形成する方法として、金属板表面に接する最下層から最表層までの各層の塗膜を、ウェット状態で、順次または同時に複層被覆する工程(塗装用組成物のウェット・オン・ウェット塗装または多層同時塗装工程)、ウェット状態の各層皮膜の水分や溶剤を同時に乾燥させる乾燥工程、前記複層塗膜を硬化する製膜工程をこの順序で含む積層方法で製膜してもよい。ここで、ウェット・オン・ウェット塗装法とは、金属板上に塗液を塗布後、この塗液が乾燥する前の含溶媒状態(ウェット状態)のうちに、その上に他の塗液を塗布し、得られる積層塗液の溶媒を同時に乾燥、硬化させ、製膜する方法である。また、多層同時塗装法とは、多層スライド式カーテンコーダーやスロットダイコーター等により、複数層の塗液を積層状態で同時に金属板上に塗布後、積層塗液の溶媒を同時に乾燥、硬化させ製膜する方法である。
本発明の金属板を被覆する塗膜(α)の平均の厚みは、0.5〜15μm厚の範囲が好ましく、2〜15μm厚の範囲がより好ましい。0.5μm未満の厚では、塗膜が薄すぎて、十分な衝撃吸収効果や耐食性が得られないことがある。塗膜厚が15μmを超えると、使用する塗装用組成物(β)の量が増えて製造コスト高になるだけでなく、プレス成形時に塗膜が凝集破壊したり剥離することがある。また、厚膜のため膜厚方向の電気的な絶縁性が高まり、抵抗溶接が困難になる。更に、水系塗装用組成物を用いた場合、ワキ等の塗膜欠陥が発生する可能性が高くなり、工業製品として必要な外観を安定して得ることが容易でない。
前記塗膜(α)の厚は、塗膜の断面観察等により測定できる。その他に、金属板の単位面積に付着した塗膜の質量を、塗膜の比重、または塗装用組成物(β)の乾燥後の比重で除算して算出してもよい。塗膜の付着質量は、塗装前後の質量差、塗装後の塗膜の剥離前後の質量差、または、塗膜を蛍光X線分析して予め塗膜中の含有量が分かっている元素の存在量を測定する等、既存の手法から適切に選択することができる。塗膜の比重または塗装用組成物(β)の乾燥後の比重は、単離した塗膜の容積と質量を測定する、適量の塗装用組成物(β)を容器に取り乾燥させた後の容積と質量を測定する、または、塗膜構成成分の配合量と各成分の既知の比重から計算する等、既存の手法から適切に選択することができる。
<有機樹脂(A)>
本発明の有機樹脂(A)は、塗膜(α)のバインダー成分であり、これを適宜選択することにより、本発明の自動車用塗装金属板の塗膜に必要な微小マルテンス硬度HM及び引張り伸び率を得ることができる。有機樹脂(A)は、水系、有機溶剤系樹脂のいずれでもよく、特に、後述する樹脂(A1)である。有機樹脂(A)は、更に追加して樹脂(A1)の反応誘導体(A2)を含むことができる。
本発明で塗膜(α)を形成するために用いる塗装用組成物(β)は、水系、有機溶剤系のいずれでも用いることができ、後述する樹脂(A1)を不揮発分の50〜100質量%含む。樹脂(A1)は、塗装用組成物(β)中で安定に存在している。このような塗装用組成物(β)を金属板に塗布し、加熱すると、多くの場合、樹脂(A1)が反応せずそのまま乾燥する。樹脂(A1)の少なくとも一部が、前記塗装用組成物(β)中にシランカップリング剤、硬化剤、架橋剤等を含む場合は、それらと反応して樹脂(A1)の誘導体(A2)を形成する。従って、この場合、未反応の樹脂(A1)と樹脂(A1)の反応誘導体(A2)を包含したものが、塗膜(α)のバインダー成分である有機樹脂(A)となる。
前記樹脂(A1)の種類としては特に限定されないが、必要な微小マルテンス硬度及び引張り伸び率を得るためには、例えば、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、またはそれらの変性体等を挙げることができる。これらの1種または2種以上を混合して前記樹脂(A1)として用いてもよいし、少なくとも1種の有機樹脂を変性することによって得られる有機樹脂を1種または2種以上混合して前記樹脂(A1)として用いてもよい。
前記樹脂(A1)としては、ポリウレタン樹脂、ポリウレタン樹脂変性体、ポリウレタン樹脂複合物、これらと他樹脂との混合物等を用いるのが好ましい。ポリウレタン樹脂中のウレタン基(-NHCOO-)は、他の多くの有機基に比べ高い分子凝集エネルギー(8.74kcal/mol)を持つため、樹脂(A1)中にポリウレタン樹脂が含まれていれば塗膜が強靭になり、プレス成形の際、塗膜の剥離やかじりが生じにくく、加えて、比較的高い凝集エネルギーにより腐食因子遮蔽性(塗膜の緻密性)が向上して耐食性を高める効果がある。ウレタン基以外の有機基、例えば、メチレン基(-CH2-)、エーテル基(-O-)、2級アミノ基(イミノ基、-NH-)、エステル基(-COO-)、ベンゼン環の分子凝集エネルギーは、それぞれ0.68kcal/mol、1.00kcal/mol、1.50kcal/mol、2.90kcal/mol、3.90kcal/molであり、ウレタン基(-NHCOO-)の分子凝集エネルギーは、これらに比べかなり高い。そのため、多くの場合、ポリウレタン樹脂を含む塗膜は、他の多くの樹脂、例えば、ポリエステル樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂等からなる塗膜よりも強靭で、かつ高耐食性である。
前記樹脂(A1)は、既に述べたように、必要な微小マルテンス硬度HM及び引張り伸び率が得られるものであれば、その種類に特に制限はない。樹脂(A1)の構造中に、カルボキシル基(−COOH)、カルボン酸塩基(−COO-+、M+は1価カチオン)、スルホン酸基(−SO3H)、スルホン酸塩基(−SO3 -+;M+は1価カチオン)、1級アミノ基(−NH2)、2級アミノ基(−NHR1;R1は炭化水素基)、3級アミノ基(−NR12;R1とR2は炭化水素基)、4級アンモニウム塩基(−N+123-;R1、R2、R3は炭化水素基、X-は1価アニオン)、スルホニウム塩基(−S+12-;R1、R2は炭化水素基、X-は1価アニオン)、ホスホニウム塩基−P+123-;R1、R2、R3は炭化水素基、X-は1価アニオン)から選ばれる少なくとも1種の官能基を構造中に含む樹脂であることが好ましい。これらの詳細や具体例については後述する。
なお、本発明において塗膜(α)を得るための塗装用組成物(β)に用いられる樹脂には、水や有機溶剤に完全溶解する水溶性や溶剤溶解型の樹脂、および、エマルションやサスペンジョン等の形態で水や溶剤中に均一に微分散している樹脂(水分散性樹脂や溶剤分散性樹脂)を含めることができる。またここで、「(メタ)アクリル樹脂」とはアクリル樹脂およびメタクリル樹脂を意味する。
前記樹脂(A1)のうち、ポリウレタン樹脂としては、例えば、ポリオール化合物とポリイソシアネート化合物とを反応させ、その後に更に鎖伸長剤によって鎖伸長して得られるもの等を挙げることができる。前記ポリオール化合物としては、1分子当たり2個以上の水酸基を含有する化合物であれば特に限定されず、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、1,6−へキサンジオール、ネオペンチルグリコール、トリエチレングリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリオール、ビスフェノールヒドロキシプロピルエーテル等のポリエーテルポリオール、ポリエステルアミドポリオール、アクリルポリオール、ポリウレタンポリオール、またはそれらの混合物が挙げられる。前記ポリイソシアネート化合物としては、1分子当たり2個以上のイソシアネート基を含有する化合物であれば特に限定されず、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)等の脂肪族イソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)等の脂環族ジイソシアネート、トリレンジイソシアネート(TDI)等の芳香族ジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)等の芳香脂肪族ジイソシアネート、またはそれらの混合物が挙げられる。前記鎖伸長剤としては、分子内に1個以上の活性水素を含有する化合物であれば特に限定されず、水またはアミン化合物を適用できる。アミン化合物としては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン等の脂肪族ポリアミンや、トリレンジアミン、キシリレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン等の芳香族ポリアミンや、ジアミノシクロヘキシルメタン、ピペラジン、2,5−ジメチルピペラジン、イソホロンジアミン等の脂環式ポリアミンや、ヒドラジン、コハク酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、フタル酸ジヒドラジド等のヒドラジン類や、ヒドロキシエチルジエチレントリアミン、2−[(2−アミノエチル)アミノ]エタノール、3−アミノプロパンジオール等のアルカノールアミン等が挙げられる。
水系ポリウレタン樹脂を得たい場合は、例えば、樹脂製造時に、前記ポリオール化合物の少なくとも一部をカルボキシル基含有ポリオール化合物に替え、ポリイソシアネート化合物と反応させて樹脂鎖にカルボキシル基を導入した後、カルボキシル基を塩基で中和し水系樹脂としたものを挙げることができる。あるいは、樹脂製造時に、前記ポリオール化合物の少なくとも一部を2級アミノ基または3級アミノ基を分子内に持つポリオール化合物に替え、ポリイソシアネート化合物と反応させて樹脂鎖に2級アミノ基または3級アミノ基を導入した後、酸で中和し水系樹脂としたものを挙げることができる。3級アミノ基を樹脂鎖に持つ場合は、3級アミノ基へのアルキル基導入により4級化し、4級アンモニウム塩基を持つ水系カチオン樹脂とすることもできる。これらの化合物は、単独で、または2種類以上の混合物で使用することができる。
このように、前記樹脂(A1)として用いることができるポリウレタン樹脂は分子構造中に芳香環を多く含むポリウレタン樹脂を用いるのが好ましい。このようなポリウレタン樹脂は、分子構造中に芳香環を持たない、あるいは芳香環が少ないポリウレタン樹脂よりガラス転移温度が高く、分子鎖が剛直で塗膜の変形への抵抗が強く、塗膜の伸び変形率が低いため、本発明で必要とされる塗膜(α)の硬さおよび脆さが、芳香環を持たない、あるいは芳香環が少ないポリウレタン樹脂と比較して高い。従って、樹脂製造に用いるポリオール化合物、ポリイソシアネート化合物、鎖伸長剤には特に制限がないが、芳香環を多く含む芳香脂肪族や芳香脂環族等の化合物を用いるのが好ましい。
前記樹脂(A1)のうち、ポリエステル樹脂としては、必要な微小マルテンス硬度及び引っ張り伸び率が得られるものであれば、特に限定されない。例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、1,6−へキサンジオール、ネオペンチルグリコール、トリエチレングリコール、ビスフェノールヒドロキシプロピルエーテル、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−エチル1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、2−メチル−1,4−ブタンジオール、2−メチル−3−メチル−1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノール-A、ダイマージオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール等のポリオールと、フタル酸、無水フタル酸、テトラヒドロフタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラフタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、無水コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、無水ハイミック酸、トリメリット酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸、無水ピロメリット酸、アゼライン酸、コハク酸、無水コハク酸、乳酸、ドデセニルコハク酸、ドデセニル無水コハク酸、シクロヘキサン−1,4−ジカルボン酸、無水エンド酸等の多価カルボン酸とを、脱水重縮合させたものを挙げることができる。更に、これらをアンモニアやアミン化合物等で中和し、水系樹脂としたもの等を挙げることができる。
前記樹脂(A1)のうち、エポキシ樹脂としては、必要な微小マルテンス硬度及び引っ張り伸び率が得られるものであれば、特に限定されない。例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、レゾルシン型エポキシ樹脂、水素添加ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水素添加ビスフェノールF型エポキシ樹脂、レゾルシン型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂をジエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン等のアミン化合物と反応させて得られる。更に、これらを有機酸または無機酸で中和、水系樹脂としたものや、前記エポキシ樹脂の存在下で、高酸価アクリル樹脂をラジカル重合した後、アンモニアやアミン化合物等で中和し水系化したもの等を挙げることができる。
前記樹脂(A1)のうち、(メタ)アクリル樹脂としては、必要な微小マルテンス硬度及び引っ張り伸び率が得られるものであれば、特に限定されない。例えば、エチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、アルコキシシラン(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステルを、(メタ)アクリル酸と共に水中で重合開始剤を用いてラジカル重合することにより得られるものを挙げることができる。前記重合開始剤は特に限定されず、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩、アゾビスシアノ吉草酸、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物等を使用することができる。ここで、「(メタ)アクリレート」とはアクリレートとメタクリレートを意味し、「(メタ)アクリル酸」とはアクリル酸とメタクリル酸を意味する。
前記樹脂(A1)のうち、ポリオレフィン樹脂としては、必要な微小マルテンス硬度及び引っ張り伸び率が得られるものであれば、特に限定されない。例えば、エチレンとメタクリル酸、アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸等の不飽和カルボン酸類とを高温高圧下でラジカル重合したものを挙げることができる。また、これらを更にアンモニアやアミン化合物、KOH、NaOH、LiOH等の塩基性金属化合物あるいは前記金属化合物を含有するアンモニアやアミン化合物等で中和し、水系樹脂としたもの等を挙げることができる。
前記樹脂(A1)は、1種または2種以上を混合して用いてもよい。また、前記塗装用組成物(β)の主成分として、少なくとも1種の樹脂(A1)の存在下で、少なくともその一部の樹脂(A1)を変性することによって得られる複合樹脂の1種または2種以上を総括して樹脂(A1)として用いてもよい。
更に、必要に応じ、本発明の塗膜に必要な微小マルテンス硬度及び引っ張り伸び率を得るために、前記樹脂(A1)を含む塗装用組成物(β)を調合する際、以下に詳細に述べるが、前記樹脂(A1)の硬化剤や架橋剤を添加しても良いし、樹脂構造中に架橋剤を導入してもよい。前記架橋剤としては、例えば、アミノ樹脂、ポリイソシアネート化合物、ブロック化ポリイソシアネート、エポキシ化合物、カルボジイミド基含有化合物等からなる群から選択される少なくとも1種の架橋剤が挙げられる。これらの架橋剤を配合することで、微小マルテンス硬度を高め、引張り伸び率を小さくすることができ、また、塗膜(α)の架橋密度を高めると同時に、金属表面への密着性を高めることができ、耐食性や、加工時の塗膜追従性が向上する。これらの架橋剤は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記アミノ樹脂としては、例えば、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、尿素樹脂、グリコールウリル樹脂等を挙げることができる。
前記ポリイソシアネート化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート等を挙げることができる。また、ブロック化ポリイソシアネートは、前記ポリイソシアネート化合物のブロック化物である。
前記エポキシ化合物は、3員環の環状エーテル基であるエポキシ基(オキシラン環)を複数有する化合物であれば特に限定されず、例えば、アジピン酸ジグリシジルエステル、フタル酸ジグリシジルエステル、テレフタル酸ジグリシジルエステル、ソルビタンポリグルシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、グリセリンポリグリシジルエーテル、トリメチルプロパンポリグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールポリグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、2,2−ビス−(4’−グリシジルオキシフェニル)プロパン、トリス(2,3−エポキシプロピル)イソシアヌレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水素添加ビスフェノールAジグリシジルエーテル等を挙げることができる。これらのエポキシ化合物の多くは、エポキシ基に1基の−CH2−が付加したグリシジル基を持つため、化合物名の中に「グリシジル」という語を含む。
前記カルボジイミド基含有化合物としては、例えば、芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート等のジイソシアネート化合物の脱二酸化炭素を伴う縮合反応により、イソシアネート末端ポリカルボジイミドを合成した後、更にイソシアネート基との反応性を有する官能基を持つ親水系セグメントを付加した化合物等を挙げることができる。
これらの架橋剤の量は、塗膜(α)を形成するための樹脂(A1)100質量部に対して1〜40質量部が好ましい。1質量部未満の場合、添加量が不十分で添加した効果が得られない可能性があり、40質量部を超える量では過剰硬化で塗膜が脆くなり、耐食性や、成形時の加工追従性が低下する可能性がある。
前記有機樹脂(A)は、硬化剤で硬化された樹脂であることが好ましい。前記硬化剤は、前記有機樹脂(A)を硬化させるものであれば特に制限はない。前記樹脂(A1)の架橋剤として既に例示したものの中で、アミノ樹脂の1つであるメラミン樹脂やポリイソシアネート化合物から選択される少なくとも1種の架橋剤を前記硬化剤として用いるのがよい。
メラミン樹脂は、メラミンとホルムアルデヒドとを縮合して得られる生成物のメチロール基の一部または全部をメタノール、エタノール、ブタノールなどの低級アルコールでエーテル化した樹脂である。ポリイソシアネート化合物としては特に限定されない。例えば、前記樹脂(A1)の架橋剤として既に例示したヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート等を挙げることができる。また、そのブロック化物は、前記ポリイソシアネート化合物のブロック化物であるヘキサメチレンジイソシアネートのブロック化物、イソホロンジイソシアネートのブロック化物、キシリレンジイソシアネートのブロック化物、トリレンジイソシアネートのブロック化物等を挙げることができる。これらの硬化剤は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記硬化剤の含有量は、前記有機樹脂(A)の5〜35質量%であることが好ましい。5質量%未満であると、焼付硬化が不十分で、耐食性、耐傷付き性が低下する場合があり、35質量%超であると、焼付硬化が過剰になり、耐食性、加工性が低下する場合がある。
<有機樹脂(A)の−20℃での引張り伸び率>
有機樹脂(A)の−20℃での引張り伸び率は、0.5%〜50%であることが好ましい。−20℃での引張り伸び率は、塗膜を形成する有機樹脂を、到達温度200℃で加熱硬化することで膜厚15μmのフィルムを形成し、JISK7162に示すダンベル型試験片のうち1B形にて、フィルム及びフィルムつかみ部を冷却できるチャンバーを備えた、エーアンドディー社製自動引張試験機RTG−1250を用いて測定した。−20℃は、低温チッピング現象が問題となる環境温度に近く、この温度での樹脂物性は低温チッピング現象との関連が強い。50%を超える引張り伸び率では塗膜(α)に求められる、石跳ね衝突時のもろさが不十分で、塗膜が傷ついた際にその内部応力をめっき皮膜に伝えてしまい、めっき皮膜の大きな剥離につながりやすい。−20℃の引張り伸び率の下限は特に定めるところではないが、0.5%を下回ると常温で変形性も過度に低く、折り曲げやプレス成型などの工程で塗膜が剥離・脱落して不具合を生じる。
<有機樹脂(A)のガラス転移温度Tg>
前記有機樹脂(A)のガラス転移温度Tgは0℃〜60℃であることが好ましい。ガラス転移温度Tgは、塗膜を形成する有機樹脂を、到達温度200℃で加熱硬化することで膜厚15μmのフィルムを形成し、示差走査熱量計(DSC)のピーク温度又は動的粘弾性測定機装置での転移温度として測定することができる。Tgは0℃以上であることが好ましい。0℃よりもTgの低い樹脂は、柔軟性が高く低温チッピング現象を抑制することができない。例えば、低温チッピング現象が問題となる−20℃の温度でも柔軟性があり、塗膜のもろさが不十分で、塗膜が傷ついた際にその内部応力をめっき皮膜に伝えてしまい、めっき皮膜の大きな剥離につながりやすい。Tgの上限は特に定めるところではないが、60℃を超えるTgを有する有機樹脂は、工業的に安価に入手しにくい。
<導電性顔料(B)>
導電性顔料(B)としては、金属、合金、導電性炭素、燐化鉄、炭化物、半導体酸化物の中から選ばれる1種以上を用いることが好ましい。例えば、亜鉛、ニッケル、鉄、アルミニウム、コバルト、マンガン、銅、錫、クロムなどの金属またはそれらの合金粉末、導電性カーボン、黒鉛粉末などの導電性炭素粉末、燐化鉄粉末、炭化チタン、炭化ケイ素などの炭化物粉末、導電性半導体粉末、セラミクス粒子等を挙げることができる。これらの中でも、本発明の塗装金属板においては、非酸化物セラミクス粒子が、特に好ましい。
非酸化物セラミクス粒子を用いた場合、塗膜(α)を得るための塗装用組成物(β)が水系組成物の場合でも、これらの非酸化物セラミクス粒子は組成物中で劣化せず、高い導電能を恒久的に保持する。そのため、水分により劣化する導電性粒子、例えば、卑な金属粒子やフェロシリコン粒子等に比べ、優れた抵抗溶接性を非常に長い期間保持できる。
本発明の塗膜(α)に含まれる非酸化物セラミクス粒子を構成する非酸化物セラミクスは、25℃の電気抵抗率(体積抵抗率、比抵抗)が0.1×10-6〜185×10-6Ωcmの範囲にあるホウ化物セラミクス、炭化物セラミクス、窒化物セラミクス、またはケイ化物セラミクスである。ここでいう非酸化物セラミクスとは、酸素を含まない元素や化合物からなるセラミクスのことである。また、ここでいうホウ化物セラミクス、炭化物セラミクス、窒化物セラミクス、ケイ化物セラミクスとは、それぞれ、ホウ素B、炭素C、窒素N、ケイ素Siを主要な非金属構成元素とする非酸化物セラミクスのことである。これらのうち、25℃の電気抵抗率が0.1×10-6Ωcm未満のものは見当たらない。また、非酸化物セラミクスの25℃の電気抵抗率(体積抵抗率、比抵抗)が185×10-6Ωcmを超える場合、樹脂塗膜に十分な導電性を付与するために塗膜への多量添加が必要となり、本発明の塗装金属板をプレス成形する際に著しい塗膜剥離やかじりが生じ、耐食性が低下するため不適である。
本発明の塗膜(α)に含まれる非酸化物セラミクス粒子は、高い導電性を有するため、樹脂塗膜に十分な導電性を付与するための添加量がより少量でよく、その結果、塗装金属板の耐食性や成形性への悪影響がより少なくなる。なお、参考までに、純金属の電気抵抗率は1.6×10-6Ωcm(Ag単体)〜185×10-6Ωcm(Mn単体)の範囲にあり、本発明で導電性粒子として用いる非酸化物セラミクス(電気抵抗率0.1×10-6〜185×10-6Ωcm)は、純金属と同程度の優れた導電性を持つことがわかる。
本発明に用いることができる非酸化物セラミクスとしては、以下を例示できる。即ち、ホウ化物セラミクスとしては、周期律表のIV族(Ti、Zr、Hf)、V族(V、Nb、Ta)、VI族(Cr、Mo、W)の各遷移金属、Mn、Fe、Co、Ni、希土類元素、またはBe、Mg以外のアルカリ土類金属(Ca、Sr、Ba)のホウ化物を例示できる。
但し、Beのホウ化物のうち25℃に於ける電気抵抗率が185×10-6Ωcmを超えるもの(例えば、Be2B、BeB6等)は、導電性能が十分でないため本発明への適用には不適である。また、Mgのホウ化物(Mg32、MgB2等)は水や酸に対し不安定なため、本発明への適用には不適である。
炭化物セラミクスとしては、IV族、V族、VI族の各遷移金属、Mn、Fe、Co、Niの炭化物を例示できる。ただし、湿潤雰囲気下で加水分解する恐れのある、希土類元素やアルカリ土類金属の炭化物(例えば、YC2、LaC2、CeC2、PrC2、Be2C、Mg23、SrC2等)は、本発明への適用には不適である。
窒化物セラミクスとしては、IV族、V族、VI族の各遷移金属、またはMn、Fe、Co、Niの窒化物を例示できる。ただし、湿潤雰囲気下で加水分解する恐れのある、希土類元素やアルカリ土類金属の窒化物(例えば、LaN、Mg32、Ca32等)は本発明への適用には不適である。ケイ化物セラミクスとしては、IV族、V族、VI族の各遷移金属、またはMn、Fe、Co、Niのケイ化物を例示できる。ただし、湿潤雰囲気下で水と反応し水素を発生する恐れのある、希土類元素やアルカリ土類金属のケイ化物(例えば、LaSi、Mg2Si、SrSi2、BaSi2等)は、本発明への適用には不適である。
更に、これらホウ化物、炭化物、窒化物、ケイ化物から選ばれる2種以上の混合物、または、これらのセラミクスを金属の結合材と混合して焼結したサーメット等を例示できる。
塗膜(α)を水系塗装用組成物から作製する場合は、サーメットの一部を構成する金属の標準電極電位は−0.3V以上で耐水劣化性であることが好ましい。サーメットの一部を構成する金属の標準電極電位が−0.3V未満の場合、このサーメット粒子が水系塗装用組成物中に長期間存在すると、粒子の表面に錆層や厚い酸化絶縁層が生じ、粒子の導電性が失われる恐れがあるからである。耐水劣化性のサーメット粒子の例としては、WC-12Co、WC-12Ni、TiC-20TiN-15WC-10Mo2C-5Ni等が挙げられる。Co、Niの標準電極電位はそれぞれ−0.28V、−0.25Vでいずれも−0.3Vより貴であり、いずれの金属も耐水劣化性である。
前記の非酸化物セラミクスのうち、Cr系セラミクス(CrB、CrB2、Cr32、Cr2N、CrSi等)は環境負荷への懸念から、また、Hf系セラミクス(HfB2、HfC、HfN等)、Tbより重希土側の希土類元素系のセラミクスの多くは高価格であり、また市場に流通していないため、本発明においては、上記の群からこれらを除いた非酸化物セラミクス、または、これらから選ばれる2種以上の混合物を用いるのが好ましい。
更に、工業製品の有無や国内外市場での安定流通性、価格、電気抵抗率等の観点から、以下の非酸化物セラミクスがより好ましい。即ち、BaB6(電気抵抗率77×10-6Ωcm)、CeB6(同30×10-6Ωcm)、Co2B(同33×10-6Ωcm)、CoB(同76×10-6Ωcm)、FeB(同80×10-6Ωcm)、GdB4(同31×10-6Ωcm)、GdB6(同45×10-6Ωcm)、LaB4(同12×10-6Ωcm)、LaB6(同15×10-6Ωcm)、Mo2B(同40×10-6Ωcm)、MoB(同35×10-6Ωcm)、MoB2(同45×10-6Ωcm)、Mo25(同26×10-6Ωcm)、Nb32(同45×10-6Ωcm)、NbB(同6.5×10-6Ωcm)、Nb34(同34×10-6Ωcm)、NbB2(同10×10-6Ωcm)、NdB4(同39×10-6Ωcm)、NdB6(同20×10-6Ωcm)、PrB4(同40×10-6Ωcm)、PrB6(同20×10-6Ωcm)、SrB6(同77×10-6Ωcm)、TaB(同100×10-6Ωcm)、TaB2(同100×10-6Ωcm)、TiB(同40×10-6Ωcm)、TiB2(同28×10-6Ωcm)、VB(同35×10-6Ωcm)、VB2(同150×10-6Ωcm)、W25(同80×10-6Ωcm)、YB4(同29×10-6Ωcm)、YB6(同40×10-6Ωcm)、YB12(同95×10-6Ωcm)、ZrB2(同60×10-6Ωcm)、MoC(同97×10-6Ωcm)、Mo2C(同100×10-6Ωcm)、Nb2C(同144×10-6Ωcm)、NbC(同74×10-6Ωcm)、Ta2C(同49×10-6Ωcm)、TaC(同30×10-6Ωcm)、TiC(同180×10-6Ωcm)、V2C(同140×10-6Ωcm)、VC(同150×10-6Ωcm)、WC(同80×10-6Ωcm)、W2C(同80×10-6Ωcm)、ZrC(同70×10-6Ωcm)、Mo2N(同20×10-6Ωcm)、Nb2N(同142×10-6Ωcm)、NbN(同54×10-6Ωcm)、ScN(同25×10-6Ωcm)、Ta2N(同135×10-6Ωcm)、TiN(同22×10-6Ωcm)、ZrN(同14×10-6Ωcm)、CoSi2(同18×10-6Ωcm)、Mo3Si(同22×10-6Ωcm)、Mo5Si3(同46×10-6Ωcm)、MoSi2(同22×10-6Ωcm)、NbSi2(同6.3×10-6Ωcm)、Ni2Si(同20×10-6Ωcm)、Ta2Si(同124×10-6Ωcm)、TaSi2(同8.5×10-6Ωcm)、TiSi(同63×10-6Ωcm)、TiSi2(同123×10-6Ωcm)、V5Si3(同115×10-6Ωcm)、VSi2(同9.5×10-6Ωcm)、W3Si(同93×10-6Ωcm)、WSi2(同33×10-6Ωcm)、ZrSi(同49×10-6Ωcm)、ZrSi2(同76×10-6Ωcm)、または、これらから選ばれる2種以上の混合物を用いるのが好ましい。
これらの中でも、25℃の電気抵抗率が0.1×10-6〜100×10-6Ωcmにある、非酸化物セラミクスが、特に好ましい。何故なら、これらは、25℃の電気抵抗率が100×10-6Ωcmを超え185×10-6Ωcmまでの範囲にある非酸化物セラミクスより高い導電性を有するため、樹脂塗膜に十分な導電性を付与するための粒子添加量がより少ない量でよく、塗膜を貫通する腐食電流の導通路が僅かしか形成されず、耐食性が殆ど低下しないからである。また、粒子添加が少量のためプレス成形時に塗膜剥離やかじりを誘発することなく、成形性が殆ど低下しないからである。
前記の非酸化物セラミクスの括弧内に付記した電気抵抗率は、それぞれ、工業用素材として販売され使用されているものの代表値(文献値)である。これらの電気抵抗率は、非酸化物セラミクスの結晶格子に入り込んだ不純物元素の種類や量により増減するため、本発明での使用に際しては、例えば、(株)三菱化学アナリテック製の抵抗率計ロレスタEP(MCP-T360型)とESPプローブ(端子の平頭部の直径2mm)を用いた4端子4探針法、定電流印加方式で、JIS K7194に準拠して25℃の電気抵抗率を実測し、0.1×10-6〜185×10-6Ωcmの範囲にあることを確認してから使用すればよい。
前記導電性顔料(B)の粒子形状は、球状粒子、または、擬球状粒子(例えば楕円球体状、鶏卵状、ラグビーボール状等)や多面体粒子(例えばサッカーボール状、サイコロ状、各種宝石のブリリアントカット形状等)のような、球に近い形状が好ましい。細長い形状(例えば棒状、針状、繊維状等)や平面形状(例えばフレーク状、平板状、薄片状等)のものは、塗装過程で塗膜面に平行に配列したり、塗装用基材である金属板(金属面に下地処理がある場合は下地処理層)と塗膜の界面付近に沈積したりして、塗膜の厚方向を貫く有効な通電路を形成しにくいため、本発明の用途に適さない。
前記導電性顔料(B)の平均粒子径は特に限定しないが、本発明の塗装用組成物(β)中にて、体積平均径が0.2〜20μmの粒子で存在するのが好ましく、体積平均径が0.5〜12μmの粒子で存在するのがより好ましく、体積平均径が1〜8μmの粒子で存在するのが特に好ましい。これらの体積平均径を持つ分散粒子は、塗装用組成物(β)の製造工程、保管・運搬時や、塗装用基材である金属板(金属面に下地処理がある場合は下地処理層)への塗装工程等にて、塗装用組成物(β)中で安定に存在すれば、単一粒子であっても、複数の単一粒子が強く凝集した二次粒子であってもよい。塗装用組成物の基材への塗装工程にて、塗膜の乾燥、製膜の際に前記(B)粒子が凝集し、塗膜中での体積平均径が大きくなっても差支えない。
なお、ここで言う体積平均径とは、粒子の体積分布データから求めた体積基準の平均径のことである。これは、一般に知られているどのような粒子径分布測定方法を用いて求めても良いが、コールター法(細孔電気抵抗法)により測定される球体積相当径分布の平均値を用いるのが好ましい。何故なら、コールター法は、他の粒子径分布測定方法(例えば、(a)レーザー回折散乱法で得た体積分布から算出する、(b)画像解析法で得た円面積相当径分布を体積分布に換算する、(c)遠心沈降法で得た質量分布から算出する、等)に比べ、測定機メーカーや機種による測定値の違いが殆どなく、正確で高精度な測定ができるからである。コールター法では、電解質水溶液中に被験粒子を懸濁させ、ガラス管の細孔に一定の電流を流し、陰圧により粒子が細孔を通過するように設定する。粒子が細孔を通過すると、粒子が排除した電解質水溶液の体積(=粒子の体積)によって、細孔の電気抵抗が増加する。一定電流を印加すれば、粒子通過時の抵抗変化が電圧パルス変化に反映されるため、この電圧パルス高さを1個ずつ計測処理することにより、個々の粒子の体積を直接測定できる。粒子は不規則形状の場合が多いので、粒子と同一体積の球体を仮定し、その球体の径(=球体積相当径)に換算する。このようなコールター法による球体積相当径の測定方法は、よく知られており、例えば文献:ベックマン・コールター(株)インターネット公式サイト上のウェブページ〔http://www.beckmancoulter.co.jp/product/product03/Multisizer3.html(精密粒度分布測定装置 Multisizer3)〕に、詳細に記載されている。
体積平均径が0.2μm未満の非酸化物セラミクス粒子は、体積平均径がそれより大きな非酸化物セラミクス粒子より一般に高価で、工業製品として市場に流通しているものが少ない。また、比表面積が比較的大きいため、水系または有機溶剤系の塗装用組成物を調製する際、湿潤分散剤を用いても粒子表面全体を濡らし分散させるのが困難で、水や有機溶剤になじまない継粉(ままこ)、ダマが生じることが多いため、本発明では使用しない方がよい。また、体積平均径が20μmを超える非酸化物セラミクス粒子は、体積平均径がそれより小さな非酸化物セラミクス粒子より、水系または有機溶剤系の塗装用組成物中で速く沈降しやすい(ストークスの式により明らか)。従って、分散剤を工夫しても分散安定性を確保することが難しく、粒子が浮遊せず短時間で沈降し、凝集・固化し再分散が困難になる等の不具合を生じる場合があるため、本発明では使用しない方がよい。
前記塗膜(α)中に分散されている前記導電性顔料(B)の体積平均径をcμm、前記塗膜(α)の厚みをbμmとした時、0.5≦c/b≦1.5の関係を満足することが好ましい。図4は、本発明の自動車用塗装金属板の断面の模式図を表す。(A)は有機樹脂、(B)、(B’)は、導電性顔料、(C)は防錆顔料を表し、(γ)は金属板を表す。(B)は厚みに対する粒径の比c/bが0.5以上となっている粒子であり、この場合厚み方向の導電性は確保される。(B’)は、厚みに対する粒径の比c/bが0.5未満の粒子であり、この場合、導電性が十分に確保されない場合がある。厚みに対する粒径の比c/bが1.5を超えると、耐食性、プレス成形性が低下する場合がある。
入手可能な導電性顔料(B)は、一般的に、原料を粉砕し必要に応じて分級して所定の粒子径に調製されることが多いので、粒子径の異なる粒子が混合された粒径分布を有している。したがって、体積平均径が上述した粒径範囲中にあっても、その粒径分布によっては、溶接性に影響を与える。導電性顔料(B)のうち、それぞれの体積粒子径が0.25〜24μmの(B1)が、良好な溶接性に対してとくに効果を示す。
塗膜(α)中の導電性顔料(B)の25℃での含有量は、0.5〜65体積%であるのが好ましく、抵抗溶接時の電気導通性、成形性確保及び導電性顔料増加によるコスト増の観点から1〜40体積%であるのがより好ましく、2〜20体積%であるのが更に好ましい。十分な耐食性と成形性確保に加え、十分な抵抗溶接性も確保するとの観点から、4〜20体積%の範囲が特に好ましい。
本発明の塗装金属板において、塗膜(α)が良好な導電性を発現する理由は、塗膜(α)中で、導電性粒子である導電性顔料(B)が殆ど凝集することなく、塗膜面全体にわたって十分に均一に分散されており、下にある金属板への電気導通路が塗膜内に偏在していないからであると考えられる。導電性粒子が塗膜内で凝集をおこしていると、塗膜面全体にわたり均一に撒き散らされた状態の電気導通路が塗膜内に形成されにくく、塗膜内に、電気導通路が全くない抵抗溶接に支障を与える領域が生じやすい。そのような場合は、導通路を確保するためにより多くの導電材料を添加しなければならず、良好な耐食性と成形性を保持できなくなる可能性が高まる。本発明の塗装金属板では、そのような問題が生じる可能性が非常に低い。
塗膜(α)中の導電性顔料(B)の含有量が65体積%を超えると、十分な導電性を保持できるが、プレス成形時に塗膜剥離やかじりが生じやすくなり、良好な成形性を保持できず、塗膜剥離部位の耐食性が低下するおそれがある。また、65体積%を超えると、溶接性の向上効果が飽和するにもかかわらず導電性粒子のコストが高くなる。
なお、塗膜の0.5体積%以上、1体積%未満の導電性粒子添加では、抵抗溶接時の電気導通性が不十分になる可能性があり、また、塗膜の40体積%以上、65体積%以下の導電性粒子添加では、成形性とコスト適合性が不十分となることがあるため、導電性顔料(B)の体積比は1体積%以上、40体積%未満までの添加がより好ましい。また、塗膜の1体積%以上、2体積%未満の導電性粒子添加でも、抵抗溶接時の電気導通性がやや不十分になる可能性があり、また、塗膜の20体積%以上、40体積%未満の導電性粒子添加でも、成形性とコスト適合性がやや不十分となる可能性があるため、2体積%以上、20体積%未満までの添加が更に好ましい。しかし塗膜の2体積%以上、4体積%未満の導電性粒子添加では、抵抗溶接条件を大きく変えた場合、常に高く安定した溶接性を確保できなくなるおそれがあるため、4体積%以上、20体積%未満の添加が特に好ましい。
塗膜(α)中の導電性顔料(B)の含有量が0.5体積%未満の場合、塗膜中に分散する非酸化物セラミクス粒子の量が少ないため良好な導電性を確保できず、塗膜(α)の厚みによっては、塗膜に十分な抵抗溶接性を付与できないおそれがある。
<防錆顔料(C)>
本発明に用いる防錆顔料(C)の種類としては特に限定されないが、珪酸塩化合物、燐酸塩化合物、バナジン酸塩化合物、および金属酸化物微粒子(D)から選ばれる1種または2種以上を含むのが好ましい。
珪酸塩化合物、燐酸塩化合物、バナジン酸塩化合物は、塗装用組成物(β)や塗膜(α)中で、該組成物や塗膜中の水分、共存物質や基材面との接触、pHなどの環境変化に応じて、それぞれ、珪酸イオン、燐酸イオン、バナジン酸イオン、及びこれらのアニオンの対カチオン(例えば、アルカリ土類金属イオン、Znイオン、Alイオン等)を放出することができる。これらのイオンのうち、既に塗装用組成物(β)中に溶出していたイオンは、製膜時に塗膜(α)に取り込まれ、塗膜内での水分の増減、共存物質や基材面との接触、pH変化などに応じ、共存する他の原子や原子団と難溶性塩や酸化物の皮膜を形成し、腐食を抑制すると考えられる。また、塗膜(α)に取り込まれた珪酸塩化合物、燐酸塩化合物、バナジン酸塩化合物の場合も同様に、塗膜形成後の環境変化に応じ、上記のアニオン、カチオンを徐々に放出し、難溶性塩や酸化物の皮膜を形成し、腐食を抑制すると考えられる。上記の作用は、塗膜に傷がついて、金属板のめっき皮膜またはめっき下の下地金属が露出する場合にも、珪酸イオン、燐酸イオン、バナジン酸イオン、及びこれらのアニオンの対カチオンが放出されて露出しためっき皮膜または下地金属の表面に到達することで発揮される。同作用は、傷の程度が小さく抑制され、めっき皮膜または下地金属の露出面積が小さく限定される場合には、より効果的に発揮される。
本発明で用いることができる珪酸塩化合物としては、例えば、珪酸マグネシウム、珪酸カルシウム等のアルカリ土類金属の珪酸塩、珪酸リチウム、珪酸ナトリウム、珪酸カリウム等のアルカリ金属の珪酸塩、珪酸アルミニウム等が挙げられる。これらのうち、珪酸リチウム、珪酸ナトリウム、珪酸カリウムとしては、酸化ケイ素(SiO2)と酸化リチウム(Li2O)の構成モル比率が0.5≦(SiO2/Li2O)≦8である珪酸リチウム、酸化ケイ素(SiO2)と酸化ナトリウム(Na2O)の構成モル比率が0.5≦(SiO2/Na2O)≦4である珪酸ナトリウム、酸化ケイ素(SiO2)と酸化カリウム(K2O)の構成モル比率が0.5≦(SiO2/K2O)≦4である珪酸カリウム、及び、これらの珪酸塩の水和物を例示できる。これらの具体例としては、オルト珪酸リチウム(Li4SiO4;2Li2O・SiO2)、オルト二珪酸六リチウム(Li6Si27;3Li2O・2SiO2)、メタ珪酸リチウム(Li2SiO3;Li2O・SiO2)、二珪酸リチウム(Li2Si25;Li2O・2SiO2)、七珪酸四リチウム(2Li2O・7SiO2)、四珪酸リチウム(Li2Si49;Li2O・4SiO2)、九珪酸四リチウム(2Li2O・9SiO2)、十五珪酸四リチウム(2Li2O・15SiO2)、及び、オルト珪酸ナトリウム(Na4SiO4;2Na2O・SiO2)、メタ珪酸ナトリウム(Na2SiO3;Na2O・SiO2)、二珪酸ナトリウム(Na2Si25;Na2O・2SiO2)、四珪酸ナトリウム(Na2Si49;Na2O・4SiO2)、オルト珪酸カリウム(K4SiO4;2K2O・SiO2)、メタ珪酸カリウム(K2SiO3;K2O・SiO2)、二珪酸カリウム(K2Si25;K2O・2SiO2)、四珪酸カリウム(K2Si49;K2O・4SiO2)、及び、これらの珪酸塩の水和物が挙げられる。なお、これらの珪酸塩の水和物の多くは、pHや温度等の環境変化により水和状態のまま容易にゲル化し、一部が高分子化してポリ珪酸塩になる場合がある。本発明に適用できる珪酸塩化合物には、そのようなポリ珪酸塩も含まれる。
本発明で用いることができる燐酸塩化合物としては、例えば、オルト燐酸、ポリ燐酸(オルト燐酸の重合度6までの直鎖状重合体の単体、またはこれらの2種以上の混合物)、メタ燐酸(オルト燐酸の重合度3〜6までの環状重合体の単体、またはこれらの2種以上の混合物)、テトラメタ燐酸、ヘキサメタ燐酸等の金属塩、五酸化燐、モネタイト、トルフィル石、ウィトロック石、ゼノタイム、スターコライト、ストルーブ石、ラン鉄鉱石等の燐酸塩鉱物、ポリ燐酸シリカやトリポリ燐酸塩等の市販の複合燐酸塩顔料、フィチン酸、ホスホン酸(亜燐酸)、ホスフィン酸(次亜燐酸)などの金属塩、又は、これらの2種以上の混合物などが挙げられる。ここで言うオルト燐酸塩には、その一水素塩(HPO4 2-)の塩、二水素塩(H2PO4 -)も含む。また、ポリ燐酸塩には水素塩を含む。燐酸塩を形成するカチオン種としては特に制限はなく、例えば、Co、Cu、Fe、Mn、Nb、Ni、Sn、Ti、V、Y、Zr、Al、Ba、Ca、Mg、SrおよびZn等の金属イオン、バナジル、チタニル、ジルコニル等のオキソカチオンが挙げられるが、Al、Ca、Mg、Mn、Niを用いるのが好ましい。前記燐酸塩化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
燐酸塩を形成するカチオン種として、アルカリ金属の多量の使用は好ましくない。アルカリ金属の燐酸塩を用いた場合、工業的な製造工程で焼成して得られる生成物が水に溶解し過ぎる傾向にある。しかし、アルカリ金属の燐酸塩を用いた場合において、水への溶解性の制御を、防錆顔料製造時、塗装用組成物の製造時、金属板への製膜時、あるいは塗装金属板の使用時等に実施できれば、やや多めに使用してもよい。そのような制御は、例えば、防錆顔料を、水への溶解性を抑止する他の添加剤と共存させたり、高度に架橋させた樹脂系や無機系の高分子と共存させて水への溶出速度を制御する、等の方法が挙げられる。
本発明で用いることができるバナジン酸塩化合物は、バナジウムの原子価が0、2、3、4または5のいずれか1つの価数、または2種以上の価数を有する複合化合物であり、例えば、これらの酸化物、水酸化物、種々の金属の酸素酸塩、バナジル化合物、ハロゲン化物、硫酸塩、金属粉等が挙げられる。これらは、加熱時または水の存在下で分解し、共存する酸素と反応する。例えば、バナジウムの金属粉または2価の化合物は、最終的に3、4、5価のいずれかの化合物に変化する。0価のもの、例えば、バナジウム金属粉は、上記の理由で使用可能であるが、酸化反応が不十分等の問題があるので、実用上好ましくない。5価のバナジウム化合物はバナジン酸イオンを有し、燐酸イオンと加熱反応し、防錆に寄与するヘテロポリマーを作り易いため、5価のバナジウム化合物を1つの成分として含むのは好ましい。バナジウム化合物の具体例としては、酸化バナジウム(II)、水酸化バナジウム(II)等のバナジウム(II)化合物、酸化バナジウム(III)等のバナジウム(III)化合物、酸化バナジウム(IV)、ハロゲン化バナジル等のバナジウム(IV)化合物、酸化バナジウム(V)、バナジン酸塩(種々の金属のオルトバナジン酸塩、メタバナジン酸塩、ピロバナジン酸塩等)等のバナジウム(V)化合物、または、これらの混合物が挙げられる。バナジン酸塩を構成する好ましい金属種は、燐酸塩で示した金属と同じである。
アルカリ金属のバナジン酸塩を用いた場合、工業的な製造工程で焼成して得られる生成物が水に溶解し過ぎる傾向にあるため、燐酸塩の場合と同様に、アルカリ金属のバナジン酸塩の多量使用は好ましくない。ただし、アルカリ金属の燐酸塩を用いた場合と同様に水への溶解性を制御できれば、これらの使用も差し支えない。バナジウムのハロゲン化物、硫酸塩の場合も同様である。
本発明の塗装金属板では、前記珪酸塩化合物、燐酸塩化合物、バナジン酸塩化合物の総量は、塗膜(α)の1〜40体積%であり、1〜20体積%であるのが好ましく、2〜15体積%がより好ましい。1体積%未満では珪酸塩化合物、燐酸塩化合物、バナジン酸塩化合物の作用が不十分なため、耐食性が低下することがある。20体積%を超えると塗膜が脆くなり、塗膜凝集破壊により成形時の塗膜密着性や塗膜追従性が低下したり、溶接性が低下することがある。
防錆顔料(C)は、珪酸塩化合物、燐酸塩化合物、バナジン酸塩化合物のうち1種または2種以上を含むのが好ましいが、燐酸塩化合物(燐酸イオン源)と、珪酸塩化合物(珪酸イオン源)またはバナジン酸塩化合物(バナジン酸イオン源)の少なくとも1種が共存するのが、防錆効果を高める上でより好ましい。配合する燐酸イオン源と、珪酸イオン源、バナジン酸イオン源の総量との比は、[P25のモル数]:[SiO2とV25の総モル数]の比率を25:75〜99:1とするのがより好ましい。燐酸イオン源、珪酸イオン源、バナジン酸イオン源の総量に対する珪酸イオン源とバナジン酸イオン源の総量のモル比が75%を超えると、燐酸イオンによる防錆効果が低下することがあり、珪酸イオン源とバナジン酸イオン源の総量のモル比が1%より少ない場合には、珪酸イオン(またはバナジン酸イオン)による周辺化学種の酸化や固定効果が不十分になることがある。
本発明に用いる防錆顔料(C)として、Si、Ti、Al、Zrからなる群より選ばれる1種または2種以上の金属元素からなる金属酸化物微粒子(D)を用いることができる。これらの金属酸化物微粒子(D)を単独で用いるか、または珪酸塩化合物、燐酸塩化合物、バナジン酸塩化合物と一緒に配合することにより、耐食性をより高めることができる。珪酸塩化合物、燐酸塩化合物、バナジン酸塩化合物とシリカを共存させると、耐食性がより一層向上するので好ましい。シリカとしては、例えば、ヒュームドシリカ、コロイダルシリカ、凝集シリカ等が挙げられる。また、カルシウム沈着シリカを用いることもできる。
本発明で用いることができる前記金属酸化物微粒子(D)としては、例えば、シリカ微粒子、アルミナ微粒子、チタニア微粒子、ジルコニア微粒子等を挙げることができ、体積平均径が0.5〜60nm程度の金属酸化物ナノ微粒子(DN)がさらに好適である。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらのうち、シリカナノ微粒子は、塗膜の耐食性向上および強靭化の両方が必要な場合に添加することができる。
粒径が0.5nm以上60nm未満の金属酸化物ナノ微粒子(DN)として、例えばコロイダルシリカ、コロイダルチタニア、コロイダルジルコニアを用いることができる。これらは、上記金属酸化物を粉砕により微粒子化したものとは製法が異なるため、微細な一次粒子(粒径0.5nm〜60nm)のまま塗料中及び塗装後の塗装金属材の塗膜中に分散し易い。これらの金属酸化物ナノ微粒子(DN)は、粒子径がより大きい同組成の金属酸化物微粒子に比べて防錆効果が高い。しかし、このような金属酸化物ナノ微粒子(DN)は、例えばスポット溶接のような、電極で荷重を加えつつ通電しジュール熱により溶接する通電抵抗溶接にて溶接性を阻害することがある。
溶接時の自動車用塗装金属板は、2枚以上の塗装金属板が重なり溶接電極で荷重を加えられた際に、電極と導電性顔料(B)が接触し、そして塗膜(α)中の導電性顔料(B)同士、または導電性顔料(B)と金属板とが接触して通電経路を形成して、通電抵抗溶接が可能となる。
塗膜(α)中に粒径が0.5nm以上60nm未満の金属酸化物ナノ粒子(DN)が大量に存在すると、電極と導電性顔料(B)、導電性顔料(B)同士、あるいは導電性顔料(B)と金属板との間で金属酸化物ナノ粒子(DN)が通電を阻害し、溶接性に悪影響を及ぼす。例えば溶接の電気抵抗が高くなりすぎることによる過剰な発熱で金属材や塗膜が飛散し、溶接強度不足や飛散した物質の付着による外観劣化などの悪影響が生じる場合がある。より著しい場合は電気抵抗が高すぎるために溶接ができない場合がある。したがって、塗膜中の(B)の量に対して(DN)が多すぎないことが溶接性を確保するために好ましい。
金属酸化物ナノ微粒子(DN)の量は、塗膜中の、金属酸化物ナノ微粒子(DN)の総体積の、非酸化セラミクス粒子(B)の総体積に対する比(DN/B)が20以下となることが好ましい。溶接性を重視する場合には10以下がより好ましい。(DN/B)の下限としては0.1以上が好ましい。(DN/B)が0.1未満では、塗膜中の非酸化セラミクス粒子(B)が多すぎる、あるいは金属酸化物ナノ微粒子(DN)が少なすぎる状態である。前者では、塗膜中の非酸化セラミクス粒子(B)の量が多すぎるために塗膜が脆くなり、成形時の塗膜割れや塗膜脱落が発生することがある。塗膜割れや塗膜脱落は、塗膜による耐食性の低下や塗装金属板の外観不良につながる。後者では、塗膜中の金属酸化物ナノ微粒子(DN)の量が不十分であるため、耐食性を高める効果が十分得られないことがある。溶接性を確保するために金属酸化物ナノ微粒子(DN)の量を抑制することで低下する防錆性は、粒径100nm以上の防錆顔料(C)を添加することで補うことができる。粒径100nm以上の防錆顔料(C)として、その全量又は一部を粒径0.2μm以上10μm以下の金属酸化物微粒子(DM)としてもよい。粒径100nm以上の防錆顔料(C)は、塗膜が金属板上に塗布された状態、あるいは、溶接電極による荷重で塗膜が変形した状態で、電極と(B)、(B)同士、あるいは(B)と金属板との間に入り込みにくいので、金属酸化物ナノ微粒子(DN)に比べて通電抵抗溶接への悪影響が小さい。
前記防錆顔料(C)の量は、塗膜(α)の1〜40体積%であり、かつ導電性顔料(B)の量との合計が80体積%を超えないことが好ましい。塗装金属板の耐食性を重視する場合は防錆顔料(C)の量が3〜40体積%であるのがより好ましく、7.5〜40体積%がさらに好ましい。さらにより一層の塗装金属板の耐食性を重視する場合は、防錆顔料(C)の量が13〜40体積%であるのがより好ましい。1体積%未満では防錆顔料(C)の量が不十分であるため、耐食性を高める効果が十分に得られないことがある。40体積%を超えると塗膜の脆化や金属板への塗膜密着性低下のために、成形時の塗膜破壊や塗膜剥離による金属板の露出が生じ、塗装金属板の外観劣化や塗膜による耐食性向上効果の低下が生じる場合がある。
導電性顔料(B)の量、粒径が0.5nm以上60nm未満の金属酸化物ナノ微粒子(DN)の量、粒径100nm以上の防錆顔料(C)の量、及び粒径0.2μm以上10μm以下の金属酸化物微粒子(DM)の量は、塗膜断面を電子顕微鏡観察してそれぞれの粒子を識別した上で断面あたりの個数を数え、塗膜体積当たりの個数に換算した上で算出することができる。この場合、必要に応じてEDX分光装置などを用いて各粒子を識別することができる。塗装前の塗料に含まれる(B)、(C)、(DN)、及び(DM)の量と金属板への塗膜付着量から塗膜中の各粒子量を算出することも可能である。塗装前の塗料における(B)、(C)、(DN)、及び(DM)の仕込み量が判明していれば、仕込み量と金属板への塗料付着量から塗膜中の各粒子量を算出可能である。仕込み量が不明な場合は、例えばMalvern社製の粒子画像解析装置Morphologi G3等の装置を用いて、適切な濃度に希釈した塗料中の粒子を画像解析にて個々識別し数えることで、算出可能である。この手法は、金属板に付着した塗膜を溶解して粒子の個数を数える場合にも用いることができる。
前記の各種防錆顔料は、塗装用組成物(β)に適量を予め溶解、あるいは分散安定化させ、塗膜(α)中の有機樹脂(A)に導入するのが好ましい。
<塗装用組成物(β)の調製>
本発明の塗膜(α)を形成するのに用いる塗装用組成物(β)の製造方法は特に限定されない。例えば、水中または有機溶剤中に各々の塗膜(α)形成成分を添加し、ディスパー等の分散機で攪拌し、溶解、分散もしくは破砕分散する方法が挙げられる。水系塗装用組成物の場合、各々の塗膜(α)形成成分の溶解性、もしくは分散性を向上させるために、必要に応じて、公知の親水性溶剤等を添加してもよい。
特に、水系塗装用組成物(β)の場合には、前記樹脂(A1)、前記導電性顔料(B)、防錆顔料(C)に加えて必要に応じ、塗料の水性や塗工性を損なわない範囲で種々の水溶性または水分散性の添加剤を添加してもよい。例えば、顔料の形態を取らない水溶性または水分散性の種々の防錆剤や、消泡剤、沈降防止剤、レベリング剤、湿潤分散剤等の界面活性剤、および、増粘剤、粘度調整剤等などを添加してもよい。更に、樹脂や他の有機化合物など塗装用組成物(β)の構成成分の安定化等のために、労働安全衛生法施行令(有機溶剤中毒予防規則第一章第一条)で定義される有機溶剤等(第1種有機溶剤、第2種有機溶剤、第3種有機溶剤、または、前記有機溶剤を、5質量%を超えて含有するもの)に該当しない範囲で、少量の有機溶剤を添加してもよい。
本発明の塗膜(α)を、水系塗装用組成物(β)から形成する場合、水系であるため、有機溶剤系塗装用組成物に比較して表面張力が高く、基材である金属板(下地処理がある場合は下地処理層)や、導電性顔料(B)、防錆顔料(C)への濡れ性に劣り、基材に所定量の塗布を行う場合、均一な塗装性や粒子分散性が得られないことがある。そのような場合は、前記の湿潤分散剤や増粘剤を添加するのがよい。湿潤分散剤としては、表面張力を低下させる界面活性剤を用いることができるが、分子量が2000以上の高分子界面活性剤(高分子分散剤)を用いる方がよい。低分子界面活性剤は、湿気を含む樹脂塗膜中を比較的容易に移動できるため、界面活性剤の極性基に吸着した水や、その水を介して溶存酸素、溶存塩等の腐食因子を金属面に呼び込み易く、また、自らブリードアウトして、溶出し易いため、塗膜の防錆性を劣化させることが多い。これに対し、高分子界面活性剤は、金属、セラミクス粒子や顔料の表面に多点吸着できるため一旦吸着すると離れにくく、低濃度でも濡れ性改善に有効である。その上、分子が嵩高いため樹脂塗膜中を移動しにくく、腐食因子を金属面に呼び込みにくい。前記<有機樹脂(A)>の項にて、有機樹脂(A)への添加を推奨しているアクリル樹脂の一部には、このような高分子界面活性剤の機能があり、水系塗装用組成物中で、導電性顔料(B)や防錆顔料(C)等の沈降を抑止し、かつ均一に分散させる効果がある。
増粘剤は、基材表面のはじき箇所に対して湿潤分散剤だけでは十分な表面被覆性が得られない場合、または、水系塗装用組成物の粘度が低すぎて必要な塗膜厚が確保されない場合の対策として添加することができる。分子量が数千〜数万のものが多く、顔料等の表面に多点吸着し、増粘剤自身は互いに会合して弱い網目構造を形成し、塗装用組成物の粘度を高めることができる。
水系塗装用組成物(β)が高比重の導電性顔料(B)や防錆顔料(C)等を含む場合、必要に応じ、塗料にチクソトロピックな性質(揺変性)を付与できる粘度調整剤を添加するのがよい。粘度調整剤は、前記増粘剤の場合と同様に、水系塗装用組成物中で顔料等の表面に多点吸着し、網目構造を作る。このような粘度調整剤の分子量は数十万〜数百万で非常に高いため、水系塗装用組成物(β)中で大きな降伏値を持つ強固な網目構造を作り、従って、塗装用組成物(β)は低剪断速度では変形しにくく、高粘度である。降伏値を上回る大きな剪断応力が塗装用組成物(β)に加われば、網目構造が崩壊して粘度が急激に下がる。従って、粘度調整剤を添加すれば、水系塗装用組成物(β)がほぼ静止状態を保つ保管時や運送時には、塗装用組成物(β)の粘度を高めて重質顔料類の沈降を抑止し、塗装工場で配管内を流動する時や、基材への塗装時等、高い剪断応力(高剪断速度)が加わる際には塗装用組成物(β)の粘度を下げて流動し易くする。
有機溶剤系の塗装用組成物(β)の場合には、有機溶剤に樹脂を溶解させた塗装用組成物は比較的粘度が高く、かつ、粘度を調整しやすい。そのため、塗装用組成物粘度を、顔料沈降抑制に有利とされる100mPa・s以上に容易にかつ安定的に保持することができる。また、導電性材料として用いる非酸化物セラミクスは表面に疎水性部位も持つ物質であることから、一般的に、有機溶剤系の塗装用組成物(β)への分散も容易であり、塗工時に塗装用組成物(β)中の導電性顔料(B)が沈降することなく塗装できるため、好適である。
塗膜を形成する有機溶剤系の塗装用組成物(β)の粘度が、100〜2000mPa・sである塗装用組成物をロールコーターまたはカーテンコーターにて金属板上に塗布した後に乾燥焼付けすると、導電性顔料(B)が沈降しにくく、より好適である。塗装用組成物(β)の粘度が100mPa・s未満であると、導電性顔料(B)が沈降しやすく、2000mPa・sを超える場合では、粘度が高すぎて一般にリビング等と呼ばれる塗装時の外観不良を起こす恐れがある。より好ましくは、250〜1000mPa・sである。有機溶剤系の塗装用組成物(β)の粘度は、ロールコーターまたはカーテンコーターで塗布する際の塗装用組成物の温度と同じ温度でB型粘度計を用いて測定することができる。
粘度調整は、使用する有機溶剤の種類、溶媒量で調整することができる。有機溶剤は、一般に公知の溶剤を用いることができるが、沸点の高い有機溶剤が好ましい。本発明の金属板の製造ラインでは、焼付け時間が短いため、沸点の低い溶剤を用いると、一般にボイリングと呼ばれる塗装欠陥が発生する恐れがある。溶剤の沸点は、120℃以上のものを用いるのが好ましい。これらの沸点の高い有機溶剤としては、公知の溶剤、例えば、シクロヘキサン、芳香族炭化水素系有機溶剤であるソルベッソ(エクソンモービル(有)の製品名)等を用いることができる。
<塗膜(α)の形成>
本発明の前記塗膜(α)は、<塗膜(α)>の項で述べたように、塗装用組成物(β)が水系や有機溶剤系組成物の場合は、ロールコート、グルーブロールコート、カーテンフローコート、ローラーカーテンコート、浸漬(ディップ)、エアナイフ絞り等の公知の塗装方法を用いて、金属板上に塗装用組成物(β)を塗布し、その後、ウェット塗膜の水分や溶剤分を乾燥する製膜方法が好ましい。これらのうち、水系や有機溶剤系の紫外線硬化型組成物や電子線硬化型組成物の場合は、前記の塗布方法で金属板に塗布後、水分または溶剤分を乾燥し、紫外線や電子線を照射して重合させるのが好ましい。
塗装用組成物(β)が水系または有機溶剤系の焼付硬化型組成物の場合の焼付乾燥方法について、具体的に述べる。塗装用組成物(β)が水系または有機溶剤系の焼付硬化型組成物の場合、焼付乾燥方法は特に制限はなく、あらかじめ金属板を加熱しておくか、塗布後に金属板を加熱するか、或いはこれらを組み合わせて乾燥を行ってもよい。加熱方法は特に制限はなく、熱風、誘導加熱、近赤外線、直火等を単独もしくは組み合わせて使用することができる。
焼付乾燥温度については、塗装用組成物(β)が水系の焼付硬化型組成物の場合、金属板表面到達温度で120℃〜250℃であることが好ましい。到達温度が120℃未満では、塗膜硬化が不十分で、耐食性が低下する場合があり、250℃超であると、焼付硬化が過剰になり、耐食性や成形性が低下する場合がある。焼付乾燥時間は1〜60秒であることが好ましく、3〜20秒であることが更に好ましい。1秒未満であると、焼付硬化が不十分で、耐食性が低下する場合があり、60秒を超えると、生産性が低下する場合がある。
塗装用組成物(β)が有機溶剤系の焼付硬化型組成物の場合、金属板表面到達温度が180℃〜260℃であることが好ましい。到達温度が180℃未満では、塗膜硬化が不十分で、耐食性が低下する場合があり、260℃超であると、焼付硬化が過剰になり、耐食性や成形性が低下する場合がある。焼付乾燥時間は10〜80秒であることが好ましく、40〜60秒であることが更に好ましい。10秒未満であると、焼付硬化が不十分で、耐食性が低下する場合があり、80秒を超えると、生産性が低下する場合がある。
塗装用組成物(β)が、水系または有機溶剤系の紫外線硬化型組成物や電子線硬化型組成物の場合の製膜方法について具体的に述べる。これらの組成物を、前記の水系や有機溶剤系組成物の場合と同様な方法で塗布後、ウェット塗膜の水分や溶剤分を乾燥し、その後、紫外線または電子線を照射する。塗膜は、主に紫外線または電子線照射で生成するラジカルを起点に硬化製膜するため、乾燥温度は、焼付硬化型組成物の場合より低い乾燥温度でよい。乾燥工程にて、80〜120℃程度の比較的低い金属表面到達温度で水分や溶剤の多くを揮発させてから紫外線または電子線照射するのが好ましい。
塗膜中の紫外線硬化型樹脂を紫外線でラジカル重合し硬化する紫外線照射は、通常、大気雰囲気中、不活性ガス雰囲気中、大気と不活性ガスの混合雰囲気中等で行われる。本発明の紫外線硬化では、酸素濃度を10体積%以下に調整した大気と不活性ガスの混合雰囲気や、不活性ガス雰囲気中で紫外線照射するのが好ましい。酸素はラジカル重合の禁止剤となるため、紫外線照射時の雰囲気酸素濃度が低い場合、生成ラジカルへの酸素付加による失活や架橋反応阻害が少なく、本発明に用いる紫外線硬化型組成物が、ラジカル重合や架橋を経て十分に高分子化する。そのため、導電性顔料(B)や金属板表面への密着性が高まり、結果として、大気雰囲気中での紫外線硬化の場合より、塗膜の耐食性が向上する。ここで用いる不活性ガスとしては、窒素ガス、炭酸ガス、アルゴンガス、およびこれらの混合ガス等を例示できる。
紫外光源としては、例えば、金属蒸気放電方式の高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ等、希ガス放電方式のキセノンランプ等、マイクロ波を用いた無電極ランプ等を用いることにより、紫外線を照射できる。本発明の塗装金属板において、紫外線硬化型の塗膜を十分に硬化でき、所望の抵抗溶接性、耐食性、成形性が得られるものであれば、どのようなランプを用いてもよい。また、一般に、塗膜が受光する紫外線のピーク照度や積算光量は塗膜の硬化性を左右するが、紫外線硬化型の塗膜を十分に硬化でき、所望の耐食性や成形性が得られるものであれば、紫外線の照射条件は特に限定されない。
塗装用組成物(β)が、電子線硬化型組成物の場合、電子線硬化には、印刷、塗装、フィルムコーティング、包装、滅菌等の分野で用いられている通常の電子線照射装置を用いることができる。これらは、高真空中で熱フィラメントから発生した熱電子に高電圧をかけて加速し、得られた電子流を不活性ガス雰囲気中に取り出し、重合性物質に照射するものである。本発明の塗装金属板において、電子線硬化型の塗膜を十分に硬化でき、所望の抵抗溶接性、耐食性、成形性が得られるものであれば、どのような装置を用いてもよい。また、一般に、塗膜が吸収する電子線の加速電圧は、電子線が塗膜を浸透する深さを左右し、吸収線量は重合速度(塗膜の硬化性)を左右するが、電子線硬化型の塗膜を十分に硬化でき、所望の耐食性や成形性が得られるものであれば、電子線の照射条件を特に限定しない。ただし、電子線によるラジカル重合の場合、微量の酸素が存在しても、生成ラジカルへの酸素付加による失活や架橋反応阻害が生じ、硬化が不十分になるため、酸素濃度が500ppm以下の不活性ガス雰囲気中で電子線照射するのが好ましい。ここで用いる不活性ガスとしては、窒素ガス、炭酸ガス、アルゴンガス、およびこれらの混合ガス等を例示できる。
以下、水系塗装用組成物を用いた例により本発明を具体的に説明する。
1.金属板の準備
以下の5種の亜鉛系めっき鋼板を準備し、水系アルカリ脱脂剤(日本パーカライジング(株)製FC-301)の2.5質量%、40℃水溶液に2分間浸漬して表面を脱脂した後、水洗、乾燥して塗装用の金属板とした。
EG:電気亜鉛めっき鋼板(板厚0.8mm、めっき付着量30g/m2
ZL:電気Zn-10%Ni合金めっき鋼板(板厚0.8mm、めっき付着量30g/m2
GI:溶融亜鉛めっき鋼板(板厚0.8mm、めっき付着量40g/m2
SD:溶融Zn-11%Al-3%Mg-0.2%Si合金めっき鋼板(板厚0.8mm、めっき付着量40g/m2
GA:合金化溶融亜鉛めっき鋼板(板厚0.8mm、10%Fe、めっき付着量45g/m2
2.下地処理皮膜の製膜
<塗膜(α)>の項で述べたように、本発明においては、塗膜(α)と金属板表面の間に必ずしも下地処理皮膜を設ける必要はないが、塗膜(α)の金属板への密着性や耐食性等を更に改善するために用いることがある。ここでは、一部の塗装用金属板に下地処理皮膜を設けて評価した。
下地処理皮膜を製膜するための塗装用組成物として、ポリエステル樹脂、シリカ微粒子、シランカップリング剤からなる水系塗装用組成物を準備した。
上記組成物を皮膜厚0.08μmになるように前記の塗装用金属板にバーコートし、これを熱風炉にて金属表面到達温度70℃で乾燥し、風乾した。
3.水系塗装用組成物の調製と製膜
水系塗装用組成物の調製のため、まず、樹脂(A)、導電性顔料(B)、防錆顔料(C)、金属酸化物微粒子(D)を準備した。
(1)樹脂(A)
樹脂A1〜A9の市販樹脂を準備した。これらはいずれも本発明に用いる樹脂である。
A1 スーパーフレックス150(水系ポリウレタン樹脂、第一工業製薬株式会社製)
A2 スーパーフレックス150HS(水系ポリウレタン樹脂、第一工業製薬株式会社製)
A3 スーパーフレックス150HS(第一工業製薬株式会社製)+メラミン樹脂
A4 スーパーフレックス840(水系ポリウレタン樹脂、第一工業製薬株式会社製)
A5 スーパーフレックス300(水系ポリウレタン樹脂、第一工業製薬株式会社製)
A6 ハイドランHW174(水系ポリウレタン樹脂、DIC株式会社製)
A7 バイロナールMD1400(水系ポリエステル樹脂、東洋紡株式会社製)
A8 アクアブリッド UX110(アクリル樹脂、ダイセルファインケム株式会社製)
A9 バイロナールMD1200(水系ポリエステル樹脂、東洋紡株式会社製)
有機樹脂(A)の−20℃での引張り伸び率は、次のように測定した。
有機樹脂(A)を、到達温度200℃で加熱硬化することで膜厚15μmのフィルムを形成し、JISK7162に示すダンベル型試験片のうち1B形に打ち抜き、フィルム及びフィルムつかみ部を冷却できるチャンバーを備えた、エーアンドディー社製自動引張試験機RTG−1250を用いて測定した。
有機樹脂(A)のガラス転移温度Tgは、次のように測定した。
有機樹脂(A)を、到達温度200℃で加熱硬化することで膜厚15μmのフィルムを形成しサンプルホルダーのサイズに切り抜いた試料を、日立ハイテクサイエンス社製DSC7020を用いて、示差走査熱量測定(DSC)のピーク温度として測定した。
(2)非酸化物セラミックス粒子(B)
非酸化物セラミックス粒子(B)として、市販の微粒子(試薬)を用いた。体積平均径は、ベックマン・コールター(株)製Multisizer3(コールター原理による精密粒度分布測定装置)を用いて測定した。電気抵抗率は、各微粒子から長さ80mm、幅50mm、厚さ2〜4mmの焼結板を作成し、(株)三菱化学アナリテック製の抵抗率計ロレスタEP(MCP-T360型)とESPプローブ(端子の平頭部の直径2mm)を用いた4端子4探針法、定電流印加方式で、JIS K7194に準拠して25℃で測定した。
TiN:TiN微粒子(和光純薬工業(株)製、体積平均径1.6μm、電気抵抗率20×10-6Ωcm)
TiB:TiB2微粒子((株)高純度化研究所製TII11PB、体積平均径2.9μm、電気抵抗率30×10-6Ωcm)
VC:VC微粒子(和光純薬工業(株)製、体積平均径2.3μm、電気抵抗率140×10-6Ωcm)
ZrB:ZrB2微粒子(和光純薬工業(株)製、体積平均径2.2μm、電気抵抗率70×10-6Ωcm)
MoB:Mo2B微粒子(三津和化学薬品(株)製ほう化二モリブデン、体積平均径5.2μm、電気抵抗率30×10-6Ωcm)
LaB:LaB6微粒子(添川理化学(株)製六硼化ランタン、体積平均径2.8μm、電気抵抗率20×10-6Ωcm)
NiSi:Ni2Si微粒子((株)高純度化学研究所製NII11PBを水に添加し攪拌、懸濁させ、5分経過後になお浮遊する微小粒子を濾別して使用。体積平均径4.8μm、電気抵抗率40×10-6Ωcm)
TiC:TiC微粒子(和光純薬工業(株)製、体積平均径3.2μm、電気抵抗率180×10-6Ωcm)
TiN+VC:前記TiNと前記VCの混合物(体積比1:1)
VC+ZrB:前記VCと前記ZrBの混合物(体積比1:1)
ZrB+TiC:前記ZrBと前記TiCの混合物(体積比1:1)
(3)(B)以外の導電性粒子
(B)以外の導電性粒子として、市販の微粒子(試薬)を用いた。
SUS:SUS304粒子(体積平均径3.3μm、電気抵抗率70×10-6Ωcm)
(4)防錆顔料(C)
防錆顔料(C)として、市販の試薬、工業製品、またはこれらをブレンドして用いた。
C1:ピロリン酸マグネシウム(添川理化学(株)製試薬、Mg227
C2:珪酸カルシウム(和光純薬工業(株)試薬、CaSiO3
C3:リン酸水素マグネシウム(関東化学(株)製MgHPO4
C4:リン酸水素マグネシウム(関東化学(株)製MgHPO4):珪酸カルシウム(和光純薬工業(株)試薬、CaSiO3)=2:1(モル比)の混合物
C5:リン酸三カルシウム(関東化学(株)製Ca3(PO42):五酸化バナジウム(関東化学(株)製V25)=2:1(モル比)の混合物
次に、前記の樹脂(A)、導電性顔料(B)、防錆顔料(C)、金属酸化物微粒子(D)と蒸留水を用いて、種々の配合比率で水系塗装用組成物を調製した。
導電性顔料(B)、防錆顔料(C)、金属酸化物微粒子(D)については、水系塗装用組成物の不揮発分中に含まれる、樹脂(A)、導電性顔料(B)、防錆顔料(C)、金属酸化物微粒子(D)の総量に対する所望の体積比率で配合した。水系塗装用組成物の不揮発分の濃度は、狙いの塗膜付着量や良好な塗装性を得るため、水の添加量を変えて適宜調整した。ここで、「不揮発分」とは、塗料や組成物に溶媒として配合されている水や有機溶剤類を揮発させた後に残る成分のことを意味する。
表1〜表5に、各水系塗装用組成物の不揮発分中に含まれる、樹脂(A)、導電性顔料(B)、防錆顔料(C)、金属酸化物微粒子(D)の種類を示す。塗膜中の含有量(体積%)も示した。
前記水系塗装用組成物を調製し各成分を均一に分散後、前記の塗装用金属板、または下地処理皮膜を設けた金属板にロールコーターを用いて塗布し、これを熱風炉にて金属表面到達温度200℃で乾燥し、水冷、風乾した。表1〜表5に、製膜後の塗膜厚(μm単位)を示した。なお、前記塗膜厚は、塗装後の塗膜の剥離前後の質量差を塗膜比重で除算して算出した。塗膜比重は、塗膜構成成分の配合量と各成分の既知比重から計算した。
前記塗膜(α)の−20℃での微小マルテンス硬度HM(N/mm は、フィッシャーインストルメンツ製、ナノインデンターHM500を用い、厚み10μm以上の塗膜において、押し込み深さを5μm以下に設定し、10回測定の平均値として測定した。厚み10μm未満の塗膜では、押し込み深さを塗膜厚みの1/5とし、30回測定するうちで最大値5点および最小値5点を除き、残る20点の測定値の平均値をHMとした。−20℃で測定するために、塗膜を有する塗装金属板を保持する測定台をペルチェ素子にて冷却する機構を設けることで測定した。
前記塗膜(α)の常温での引張り伸び率ELは、塗膜(α)を形成する塗料を、到達温度200℃で加熱硬化することで膜厚15μmのフィルムを形成し、JISK7162に示すダンベル型試験片のうち1B形にて、エーアンドディー社製自動引張試験機RTG−1250を用いて測定した。
5.性能評価
前記3.及び4.の方法で作成した塗装金属板を用い、溶接性、成形性、耐食性について評価を行った。以下に、各試験と評価の方法を示す。
(1)溶接性
先端径5mm、R40のCF型Cr-Cu電極を用い、加圧力1.96kN、溶接電流8kA、通電時間12サイクル/50Hzにてスポット溶接の連続打点性試験を行い、ナゲット径が3√t(tは板厚)を切る直前の打点数を求めた。以下の評価点を用いてスポット溶接性の優劣を評価した。
4:打点数が1000点以上
3:200点以上、1000点未満
2:200点未満
1:ナゲットが生成せず1点も溶接できない
(3)耐食性
前記3.の方法で作成した塗装金属板から150×70mmサイズの長方形の試験片を切り出し、端部を樹脂シールして平面部耐食性の試験片とした。
これらの試験片に対し、塩水噴霧2時間、乾燥4時間、湿潤2時間の合計8時間を1サイクルとしたサイクル腐食試験を実施した。塩水噴霧の条件はJIS-Z2371に準拠した。乾燥条件は、温度60℃、湿度30%RH以下とし、湿潤条件は、温度50℃、湿度95%RH以上とした。赤錆発生状況を調べ、以下の評価点を用いて加工部耐食性の優劣を評価した。
4:450サイクルで赤錆発生なし
3:300サイクルで赤錆発生なし
2:150サイクルで赤錆発生なし
1:150サイクルで赤錆発生あり
(4)耐チッピング性
前記3.の方法で作成した塗装金属板から150×70mmサイズの長方形の試験片を切り出し、耐チッピング性の試験片とした。
試験片は電着塗装(膜厚15μm)、中塗塗装(膜厚30μm)・上塗塗装(膜厚30μm)を施した。
上記塗済の鋼板に気温−15℃の室内で空気圧にて時速30〜60km/hの速度に加速した砕石(玄武岩、粒径5〜7.5mm)を100個射出し試験板の平面を、砕石の飛来方向に対して15度傾けて衝突させた。
砕石の衝突の中心部20×20mmの範囲を観察し、以下の評価点を用いて加工部耐食性の優劣を評価した。
4:めっき鋼板の地鉄の露出なし
3:めっき鋼板の地鉄が長径と短径の平均で100μm以上のサイズで1箇所露出
2:めっき鋼板の地鉄が長径と短径の平均で100μm以上のサイズで2〜4箇所露出
1:めっき鋼板の地鉄が長径と短径の平均で100μm以上のサイズで5箇所以上露出
(5)チッピング後耐食性
前記(4)の方法で傷つけた塗装金属板を、チッピング後耐食性の試験片とした。
これらの試験片に対し、塩水噴霧2時間、乾燥4時間、湿潤2時間の合計8時間を1サイクルとしたサイクル腐食試験を実施した。塩水噴霧の条件はJIS-Z2371に準拠した。乾燥条件は、温度60℃、湿度30%RH以下とし、湿潤条件は、温度50℃、湿度95%RH以上とした。赤錆発生状況を調べ、以下の評価点を用いて加工部耐食性の優劣を評価した。
4:60サイクルで錆汁が目視でわかる赤錆発生なし
3:30〜59サイクルで錆汁が目視でわかる赤錆発生あり
2:13〜29サイクルで錆汁が目視でわかる赤錆発生あり
1:12サイクルで錆汁が目視でわかる赤錆発生あり
表6に評価結果を併せて示す。
Figure 0006366333
Figure 0006366333
Figure 0006366333
Figure 0006366333
DN:粒径が0.5nm以上60nm未満の金属酸化物ナノ微粒子
DM:粒径0.2μm以上10μm以下の金属酸化物微粒子
Figure 0006366333
Figure 0006366333
表6のNo.5(比較例)は、チッピング時の塗膜及びめっき剥離の程度が大きく、チッピング部の耐食性も劣った。塗膜(α)の−20℃でのHMが低く、ELが大きいことから、チッピングにおける衝撃と傷ついた塗膜の内部応力がめっき層に伝わることで、めっき層が大きく剥離したためと思われる。表6のNo.8(比較例)およびNo.10(比較例)は、チッピング時の塗膜及びめっき剥離の程度が大きく、チッピング部の耐食性も劣った。塗膜(α)の−20℃でのHMが高く、ELが小さいことから、チッピングにおける衝撃が吸収されずにめっき層に伝わり破壊される、あるいは塗膜(α)が非常にもろいために大きく破壊されて、めっき層及び塗膜(α)が大きく剥離したためと思われる。表6のNo.36(比較例)は、溶接性に劣った。塗膜(α)に導電性顔料Bを含有しないためと思われる。表6のNo.37(比較例)は、耐食性及びチッピング後の耐食性に劣った。塗膜(α)に防錆Cを含有しないためと思われる。

Claims (10)

  1. 金属板、および前記金属板の少なくとも一方の表面上にある塗膜(α)を含む自動車用塗装金属板であって、
    前記塗膜(α)が、−20℃での引っ張り伸び率が0.5%〜50%、およびガラス転移温度が0℃〜60℃の有機樹脂であり、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、またはそれらの変性体から選ばれる少なくとも1種である有機樹脂(A)と、導電性顔料(B)と、防錆顔料(C)とを含み、−20℃における微小マルテンス硬度HMが300N/mm 〜1000N/mm であり、25℃での引張り伸び率が0.1%〜10%である自動車用塗装金属板。
  2. 前記導電性顔料(B)が、ホウ化物、炭化物、窒化物、ケイ化物の少なくとも1種から選ばれる、25℃の電気抵抗率が0.1×10 -6 〜185×10 -6 Ωcmの非酸化物セラミックス粒子である請求項1に記載の自動車用塗装金属板。
  3. 前記防錆顔料(C)が、珪酸イオン、燐酸イオン、バナジン酸イオン、タングステン酸イオン、モリブデン酸イオンを放出できる化合物、および金属酸化物微粒子(D)から選ばれる1種または2種以上を含む、請求項1または2に記載の自動車用塗装金属板。
  4. 前記金属酸化物微粒子(D)が、Si、Ti、Al、Zrからなる群より選ばれる1種または2種以上の金属元素を含む、請求項3に記載の自動車用塗装金属板。
  5. 前記金属酸化物微粒子(D)のうち、一次粒径が0.5〜60nmの粒子が前記塗膜(α)中に0.2〜50容量%含有される、請求項4に記載の自動車用塗装金属板。
  6. 前記金属酸化物微粒子(D)のうち、一次粒径が200nm〜10μmの粒子が前記塗膜(α)中に15〜60容量%含有される、請求項5に記載の自動車用塗装金属板
  7. 前記塗膜(α)の平均膜厚が0.5〜15μmである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の自動車用塗装金属板。
  8. 前記塗膜(α)が水系塗装用組成物の塗布により形成されている、請求項1〜7のいずれか1項に記載の自動車用塗装金属板。
  9. 請求項1〜8のいずれか1項に記載の自動車用塗装金属板を加工、成形して形成された自動車部品。
  10. さらに電着塗膜層、中塗り塗膜層、上塗り塗膜層のうちいずれか一層以上を塗布して形成された請求項9に記載の自動車部品。
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